JP2004351859A - 引裂き性に優れる包装材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易に製造でき、易開封性とするための部分的な構造を必要とせずに直線的な引裂き性に優れた包装材料を提供する。
【解決手段】包装材料1は、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを一方向に配列させた延伸一方向配列不織布からなる基材層2と、その少なくとも片面に積層された合成樹脂層3とを有する。
【選択図】 図1
【解決手段】包装材料1は、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを一方向に配列させた延伸一方向配列不織布からなる基材層2と、その少なくとも片面に積層された合成樹脂層3とを有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向への引裂き性に優れ、手で容易に開封できる包装袋を作るのに適した包装材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装材料の素材として、紙、プラスチックフィルム、不織布などが用いられている。しかし、紙は印刷性に優れているが強度が小さく、プラスチックフィルムは強度は十分であるが風合いが悪く高級感に乏しい。不織布は、紙やプラスチックフィルムの欠点を補い得るものであるが、繊維の配列構造に起因して引裂き方向が一定せず開封時に内容物が飛散したり、開封部に毛羽立ちが生じたりし、それぞれ一長一短がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、基材フィルムと熱接着性フィルムとを二液反応型接着剤等を用いて貼り合わせた積層フィルムを用い、開封位置に易開封性手段を設けるとともに、この領域が加熱処理された袋が開示されている。易開封性手段としては、ノッチ、レーザ光照射などによるハーフカット線、機械的方法によって袋の端部に形成された細長い小さな傷痕群、積層フィルム中に積層した易引裂き性フィルム、カットテープが例示されている。易開封性手段を設けた領域を加熱処理することで、二液反応型接着剤等の反応、硬化が促進されるので、この部分の積層フィルムのラミネート強度が向上するとともに、易引裂き性が向上する。
【0004】
また、特許文献2には、包装体形成時に開封部となる部分に不織布を溶融固化させた帯状の易開封加工部を設けた包装材料が開示されている。このように、易開封加工部を設けることによって、開封時の開封方向が一定し、また、開封時に毛羽立ちが生じないものとすることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−54580号公報
【特許文献2】
特開平11−349035号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装材料には以下に示すような問題点があった。
【0007】
特許文献1に記載されたものでは、例えば易開封性手段としてハーフカット線を入れた場合は、包装材料の強度が小さくなり破袋のおそれが生じる。また、カットテープを貼り付けたり、傷痕群を付与したり、易引裂き性フィルムを積層したりすることによって、製造工程が増加し、結果的にはコストアップを招く。しかも、これらの手段をもってしても、包装材料を確実に直線的に引裂くことは難しかった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたものも、従来の製袋機に、易開封加工部を形成するためのヒートシール機構を追加する改造を伴い、汎用的ではない。また、仕上がった包装袋には余分な熱融着部が存在することになり、外観上好ましくない。
【0009】
そこで本発明は、不織布を基材として用いることによって風合いを向上させながらも、簡易に製造することができ、直線的な引裂き性に優れ、しかも開封のために部分的に設ける余分な構造が不要な包装材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の包装材料は、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを前記一方向に配列させた延伸一方向配列不織布からなる基材層と、この基材層の少なくとも片面に積層された合成樹脂層とを有している。
【0011】
上記のとおり構成された包装材料では、基材層は不織布で構成され、しかも基材層に合成樹脂層が積層されているので、風合いを維持しつつも必要な強度が確保される。また、基材層を構成する不織布は延伸一方向配列不織布であるので、開封性を向上させるための特別な構造を包装材料に設けることなく、フィラメントの配列方向に沿って直線的に容易に引裂くことが可能である。さらに、包装材料の製造は、基材層と合成樹脂層とを積層するだけなので、特に複雑な処理も必要なく、容易である。
【0012】
上記の包装材料において、基材層に、フィラメントの部分的な押し込みが生じていない非エンボス部が少なくともフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンで、エンボス加工をさらに施すことで、フィラメントの拘束性が増し、フィラメントの配列方向に沿った引裂き性がより向上する。エンボス加工は、不織布等の製造において一般に用いられる技術であるので、エンボス加工を付加することにより製造が複雑になることはない。
【0013】
また本発明は、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを一方向に配列させた2枚の延伸一方向配列不織布を、フィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布からなる基材層と、この基材層の少なくとも片面に積層された合成樹脂層とを有している。そして、基材層は、2枚の延伸一方向配列不織布の坪量が互いに異なっている。
【0014】
上記のように構成された包装材料においても、基材層が不織布で構成され、しかも基材層に合成樹脂層が積層されているので、風合いを維持しつつも必要な強度が確保される。引裂き性に関しても、直交積層不織布を構成する各延伸一方向配列不織布の坪量が互いに異なっているので、開封性を向上させるための特別な構造を包装材料に設けることなく、坪量の小さいほうの延伸一方向配列不織布のフィラメントを個々に破断しつつ、坪量の大きいほうの延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向に沿って直線的に容易に引裂くことが可能である。また、包装材料の製造も、基材層と合成樹脂層とを積層するだけなので、特に複雑な処理も必要なく、容易である。
【0015】
また、基材層を直交積層不織布で構成した場合においても、引裂き性を向上させるために、基材層に、フィラメントの部分的な押し込みが生じていない非エンボス部が少なくとも坪量の少ない方の延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンで、エンボス加工を施すことが好ましい。このエンボス加工は、直交積層不織布を製造する際の、2枚の延伸一方向配設不織布を積層する際の積層方法として利用すれば、製造工程を削減することができる。
【0016】
本明細書において、不織布、ウェブ、包装材料等の「縦方向」とは、これらを製造する際の機械方向すなわち送り方向を意味し、「横方向」とは、縦方向と直角な方向、すなわち不織布、ウェブ、包装材料を製造する際のこれらの幅方向を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による包装材料の構成を示す模式的断面図である。図1に示すように、本実施形態の包装材料1は、不織布からなる基材層2と、この基材層2の片面に積層された合成樹脂層3とを有する。このように、基材層2は不織布で構成されるので、風合いを維持することができ、しかも基材層2に合成樹脂層3が積層されているので、包装材料1に必要な強度が確保される。以下に、これら基材層2および合成樹脂層3について詳細に説明する。
【0019】
(1)基材層
基材層2には、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントをほぼ一方向に配列させた延伸一方向配列不織布、または、2枚の延伸一方向配列不織布をフィラメントの配列方向が縦方向および横方向となるように積層した直交積層不織布が用いられる。
【0020】
延伸一方向配列不織布は、紡糸段階では通常の不織布と同様に紡糸されるが、これをフィラメントの配列方向に5〜8倍に延伸することにより、延伸後の引張り強度が向上する。また、延伸によって、フィラメントの繊度は主として1.5dTex以下とされる。
【0021】
延伸一方向配列不織布には縦延伸不織布と横延伸不織布とがあり、本発明においてはこれらの何れも使用できる。縦延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向である縦方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、横延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向である横方向すなわち幅方向にフィラメントが配列された不織布である。
