JP2004050729A - 適度な通気性を有する積層体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造が容易で、機械的強度が高く、かつ衛生面でも優れた積層体を提供する。
【解決手段】積層体1は、微細なフィラメントで構成された不織布2と、網状構造の強化材3とが、バインダー4により一体化されて構成される。バインダー4は、無機フィラーを含有した樹脂からなる。
【選択図】 図1
【解決手段】積層体1は、微細なフィラメントで構成された不織布2と、網状構造の強化材3とが、バインダー4により一体化されて構成される。バインダー4は、無機フィラーを含有した樹脂からなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、適度な通気性を有し、脱酸素剤や乾燥剤などの包装材料として好適に用いられる積層体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
加工食品の腐敗、変質、劣化などを防止するために、脱酸素剤や乾燥剤などが多く用いられている。この種の脱酸素剤や乾燥剤は、適度な通気性を有する小袋に包装されて、食品とともに収納されて用いられる。
【0003】
脱酸素剤や乾燥剤を包装するのに用いられる包装材料としては、紙などの通気性を有する基材を表層に用い、この基材の裏面に、ポリエチレン層を積層したもの、あるいは、格子網状物をポリエチレン層でサンドイッチした強化材層を積層したものが知られている。各層の積層には、熱接着や、通気性を有する接着剤による接着などが用いられる。そして、このような層構成を有する包装材料では、包装材料全体としての通気性を確保するために、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に、これらを貫通するが基材までは貫通しない多数の細孔を形成している。細孔は、熱針などによって形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の包装材料では、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に熱針などによって細孔を形成しているが、ポリエチレン層または強化材層のみに細孔を形成するのは難しく、一部の細孔が基材を貫通してしまうことがあった。細孔が基材を貫通すると、包装体の内容物が外部に流出し、食品に付着してしまう。また、ポリエチレン層または強化材層を基材に積層したあとに細孔を形成しているので、細孔の形成不良が生じた場合の材料のロスが大きく、結果的に製造コストが高くなってしまう。
【0005】
また、従来この種の包装材料では基材に紙を用いており、実使用時においては、基材である紙は食品と接触することになる。そのため、食品の輸送中に、この包装材料で作られた包装体と食品とが擦られて紙粉が発生する。紙粉が発生すると、これが食品に付着して衛生上の問題が生じる。また、基材の表面には印刷が施されているので、印刷用のインキが食品に付着するおそれがある。
【0006】
さらに、包装体は、内容物が不用意に流出しないようにする必要があり、包装材料には引張り強度が高いことが要求される。内容物が流出しないようにすることは、内容物が、脱酸素剤や乾燥剤など、人体に触れると重大な事故を起こしかねない物質である場合に特に重要である。また、内容物が例えば乾燥剤である生石灰である場合、包装材料の突刺し強度が弱いと、生石灰の突起によって包装材料が破られ、生石灰の微粉末が包装体の外部に流出してしまう。このことは、基材の裏面に強化材層を積層した包装材料でも、生石灰の突起は強化材層の格子網状体の開口部を通して基材を突き破ることができるので、生じうる問題である。従って、内容物の流出を防止するためには、包装材料は、引張り強度や突刺し強度といった機械的強度が高いことが重要である。
【0007】
そこで本発明は、製造が容易で、機械的強度が高く、かつ衛生面でも優れた、特に脱酸素剤や乾燥剤などを包装する包装材料として好適に用いられる積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の積層体は、微細なフィラメントで構成される不織布層と、網状構造の強化材層とを、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーとして一体化してなる。
【0009】
本発明の積層体では、基材として不織布層を用いているので、紙粉も発生せず衛生的である。また、積層体の主たる機械的強度は強化材層が担うことになるが、強化材層は網状構造であり突刺し強度は低い。そこで、不織布層を微細なフィラメントで構成することで、強化材層の弱点である突刺し強度が不織布層によって補われる。さらに、バインダーとして、無機フィラーを含有した樹脂を用いることで、不織布層と強化材層とを積層しただけの簡単な構成でも、乾燥剤や脱酸素剤などの包装用途に特に適した適度な通気性を有する積層体となる。しかも、バインダーとして無機フィラーを含有した樹脂を用いることで、互いに重ね合わせられた不織布層と強化材層に、溶融した状態のバインダーを供給し、それを固化させるという非常に簡単な工程で積層体を製造することができる。
【0010】
すなわち本発明の積層体の製造方法の第1の態様は、微細なフィラメントで構成される不織布と、網状構造の強化材とを、それぞれ別の方向から繰り出して互いに重ね合わせる工程と、繰り出された不織布と強化材の合流部に、無機フィラーを含有した樹脂を溶融状態で供給する工程と、不織布と強化材との合流部に供給された樹脂を固化し、不織布と強化材とを一体化する工程とを有する。
【0011】
また、本発明の積層体の製造方法の第2の態様は、微細なフィラメントで構成される不織布と、網状構造の強化材とを、互いに重ね合わせる工程と、無機フィラーを含有した樹脂を、互いに重ね合わせられた不織布と前記強化材とに、強化材側から供給し、少なくとも不織布と強化材との境界部まで染み込ませる工程と、強化材側から供給された樹脂を固化し、不織布と強化材とを一体化する工程とを有する。
【0012】
これにより、上述した不織布層と強化材層とが、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーとして一体化した本発明の積層体が得られる。
【0013】
本発明において、強化材層は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる割繊維不織布であることが好ましい。また、不織布層は、フィラメントが一方向に配列され延伸された一方向延伸配列不織布、または、2枚の一方向延伸配列不織布をフィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布であることが好ましい。さらに、無機フィラーを含有した樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、無機フィラーとしては、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムが好ましく用いられる。無機フィラーとして炭酸カルシウムを用いた場合、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による積層体の模式的断面図である。図1に示すように、積層体1は、互いに重ね合わせられた不織布2と強化材3とをバインダー4で一体化したものである。この積層体1は、脱酸素剤、乾燥剤、起熱剤、保湿剤、芳香剤などの機能性物品を内部に収容する包装体の包装材料として好ましく用いられる。この積層体1を包装材料に用いて包装体を形成する際は、強化材3を内側にして積層体1を折り曲げて強化材3同士を対面させ、周囲部を熱接着などにより接合する。
【0016】
以下に、積層体1を構成する各層について詳細に説明する。
【0017】
(1)不織布
不織布2は、微細なフィラメントで構成される。このような不織布2としては、特に、ポリプロピレンまたはポリエステルからなるフィラメントを一方向に配列しその方向に延伸した一方向延伸配列不織布や、2枚の一方向延伸配列不織布を縦横に交差積層した直交積層不織布が好ましく用いられる。直交積層不織布の例としては、日石プラスト(株)製のミライフ(商品名)が挙げられる。
