JP2004352842A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐衝撃性、耐候性、低ガス性、耐熱性、顔料着色性、耐傷付き性のいずれもが優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)80質量%〜99.9質量%および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体20質量%〜0.1質量%からなるオレフィン系ゴム状重合体(G)に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体(A)1質量部〜99質量部と、N−置換マレイミド化合物単位1質量%〜98質量%、芳香族アルケニル化合物単位1質量%〜20質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位1質量%〜98質量%からなるマレイミド系共重合体(B)99質量部〜1質量部とを含有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品などに使用される熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、樹脂材料の耐熱性、耐衝撃性に対する要求はますます高くなっており、特に、自動車部品、例えばメーターフード、インスルメントパネル、コンソールボックス等の内装部品では耐熱性、耐衝撃性だけでなく、部品の大型化に対応できるように良好な射出成形性が要求されている。また、外板、ランプハウジング等の外装部品においては、耐衝撃性、耐熱性だけでなく、耐候性や顔料着色性も優れていることが要求されている。
【0003】
高い耐熱性と耐衝撃性を有する樹脂材料としては、N−置換マレイミド化合物に芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物が共重合したマレイミド系共重合体をマトリクスとする熱可塑性樹脂が知られている。
また、耐候性が高い樹脂材料としては、主鎖に実質的に二重結合を持たないエチレン−α−オレフィンからなるゴム成分にスチレンやアクリロニトリルがグラフトしたゴム変性熱可塑性樹脂、所謂AES樹脂が知られている。AES樹脂は、共役ジエン系ゴムを用いたABS樹脂に比べ、紫外線、酸素およびオゾンに対する抵抗性が大きく、耐候性に優れるため、車輌外装部品等に広く利用されている。
【0004】
耐熱性と顔料着色性とが改良された樹脂としては、AES樹脂グラフト共重合体と、マレイミド系共重合体を含有する共重合体とを配合したものが提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−204255号公報
【特許文献2】
特開昭63−227647号公報
【特許文献3】
特開平11−1600号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車部品などの成形品を成形する際の温度は高温であるため、成形時に樹脂からガス状の揮発性物質が発生し、それが金型に付着・堆積して製品の外観不良を引き起こすことがあった。しかし、従来のAES樹脂では、成形時のガス発生量を十分に抑えてはいなかったので、成形品に外観不良が生じることがあった。
また、AES樹脂は、製品製造・加工時や製品を使用している際に表面に傷が付きやすく、製品価値が著しく低下するという欠点あったためにその利用が限定されており、耐傷付き性の改良が望まれていた。
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されている熱可塑性樹脂材料は、耐候性および発色性は良好であるものの、耐衝撃性、耐熱性、耐傷付き性のいずれか1つ以上の項目が不十分であった。特に、耐衝撃性を重視すると耐傷付き性が低下し、逆に、耐傷付き性を重視すると耐衝撃性が低下するので、耐衝撃性と耐傷付き性とのバランスが不十分であった。したがって、近年の厳しい要求に応えることはできなかった。
また、特許文献3に記載されている熱可塑性樹脂組成物は、高温成形時に発生するガスを抑制する手法については全く言及されていなかった。例えば、特許文献3に記載の実施例10の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸メチル、スチレン、N−ヘキシルマレイミドからなる共重合体を多量に含有しており、ガス発生を十分に抑えることはできなかった。
すなわち、これまでに、エチレン−α−オレフィンゴム成分を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを構成成分とする樹脂組成物であって、耐衝撃性、耐候性、低ガス性、耐熱性、顔料着色性、耐傷付き性の全て満足する樹脂材料は未だ見出されていなかった。そして、これらを同時に満足する樹脂材料の開発は強く望まれていた。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、耐衝撃性、耐候性、低ガス性、耐熱性、顔料着色性、耐傷付き性のいずれもが優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体を含む特定のグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、以下の熱可塑性樹脂組成物を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)80質量%〜99.9質量%および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体20質量%〜0.1質量%からなるオレフィン系ゴム状重合体(G)に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体(A)1質量部〜99質量部と、
