JP4647067B2 - 担子菌培養物由来の組成物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は担子菌培養物由来の組成物及び用途に関する。さらに詳しく言えば、大豆などのイソフラボン類含有材料が存在する培地中でβ−グルコシダ−ゼ活性を有する担子菌を培養して得られるイソフラボン類のアグリコンと担子菌の培養生成物を含む物質と、別途担子菌培養物を培養して得られる生成物との2種類の担子菌培養物由来物質を含有し、各々の単独よりも生理活性が相乗的に増加している組成物、その用途である健康食品、抗腫瘍剤及びペットフード、並びに腫瘍細胞増殖抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大豆に含まれるイソフラボンは、乳癌、大腸癌、前立腺癌等の発癌リスクを軽減し、癌の防御に大きく関与していることは既に多数報告されている。大豆イソフラボンのこれらの生理作用は、その自然界での通常の存在形態であるグルコ−ス配糖体のアグリコンに基く作用であることは明らかとなっており、本発明者らは、先にイソフラボン類を含有する材料とβ−グルコシダ−ゼ活性を有する担子菌をとを培養し、担子菌の生産するβ−グルコシダ−ゼの作用によってイソフラボン配糖体を分解して、イソフラボン類のアグリコン、特にゲニステインと担子菌の培養生成物を含む生理活性を有する物質(以下物質(G)ということがある。)を開発した(特願平11-356267号)。
【0003】
前記の物質(G)は、イソフラボン類のアグリコン、特にゲニステインの生理活性と担子菌の生理活性が相乗的に増加しており、ゲニステイン単独の場合よりも顕著な腫瘍新生血管阻害作用が認められられた。このことから、前記発明物質はゲニステインと担子菌培養物との単なる混合物ではなく、化学的に一体の物質または未知の何らかの成分が存在していると考えられる。
【0004】
本発明者らはその後、前記物質(G)には腫瘍新生血管阻害作用以外に顕著な腫瘍細胞増殖抑制作用があり、その作用は腫瘍細胞のアポト−シス誘導に基くものであることを確認した。ゲニステインも腫瘍細胞のアポト−シスを誘導することは既に知られているが(例えばCancer Res. 58, 5231-38, 1998等)、前述のとおり前記物質(G)はゲニステインと担子菌培養物との単なる混合物ではないと考えられるから、腫瘍細胞のアポト−シス誘導効果は周知のゲニステインだけの作用によるものではなく、前記物質に特有のものと考えられる。
【0005】
担子菌、例えば椎茸菌やサルノコシカケ等の菌糸体やその培養物は、免疫賦活作用や抗腫瘍作用等の生理活性作用を有することが知られ、一部は抗癌剤等に使用されている。本発明者らも担子菌を培養して得られた培養生成物を素材とした製品を開発し(特開平1-153701号、特開平8-259602号、特願平11-283223号公報等)、各種の試験等を重ねてその生理活性作用、特に腫瘍細胞に対する種々の効果を確認して公表している(例えば、ニュ−フ−ド・インダストリ−,35巻,2号,46〜48(1993)、バイオインダストリ−,第10巻,9号,21〜24(1993)、ニュ−フ−ド・インダストリ−,37巻,2号,22〜26(1995)等)。
【0006】
担子菌培養物を素材とする培養生成物(以下、物質(A)と略すことがある。)が抗腫瘍作用を持つことは上記のとおり既に確認されているが、腫瘍細胞の増殖抑制に関連する腫瘍細胞のアポト−シス誘導作用は担子菌培養物(物質(A))には顕著には認められなかった。
しかし、本発明者らは前記物質(G)と、別途培養して得られた担子菌培養物である物質(A)とを併用したときに腫瘍細胞の顕著なアポト−シス誘導作用を発現することを見出した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、イソフラボン類含有材料が存在する培地中で担子菌を培養して得られる物質(G)と、別途担子菌を培養して得られる物質(A)とを含有する、各々の生理活性が増強された組成物、及その組成物の用途である健康食品、抗腫瘍剤、ペットフード、及び腫瘍細胞増殖抑制方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は下記の1〜9の組成物、10の健康食品、11のペットフード、12の抗腫瘍剤に関する。
1)イソフラボン類を含有する材料が存在する培地中でβ−グルコシダ−ゼ活性を有する担子菌を培養して得られ、イソフラボン類のアグリコンと担子菌の培養生成物を含む物質(G)と、植物抽出液原料の存在下で担子菌を通気撹拌培養した後、固形分を除去し、ついで液体部分を乾燥して得られる物質(A)とを含有する、物質(G)及び(A)の生理活性が相乗的に増加している組成物。