【0018】
以下に、一方向延伸配列不織布および直交積層不織布について説明する。
【0019】
一方向延伸配列不織布は、前述のように、フィラメントをその配列方向に延伸したものであり、この方法によれば、紡糸段階では通常の不織布と同様に紡糸されるが、これをフィラメントの配列方向に5〜8倍に延伸することにより、フィラメントの繊度は主として1.5dTex以下とされる。このように、フィラメントをその配列方向に延伸することで、延伸後の強度が向上する。一方向延伸配列不織布を構成するフィラメントは長繊維フィラメントである。
【0020】
延伸一方向配列不織布には、縦延伸不織布と横延伸不織布とがあり、本発明においてはこれらの何れも使用することができる。縦延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向である縦方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、横延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向である横方向すなわち幅方向にフィラメントが配列され延伸された不織布である。
【0021】
縦延伸不織布としては、例えば、特開平10−204767号公報に開示されている不織布を使用することができる。以下に、縦延伸不織布についてその製造方法とともに説明する。
【0022】
まず、ダイスに設けられたノズルから押し出されたフィラメントにドラフト張力を与え、これによってフィラメントを細径化し、コンベア上に集積する。このとき、ノズルを出た直後のフィラメント融液を積極的に加熱し、またはノズル近傍(フィラメントがノズルから紡出された直後の位置)の雰囲気温度を高温に維持する。この間の温度はフィラメントの融点よりも十分に高くし、フィラメントのドラフトによるフィラメントの分子配向をできるだけ小さくする。
【0023】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー(MB)ダイスを使用する方法や、狭義のスパンボンド(SB)法がある。ただし、通常のMB法やSB法ではコンベア上でフィラメントがランダムに集積するので、ノズルから紡出されたフィラメントに、霧状の水分を含むエア等をコンベアの搬送面に対して斜めに噴射する。これによって、フィラメントの縦方向への配列および冷却が行われる。
【0024】
このように、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸することにより、フィラメントを縦方向に良好に配列させることができる。フィラメントを搬送面に対して傾斜させる手段としては、ノズル方向をコンベアに対して傾けることや、流体の補助によりフィラメントを斜行させることや、コンベアをフィラメントの紡出方向に対して傾斜させることなどが有効である。これらは、単独で用いてもよいし、複数の手段を適宜組み合わせて用いてもよい。なお、ノズル近傍で流体を使用する場合は、流体は加熱されていることが望ましい。また、ノズル近傍で流体を使用しない場合は、フィラメントとノズル近傍で積極的に加熱する。これは、フィラメントがドラフトにより細径化される際に、できるだけ分子配向を伴わないようにするためである。
【0025】
上述したMB法およびSB法の何れの方法においても、フィラメントをコンベアの搬送面に対して傾斜させるために流体を使用しているが、この流体としては、コンベア近傍では冷流体、特に霧状の水を含んだ流体が最も望ましい。紡出されたフィラメントを急冷することにより、結晶化を進行させないようにするためである。結晶化が進むと延伸性が低下してしまう。また、霧状の水を噴射することは、コンベア上に集積したウェブをコンベア上に貼り付けさせる作用もあり、その結果、紡糸の安定性、およびフィラメントの配列性の向上により効果がある。
【0026】
コンベア上に集積したウェブは縦方向に延伸され、これにより縦延伸不織布とされる。ウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの縦方向への配列性をより向上させることができる。ウェブの縦延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸法が用いられている。多段延伸法においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、さらにその後に延伸する2段目以降の延伸が主延伸として行われている。
【0027】
次に、横延伸不織布について説明する。横延伸不織布としては、例えば、特公平3−36948号公報に開示されている不織布を使用することができる。
【0028】
横延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントがほぼ横方向に配列したウェブを形成する。フィラメントがほぼ横方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより押し出されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からのエア噴射により横方向に振らせ、コンベア上に集積させることによって形成することができる。
【0029】
紡糸ノズルの周囲からのエア噴射でフィラメントを横方向に振らせるためには、紡糸ノズルの周囲に、それぞれ紡糸ノズルを中心とした円周方向の成分を持ってエアを噴射する複数(通常は3〜8個)の第1のエア噴出孔を設け、さらに、これら第1のエア噴出孔の外側に、噴射したエアがコンベアによるウェブの搬送方向と平行な方向で互いに衝突するように配された2つの第2のエア噴出孔を設ける。紡糸ノズルから押し出されたフィラメントは、第1のエア噴出孔からのエア噴射によりスパイラル状に回転させられる。一方、第2のエア噴出孔から噴射したエアは、回転しているフィラメントの通過経路上で互いに衝突し、コンベアによる搬送方向と直角すなわち横方向に広がる。回転しているフィラメントは、このエアの勢いで横方向に散らされる。これにより、コンベア上には、横方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0030】
このようにして得られたウェブは、横方向に延伸される。ウェブを横方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて製品幅を自由に変える必要があり、また、原料の厚さ等に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。
【0031】
プーリ方式による延伸装置は、ウェブの両側端部を把持するためにウェブの幅方向に間隔をあけて配置された一対のプーリとベルトとを有する。プーリは、ウェブの幅方向の中心線に対して左右対称にその外周が末広がりの軌道を持つように配置され、それぞれ同一周速で回転される。一方、ベルトは各プーリに対応して張力下で掛け回されており、このベルトの一部位が、プーリの間隔の狭まった位置から広がった位置にわたる領域にかけて、それぞれプーリの外周端面に形成された溝にはめ込まれている。
【0032】
ウェブは、プーリの間隔の狭まった箇所から導入され、両側端部がプーリとベルトとにより把持される。プーリの回転に伴い、ウェブはベルトとの間で把持されながら一対のプーリが作る末広がりの軌道を通り、これによりウェブは横方向に延伸される。この間の加熱は、熱水や熱風が利用できる。
【0033】
以上のようにして、フィラメントが横方向に配列され延伸された横延伸不織布が得られる。
【0034】
一方向延伸配列不織布の代表的な製造方法について、縦延伸不織布および横延伸不織布を例に挙げて説明したが、一方向延伸配列不織布の製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつフィラメントをその配列方向に延伸することができる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0035】
次に、直交積層不織布について説明する。直交積層不織布は、2枚の一方向延伸配列不織布をそのフィラメントの配列方向を交差(好ましくは直交)させて積層したものである。このように、フィラメントの配列方向を交差させて積層することにより、縦方向と横方向の強度のバランスに優れた不織布とすることができる。
