JP2004009509A - ヒートシール性を有する通気性包装材料および包装体 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造が容易で、かつ、機械的強度およびシール強度の高い通気性包装材料を提供する。
【解決手段】通気性包装材料1は、直交積層不織布2と、その片面に積層された、ポリオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布3とを有する。直交積層不織布2は、フィラメントが一方向に配列されかつ延伸された2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bを、そのフィラメントの配列方向が互いに直交するように積層されて構成される。
【選択図】 図1
【解決手段】通気性包装材料1は、直交積層不織布2と、その片面に積層された、ポリオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布3とを有する。直交積層不織布2は、フィラメントが一方向に配列されかつ延伸された2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bを、そのフィラメントの配列方向が互いに直交するように積層されて構成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通気性を有するとともにヒートシール性に優れ、脱酸素剤や乾燥剤などの包装に好適に用いられる通気性包装材料およびこの通気性包装材料を用いた包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
加工食品の腐敗、変質、劣化などを防止するために、脱酸素剤や乾燥剤などが多く用いられている。この種の脱酸素剤や乾燥剤は、通気性を有する小袋に包装されて、食品とともに収納されて用いられる。
【0003】
脱酸素剤や乾燥剤を包装するのに用いられる包装材料としては、紙などの通気性を有する基材を表層に用い、この基材の裏面に、ポリエチレン層を積層したもの、あるいは、格子網状物をポリエチレン層でサンドイッチした強化材層を積層したものが知られている。そして、このような層構成を有する包装材料では、包装材料全体としての通気性を確保するために、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に、これらを貫通するが基材までは貫通しない多数の細孔を形成している。細孔は、熱針などによって形成される。基材の表面には、包装されているものが脱酸素剤や乾燥剤である旨を表示する印刷が施されている。
【0004】
この種の包装材料で脱酸素剤や乾燥剤などの内容物を包装する際には、ポリエチレン層を内側にして内容物を包み、周縁部においてポリエチレン層同士をヒートシールして包装体を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の包装材料では、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に熱針などによって細孔を形成しているが、ポリエチレン層または強化材層のみに細孔を形成するのは難しく、一部の細孔が基材を貫通してしまうことがあった。細孔が基材を貫通すると、包装体の内容物が外部に流出し、食品に付着してしまう。また、ポリエチレン層または強化材層を基材に積層したあとに細孔を形成しているので、細孔の形成不良が生じた場合の材料のロスが大きく、結果的に製造コストが高くなってしまう。
【0006】
また、従来この種の包装材料では基材に紙を用いており、実使用時においては、基材である紙は食品と接触することになる。そのため、食品の輸送中に、この包装材料で作られた包装体と食品とが擦られて紙粉が発生する。紙粉が発生すると、これが食品に付着して衛生上の問題が生じる。
【0007】
また、包装体は、内容物が不用意に流出しないようにするため、包装材料には引張り強度や引裂き強度といった機械的強度が高いことが要求され、さらに、ヒートシール部におけるシール強度も高いことが要求される。内容物が流出しないようにすることは、内容物が、脱酸素剤や乾燥剤など、人体に触れると重大な事故を起こしかねない物質である場合に特に重要である。
【0008】
そこで本発明は、製造が容易で、かつ、機械的強度およびシール強度が高く、特に脱酸素剤や乾燥剤などを包装するのに好適に用いられる通気性包装材料、およびこれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の通気性包装材料は、フィラメントが一方向に配列されかつ延伸された第1および第2の不織布が、これらのフィラメントの配列方向が互いに直交するように積層されてなる直交積層不織布と、この直交積層不織布の片面に積層された、ポリオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布とを有する。
【0010】
また、本発明の包装体は、本発明の通気性包装材料を少なくとも一部に用い、そのスパンボンド不織布をヒートシールすることによって形成される。
【0011】
このように、本発明の通気性包装材料は、不織布のみで構成されているので、細孔を形成しなくとも十分な通気性を有し、しかも、直交積層不織布を有するので機械的強度にも優れている。また、スパンボンド不織布はポリオレフィン系樹脂からなるので、このスパンボンド不織布をヒートシール層に利用して包装体を形成することにより、低いシール温度でヒートシールを行うことができ、しかも高いシール強度が得られ、さらに、シール温度を高くすればシール強度を維持して生産性を向上することが可能である。さらに、直交積層不織布を表層に用いることにより、直交積層不織布は印刷性も良好であるので意匠性に優れた包装体が得られ、しかも、従来のように紙粉が発生するといった問題も生じない。
【0012】
直交積層不織布は、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂からなることが好ましく、また、スパンボンド不織布は、ポリエチレン系樹脂からなることが好ましい。これによれば、直交積層不織布とスパンボンド不織布との融点差が十分に大きくなり、包装体を形成する際のヒートシール時に、直交積層不織布がヒートシール機のシールバーに融着することはない。
【0013】
なお、本明細書において、「縦方向」とは、不織布を製造する際の機械方向すなわち送り方向を意味し、また「横方向」とは、縦方向と直角な方向すなわち不織布の幅方向を意味している。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による通気性包装材料の模式的断面図である。図1に示すように、通気性包装材料1は、直交積層不織布2と、その片面に積層されたスパンボンド不織布3とを有する。直交積層不織布2の表面(スパンボンド不織布3が積層された側と反対側の面)には印刷が施されている。直交積層不織布2およびスパンボンド不織布3はそれぞれ熱可塑性樹脂からなり、両者の積層は熱接着により行うことができる。特に、直交積層不織布2には、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエステルなどが用いられ、スパンボンド不織布3には、直交積層不織布2を構成する樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン系樹脂が用いられる。
【0016】
この通気性包装材料1は、粉末状あるいは粒状の脱酸素剤や乾燥剤などの機能性物品を内部に収容する包装体の包装材料として好ましく用いられる。この通気性包装材料1から包装体を形成する際は、スパンボンド不織布3を内側にして通気性包装材料1を2つ折りにし、周縁部を熱接着する。そして、包装体は、食品の変質等を防止するために、食品とともに袋や容器内に収納される。
【0017】
以下に、これら直交積層不織布2およびスパンボンド不織布3について詳細に説明する。
【0018】
(1)直交積層不織布
直交積層不織布2は、フィラメントを一方向に配列しその方向に延伸した2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bを縦横に交差積層したものであり、その例としては、日石プラスト(株)製のミライフ(商品名)が挙げられる。
【0019】
以下に、一方向延伸配列不織布2a,2bおよび直交積層不織布2について説明する。
【0020】
一方向延伸配列不織布2a,2bは、前述のように、フィラメントをその配列方向に延伸したものであり、この方法によれば、紡糸段階では通常の不織布と同様に紡糸されるが、これをフィラメントの配列方向に5〜8倍に延伸することにより、フィラメントの繊度は主として1.5dTex以下とされる。このように、フィラメントをその配列方向に延伸することで、延伸後の強度が向上する。一方向延伸配列不織布2a,2bを構成するフィラメントは長繊維フィラメントである。
【0021】
延伸一方向配列不織布2a,2bには、タテ延伸不織布とヨコ延伸不織布とがあり、本発明においてはこれらの何れも使用することができる。タテ延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向であるタテ方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、ヨコ延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向であるヨコ方向にフィラメントが配列され延伸された不織布である。