N−置換マレイミド化合物単位1質量%〜98質量%、芳香族アルケニル化合物単位1質量%〜20質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位1質量%〜98質量%、これらと共重合可能な他の単量体単位0〜50質量%からなるマレイミド系共重合体(B)99質量部〜1質量部と、
他の熱可塑性樹脂(C)0〜50質量部((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)とを含有することを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、オレフィン系ゴム状重合体(G)が機械乳化法により製造されたものであることが好ましい。
また、 N−置換マレイミド化合物単位が、N−フェニルマレイミド単位であることが好ましい。
さらには、マレイミド系共重合体(B)が、懸濁重合、塊状重合、溶液重合のいずれかの方法により製造されたものであることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と、マレイミド系共重合体(B)と、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂(C)とを含有するものである。
<グラフト共重合体(A)>
グラフト共重合体(A)は、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体からなるオレフィン系ゴム状重合体(G)にビニル系重合体がグラフトしたものである。なお、本明細書において、グラフト共重合体(A)のビニル系重合体をグラフト部ということがある。
[オレフィン系ゴム状重合体(G)]
オレフィン系ゴム状重合体(G)を構成するエチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)もしくはエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)である。これらのうち、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れることから、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)が好ましい。
【0010】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体は、エチレン単位とプロピレン単位と非共役ジエン単位とからなる共重合体である。非共役ジエンとして、例えば、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられ、それらの1種または2種以上を使用できる。これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や成形外観がより優れることから、ジシクロペンタジエン単位および/またはエチリデンノルボルネン単位が好ましい。
【0011】
エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)中のエチレン単位とプロピレン単位とのモル比(エチレン単位:プロピレン単位)は、5:1〜3:2の範囲であることが好ましい。この範囲であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れる。
エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)中の不飽和基の割合は、上述の非共役ジエン単位の種類や比率に依存するが、沃素価に換算して8〜50の範囲であることが好ましい。この範囲にあると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や耐候性がより優れる。
【0012】
オレフィン系ゴム状重合体(G)を構成する酸変性低分子量α−オレフィン系重合体は、例えば、α−オレフィン系重合体にエチレン系不飽和カルボン酸またはその無水物がグラフトしたものである。酸変性低分子量α−オレフィン系重合体の中でも、その分子量が2,000〜6,000、酸価が22mgKOH/g〜30mgKOH/gの範囲にあるものが好ましい。この範囲にあると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形外観(表面光沢、顔料着色性)や耐傷付き性がより優れる。
【0013】
オレフィン系ゴム状重合体(G)中の酸変性低分子量α−オレフィン系重合体の含有量は、オレフィン系ゴム状重合体(G)100質量%中に0.1質量%〜20質量%であり、好ましくは3質量%〜15質量%である。この範囲にあると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と耐傷付き性とのバランスに優れる。
なお、0.1質量%未満である場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐傷付き性が低くなり、20質量%を越えると得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下すると同時に耐傷付き性が低下する。
【0014】