【0022】
縦延伸不織布は、紡糸されたフィラメントにドラフト張力を与えてフィラメントを細径化した後、コンベア上に集積させることによって、フィラメントが縦方向に配列したウェブを形成し、これを縦方向に延伸することによって得られる。
【0023】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー法(MB法)や、狭義のスパンボンド法(SB法)が挙げられる。何れの方法でも、フィラメントを細径化する際にできるだけ分子配向を伴わないようにするために、フィラメントに熱風を噴射する。また、コンベア上でのフィラメントの配列性を向上させるために、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸したり、熱風の流域中にロッド部材を配置し、このロッド部材の回転または移動により生じるコアンダ効果を利用してフィラメントを縦方向に振動させたりすることが好ましい。
【0024】
コンベア上に集積したウェブは縦方向に延伸されるが、ウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの縦方向への配列性がより向上する。ウェブの縦延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸が用いられる。多段延伸においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、2段目以降の延伸が主延伸として行われる。
【0025】
次に、横延伸不織布について説明する。横延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントが横方向に配列したウェブを形成する。フィラメントが横方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより紡糸されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からエアを直接噴出することにより横方向に振らせ、コンベア上に集積することによって形成することができる。また、他の方法として、上述したコアンダ効果を利用してフィラメントを横方向に振動させ、コンベア上に集積する方法もある。このようにして、コンベア上には、横方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0026】
こうして得られたウェブを横方向に延伸することで、横延伸不織布が得られる。ウェブを横方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、設備の設置のために広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて製品幅を自由に変える必要があり、また、原料の厚さ等に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。
【0027】
延伸一方向配列不織布の代表的な製造方法について、縦延伸不織布および横延伸不織布を例に挙げて説明したが、延伸一方向配列不織布の製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつ配列したフィラメントをその配列方向に延伸できる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0028】
次に、直交積層不織布について説明する。直交積層不織布は、2枚の延伸一方向配列不織布をそのフィラメントの配列方向を直交させて積層したものである。
【0029】
延伸一方向配列不織布には、前述したように縦延伸不織布と横延伸不織布とがあるが、直交積層不織布を構成するためには、フィラメントの配列方向が互いに直交していれば、これらの何れも使用することができ、また、組み合わせも任意である。
【0030】
延伸一方向配列不織布および直交積層不織布を構成する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロンやポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル等のように、フラットヤーンや産業資材繊維として使用される樹脂が挙げられる。それらの中でも特に、ポリプロピレンやポリエステルが、コストや取り扱いなどの点で優れている。
【0031】
以上説明したように、延伸一方向配列不織布は、微細なフィラメントが高度に一方向に配列したものであるので、基材層2に延伸一方向配列不織布を用いることで、フィラメントの配列方向に沿って容易に引裂くことができる。しかも、基材層2には合成樹脂層3が積層されており、これによってフィラメントの動きが拘束されるので、包装材料1を基材層2のフィラメントの配列方向に沿って直線的に引裂くことができる。
【0032】
基材層2として直交積層不織布を用いた場合は、積層する2枚の延伸一方向配列不織布の坪量を互いに異ならせることで、一方向への引裂き性を向上させることができる。すなわち、包装材料1の縦方向にフィラメントが配列された延伸一方向配列不織布の坪量を、横方向にフィラメントが配列された延伸一方向配列不織布の坪量よりも少なくすれば、縦方向に引裂くことができ、坪量の関係をこれと逆にすれば、横方向に引裂くことができる。
【0033】
この際、フィラメントの配列方向が引裂き方向と直交している延伸一方向配列不織布は、フィラメントが個々に破断することになる。そこで、引裂き性を向上させるためには、引裂き方向と直交する方向にフィラメントが配列している延伸一方向配列不織布の繊度は、1.1dTex以下であることが好ましい。繊度が1.1dTex以下の細いフィラメントでは、フィラメントの配列方向と直交する方向に引裂かれた場合でも引裂き応力が個々のフィラメントを各個に破断するため、小さい応力で引裂きが伝播する。
【0034】
基材層2の坪量は、1〜30g/m2であることが好ましく、より好ましくは5〜20g/m2である。坪量が1g/m2未満では、このような低い坪量の基材層2を製造することが難しい。また、たとえ製造できたとしてもフィラメントの配列性が乱れ易くなるので、引裂き性に劣り意匠性も低下する。さらに、フィラメントの粗密の差が顕著になり、印刷性が低下する。一方、坪量が30g/m2を超えると、引裂き性は向上するものの、厚みが厚くなることによりコストアップにつながる。基材層2を直交積層不織布で構成した場合は、一方の延伸一方向配列不織布の坪量を5g/m2以下、他方の延伸一方向配列不織布の坪量を5〜30g/m2とすることにより、坪量が大きい延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向への引裂きを良好に行えるようになる。
【0035】
基材層2には、エンボス加工が施されていることが好ましい。図2に、基材層に形成されたエンボスパターンの一例を示すための、基材層の部分平面図である。図2に示すように、エンボス加工によって、基材層2にはフィラメントが部分的に押し込まれた部分である多数のエンボス部4が形成され、これによってフィラメントがある程度拘束される。エンボス部4のパターンは千鳥状に配列されており、フィラメントが部分的に押し込まれていない部分である非エンボス部が少なくともフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンとされる。本実施形態では、基材層2が、フィラメントが縦方向に配列された場合、および横方向に配列された場合の何れでも共通に適用できるように、このような非エンボス部が縦方向および横方向の両方向に形成されるパターンとしており、そのようなパターンとしては、図2に示すようなドットパターンが好ましい。図2では特に、非エンボス部のうち、縦方向および横方向にそれぞれ連続した領域を、エンボス部間領域5として示している。
【0036】
上述のようなエンボス加工を基材層2に施すことで、基材層2にはフィラメントの配列方向に沿って非エンボス部が形成され、この非エンボス部ではフィラメントの拘束力は、エンボス部4と比べて弱い。したがって、この非エンボス部でフィラメントの配列方向(基材層2が直交積層不織布の場合は、坪量が大きいほうの延伸一方向配列不織布におけるフィラメントの配列方向)に沿って、基材層2をより容易に直線的に引裂くことができる。また、個々のフィラメントは一方向に配列されているので、ドットパターンでエンボス加工を施すことで、基材層2に織物に近い外観を与えることができ、意匠性および高級感を向上させることができる。さらに、エンボス加工を施すことによって、引裂かれた端面での毛羽立ちも抑えることができる。その結果、内容物に不織布の毛羽が付着するのを防止でき、衛生的である。
【0037】
基材層2を構成する延伸一方向配列不織布は、前述したように極めて微細なフィラメントからなるので、エンボス加工におけるドットのサイズ(エンボス部4のサイズ)を小さくし、単位長さあたりのドットの数を多くしても十分にフィラメントを拘束できる。ドットの数が増すことによって、エンボス部4の面積は小さくなるので、基材層2に印刷を施す場合には、印刷適正が向上する。エンボス加工における単位長さあたりのドットの数は、1インチ(2.54cm)あたり10〜60個であることが好ましい。