【0022】
タテ延伸不織布としては、例えば、特開平10−204767号公報に開示されている不織布を使用することができる。以下に、タテ延伸不織布についてその製造方法とともに説明する。
【0023】
まず、ダイスに設けられたノズルから押し出されたフィラメントにドラフト張力を与え、これによってフィラメントを細径化し、コンベア上に集積する。このとき、ノズルを出た直後のフィラメント融液を積極的に加熱し、またはノズル近傍(フィラメントがノズルから紡出された直後の位置)の雰囲気温度を高温に維持する。この間の温度はフィラメントの融点よりも十分に高くし、フィラメントのドラフトによるフィラメントの分子配向をできるだけ小さくする。
【0024】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー(MB)ダイスを使用する方法や、狭義のスパンボンド(SB)法がある。ただし、通常のMB法やSB法ではコンベア上でフィラメントがランダムに集積するので、ノズルから紡出されたフィラメントに、霧状の水分を含むエア等をコンベアの搬送面に対して斜めに噴射する。これによって、フィラメントのタテ方向への配列および冷却が行われる。
【0025】
このように、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸することにより、フィラメントをタテ方向に良好に配列させることができる。フィラメントを搬送面に対して傾斜させる手段としては、ノズル方向をコンベアに対して傾けることや、流体の補助によりフィラメントを斜行させることや、コンベアをフィラメントの紡出方向に対して傾斜させることなどが有効である。これらは、単独で用いてもよいし、複数の手段を適宜組み合わせて用いてもよい。なお、ノズル近傍で流体を使用する場合は、流体は加熱されていることが望ましい。また、ノズル近傍で流体を使用しない場合は、フィラメントとノズル近傍で積極的に加熱する。これは、フィラメントがドラフトにより細径化される際に、できるだけ分子配向を伴わないようにするためである。
【0026】
上述したMB法およびSB法の何れの方法においても、フィラメントをコンベアの搬送面に対して傾斜させるために流体を使用しているが、この流体としては、コンベア近傍では冷流体、特に霧状の水を含んだ流体が最も望ましい。紡出されたフィラメントを急冷することにより、結晶化を進行させないようにするためである。結晶化が進むと延伸性が低下してしまう。また、霧状の水を噴射することは、コンベア上に集積したウェブをコンベア上に貼り付けさせる作用もあり、その結果、紡糸の安定性、およびフィラメントの配列性の向上により効果がある。
【0027】
コンベア上に集積したウェブはタテ方向に延伸され、これによりタテ延伸不織布とされる。ウェブをタテ方向に延伸することにより、フィラメントのタテ方向への配列性をより向上させることができる。ウェブのタテ延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸法が用いられている。多段延伸法においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、さらにその後に延伸する2段目以降の延伸が主延伸として行われている。
【0028】
次に、ヨコ延伸不織布について説明する。ヨコ延伸不織布としては、例えば、特公平3−36948号公報に開示されている不織布を使用することができる。
【0029】
ヨコ延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントがほぼヨコ方向に配列したウェブを形成する。フィラメントがほぼヨコ方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより押し出されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からのエア噴射によりヨコ方向に振らせ、コンベア上に集積させることによって形成することができる。
【0030】
紡糸ノズルの周囲からのエア噴射でフィラメントをヨコ方向に振らせるためには、紡糸ノズルの周囲に、それぞれ紡糸ノズルを中心とした円周方向の成分を持ってエアを噴射する複数(通常は3〜8個)の第1のエア噴出孔を設け、さらに、これら第1のエア噴出孔の外側に、噴射したエアがコンベアによるウェブの搬送方向と平行な方向で互いに衝突するように配された2つの第2のエア噴出孔を設ける。紡糸ノズルから押し出されたフィラメントは、第1のエア噴出孔からのエア噴射によりスパイラル状に回転させられる。一方、第2のエア噴出孔から噴射されたエアは、回転しているフィラメントの通過経路上で互いに衝突し、コンベアによる搬送方向と直角すなわちヨコ方向に広がる。回転しているフィラメントは、このエアの勢いでヨコ方向に散らされる。これにより、コンベア上には、ヨコ方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0031】
このようにして得られたウェブは、ヨコ方向に延伸される。ウェブをヨコ方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて製品幅を自由に変える必要があり、また、原料の厚さ等に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。
【0032】
プーリ方式による延伸装置は、ウェブの両側端部を把持するためにウェブの幅方向に間隔をあけて配置された一対のプーリとベルトとを有する。プーリは、ウェブの幅方向の中心線に対して左右対称にその外周が末広がりの軌道を持つように配置され、それぞれ同一周速で回転される。一方、ベルトは各プーリに対応して張力下で掛け回されており、このベルトの一部位が、プーリの間隔の狭まった位置から広がった位置にわたる領域にかけて、それぞれプーリの外周端面に形成された溝にはめ込まれている。
【0033】
ウェブは、プーリの間隔の狭まった箇所から導入され、両側端部がプーリとベルトとにより把持される。プーリの回転に伴い、ウェブはベルトとの間で把持されながら一対のプーリが作る末広がりの軌道を通り、これによりウェブはヨコ方向に延伸される。この間の加熱は、熱水や熱風が利用できる。
【0034】
以上のようにして、フィラメントがヨコ方向に配列され延伸されたヨコ延伸不織布が得られる。
【0035】
一方向延伸配列不織布2a,2bの代表的な製造方法について、タテ延伸不織布およびヨコ延伸不織布を例に挙げて説明したが、一方向延伸配列不織布2a,2bの製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつフィラメントをその配列方向に延伸することができる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0036】
直交積層不織布2は、2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bをそのフィラメントの配列方向を交差(好ましくは直交)させて積層したものである。このように、フィラメントの配列方向を交差させて積層することにより、縦方向と横方向の強度のバランスに優れた不織布とすることができる。
【0037】
一方向配列配列不織布2a,2bには、前述したようにタテ延伸不織布とヨコ延伸不織布とがあるが、直交積層不織布2を構成するためには、フィラメントの配列方向が互いに交差するように積層されていれば、これらの何れも使用することができ、また組み合わせも任意である。ただし、タテ延伸不織布とヨコ延伸不織布との組み合わせとする場合には、これらはそのまま用いるのが望ましい。これにより、タテ延伸不織布とヨコ延伸不織布とを積層する際に、両者をそのまま繰出して、繋ぎ目のない連続した均一な直交積層不織布2を得ることができる。また、予めタテ延伸不織布を作製しておき、ヨコ延伸不織布の製造段階で、タテ延伸不織布を繰出しながらこのタテ延伸不織布上にヨコ延伸不織布を作製し、これらを積層することで、直交積層不織布2を効率よく製造することができる。
【0038】
直交積層不織布2を製造する際の一方向延伸配列不織布同士の積層には、エンボス法や、熱ロールを用いた圧着法を用いることができる。ただし、直交積層不織布2への印刷性を考慮すると、一方向延伸配列不織布2a,2b同士の積層方法としては、表面に凹凸が形成されない熱ロールによる圧着が好ましい。熱ロールによる一方向延伸配列不織布2a,2b同士の圧着は、一方向延伸配列不織布2a,2bを構成する樹脂の融点よりも30〜130℃低い温度で行うのが好ましい。なお、熱ロールによる圧着では、一方向延伸配列不織布2a,2bが強固に一体化されるには至らないが、スパンボンド不織布3との熱接着工程で一方向延伸配列不織布2a,2b同士を強固に一体化することができる。したがって、直交積層不織布2の製造段階では、一方向延伸配列不織布2a,2bは、スパンボンド不織布3との熱接着が終了するまでの間、積層状態を維持することができる程度に一体化されていれば十分である。
【0039】
