JP2004359819A - 熱安定性に優れる塩化ビニリデン系共重合体組成物 - Google Patents

熱安定性に優れる塩化ビニリデン系共重合体組成物 Download PDF

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Takao Yajima
隆男 矢島
Hideaki Kodera
秀章 小寺
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Abstract

【課題】押出成形時の熱安定性に優れ、熱劣化による着色の少ない塩化ビニリデン系共重合体組成物を提供すること。
【解決手段】塩化ビニリデン系共重合体100重量部にフェノール系酸化防止剤を0.0005〜1重量部含有し、塩素イオン含有量が500ppm以下であることを特徴とする塩化ビニリデン系共重合体組成物。更に、フェノール系酸化防止剤とともにイオウ系酸化防止剤0.0005〜0.5重量部、ラクトン系酸化防止剤0.0005〜0.5重量部を含有する塩化ビニリデン系共重合体組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出成形時の熱安定性に優れ、熱劣化による着色の少ない塩化ビニリデン系共重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、塩化ビニリデン系共重合体は、水蒸気や酸素などのガスバリヤー性や耐油性に優れた特性を持つので、押出加工され包装用フィルム、シート、糸などに使用されている。押出加工の際、該共重合体は熱による劣化を受け易く、このため成形品が着色し、製品の価値が著しく損なわれることが多い。このような熱による着色を防止するために、一般には熱安定剤が使用されている。この中で、エポキシ系安定剤は、塩化ビニリデン系共重合体の熱劣化による着色を抑制する熱安定剤として提案され、加熱溶融押出される塩化ビニリデン系樹脂組成物の必須成分として広く使用されている。しかし、エポキシ系安定剤単独では、十分な熱安定化効果が得られないため、通常、酸化防止剤やその他の熱安定剤と併用される。例えば、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]とクエン酸またはクエン酸アルカリ金属塩との併用(特許文献1参照)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(特許文献2参照)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]とピロリン酸ナトリウムとの併用(特許文献3参照)、あるいはビタミンEとチオプロピオン酸アルキルエステル及び無機リン酸塩との併用(特許文献4参照)、ビタミンEとエチレンジアミン四酢酸塩との併用(特許文献5参照)等が知られている。更に、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールと有機弱酸塩または無機弱酸塩を併用した組成物及び重合反応終了後の反応系スラリー水相のpHが2.5〜10の範囲であることを特徴とする組成物の製造方法が開示されている(特許文献6参照)。
【0003】
しかしながら、フェノール系酸化防止剤と有機または無機酸及び塩類との併用による従来技術では、熱安定性はいまだ十分ではなかった。また、スラリー水相のpHを調整する手法を併せたとしても、成形品の着色改善効果は充分ではなかった。現在、更に熱安定性が改良された塩化ビニリデン系樹脂組成物が望まれているのである。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−165394号公報
【特許文献2】
特公昭57−10894号公報
【特許文献3】
特公平6−18963号公報
【特許文献4】
特公昭61−26813号公報
【特許文献5】
特公平1−990号公報
【特許文献6】
特開平11−315179号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来に比べて、押出成形時の熱安定性に優れる塩化ビニリデン系共重合体組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決するため酸化防止剤について鋭意研究した結果、フェノール系酸化防止剤を含有して、且つ塩化ビニリデン系共重合体組成物中の塩素イオン含有量を制御することにより、上記問題点を解決することを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
1)塩化ビニリデン系共重合体100質量部、フェノール系酸化防止剤(A)0.0005〜1質量部を含有して成る塩化ビニリデン系共重合体組成物において、塩素イオン含有量が500ppm以下であることを特徴とする塩化ビニリデン系共重合体組成物。
2)フェノール系酸化防止剤(A)が、下記(A1)〜(A5)より選ばれる一種以上であることを特徴とする1)に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
(A1):トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]
(A2):オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(A3):2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール
(A4):テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
(A5):ビタミンE
【0008】
