JP2004362802A - 燃料電池用電極およびその製造方法 - Google Patents

燃料電池用電極およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価で、かつカソード極で起こる酸素の還元反応を促進し得るカソード触媒を実現し、これにより固体高分子型燃料電池の実用化を促す。
【解決手段】窒素原子および/またはホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を基材とする燃料電池用電極である。含窒素化合物と熱硬化性樹脂の前駆体とを加熱反応させて窒素化合物含有熱硬化性樹脂を得る重合工程と、得られた窒素化合物含有熱硬化性樹脂を400〜1500℃の温度で熱処理する炭素化工程と、炭素化された窒素化合物含有熱硬化性樹脂を微粉砕して、窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得る粉砕工程と、を包含する燃料電池用電極の製造方法である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用電極およびその製造方法に関し、詳しくは、貴金属触媒を用いないか、もしくはその使用量を低下させ、触媒担体自体に高活性な酸素還元触媒能を持たせた燃料電池用電極およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高効率、無公害の燃料電池の実用化は、地球温暖化、環境汚染問題に対する重要な対処手段である。とくに昨今、電気自動車(FCEV)や定置用電熱併供システム(CG−FC)に用いられる固体高分子型燃料電池は、低コスト化の可能性が大きく、広く研究、開発競争が展開されている。
【0003】
かかる固体高分子型燃料電池において、その反応は多孔質ガス拡散電極内で起こる。十分な電流密度I(A/投影電極面積)を得るために、その電極としては、比表面積が大きくかつ導電性のあるカーボンブラックを多孔質構造体兼触媒担体としたものが一般に使用されている。また、その触媒としては白金(Pt)あるいは白金合金系触媒(Pt−Fe、Pt−Cr、Pt−Ru)が使用され、これら貴金属触媒が担体に高分散担持(粒径2〜数十nm)されている。
【0004】
固体高分子型燃料電池では、これまで特に、カソード極で起こる酸素の還元反応が非常に起こりにくいため、触媒である白金が多量に投入されてきた(例えば、1mg/cm)。このため、固体高分子型燃料電池のコストに占める電極触媒のコストが高くなっていた。よって、固体高分子型燃料電池の実用化のためには、白金のような貴金属触媒を用いないか、もしくはその使用量を低下させることが重要な課題となっている。これを克服するために、超少量白金触媒担持法の開発や、有機金属化合物を用いる方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、固体高分子型燃料電池の電極触媒製造のコストは依然として高いものであり、低価格でかつ高活性な電極触媒の開発が強く望まれている。
【0006】
そこで本発明の目的は、安価で、かつカソード極で起こる酸素の還元反応を促進し得るカソード触媒を実現し、これにより固体高分子型燃料電池の実用化を促すことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来白金を高分散に担持させる触媒担体として用いられてきた炭素材料自身に所定の条件下で酸素還元触媒能を持たせることにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の燃料電池用電極は、窒素原子および/またはホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を基材とすることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の燃料電池用電極においては、好ましくは窒素原子および/またはホウ素原子のドープ量が0.5〜20原子%である。
【0010】
また、本発明は、含窒素化合物と熱硬化性樹脂の前駆体とを加熱反応させて窒素化合物含有熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
得られた窒素化合物含有熱硬化性樹脂を400〜1500℃の温度で熱処理する炭素化工程と、
炭素化された窒素化合物含有熱硬化性樹脂を微粉砕して、窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得る粉砕工程と、
を包含することを特徴とする燃料電池用電極の製造方法に関する。
【0011】