以上、直交積層不織布2の具体的な例について説明したが、直交積層不織布2は連続した長繊維によって構成されているため、包装材料の表層に使用しても毛羽立ちが少ない。特に、一方向延伸配列不織布2a,2bは、一般のスパンボンド法によって製造されるスパンボンド不織布に比べて長繊維が整然と一方向に配列しているため、表面平滑性に優れ、印刷特性が良好である。したがって、カレンダー処理などの後処理によって表面を平滑にすることなく印刷を行うことができる。また、一方向延伸配列不織布2a,2bは、延伸を行っていることによりその繊維径は一般的なスパンボンド不織布のそれと比べて細く、5〜15μmである。そのため一方向延伸配列不織布2a,2bは、単位面積当たりに占める繊維本数が多く、目付けむらの少ない均質な不織布となり、細かい印刷文字でも鮮明に印刷することが可能である。また、2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bを互いに交差させて積層した直交積層不織布2は、縦方向と横方向の強度バランスに優れ、しかも長繊維を延伸しているので高い強度を有する。
【0040】
直交積層不織布2の目付量は、好ましくは5〜50g/m2、より好ましくは10〜30g/m2である。目付量が5g/m2未満では、印刷性に劣り強度も小さいため実用化は難しい。一方、目付量が50g/m2を越えると、直交積層不織布2の厚みが厚くなり過ぎ、コストも上昇する。
【0041】
直交積層不織布2への印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、あるいはスクリーン印刷など、種々の印刷法が適用可能である。本実施形態では直交積層不織布2の表面に印刷を行っているが、直交積層不織布2が食品と接触するような形態でこの通気性包装材料1を用いる場合に、印刷用のインキが食品に移行しても衛生上の問題が生じないように、着色剤として食用色素を使用するとともに、バインダーとして、食品に接触してもよい樹脂を使用したインキを用いることが望ましい。
【0042】
直交積層不織布2への印刷は、スパンボンド不織布3との積層面に行い、直交積層不織布2を通して印刷情報を視認するようにしてもよい。この場合は、印刷用のインキが食品と接触しないので、印刷インキ工業連合会の制定する「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制」(NL規制)に適合する、包装材料への印刷に一般に使用されているインキを使用することができる。その結果、上述したような特殊なインキを使用する必要がなくなるので、直交積層不織布2との密着性に優れたインキを使用して任意の色調で印刷を行うことができる。また、安価なインキを使用できるので、通気性包装材料1を安価に製造することができる。
【0043】
(2)スパンボンド不織布
スパンボンド不織布3は、例えば、多数のノズルから放出されたフィラメント群をエジェクタあるいはエアサッカーで引き取ることにより細化し、気流とともにネットコンベア上に捕集するといった、公知の狭義のスパンボンド法によって製造された不織布である。
【0044】
スパンボンド不織布3に用いられる熱可塑性樹脂は、通気性包装材料1から包装体を製造するとき、ヒートシール層として機能するものである。したがって、その融点が、直交積層不織布2に用いられる熱可塑性樹脂の融点よりも低いことが重要である。これらの熱可塑性樹脂の融点差は、好ましくは15℃以上、より好ましくは25℃以上である。
【0045】
スパンボンド不織布を構成するフィラメント(繊維)は、上述したタテ延伸不織布やヨコ延伸不織布のように十分な延伸がなされていないため、分子配向性が低く、融点が低い。したがって、スパンボンド不織布は、ヒートシール層として用いる不織布として適しているといえる。
【0046】
スパンボンド不織布3に用いられる熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレン樹脂、エチレン‐α‐共重合体、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸共重合体、エチレン‐環状オレフィン共重合体、エチレン‐スチレン共重合体、軟質ポリプロピレン系樹脂、プロピレンと他のオレフィンとのランダム共重合体、あるいはこれらの混合樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0047】
これらのポリオレフィン系樹脂は、チタンなどを用いたチーグラー系触媒を用いて重合された重合体、メタロセン系触媒を用いて重合された分子量分布の狭い共重合体などが用いられる。また、ポリプロピレン系樹脂の融点は、規則性や共重合によって任意に制御されたものから適宜選択して用いることができる。
【0048】
スパンボンド不織布3にはポリエチレン系樹脂が好ましく用いられ、その中でも、エチレンの単独重合体、エチレンとプロピレン、ブテン‐1、4‐メチル‐ペンテン‐1、オクテン‐1などの炭素数3〜10のα‐オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸などの重合性モノマーとの共重合体などが好ましく用いられる。特に、密度が880〜960kg/m3、好ましくは900〜950kg/m3、融点が60〜140℃、好ましくは70〜130℃の範囲、メルトインデックス(MI)が5〜60g/10分、好ましくは10〜50g/10分の範囲のエチレン‐α‐オレフィン共重合体が、紡糸性、融点および強度の点から好ましく用いられる。
【0049】
なお、スパンボンド不織布3は、上述したポリエチレン系樹脂を単独で用いてもよいし、他の樹脂を50質量%以下含む組成物からなるものであってもよい。しかし、ヒートシール性が確保されるならば、他の樹脂との複合繊維、すなわち、鞘部分としてポリエチレン系樹脂、芯部分としてポリプロピレン系樹脂などを用いた芯鞘構造の複合繊維、あるいは繊維の50質量%以上がポリエチレン系樹脂で残りが他の樹脂であるサイドバイサイド構造の複合繊維とすることもできる。これらの複合繊維を構成する樹脂は、ポリエチレン系樹脂の中で、融点や密度などの異なる樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、複合繊維の場合、融点の低いほうの樹脂がスパンボンド不織布3の融点を示す。
【0050】
スパンボンド不織布3は、フィラメント径が2〜50μm、好ましくは5〜30μm、目付量が2〜200g/m2、好ましくは5〜100g/m2、より好ましくは10〜60g/m2である。これらフィラメント径や目付量は、直交積層不織布2の特性、目付量、樹脂の融点、および通気性包装材料1の用途によって要求される特性を満足するように適宜選択される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の通気性包装材料1によれば、包装体としたときの最表層となる基材を直交積層不織布2とし、その裏面側にヒートシール層としてスパンボンド不織布3を積層することで、通気性を確保しながらも、従来のように紙と強化材層とを積層した包装材料と比べて、引張り強度、引裂き強度などの機械的強度に優れた通気性包装材料1とすることができる。
【0052】
したがって、通気性包装材料1は、包装体とされたときに内部に収納された機能性物品による損傷も生じにくく、食品用の脱酸素剤や乾燥剤以外に、活性炭や木炭など重量の大きな内容物を収納する大型の包装材料としても有効に利用できる。また、通気性包装材料1は、最表層が直交積層不織布2で構成されているので、従来のように紙粉は発生せず衛生的である。
【0053】
特に、直交積層不織布2は、縦方向および横方向に繊維が配列されているので、縦方向と横方向での強度バランスにも優れ、しかも引張り強度および引裂き強度をより向上させることができる。また、直交積層不織布は緻密な長繊維が均一に配列されて構成されるので、基材として直交積層不織布2を用いることにより、突き刺し強度をより向上させることができる。したがって、収納される機能性物品が、石灰や木炭など、硬くかつ突起を有する形状のもので、しかも、機能性物品を多く含む大型の包装体に通気性包装材料1を使用しても、機能性物品が通気性包装材料1を突き破って外部に流出することはなく、安全である。
【0054】
また、通気性包装材料1は、通気性包装材料1を構成する各層がそれ自体で通気性を有しており、従来のように細孔を形成する必要はない。したがって、通気性包装材料1の製造は、各層を積層するだけでよいので容易である。
【0055】
通気性包装材料1を用いて包装体を形成する際は、前述したように、スパンボンド不織布3をヒートシール層として利用する。このように、ヒートシール層として、ポリオレフィン系樹脂、特にポリエチレン系樹脂からなるスパンボンド不織布3を用いることで、ヒートシール時の温度を低くしても高いシール強度が得られる。シール温度を低くできるということは、ヒートシール時の通気性包装材料1の加熱時間を短くできるということであり、結果的に、包装体の生産性向上に繋がる。また、シール温度を低くできることにより、直交積層不織布2を溶融させない温度でヒートシールを行うことができ、これにより、ヒートシール時に直交積層不織布2がシール機のシールバーに融着するのを防止することができる。
【0056】
以上説明した直交積層不織布2とスパンボンド不織布3とは、前述したように、熱接着により積層される。熱接着は、直交積層不織布2とスパンボンド不織布3とを重ね合わせ、これを、熱接着に適した所定の温度に設定された金属製の熱ロールと耐熱性ゴムロールとの間を通過させて行う。