3)イオウ系酸化防止剤(B)0.0005〜0.5質量部を更に含有することを特徴とする1)または2)に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
4)イオウ系酸化防止剤(B)が、下記(B1)〜(B2)より選ばれる一種以上であることを特徴とする3)に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
(B1):ジラウリルチオジプロピオネート
(B2):ジステアリルチオジプロピオネート
5)ラクトン系酸化防止剤(C)0.0005〜0.5質量部を更に含有することを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
【0009】
6)ラクトン系酸化防止剤(C)が、下記(C1)〜(C2)より選ばれる一種以上であることを特徴とする5)に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
(C1):3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
(C2):3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
7)上記1)〜6)のいずれかに記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物から得られるフィルム、またはシート。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下具体的に説明する。本発明に用いる塩化ビニリデン系共重合体は、塩化ビニリデン及び塩化ビニリデンと共重合可能な単量体一種以上からなる共重合体で、塩化ビニリデン50〜99質量%及び塩化ビニリデンと共重合可能な単量体一種以上1〜50質量%からなる共重合体である。塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレートおよびメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のα、β不飽和カルボン酸エステル類、エチレンおよびプロピレン等のオレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のラウリルビニルエーテルおよびイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。
【0011】
また、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等の共重合可能なものも挙げられ、これらの重合性ビニル系モノマーは単独でも二種類以上の混合で用いてもよい。これらの中では塩化ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリロニトリル、スチレンが好ましい。
【0012】
本発明に用いる塩化ビニリデン系共重合体は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法のいずれの重合法によって得たものでも良いが、懸濁重合法によって得たものが好ましい。また、本発明における塩化ビニリデン系共重合体の重量平均分子量は、6万〜20万が好ましい。より好ましくは7万〜15万の範囲である。さらに好ましくは8万〜13万である。重量平均分子量は、熱安定性、ガスバリヤー性の点から上記範囲の重量平均分子量が選択される。
また、重量平均分子量の異なる2種以上の塩化ビニリデン系共重合体を任意の割合で配合して、配合した塩化ビニリデン系共重合体の重量平均分子量が、6万〜20万の範囲となる組成物としても良い。
【0013】
本発明で使用するフェノール系酸化防止剤(A)としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビタミンE(本発明で使用されるビタミンEとしてはα、β、γ、δの各種トコフェロール及びこれらの中より選ばれるトコフェロールの混合物が挙げられ、これらは天然物または合成品いずれでも良い)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール、ブチル−ヒドロキシ−アニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチルー6−t−ブチルフェノール)等を挙げることができる。
【0014】
ここで好ましいフェノール系酸化防止剤(A)として、下記の酸化防止剤を挙げることができる。
(A1):トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]
(A2):オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(A3):2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール
(A4):テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
(A5):ビタミンE
【0015】
また、フェノール系酸化防止剤(A)は、二種類以上の併用でもよい。例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートと2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールの混合品(質量比で各々約20%と約80%)を挙げることができる。