【0036】
一方向配列配列不織布には、前述したように縦延伸不織布と横延伸不織布とがあるが、直交積層不織布を構成するためには、フィラメントの配列方向が互いに交差するように積層されていれば、これらの何れも使用することができ、また組み合わせも任意である。ただし、縦延伸不織布と横延伸不織布との組み合わせとする場合には、これらはそのまま用いるのが望ましい。これにより、縦延伸不織布と横延伸不織布とを積層する際に、両者をそのまま繰出して、繋ぎ目のない連続した均一な直交積層不織布を得ることができる。また、予め縦延伸不織布を作製しておき、横延伸不織布の製造段階で、縦延伸不織布を繰出しながらこの縦延伸不織布上に横延伸不織布を作製し、これらを積層することで、直交積層不織布を効率よく製造することができる。
【0037】
直交積層不織布を製造する際の一方向延伸配列不織布同士の積層には、エンボス法や、熱ロールを用いた圧着法を用いることができる。ただし、直交積層不織布に印刷する場合、その印刷性を考慮すると、一方向延伸配列不織布同士の積層方法としては、表面に凹凸が形成されない熱ロールによる圧着が好ましい。熱ロールによる一方向延伸配列不織布同士の圧着は、一方向延伸配列不織布を構成する樹脂の融点よりも30〜130℃低い温度で行うのが好ましい。なお、熱ロールによる圧着では、一方向延伸配列不織布が強固に一体化されるには至らないが、バインダー4による強化材3との一体化工程で一方向延伸配列不織布同士を強固に一体化することができる。したがって、直交積層不織布の製造段階では、一方向延伸配列不織布は、強化材3との熱接着が終了するまでの間、積層状態を維持することができる程度に一体化されていれば十分である。
【0038】
以上、不織布2の具体的な例について説明したが、上述した一方向延伸配列不織布や直交積層不織布は、連続した長繊維によって構成されているため、包装材料の表層に使用しても毛羽立ちが少ない。特に、一方向延伸配列不織布は、一般のスパンボンド法によって製造されるスパンボンド不織布に比べて長繊維が整然と一方向に配列しているため、表面平滑性に優れ、印刷特性が良好である。したがって、カレンダー処理などの後処理によって表面を平滑にすることなく印刷を行うことができる。また、一方向延伸配列不織布は、延伸を行っていることによりその繊維径は一般的なスパンボンド不織布のそれと比べて細く、5〜15μmである。そのため一方向延伸配列不織布は、単位面積当たりに占める繊維本数が多く、目付けむらの少ない均質な不織布となり、細かい印刷文字でも鮮明に印刷することが可能である。また、2枚の一方向延伸配列不織布を互いに交差させて積層した直交積層不織布は、縦方向と横方向の強度バランスに優れ、しかも長繊維を延伸しているので高い強度を有する。
【0039】
不織布2の目付量は、好ましくは5〜50g/m2、より好ましくは10〜30g/m2である。目付量が5g/m2未満では強度が小さいため実用化は難しい。一方、目付量が50g/m2を越えると、不織布2の厚みが厚くなり過ぎるため、製造コストが上昇する。また、強化材3との積層面に印刷を施した場合、印刷を不織布2の表面側から認識することが困難になる。
【0040】
(2)強化材
強化材3としては、通気性を確保しかつ不織布2を補強しうる強度を有するシート状の部材であれば種々のものを用いることができるが、好ましくは格子網状体、例えば日石プラスト(株)が日石ワリフ(商品名)という名称で販売している割繊維不織布を用いることができる。
【0041】
割繊維不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムに多数のスリットを形成してこれをスリットの方向に延伸した後、延伸方向と直角な方向に広げるか、あるいは、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを一方向に延伸してこれに延伸方向と平行な多数のスリットを形成した後、延伸方向と直角な方向に広げて、網状フィルムを形成し、延伸方向が直交するように2枚の網状フィルムを重ね合わせて熱接着することによって得られた不織布である。割繊維不織布は、2枚の網状フィルムをその延伸方向が直交するように積層しているので、縦方向と横方向の強度バランスに優れている。また、割繊維不織布は、網状構造であるので十分な通気性を有する。
【0042】
強化材3に割繊維不織布を用いた場合、その目付量は、機械的強度や製造コストの点から、好ましくは10〜100g/m2、より好ましくは12〜40g/m2である。使用するフィルムとしては、熱接着に適した、低融点樹脂層/高融点樹脂層/低融点樹脂層の3層構造のフィルムが好ましい。フィルムの延伸倍率は、1.1〜15倍が好ましい。延伸倍率が1.1倍未満では、不織布としたときの機械的強度が十分でない。一方、延伸倍率が15倍を超える場合は、通常の方法で延伸することが難しく、高価な装置を必要とするなどの問題が生ずる。
【0043】
以上、強化材3に好適に用いられる格子網状体として、2枚の網状フィルムを積層した割繊維不織布について説明したが、不織布2を一方向延伸配列不織布で構成した場合には、縦方向と横方向の強度バランスを保つために、強化材3として、1枚の網状フィルムを、その延伸方向が一方向延伸配列不織布のフィラメントの配列方向と直交するように用いてもよい。すなわち、不織布2として縦延伸不織布を用いた場合には強化材3として横方向に延伸した網状フィルムを用い、不織布2として横延伸不織布を用いた場合には強化材3として縦方向に延伸した網状フィルムを用いる。
【0044】
また、格子網状体としては、この他に、ポリエチレンあるいはポリプロピレンからなるネット状物を用いることもできる。ネット状物としては、積水フィルム(株)製のソフネット、ソフクロス(いずれも商品名)、クラボウ社製のクレネット(商品名)、コンウェッド社製のコンウェッドネット(商品名)などが挙げられる。
【0045】
(3)バインダー
バインダー4は、不織布2と強化材3とを接着する働きをするものであるが、積層体1が通気性を有するためには、バインダー4自身が通気性を有する必要がある。通気性を示す尺度の一つとして透湿度を用いることがある。積層体1を乾燥剤などの包装材料として用いる場合、透湿度としては100〜1000g/m2・24Hr程度であることが必要とされる。
【0046】
そこで、バインダー4には、無機フィラーを含有させた樹脂が用いられる。樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられ、中でも特に、ポリエチレン系樹脂が好ましい。樹脂に含有させる無機フィラーとしては、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどが挙げられる。このように、無機フィラーを含有させた樹脂をバインダー4として用いることで、適度な通気性を有する積層体1を得ることができる。
【0047】
バインダー4の透湿度は、バインダー4の厚みおよび無機フィラーの含有量に依存し、積層体1の用途や、不織布2の種類、強化材3の種類によって適宜選定される。積層体1を乾燥剤などの包装材料として用い、不織布2として上述した直交積層不織布を用いるとともに、強化材3として上述した割繊維不織布を用いた場合、バインダー4の厚みは10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。透湿度はバインダー4の厚みに比例し、また、バインダー4の厚みが薄すぎると、不織布2と強化材3との十分な接着力が得られにくくなる。さらに、無機フィラーとして炭酸カルシウムを用いた場合、炭酸カルシウムの含有量は、樹脂100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましい。無機フィラーの含有量が少なすぎると必要な透湿度が得られにくくなり、逆に、無機フィラーの含有量が多すぎると、樹脂中に無機フィラーを混合する際の混練性が低下するとともに、無機フィラーの分散性も低下する。
【0048】
以上、本実施形態の積層体1を構成する各層について説明した。次に、本実施形態の積層体1の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。