2)イソフラボン類を含有する材料及びβーグルコシダ−ゼが存在する培地中で担子菌を培養して得られる、イソフラボン類のアグリコンと担子菌の培養生成物を含む物質(G1)と、担子菌を培養して得られる物質(A)とを含有する、物質(G1)及び(A)の生理活性が相乗的に増加している組成物。
3)イソフラボン類のアグリコンがゲニステインである前記1または2に記載の組成物。
4)生理活性作用が抗腫瘍作用である前記1または2に記載の組成物。
5)抗腫瘍作用が腫瘍新生血管阻害作用である前記4記載の組成物。
6)抗腫瘍作用が腫瘍細胞増殖抑制作用である前記4記載の組成物。
7)腫瘍細胞増殖抑制作用が腫瘍細胞のアポト−シス誘導作用である前記6記載の組成物。
8)イソフラボン類を含有する材料が、大豆種子、大豆種子由来の加工製品またはクズの根である前記1または2に記載の組成物。
【0009】
9)物質(A)が、植物抽出液原料の存在下で椎茸菌または霊芝菌を通気撹拌培養した後、ついで液体部分を乾燥して得られる物質である前記1または2に記載の組成物。
10)前記1乃至9に記載の組成物を含有する健康食品。
11)前記1乃至9に記載の組成物を有効成分とするペットフード。
12)前記1乃至9に記載の組成物を有効成分とする抗腫瘍剤。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の抗腫瘍作用を有する組成物の一方の原料である物質(G)は、既に特願平11-356267号明細書に詳細に説明した方法によって得ることができる。
また、本発明の組成物の他方の原料である担子菌培養生成物である物質(A)は、例えば特開平1-153701号公報、特開平8-259602号、特願平11-283223号明細書等に記載の方法によって得ることができる。
【0011】
本発明の組成物は、物質(G)と、別途培養して得られた担子菌培養物である物質(A)とが共存した状態にあるものである。「別途培養」とは、物質(G)自体の成分の一部に既に含有されている、担子菌培養によって得られた物質とは別途に培養して得た担子菌培養生成物を指す意味であり、「共存した状態」とは両者の単なる混合に止まらず、化学的な結合をも含むあらゆる物理的、化学的共存状態を指すものである。
【0012】
本発明の組成物の原料である、物質(G)の製造に使用するβ−グルコシダ−ゼ活性を有する担子菌と、物質(A)の担子菌培養物に使用する担子菌とは、同一であっても別種であっても差支えない。
本発明による物質(G)と物質(A)の併用の形態は特に限定されず、両物質を別途に所定量ずつ投与してもよいし、予め両物質を混合したものを投与してもよい。
両物質の混合割合は、両者の併用による効果が認められる範囲であればよく、通常、物質(G)5〜95質量%が、物質(A)が95〜5質量%であり、好ましくは物質(G)が25〜75質量%、物質(A)が75〜25質量%である。物質(G)の割合が5質量%未満でも、95質量%を超えても併用による効果が認められない。
本発明によるの物質(G)と物質(A)に併用は、食品、医薬品等として主として経口で用いられるが、その摂取量は、年齢、体重、症状、目的とする治療効果、投与方法等により異なり、通常、成人一人当たり、一回につき、100mg〜5g程度(乾燥物換算)である。
本発明により物質(G)と物質(A)物質を投与する際には、一般に錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等として用いられる。造粒、錠剤化あるいはシロップ剤、塗布剤とする際に、必要により適宜の補助資材(澱粉類、デキストリン、甘味剤類、色素、香料等)を使用することもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例に基き説明するが、本発明はこの実施例により何等限定されるものではない。
【0014】
実施例1:
(1)物質(G)
特願平11−356267号明細書の実施例1記載の方法により、イソフラボン40%含有大豆製品(米国、AHD社製)の抽出液、(株)アミノアップ化学で、マルツエキス寒天培地上に25℃で保管した霊芝菌(Ganoderma lucidum)を使用し、