本発明で使用するフェノール系酸化防止剤(A)の配合割合は、塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対して、0.0005〜1質量部、好ましくは0.001〜0.2質量部、より好ましくは0.003〜0.1質量部である。この配合割合が少な過ぎると、押出成形時の熱安定性改良効果が小さく、一方、1質量部を超過して多く用いても添加量に比例した熱安定性効果が得られ難く、また経済的にも好ましくない。
【0016】
本発明においては、上記フェノール系酸化防止剤(A)以外にイオウ系酸化防止剤(B)、ラクトン系酸化防止剤(C)、及びホスファイト系酸化防止剤から選ばれる一種以上の酸化防止剤を併用することもできる。この場合、相乗的な熱安定性改良効果が得られるので好ましい使用態様である。
本発明で使用できるイオウ系酸化防止剤(B)としては、例えば、チオジプロピオン酸;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸アルキルエステル;ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオプロピオネート)等のペンタエリスリトール系のチオプロピオン酸アルキルエステル等を挙げることができる。
【0017】
ここで好ましいイオウ系酸化防止剤(B)として、下記の酸化防止剤を挙げることができる。
(B1):ジラウリルチオジプロピオネート
(B2):ジステアリルチオジプロピオネート
本発明において使用するイオウ系酸化防止剤(B)は、二種以上の混合物であってもよい。配合割合は、塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対して0.0005〜0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.001〜0.2質量部、さらに好ましくは0.003〜0.1質量部である。この配合割合が少な過ぎると、相乗的な熱安定性改良の効果が小さく、一方、超過して多く用いても添加量に比例した熱安定性効果が得られ難い。
【0018】
本発明で使用できるラクトン系酸化防止剤(C)としては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物であり、好ましいラクトン系酸化防止剤(C)として、下記の酸化防止剤を挙げることができる。
(C1):3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
(C2):3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
本発明において使用するラクトン系酸化防止剤(C)は二種以上の混合物であってもよい。配合割合は、塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対して0.0005〜0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.001〜0.2質量部、さらに好ましくは0.003〜0.1質量部である。この配合割合が少な過ぎると、相乗的な熱安定性改良の効果が小さく、一方、超過して多く用いても添加量に比例した熱安定性効果が得られ難い。
【0019】
このラクトン系酸化防止剤(C)は、フェノール系酸化防止剤(A)、ホスファイト系酸化防止剤と併用すると、より熱安定性改良効果が得られる。例えば、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトとの併用、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトとの併用を挙げることができる。
【0020】
また、ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの他に、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。ホスファイト系酸化防止剤は二種以上の混合物であってもよい。配合割合は、塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対して0.0005〜0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.001〜0.2質量部、さらに好ましくは0.005〜0.1質量部である。この配合割合が少な過ぎると、相乗的な熱安定性改良の効果が小さく、一方、超過して多く用いても添加量に比例した熱安定性効果が得られ難い。
【0021】
塩化ビニリデン系共重合体に、酸化防止剤を配合する際は、塩化ビニリデン系共重合体の重合段階で前添加する方法、重合終了後塩化ビニリデン系共重合体に後添加する方法、更に前添加と後添加を併用する方法が用いられる。
本発明の塩化ビニリデン系共重合体組成物中の塩素イオン含有量は、500ppm以下である。好ましくは、300ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。この範囲に塩素イオン含有量を制御することにより、更に優れた熱安定性の改良効果が得られる。塩素イオン含有量が500ppmを超えると、酸化防止剤が配合されていても熱安定性改良効果が小さくなる。塩素イオン含有量と熱安定性の作用機構としては、組成物中に過剰に塩素イオンが存在すると、押出加工時に酸化防止剤に作用して、酸化防止剤の効果を抑制するものと考えている。
【0022】
ここで、塩素イオン含有量を低下させることが酸化防止剤の効果発現に重要ではあるが、塩素イオン除去に多くの工程が必要となるので、経済的には0.01ppm〜500ppmが好ましい形態である。
