JP2004501096A - ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤 - Google Patents
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Abstract
抗炎症剤又は抗アレルギー剤の有効成分として有用な新規なヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質が開示されるが、それはアガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazei)キノコの菌体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物である。該エチルアルコール抽出物の所望の抑制作用は、同じ菌組織の対応する熱水抽出物よりもかなり高い。フスマとマツ木片を組み合わせて含有する培地中で培養したアガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazei)キノコをエチルアルコール抽出の原料として用いる時に、その違いは顕著である。
Description
【0001】
技術分野
本発明は、新規なヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤、その製造方法並びに抗炎症剤及び抗アレルギー剤の有効成分としてのその医学的応用に関するものである。
【0002】
背景技術
近年、日本国のみならず世界中のその他の多くの国々においては、アレルギー患者数において毎年10%程度増の予想割合で、アレルギー疾患が年々増加する顕著な傾向にある。いわば、アレルギー疾患は1種の文明病に属し、食事及び住居条件の変化により異種タンパク質を体内に取り込むことに起因すると考えられている。これに加えて、一般に知られるようになった花粉症に関する場合のように、潜在患者が表面化してきたことも、最近のアレルギー患者の増加の一因となっている。
【0003】
ヒアルロン酸は、知られているように、個体発生及び組織の恒常性並びに炎症反応や創傷治癒の過程において、極めて重要な役割を果たす生体高分子である。一方、ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解を促進する酵素であって、哺乳動物の結合組織に多量に含有されている。ヒアルロニダーゼが人体内で起炎症作用を有するので、該ヒアルロニダーゼの活性を抑制することによって、炎症を軽減し得ることも知られている。このことが抗炎症剤の有効成分として有効なヒアルロニダーゼ活性抑制剤開発が近年要求される理由である。
【0004】
一方、ヒアルロン酸は天然保湿因子(NMF)として知られており、乳液やクリームなど各種の化粧品に処方されているため、ヒアルロニダーゼ活性抑制剤は、ヒアルロン酸の分解を防止するために、化粧品の成分としても利用できそうである。
【0005】
血液細胞中の好塩基球や組織中の肥満細胞などのアレルギー誘引細胞は、脱顆粒することによってβ‐ヘキソサミニダーゼなどの酵素やヒスタミンを遊離し、喘息、枯草熱、アトピー性湿疹などの即時的アレルギー反応を誘起することも知られている。したがって、好塩基球の脱顆粒を抑制することによって、アレルギー疾患を軽減することができるものと考えられるので、好塩基球脱顆粒活性に対して効果的な抑制剤は抗アレルギー剤として利用し得る。
【0006】
アガリクスと呼ばれる学名アガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)なる担子菌キノコは、ある種の薬用活性を有する健康食品の一種としての食用キノコであり、古くから広く用いられている。多種多様の成分がアガリクス属キノコの菌体中に含まれているが、情報は乏しいながら、アガリクス属キノコの菌体中に含まれている水溶性化合物がβ‐D‐グルカン、特にはβ‐(1,3)‐D‐グルカン及びβ‐(1,6)‐D‐グルカンであると同定され、抗がん作用を有することが報告されている。
【0007】
発明の開示
本発明は、上記した諸般の状況を考慮して、一方では新規なヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤及び効率の良いその製造方法を提供し、他方では抗炎症剤や抗アレルギー剤の有効成分としてのその抑制剤の新規な利用法を提案することを目的とする。
【0008】
ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性を抑制する新規な物質を開発するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは担子菌、特にはアガリクス属キノコの体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物が、ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性に対し強い抑制作用を示すこと及び該抽出物が抗炎症用及び抗アレルギー用医薬品の有効成分として使用できることを見出し、この発見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)あるいは一般的には担子菌の菌体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物であるヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤を提供する。菌体組織又は菌糸体組織がエチルアルコール抽出に供されるアガリクス属キノコの由来については自生した菌体、培養した菌体及び菌糸体を育成したものなど特に制限はない。該アガリクス属キノコの菌体の採取時期、生育年数、培養条件及び培養期間についても特に制限はない。
【0010】
発明を実施する最良の態様
アガリクス属キノコの菌体又は菌糸体のエチルアルコール抽出物に要求される活性は、培地の処方などの培養条件により一様ではないが、本発明においては、種々の培養方法によって培養されたどのような菌体も原料として用いることができる。アガリクス属には様々な種が含まれるが、それらのアガリクス属のキノコは本発明における原料として単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当然のことであるが、それぞれ活性が高い異なった種類のアガリクス属キノコを組み合わせて使用することにより、エチルアルコール抽出物の所望の活性が相乗的に増強される。ヒアルロニダーゼ活性抑制作用が強い第一のアガリクス属キノコと、好塩基球脱顆粒活性抑制作用が強い第二のアガリクス属キノコを組み合わせて使用することは、複合薬剤としての抗炎症作用及び抗アレルギー作用の発現をもたらしている。
【0011】
本発明方法によれば、該ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤は、アガリクス属キノコの菌体組織又は菌糸体組織からエチルアルコール抽出物として得られる。該菌組織の抽出溶剤としてのエチルアルコールは、必ずしも無水アルコールに限るわけではなく、水や他の不純物を、その不純物が菌組織からの活性物質の抽出を妨げることがなければ、それぞれ限られた量で含んでいてもよい。抽出溶剤としてのエチルアルコールが水を含む場合は、その中の水分含有量は40重量%、好ましくは20重量%を超えてはならない。抽出処理に用いられるエチルアルコールの体積は、特に制限されないが、菌組織に含まれる非水溶性活性成分を完全に溶解するのに十分でなければならない。
【0012】
該菌体又は菌糸体を得るためにアガリクス属キノコの培養を行う場合には、フスマ、バガス、マツ木片、マツの実、コムギ、アワ、コメ、イネワラ、ムギワラなどの農業及び森林産物を単独又は2種以上組み合わせた粉砕紛の0.2〜3g/リットルを培地に添加する。培養はタンク培養法により通常3〜14日間行われる。
【0013】
培養されて液体培地から分離された菌体又は菌糸体を水で十分に洗浄して付着している液体培地や異物を除去したのち、切り刻んで小片とし、超音波処理及びホモジェナイザーなどの粉砕機を用いて破砕し、どろどろ状態にする。この破砕処理に先立って風乾や凍結乾燥を行ってから破砕することにより乾燥粉末を得ることにしてもよい。
【0014】
次いで、このようにして破砕された菌体組織又は菌糸体組織を、適量のエチルアルコールと混合し、混合物を室温ないしエチルアルコールの沸点までの温度においてかきまぜて菌体組織又は菌糸体組織中のアルコール可溶物を溶出した後、不溶物から抽出液を分離する。抽出可能物を完全に抽出するために、この抽出処理を数回繰り返すのが好ましい。
【0015】
このようにして得られたエチルアルコール抽出液は、ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性阻害物質を含有している。必要であれば希釈あるいは濃縮して、該抽出物をそのまま抗炎症剤や抗アレルギー剤の有効成分として用いることができる。抽出液を噴霧乾燥又は凍結乾燥することによって、粉末を得ることができる。このようにして得た乾燥粉末は強いヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制を示す。
【0016】
従来から食用に供されているアガリクス属キノコの菌体組織又は菌糸体組織の成分であるため、上記のように製造されたエチルアルコール抽出物には人体に対する安全性の問題はまったくない。したがって、該エチルアルコール抽出物は、化粧品、医薬品、食品への添加物として単独で、あるいはそれ以外の添加物と組み合わせて用いることができる。アガリクス属キノコの抽出物の添加量は、所望の効果が得られるように、その特定の添加目的に依存するのが当然である。例えば化粧品への添加物としては、その添加量は固形分換算で2〜20重量ppmの範囲内である。経口投与薬剤中の添加物として用いる場合には、その投与量は通常固形分換算で、1日当り0.2〜2mg/kg体重の範囲内で、要すれば、分割投与する。
【0017】
アガリクス属キノコの抽出物を添加する医薬品は、投与目的や投与経路に応じて、錠剤、カプセル剤、注射剤、点滴剤、散剤、座剤、顆粒剤、軟膏剤、懸濁剤、乳剤その他を含む種々の薬剤形態にすることができる。