マルツエキス(オリエンタル酵母(株)製)(10.00g)、酵母エキス(味の素(株))(1.25g)、酒石酸アンモニウム(昭和(株)製)(1.00g)、水1.0リットル(L)からなる培地をオ−トクレ−ブで滅菌した後、4℃で保管したもの(冷却したもの)を用い、この培地(pH5.5)に霊芝菌(Ganoderma lucidum)を植菌して25℃、130rpmで振とう培養した。この培養の間、2日ごとに培養液のβ−グルコシダ−ゼ活性を測定し、酵素活性が最も高い時点で細か砕いたイソフラボン40%含有大豆製品(米国、AHD社製)を培地の2.5%の濃度で培地に添加し、更に培養を続けた。ゲニステイン及びゲニスチン含量を測定し、ゲニスチンが全てゲニステインに変換されたことが確認された時点で培養を終了した。培養終了後、培養液全体を85℃で60分間加熱処理して酵素反応を停止させ、同時に殺菌処理した。次いで凍結乾燥して乾燥粉末化して物質(G)を得た。
【0015】
なお、培養液のβ−グルコシダ−ゼ活性は、β−グルコシダ−ゼ標品(オリエンタル酵母(株)製、酵母由来)を用い、p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド(シグマ社製)と反応させる方法を利用して、400nm吸光度を測定することにより測定した。また、培養液中のイソフラボンの生成量は、イソフラボン標品(ゲニスチン、ゲニステイン、シグマ社製)を使用し、Franke, A.A.らの方法(J. Agric. Food Chem. 42:1905-1913, 1994)に準拠して、ODSカラム(TSKgel−80Tm,4.5×150mm)により、溶離液アセトニトリル:水:酢酸(10/90/0.1)→(40/60/0.1のgradientをかけて0.8ml/minで溶出し、260nmの吸収により測定した。
【0016】
(2)物質(A)
椎茸菌(Lentinus edodes)を液体培地(米糠抽出物、マルト−ス、ペプトン等からなる)に植菌して予備的通気培養した(27℃、7日間)後、同組成の液体培地中でこの培養液を更に通気撹拌培養した(23℃、9日間)。培養終了後、培養液・菌糸体混合物に酵素剤(アミラ−ゼ、セルラ−ゼ等)を加えて反応させた後、全体を加熱して酵素を失活させ、遠心分離して液体部を回収したのちこれを凍結乾燥して淡黄色の粉末である物質(A)を得た。
【0017】
試験1:物質(G)と物質(A)の併用による効果(1):3LLマウス肺ガン細胞に対する効果(in vivo)
7週令の雄性C57BL/6マウス32匹を1週間予備飼育した後、全てのマウスに3LL肺ガン細胞をPBS中に106個/mlの濃度で0.2ml皮下移植した。移植後1日目から、それぞれ10%物質(A)投与群(A群)、10%物質(G)投与群(G群)、10%物質(A)と10%物質(G)(A+G)の併用投与群および非投与の対照群の4群に分けた。サンプルは水溶液として毎日0.1ml/10g体重の割合で経口的に摂取させた。腫瘍移植後、28日間飼育し、1週間後に腫瘍サイズを測定した。その結果を図1に示す。また、飼育終了時に解剖し、血液、腹腔滲出細胞を採取し、血液中の血管内皮細胞成長促進因子(VEGF)含有量、腹腔滲出細胞の一酸化窒素(NO)産生量およびIL−12産生能を調べた。
【0018】
図1から明らかなように、投与10日目には各群間に差は見られなかったが、14日目にG群およびA+G群では腫瘍サイズが有意に小さく腫瘍の増殖が抑えられていた。投与期間中の腫瘍サイズの変動はA+G群が最も小さく、物質(A)と物質(G)の併用が腫瘍増殖に対して相乗的に働き、抗腫瘍効果を発揮することが判明した。
【0019】
腫瘍細胞移植後28日目にマウスを解剖し、腫瘍を摘出し、腫瘍細胞の質量を測定した。その結果は図2に示すように、それぞれの投与により腫瘍質量は対照群に比べ有意に小さくなり腫瘍細胞増殖が抑えられることが示されたが、A+G群についてはA群、G群よりも腫瘍細胞が小さく、腫瘍の増殖を最も強く抑えていることが明らかとなった。このことから、物質(A)と物質(G)の併用が抗腫瘍効果を相乗的に高めていることが明らかになった。
【0020】
物質(A)と物質(G)の併用が物質(G)の血管新生抑制効果を相乗的に高めるかどうかを明らかにするため、3LLマウス肺ガン細胞を担ガンしたマウスモデルにおいて血清中の血管内皮細胞成長因子の量を調べた。VEGFは血管新生時に産出される成長因子で、腫瘍血管新生時には腫瘍細胞が多量に産出することが知られており、担ガン時に血清中のVEGFが少なければ腫瘍血管の新生が抑制されているということができる。腫瘍細胞移植後28日目にマウスを解剖し、血液を採取した。採取した血液から定法に従い血清を分離し、血清中のVEGF含量を市販のマウスVEGF ELISAキット(R&D System Company)を用いて測定した。その結果は図3に示す通りであり、血清中のVEGF濃度はA+G群で最も低く、対照群に対して有意に低い値を示した。このことから物質(A)と物質(G)の併用が血管新生抑制効果を相乗的に高めることが明らかになった。