塩化ビニリデン系共重合体組成物中の塩素イオンを制御する手法としては、重合中に発生する塩素イオンを制御する方法、発生した塩素イオンを重合後に除去する方法がある。重合中の塩素イオン発生制御は、重合前の塩化ビニリデン系単量体中に酸化防止剤を添加して抑える方法、重合系内に残る酸素を脱気・窒素置換する手法等を挙げることができる。
【0023】
また、重合後の塩素イオン除去手法としては、重合終了後のスラリー水相中に存在する塩素イオンを低減した後、脱水、乾燥処理を行い、塩素イオン含有量を低減させる手法がある。例えば、スラリー脱水時、純水で充分に水相を置換して、塩素イオン含有量を低下させる手法、重合後のスラリー水相からイオン交換樹脂による吸着法、精密濾過膜または限外濾過膜による膜濾過法、半透膜による透析法等により塩素イオンを除去する手法等を挙げることができる。
【0024】
更に、本発明に用いる塩化ビニリデン系共重合体組成物に、加工性改善の目的で、他の重合体または共重合体を混合することも可能である。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜18)または(メタ)アクリル酸グリシジルとの共重合体、エチレン系アイオノマー、(メタ)アクリル系重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸ブチル共重合体、ナイロン、ポリエステル等を挙げることができる。これらの他の重合体または共重合体の混合により、塩化ビニリデン系共重合体樹脂組成物の流動性が高まり、溶融成形時の樹脂の摩擦発熱が抑制されるので着色が防止される。混合する割合は塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましい。10質量部を超過すると、得られる樹脂組成物のガスバリヤー性が低下するおそれがあり、また、0.05質量部より少ないと、流動性改善効果が発現しにくい。
【0025】
本発明は上記のように、塩化ビニリデン系共重合体にフェノール系酸化防止剤を含有し、塩素イオン含有量が500ppm以下であることを特徴とする塩化ビニリデン系共重合体組成物であるが、更に、その他の一般に用いられる各種の添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、有機または無機酸及び塩類、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、顔料、フィラー等を含有させることができる。これら添加剤の具体例として、例えば、アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、ジオクチルセバケート、アセチル化モノグリセリド等の可塑剤、または飽和脂肪族ジカルボン酸と多価アルコールとからなるポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ステアリン酸オクチル、エポキシ基含有樹脂等のエポキシ系安定剤;水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カルシウムヒドロキシホスフェート等の無機塩基類の安定剤;クエン酸及びそのアルカリ金属塩、炭酸塩類、亜硫酸塩類、リン酸塩類、ピロリン酸塩類、酢酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸及びそのアルカリ金属塩、コハク酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸及びそのアルカリ金属塩等の有機または無機酸及び塩類;エチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩;酸化ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸エステルワックス等のワックス、グリセリンモノエステル等の脂肪酸エステル、脂肪酸のモノ及びビスアミド等の滑剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。これら添加剤の各添加量は、塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜6質量部である。本発明においては、これら添加剤の、塩化ビニリデン系共重合体組成物への添加は、押出加工前の混合、塩化ビニリデン系共重合体重合終了後のスラリー状態での混合、また予め重合前の塩化ビニリデン系単量体に添加して重合しての混合、いずれでもよい。
【0026】
添加剤は押出時には塩化ビニリデン共重合体に吸着または吸収され、熱安定性に寄与する。可塑剤や熱安定剤以外の添加剤は必要に応じて使用するのが好ましい。
本発明による塩化ビニリデン系共重合体組成物は、公知の成形手段、例えばインフレーション法、Tダイ法等の押出成形法、射出成形法、ブロー成形法等により、フィルム、シート等に成形することができる。特にインフレーション法よる成形が好ましい。
【0027】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。尚、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
例中の熱安定性、塩化ビニリデン系共重合体組成物中の塩素イオン含有量は、以下の方法によって求めた。
・熱安定性
塩化ビニリデン系共重合体組成物を、180℃、15MPaの条件で5分間プレスし、厚さ約2mmのシートを作製した。これらサンプルの変色の度合いを色彩色差計(日本電色工業株式会社製、Z−300A)によるb値で表し、熱安定性を評価した。このb値がプラス側に大きくなる程、熱劣化による黄色度合いが大きいことを示し、熱安定性が悪いことを意味する。
【0028】
・塩化ビニリデン系共重合体組成物の塩素イオン含有量(ppm)