【0038】
フィラメントを十分に拘束するのに必要な単位長さあたりのドットの数は、基材層2の坪量に依存する。坪量が大きいと、基材層2の厚みも厚くなり、ドット面積を大きくしてエンボス深さを深くしないと十分にフィラメントを拘束することができない。一方、坪量が小さければ、エンボス深さが浅くてもよいので、ドット面積を小さくしてもフィラメントを十分に拘束できる。後述するように、基材層2の坪量が30g/m2以下であれば、1インチ当たりのドット数を60個以上としても十分にフィラメントを拘束することができる。ただし、このドット数が60個を超えると、実質的にエンボスロールを製造することが難しくなる。
【0039】
本実施形態では、図2に示すように、エンボス部4の直径dを約0.2mm、エンボス部間領域5の幅wを約0.16mmとした。また、隣接するエンボス部4間の距離が最も小さくなる方向(縦方向および横方向に対して45°の方向)でのエンボス部4のピッチpは約0.51mmとし、この方向で、1インチ当たりのエンボス部4の数(ドット数)は約50個となる。
【0040】
また、基材層2を直交積層不織布で構成する場合、延伸一方向配列不織布同士の積層に、上記のエンボス加工を利用すれば、製造工程を削減することができる。
【0041】
図2では、エンボス部4が円形のドットである例を示したが、エンボス部4の形状はこれに限られず、楕円形や菱形など、任意の形状とすることができる。また、図2ではエンボス部間領域5が縦方向および横方向に沿って形成された例を示したが、本発明においてはエンボス部間領域5を両方向に沿って設ける必要はなく、フィラメントの配列方向、特に目的とする引裂き方向に応じて、縦方向または横方向のいずれか一方のみに沿って設けられていてもよい。
【0042】
(2)合成樹脂層
合成樹脂層3は、押出しラミネーション法やドライラミネーション法によって、基材層2上に設けることができる。
【0043】
押出しラミネーション法では、溶融樹脂が基材層2のフィラメントの間に入り込みフィラメントを拘束するので、引裂き性をさらに高める効果を発揮する。押出しラミネーション法で合成樹脂層3を形成する場合、用いられる合成樹脂としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。
【0044】
ドライラミネーション法では、合成樹脂層3として合成樹脂フィルムを用い、これを基材層2と接着剤で接着して両者を積層する。合成樹脂フィルムとしては、分子配向を伴わない無配向のフィルム、一方向に延伸した一軸延伸フィルム、または2方向に延伸した2軸延伸フィルムを使用することができる。特に、縦方向に易引裂き性を向上させるためには、フィラメントが縦方向に配列した延伸一方向配列不織布を基材層2に用い、これに合成樹脂層3として、縦方向に延伸した一軸延伸フィルムを組み合わせるとよい。また、横方向に易引裂き性を向上させるためには、フィラメントが横方向に配列した延伸一方向配列不織布を基材層2に用い、これに合成樹脂層3として、横方向に延伸した横一軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムを組み合わせることが好ましい。
【0045】
延伸フィルムとしては、横一軸延伸ポリエチレンフィルム、縦一軸延伸ポリエチレンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリスチレンフィルム、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ポリアミドフィルムなどが挙げられる。延伸フィルムとしては、この他にも、ポリマーブレンドによって生じるフィルム内の分子構造に基づく直線カット性に優れるフィルムも利用することができる。例えば、ナイロン/メタキシリレンアミン(MXD)ナイロンブレンド系2軸延伸ナイロンフィルム(出光石油化学製、商品名「ユニアスロンHP」)、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートブレンド系(PC/PET)2軸延伸PETフィルム(ユニチカ製、商品名「エンブレットPC−12」)等を挙げることができる。
【0046】
ドライラミネーション法で用いられる接着剤には、ポリウレタン系二液反応型接着剤が好ましく用いられる。この接着剤は、高分子末端に水酸基を有するポリオール成分とイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分を主成分とし、水酸基とイソシアネート基の反応でウレタン結合を形成して硬化させ接着するものである。ドライラミネーション法で用いられる接着剤には、この他にも、一液反応型接着剤として、イソシアネート基を末端にもつプレポリマーウレタン接着剤、例えば、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートを反応させて得られるポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、あるいは一液反応型のアクリル系接着剤などを使用することができる。
【0047】
また、ドライラミネーション法で合成樹脂層3を積層する場合、延伸一方向配列不織布の製造工程においてフィラメントを延伸した直後に上述の合成樹脂フィルムを供給し、熱圧着法によって合成樹脂フィルムを積層することも可能である。この方法は、延伸一方向配列不織布の製造工程中で合成樹脂フィルムを積層することができるので、包装材料1の製造工程を削減することができ、安価な包装材料1を提供することができる。
【0048】
上述した合成樹脂層3は、単層であってもよいし、2種以上を積層して構成してもよい。また、これらの合成樹脂層3の1層または2層以上とアルミニウム等の金属箔を貼り合わせて構成することもできる。特に、ガスバリア性を必要とする内容物を包装するのに用いられる包装材料1の場合には、ポリ塩化ビニリデン樹脂層、EVAケン化物層、アルミニウムや酸化珪素などの金属酸化物の蒸着体を使用することが好ましい。これらの積層体を製造する際には、必要に応じて、各層間にエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂等からなる接着剤やアンカー剤を介在させることができる。
【0049】
以上、図1を参照して、基材層2の片面に合成樹脂層3が設けられた包装材料1について説明したが、図3に示すように、基材層12の両面に合成樹脂層13a、13bを設けた包装材料11とすることもできる。この場合、一方の合成樹脂層13aは、包装材料11の表面保護層として、そして、他方の合成樹脂層13bは、包装材料11から包装袋を製造する際のヒートシール層としての機能を持たせることができる。
【0050】
本発明の包装材料には、印刷を施してもよい。基材層を構成する不織布は高度に一方向に配列された微細なフィラメントからなるので、印刷は、合成樹脂層および基材層の何れに施しても鮮明で良好な印刷が可能である。印刷を基材層と合成樹脂層との積層面に施す場合は、合成樹脂層を透明なものとすれば、合成樹脂層を通して印刷情報を視認することができる。印刷には、グラビア印刷、オフセットグラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット方式による印刷、転写印刷などを用いることができる。
【0051】
また、包装材料には、染色、捺染などにより着色や装飾を施すことも可能である。さらに、高級感を増すために、印刷性を改良したり、表面に光沢を付与したりすることも可能であり、また、意匠性の改良などを目的として、樹脂コーティング加工、カレンダー加工、抜食加工、プリーツ加工、起毛加工、サンフォライズ加工などの二次加工を加えることもできる。
【0052】
以下に、本発明の包装材料に適用可能な層構成の代表的な例を列挙する。なお、以下の例では、基材層は延伸一方向配列不織布または直交積層不織布を示す。また、aで始まる例は、基本構成として図1に示した構成(基材層の片面に合成樹脂層を設けた構成)を有するもので、bで始まる例は、基本構成として図3に示した構成(基材層の両面に合成樹脂層を設けた構成)を有するものである。
(a−1)印刷層/基材層/押出し樹脂層、
(a−2)印刷層/基材層/接着層/無配向フィルム、
(a−3)印刷層/基材層/接着層/延伸フィルム/押出し樹脂層、
(a−4)印刷層/基材層/接着層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム、
(a−5)基材層/接着層/印刷層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム、
(a−6)基材層/押出し樹脂層/延伸フィルム/印刷層/接着層/シーラントフィルム、
(b−1)押出し樹脂層/印刷層/基材層/接着層/シーラントフィルム、
(b−2)押出し樹脂層/印刷層/基材層/接着層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム、
(b−3)印刷層/押出し樹脂層/基材層/接着層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム。
【0053】