本発明の上記製造方法においては、前記含窒素化合物としてフタロシアニンを用い、前記熱硬化性樹脂としてフラン樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、フルフリルアルコールまたはレゾール型フェノール樹脂のメタノール溶液に、含窒素化合物と、含ホウ素化合物とを溶解させ、メタノール亜臨界又は超臨界条件下で重合反応を行う重合工程と、
得られた重合物微粒子を400〜1500℃の温度で熱処理して、窒素原子およびホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得る炭素化工程と、
を包含することを特徴とする燃料電池用電極の製造方法に関する。
【0013】
本発明の上記製造方法においては、前記含ホウ素化合物としてBFメタノール錯体を用いることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明に係るカーボンアロイ微粒子は、14族の炭素原子の両隣に位置するホウ素原子および窒素原子と炭素原子のいずれか一方、又は双方とのカーボンアロイ微粒子である。
【0015】
かかるカーボンアロイ微粒子により、これまで白金を高分散に担持させる触媒担体として用いられてきた炭素材料自身が酸素還元触媒能を有し、燃料電池用電極として好適に使用することが可能となる。
【0016】
本発明に係るカーボンアロイ微粒子においては、窒素原子またはホウ素原子のドープ量が0.5〜20原子%であるときに、酸素還元に関して良好な電極活性を示す。また、窒素原子とホウ素原子とを同時にドープしたときには、両者の相互作用により、より一層高い電極活性を示す。また、窒素原子(N)とホウ素(B)原子の双方をドープする場合には、原子比(B/N)は、好ましくは0.2〜0.4であり、また原子比((B+N)/C)は、好ましくは0.05〜0.3である。これら原子比の範囲内において両原子は良好に相互作用し、活性の高いカーボンアロイ粒子を得ることができる。
【0017】
窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子は、以下のようにして製造することができる。まず、窒素源としての、フタロシアニン、アクリロニトリル、EDTA、メラミンなどの含窒素化合物と、フラン樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の前駆体とを混合し、加熱反応させて、窒素化合物含有熱硬化性樹脂を得る。例えば、含窒素化合物としてフタロシアンを用い、熱硬化性樹脂としてフラン樹脂を用いる場合には、これらの混合物にトリフルオロ酢酸等の酸を添加し、好ましくは80〜200℃の範囲内の温度で加熱して、重合反応させることで、フタロシアニン含有フラン樹脂を得ることができる。
【0018】
得られたフタロシアニン含有フラン樹脂を、窒素やヘリウム等の不活性雰囲気下、400〜1500℃、好ましくは500〜1200℃の温度で熱処理して炭素化する。次いで、好ましくは遊星型ボールミル等のボールミルで、微粉砕することにより、窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得ることができる。このようにして得られた微粒子は燃料電池用電極としてそのまま、あるいは少量の白金、白金合金系触媒、N錯体触媒などを担持させて使用することができる。
【0019】
また、窒素原子およびホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子は、以下のようにして製造することができる。まず、フルフリルアルコールまたはレゾール型フェノール樹脂のメタノール溶液に、上記と同様の含窒素化合物と、ホウ素源としての、BFメタノール錯体またはBFテトラヒドロフラン(THF)錯体等の含ホウ素化合物とを溶解して、重合反応を行う。例えば、フルフリルアルコールのメタノール溶液、含窒素化合物としてのメラミン、および含ホウ素化合物としてのBFメタノール錯体を用いた場合には、200〜350℃のメタノール亜臨界または超臨界条件下で、フルフリルアルコールの重合反応を行うことができる。
【0020】
得られた重合物微粒子を窒素やヘリウム等の不活性雰囲気下、400〜1500℃、好ましくは500〜1200℃の温度で熱処理して炭素化することにより、窒素原子およびホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得ることができる。このようにして得た微粒子は燃料電池用電極としてそのまま、あるは少量の白金、白金合金系触媒、N錯体触媒などを担持させて使用することができる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(実施例1)
窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子の製造例
含窒素化合物であるフタロシアニンをフラン樹脂の前駆体に混合し、トリフルオロ酢酸を添加し、この混合物をオーブン中80℃で加熱することによりフタロシアニン含有フラン樹脂を得た。これを、窒素雰囲気下、600〜1500℃までの温度で熱処理し、次いで、遊星型ボールミルで数ミクロンに粉砕して、窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子(以下「N−カーボンアロイ微粒子」と称する)を得た。
【0022】
(比較例1)
フタロシアニンを添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較カーボン微粒子1を得た。
【0023】
(実施例2)
窒素原子およびホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子の製造例
フルフリルアルコールのメタノール溶液に、窒素源としてのメラミンと、ホウ素源としてのBFメタノール錯体とを溶解させ、10分間程度撹拌した。次いで、これをテフロン(登録商標)ライナーつきのステンレス製耐圧容器に入れ、200℃から350℃に保持したオーブンに容器を静置することにより、亜臨界もしくは超臨界メタノール中でフルフリルアルコールの重合を行った。
【0024】
得られた内容物を開口径1μmのメンブレンフィルター上でろ過し、その通過物より溶媒を留去して、開口径0.45μmのメンブレンフィルター上で洗浄することにより、微粒子を得た。得られた重合体微粒子を、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度、1000℃の温度で1時間炭素化を行い、窒素原子およびホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子((以下「N,B−カーボンアロイ微粒子A」と称する))を得た。
【0025】
(実施例3〜9)
窒素源としてのメラミンとホウ素源としてのBFメタノール錯体との仕込み比を変えた以外は実施例2と同様にしてN,B−カーボンアロイ微粒子B〜Gを得た。元素分析およびX線光電子分光測定(XPS)の結果、得られたN,B−カーボンアロイ微粒子は窒素原子を最大で10原子%程度含む組成であることが示された。
【0026】
(比較例2)
窒素源としてのメラミンとホウ素源としてのBFメタノール錯体とを添加せず、代わりに塩酸を適量添加した以外は実施例2と同様にして比較カーボン微粒子2を得た。
【0027】
N,B−カーボンアロイ微粒子A〜Gおよび比較カーボン微粒子2のXPSより求めた元素比および炭素化収率を下記の表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004362802
【0029】
酸素還元に関する電極活性試験
酸素還元に関する電極活性を、図1に模式的に示す3極回転電極セル1を用いて測定した。具体的には中央部の作用電極(回転電極)2は周囲が高分子絶縁体、中央部にガラス状炭素からなる電極部を持つ。この電極部に夫々以下のようにして調製した触媒インクを塗布し、作用電極とした。符号3は参照電極(Ag/AgCl)であり、符号4は対極(Pt)である。
【0030】
即ち、N−カーボンアロイ微粒子、N,B−カーボンアロイ微粒子A〜Gおよび比較カーボン微粒子1、2を、それぞれ5mg量り取り、これにバインダー(商品名:ナフィオン)溶液、水、エタノールを適量加え、各触媒インクを調製した。次いで、得られた触媒インクを微量ピペットにより吸い取り、回転電極装置のガラス状炭素部分(直径5mm)に塗布し、乾燥させることにより、作用電極を調製した。
【0031】
電解質溶液としては、1M硫酸水溶液に酸素を常温で溶解したものを用いた。回転速度1500rpmで電極を回転し、電位を、N−カーボンアロイ微粒子については掃引速度0.5mVs−1で、N,B−カーボンアロイ微粒子G、Eについては掃引速度20mVs−1で、夫々掃引して、そのときの電流を電位の関数として記録した。その結果を図2および図3に示す。図2はN−カーボンアロイ微粒子、図3はN,B−カーボンアロイ微粒子G、E、それぞれの結果である。なお、図2および図3には、夫々カーボン微粒子1、2による電流−電位曲線を比較のため、示してある。
【0032】
図2および図3に示す結果より、いずれのカーボンアロイ微粒子の場合も比較カーボン微粒子1、2に比べてより高い電位より酸素還元電流が流れはじめ、同じ電位で比較すると大きな電流密度を示すことが分かる。