【0018】
アガリクス属キノコの菌体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物は、強い抗炎症作用及び抗アレルギー作用を示すので、その食品が該抽出物の抗炎症作用又は抗アレルギー作用を阻害しないものであれば、通常の食品に該抽出物を添加することによって、抗炎症作用や抗アレルギー作用を有する健康食品を製造することができる。この目的に適した食品や飲料の例としては、特に限定は無くパンなどのベーカリー食品、あめなどの菓子類、各種のインスタント食品、調味料などがある。
【0019】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例中におけるアガリクス属キノコの培養に用いた培地の基本組成は下記のとおりである。
硫酸マグネシウム7水和物 0.5g
硫酸鉄(II)7水和物 0.01g
酵母エキス 1.0g
大麦粉末 1.0g
シュクロース 30g
脱イオン水 1000ml
【0020】
実施例
アガリクス・ブラゼイの8とおりの培養過程A,B,C,D,E,F,G及びHを28から29℃で、窒素源、リン源及びカリウム源となるフスマ及びバガス並びにマツ木片から選ばれた補助添加物を各1g含む又は含まない、上記の基本組成の液体培地中で実施した。培地に湿量換算で菌体5gを接種した。これらの培養過程における補助添加物及び培養時間を下記の表1に示した。
【0021】
表示された培養時間が終了したのち、培地から育成した湿潤菌体10gを採取し、十分に水洗して菌体表面に付着している液体培地を除去した。その後、出力100W、超音波周波数50kHz、20℃において10秒間隔で5サイクル超音波処理して菌体を破砕した。菌体破砕物に4倍重量の無水エチルアルコールを添加し、室温で十分にかきまぜた。このようにして得た菌体破砕物の分散液を1500rpmで2分間遠心分離し、エチルアルコール抽出物として上澄液を捕集した。
【0022】
エチルアルコール抽出液を噴霧乾燥して、抽出物粉末約100mgを得た。比較のため、培養過程AからHで得た菌体について、抽出剤としての4倍重量の無水エチルアルコールを4倍容量の熱水に代えた以外は上記と同じ抽出工程を行い、菌体破砕物の水分散液を15分間煮沸することにより、熱水抽出物を得た。
【0023】
上記で得たエチルアルコール抽出液及び熱水抽出液をそれぞれ、以下の検定手順1及び2においてヒアルロニダーゼ活性抑制率及びアレルギー細胞活性抑制率の評価試験に供した。
【0024】
検定1
ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ(シグマ社製品)2.83mgをpH4.0の0.1M酢酸緩衝液1mlに溶解して調製した溶液0.025mlと、pH4.0の0.1M酢酸緩衝液に塩化ナトリウムを0.3M濃度に溶解して調製した溶液0.2mlとを混合して、その混合物を20分間37℃に保持した。該混合物を、上記で得たエチルアルコール抽出液又は熱水抽出液0.1mlをリン酸二水素カリウム及びリン酸水素二ナトリウムを含有するpH7の1/15Mリン酸緩衝液に溶解したものとさらに混合し、その混合物を37℃で20分間インキュベートした。次いで、該混合物と雄鶏とさか由来のヒアルロン酸カリウム塩(シグマ社製品)1.83mgを1M酢酸緩衝液1mlに溶解して調製した溶液0.2mlとをさらに混合し、20分間37℃に静置した。その後、該混合物と0.4N水酸化ナトリウム水溶液0.1ml及び0.8Mホウ酸ナトリウム水溶液0.1mlとさらに混合して3分間沸騰させ、冷却後さらに4‐ジメチルアミノベンズアルデヒド10g及び10N塩酸12.5mlを酢酸87.5mlに溶解したものを酢酸で10倍に希釈して調製した溶液3.0mlを添加した。20分間37℃に静置した後、この溶液の波長585nmにおける吸光度を分光光度法により測定した。
【0025】
ヒアルロニダーゼ活性抑制率HIを式
HI(%)=[(Y−X)−(Z−X)]/(Y−X)×100
(ここで、Xはヒアルロニダーゼもサンプル溶液を含まない基準対照溶液の吸光度、Yはヒアルロニダーゼのみを含む溶液の吸光度、Zはサンプル溶液にヒアルロニダーゼを加えて調製した測定用溶液の吸光度である)
から計算した。培養過程AからHについての結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
この表から明らかなように、培養過程AからHのそれぞれにおいて育成した同じアガリクス属キノコの菌体に関して、エチルアルコール抽出物のHI値は、熱水抽出物のHI値よりも明らかに大きい。培養過程G及びHの場合のように、フスマとマツ木片を組み合わせて添加した液体培地中で培養したときにその違いは特に顕著である。
【0028】
検定2
エチルアルコール抽出物及び熱水抽出物のそれぞれをアレルギー誘引細胞として好塩基球を用いて以下の手順に従ってアレルギー誘引細胞活性抑制率の検定を行った。検定試験を行うに当り、前もって次の準備液を調製した。
(1)基質溶液、5mM濃度