上記の層構成においては、包装材料による包装の対象となる被包装物、易引裂き方向、要望されるシール強度、意匠性などによって、各層を構成する材料が適宜選択される。また、上記の層構成はあくまでも代表的な例であり、本発明の包装材料は、上記の層構成に限定されるものではない。
【0054】
【実施例】
次に、本発明の具体的な幾つかの実施例について比較例とともに説明する。
【0055】
(実施例1)
本実施例では、基材層としてフィラメントが縦方向に配列された延伸一方向配列不織布(縦延伸不織布)を用いた。この延伸一方向配列不織布は、以下のようにして作製した。原料樹脂としてポリエステル樹脂(東洋紡績製、IV値=0.63、融点260℃)を用いて、これを押出機により溶融混練し、ギヤポンプより定量的に押出して、熱風とともにメルトブローダイスよりフィラメント状に紡出した。紡出したフィラメントを傾斜したコンベア上に集積して、フィラメントがほぼ縦方向に配列されたウェブとし、これを延伸ロールにより縦方向に6倍に延伸して、縦延伸不織布を作製した。得られた縦延伸不織布は、坪量が20g/m2であり、繊度は1.1dTexであった。
【0056】
次いで、縦延伸不織布の片面に、厚さ30μmの高密度ポリエチレンからなり縦方向に延伸した一軸延伸ポリエチレンフィルムを、ウレタン系接着剤によりドライラミネートした。その後、グラビア印刷法によって、縦延伸不織布の反対側の面に所定の印刷を施した。さらに、シーラント層として、厚さ20μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を、押出しラミネーション法によって、一軸延伸ポリエチレンフィルム側に積層し、包装材料とした。
【0057】
(実施例2)
実施例1で得られた縦延伸不織布にエンボス加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして包装材料を作製した。縦延伸不織布へのエンボス加工は、ドットが1インチあたり50個の割合で図2に示したように千鳥状に分布したエンボスロールによって行った。エンボスの条件は、ロール温度が220℃、線圧が300N/cmとした。
【0058】
(実施例3)
本実施例では、基材層としてフィラメントが横方向に配列された延伸一方向配列不織布(横延伸不織布)を用いた。この延伸一方向配列不織布は、以下のようにして作製した。原料樹脂としてポリエステル樹脂(東洋紡績製、IV値=0.63、融点260℃)を用いて、これを押出機により溶融混練し、ギヤポンプにより定量的に押出し、スプレーノズルに導いた。スプレーノズルから紡出されたフィラメントに熱風を吹き付けることにより、フィラメントをコンベアの進行方向に対して直角な方向に飛散させ、これによって、フィラメントがほぼ横方向に配列されたウェブをコンベア上に集積した。続いて、このウェブをプーリ式のヨコ延伸装置を用い、横方向に5.5倍に延伸し、横延伸不織布を作製した。得られた横延伸不織布は、坪量が20g/m2であり、繊度は1.0dTexであった。
【0059】
次いで、横延伸不織布の片面に、厚さ25μmの高密度ポリエチレンからなる横延伸フィルム(東洋化学製、商品名「カラリアン」)を、ウレタン系接着剤によりドライラミネートした。その後、実施例1と同様に、横延伸不織布の反対側の面に所定の印刷を施すとともに、横延伸フィルム側にシーラント層を積層し、包装材料とした。
【0060】
(実施例4)
実施例3で得られた横延伸不織布にエンボス加工を行ったこと以外は、実施例3と同様にして包装材料を作製した。横延伸不織布へのエンボス加工に際しては、実施例2で用いたのと同じエンボスロールを使用し、また、エンボス条件も実施例2と同様とした。
【0061】
(実施例5)
本実施例では、基材層として、縦延伸不織布と横延伸不織布とを積層した直行積層不織布を用いた。この直交積層不織布を構成する縦延伸不織布および横延伸不織布は、縦延伸不織布の坪量を3g/m2とするとともに、横延伸不織布の坪量を20g/m2としたこと以外は、それぞれ実施例1および実施例2と同様にして作製した。そして、これらをフィラメントの配列方向が直交するように互いに積層して直交積層不織布を作製した。
【0062】
次いで、得られた直交積層不織布の片面に、厚さ20μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、商品名「トレリナ」)を、ウレタン系接着剤によりドライラミネートした。その後、実施例1と同様に、直交積層不織布の反対側の面に所定の印刷を施すとともに、2軸延伸ポリエチレンフィルム側にシーラント層を積層し、包装材料とした。
【0063】
(実施例6)
実施例5において、縦延伸不織布と横延伸不織布との積層を、実施例2と同じエンボスロールを使用し、かつ、実施例2と同様のエンボス条件によるエンボス加工で行ったこと以外は、実施例5と同様にして包装材料を作製した。
【0064】
(比較例1)
基材層として坪量が20g/m2のポリエステル製スパンボンド不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして包装材料を作製した。一般のスパンボンド不織布には、フィラメントの安定化のために既にエンボス加工が施こされている。ちなみに、スパンボンド不織布のエンボスパターンは、1インチ当たりの数がおよそ10個の、ドットの千鳥配列パターンであった。
【0065】
(比較例2)
基材層として坪量が20g/m2のポリエステル製スパンボンド不織布を用いたこと以外は、実施例3と同様にして包装材料を作製した。
【0066】
(比較例3)
実施例6において、縦延伸不織布および横延伸不織布の坪量を共に10g/m2として、両者をエンボス加工して積層した直交積層不織布を作製したこと以外は、実施例6と同様にして包装材料を作製した。
【0067】
以上のようにして作製した実施例1〜6、比較例1〜3について、それぞれJIS L 1906のシングルタング法に準拠して引裂き強度を測定した。引裂き強度の測定に際しては、目的とする引裂き方向のみを測定した。つまり、実施例1、2は縦方向であり、実施例3〜6は横方向である。また、比較例1は、実施例1、2との対照用、比較例2は実施例3、4との対照用、比較例3は実施例5、6との対照用のサンプルであるので、それらに対応した方向についての引裂き強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
実施例1〜6については、所望の方向へ直線的にかつ容易に引裂くことができ、引裂いた端部からの毛羽も抑えることができた。さらに、表面には微細なフィラメントが整然と配列されているので、印刷が鮮明であり、しかも光沢感があり高級感のある包装材料となった。特に、実施例5、6については、フィラメントが縦方向および横方向に配列しているので、織物に近い外観を呈していた。また、実施例1〜6のいずれも所望の方向への引裂き強度は小さく、このことからも、所望の方向への引裂き性に優れることが分かる。
【0069】
比較例1、2については、スパンボンド不織布は、繊維配列がランダムであるため、平滑性は劣り印刷性が悪く、たとえ1インチあたり10個のドットの千鳥配列パターンでエンボス加工が施されていても、引裂き強度は高く、容易に引裂くことはできなかった。無理に引裂こうとすると、スパンボンド不織布と延伸フィルムとの間で層間剥離が生じた。比較例3については、基材層が直交積層不織布で構成されているので印刷性は良好であったが、縦延伸不織布と横延伸不織布の坪量が等しいため、縦方向にも横方向にも容易に引裂くことができなかった。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、包装材料は、不織布からなる基材層と、この基材層に積層された合成樹脂層とを有するので、風合いを維持しつつも、包装材料に必要な強度を確保することができる。しかも、基材層には延伸一方向配列不織布が用いられているので、特別な構造を付加することなく、フィラメントの配列方向に沿って直線的にかつ容易に包装材料を引裂くことができる。また、包装材料の製造に関しても、特別な工程は不要であるので、容易に製造することができる。
【0071】
また、基材層に、上述した所定のパターンでエンボス加工を施すことで、直線的な引裂き性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による包装材料の構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1に示す基材層に形成されたエンボスパターンの一例を示す、基材層の部分平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による包装材料の構成を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1,11 包装材料
2,12 基材層
3,13a,13b 合成樹脂層
4 エンボス部