塩化ビニリデン系共重合体組成物1.0gをテトラヒドロフラン10mlに溶解させる。この溶液1.0gを脱イオン水10mlで希釈した後、イオンクロマト法により、液中の塩素イオン含有量を測定した。これより、塩化ビニリデン系共重合体組成物中の塩素イオン含有量を算出した。(含有量は、塩化ビニリデン系共重合体組成物質量に対する、塩素イオン質量の値である。)
本実施例及び比較例では以下の酸化防止剤を用いた。
【0029】
・フェノール系酸化防止剤(A)
(A1):トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]
(A2):オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(A3):2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール
(A4):テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
(A5):ビタミンE
・イオウ系酸化防止剤(B)
【0030】
(B1):ジラウリルチオジプロピオネート
・ラクトン系酸化防止剤(C)
(C1):3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
・ホスファイト系酸化防止剤(D)
(D1):トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
【0031】
[実施例1]
50リットルの撹拌機付き反応機に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.05質量部を溶解した脱イオン水100質量部を投入し、撹拌開始後系内30℃にて窒素置換する。その後、塩化ビニリデン単量体(VDC)82質量部、塩化ビニル単量体(VC)18質量部、酸化防止剤(A1)0.02質量部、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート0.15質量部からなる混合物を投入し、反応機内を42℃に昇温して重合を開始する。42℃で15時間、その後更に53℃まで昇温して、53℃で18時間重合した後、未反応単量体を回収、降温後スラリーを取り出す。得られたスラリーを遠心脱水機にかけ水を分離した。塩素イオンを除去するため、脱水後の共重合体を再び脱イオン水中に入れて15分攪拌し、再度脱水を行った。この操作を更に2回繰り返した。
この塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対し、酸化防止剤(A2)0.004質量部、酸化防止剤(A3)0.016質量部、酸化防止剤(A5)0.01質量部、エポキシ化アマニ油1.0質量部とアセチルクエン酸トリブチル5質量部、これに脱イオン水200質量部を加えてスラリー状態で、常温で60分撹拌した。これを遠心脱水機で脱水し、熱風式乾燥機を用い50℃で1日乾燥した。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量を前述の方法により評価した。この結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
塩素イオン除去のための重合終了後のスラリー再脱水を行わないこと以外は、実施例1と同様に操作を行った。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量の評価結果を表2に示す。
【0033】
[実施例2]
重合前に添加する酸化防止剤を、酸化防止剤(A1)0.01質量部、酸化防止剤(A2)0.002質量部、酸化防止剤(A3)0.008質量部に変更した以外は、実施例1と同様に重合、脱水を行った。更に塩素イオンを除去するため、脱水して得られた共重合体100質量部に、脱イオン水200質量部を加えてスラリー状態とし、透析液として脱イオン水、中空糸膜モジュールとして旭メディカル製(再生セルロース、透水率0.038mL/Hr・m・Pa、膜面積2.1m、湿潤時の膜厚約30μm、阻止限界分子量約10000)の人工腎臓用モジュールを用いて、このスラリー水相の透析を行った。スラリー水相をモジュールに連続的に供給した後再度循環し、一方脱イオン水はモジュールに連続的に供給した後、系外に排出した。24時間透析処理を行った後、スラリーを脱水した。
この塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対し、エポキシ化アマニ油1.0質量部とアセチルクエン酸トリブチル5質量部、これに脱イオン水200質量部を加えてスラリー状態で、常温で60分撹拌した。これを遠心脱水機で脱水し、熱風式乾燥機を用い50℃で1日乾燥した。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量を前述の方法により評価した。この結果を表1に示す。
【0034】
[比較例2]
塩素イオン除去のための重合終了後のスラリー水相透析処理を行わないこと以外は、実施例2と同様に操作を行った。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量の評価結果を表2に示す。
【0035】
[実施例3]
重合前に酸化防止剤(A1)を添加しないこと以外は、実施例1と同様に重合、脱水を行った。更に塩素イオンを除去するため、脱水後の共重合体を再び脱イオン水中に入れて15分攪拌し、再度脱水を行った。この操作を更に2回繰り返した。
この塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対し、酸化防止剤(A1)0.02質量部、酸化防止剤(A2)0.004質量部、酸化防止剤(A3)0.016質量部、エポキシ化アマニ油1.0質量部とアセチルクエン酸トリブチル5質量部、これに脱イオン水200質量部を加えてスラリー状態で、常温で60分撹拌した。これを遠心脱水機で脱水し、熱風式乾燥機を用い50℃で1日乾燥した。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量を前述の方法により評価した。この結果を表1に示す。
【0036】
[比較例3]
塩素イオン除去のための重合終了後のスラリー再脱水を行わないこと以外は、実施例3と同様に操作を行った。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量の評価結果を表2に示す。
【0037】
[実施例4]
重合前に添加する酸化防止剤を、酸化防止剤(A4)0.02質量部に変更した以外は、実施例1と同様に重合、脱水を行った。更に塩素イオンを除去するため、脱水後の共重合体を再び脱イオン水中に入れて15分攪拌し、再度脱水を行った。この操作を更に2回繰り返した。
この塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対し、酸化防止剤(B1)0.02質量部、エポキシ化アマニ油1.0質量部とアセチルクエン酸トリブチル5質量部、これに脱イオン水200質量部を加えてスラリー状態で、常温で60分撹拌した。これを遠心脱水機で脱水し、熱風式乾燥機を用い50℃で1日乾燥した。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量を前述の方法により評価した。この結果を表3に示す。
【0038】
[実施例5]
重合前に添加する酸化防止剤を、酸化防止剤(A4)0.02質量部に変更した以外は、実施例1と同様に重合、脱水を行った。更に塩素イオンを除去するため、脱水後の共重合体を再び脱イオン水中に入れて15分攪拌し、再度脱水を行った。この操作を更に2回繰り返した。
この塩化ビニリデン系共重合体100質量部に対し、酸化防止剤(A2)0.0057質量部、酸化防止剤(A5)0.01質量部、酸化防止剤(C1)0.003質量部、酸化防止剤(D1)0.0113質量部、エポキシ化アマニ油1.0質量部とアセチルクエン酸トリブチル5質量部、これに脱イオン水200質量部を加えてスラリー状態で、常温で60分撹拌した。これを遠心脱水機で脱水し、熱風式乾燥機を用い50℃で1日乾燥した。得られた共重合体組成物の熱安定性と塩素イオン含有量を前述の方法により評価した。この結果を表3に示す。
【0039】
【表1】
Figure 2004359819
【0040】
【表2】
Figure 2004359819
【0041】
【表3】
Figure 2004359819
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、従来に比べて押出成形時の熱安定性に優れる塩化ビニリデン系共重合体組成物を提供することができる。

Claims (7)

  1. 塩化ビニリデン系共重合体100質量部、フェノール系酸化防止剤(A)0.0005〜1質量部を含有して成る塩化ビニリデン系共重合体組成物において、塩素イオン含有量が500ppm以下であることを特徴とする塩化ビニリデン系共重合体組成物。
  2. フェノール系酸化防止剤(A)が、下記(A1)〜(A5)より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
    (A1):トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]
    (A2):オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
    (A3):2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール
    (A4):テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
    (A5):ビタミンE
  3. イオウ系酸化防止剤(B)0.0005〜0.5質量部を更に含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
  4. イオウ系酸化防止剤(B)が、下記(B1)〜(B2)より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項3に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
    (B1):ジラウリルチオジプロピオネート
    (B2):ジステアリルチオジプロピオネート
  5. ラクトン系酸化防止剤(C)0.0005〜0.5質量部を更に含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
  6. ラクトン系酸化防止剤(C)が、下記(C1)〜(C2)より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項5に記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物。
    (C1):3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
    (C2):3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の塩化ビニリデン系共重合体組成物から得られるフィルム、またはシート。
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