本液は、pH4.5の50mMクエン酸緩衝液50mlに、基質として4‐ニトロフェニル‐N‐アセチル−β‐D‐グルコサミド(シグマN9376)85.5mgを溶解して調製した。
(2)分離用混合液、pH7.7
本液は、500mlの水に、塩化ナトリウム3.42g、塩化カリウム201mg、硫酸マグネシウム7水和物98.6mg、グルコース504mg、緩衝剤(HEPES)3.0g、塩化カルシウム111mg及び牛血清アルブミン0.5gを溶解したのち、pH7.7に調整し、フィルター滅菌処理して調製した。
(3)反応停止液
本液は、炭酸ナトリウム1.06g/100ml及び炭酸水素ナトリウム0.84g/100mlを含むpH10.0の100mM炭酸緩衝液である。
(4)4μg/mlDNP−BSA溶液
本液は、リン酸緩衝液中に牛血清アルブミン(DNP−BSA、コスモバイオLG0017)1mg/10mlを含む溶液を同じリン酸緩衝液で25倍に希釈したのち、フィルター滅菌処理して調製した。
(5)1mg/mlマウス抗DNPIgE抗体(シグマD8406)溶液
(6)3mMケトチフェン溶液
本液は、10mlのリン酸緩衝液に、分子量425.5を有するケトチフェンフマレート(シグマK2628)12.8mgを溶解したのち、フィルター滅菌処理して調製した。
【0029】
24穴プレート2枚以上に接種することができる75cm2フラスコ1個を用いた検定操作を以下に記載した。
トリプシンを加えたフラスコを二酸化炭素インキュベータ内に5分間保持することによる壁からの細胞の剥離を促進するための、細胞のトリプシン処理をフラスコ中で行い、さらにフラスコを軽く叩いたのち、フラスコに液体培地を加え、遠心処理した。このようにトリプシン処理を施された細胞を約5mlの培地に懸濁させ、懸濁液中の細胞濃度が5×105細胞/mlになるように培地で希釈して調整したのち、1/3333容の準備液(5)を加え、振とうして最終濃度を0.3μg/mlとし細胞を充分に懸濁させた。細胞懸濁液を24穴プレートに1穴当り500μl容ずつ接種したのち、二酸化炭素インキュベータに一夜静置して細胞を感作した。
【0030】
インキュベータ内で一夜静置後の細胞を1ml容のリン酸緩衝液で2回洗浄し、次いでこれに準備液(2)の260μlをサンプル液あるいは対照のためのリン酸緩衝液20μlとともに加えたのち、二酸化炭素インキュベータ内で10分間インキュベートした。準備液(4)20μlを加え、二酸化炭素インキュベータ内でさらに1時間インキュベートしたのち、溶液をエッペンドルフチューブに回収し、遠心分離処理した。その上澄液100μlと準備液(1)400μlとを混合して37℃で30分間インキュベートしたのち、準備液(3)1mlを加え、波長405nmにおける分光光度法による測定をした。
【0031】
細胞に加える準備液(2)1300μlに、サンプル液100μlを予め混合した試料3個(n=3)を測定した。サンプル液が70%エチルアルコール抽出液の場合は、エチルアルコールの影響を抑えるために、サンプル液の体積を10μlに減らした。細胞に加えた残りの溶液に、吸光度測定用として準備液(4)及び準備液(3)を同様に混合して分光光度法による測定のバックグランドレベルとした。
【0032】
ヘキソサミニダーゼ遊離に対する抑制率IHex(%)を式
IHex(%)=[1−(a−b)/(c−d)]×100
(ここで、aはサンプルを細胞に加えた場合の吸光度、bは細胞なしのサンプルを加えた場合の吸光度、cはリン酸緩衝液又はリン酸緩衝液で5倍に希釈した70%エチルアルコールを細胞に混合したコントロールの吸光度、dは細胞なしでコントロールを加えた場合の吸光度である)
を用いて算出した。各培養過程AからHに対するIHex値の計算結果を表1に示す。
【0033】
表1に表されたIHex値から分るように、各培養過程における菌体組織エチルアルコール抽出物は、対応する熱水抽出物よりも強いアレルギー誘引細胞活性抑制率を示す。特に、培養過程Gのように培地にフスマとマツ木片を組み合わせて添加した培養過程では、その違いは顕著である。
【0034】
産業上の利用可能性
上記の実験結果は、アガリクス属キノコの菌体組織及び/又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物が、熱水抽出物に比べてヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性に対する抑制を示すことができる物質を大量に含んでおり、したがって、該抽出物が抗炎症剤及び抗アレルギー剤の有効成分として有用であるという結論を支持する。エチルアルコール抽出物は、人体に対する安全性には問題がなく、簡単かつ安価な方法で調製することができるため、該抽出物の応用性は、上記の医薬品に限られず、食品及び化粧品組成物全般への添加物としての応用も含む。
技術分野
本発明は、新規なヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤、その製造方法並びに抗炎症剤及び抗アレルギー剤の有効成分としてのその医学的応用に関するものである。
【0002】
背景技術