オレフィン系ゴム状重合体(G)の製造方法としては特に限定されず、公知の方法が利用できるが、「機械乳化法」が好ましく、具体的には「機械乳化法」で水乳濁液を得てから熱処理する方法が好ましい。ここで、「機械乳化法」とは、乳化剤およびワックス状重合体の存在下で、別プロセスで製造された塊状もしくはペレット形状の非架橋エチレン−プロピレン系ゴム状重合体に機械的剪断力を与えて、水中に微細に分散安定化させる方法である。このように、機械乳化法により得られた水乳濁液に架橋剤および重合開始剤を加えて熱処理することで、オレフィン系ゴム状重合体(G)を得ることができる。
この様にして製造されたオレフィン系ゴム状重合体(G)を用いた場合、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐傷付き性がより優れる。
【0015】
上記機械乳化法において、オレフィン系ゴム状重合体(G)の水乳濁液の質量平均粒子径は特に制限されないが、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性、光沢度、耐衝撃性がより優れることから、その質量平均粒子径が制御されていることが望ましい。具体的には、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、好ましくは200nm〜800nm、より好ましくは250nm〜700nm、さらに好ましくは300nm〜600nmである。
オレフィン系ゴム状重合体(G)の水乳濁液の質量平均粒子径を制御する方法としては特にどの様な方法でも構わないが、用いる乳化剤の種類や量、ワックス状重合体の種類や量、そして機械乳化の際の剪断力や温度条件を変更することにより調整できる。
【0016】
機械乳化の際に用いることができる乳化剤としては、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体を乳化できるものであれば特に限定されず、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の公知のものが用いられる。
その乳化剤の使用量は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色性や機械乳化の際の粒子径制御性に優れることから、原料として用いる非架橋エチレン−プロピレン系ゴム状重合体100質量部に対して1〜8質量部の範囲であることが好ましい。
【0017】
また、乳化剤と同時に用いられるワックス状重合体としては特に限定されないが、中和可能なカルボン酸またはその無水物基を含む熱可塑性重合体が好ましい。カルボン酸またはその無水物基を含む熱可塑性重合体としては、例えば、α−オレフィン系重合体にエチレン系不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合した酸変性α−オレフィン系重合体が挙げられる。
【0018】
オレフィン系ゴム状重合体(G)は架橋されていてもよい。架橋処理する際に添加される架橋剤としては特に制限されず、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体が例示され、これらを単独で使用もしくは2種以上を併用することができる。
例示した架橋剤の中でも、ジビニルベンゼンが好ましい。ジビニルベンゼンを使用した場合、その使用量は非架橋オレフィン系ゴム状重合体100質量部に対し通常0.2〜10質量部の範囲である。
【0019】
架橋したオレフィン系ゴム状重合体(G)のゲル含量は特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観(表面光沢、発色性)がより優れることから、好ましくは30質量%〜90質量%、より好ましくは40質量%〜80質量%である。
【0020】
[グラフト共重合体(A)のグラフト部]
グラフト共重合体(A)のグラフト部は、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体単位から構成されたビニル系重合体である。
芳香族アルケニル化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
シアン化ビニル化合物の具体例としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
これら化合物単位は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
グラフト共重合体(A)において、オレフィン系ゴム状重合体(G)とグラフト部との比率は特に制限されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性がより優れることから、通常、オレフィン系ゴム状重合体(G)が20質量%〜80質量%、グラフト部が80質量%〜20質量%であり、好ましくはオレフィン系ゴム状重合体(G)が30質量%〜75質量%、グラフト部が70質量%〜25質量%であり、より好ましくはオレフィン系ゴム状重合体(G)が40質量%〜70質量%、グラフト部が60〜30質量%である。なお、オレフィン系ゴム状重合体(G)とグラフト部の合計は100質量%である。
【0022】
グラフト共重合体(A)は、例えば、乳化グラフト重合により製造される。具体的には、オレフィン系ゴム状重合体(G)ラテックスに、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体成分を加え、乳化剤の存在下で公知のラジカル重合技術により製造される。この際、単量体成分中には、グラフト率やグラフト成分の分子量を制御するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0023】