【0057】
また、熱接着の際に、互いの接着表面にコロナ処理、オゾン処理、またはフレーム処理といった前処理を施すと、接着強度が向上する。この方法は特に、素材が異なる層を積層するときに有効である。このような前処理を施すと、互いの接着表面に極性基が付与され、これによって密着力が向上するためであると考えられる。直径が5〜20μmの繊維で構成された直交積層不織布2とオレフィン系の熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布3とを熱接着により積層すると、ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が融解して直交積層不織布2の繊維間に入り込み、この状態で冷却固化される。不織布の熱接着では、こうした不織布表面での凹凸形状に由来した、熱可塑性樹脂のアンカーリングによっても接着強度が向上するものと考えられる。
【0058】
このように、通気性包装材料1を構成する各層の積層は熱接着により積層され、接着剤は不要である。したがって、通気性包装材料1は、臭気のない良好な作業環境で、簡便かつ安価に製造される。
【0059】
積層条件(温度、圧力、送り速度など)は、直交積層不織布2の種類、スパンボンド不織布3の種類、各層を構成する樹脂の融点、および各層を構成する樹脂の融点差などを考慮して適宜選定される。一例を示すと、熱ロールの温度は90〜200℃、好ましくは110〜180℃、ロールによって与えられる線圧は100〜500N/cm、好ましくは200〜400N/cmである。重要な点は、直交積層不織布2およびスパンボンド不織布3の通気性を著しく低下させない条件設定を行うことである。通気性包装材料1には、包装体とされたときに、その中に収納される機能性物品が、それが持つ機能を発揮するのに必要な、適度な通気性が必要である。この通気性は、機能性物品の種類や包装体のサイズなど用途によって異なり、特に限定されるものではない。
【0060】
本発明の通気性包装材料は、脱酸素剤、乾燥剤、吸湿剤、消臭剤、発熱剤、防虫剤、除湿剤または芳香剤などの機能性物品はもちろんのこと、その他、通気性を必要とする種々の物品の包装に好適に利用できる。これらの機能性物品を収納する包装体は、機能性物品が機能すればどのような形態でもよい。包装体が袋の形態である場合には、通気性包装材料は、その袋の一部分、片面、または全体に使用される。通気性包装材料で袋全体を構成する場合、袋の形成は、シート材から袋を形成する一般的な製袋包装機を用いることができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の代表的な実施例について比較例とともに説明する。
【0062】
ここでは、以下の実施例1、2に示す方法で通気性包装材料を作製し、それぞれについて、通気度、および、縦方向と横方向の引張り強度、伸び率、引裂き強度を測定した。これら通気度、引張り強度、伸び率、および引裂き強度は、JISL1906に準拠して測定した。
【0063】
また、作製した通気性包装材料を、スパンボンド不織布同士で部分的にヒートシールし、そのシール強度を測定した。シール強度は以下のようにして測定した。まず、得られた通気性包装材料からサンプルを切り出し、切り出したサンプルを、スパンボンド不織布同士が対面するように重ね合わせ、テスター産業(株)製のヒートシールテスターTP−701−Bを用いてヒートシールした。ヒートシールの条件は、シール面積を15mm×10mm、シール圧力を98kPa、シール時間を1.0秒、シール温度を150℃とした。その後、ヒートシールされたサンプルを15mm幅で3本ずつ切り出し、それぞれについてT字剥離法にてシール部分を剥離させてシール強度を測定し、3本の平均を求めた。このときのチャック間距離は100mm、引張速度は100mm/minとした。
【0064】
さらに、作製した通気性包装材料について印刷性の評価も行った。印刷は、深度30μmにて、JIS第1水準の文字で文字サイズ2mm角のものと5mm角のもの、直径が2〜10mmの黒丸、および太さの異なる罫線を組み合わせたパターンを彫刻して、直交積層不織布側に黒色のダイレクトグラビア印刷を行った。印刷性の評価は、以下の評価基準によって行った。
○:文字が鮮明で、かつ、罫線の太さムラも黒丸の白抜けも見られない。
×:文字が不鮮明で、かつ、罫線切れや黒丸の白抜けも見受けられる。
【0065】
なお、比較のために、層構成を変えて通気性包装材料を作製し(比較例1〜3)、同様の評価を行った。
【0066】
(実施例1)
直交積層不織布として、ポリエステル樹脂からなる「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY1010E(目付量20g/m2)を用いるとともに、スパンボンド不織布として、ポリエチレン樹脂からなる「ストラテック」(出光石油化学(株)製、商品名)の品番N01030(目付量30g/m2)を用い、両者を、互いに重ね合わせて熱ロールと耐熱ゴム製ロールとの間に供給する熱ラミネート法によって積層し、通気性包装材料を作製した。積層条件は、熱ロールの温度を160℃、ロールによって与えられる線圧を200N/cm、送り速度を30m/minとした。また、積層に先立って、直交積層不織布およびスパンボンド不織布の互いの積層面に、100kW/m2/minの出力にてコロナ処理を施した。
【0067】
(実施例2)
直交積層不織布として、ポリエステル樹脂からなる「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY1515E(目付量30g/m2)を用いたほかは、実施例1と同様にして通気性包装材料を作製した。
【0068】
(比較例1)
直交積層不織布の代わりに、ポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布(目付量20g/m2)を用いた他は、実施例1と同様にして通気性包装材料を作製した。
【0069】
(比較例2)
直交積層不織布の代わりに、ポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布(目付量30g/m2)を用いた他は、実施例1と同様にして通気性包装材料を作製した。
【0070】
(比較例3)
ポリエステル樹脂からなる直交積層不織布である「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY2020E(目付量40g/m2)のみで通気性包装材料を構成した。なお、ヒートシールは、タテ延伸不織布同士を向き合わせて行った。
【0071】
実施例1,2、比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、実施例1,2は、比較例1,2に比べて縦方向および横方向の引張り強度が高く、しかも、縦方向と横方向との強度バランスにも優れている。また、実施例1,2は、シール強度も高く、同時に、縦方向と横方向とのシール強度のバランスも良好である。さらに、実施例1,2は、一方向延伸配列不織布を用いた直交積層不織布を有するので、地合いが均一で、ポリエチレン系のスパンボンド不織布と積層した場合の通気度のばらつきが小さく、品質の安定した通気性包装材料となった。
【0074】
比較例1,2は、直交積層不織布の代わりにポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を用いているため、引張り強度が小さく、縦方向と横方向での強度バランスも悪いため、シール強度も小さいものとなった。また、比較例1,2は、直交積層不織布の代わりにポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を用いているため、通気度のばらつきは実施例1,2と比べて大きかった。なお、ヒートシールに関して、比較例3では、150℃の条件下ではヒートシールを行うことができなかった。
【0075】
印刷性の評価においては、直交積層不織布への印刷(実施例1,2、比較例3)は良好であったが、スパンボンド不織布への印刷(比較例1,2)では鮮明な印刷結果が得られなかった。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、直交積層不織布とスパンボンド不織布とを積層することにより、通気性を有しながらも機械的強度に優れ、しかも製造が容易な通気性包装材料とすることができる。また、直交積層不織布を表層として包装体を形成することにより、直交積層不織布は印刷性も良好であるので意匠性に優れた包装体とすることができ、しかも、紙粉が発生するという問題も生じない。さらに、スパンボンド不織布はポリオレフィン系樹脂からなるので、これをヒートシール層として包装体を形成することにより、高いシール強度でヒートシールし、内容物の流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による通気性包装材料の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 通気性包装材料
2 直交積層不織布
2a,2b 一方向延伸配列不織布
3 スパンボンド不織布
【発明の属する技術分野】