近年、日本国のみならず世界中のその他の多くの国々においては、アレルギー患者数において毎年10%程度増の予想割合で、アレルギー疾患が年々増加する顕著な傾向にある。いわば、アレルギー疾患は1種の文明病に属し、食事及び住居条件の変化により異種タンパク質を体内に取り込むことに起因すると考えられている。これに加えて、一般に知られるようになった花粉症に関する場合のように、潜在患者が表面化してきたことも、最近のアレルギー患者の増加の一因となっている。
【0003】
ヒアルロン酸は、知られているように、個体発生及び組織の恒常性並びに炎症反応や創傷治癒の過程において、極めて重要な役割を果たす生体高分子である。一方、ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸の加水分解を促進する酵素であって、哺乳動物の結合組織に多量に含有されている。ヒアルロニダーゼが人体内で起炎症作用を有するので、該ヒアルロニダーゼの活性を抑制することによって、炎症を軽減し得ることも知られている。このことが抗炎症剤の有効成分として有効なヒアルロニダーゼ活性抑制剤開発が近年要求される理由である。
【0004】
一方、ヒアルロン酸は天然保湿因子(NMF)として知られており、乳液やクリームなど各種の化粧品に処方されているため、ヒアルロニダーゼ活性抑制剤は、ヒアルロン酸の分解を防止するために、化粧品の成分としても利用できそうである。
【0005】
血液細胞中の好塩基球や組織中の肥満細胞などのアレルギー誘引細胞は、脱顆粒することによってβ‐ヘキソサミニダーゼなどの酵素やヒスタミンを遊離し、喘息、枯草熱、アトピー性湿疹などの即時的アレルギー反応を誘起することも知られている。したがって、好塩基球の脱顆粒を抑制することによって、アレルギー疾患を軽減することができるものと考えられるので、好塩基球脱顆粒活性に対して効果的な抑制剤は抗アレルギー剤として利用し得る。
【0006】
アガリクスと呼ばれる学名アガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)なる担子菌キノコは、ある種の薬用活性を有する健康食品の一種としての食用キノコであり、古くから広く用いられている。多種多様の成分がアガリクス属キノコの菌体中に含まれているが、情報は乏しいながら、アガリクス属キノコの菌体中に含まれている水溶性化合物がβ‐D‐グルカン、特にはβ‐(1,3)‐D‐グルカン及びβ‐(1,6)‐D‐グルカンであると同定され、抗がん作用を有することが報告されている。
【0007】
発明の開示
本発明は、上記した諸般の状況を考慮して、一方では新規なヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤及び効率の良いその製造方法を提供し、他方では抗炎症剤や抗アレルギー剤の有効成分としてのその抑制剤の新規な利用法を提案することを目的とする。
【0008】
ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性を抑制する新規な物質を開発するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは担子菌、特にはアガリクス属キノコの体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物が、ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性に対し強い抑制作用を示すこと及び該抽出物が抗炎症用及び抗アレルギー用医薬品の有効成分として使用できることを見出し、この発見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、アガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)あるいは一般的には担子菌の菌体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物であるヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤を提供する。菌体組織又は菌糸体組織がエチルアルコール抽出に供されるアガリクス属キノコの由来については自生した菌体、培養した菌体及び菌糸体を育成したものなど特に制限はない。該アガリクス属キノコの菌体の採取時期、生育年数、培養条件及び培養期間についても特に制限はない。
【0010】
発明を実施する最良の態様
アガリクス属キノコの菌体又は菌糸体のエチルアルコール抽出物に要求される活性は、培地の処方などの培養条件により一様ではないが、本発明においては、種々の培養方法によって培養されたどのような菌体も原料として用いることができる。アガリクス属には様々な種が含まれるが、それらのアガリクス属のキノコは本発明における原料として単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。当然のことであるが、それぞれ活性が高い異なった種類のアガリクス属キノコを組み合わせて使用することにより、エチルアルコール抽出物の所望の活性が相乗的に増強される。ヒアルロニダーゼ活性抑制作用が強い第一のアガリクス属キノコと、好塩基球脱顆粒活性抑制作用が強い第二のアガリクス属キノコを組み合わせて使用することは、複合薬剤としての抗炎症作用及び抗アレルギー作用の発現をもたらしている。