この重合の際に添加されるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、これらに酸化剤・還元剤をさらに組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。これらの中でもレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・ピロリン酸ナトリウム・ブドウ糖・ヒドロパーオキサイドや、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたレドックス系開始剤が好ましい。
【0024】
また、重合の際に使用される乳化剤は、オレフィン系ゴム状重合体(G)製造の際に用いられた乳化剤をそのまま利用してグラフト重合工程前に全く添加しなくてもよいし、必要に応じて、添加してもよい。ここで加える乳化剤としては特に制限はなく、例えば、オレフィン系ゴム状重合体(G)製造の際に用いられた乳化剤を利用できる。
【0025】
乳化グラフト重合により得られたグラフト共重合体(A)ラテックスから、グラフト共重合体(A)を回収する方法としては、凝固剤を溶解させた熱水中に該ラテックスを投入して、スラリー状態に凝析して回収する方法(湿式法)、加熱雰囲気中に該ラテックスを噴霧して、半直接的にグラフト共重合体(A)を回収する方法(スプレードライ法)などが挙げられる。
【0026】
湿式法で用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。凝固剤の選定は重合で用いられた乳化剤を考慮して選定される。すなわち、脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合にはどのような凝固剤を用いてもグラフト共重合体(A)を回収できるが、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合には上記無機酸では十分に回収できないから、凝固剤として金属塩を用いる必要がある。
【0027】
湿式法において、グラフト共重合体(A)のスラリーから乾燥状態のグラフト共重合体(A)を得るには、まず、グラフト共重合体(A)に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄し、次いで、このスラリーを遠心もしくはプレス脱水機で脱水し、その後、気流乾燥機等で乾燥して粉体または粒子状のグラフト共重合体(A)を得る。この際、圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施してもよい。さらには、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体を直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機や成形機に供給して成形品を製造することもできる。
【0028】
<マレイミド系共重合体(B)>
マレイミド系共重合体(B)は、N−置換マレイミド化合物単位、芳香族アルケニル化合物単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位を必須成分として含有する共重合体である。
ここで、N−置換マレイミド化合物としては特に限定されないが、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド、N−アラルキルマレイミドが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を併用できる。これらの中でも、耐熱性と耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が容易に得られることから、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。
【0029】
マレイミド系共重合体(B)中のN−置換マレイミド化合物単位の含有量は1質量%〜98質量%であり、好ましくは3質量%〜60質量%、より好ましくは5質量〜40質量%である。N−置換マレイミド化合物単位がこのような範囲で含まれることにより、耐熱性と耐衝撃性が高くなる上に、成形加工性も優れる様になる。
【0030】
マレイミド系共重合体(B)の構成成分である芳香族アルケニル化合物としては特に限定されないが、例えば、モノビニル芳香族炭化水素、モノビニリデン芳香族炭化水素が挙げられる。モノビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,4−ジブロモスチレンが挙げられ、モノビニリデン芳香族炭化水素としてはα−メチルスチレン、α−エチルスチレン等が挙げられる。これらのモノビニル芳香族炭化水素、モノビニルデン芳香族炭化水素の中ではスチレン、ビニルトルエン及びα−メチルスチレンが好ましく、さらにスチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。これら芳香族アルケニル化合物は、1種あるいは2種以上を併用することができるが、耐衝撃性と耐熱性とのバランスがよくなることから、スチレンとα−メチルスチレンとを共に含有することが好ましい。
【0031】