本発明は、通気性を有するとともにヒートシール性に優れ、脱酸素剤や乾燥剤などの包装に好適に用いられる通気性包装材料およびこの通気性包装材料を用いた包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
加工食品の腐敗、変質、劣化などを防止するために、脱酸素剤や乾燥剤などが多く用いられている。この種の脱酸素剤や乾燥剤は、通気性を有する小袋に包装されて、食品とともに収納されて用いられる。
【0003】
脱酸素剤や乾燥剤を包装するのに用いられる包装材料としては、紙などの通気性を有する基材を表層に用い、この基材の裏面に、ポリエチレン層を積層したもの、あるいは、格子網状物をポリエチレン層でサンドイッチした強化材層を積層したものが知られている。そして、このような層構成を有する包装材料では、包装材料全体としての通気性を確保するために、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に、これらを貫通するが基材までは貫通しない多数の細孔を形成している。細孔は、熱針などによって形成される。基材の表面には、包装されているものが脱酸素剤や乾燥剤である旨を表示する印刷が施されている。
【0004】
この種の包装材料で脱酸素剤や乾燥剤などの内容物を包装する際には、ポリエチレン層を内側にして内容物を包み、周縁部においてポリエチレン層同士をヒートシールして包装体を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の包装材料では、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に熱針などによって細孔を形成しているが、ポリエチレン層または強化材層のみに細孔を形成するのは難しく、一部の細孔が基材を貫通してしまうことがあった。細孔が基材を貫通すると、包装体の内容物が外部に流出し、食品に付着してしまう。また、ポリエチレン層または強化材層を基材に積層したあとに細孔を形成しているので、細孔の形成不良が生じた場合の材料のロスが大きく、結果的に製造コストが高くなってしまう。
【0006】
また、従来この種の包装材料では基材に紙を用いており、実使用時においては、基材である紙は食品と接触することになる。そのため、食品の輸送中に、この包装材料で作られた包装体と食品とが擦られて紙粉が発生する。紙粉が発生すると、これが食品に付着して衛生上の問題が生じる。
【0007】
また、包装体は、内容物が不用意に流出しないようにするため、包装材料には引張り強度や引裂き強度といった機械的強度が高いことが要求され、さらに、ヒートシール部におけるシール強度も高いことが要求される。内容物が流出しないようにすることは、内容物が、脱酸素剤や乾燥剤など、人体に触れると重大な事故を起こしかねない物質である場合に特に重要である。
【0008】
そこで本発明は、製造が容易で、かつ、機械的強度およびシール強度が高く、特に脱酸素剤や乾燥剤などを包装するのに好適に用いられる通気性包装材料、およびこれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の通気性包装材料は、フィラメントが一方向に配列されかつ延伸された第1および第2の不織布が、これらのフィラメントの配列方向が互いに直交するように積層されてなる直交積層不織布と、この直交積層不織布の片面に積層された、ポリオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布とを有する。
【0010】
また、本発明の包装体は、本発明の通気性包装材料を少なくとも一部に用い、そのスパンボンド不織布をヒートシールすることによって形成される。
【0011】
このように、本発明の通気性包装材料は、不織布のみで構成されているので、細孔を形成しなくとも十分な通気性を有し、しかも、直交積層不織布を有するので機械的強度にも優れている。また、スパンボンド不織布はポリオレフィン系樹脂からなるので、このスパンボンド不織布をヒートシール層に利用して包装体を形成することにより、低いシール温度でヒートシールを行うことができ、しかも高いシール強度が得られ、さらに、シール温度を高くすればシール強度を維持して生産性を向上することが可能である。さらに、直交積層不織布を表層に用いることにより、直交積層不織布は印刷性も良好であるので意匠性に優れた包装体が得られ、しかも、従来のように紙粉が発生するといった問題も生じない。
【0012】
直交積層不織布は、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂からなることが好ましく、また、スパンボンド不織布は、ポリエチレン系樹脂からなることが好ましい。これによれば、直交積層不織布とスパンボンド不織布との融点差が十分に大きくなり、包装体を形成する際のヒートシール時に、直交積層不織布がヒートシール機のシールバーに融着することはない。
【0013】
なお、本明細書において、「縦方向」とは、不織布を製造する際の機械方向すなわち送り方向を意味し、また「横方向」とは、縦方向と直角な方向すなわち不織布の幅方向を意味している。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による通気性包装材料の模式的断面図である。図1に示すように、通気性包装材料1は、直交積層不織布2と、その片面に積層されたスパンボンド不織布3とを有する。直交積層不織布2の表面(スパンボンド不織布3が積層された側と反対側の面)には印刷が施されている。直交積層不織布2およびスパンボンド不織布3はそれぞれ熱可塑性樹脂からなり、両者の積層は熱接着により行うことができる。特に、直交積層不織布2には、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエステルなどが用いられ、スパンボンド不織布3には、直交積層不織布2を構成する樹脂よりも融点の低いポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン系樹脂が用いられる。
【0016】
この通気性包装材料1は、粉末状あるいは粒状の脱酸素剤や乾燥剤などの機能性物品を内部に収容する包装体の包装材料として好ましく用いられる。この通気性包装材料1から包装体を形成する際は、スパンボンド不織布3を内側にして通気性包装材料1を2つ折りにし、周縁部を熱接着する。そして、包装体は、食品の変質等を防止するために、食品とともに袋や容器内に収納される。
【0017】
以下に、これら直交積層不織布2およびスパンボンド不織布3について詳細に説明する。
【0018】
(1)直交積層不織布
直交積層不織布2は、フィラメントを一方向に配列しその方向に延伸した2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bを縦横に交差積層したものであり、その例としては、日石プラスト(株)製のミライフ(商品名)が挙げられる。
【0019】
以下に、一方向延伸配列不織布2a,2bおよび直交積層不織布2について説明する。
【0020】
一方向延伸配列不織布2a,2bは、前述のように、フィラメントをその配列方向に延伸したものであり、この方法によれば、紡糸段階では通常の不織布と同様に紡糸されるが、これをフィラメントの配列方向に5〜8倍に延伸することにより、フィラメントの繊度は主として1.5dTex以下とされる。このように、フィラメントをその配列方向に延伸することで、延伸後の強度が向上する。一方向延伸配列不織布2a,2bを構成するフィラメントは長繊維フィラメントである。
【0021】
延伸一方向配列不織布2a,2bには、タテ延伸不織布とヨコ延伸不織布とがあり、本発明においてはこれらの何れも使用することができる。タテ延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向であるタテ方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、ヨコ延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向であるヨコ方向にフィラメントが配列され延伸された不織布である。
【0022】
タテ延伸不織布としては、例えば、特開平10−204767号公報に開示されている不織布を使用することができる。以下に、タテ延伸不織布についてその製造方法とともに説明する。
【0023】
まず、ダイスに設けられたノズルから押し出されたフィラメントにドラフト張力を与え、これによってフィラメントを細径化し、コンベア上に集積する。このとき、ノズルを出た直後のフィラメント融液を積極的に加熱し、またはノズル近傍(フィラメントがノズルから紡出された直後の位置)の雰囲気温度を高温に維持する。この間の温度はフィラメントの融点よりも十分に高くし、フィラメントのドラフトによるフィラメントの分子配向をできるだけ小さくする。
【0024】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー(MB)ダイスを使用する方法や、狭義のスパンボンド(SB)法がある。ただし、通常のMB法やSB法ではコンベア上でフィラメントがランダムに集積するので、ノズルから紡出されたフィラメントに、霧状の水分を含むエア等をコンベアの搬送面に対して斜めに噴射する。これによって、フィラメントのタテ方向への配列および冷却が行われる。
【0025】