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向への引裂き性に優れ、手で容易に開封できる包装袋を作るのに適した包装材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装材料の素材として、紙、プラスチックフィルム、不織布などが用いられている。しかし、紙は印刷性に優れているが強度が小さく、プラスチックフィルムは強度は十分であるが風合いが悪く高級感に乏しい。不織布は、紙やプラスチックフィルムの欠点を補い得るものであるが、繊維の配列構造に起因して引裂き方向が一定せず開封時に内容物が飛散したり、開封部に毛羽立ちが生じたりし、それぞれ一長一短がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、基材フィルムと熱接着性フィルムとを二液反応型接着剤等を用いて貼り合わせた積層フィルムを用い、開封位置に易開封性手段を設けるとともに、この領域が加熱処理された袋が開示されている。易開封性手段としては、ノッチ、レーザ光照射などによるハーフカット線、機械的方法によって袋の端部に形成された細長い小さな傷痕群、積層フィルム中に積層した易引裂き性フィルム、カットテープが例示されている。易開封性手段を設けた領域を加熱処理することで、二液反応型接着剤等の反応、硬化が促進されるので、この部分の積層フィルムのラミネート強度が向上するとともに、易引裂き性が向上する。
【0004】
また、特許文献2には、包装体形成時に開封部となる部分に不織布を溶融固化させた帯状の易開封加工部を設けた包装材料が開示されている。このように、易開封加工部を設けることによって、開封時の開封方向が一定し、また、開封時に毛羽立ちが生じないものとすることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−54580号公報
【特許文献2】
特開平11−349035号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した包装材料には以下に示すような問題点があった。
【0007】
特許文献1に記載されたものでは、例えば易開封性手段としてハーフカット線を入れた場合は、包装材料の強度が小さくなり破袋のおそれが生じる。また、カットテープを貼り付けたり、傷痕群を付与したり、易引裂き性フィルムを積層したりすることによって、製造工程が増加し、結果的にはコストアップを招く。しかも、これらの手段をもってしても、包装材料を確実に直線的に引裂くことは難しかった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたものも、従来の製袋機に、易開封加工部を形成するためのヒートシール機構を追加する改造を伴い、汎用的ではない。また、仕上がった包装袋には余分な熱融着部が存在することになり、外観上好ましくない。
【0009】
そこで本発明は、不織布を基材として用いることによって風合いを向上させながらも、簡易に製造することができ、直線的な引裂き性に優れ、しかも開封のために部分的に設ける余分な構造が不要な包装材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の包装材料は、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを前記一方向に配列させた延伸一方向配列不織布からなる基材層と、この基材層の少なくとも片面に積層された合成樹脂層とを有している。
【0011】
上記のとおり構成された包装材料では、基材層は不織布で構成され、しかも基材層に合成樹脂層が積層されているので、風合いを維持しつつも必要な強度が確保される。また、基材層を構成する不織布は延伸一方向配列不織布であるので、開封性を向上させるための特別な構造を包装材料に設けることなく、フィラメントの配列方向に沿って直線的に容易に引裂くことが可能である。さらに、包装材料の製造は、基材層と合成樹脂層とを積層するだけなので、特に複雑な処理も必要なく、容易である。
【0012】
上記の包装材料において、基材層に、フィラメントの部分的な押し込みが生じていない非エンボス部が少なくともフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンで、エンボス加工をさらに施すことで、フィラメントの拘束性が増し、フィラメントの配列方向に沿った引裂き性がより向上する。エンボス加工は、不織布等の製造において一般に用いられる技術であるので、エンボス加工を付加することにより製造が複雑になることはない。
【0013】
また本発明は、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを一方向に配列させた2枚の延伸一方向配列不織布を、フィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布からなる基材層と、この基材層の少なくとも片面に積層された合成樹脂層とを有している。そして、基材層は、2枚の延伸一方向配列不織布の坪量が互いに異なっている。
【0014】
上記のように構成された包装材料においても、基材層が不織布で構成され、しかも基材層に合成樹脂層が積層されているので、風合いを維持しつつも必要な強度が確保される。引裂き性に関しても、直交積層不織布を構成する各延伸一方向配列不織布の坪量が互いに異なっているので、開封性を向上させるための特別な構造を包装材料に設けることなく、坪量の小さいほうの延伸一方向配列不織布のフィラメントを個々に破断しつつ、坪量の大きいほうの延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向に沿って直線的に容易に引裂くことが可能である。また、包装材料の製造も、基材層と合成樹脂層とを積層するだけなので、特に複雑な処理も必要なく、容易である。
【0015】
また、基材層を直交積層不織布で構成した場合においても、引裂き性を向上させるために、基材層に、フィラメントの部分的な押し込みが生じていない非エンボス部が少なくとも坪量の少ない方の延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンで、エンボス加工を施すことが好ましい。このエンボス加工は、直交積層不織布を製造する際の、2枚の延伸一方向配設不織布を積層する際の積層方法として利用すれば、製造工程を削減することができる。
【0016】
本明細書において、不織布、ウェブ、包装材料等の「縦方向」とは、これらを製造する際の機械方向すなわち送り方向を意味し、「横方向」とは、縦方向と直角な方向、すなわち不織布、ウェブ、包装材料を製造する際のこれらの幅方向を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による包装材料の構成を示す模式的断面図である。図1に示すように、本実施形態の包装材料1は、不織布からなる基材層2と、この基材層2の片面に積層された合成樹脂層3とを有する。このように、基材層2は不織布で構成されるので、風合いを維持することができ、しかも基材層2に合成樹脂層3が積層されているので、包装材料1に必要な強度が確保される。以下に、これら基材層2および合成樹脂層3について詳細に説明する。
【0019】
(1)基材層
基材層2には、熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントをほぼ一方向に配列させた延伸一方向配列不織布、または、2枚の延伸一方向配列不織布をフィラメントの配列方向が縦方向および横方向となるように積層した直交積層不織布が用いられる。
【0020】
延伸一方向配列不織布は、紡糸段階では通常の不織布と同様に紡糸されるが、これをフィラメントの配列方向に5〜8倍に延伸することにより、延伸後の引張り強度が向上する。また、延伸によって、フィラメントの繊度は主として1.5dTex以下とされる。
【0021】
延伸一方向配列不織布には縦延伸不織布と横延伸不織布とがあり、本発明においてはこれらの何れも使用できる。縦延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向である縦方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、横延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向である横方向すなわち幅方向にフィラメントが配列された不織布である。
【0022】
縦延伸不織布は、紡糸されたフィラメントにドラフト張力を与えてフィラメントを細径化した後、コンベア上に集積させることによって、フィラメントが縦方向に配列したウェブを形成し、これを縦方向に延伸することによって得られる。
【0023】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー法(MB法)や、狭義のスパンボンド法(SB法)が挙げられる。何れの方法でも、フィラメントを細径化する際にできるだけ分子配向を伴わないようにするために、フィラメントに熱風を噴射する。また、コンベア上でのフィラメントの配列性を向上させるために、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸したり、熱風の流域中にロッド部材を配置し、このロッド部材の回転または移動により生じるコアンダ効果を利用してフィラメントを縦方向に振動させたりすることが好ましい。
【0024】
コンベア上に集積したウェブは縦方向に延伸されるが、ウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの縦方向への配列性がより向上する。ウェブの縦延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸が用いられる。多段延伸においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、2段目以降の延伸が主延伸として行われる。