マレイミド系共重合体(B)中の芳香族アルケニル化合物単位の含有量は、1質量%〜20質量%であり、好ましくは2質量%〜15質量%、より好ましくは3質量%〜12質量%である。芳香族アルケニル化合物単位がこのような範囲で含まれることにより、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐候性、顔料着色性のいずれもが優れる様になる。しかも、マレイミド系共重合体(B)を製造する際の重合反応性が良好になる。なお、芳香族アルケニル化合物の含有量が1質量%未満の場合、N−置換マレイミド化合物と(メタ)アクリル酸エステル化合物間の反応性が乏しいため、マレイミド系共重合体(B)製造の収率が低下して工業的生産時に問題が生じる。
【0032】
マレイミド系共重合体(B)の構成成分である(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ペンジル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ペンジル、アクリル酸フェニル等を例示することができる。これらの中でも、耐熱性と耐衝撃性がより優れることから、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1種あるいは2種以上を併用できる。
【0033】
マレイミド系共重合体(B)中の(メタ)アクリル酸エステル化合物単位の含有量は、1質量%〜98質量%であり、好ましくは5質量%〜90質量%、より好ましくは10質量%〜85質量%である。(メタ)アクリル酸エステル化合物単位がこのような範囲で含まれることにより、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性と顔料着色性が優れる様になる。
【0034】
マレイミド系共重合体(B)は、必要に応じて、上記単量体と共重合可能な他の単量体単位を含有してもよい。他の単量体単位としては、例えば、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物や、無水マレイン酸が挙げられる。
マレイミド系共重合体(B)に他の単量体単位が含まれる場合、その含有量は0〜50質量%である。他の単量体単位の含有量が50質量%を越えると、本発明の効果を発揮できない。
【0035】
マレイミド系共重合体(B)の製造方法として特に制限されず、公知の製造方法を採用できるが、低ガス性の熱可塑性樹脂組成物が容易に得られることから、好ましくは懸濁重合または塊状重合である。
マレイミド系共重合体(B)の分子量は特に制限されないが、流動性が高くなることから、好ましくはポリスチレン換算質量平均分子量が5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜150,000である。
【0036】
<他の熱可塑性樹脂(C)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂(C)を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂(C)としては特に制限はなく、例えば、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。
【0037】
他の熱可塑性樹脂(C)の中でも、熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性がより優れることから、好ましくはメタクリル酸メチル単位を50質量%以上含むものが好ましい。他の熱可塑性樹脂(C)が、メタクリル酸メチル単位を50質量%以上含むものである場合、熱可塑性樹脂組成物100質量部中の含有量は、5〜50質量部である。
【0038】
また、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を配合できる。添加剤としては、例えば、染料、顔料、各種安定剤、滑剤、補強剤、充填材、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、UV吸収剤等が挙げられる。
【0039】
<熱可塑性樹脂組成物の配合>
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)1質量部〜99質量部とマレイミド系共重合体(B)99質量部〜1質量部とから構成される((A)と(B)の合計は100質量部)。好ましくは、グラフト共重合体(A)5質量部〜80質量部とマレイミド系共重合体(B)95質量部〜20質量部、さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)10質量部〜60質量部とマレイミド系共重合体(B)90質量部〜40質量部とから構成される。なお、他の熱可塑性樹脂(C)を含有する場合は、他の熱可塑性樹脂(C)の含有量は、0〜50質量部である((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)。
【0040】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に制限はなく、公知の混合混練方法を採用できる。例えば、粉末、ビーズまたはペレット状のグラフト共重合体(A)と、マレイミド系共重合体(B)と、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂(C)、添加剤とを所定量計量して混合し、その混合物を溶融混練する。その溶融混練では、押出機または、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いることができる。
そして、この熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等の各種成形方法の原料として使用でき、各種成形品にすることができる。
【0041】