【0049】
積層体1の製造には、いわゆるサンドラミと呼ばれる方法を用いることができる。この方法によれば、不織布2と強化材3とは、間をあけて対向配置された2つのローラ12a,12bの間に互いに別の方向から供給され、ローラ12a,12bによって重ね合わせられて下向きに送られる。一方、不織布2と強化材3との合流部の上方には、溶融状態とされたバインダー4を押し出すノズル11が設置されており、バインダー4は、不織布2と強化材3との間に供給される。そして、不織布2と強化材3との間に供給されたバインダー4はローラ12a,12bの間で不織布2と強化材3とに挟まれ、バインダー4の一部が強化材3の網目構造および不織布2に染み込み、不織布2および強化材3がローラ12a,12bによって送られる過程でバインダー4が固化することで、不織布2および強化材3はバインダー4によって一体化され、積層体1が得られる。
【0050】
このように、バインダー4として無機フィラー入りの樹脂を用いることで、不織布2と強化材3との積層に、熱や接着剤による接着を用いることなく、溶融状態のバインダー4を不織布2と強化材3とで挟んで固化させるという極めて簡単なプロセスで積層体1を製造することができるようになる。その結果、積層体1の生産性を向上させることができるとともに、積層体1を安価に製造することができる。
【0051】
本実施形態の積層体1によれば、バインダー4によって適度な通気性を持たせつつも、不織布2を網状構造の強化材3で補強することで引張り強度が向上し、さらに、不織布2は微細なフィラメントで構成されているので、突刺し強度に優れたものとなる。したがって、積層体1は、包装材料に用いたとき、内部に収納された物品による損傷も生じにくく、また、物品が例えば活性炭や木炭など硬くかつ突起を有する形状のものであっても、それら物品が積層体1を突き破って外部に流出することはなく安全である。さらに、積層体1は従来のように紙を用いていないので、紙粉も発生せず衛生的である。
【0052】
特に、不織布2に直交積層不織布を用いるとともに、強化材3に割繊維不織布を用いることで、これらは何れも縦方向および横方向にフィラメントが配列されているので縦方向と横方向での強度バランスに優れ、しかも、直交積層不織布は緻密な長繊維が均一に配列されて構成されているので、機械的強度をより向上させることができる。
【0053】
積層体1には、必要に応じて印刷を施すことができる。印刷は、不織布2に施すことが好ましい。不織布2は微細なフィラメントで構成されていることから表面平滑性に優れ、したがって印刷性が良好であるからである。印刷には、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、あるいはスクリーン印刷など、種々の印刷法が適用可能である。印刷は、不織布2の、強化材3との積層面に施してもよいし、その反対側の面すなわち不織布2の表面に施してもよい。印刷を強化材3との積層面に施す場合には、不織布2と強化材3との積層前に印刷を行っておく必要があるが、不織布2の表面に施す場合は、不織布2と強化材3との積層前でも積層後でも行うことができる。また、印刷を強化材3との積層面に施す場合は、印刷された内容は不織布2を通して見ることになるので、鏡像印刷を行う必要がある。
【0054】
印刷を不織布2の強化材3との積層面に施すことは、積層体1が、乾燥剤用の包装袋など、食品とともに収納される袋の包装材料として用いられる場合に特に好ましい。これにより、印刷用のインキが食品と接触しなくなるので、印刷インキ工業連合会の制定する「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制」(NL規制)に適合する、包装材料への印刷に一般に使用されているインキを使用することができる。食品と接触する箇所に印刷を施す場合、印刷用のインキが食品に移行しても衛生上の問題が生じないように、着色剤として食用色素を使用するとともに、バインダーとして、食品に接触してもよい樹脂を使用したインキを用いる必要がある。インキが食品と接触しないように印刷を施すことにより、このような特殊なインキを使用する必要がなくなるので、不織布2との密着性に優れたインキを使用して任意の色調で印刷を行うことができる。また、安価なインキを使用できるので、積層体1を安価に製造することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による積層体の模式的断面図である。本実施形態の積層体21も第1の実施形態と同様に、不織布22と、強化材23と、バインダー24とを有するが、本実施形態の積層体21は、強化材23は不織布22上に直接載置され、バインダー24は強化材23に浸透して不織布22と強化材23とを一体化している点が、第1の実施形態と異なっている。不織布22、強化材23およびバインダー24は、第1の実施形態と同様のものを用いることができるので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施形態においても、積層体21は、互いに重ね合わせられた不織布22と強化材23とをバインダー24で一体化して構成されているので、実質的には第1の実施形態と同様の効果を有し、包装材料として好適に用いることができる。
【0057】
ここで、本実施形態の積層体21の製造方法の例について説明する。
【0058】
本実施形態の積層体21の製造には、いわゆるオーバーラミと呼ばれる方法を用いることができる。この方法によれば、不織布22と強化材23とを互いに重ね合わせ、その強化材23側から溶融状態のバインダー24を供給することによって、バインダー24を強化材23中に少なくとも不織布22との境界部まで染み込ませ、その状態でバインダー24を固化させることで、不織布22と強化材23とを一体化させる。
【0059】
図4および図5に、オーバーラミの代表的な例を示す。図4に示す例では、不織布22と強化材23とは、強化材23を上にして互いに重ね合わせられて、ローラ33に掛け渡されたコンベア32によって搬送される。一方、コンベア32の上方には、溶融状態とされたバインダー24を押し出すノズル31が配置されている。不織布22と強化材23とを互いに重ね合わせて搬送しながら、ノズル31からバインダー24を押し出すと、押し出されたバインダー24は強化材23上に供給され、強化材23中に染み込んでいく。染み込んだバインダー24は、少なくとも不織布22と強化材23との境界まで達し、不織布22および強化材23とともに、一対のピンチローラ34a,34bで加圧挟持される。その後、バインダー24が固化することで不織布22と強化材23とが一体化され、積層体21(図3参照)が得られる。
【0060】
図5に示す例では、不織布22と強化材23とは、強化材23を上にして互いに重ね合わせられて、ローラ35上に繰り出される。ローラ35の上方には、図4と同様のノズル31が配置されている。ノズル31から溶融状態のバインダー24を押し出しながら、ローラ35によって、不織布22および強化材23を重ね合わせた状態で送ることで、バインダー24は強化材23側から供給されて強化材23に染み込み、さらに、ピンチローラ35との間で加圧挟持される。その後、バインダー24が固化することで不織布22と強化材23とが一体化され、積層体21(図3参照)が得られる。図5に示す方法は、図4に示す方法と比べて、より簡単な装置構成で積層体21を得ることができる。
【0061】
本実施形態では、第1の実施形態と比べてさらに簡単な方法で、適度な通気性を有し、しかも機械的強度に優れた積層体21を製造することができる。これはやはり、バインダー4として無機フィラー入りの樹脂を用いているからに他ならない。
【0062】
本実施形態の積層体21も、印刷を施すことができる。印刷を施す場合、第1の実施形態と同様に、印刷性の良好な不織布22に施すのが好ましい。また、図3に示したように、不織布22がバインダー24に覆われる形態の場合は、不織布22と強化材23との一体化後に、バインダー24の表面に印刷を施してもよい。
【0063】