【0025】
次に、横延伸不織布について説明する。横延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントが横方向に配列したウェブを形成する。フィラメントが横方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより紡糸されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からエアを直接噴出することにより横方向に振らせ、コンベア上に集積することによって形成することができる。また、他の方法として、上述したコアンダ効果を利用してフィラメントを横方向に振動させ、コンベア上に集積する方法もある。このようにして、コンベア上には、横方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0026】
こうして得られたウェブを横方向に延伸することで、横延伸不織布が得られる。ウェブを横方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、設備の設置のために広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて製品幅を自由に変える必要があり、また、原料の厚さ等に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。
【0027】
延伸一方向配列不織布の代表的な製造方法について、縦延伸不織布および横延伸不織布を例に挙げて説明したが、延伸一方向配列不織布の製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつ配列したフィラメントをその配列方向に延伸できる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0028】
次に、直交積層不織布について説明する。直交積層不織布は、2枚の延伸一方向配列不織布をそのフィラメントの配列方向を直交させて積層したものである。
【0029】
延伸一方向配列不織布には、前述したように縦延伸不織布と横延伸不織布とがあるが、直交積層不織布を構成するためには、フィラメントの配列方向が互いに直交していれば、これらの何れも使用することができ、また、組み合わせも任意である。
【0030】
延伸一方向配列不織布および直交積層不織布を構成する熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロンやポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル等のように、フラットヤーンや産業資材繊維として使用される樹脂が挙げられる。それらの中でも特に、ポリプロピレンやポリエステルが、コストや取り扱いなどの点で優れている。
【0031】
以上説明したように、延伸一方向配列不織布は、微細なフィラメントが高度に一方向に配列したものであるので、基材層2に延伸一方向配列不織布を用いることで、フィラメントの配列方向に沿って容易に引裂くことができる。しかも、基材層2には合成樹脂層3が積層されており、これによってフィラメントの動きが拘束されるので、包装材料1を基材層2のフィラメントの配列方向に沿って直線的に引裂くことができる。
【0032】
基材層2として直交積層不織布を用いた場合は、積層する2枚の延伸一方向配列不織布の坪量を互いに異ならせることで、一方向への引裂き性を向上させることができる。すなわち、包装材料1の縦方向にフィラメントが配列された延伸一方向配列不織布の坪量を、横方向にフィラメントが配列された延伸一方向配列不織布の坪量よりも少なくすれば、縦方向に引裂くことができ、坪量の関係をこれと逆にすれば、横方向に引裂くことができる。
【0033】
この際、フィラメントの配列方向が引裂き方向と直交している延伸一方向配列不織布は、フィラメントが個々に破断することになる。そこで、引裂き性を向上させるためには、引裂き方向と直交する方向にフィラメントが配列している延伸一方向配列不織布の繊度は、1.1dTex以下であることが好ましい。繊度が1.1dTex以下の細いフィラメントでは、フィラメントの配列方向と直交する方向に引裂かれた場合でも引裂き応力が個々のフィラメントを各個に破断するため、小さい応力で引裂きが伝播する。
【0034】
基材層2の坪量は、1〜30g/m2であることが好ましく、より好ましくは5〜20g/m2である。坪量が1g/m2未満では、このような低い坪量の基材層2を製造することが難しい。また、たとえ製造できたとしてもフィラメントの配列性が乱れ易くなるので、引裂き性に劣り意匠性も低下する。さらに、フィラメントの粗密の差が顕著になり、印刷性が低下する。一方、坪量が30g/m2を超えると、引裂き性は向上するものの、厚みが厚くなることによりコストアップにつながる。基材層2を直交積層不織布で構成した場合は、一方の延伸一方向配列不織布の坪量を5g/m2以下、他方の延伸一方向配列不織布の坪量を5〜30g/m2とすることにより、坪量が大きい延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向への引裂きを良好に行えるようになる。
【0035】
基材層2には、エンボス加工が施されていることが好ましい。図2に、基材層に形成されたエンボスパターンの一例を示すための、基材層の部分平面図である。図2に示すように、エンボス加工によって、基材層2にはフィラメントが部分的に押し込まれた部分である多数のエンボス部4が形成され、これによってフィラメントがある程度拘束される。エンボス部4のパターンは千鳥状に配列されており、フィラメントが部分的に押し込まれていない部分である非エンボス部が少なくともフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンとされる。本実施形態では、基材層2が、フィラメントが縦方向に配列された場合、および横方向に配列された場合の何れでも共通に適用できるように、このような非エンボス部が縦方向および横方向の両方向に形成されるパターンとしており、そのようなパターンとしては、図2に示すようなドットパターンが好ましい。図2では特に、非エンボス部のうち、縦方向および横方向にそれぞれ連続した領域を、エンボス部間領域5として示している。
【0036】
上述のようなエンボス加工を基材層2に施すことで、基材層2にはフィラメントの配列方向に沿って非エンボス部が形成され、この非エンボス部ではフィラメントの拘束力は、エンボス部4と比べて弱い。したがって、この非エンボス部でフィラメントの配列方向(基材層2が直交積層不織布の場合は、坪量が大きいほうの延伸一方向配列不織布におけるフィラメントの配列方向)に沿って、基材層2をより容易に直線的に引裂くことができる。また、個々のフィラメントは一方向に配列されているので、ドットパターンでエンボス加工を施すことで、基材層2に織物に近い外観を与えることができ、意匠性および高級感を向上させることができる。さらに、エンボス加工を施すことによって、引裂かれた端面での毛羽立ちも抑えることができる。その結果、内容物に不織布の毛羽が付着するのを防止でき、衛生的である。
【0037】
基材層2を構成する延伸一方向配列不織布は、前述したように極めて微細なフィラメントからなるので、エンボス加工におけるドットのサイズ(エンボス部4のサイズ)を小さくし、単位長さあたりのドットの数を多くしても十分にフィラメントを拘束できる。ドットの数が増すことによって、エンボス部4の面積は小さくなるので、基材層2に印刷を施す場合には、印刷適正が向上する。エンボス加工における単位長さあたりのドットの数は、1インチ(2.54cm)あたり10〜60個であることが好ましい。
【0038】
フィラメントを十分に拘束するのに必要な単位長さあたりのドットの数は、基材層2の坪量に依存する。坪量が大きいと、基材層2の厚みも厚くなり、ドット面積を大きくしてエンボス深さを深くしないと十分にフィラメントを拘束することができない。一方、坪量が小さければ、エンボス深さが浅くてもよいので、ドット面積を小さくしてもフィラメントを十分に拘束できる。後述するように、基材層2の坪量が30g/m2以下であれば、1インチ当たりのドット数を60個以上としても十分にフィラメントを拘束することができる。ただし、このドット数が60個を超えると、実質的にエンボスロールを製造することが難しくなる。
【0039】
本実施形態では、図2に示すように、エンボス部4の直径dを約0.2mm、エンボス部間領域5の幅wを約0.16mmとした。また、隣接するエンボス部4間の距離が最も小さくなる方向(縦方向および横方向に対して45°の方向)でのエンボス部4のピッチpは約0.51mmとし、この方向で、1インチ当たりのエンボス部4の数(ドット数)は約50個となる。
【0040】
また、基材層2を直交積層不織布で構成する場合、延伸一方向配列不織布同士の積層に、上記のエンボス加工を利用すれば、製造工程を削減することができる。
【0041】