【0021】
細胞移植後28日目にマウスを解剖して腹腔内に冷PBS(Phosphate Buffered Saline)を注入して、腹部をマッサ−ジした後、腹腔内の溶液を回収し腹腔滲出細胞(PEC)を採取した。得られたPECはLPS(微生物製剤)を最終濃度500ng/mlで含むPRMI 1640培地中で36時間培養し、グリース(Gries)試薬を用いてNO産出量を調べた。その結果は図4に示すように、対照群(C)に比べA、G各群及びA+G群においてNO産出量は高かったが、A+G群で最も高かった。
【0022】
試験2:物質(G)と物質(A)併用による効果(2):腹腔滲出細胞(PEC)によるIL−12産生
物質(A)の免疫賦活作用に対する物質(G)併用の相乗効果を明らかにするため、腹腔滲出細胞(PEC)によるIL−12産生効果を調べた。前述の方法によりPECを調製し、PEC細胞による培養液中へのIL−12放出量をマウスIL−12 ELISAキット(R&D System Company)を用いて調べた。その結果は図5に示すように、対照群(C)では検出限界以下であったのに対し、A、G各群及びA+G群においてIL−12産出量が多く、A+G群でIL−12産出は最も多かった。
【0023】
試験3:物質(G)と物質(A)併用による効果(3):ヒト前立腺ガン細胞株PC−3による血管新生抑制効果
ヒト前立腺ガン細胞株のPC−3を用いて、その培養上清中のVEGF発現量を調べた。PC−3細胞は96穴のプレ−トを用い、20,000個/mlの濃度で10%FBS含有RPMI 1640培地中で24時間培養した。物質(A)及び物質(G)のサンプルは10%DMSOに溶解し、最終濃度250μg/mlとなるように加え、更に48時間培養した。培養上清中のVEGFはELISA法(マウスVEGF ELISAキット:R&D System Company社製)及びウエスタンブロッティング法により測定した。ELISA法の結果は図6に示す。培養上清中に放出されるVEGFはそれぞれ物質(A)及び物質(G)処理により減少したが、物質(A)+物質(G)処理では更に低い値を示し、物質(A)と物質(G)の併用による血管新生抑制の相乗効果が明らかになった。
ウエスタンブロッティング法で得られた電気泳動像をコンピュ−タソフトウエア(NIH Image)により画像処理し、発現量を数値化して抑制率を算出した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
表1に示すように、ウエスタンブロッティング法による結果でも物質(A)と物質(G)の併用により相乗的な効果が認めらた。
【0025】
試験4:物質(G)と物質(A)併用による効果(4):ガン細胞のアポト−シス誘導作用
ヒト前立腺ガン細胞株PC−3培養上清中のp21発現を調べた。p21は細胞の増殖、分化およびアポト−シスに関与し、修復不能なDNA損傷を持つ細胞をアポト−シスへと誘導するポリペプチドである。p21が多く発現していることは、ガン細胞をアポト−シスへ誘導する活性が強いことを意味する。
前記のように培養したPC−3細胞の、培養上清中に発現したp21をウエスタンブロッティング法により調べ、前記した方法により発現量を数値化し、その誘導活性を対照群に対する割合で表2に示した。
【0026】
【表2】
表2から明らかなとおり、物質(A)と物質(G)の併用により誘導活性は対照群の約4倍となり、相乗的にアポト−シスを誘導していることが明らかとなった。
【0027】
試験5:物質(G)と物質(A)併用による効果(5):ヌ−ドマウスによるin vivo試験
ヌ−ドマウスにヒト由来の前立腺ガン細胞株PC−3を移植し、腫瘍細胞と腹腔滲出細胞におけるNO産生能を調べた。ヌ−ドマウスは先天的に胸腺を欠損しており、特異的免疫機構が欠如しているため異種動物の細胞を移植でき、ヒトのガン細胞株の動物実験に有用である。
32匹の5週令の雄性ヌ−ドマウスを1週間予備飼育した後、対照群、10%物質(A)投与群、10%物質(G)投与群、及び物質(A)、物質(G)各10%投与群の4群に分け、PBS中に3×106個/mlの濃度でPC−3細胞を皮下移植した。19日間の飼育期間中に腫瘍サイズを測定し、飼育期間終了後に腹腔細胞を採取した。
【0028】
飼育期間中の腫瘍サイズの変化を図7に示す。ガン細胞移植後、腫瘍サイズは徐々に増加したが、物質(A)、物質(G)投与により腫瘍増殖は抑えられ、物質(A)+物質(G)投与群では最大の腫瘍の増殖抑制を示した。