以上、本発明について2つの代表的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の積層体は、脱酸素剤、乾燥剤、吸湿剤、消臭剤、発熱剤、防虫剤、除湿剤または芳香剤などの機能性物品の包装用の包装材料に好適に利用できる。これらの機能性物品を収納する包装体は、機能性物品が機能すればどのような形態でもよい。包装体が袋の形態である場合には、積層体は、その袋の一部分、片面、または全体に使用される。積層体で袋全体を構成する場合、袋の形成は、シート材から袋を形成する一般的な製袋包装機を用いることができる。
【0064】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について比較例とともに説明する。
【0065】
ここでは、以下の実施例1、2に示すような積層体を作製し、それぞれについて、縦方向および横方向の引張り強度、突刺し強度、および透湿度を測定した。引張り強度は、JIS P 8113(1998)に準拠して測定した。突刺し強度は、食品衛生法「器具及び容器包装の規格基準 突き刺し強度試験」に準拠して測定した。この試験は、直径が1mmで先端が0.5Rの球形になっている針を試料面に突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重をNで表したものである。透湿度は、JIS Z 0208(カップ法)に準拠して測定した。また、比較のため、網状構造を有する強化材と、無機フィラーを含有した延伸PE透湿性フィルムとを積層した積層体を作製し(比較例1)、同様に引張り強度、突刺し強度、および透湿度を測定した。
【0066】
(実施例1)
不織布として、ポリエステル樹脂からなる「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY1010E(目付量20g/m2)を用いるとともに、強化材として、ポリエチレン製の割繊維不織布である「日石ワリフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番SS(T)(目付量20g/m2)を用い、両者を、サンドラミによって積層一体化し、積層体を作製した。バインダーとしては、炭酸カルシウムの含有量を50wt%とした低密度ポリエチレン樹脂を用いた。バインダーの厚みは35μmとした。
【0067】
(実施例2)
不織布、強化材およびバインダーは実施例1と同じものを用いたが、不織布と強化材との積層一体化をオーバーラミで行って積層体を作製した。
【0068】
(比較例1)
実施例1で用いた強化材と、透湿性フィルムとして知られている、無機フィラーを含有した延伸PEフィルムである「ポーラム」((株)トクヤマ製、商品名)とを、熱圧着によって積層し、積層体を作製した。
【0069】
実施例1,2および比較例1の各強度および透湿度についての測定結果を表1にまとめる。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から分かるように、実施例1,2と比較例1とで強度を比べると、引張り強度も突刺し強度も、実施例1,2の方が高い値を示した。特に突刺し強度は、実施例1,2は大幅な向上が認められた。また、透湿度について見ると、実施例1,2は、乾燥剤や脱酸素剤などを収納する包装材料に使用するのに適した透湿度であったが、比較例1は、このような用途に用いるには大きすぎる値となった。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、微細なフィラメントで構成される不織布層と網状構造の強化材層とを積層することにより、紙粉が発生せず、かつ引張り強度および突刺し強度に優れた積層体とすることができる。しかも、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーに用いることで、適度な通気性を持たせることができ、したがって、本発明による積層体は、乾燥剤や脱酸素剤等の包装材料として特に好適に用いることができる。また、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーに用いることで、不織布層と強化材層とを、熱接着や接着剤による接着によることなく、簡単なプロセスで積層一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による積層体の模式的断面図である。
【図2】図1に示した積層体の製造方法の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による積層体の模式的断面図である。
【図4】図3に示した積層体の製造方法の一例を説明するための図である。
【図5】図3に示した積層体の製造方法の他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1,21 積層体
2,22 不織布
3,23 強化材
4,24 バインダー
11,31 ノズル
12a,12b,33,35 ローラ
32 コンベア
34a,34b,36 ピンチローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、適度な通気性を有し、脱酸素剤や乾燥剤などの包装材料として好適に用いられる積層体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
加工食品の腐敗、変質、劣化などを防止するために、脱酸素剤や乾燥剤などが多く用いられている。この種の脱酸素剤や乾燥剤は、適度な通気性を有する小袋に包装されて、食品とともに収納されて用いられる。
【0003】
脱酸素剤や乾燥剤を包装するのに用いられる包装材料としては、紙などの通気性を有する基材を表層に用い、この基材の裏面に、ポリエチレン層を積層したもの、あるいは、格子網状物をポリエチレン層でサンドイッチした強化材層を積層したものが知られている。各層の積層には、熱接着や、通気性を有する接着剤による接着などが用いられる。そして、このような層構成を有する包装材料では、包装材料全体としての通気性を確保するために、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に、これらを貫通するが基材までは貫通しない多数の細孔を形成している。細孔は、熱針などによって形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の包装材料では、基材の裏面に積層されたポリエチレン層または強化材層に熱針などによって細孔を形成しているが、ポリエチレン層または強化材層のみに細孔を形成するのは難しく、一部の細孔が基材を貫通してしまうことがあった。細孔が基材を貫通すると、包装体の内容物が外部に流出し、食品に付着してしまう。また、ポリエチレン層または強化材層を基材に積層したあとに細孔を形成しているので、細孔の形成不良が生じた場合の材料のロスが大きく、結果的に製造コストが高くなってしまう。
【0005】
また、従来この種の包装材料では基材に紙を用いており、実使用時においては、基材である紙は食品と接触することになる。そのため、食品の輸送中に、この包装材料で作られた包装体と食品とが擦られて紙粉が発生する。紙粉が発生すると、これが食品に付着して衛生上の問題が生じる。また、基材の表面には印刷が施されているので、印刷用のインキが食品に付着するおそれがある。
【0006】
さらに、包装体は、内容物が不用意に流出しないようにする必要があり、包装材料には引張り強度が高いことが要求される。内容物が流出しないようにすることは、内容物が、脱酸素剤や乾燥剤など、人体に触れると重大な事故を起こしかねない物質である場合に特に重要である。また、内容物が例えば乾燥剤である生石灰である場合、包装材料の突刺し強度が弱いと、生石灰の突起によって包装材料が破られ、生石灰の微粉末が包装体の外部に流出してしまう。このことは、基材の裏面に強化材層を積層した包装材料でも、生石灰の突起は強化材層の格子網状体の開口部を通して基材を突き破ることができるので、生じうる問題である。従って、内容物の流出を防止するためには、包装材料は、引張り強度や突刺し強度といった機械的強度が高いことが重要である。
【0007】