図2では、エンボス部4が円形のドットである例を示したが、エンボス部4の形状はこれに限られず、楕円形や菱形など、任意の形状とすることができる。また、図2ではエンボス部間領域5が縦方向および横方向に沿って形成された例を示したが、本発明においてはエンボス部間領域5を両方向に沿って設ける必要はなく、フィラメントの配列方向、特に目的とする引裂き方向に応じて、縦方向または横方向のいずれか一方のみに沿って設けられていてもよい。
【0042】
(2)合成樹脂層
合成樹脂層3は、押出しラミネーション法やドライラミネーション法によって、基材層2上に設けることができる。
【0043】
押出しラミネーション法では、溶融樹脂が基材層2のフィラメントの間に入り込みフィラメントを拘束するので、引裂き性をさらに高める効果を発揮する。押出しラミネーション法で合成樹脂層3を形成する場合、用いられる合成樹脂としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。
【0044】
ドライラミネーション法では、合成樹脂層3として合成樹脂フィルムを用い、これを基材層2と接着剤で接着して両者を積層する。合成樹脂フィルムとしては、分子配向を伴わない無配向のフィルム、一方向に延伸した一軸延伸フィルム、または2方向に延伸した2軸延伸フィルムを使用することができる。特に、縦方向に易引裂き性を向上させるためには、フィラメントが縦方向に配列した延伸一方向配列不織布を基材層2に用い、これに合成樹脂層3として、縦方向に延伸した一軸延伸フィルムを組み合わせるとよい。また、横方向に易引裂き性を向上させるためには、フィラメントが横方向に配列した延伸一方向配列不織布を基材層2に用い、これに合成樹脂層3として、横方向に延伸した横一軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムを組み合わせることが好ましい。
【0045】
延伸フィルムとしては、横一軸延伸ポリエチレンフィルム、縦一軸延伸ポリエチレンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリスチレンフィルム、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ポリアミドフィルムなどが挙げられる。延伸フィルムとしては、この他にも、ポリマーブレンドによって生じるフィルム内の分子構造に基づく直線カット性に優れるフィルムも利用することができる。例えば、ナイロン/メタキシリレンアミン(MXD)ナイロンブレンド系2軸延伸ナイロンフィルム(出光石油化学製、商品名「ユニアスロンHP」)、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートブレンド系(PC/PET)2軸延伸PETフィルム(ユニチカ製、商品名「エンブレットPC−12」)等を挙げることができる。
【0046】
ドライラミネーション法で用いられる接着剤には、ポリウレタン系二液反応型接着剤が好ましく用いられる。この接着剤は、高分子末端に水酸基を有するポリオール成分とイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分を主成分とし、水酸基とイソシアネート基の反応でウレタン結合を形成して硬化させ接着するものである。ドライラミネーション法で用いられる接着剤には、この他にも、一液反応型接着剤として、イソシアネート基を末端にもつプレポリマーウレタン接着剤、例えば、ポリエーテルポリオールとジイソシアネートを反応させて得られるポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、あるいは一液反応型のアクリル系接着剤などを使用することができる。
【0047】
また、ドライラミネーション法で合成樹脂層3を積層する場合、延伸一方向配列不織布の製造工程においてフィラメントを延伸した直後に上述の合成樹脂フィルムを供給し、熱圧着法によって合成樹脂フィルムを積層することも可能である。この方法は、延伸一方向配列不織布の製造工程中で合成樹脂フィルムを積層することができるので、包装材料1の製造工程を削減することができ、安価な包装材料1を提供することができる。
【0048】
上述した合成樹脂層3は、単層であってもよいし、2種以上を積層して構成してもよい。また、これらの合成樹脂層3の1層または2層以上とアルミニウム等の金属箔を貼り合わせて構成することもできる。特に、ガスバリア性を必要とする内容物を包装するのに用いられる包装材料1の場合には、ポリ塩化ビニリデン樹脂層、EVAケン化物層、アルミニウムや酸化珪素などの金属酸化物の蒸着体を使用することが好ましい。これらの積層体を製造する際には、必要に応じて、各層間にエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂等からなる接着剤やアンカー剤を介在させることができる。
【0049】
以上、図1を参照して、基材層2の片面に合成樹脂層3が設けられた包装材料1について説明したが、図3に示すように、基材層12の両面に合成樹脂層13a、13bを設けた包装材料11とすることもできる。この場合、一方の合成樹脂層13aは、包装材料11の表面保護層として、そして、他方の合成樹脂層13bは、包装材料11から包装袋を製造する際のヒートシール層としての機能を持たせることができる。
【0050】
本発明の包装材料には、印刷を施してもよい。基材層を構成する不織布は高度に一方向に配列された微細なフィラメントからなるので、印刷は、合成樹脂層および基材層の何れに施しても鮮明で良好な印刷が可能である。印刷を基材層と合成樹脂層との積層面に施す場合は、合成樹脂層を透明なものとすれば、合成樹脂層を通して印刷情報を視認することができる。印刷には、グラビア印刷、オフセットグラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット方式による印刷、転写印刷などを用いることができる。
【0051】
また、包装材料には、染色、捺染などにより着色や装飾を施すことも可能である。さらに、高級感を増すために、印刷性を改良したり、表面に光沢を付与したりすることも可能であり、また、意匠性の改良などを目的として、樹脂コーティング加工、カレンダー加工、抜食加工、プリーツ加工、起毛加工、サンフォライズ加工などの二次加工を加えることもできる。
【0052】
以下に、本発明の包装材料に適用可能な層構成の代表的な例を列挙する。なお、以下の例では、基材層は延伸一方向配列不織布または直交積層不織布を示す。また、aで始まる例は、基本構成として図1に示した構成(基材層の片面に合成樹脂層を設けた構成)を有するもので、bで始まる例は、基本構成として図3に示した構成(基材層の両面に合成樹脂層を設けた構成)を有するものである。
(a−1)印刷層/基材層/押出し樹脂層、
(a−2)印刷層/基材層/接着層/無配向フィルム、
(a−3)印刷層/基材層/接着層/延伸フィルム/押出し樹脂層、
(a−4)印刷層/基材層/接着層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム、
(a−5)基材層/接着層/印刷層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム、
(a−6)基材層/押出し樹脂層/延伸フィルム/印刷層/接着層/シーラントフィルム、
(b−1)押出し樹脂層/印刷層/基材層/接着層/シーラントフィルム、
(b−2)押出し樹脂層/印刷層/基材層/接着層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム、
(b−3)印刷層/押出し樹脂層/基材層/接着層/延伸フィルム/接着層/シーラントフィルム。
【0053】
上記の層構成においては、包装材料による包装の対象となる被包装物、易引裂き方向、要望されるシール強度、意匠性などによって、各層を構成する材料が適宜選択される。また、上記の層構成はあくまでも代表的な例であり、本発明の包装材料は、上記の層構成に限定されるものではない。
【0054】
【実施例】
次に、本発明の具体的な幾つかの実施例について比較例とともに説明する。
【0055】
(実施例1)
本実施例では、基材層としてフィラメントが縦方向に配列された延伸一方向配列不織布(縦延伸不織布)を用いた。この延伸一方向配列不織布は、以下のようにして作製した。原料樹脂としてポリエステル樹脂(東洋紡績製、IV値=0.63、融点260℃)を用いて、これを押出機により溶融混練し、ギヤポンプより定量的に押出して、熱風とともにメルトブローダイスよりフィラメント状に紡出した。紡出したフィラメントを傾斜したコンベア上に集積して、フィラメントがほぼ縦方向に配列されたウェブとし、これを延伸ロールにより縦方向に6倍に延伸して、縦延伸不織布を作製した。得られた縦延伸不織布は、坪量が20g/m2であり、繊度は1.1dTexであった。
【0056】
次いで、縦延伸不織布の片面に、厚さ30μmの高密度ポリエチレンからなり縦方向に延伸した一軸延伸ポリエチレンフィルムを、ウレタン系接着剤によりドライラミネートした。その後、グラビア印刷法によって、縦延伸不織布の反対側の面に所定の印刷を施した。さらに、シーラント層として、厚さ20μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を、押出しラミネーション法によって、一軸延伸ポリエチレンフィルム側に積層し、包装材料とした。
【0057】
(実施例2)