【0011】
本発明方法によれば、該ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制剤は、アガリクス属キノコの菌体組織又は菌糸体組織からエチルアルコール抽出物として得られる。該菌組織の抽出溶剤としてのエチルアルコールは、必ずしも無水アルコールに限るわけではなく、水や他の不純物を、その不純物が菌組織からの活性物質の抽出を妨げることがなければ、それぞれ限られた量で含んでいてもよい。抽出溶剤としてのエチルアルコールが水を含む場合は、その中の水分含有量は40重量%、好ましくは20重量%を超えてはならない。抽出処理に用いられるエチルアルコールの体積は、特に制限されないが、菌組織に含まれる非水溶性活性成分を完全に溶解するのに十分でなければならない。
【0012】
該菌体又は菌糸体を得るためにアガリクス属キノコの培養を行う場合には、フスマ、バガス、マツ木片、マツの実、コムギ、アワ、コメ、イネワラ、ムギワラなどの農業及び森林産物を単独又は2種以上組み合わせた粉砕紛の0.2〜3g/リットルを培地に添加する。培養はタンク培養法により通常3〜14日間行われる。
【0013】
培養されて液体培地から分離された菌体又は菌糸体を水で十分に洗浄して付着している液体培地や異物を除去したのち、切り刻んで小片とし、超音波処理及びホモジェナイザーなどの粉砕機を用いて破砕し、どろどろ状態にする。この破砕処理に先立って風乾や凍結乾燥を行ってから破砕することにより乾燥粉末を得ることにしてもよい。
【0014】
次いで、このようにして破砕された菌体組織又は菌糸体組織を、適量のエチルアルコールと混合し、混合物を室温ないしエチルアルコールの沸点までの温度においてかきまぜて菌体組織又は菌糸体組織中のアルコール可溶物を溶出した後、不溶物から抽出液を分離する。抽出可能物を完全に抽出するために、この抽出処理を数回繰り返すのが好ましい。
【0015】
このようにして得られたエチルアルコール抽出液は、ヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性阻害物質を含有している。必要であれば希釈あるいは濃縮して、該抽出物をそのまま抗炎症剤や抗アレルギー剤の有効成分として用いることができる。抽出液を噴霧乾燥又は凍結乾燥することによって、粉末を得ることができる。このようにして得た乾燥粉末は強いヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制を示す。
【0016】
従来から食用に供されているアガリクス属キノコの菌体組織又は菌糸体組織の成分であるため、上記のように製造されたエチルアルコール抽出物には人体に対する安全性の問題はまったくない。したがって、該エチルアルコール抽出物は、化粧品、医薬品、食品への添加物として単独で、あるいはそれ以外の添加物と組み合わせて用いることができる。アガリクス属キノコの抽出物の添加量は、所望の効果が得られるように、その特定の添加目的に依存するのが当然である。例えば化粧品への添加物としては、その添加量は固形分換算で2〜20重量ppmの範囲内である。経口投与薬剤中の添加物として用いる場合には、その投与量は通常固形分換算で、1日当り0.2〜2mg/kg体重の範囲内で、要すれば、分割投与する。
【0017】
アガリクス属キノコの抽出物を添加する医薬品は、投与目的や投与経路に応じて、錠剤、カプセル剤、注射剤、点滴剤、散剤、座剤、顆粒剤、軟膏剤、懸濁剤、乳剤その他を含む種々の薬剤形態にすることができる。
【0018】
アガリクス属キノコの菌体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物は、強い抗炎症作用及び抗アレルギー作用を示すので、その食品が該抽出物の抗炎症作用又は抗アレルギー作用を阻害しないものであれば、通常の食品に該抽出物を添加することによって、抗炎症作用や抗アレルギー作用を有する健康食品を製造することができる。この目的に適した食品や飲料の例としては、特に限定は無くパンなどのベーカリー食品、あめなどの菓子類、各種のインスタント食品、調味料などがある。
【0019】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例中におけるアガリクス属キノコの培養に用いた培地の基本組成は下記のとおりである。
硫酸マグネシウム7水和物 0.5g
硫酸鉄(II)7水和物 0.01g
酵母エキス 1.0g
大麦粉末 1.0g
シュクロース 30g
脱イオン水 1000ml
【0020】
実施例
アガリクス・ブラゼイの8とおりの培養過程A,B,C,D,E,F,G及びHを28から29℃で、窒素源、リン源及びカリウム源となるフスマ及びバガス並びにマツ木片から選ばれた補助添加物を各1g含む又は含まない、上記の基本組成の液体培地中で実施した。培地に湿量換算で菌体5gを接種した。これらの培養過程における補助添加物及び培養時間を下記の表1に示した。
【0021】