そこで本発明は、製造が容易で、機械的強度が高く、かつ衛生面でも優れた、特に脱酸素剤や乾燥剤などを包装する包装材料として好適に用いられる積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の積層体は、微細なフィラメントで構成される不織布層と、網状構造の強化材層とを、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーとして一体化してなる。
【0009】
本発明の積層体では、基材として不織布層を用いているので、紙粉も発生せず衛生的である。また、積層体の主たる機械的強度は強化材層が担うことになるが、強化材層は網状構造であり突刺し強度は低い。そこで、不織布層を微細なフィラメントで構成することで、強化材層の弱点である突刺し強度が不織布層によって補われる。さらに、バインダーとして、無機フィラーを含有した樹脂を用いることで、不織布層と強化材層とを積層しただけの簡単な構成でも、乾燥剤や脱酸素剤などの包装用途に特に適した適度な通気性を有する積層体となる。しかも、バインダーとして無機フィラーを含有した樹脂を用いることで、互いに重ね合わせられた不織布層と強化材層に、溶融した状態のバインダーを供給し、それを固化させるという非常に簡単な工程で積層体を製造することができる。
【0010】
すなわち本発明の積層体の製造方法の第1の態様は、微細なフィラメントで構成される不織布と、網状構造の強化材とを、それぞれ別の方向から繰り出して互いに重ね合わせる工程と、繰り出された不織布と強化材の合流部に、無機フィラーを含有した樹脂を溶融状態で供給する工程と、不織布と強化材との合流部に供給された樹脂を固化し、不織布と強化材とを一体化する工程とを有する。
【0011】
また、本発明の積層体の製造方法の第2の態様は、微細なフィラメントで構成される不織布と、網状構造の強化材とを、互いに重ね合わせる工程と、無機フィラーを含有した樹脂を、互いに重ね合わせられた不織布と前記強化材とに、強化材側から供給し、少なくとも不織布と強化材との境界部まで染み込ませる工程と、強化材側から供給された樹脂を固化し、不織布と強化材とを一体化する工程とを有する。
【0012】
これにより、上述した不織布層と強化材層とが、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーとして一体化した本発明の積層体が得られる。
【0013】
本発明において、強化材層は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる割繊維不織布であることが好ましい。また、不織布層は、フィラメントが一方向に配列され延伸された一方向延伸配列不織布、または、2枚の一方向延伸配列不織布をフィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布であることが好ましい。さらに、無機フィラーを含有した樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、無機フィラーとしては、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムが好ましく用いられる。無機フィラーとして炭酸カルシウムを用いた場合、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による積層体の模式的断面図である。図1に示すように、積層体1は、互いに重ね合わせられた不織布2と強化材3とをバインダー4で一体化したものである。この積層体1は、脱酸素剤、乾燥剤、起熱剤、保湿剤、芳香剤などの機能性物品を内部に収容する包装体の包装材料として好ましく用いられる。この積層体1を包装材料に用いて包装体を形成する際は、強化材3を内側にして積層体1を折り曲げて強化材3同士を対面させ、周囲部を熱接着などにより接合する。
【0016】
以下に、積層体1を構成する各層について詳細に説明する。
【0017】
(1)不織布
不織布2は、微細なフィラメントで構成される。このような不織布2としては、特に、ポリプロピレンまたはポリエステルからなるフィラメントを一方向に配列しその方向に延伸した一方向延伸配列不織布や、2枚の一方向延伸配列不織布を縦横に交差積層した直交積層不織布が好ましく用いられる。直交積層不織布の例としては、日石プラスト(株)製のミライフ(商品名)が挙げられる。
【0018】
以下に、一方向延伸配列不織布および直交積層不織布について説明する。
【0019】
一方向延伸配列不織布は、前述のように、フィラメントをその配列方向に延伸したものであり、この方法によれば、紡糸段階では通常の不織布と同様に紡糸されるが、これをフィラメントの配列方向に5〜8倍に延伸することにより、フィラメントの繊度は主として1.5dTex以下とされる。このように、フィラメントをその配列方向に延伸することで、延伸後の強度が向上する。一方向延伸配列不織布を構成するフィラメントは長繊維フィラメントである。
【0020】
延伸一方向配列不織布には、縦延伸不織布と横延伸不織布とがあり、本発明においてはこれらの何れも使用することができる。縦延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向である縦方向にフィラメントが配列され延伸された不織布であり、横延伸不織布とは、不織布を製造する際の送り方向と直角な方向である横方向すなわち幅方向にフィラメントが配列され延伸された不織布である。
【0021】
縦延伸不織布としては、例えば、特開平10−204767号公報に開示されている不織布を使用することができる。以下に、縦延伸不織布についてその製造方法とともに説明する。
【0022】
まず、ダイスに設けられたノズルから押し出されたフィラメントにドラフト張力を与え、これによってフィラメントを細径化し、コンベア上に集積する。このとき、ノズルを出た直後のフィラメント融液を積極的に加熱し、またはノズル近傍(フィラメントがノズルから紡出された直後の位置)の雰囲気温度を高温に維持する。この間の温度はフィラメントの融点よりも十分に高くし、フィラメントのドラフトによるフィラメントの分子配向をできるだけ小さくする。
【0023】
フィラメントにドラフト張力を与える方法として、メルトブロー(MB)ダイスを使用する方法や、狭義のスパンボンド(SB)法がある。ただし、通常のMB法やSB法ではコンベア上でフィラメントがランダムに集積するので、ノズルから紡出されたフィラメントに、霧状の水分を含むエア等をコンベアの搬送面に対して斜めに噴射する。これによって、フィラメントの縦方向への配列および冷却が行われる。
【0024】
このように、コンベアの搬送面に対して傾斜させてフィラメントを紡糸することにより、フィラメントを縦方向に良好に配列させることができる。フィラメントを搬送面に対して傾斜させる手段としては、ノズル方向をコンベアに対して傾けることや、流体の補助によりフィラメントを斜行させることや、コンベアをフィラメントの紡出方向に対して傾斜させることなどが有効である。これらは、単独で用いてもよいし、複数の手段を適宜組み合わせて用いてもよい。なお、ノズル近傍で流体を使用する場合は、流体は加熱されていることが望ましい。また、ノズル近傍で流体を使用しない場合は、フィラメントとノズル近傍で積極的に加熱する。これは、フィラメントがドラフトにより細径化される際に、できるだけ分子配向を伴わないようにするためである。
【0025】
上述したMB法およびSB法の何れの方法においても、フィラメントをコンベアの搬送面に対して傾斜させるために流体を使用しているが、この流体としては、コンベア近傍では冷流体、特に霧状の水を含んだ流体が最も望ましい。紡出されたフィラメントを急冷することにより、結晶化を進行させないようにするためである。結晶化が進むと延伸性が低下してしまう。また、霧状の水を噴射することは、コンベア上に集積したウェブをコンベア上に貼り付けさせる作用もあり、その結果、紡糸の安定性、およびフィラメントの配列性の向上により効果がある。
【0026】
コンベア上に集積したウェブは縦方向に延伸され、これにより縦延伸不織布とされる。ウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの縦方向への配列性をより向上させることができる。ウェブの縦延伸には、1段で全延伸する場合もあるが、主に多段延伸法が用いられている。多段延伸法においては、1段目の延伸は紡糸直後の予備延伸として行われ、さらにその後に延伸する2段目以降の延伸が主延伸として行われている。