実施例1で得られた縦延伸不織布にエンボス加工を行ったこと以外は、実施例1と同様にして包装材料を作製した。縦延伸不織布へのエンボス加工は、ドットが1インチあたり50個の割合で図2に示したように千鳥状に分布したエンボスロールによって行った。エンボスの条件は、ロール温度が220℃、線圧が300N/cmとした。
【0058】
(実施例3)
本実施例では、基材層としてフィラメントが横方向に配列された延伸一方向配列不織布(横延伸不織布)を用いた。この延伸一方向配列不織布は、以下のようにして作製した。原料樹脂としてポリエステル樹脂(東洋紡績製、IV値=0.63、融点260℃)を用いて、これを押出機により溶融混練し、ギヤポンプにより定量的に押出し、スプレーノズルに導いた。スプレーノズルから紡出されたフィラメントに熱風を吹き付けることにより、フィラメントをコンベアの進行方向に対して直角な方向に飛散させ、これによって、フィラメントがほぼ横方向に配列されたウェブをコンベア上に集積した。続いて、このウェブをプーリ式のヨコ延伸装置を用い、横方向に5.5倍に延伸し、横延伸不織布を作製した。得られた横延伸不織布は、坪量が20g/m2であり、繊度は1.0dTexであった。
【0059】
次いで、横延伸不織布の片面に、厚さ25μmの高密度ポリエチレンからなる横延伸フィルム(東洋化学製、商品名「カラリアン」)を、ウレタン系接着剤によりドライラミネートした。その後、実施例1と同様に、横延伸不織布の反対側の面に所定の印刷を施すとともに、横延伸フィルム側にシーラント層を積層し、包装材料とした。
【0060】
(実施例4)
実施例3で得られた横延伸不織布にエンボス加工を行ったこと以外は、実施例3と同様にして包装材料を作製した。横延伸不織布へのエンボス加工に際しては、実施例2で用いたのと同じエンボスロールを使用し、また、エンボス条件も実施例2と同様とした。
【0061】
(実施例5)
本実施例では、基材層として、縦延伸不織布と横延伸不織布とを積層した直行積層不織布を用いた。この直交積層不織布を構成する縦延伸不織布および横延伸不織布は、縦延伸不織布の坪量を3g/m2とするとともに、横延伸不織布の坪量を20g/m2としたこと以外は、それぞれ実施例1および実施例2と同様にして作製した。そして、これらをフィラメントの配列方向が直交するように互いに積層して直交積層不織布を作製した。
【0062】
次いで、得られた直交積層不織布の片面に、厚さ20μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、商品名「トレリナ」)を、ウレタン系接着剤によりドライラミネートした。その後、実施例1と同様に、直交積層不織布の反対側の面に所定の印刷を施すとともに、2軸延伸ポリエチレンフィルム側にシーラント層を積層し、包装材料とした。
【0063】
(実施例6)
実施例5において、縦延伸不織布と横延伸不織布との積層を、実施例2と同じエンボスロールを使用し、かつ、実施例2と同様のエンボス条件によるエンボス加工で行ったこと以外は、実施例5と同様にして包装材料を作製した。
【0064】
(比較例1)
基材層として坪量が20g/m2のポリエステル製スパンボンド不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして包装材料を作製した。一般のスパンボンド不織布には、フィラメントの安定化のために既にエンボス加工が施こされている。ちなみに、スパンボンド不織布のエンボスパターンは、1インチ当たりの数がおよそ10個の、ドットの千鳥配列パターンであった。
【0065】
(比較例2)
基材層として坪量が20g/m2のポリエステル製スパンボンド不織布を用いたこと以外は、実施例3と同様にして包装材料を作製した。
【0066】
(比較例3)
実施例6において、縦延伸不織布および横延伸不織布の坪量を共に10g/m2として、両者をエンボス加工して積層した直交積層不織布を作製したこと以外は、実施例6と同様にして包装材料を作製した。
【0067】
以上のようにして作製した実施例1〜6、比較例1〜3について、それぞれJIS L 1906のシングルタング法に準拠して引裂き強度を測定した。引裂き強度の測定に際しては、目的とする引裂き方向のみを測定した。つまり、実施例1、2は縦方向であり、実施例3〜6は横方向である。また、比較例1は、実施例1、2との対照用、比較例2は実施例3、4との対照用、比較例3は実施例5、6との対照用のサンプルであるので、それらに対応した方向についての引裂き強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
実施例1〜6については、所望の方向へ直線的にかつ容易に引裂くことができ、引裂いた端部からの毛羽も抑えることができた。さらに、表面には微細なフィラメントが整然と配列されているので、印刷が鮮明であり、しかも光沢感があり高級感のある包装材料となった。特に、実施例5、6については、フィラメントが縦方向および横方向に配列しているので、織物に近い外観を呈していた。また、実施例1〜6のいずれも所望の方向への引裂き強度は小さく、このことからも、所望の方向への引裂き性に優れることが分かる。
【0069】
比較例1、2については、スパンボンド不織布は、繊維配列がランダムであるため、平滑性は劣り印刷性が悪く、たとえ1インチあたり10個のドットの千鳥配列パターンでエンボス加工が施されていても、引裂き強度は高く、容易に引裂くことはできなかった。無理に引裂こうとすると、スパンボンド不織布と延伸フィルムとの間で層間剥離が生じた。比較例3については、基材層が直交積層不織布で構成されているので印刷性は良好であったが、縦延伸不織布と横延伸不織布の坪量が等しいため、縦方向にも横方向にも容易に引裂くことができなかった。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、包装材料は、不織布からなる基材層と、この基材層に積層された合成樹脂層とを有するので、風合いを維持しつつも、包装材料に必要な強度を確保することができる。しかも、基材層には延伸一方向配列不織布が用いられているので、特別な構造を付加することなく、フィラメントの配列方向に沿って直線的にかつ容易に包装材料を引裂くことができる。また、包装材料の製造に関しても、特別な工程は不要であるので、容易に製造することができる。
【0071】
また、基材層に、上述した所定のパターンでエンボス加工を施すことで、直線的な引裂き性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による包装材料の構成を示す模式的断面図である。
【図2】図1に示す基材層に形成されたエンボスパターンの一例を示す、基材層の部分平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による包装材料の構成を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1,11 包装材料
2,12 基材層
3,13a,13b 合成樹脂層
4 エンボス部
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを前記一方向に配列させた延伸一方向配列不織布からなる基材層と、
前記基材層の少なくとも片面に積層された合成樹脂層とを有することを特徴とする包装材料。 - 前記基材層には、前記フィラメントの部分的な押し込みが生じていない非エンボス部が少なくとも前記フィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンで、エンボス加工が施されている請求項1に記載の包装材料。
- 前記延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向が縦方向である、請求項1または2に記載の包装材料。
- 前記延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向が横方向である、請求項1または2に記載の包装材料。
- 熱可塑性樹脂から紡糸された長繊維不織布を一方向に延伸することによってそのフィラメントを前記一方向に配列させた2枚の延伸一方向配列不織布を、前記フィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布からなる基材層と、
前記基材層の少なくとも片面に積層された合成樹脂層とを有し、
前記基材層は、前記2枚の延伸一方向配列不織布の坪量が互いに異なっていることを特徴とする包装材料。 - 前記基材層には、前記フィラメントの部分的な押し込みが生じていない非エンボス部が少なくとも坪量の少ない方の前記延伸一方向配列不織布のフィラメントの配列方向に沿って連続して形成されるパターンで、エンボス加工が施されている請求項5に記載の包装材料。
- 前記パターンは、前記エンボス加工によってフィラメントが押し込まれた部分であるエンボス部が1インチあたり10〜60個の割合で存在するドットパターンである、請求項2または6に記載の包装材料。
- 前記熱可塑性樹脂は、ポリエステルまたはポリプロピレンである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の包装材料。
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