表示された培養時間が終了したのち、培地から育成した湿潤菌体10gを採取し、十分に水洗して菌体表面に付着している液体培地を除去した。その後、出力100W、超音波周波数50kHz、20℃において10秒間隔で5サイクル超音波処理して菌体を破砕した。菌体破砕物に4倍重量の無水エチルアルコールを添加し、室温で十分にかきまぜた。このようにして得た菌体破砕物の分散液を1500rpmで2分間遠心分離し、エチルアルコール抽出物として上澄液を捕集した。
【0022】
エチルアルコール抽出液を噴霧乾燥して、抽出物粉末約100mgを得た。比較のため、培養過程AからHで得た菌体について、抽出剤としての4倍重量の無水エチルアルコールを4倍容量の熱水に代えた以外は上記と同じ抽出工程を行い、菌体破砕物の水分散液を15分間煮沸することにより、熱水抽出物を得た。
【0023】
上記で得たエチルアルコール抽出液及び熱水抽出液をそれぞれ、以下の検定手順1及び2においてヒアルロニダーゼ活性抑制率及びアレルギー細胞活性抑制率の評価試験に供した。
【0024】
検定1
ウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼ(シグマ社製品)2.83mgをpH4.0の0.1M酢酸緩衝液1mlに溶解して調製した溶液0.025mlと、pH4.0の0.1M酢酸緩衝液に塩化ナトリウムを0.3M濃度に溶解して調製した溶液0.2mlとを混合して、その混合物を20分間37℃に保持した。該混合物を、上記で得たエチルアルコール抽出液又は熱水抽出液0.1mlをリン酸二水素カリウム及びリン酸水素二ナトリウムを含有するpH7の1/15Mリン酸緩衝液に溶解したものとさらに混合し、その混合物を37℃で20分間インキュベートした。次いで、該混合物と雄鶏とさか由来のヒアルロン酸カリウム塩(シグマ社製品)1.83mgを1M酢酸緩衝液1mlに溶解して調製した溶液0.2mlとをさらに混合し、20分間37℃に静置した。その後、該混合物と0.4N水酸化ナトリウム水溶液0.1ml及び0.8Mホウ酸ナトリウム水溶液0.1mlとさらに混合して3分間沸騰させ、冷却後さらに4‐ジメチルアミノベンズアルデヒド10g及び10N塩酸12.5mlを酢酸87.5mlに溶解したものを酢酸で10倍に希釈して調製した溶液3.0mlを添加した。20分間37℃に静置した後、この溶液の波長585nmにおける吸光度を分光光度法により測定した。
【0025】
ヒアルロニダーゼ活性抑制率HIを式
HI(%)=[(Y−X)−(Z−X)]/(Y−X)×100
(ここで、Xはヒアルロニダーゼもサンプル溶液を含まない基準対照溶液の吸光度、Yはヒアルロニダーゼのみを含む溶液の吸光度、Zはサンプル溶液にヒアルロニダーゼを加えて調製した測定用溶液の吸光度である)
から計算した。培養過程AからHについての結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
この表から明らかなように、培養過程AからHのそれぞれにおいて育成した同じアガリクス属キノコの菌体に関して、エチルアルコール抽出物のHI値は、熱水抽出物のHI値よりも明らかに大きい。培養過程G及びHの場合のように、フスマとマツ木片を組み合わせて添加した液体培地中で培養したときにその違いは特に顕著である。
【0028】
検定2
エチルアルコール抽出物及び熱水抽出物のそれぞれをアレルギー誘引細胞として好塩基球を用いて以下の手順に従ってアレルギー誘引細胞活性抑制率の検定を行った。検定試験を行うに当り、前もって次の準備液を調製した。
(1)基質溶液、5mM濃度
本液は、pH4.5の50mMクエン酸緩衝液50mlに、基質として4‐ニトロフェニル‐N‐アセチル−β‐D‐グルコサミド(シグマN9376)85.5mgを溶解して調製した。
(2)分離用混合液、pH7.7
本液は、500mlの水に、塩化ナトリウム3.42g、塩化カリウム201mg、硫酸マグネシウム7水和物98.6mg、グルコース504mg、緩衝剤(HEPES)3.0g、塩化カルシウム111mg及び牛血清アルブミン0.5gを溶解したのち、pH7.7に調整し、フィルター滅菌処理して調製した。
(3)反応停止液
本液は、炭酸ナトリウム1.06g/100ml及び炭酸水素ナトリウム0.84g/100mlを含むpH10.0の100mM炭酸緩衝液である。
(4)4μg/mlDNP−BSA溶液
本液は、リン酸緩衝液中に牛血清アルブミン(DNP−BSA、コスモバイオLG0017)1mg/10mlを含む溶液を同じリン酸緩衝液で25倍に希釈したのち、フィルター滅菌処理して調製した。
(5)1mg/mlマウス抗DNPIgE抗体(シグマD8406)溶液
(6)3mMケトチフェン溶液
本液は、10mlのリン酸緩衝液に、分子量425.5を有するケトチフェンフマレート(シグマK2628)12.8mgを溶解したのち、フィルター滅菌処理して調製した。
【0029】
24穴プレート2枚以上に接種することができる75cm2フラスコ1個を用いた検定操作を以下に記載した。