飼育期間終了時に、マウスの腹腔内に冷PBSを注入して腹腔滲出細胞液を回収した。得られた腹腔滲出細胞(PEC)を培養して、培養上清中の一酸化窒素(NO)濃度をグリース(Gries)法により調べた。結果を図8に示す。
【0029】
PECのNO産生は物質(A)+物質(G)投与群で明らかに高い値を示し、PECのNO産生に対して物質(A)と物質(G)の併用が相乗的に作用したことが明らかである。すなわち、物質(A)と物質(G)の併用は相乗的に免疫賦活作用を示すことが確認された。
以上の結果から、物質(A)と物質(G)の併用は3LL(マウス肺ガン細胞)及びヒト前立腺ガン細胞に対して、相乗的な血管新生抑制効果と免疫賦活作用を示すことがインビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)双方の試験により明らかとなり、物質(A)と物質(G)の併用(組成物)により高い抗腫瘍効果を示すことが明らかである。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、イソフラボン類を含有する材料が存在する培地中でβ−グルコシダ−ゼ活性を有する担子菌を培養して得られ、イソフラボン類のアグリコンと担子菌の培養生成物を含む物質(G)、及び植物抽出液原料の存在下で担子菌を通気撹拌培養した後、固形分を除去し、ついで液体部分を乾燥して得られる物質(A)を併用することにより優れた生理活性、特に抗腫瘍作用を有する組成物を得ることができる。物質(G)も、物質(A)も安価な材料を用いて容易に製造することができ、いずれも人類が古来より食用に供してきた茸、大豆等を原料とするので、摂取の上で安全上の問題はなく、抗腫瘍剤としては勿論、健康食品あるいは動物、水産養殖用の飼料、ペットフード等としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 3LLマウス肺ガン腫瘍細胞の大きさに対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図2】 3LLマウス肺ガン腫瘍質量に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図3】 3LL担がんマウスの血清中の血管内皮細胞成長因子(VEGF)の濃度に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図4】 3LL担がんマウスにおけるマクロファージニよるNO産生に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図5】 3LL担がんマウスにおける腹腔滲出細胞(PEC)によるIL−12産生に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図6】 ヒト前立腺ガン細胞株PC−3による血管新生に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図7】 PC−3担がんヌードマウスの腫瘍増殖に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
【図8】 PC−3担がんヌードマウスにおける腹腔滲出細胞(PEC)によるIL−12産生に対する本発明による物質(G)と物質(A)の併用による効果を示すグラフである。
Claims (9)
- イソフラボン類を含有する材料が存在する培地中で霊芝菌を培養して得られ、イソフラボン類のアグリコンと霊芝菌の培養生成物を含む物質(G)と、植物抽出液原料の存在下で椎茸菌を通気撹拌培養した後、固形分を除去し、ついで液体部分を乾燥して得られる物質(A)とを含有する、物質(G)及び(A)の抗腫瘍活性が相乗的に増加している組成物。
- イソフラボン類のアグリコンがゲニステインである請求項1に記載の組成物。
- 抗腫瘍作用が腫瘍新生血管阻害作用である請求項1記載の組成物。
- 抗腫瘍作用が腫瘍細胞増殖抑制作用である請求項1記載の組成物。
- 腫瘍細胞増殖抑制作用が腫瘍細胞のアポト−シス誘導作用である請求項4記載の組成物。
- イソフラボン類を含有する材料が、大豆種子、大豆種子由来の加工製品またはクズの根である請求項1に記載の組成物。
- 請求項1乃至6に記載の組成物を含有する健康食品。
- 請求項1乃至6に記載の組成物を有効成分とするペットフード。
- 請求項1乃至6に記載の組成物を有効成分とする抗腫瘍剤。
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