以上説明した熱可塑性樹脂組成物は、ゴム成分がオレフィン系ゴム状重合体(G)であるグラフト共重合体(A)を含有するので、耐衝撃性、耐候性に優れる。しかも、オレフィン系ゴム状重合体(G)は特定量の酸変性低分子量α−オレフィンを含有するので、耐傷付き性にも優れる。また、特定量のN−置換マレイミド化合物単位と芳香族アルケニル化合物と(メタ)アクリル酸エステル化合物とからなるマレイミド系共重合体(B)を含有するので、成形性、耐熱性、低ガス性、顔料着色性に優れる。したがって、この熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、耐候性、低ガス性、耐熱性、顔料着色性、耐傷付き性のいずれもが優れる。
このような熱可塑性樹脂組成物は、例えば、表面の意匠性が重要で、製品組立時や製品そのものの耐久性が要求される自動車外装部品や建材等の用途に特に適している。
【0042】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
【0043】
[製造例1]オレフィン系ゴム状重合体(G−1)の製造
EPDMゴム(エチレン含量70%、プロピレン含量27%、ジエン成分として5−エチリデンノルボルネンを3%含有)87部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2.6部、および、低分子量酸変性α−オレフィン系重合体(三井化学工業(株)製、ハイワックス2203A)13部を同方向回転噛合型二軸押出機(池貝鉄工製、PCM−30型、L/D=40)のホッパーより4kg/時間の速度で供給した。それとともに、該押出機のベント部に設けた供給口から水酸化カリウム20%水溶液を110g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度(シリンダー温度)190℃、スクリュー回転数250rpmで混合した。続いて、得られた混合物を該押出機先端に取り付けた冷却用一軸押出機に連続的に供給して、90℃まで冷却した。そして、冷却して取り出した固体を温めた脱イオン水に連続的に溶解、拡散させて、質量平均粒子径が390nmである非架橋のエチレン−プロピレン系ゴム状重合体ラテックスを得た。
続いて、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機、温度計および攪拌装置を備えたステンレス製オートクレーブ内に、非架橋エチレン−プロピレン系ゴム状重合体ラテックス100部(固形分)、ジビニルベンゼン3部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名「パーヘキサ3M」)1.5部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、30分間保持した。その後、さらに120℃に昇温し、攪拌しながら2時間反応させてオレフィン系ゴム状重合体(G−1)ラテックス(ゲル分66%、質量平均粒子径390nm)を得た。
なお、ラテックスの質量平均粒子径は、マイクロトラック社製UPA150型粒径分布測定装置により求めた。
【0044】
[製造例2]オレフィン系ゴム状重合体(G−2)の製造
EPDMゴム(製造例1で用いたのと同じもの)100部、オレイン酸4.5部をn‐ヘキサン500部に完全に溶解してEPDMゴム溶液を得た。
また、脱イオン水640部に水酸化カリウム0.8部を溶解した水溶液に、エチレングリコール0.5部を加えて60℃に保ち、続いて、これに上記EPDMゴム溶液を徐々に加えて乳化した後、ホモミキサーで攪拌した。次いで、n−ヘキサン溶剤と水の一部を水蒸気蒸留にて留去して、粒径420nmの酸変性低分子量α−オレフィン系重合体を含まない非架橋オレフィン系ゴム状重合体ラテックスを得た。このラテックスを製造例1と同様にして架橋反応させて、架橋したオレフィン系ゴム状重合体(G−2)ラテックス(ゲル分75%、質量平均粒子径430nm)を得た。
【0045】
[製造例3]オレフィン系ゴム状重合体(G−3)の製造
製造例2において、EPDMゴムを75部、低分子量酸変性α−オレフィン系重合体を25部に変更した以外は製造例2と同様にして、架橋したオレフィン系ゴム状重合体(G−3)ラテックス(ゲル分65%、質量平均粒子径380nm)を得た。
【0046】
[製造例4]グラフト共重合体(A−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機、温度計および攪拌装置を備えたステンレス製重合槽に、表1に示すゴム混合物を仕込み、攪拌しながら内温を80℃にした。次いで、表1に示す単量体混合物を150分間かけて滴下供給すると同時に、表1に示すレドックス水溶液を別の注入口から180分間で連続して添加しながら重合させた。滴下終了後、内温80℃で30分間保持してから冷却してグラフト重合体(A−1)ラテックスを得た。
該ラテックスに酸化防止剤を添加した後、硫酸にて凝固処理を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、乳白色粉末状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
【0047】
【表1】
Figure 2004352842
【0048】
[製造例5,6]グラフト共重合体(A−2),(A−3)の製造
製造例4において、オレフィン系ゴム状重合体(G−1)ラテックスをオレフィン系ゴム状重合体(G−1),(G−2)にそれぞれ変更した以外は製造例4と同様にして、グラフト共重合体(A−2)、グラフト共重合体(A−3)を得た。
【0049】