このように、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸することにより、フィラメントをタテ方向に良好に配列させることができる。フィラメントを搬送面に対して傾斜させる手段としては、ノズル方向をコンベアに対して傾けることや、流体の補助によりフィラメントを斜行させることや、コンベアをフィラメントの紡出方向に対して傾斜させることなどが有効である。これらは、単独で用いてもよいし、複数の手段を適宜組み合わせて用いてもよい。なお、ノズル近傍で流体を使用する場合は、流体は加熱されていることが望ましい。また、ノズル近傍で流体を使用しない場合は、フィラメントとノズル近傍で積極的に加熱する。これは、フィラメントがドラフトにより細径化される際に、できるだけ分子配向を伴わないようにするためである。
【0026】
上述したMB法およびSB法の何れの方法においても、フィラメントをコンベアの搬送面に対して傾斜させるために流体を使用しているが、この流体としては、コンベア近傍では冷流体、特に霧状の水を含んだ流体が最も望ましい。紡出されたフィラメントを急冷することにより、結晶化を進行させないようにするためである。結晶化が進むと延伸性が低下してしまう。また、霧状の水を噴射することは、コンベア上に集積したウェブをコンベア上に貼り付けさせる作用もあり、その結果、紡糸の安定性、およびフィラメントの配列性の向上により効果がある。
【0027】
コンベア上に集積したウェブはタテ方向に延伸され、これによりタテ延伸不織布とされる。ウェブをタテ方向に延伸することにより、フィラメントのタテ方向への配列性をより向上させることができる。ウェブのタテ延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸法が用いられている。多段延伸法においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、さらにその後に延伸する2段目以降の延伸が主延伸として行われている。
【0028】
次に、ヨコ延伸不織布について説明する。ヨコ延伸不織布としては、例えば、特公平3−36948号公報に開示されている不織布を使用することができる。
【0029】
ヨコ延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントがほぼヨコ方向に配列したウェブを形成する。フィラメントがほぼヨコ方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより押し出されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からのエア噴射によりヨコ方向に振らせ、コンベア上に集積させることによって形成することができる。
【0030】
紡糸ノズルの周囲からのエア噴射でフィラメントをヨコ方向に振らせるためには、紡糸ノズルの周囲に、それぞれ紡糸ノズルを中心とした円周方向の成分を持ってエアを噴射する複数(通常は3〜8個)の第1のエア噴出孔を設け、さらに、これら第1のエア噴出孔の外側に、噴射したエアがコンベアによるウェブの搬送方向と平行な方向で互いに衝突するように配された2つの第2のエア噴出孔を設ける。紡糸ノズルから押し出されたフィラメントは、第1のエア噴出孔からのエア噴射によりスパイラル状に回転させられる。一方、第2のエア噴出孔から噴射されたエアは、回転しているフィラメントの通過経路上で互いに衝突し、コンベアによる搬送方向と直角すなわちヨコ方向に広がる。回転しているフィラメントは、このエアの勢いでヨコ方向に散らされる。これにより、コンベア上には、ヨコ方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0031】
このようにして得られたウェブは、ヨコ方向に延伸される。ウェブをヨコ方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて製品幅を自由に変える必要があり、また、原料の厚さ等に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。
【0032】
プーリ方式による延伸装置は、ウェブの両側端部を把持するためにウェブの幅方向に間隔をあけて配置された一対のプーリとベルトとを有する。プーリは、ウェブの幅方向の中心線に対して左右対称にその外周が末広がりの軌道を持つように配置され、それぞれ同一周速で回転される。一方、ベルトは各プーリに対応して張力下で掛け回されており、このベルトの一部位が、プーリの間隔の狭まった位置から広がった位置にわたる領域にかけて、それぞれプーリの外周端面に形成された溝にはめ込まれている。
【0033】
ウェブは、プーリの間隔の狭まった箇所から導入され、両側端部がプーリとベルトとにより把持される。プーリの回転に伴い、ウェブはベルトとの間で把持されながら一対のプーリが作る末広がりの軌道を通り、これによりウェブはヨコ方向に延伸される。この間の加熱は、熱水や熱風が利用できる。
【0034】
以上のようにして、フィラメントがヨコ方向に配列され延伸されたヨコ延伸不織布が得られる。
【0035】
一方向延伸配列不織布2a,2bの代表的な製造方法について、タテ延伸不織布およびヨコ延伸不織布を例に挙げて説明したが、一方向延伸配列不織布2a,2bの製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつフィラメントをその配列方向に延伸することができる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0036】
直交積層不織布2は、2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bをそのフィラメントの配列方向を交差(好ましくは直交)させて積層したものである。このように、フィラメントの配列方向を交差させて積層することにより、縦方向と横方向の強度のバランスに優れた不織布とすることができる。
【0037】
一方向配列配列不織布2a,2bには、前述したようにタテ延伸不織布とヨコ延伸不織布とがあるが、直交積層不織布2を構成するためには、フィラメントの配列方向が互いに交差するように積層されていれば、これらの何れも使用することができ、また組み合わせも任意である。ただし、タテ延伸不織布とヨコ延伸不織布との組み合わせとする場合には、これらはそのまま用いるのが望ましい。これにより、タテ延伸不織布とヨコ延伸不織布とを積層する際に、両者をそのまま繰出して、繋ぎ目のない連続した均一な直交積層不織布2を得ることができる。また、予めタテ延伸不織布を作製しておき、ヨコ延伸不織布の製造段階で、タテ延伸不織布を繰出しながらこのタテ延伸不織布上にヨコ延伸不織布を作製し、これらを積層することで、直交積層不織布2を効率よく製造することができる。
【0038】
直交積層不織布2を製造する際の一方向延伸配列不織布同士の積層には、エンボス法や、熱ロールを用いた圧着法を用いることができる。ただし、直交積層不織布2への印刷性を考慮すると、一方向延伸配列不織布2a,2b同士の積層方法としては、表面に凹凸が形成されない熱ロールによる圧着が好ましい。熱ロールによる一方向延伸配列不織布2a,2b同士の圧着は、一方向延伸配列不織布2a,2bを構成する樹脂の融点よりも30〜130℃低い温度で行うのが好ましい。なお、熱ロールによる圧着では、一方向延伸配列不織布2a,2bが強固に一体化されるには至らないが、スパンボンド不織布3との熱接着工程で一方向延伸配列不織布2a,2b同士を強固に一体化することができる。したがって、直交積層不織布2の製造段階では、一方向延伸配列不織布2a,2bは、スパンボンド不織布3との熱接着が終了するまでの間、積層状態を維持することができる程度に一体化されていれば十分である。
【0039】
以上、直交積層不織布2の具体的な例について説明したが、直交積層不織布2は連続した長繊維によって構成されているため、包装材料の表層に使用しても毛羽立ちが少ない。特に、一方向延伸配列不織布2a,2bは、一般のスパンボンド法によって製造されるスパンボンド不織布に比べて長繊維が整然と一方向に配列しているため、表面平滑性に優れ、印刷特性が良好である。したがって、カレンダー処理などの後処理によって表面を平滑にすることなく印刷を行うことができる。また、一方向延伸配列不織布2a,2bは、延伸を行っていることによりその繊維径は一般的なスパンボンド不織布のそれと比べて細く、5〜15μmである。そのため一方向延伸配列不織布2a,2bは、単位面積当たりに占める繊維本数が多く、目付けむらの少ない均質な不織布となり、細かい印刷文字でも鮮明に印刷することが可能である。また、2枚の一方向延伸配列不織布2a,2bを互いに交差させて積層した直交積層不織布2は、縦方向と横方向の強度バランスに優れ、しかも長繊維を延伸しているので高い強度を有する。
【0040】
直交積層不織布2の目付量は、好ましくは5〜50g/m2、より好ましくは10〜30g/m2である。目付量が5g/m2未満では、印刷性に劣り強度も小さいため実用化は難しい。一方、目付量が50g/m2を越えると、直交積層不織布2の厚みが厚くなり過ぎ、コストも上昇する。
【0041】