【0033】
図4に、N,B−カーボンアロイ微粒子A〜GについてXPSより求めた元素比と酸素還元の開始電位との関係を示す。図4に示す結果より、窒素原子およびホウ素原子のドープ量(B+N)/Cの増加に従い、酸素還元活性が高くなっていることが分かる。また、N/CおよびB/Cとの比較により、窒素原子とホウ素原子のいずれが酸素還元にかかわっているのかを検討したところ、同図(b)および(c)に示すように両元素に対して同じ傾向が見られ、窒素およびホウ素が相互作用して活性をもたらすことが分かった。
【0034】
得られたN,B−カーボンアロイ微粒子A〜GのN1sX線光電子スペクトルおよびB1sX線光電子スペクトルを図5〜6に夫々示す。図5より、各N,B−カーボンアロイ微粒子は二つの存在状態を持っており、ホウ素原子および窒素原子のドープ量が少ないときには高結合エネルギー側のピークが優勢であるが、ドープ量が増加するとともにN1sの低エネルギー側のピークが優勢になってくることが分かる。これに対し、図6では、いずれのN,B−カーボンアロイ微粒子も単一のスペクトルを示すが、ホウ素原子および窒素原子のドープ量が増えるに従い結合エネルギーが高い側にシフトする傾向を示している。即ち、窒素原子では電子が増え、ホウ素原子では電子が減少していることが分かる。このことから、炭素原子中で窒素原子とホウ素原子は相互作用することにより電気的に陰性な窒素原子と電気的に陽性なホウ素原子を生成することにより、活性な炭素材料を与えているといえる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、炭素自身の酸素還元に対する電極活性を向上させることができる。よって、これを用いることにより非白金系触媒および低白金量触媒を実現することができ、安価な固体高分子型燃料電池の開発が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】3極回転電極セルの模式図である。
【図2】N−カーボンアロイ微粒子の電位と電流との関係を示すグラフである。
【図3】N,B−カーボンアロイ微粒子G、Eの電位と電流との関係を示すグラフである。
【図4】(a)〜(c)は、夫々N,B−カーボンアロイ微粒子の酸素還元開始電位と、ホウ素原子および窒素原子の含有量との関係を示すグラフである。
【図5】N,B−カーボンアロイ微粒子A〜GのN1sX線光電子スペクトルを示すグラフである。
【図6】N,B−カーボンアロイ微粒子A〜GのB1sX線光電子スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
1 3極回転電極セル
2 作用電極(炭素試料)
3 参照電極(Ag/AgCl)
4 対極(Pt)

Claims (6)

  1. 窒素原子および/またはホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を基材とすることを特徴とする燃料電池用電極。
  2. 窒素原子および/またはホウ素原子のドープ量が0.5〜20原子%である請求項1記載の燃料電池用電極。
  3. 含窒素化合物と熱硬化性樹脂の前駆体とを加熱反応させて窒素化合物含有熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
    得られた窒素化合物含有熱硬化性樹脂を400〜1500℃の温度で熱処理する炭素化工程と、
    炭素化された窒素化合物含有熱硬化性樹脂を微粉砕して、窒素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得る粉砕工程と、
    を包含することを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  4. 前記含窒素化合物としてフタロシアニンを用い、前記熱硬化性樹脂としてフラン樹脂を用いる請求項3記載の燃料電池用電極の製造方法。
  5. フルフリルアルコールまたはレゾール型フェノール樹脂のメタノール溶液に、含窒素化合物と、含ホウ素化合物とを溶解させ、メタノール亜臨界又は超臨界条件下で重合反応を行う重合工程と、
    得られた重合物微粒子を400〜1500℃の温度で熱処理して、窒素原子およびホウ素原子がドープされたカーボンアロイ微粒子を得る炭素化工程と、
    を包含することを特徴とする燃料電池用電極の製造方法。
  6. 前記含ホウ素化合物としてBFメタノール錯体を用いる請求項5記載の燃料電池用電極の製造方法。
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