トリプシンを加えたフラスコを二酸化炭素インキュベータ内に5分間保持することによる壁からの細胞の剥離を促進するための、細胞のトリプシン処理をフラスコ中で行い、さらにフラスコを軽く叩いたのち、フラスコに液体培地を加え、遠心処理した。このようにトリプシン処理を施された細胞を約5mlの培地に懸濁させ、懸濁液中の細胞濃度が5×105細胞/mlになるように培地で希釈して調整したのち、1/3333容の準備液(5)を加え、振とうして最終濃度を0.3μg/mlとし細胞を充分に懸濁させた。細胞懸濁液を24穴プレートに1穴当り500μl容ずつ接種したのち、二酸化炭素インキュベータに一夜静置して細胞を感作した。
【0030】
インキュベータ内で一夜静置後の細胞を1ml容のリン酸緩衝液で2回洗浄し、次いでこれに準備液(2)の260μlをサンプル液あるいは対照のためのリン酸緩衝液20μlとともに加えたのち、二酸化炭素インキュベータ内で10分間インキュベートした。準備液(4)20μlを加え、二酸化炭素インキュベータ内でさらに1時間インキュベートしたのち、溶液をエッペンドルフチューブに回収し、遠心分離処理した。その上澄液100μlと準備液(1)400μlとを混合して37℃で30分間インキュベートしたのち、準備液(3)1mlを加え、波長405nmにおける分光光度法による測定をした。
【0031】
細胞に加える準備液(2)1300μlに、サンプル液100μlを予め混合した試料3個(n=3)を測定した。サンプル液が70%エチルアルコール抽出液の場合は、エチルアルコールの影響を抑えるために、サンプル液の体積を10μlに減らした。細胞に加えた残りの溶液に、吸光度測定用として準備液(4)及び準備液(3)を同様に混合して分光光度法による測定のバックグランドレベルとした。
【0032】
ヘキソサミニダーゼ遊離に対する抑制率IHex(%)を式
IHex(%)=[1−(a−b)/(c−d)]×100
(ここで、aはサンプルを細胞に加えた場合の吸光度、bは細胞なしのサンプルを加えた場合の吸光度、cはリン酸緩衝液又はリン酸緩衝液で5倍に希釈した70%エチルアルコールを細胞に混合したコントロールの吸光度、dは細胞なしでコントロールを加えた場合の吸光度である)
を用いて算出した。各培養過程AからHに対するIHex値の計算結果を表1に示す。
【0033】
表1に表されたIHex値から分るように、各培養過程における菌体組織エチルアルコール抽出物は、対応する熱水抽出物よりも強いアレルギー誘引細胞活性抑制率を示す。特に、培養過程Gのように培地にフスマとマツ木片を組み合わせて添加した培養過程では、その違いは顕著である。
【0034】
産業上の利用可能性
上記の実験結果は、アガリクス属キノコの菌体組織及び/又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物が、熱水抽出物に比べてヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性に対する抑制を示すことができる物質を大量に含んでおり、したがって、該抽出物が抗炎症剤及び抗アレルギー剤の有効成分として有用であるという結論を支持する。エチルアルコール抽出物は、人体に対する安全性には問題がなく、簡単かつ安価な方法で調製することができるため、該抽出物の応用性は、上記の医薬品に限られず、食品及び化粧品組成物全般への添加物としての応用も含む。
Claims (6)
- アガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazei)キノコの菌体組織又は菌糸体組織のエチルアルコール抽出物であるヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質。
- (a)アガリクス・ブラゼイ(Agaricus Blazei)キノコの菌体組織又は菌糸体組織を破砕し、菌組織の破砕物を得る工程、
(b)該菌組織の破砕物にエチルアルコールを加え、エチルアルコール抽出液を得る工程、及び
(c)エチルアルコール抽出液からエチルアルコールの少なくとも一部を除去する工程
を包含してなるヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質の製造方法。 - 該キノコの菌体又は菌糸体が該キノコを人工培地において培養することによって得られる請求の範囲第2項記載のヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質の製造方法。
- 該人工培地がフスマとマツ木片を1リットル当りそれぞれ0.2〜3gの範囲の量で組み合わせて含む請求の範囲第3項記載のヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質の製造方法。
- 請求の範囲第1項に定義したヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質を患者に投与することを包含する患者の治療的抗炎症処置方法。
- 請求の範囲第1項に定義したヒアルロニダーゼ活性及びアレルギー誘引細胞活性抑制物質を患者に投与することを包含する患者の治療的抗アレルギー処置方法。
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