直交積層不織布2への印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、あるいはスクリーン印刷など、種々の印刷法が適用可能である。本実施形態では直交積層不織布2の表面に印刷を行っているが、直交積層不織布2が食品と接触するような形態でこの通気性包装材料1を用いる場合に、印刷用のインキが食品に移行しても衛生上の問題が生じないように、着色剤として食用色素を使用するとともに、バインダーとして、食品に接触してもよい樹脂を使用したインキを用いることが望ましい。
【0042】
直交積層不織布2への印刷は、スパンボンド不織布3との積層面に行い、直交積層不織布2を通して印刷情報を視認するようにしてもよい。この場合は、印刷用のインキが食品と接触しないので、印刷インキ工業連合会の制定する「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制」(NL規制)に適合する、包装材料への印刷に一般に使用されているインキを使用することができる。その結果、上述したような特殊なインキを使用する必要がなくなるので、直交積層不織布2との密着性に優れたインキを使用して任意の色調で印刷を行うことができる。また、安価なインキを使用できるので、通気性包装材料1を安価に製造することができる。
【0043】
(2)スパンボンド不織布
スパンボンド不織布3は、例えば、多数のノズルから放出されたフィラメント群をエジェクタあるいはエアサッカーで引き取ることにより細化し、気流とともにネットコンベア上に捕集するといった、公知の狭義のスパンボンド法によって製造された不織布である。
【0044】
スパンボンド不織布3に用いられる熱可塑性樹脂は、通気性包装材料1から包装体を製造するとき、ヒートシール層として機能するものである。したがって、その融点が、直交積層不織布2に用いられる熱可塑性樹脂の融点よりも低いことが重要である。これらの熱可塑性樹脂の融点差は、好ましくは15℃以上、より好ましくは25℃以上である。
【0045】
スパンボンド不織布を構成するフィラメント(繊維)は、上述したタテ延伸不織布やヨコ延伸不織布のように十分な延伸がなされていないため、分子配向性が低く、融点が低い。したがって、スパンボンド不織布は、ヒートシール層として用いる不織布として適しているといえる。
【0046】
スパンボンド不織布3に用いられる熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレン樹脂、エチレン‐α‐共重合体、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸共重合体、エチレン‐環状オレフィン共重合体、エチレン‐スチレン共重合体、軟質ポリプロピレン系樹脂、プロピレンと他のオレフィンとのランダム共重合体、あるいはこれらの混合樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0047】
これらのポリオレフィン系樹脂は、チタンなどを用いたチーグラー系触媒を用いて重合された重合体、メタロセン系触媒を用いて重合された分子量分布の狭い共重合体などが用いられる。また、ポリプロピレン系樹脂の融点は、規則性や共重合によって任意に制御されたものから適宜選択して用いることができる。
【0048】
スパンボンド不織布3にはポリエチレン系樹脂が好ましく用いられ、その中でも、エチレンの単独重合体、エチレンとプロピレン、ブテン‐1、4‐メチル‐ペンテン‐1、オクテン‐1などの炭素数3〜10のα‐オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸などの重合性モノマーとの共重合体などが好ましく用いられる。特に、密度が880〜960kg/m3、好ましくは900〜950kg/m3、融点が60〜140℃、好ましくは70〜130℃の範囲、メルトインデックス(MI)が5〜60g/10分、好ましくは10〜50g/10分の範囲のエチレン‐α‐オレフィン共重合体が、紡糸性、融点および強度の点から好ましく用いられる。
【0049】
なお、スパンボンド不織布3は、上述したポリエチレン系樹脂を単独で用いてもよいし、他の樹脂を50質量%以下含む組成物からなるものであってもよい。しかし、ヒートシール性が確保されるならば、他の樹脂との複合繊維、すなわち、鞘部分としてポリエチレン系樹脂、芯部分としてポリプロピレン系樹脂などを用いた芯鞘構造の複合繊維、あるいは繊維の50質量%以上がポリエチレン系樹脂で残りが他の樹脂であるサイドバイサイド構造の複合繊維とすることもできる。これらの複合繊維を構成する樹脂は、ポリエチレン系樹脂の中で、融点や密度などの異なる樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、複合繊維の場合、融点の低いほうの樹脂がスパンボンド不織布3の融点を示す。
【0050】
スパンボンド不織布3は、フィラメント径が2〜50μm、好ましくは5〜30μm、目付量が2〜200g/m2、好ましくは5〜100g/m2、より好ましくは10〜60g/m2である。これらフィラメント径や目付量は、直交積層不織布2の特性、目付量、樹脂の融点、および通気性包装材料1の用途によって要求される特性を満足するように適宜選択される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の通気性包装材料1によれば、包装体としたときの最表層となる基材を直交積層不織布2とし、その裏面側にヒートシール層としてスパンボンド不織布3を積層することで、通気性を確保しながらも、従来のように紙と強化材層とを積層した包装材料と比べて、引張り強度、引裂き強度などの機械的強度に優れた通気性包装材料1とすることができる。
【0052】
したがって、通気性包装材料1は、包装体とされたときに内部に収納された機能性物品による損傷も生じにくく、食品用の脱酸素剤や乾燥剤以外に、活性炭や木炭など重量の大きな内容物を収納する大型の包装材料としても有効に利用できる。また、通気性包装材料1は、最表層が直交積層不織布2で構成されているので、従来のように紙粉は発生せず衛生的である。
【0053】
特に、直交積層不織布2は、縦方向および横方向に繊維が配列されているので、縦方向と横方向での強度バランスにも優れ、しかも引張り強度および引裂き強度をより向上させることができる。また、直交積層不織布は緻密な長繊維が均一に配列されて構成されるので、基材として直交積層不織布2を用いることにより、突き刺し強度をより向上させることができる。したがって、収納される機能性物品が、石灰や木炭など、硬くかつ突起を有する形状のもので、しかも、機能性物品を多く含む大型の包装体に通気性包装材料1を使用しても、機能性物品が通気性包装材料1を突き破って外部に流出することはなく、安全である。
【0054】
また、通気性包装材料1は、通気性包装材料1を構成する各層がそれ自体で通気性を有しており、従来のように細孔を形成する必要はない。したがって、通気性包装材料1の製造は、各層を積層するだけでよいので容易である。
【0055】
通気性包装材料1を用いて包装体を形成する際は、前述したように、スパンボンド不織布3をヒートシール層として利用する。このように、ヒートシール層として、ポリオレフィン系樹脂、特にポリエチレン系樹脂からなるスパンボンド不織布3を用いることで、ヒートシール時の温度を低くしても高いシール強度が得られる。シール温度を低くできるということは、ヒートシール時の通気性包装材料1の加熱時間を短くできるということであり、結果的に、包装体の生産性向上に繋がる。また、シール温度を低くできることにより、直交積層不織布2を溶融させない温度でヒートシールを行うことができ、これにより、ヒートシール時に直交積層不織布2がシール機のシールバーに融着するのを防止することができる。
【0056】
以上説明した直交積層不織布2とスパンボンド不織布3とは、前述したように、熱接着により積層される。熱接着は、直交積層不織布2とスパンボンド不織布3とを重ね合わせ、これを、熱接着に適した所定の温度に設定された金属製の熱ロールと耐熱性ゴムロールとの間を通過させて行う。
【0057】
また、熱接着の際に、互いの接着表面にコロナ処理、オゾン処理、またはフレーム処理といった前処理を施すと、接着強度が向上する。この方法は特に、素材が異なる層を積層するときに有効である。このような前処理を施すと、互いの接着表面に極性基が付与され、これによって密着力が向上するためであると考えられる。直径が5〜20μmの繊維で構成された直交積層不織布2とオレフィン系の熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布3とを熱接着により積層すると、ポリオレフィン系の熱可塑性樹脂が融解して直交積層不織布2の繊維間に入り込み、この状態で冷却固化される。不織布の熱接着では、こうした不織布表面での凹凸形状に由来した、熱可塑性樹脂のアンカーリングによっても接着強度が向上するものと考えられる。
【0058】
このように、通気性包装材料1を構成する各層の積層は熱接着により積層され、接着剤は不要である。したがって、通気性包装材料1は、臭気のない良好な作業環境で、簡便かつ安価に製造される。
【0059】
積層条件(温度、圧力、送り速度など)は、直交積層不織布2の種類、スパンボンド不織布3の種類、各層を構成する樹脂の融点、および各層を構成する樹脂の融点差などを考慮して適宜選定される。一例を示すと、熱ロールの温度は90〜200℃、好ましくは110〜180℃、ロールによって与えられる線圧は100〜500N/cm、好ましくは200〜400N/cmである。重要な点は、直交積層不織布2およびスパンボンド不織布3の通気性を著しく低下させない条件設定を行うことである。通気性包装材料1には、包装体とされたときに、その中に収納される機能性物品が、それが持つ機能を発揮するのに必要な、適度な通気性が必要である。この通気性は、機能性物品の種類や包装体のサイズなど用途によって異なり、特に限定されるものではない。