【0027】
次に、横延伸不織布について説明する。横延伸不織布としては、例えば、特公平3−36948号公報に開示されている不織布を使用することができる。
【0028】
横延伸不織布を製造するには、まず、フィラメントがほぼ横方向に配列したウェブを形成する。フィラメントがほぼ横方向に配列したウェブは、紡糸ノズルより押し出されたフィラメントを、紡糸ノズルの周囲に配したエア噴出孔からのエア噴射により横方向に振らせ、コンベア上に集積させることによって形成することができる。
【0029】
紡糸ノズルの周囲からのエア噴射でフィラメントを横方向に振らせるためには、紡糸ノズルの周囲に、それぞれ紡糸ノズルを中心とした円周方向の成分を持ってエアを噴射する複数(通常は3〜8個)の第1のエア噴出孔を設け、さらに、これら第1のエア噴出孔の外側に、噴射したエアがコンベアによるウェブの搬送方向と平行な方向で互いに衝突するように配された2つの第2のエア噴出孔を設ける。紡糸ノズルから押し出されたフィラメントは、第1のエア噴出孔からのエア噴射によりスパイラル状に回転させられる。一方、第2のエア噴出孔から噴射したエアは、回転しているフィラメントの通過経路上で互いに衝突し、コンベアによる搬送方向と直角すなわち横方向に広がる。回転しているフィラメントは、このエアの勢いで横方向に散らされる。これにより、コンベア上には、横方向に配列成分が多い状態でフィラメントが集積される。
【0030】
このようにして得られたウェブは、横方向に延伸される。ウェブを横方向に延伸する方法としては、テンター方式やプーリ方式などが挙げられる。テンター方式は、フィルムなどを拡幅する方式として一般に用いられるが、広い床面積が必要なこと、および製品幅や拡幅倍率の変更が困難である。不織布は用途に応じて製品幅を自由に変える必要があり、また、原料の厚さ等に応じて延伸倍率を変更しなければならない。そこで、これらの変更を運転操作中でも簡単に行えるプーリ方式を用いるのが好ましい。
【0031】
プーリ方式による延伸装置は、ウェブの両側端部を把持するためにウェブの幅方向に間隔をあけて配置された一対のプーリとベルトとを有する。プーリは、ウェブの幅方向の中心線に対して左右対称にその外周が末広がりの軌道を持つように配置され、それぞれ同一周速で回転される。一方、ベルトは各プーリに対応して張力下で掛け回されており、このベルトの一部位が、プーリの間隔の狭まった位置から広がった位置にわたる領域にかけて、それぞれプーリの外周端面に形成された溝にはめ込まれている。
【0032】
ウェブは、プーリの間隔の狭まった箇所から導入され、両側端部がプーリとベルトとにより把持される。プーリの回転に伴い、ウェブはベルトとの間で把持されながら一対のプーリが作る末広がりの軌道を通り、これによりウェブは横方向に延伸される。この間の加熱は、熱水や熱風が利用できる。
【0033】
以上のようにして、フィラメントが横方向に配列され延伸された横延伸不織布が得られる。
【0034】
一方向延伸配列不織布の代表的な製造方法について、縦延伸不織布および横延伸不織布を例に挙げて説明したが、一方向延伸配列不織布の製造方法は上述した方法に限定されるものではなく、フィラメントをほぼ一方向に配列し、かつフィラメントをその配列方向に延伸することができる方法であれば任意の方法を利用することができる。
【0035】
次に、直交積層不織布について説明する。直交積層不織布は、2枚の一方向延伸配列不織布をそのフィラメントの配列方向を交差(好ましくは直交)させて積層したものである。このように、フィラメントの配列方向を交差させて積層することにより、縦方向と横方向の強度のバランスに優れた不織布とすることができる。
【0036】
一方向配列配列不織布には、前述したように縦延伸不織布と横延伸不織布とがあるが、直交積層不織布を構成するためには、フィラメントの配列方向が互いに交差するように積層されていれば、これらの何れも使用することができ、また組み合わせも任意である。ただし、縦延伸不織布と横延伸不織布との組み合わせとする場合には、これらはそのまま用いるのが望ましい。これにより、縦延伸不織布と横延伸不織布とを積層する際に、両者をそのまま繰出して、繋ぎ目のない連続した均一な直交積層不織布を得ることができる。また、予め縦延伸不織布を作製しておき、横延伸不織布の製造段階で、縦延伸不織布を繰出しながらこの縦延伸不織布上に横延伸不織布を作製し、これらを積層することで、直交積層不織布を効率よく製造することができる。
【0037】
直交積層不織布を製造する際の一方向延伸配列不織布同士の積層には、エンボス法や、熱ロールを用いた圧着法を用いることができる。ただし、直交積層不織布に印刷する場合、その印刷性を考慮すると、一方向延伸配列不織布同士の積層方法としては、表面に凹凸が形成されない熱ロールによる圧着が好ましい。熱ロールによる一方向延伸配列不織布同士の圧着は、一方向延伸配列不織布を構成する樹脂の融点よりも30〜130℃低い温度で行うのが好ましい。なお、熱ロールによる圧着では、一方向延伸配列不織布が強固に一体化されるには至らないが、バインダー4による強化材3との一体化工程で一方向延伸配列不織布同士を強固に一体化することができる。したがって、直交積層不織布の製造段階では、一方向延伸配列不織布は、強化材3との熱接着が終了するまでの間、積層状態を維持することができる程度に一体化されていれば十分である。
【0038】
以上、不織布2の具体的な例について説明したが、上述した一方向延伸配列不織布や直交積層不織布は、連続した長繊維によって構成されているため、包装材料の表層に使用しても毛羽立ちが少ない。特に、一方向延伸配列不織布は、一般のスパンボンド法によって製造されるスパンボンド不織布に比べて長繊維が整然と一方向に配列しているため、表面平滑性に優れ、印刷特性が良好である。したがって、カレンダー処理などの後処理によって表面を平滑にすることなく印刷を行うことができる。また、一方向延伸配列不織布は、延伸を行っていることによりその繊維径は一般的なスパンボンド不織布のそれと比べて細く、5〜15μmである。そのため一方向延伸配列不織布は、単位面積当たりに占める繊維本数が多く、目付けむらの少ない均質な不織布となり、細かい印刷文字でも鮮明に印刷することが可能である。また、2枚の一方向延伸配列不織布を互いに交差させて積層した直交積層不織布は、縦方向と横方向の強度バランスに優れ、しかも長繊維を延伸しているので高い強度を有する。
【0039】
不織布2の目付量は、好ましくは5〜50g/m2、より好ましくは10〜30g/m2である。目付量が5g/m2未満では強度が小さいため実用化は難しい。一方、目付量が50g/m2を越えると、不織布2の厚みが厚くなり過ぎるため、製造コストが上昇する。また、強化材3との積層面に印刷を施した場合、印刷を不織布2の表面側から認識することが困難になる。
【0040】
(2)強化材
強化材3としては、通気性を確保しかつ不織布2を補強しうる強度を有するシート状の部材であれば種々のものを用いることができるが、好ましくは格子網状体、例えば日石プラスト(株)が日石ワリフ(商品名)という名称で販売している割繊維不織布を用いることができる。
【0041】
割繊維不織布は、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムに多数のスリットを形成してこれをスリットの方向に延伸した後、延伸方向と直角な方向に広げるか、あるいは、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを一方向に延伸してこれに延伸方向と平行な多数のスリットを形成した後、延伸方向と直角な方向に広げて、網状フィルムを形成し、延伸方向が直交するように2枚の網状フィルムを重ね合わせて熱接着することによって得られた不織布である。割繊維不織布は、2枚の網状フィルムをその延伸方向が直交するように積層しているので、縦方向と横方向の強度バランスに優れている。また、割繊維不織布は、網状構造であるので十分な通気性を有する。
【0042】