[製造例7]マレイミド系共重合体(B−1)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、表2に示す単量体混合物を仕込み、碇型攪拌棒を用いて350回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、約3時間重合を行った。さらに、ジャケット加熱機により内温を90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、次いで、得られた固形物を乾燥して、ポリスチレン換算質量平均分子量が105,000のマレイミド系共重合体(B−1)を得た。
【0050】
【表2】
Figure 2004352842
【0051】
[製造例8]マレイミド系共重合体(B−2)の製造
製造例7において、N−フェニルマレイミドをN−シクロヘキシルマレイミドに変更した以外は製造例7と同様にして、ポリスチレン換算質量平均分子量が100,000のマレイミド系共重合体(B−2)を得た。
【0052】
[製造例9]マレイミド系共重合体(B−3)の製造
製造例7において、単量体をN−フェニルマレイミド30部、スチレン5部、α−メチルスチレン5部、メタクリル酸メチル60部に変更した以外は製造例7と同様にして、ポリスチレン換算質量平均分子量が92,000のマレイミド系共重合体(B−3)を得た。
【0053】
[製造例10]マレイミド系共重合体(B−4)の製造
製造例7において、単量体をN−フェニルマレイミド10部、スチレン7部、α−メチルスチレン7部、メタクリル酸メチル76部に変更した以外は製造例7と同様にして、ポリスチレン換算質量平均分子量が94,000のマレイミド系共重合体(B−4)を得た。
【0054】
[製造例11]マレイミド系共重合体(B−5)の製造
製造例7において、単量体をN−フェニルマレイミド50部、α−メチルスチレン40部、メタクリル酸メチル10部に変更した以外は製造例7と同様にして、ポリスチレン換算質量平均分子量が93,000のマレイミド系共重合体(B−5)を得た。
【0055】
[製造例12]マレイミド系共重合体(B−6)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機、温度計および攪拌装置を備えたステンレス製重合槽に、脱イオン水200部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部、過硫酸カリウム0.3部を仕込み、窒素置換した。次いで、攪拌しながら73℃に加熱後、表3に示す単量体混合物を180分かけて滴下供給して重合させた。その後、120℃で120分処理した後に冷却して、重合体ラテックスを得た。
次いで、このラテックスを塩化カルシウムで凝固回収し、洗浄、脱水、乾燥して粉末状のマレイミド系共重合体(B−6)を得た。
【0056】
【表3】
Figure 2004352842
【0057】
[製造例13]他の熱可塑性樹脂(C−1)の製造
アクリロニトリル7部、スチレン23部、メタクリル酸メチル70部からなる単量体混合物を公知の懸濁重合により重合して、 ポリスチレン換算質量平均分子量が105,000のアクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体(C−1)を製造した。
【0058】
(実施例1〜5および比較例1〜3)
上述のように製造したグラフト共重合体(A−1)〜(A−3)と、マレイミド系共重合体(B−1)〜(B−5)とを表4に示す割合でそれぞれ配合し、さらに滑剤としてエチレンビスステアリルアミドを0.4部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。次いで、得られた混合物をバレル温度260℃に設定した二軸押出機で賦形し、ペレットを作製した。
得られたペレットをシリンダー温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、以下のように耐候性評価を行った。
また、アイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度(VST)測定用試験片を射出成形法により作製し、これを用いて以下のようにアイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度の測定を行った。
また、流動性、耐熱性、顔料着色性、耐傷付き性、ガス発生量を以下のように評価した。
これら評価結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
Figure 2004352842
【0060】
(1)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準拠し、23℃雰囲気下で12時間以上放置したノッチあり試験片を用いて測定した。
(2)耐候性
100mm×100mm×3mm白着色板を、サンシャインウエザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨:12分)の条件で1,000時間処理した。そして、その処理前後の変色の度合い(ΔE)を色差計で測定して評価した。
(3)メルトフローレート(MFR)
ASTM D1238(B法)に準拠し、バレル温度220℃、荷重98N(10kgf)の条件で測定した。
(4)ビカット軟化点温度(VST)
ISO 306に準拠して測定した。
【0061】
(5)顔料着色性
東芝機械(株)製射出成形機IS−100ENを用いて成形した100mm×100mm×3mmの黒着色板を用い、JIS Z8729に準拠して色相測定した。
(6)耐傷付き性