【0060】
本発明の通気性包装材料は、脱酸素剤、乾燥剤、吸湿剤、消臭剤、発熱剤、防虫剤、除湿剤または芳香剤などの機能性物品はもちろんのこと、その他、通気性を必要とする種々の物品の包装に好適に利用できる。これらの機能性物品を収納する包装体は、機能性物品が機能すればどのような形態でもよい。包装体が袋の形態である場合には、通気性包装材料は、その袋の一部分、片面、または全体に使用される。通気性包装材料で袋全体を構成する場合、袋の形成は、シート材から袋を形成する一般的な製袋包装機を用いることができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の代表的な実施例について比較例とともに説明する。
【0062】
ここでは、以下の実施例1、2に示す方法で通気性包装材料を作製し、それぞれについて、通気度、および、縦方向と横方向の引張り強度、伸び率、引裂き強度を測定した。これら通気度、引張り強度、伸び率、および引裂き強度は、JISL1906に準拠して測定した。
【0063】
また、作製した通気性包装材料を、スパンボンド不織布同士で部分的にヒートシールし、そのシール強度を測定した。シール強度は以下のようにして測定した。まず、得られた通気性包装材料からサンプルを切り出し、切り出したサンプルを、スパンボンド不織布同士が対面するように重ね合わせ、テスター産業(株)製のヒートシールテスターTP−701−Bを用いてヒートシールした。ヒートシールの条件は、シール面積を15mm×10mm、シール圧力を98kPa、シール時間を1.0秒、シール温度を150℃とした。その後、ヒートシールされたサンプルを15mm幅で3本ずつ切り出し、それぞれについてT字剥離法にてシール部分を剥離させてシール強度を測定し、3本の平均を求めた。このときのチャック間距離は100mm、引張速度は100mm/minとした。
【0064】
さらに、作製した通気性包装材料について印刷性の評価も行った。印刷は、深度30μmにて、JIS第1水準の文字で文字サイズ2mm角のものと5mm角のもの、直径が2〜10mmの黒丸、および太さの異なる罫線を組み合わせたパターンを彫刻して、直交積層不織布側に黒色のダイレクトグラビア印刷を行った。印刷性の評価は、以下の評価基準によって行った。
○:文字が鮮明で、かつ、罫線の太さムラも黒丸の白抜けも見られない。
×:文字が不鮮明で、かつ、罫線切れや黒丸の白抜けも見受けられる。
【0065】
なお、比較のために、層構成を変えて通気性包装材料を作製し(比較例1〜3)、同様の評価を行った。
【0066】
(実施例1)
直交積層不織布として、ポリエステル樹脂からなる「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY1010E(目付量20g/m2)を用いるとともに、スパンボンド不織布として、ポリエチレン樹脂からなる「ストラテック」(出光石油化学(株)製、商品名)の品番N01030(目付量30g/m2)を用い、両者を、互いに重ね合わせて熱ロールと耐熱ゴム製ロールとの間に供給する熱ラミネート法によって積層し、通気性包装材料を作製した。積層条件は、熱ロールの温度を160℃、ロールによって与えられる線圧を200N/cm、送り速度を30m/minとした。また、積層に先立って、直交積層不織布およびスパンボンド不織布の互いの積層面に、100kW/m2/minの出力にてコロナ処理を施した。
【0067】
(実施例2)
直交積層不織布として、ポリエステル樹脂からなる「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY1515E(目付量30g/m2)を用いたほかは、実施例1と同様にして通気性包装材料を作製した。
【0068】
(比較例1)
直交積層不織布の代わりに、ポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布(目付量20g/m2)を用いた他は、実施例1と同様にして通気性包装材料を作製した。
【0069】
(比較例2)
直交積層不織布の代わりに、ポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布(目付量30g/m2)を用いた他は、実施例1と同様にして通気性包装材料を作製した。
【0070】
(比較例3)
ポリエステル樹脂からなる直交積層不織布である「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY2020E(目付量40g/m2)のみで通気性包装材料を構成した。なお、ヒートシールは、タテ延伸不織布同士を向き合わせて行った。
【0071】
実施例1,2、比較例1〜3の評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、実施例1,2は、比較例1,2に比べて縦方向および横方向の引張り強度が高く、しかも、縦方向と横方向との強度バランスにも優れている。また、実施例1,2は、シール強度も高く、同時に、縦方向と横方向とのシール強度のバランスも良好である。さらに、実施例1,2は、一方向延伸配列不織布を用いた直交積層不織布を有するので、地合いが均一で、ポリエチレン系のスパンボンド不織布と積層した場合の通気度のばらつきが小さく、品質の安定した通気性包装材料となった。
【0074】
比較例1,2は、直交積層不織布の代わりにポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を用いているため、引張り強度が小さく、縦方向と横方向での強度バランスも悪いため、シール強度も小さいものとなった。また、比較例1,2は、直交積層不織布の代わりにポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を用いているため、通気度のばらつきは実施例1,2と比べて大きかった。なお、ヒートシールに関して、比較例3では、150℃の条件下ではヒートシールを行うことができなかった。
【0075】
印刷性の評価においては、直交積層不織布への印刷(実施例1,2、比較例3)は良好であったが、スパンボンド不織布への印刷(比較例1,2)では鮮明な印刷結果が得られなかった。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、直交積層不織布とスパンボンド不織布とを積層することにより、通気性を有しながらも機械的強度に優れ、しかも製造が容易な通気性包装材料とすることができる。また、直交積層不織布を表層として包装体を形成することにより、直交積層不織布は印刷性も良好であるので意匠性に優れた包装体とすることができ、しかも、紙粉が発生するという問題も生じない。さらに、スパンボンド不織布はポリオレフィン系樹脂からなるので、これをヒートシール層として包装体を形成することにより、高いシール強度でヒートシールし、内容物の流出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による通気性包装材料の模式的断面図である。
【符号の説明】
1 通気性包装材料
2 直交積層不織布
2a,2b 一方向延伸配列不織布
3 スパンボンド不織布
Claims (4)
- フィラメントが一方向に配列されかつ延伸された第1および第2の不織布が、これらのフィラメントの配列方向が互いに直交するように積層されてなる直交積層不織布と、
前記直交積層不織布の片面に積層された、ポリオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布とを有する通気性包装材料。 - 前記直交積層不織布は、ポリプロピレン樹脂またはポリエステル樹脂からなる、請求項1に記載の通気性包装材料。
- 前記スパンボンド不織布は、ポリエチレン系樹脂からなる、請求項1または2に記載の通気性包装材料。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の通気性包装材料を少なくとも一部に用い、前記スパンボンド不織布をヒートシールすることによって形成された包装体。
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JP2002165747A JP2004009509A (ja) | 2002-06-06 | 2002-06-06 | ヒートシール性を有する通気性包装材料および包装体 |
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JP2007118229A (ja) * | 2005-10-25 | 2007-05-17 | Unitika Ltd | 包装材 |
-
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- 2002-06-06 JP JP2002165747A patent/JP2004009509A/ja active Pending
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