上記の100mm×100mm×3mm白着色板を用いて、JIS K5400に準拠し、鉛筆硬度を測定した。
(7)ガス発生量
東芝機械(株)製射出成形機IS−100ENを用い、シリンダー温度260℃、金型温度60℃の条件で、100mm×100mm×3mm板を成形する際に、充填樹脂量を金型内容積の約1/2に下げてショートショットになるようにした。そして、60秒サイクルで30ショット成形し、その際に金型に付着したガス量を目視にて判定した。評価は、ガス量が殆どみられないかまたはかなり少ないものを「○」、ガス付着量が多く実用に耐えないものを「×」、その中間を「△」とした。
【0062】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
実施例1〜実施例5の熱可塑性樹脂組成物は、本発明を構成するグラフト共重合体(A)およびマレイミド系共重合体(B)を含有していたので、アイゾット衝撃強度、メルトフローレート、耐熱性が高かった。また、耐候性、顔料着色性にも優れ、しかも高いレベルの耐傷付き性を有していた。この様な熱可塑性樹脂組成物からなる成形品は自動車外装部品などに適しており、工業的利用価値が高い。
【0063】
比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A−2)中のオレフィン系ゴム状重合体が、酸変性低分子量α−オレフィン共重合体を含まなかったので、耐傷付き性が低かった。このような熱可塑性樹脂組成物は、例えば自動車外装等の高い耐傷付き性を要求される用途に使用できないため、工業的利用価値が低い。
比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A−3)中のオレフィン系ゴム状重合体が酸変性低分子量α−オレフィン共重合体を25質量%含んでいたので、耐傷付き性は良好であったものの、アイゾット衝撃強度が低かった。このように耐衝撃性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐衝撃性を必要とする用途に使用することができないため、工業的利用価値が低い。比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、マレイミド系共重合体(B−5)中の芳香族アルケニル化合物単位が20質量部を越えていたので、アイゾット衝撃強度、メルトフローレートが低いだけでなく、耐候性や顔料着色性も低かった。このような材料は工業的利用価値が低い。
さらに、実施例1と実施例2との比較により、マレイミド系共重合体(B)を構成するN−置換マレイミド化合物がN−フェニルマレイミドであると、アイゾット衝撃強度と耐熱性がより優れることが判明した。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、耐候性、低ガス性、耐熱性、顔料着色性、耐傷付き性のいずれもが優れる。特に、耐衝撃性と耐傷付き性とのバランスは、従来知られている熱可塑性樹脂組成物では得られない程の非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。

Claims (6)

  1. エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)80質量%〜99.9質量%および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体20質量%〜0.1質量%からなるオレフィン系ゴム状重合体(G)に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体単位から構成されるビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体(A)1質量部〜99質量部と、
    N−置換マレイミド化合物単位1質量%〜98質量%、芳香族アルケニル化合物単位1質量%〜20質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位1質量%〜98質量%、これらと共重合可能な他の単量体単位0〜50質量%からなるマレイミド系共重合体(B)99質量部〜1質量部と、
    他の熱可塑性樹脂(C)0〜50質量部((A)と(B)と(C)の合計は100質量部)とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. オレフィン系ゴム状重合体(G)が機械乳化法により製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. N−置換マレイミド化合物単位が、N−フェニルマレイミド単位であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. マレイミド系共重合体(B)が、懸濁重合、塊状重合、溶液重合のいずれかの方法により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. マレイミド系共重合体(B)中の芳香族アルケニル化合物単位が、スチレン単位とα−メチルスチレン単位とを共に含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 他の熱可塑性樹脂(C)が(メタ)アクリル酸エステル単位を50質量%以上含み、他の熱可塑性樹脂(C)の含有量が5〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
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