強化材3に割繊維不織布を用いた場合、その目付量は、機械的強度や製造コストの点から、好ましくは10〜100g/m2、より好ましくは12〜40g/m2である。使用するフィルムとしては、熱接着に適した、低融点樹脂層/高融点樹脂層/低融点樹脂層の3層構造のフィルムが好ましい。フィルムの延伸倍率は、1.1〜15倍が好ましい。延伸倍率が1.1倍未満では、不織布としたときの機械的強度が十分でない。一方、延伸倍率が15倍を超える場合は、通常の方法で延伸することが難しく、高価な装置を必要とするなどの問題が生ずる。
【0043】
以上、強化材3に好適に用いられる格子網状体として、2枚の網状フィルムを積層した割繊維不織布について説明したが、不織布2を一方向延伸配列不織布で構成した場合には、縦方向と横方向の強度バランスを保つために、強化材3として、1枚の網状フィルムを、その延伸方向が一方向延伸配列不織布のフィラメントの配列方向と直交するように用いてもよい。すなわち、不織布2として縦延伸不織布を用いた場合には強化材3として横方向に延伸した網状フィルムを用い、不織布2として横延伸不織布を用いた場合には強化材3として縦方向に延伸した網状フィルムを用いる。
【0044】
また、格子網状体としては、この他に、ポリエチレンあるいはポリプロピレンからなるネット状物を用いることもできる。ネット状物としては、積水フィルム(株)製のソフネット、ソフクロス(いずれも商品名)、クラボウ社製のクレネット(商品名)、コンウェッド社製のコンウェッドネット(商品名)などが挙げられる。
【0045】
(3)バインダー
バインダー4は、不織布2と強化材3とを接着する働きをするものであるが、積層体1が通気性を有するためには、バインダー4自身が通気性を有する必要がある。通気性を示す尺度の一つとして透湿度を用いることがある。積層体1を乾燥剤などの包装材料として用いる場合、透湿度としては100〜1000g/m2・24Hr程度であることが必要とされる。
【0046】
そこで、バインダー4には、無機フィラーを含有させた樹脂が用いられる。樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられ、中でも特に、ポリエチレン系樹脂が好ましい。樹脂に含有させる無機フィラーとしては、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどが挙げられる。このように、無機フィラーを含有させた樹脂をバインダー4として用いることで、適度な通気性を有する積層体1を得ることができる。
【0047】
バインダー4の透湿度は、バインダー4の厚みおよび無機フィラーの含有量に依存し、積層体1の用途や、不織布2の種類、強化材3の種類によって適宜選定される。積層体1を乾燥剤などの包装材料として用い、不織布2として上述した直交積層不織布を用いるとともに、強化材3として上述した割繊維不織布を用いた場合、バインダー4の厚みは10〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。透湿度はバインダー4の厚みに比例し、また、バインダー4の厚みが薄すぎると、不織布2と強化材3との十分な接着力が得られにくくなる。さらに、無機フィラーとして炭酸カルシウムを用いた場合、炭酸カルシウムの含有量は、樹脂100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましい。無機フィラーの含有量が少なすぎると必要な透湿度が得られにくくなり、逆に、無機フィラーの含有量が多すぎると、樹脂中に無機フィラーを混合する際の混練性が低下するとともに、無機フィラーの分散性も低下する。
【0048】
以上、本実施形態の積層体1を構成する各層について説明した。次に、本実施形態の積層体1の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。
【0049】
積層体1の製造には、いわゆるサンドラミと呼ばれる方法を用いることができる。この方法によれば、不織布2と強化材3とは、間をあけて対向配置された2つのローラ12a,12bの間に互いに別の方向から供給され、ローラ12a,12bによって重ね合わせられて下向きに送られる。一方、不織布2と強化材3との合流部の上方には、溶融状態とされたバインダー4を押し出すノズル11が設置されており、バインダー4は、不織布2と強化材3との間に供給される。そして、不織布2と強化材3との間に供給されたバインダー4はローラ12a,12bの間で不織布2と強化材3とに挟まれ、バインダー4の一部が強化材3の網目構造および不織布2に染み込み、不織布2および強化材3がローラ12a,12bによって送られる過程でバインダー4が固化することで、不織布2および強化材3はバインダー4によって一体化され、積層体1が得られる。
【0050】
このように、バインダー4として無機フィラー入りの樹脂を用いることで、不織布2と強化材3との積層に、熱や接着剤による接着を用いることなく、溶融状態のバインダー4を不織布2と強化材3とで挟んで固化させるという極めて簡単なプロセスで積層体1を製造することができるようになる。その結果、積層体1の生産性を向上させることができるとともに、積層体1を安価に製造することができる。
【0051】
本実施形態の積層体1によれば、バインダー4によって適度な通気性を持たせつつも、不織布2を網状構造の強化材3で補強することで引張り強度が向上し、さらに、不織布2は微細なフィラメントで構成されているので、突刺し強度に優れたものとなる。したがって、積層体1は、包装材料に用いたとき、内部に収納された物品による損傷も生じにくく、また、物品が例えば活性炭や木炭など硬くかつ突起を有する形状のものであっても、それら物品が積層体1を突き破って外部に流出することはなく安全である。さらに、積層体1は従来のように紙を用いていないので、紙粉も発生せず衛生的である。
【0052】
特に、不織布2に直交積層不織布を用いるとともに、強化材3に割繊維不織布を用いることで、これらは何れも縦方向および横方向にフィラメントが配列されているので縦方向と横方向での強度バランスに優れ、しかも、直交積層不織布は緻密な長繊維が均一に配列されて構成されているので、機械的強度をより向上させることができる。
【0053】
積層体1には、必要に応じて印刷を施すことができる。印刷は、不織布2に施すことが好ましい。不織布2は微細なフィラメントで構成されていることから表面平滑性に優れ、したがって印刷性が良好であるからである。印刷には、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、あるいはスクリーン印刷など、種々の印刷法が適用可能である。印刷は、不織布2の、強化材3との積層面に施してもよいし、その反対側の面すなわち不織布2の表面に施してもよい。印刷を強化材3との積層面に施す場合には、不織布2と強化材3との積層前に印刷を行っておく必要があるが、不織布2の表面に施す場合は、不織布2と強化材3との積層前でも積層後でも行うことができる。また、印刷を強化材3との積層面に施す場合は、印刷された内容は不織布2を通して見ることになるので、鏡像印刷を行う必要がある。
【0054】
印刷を不織布2の強化材3との積層面に施すことは、積層体1が、乾燥剤用の包装袋など、食品とともに収納される袋の包装材料として用いられる場合に特に好ましい。これにより、印刷用のインキが食品と接触しなくなるので、印刷インキ工業連合会の制定する「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制」(NL規制)に適合する、包装材料への印刷に一般に使用されているインキを使用することができる。食品と接触する箇所に印刷を施す場合、印刷用のインキが食品に移行しても衛生上の問題が生じないように、着色剤として食用色素を使用するとともに、バインダーとして、食品に接触してもよい樹脂を使用したインキを用いる必要がある。インキが食品と接触しないように印刷を施すことにより、このような特殊なインキを使用する必要がなくなるので、不織布2との密着性に優れたインキを使用して任意の色調で印刷を行うことができる。また、安価なインキを使用できるので、積層体1を安価に製造することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態による積層体の模式的断面図である。本実施形態の積層体21も第1の実施形態と同様に、不織布22と、強化材23と、バインダー24とを有するが、本実施形態の積層体21は、強化材23は不織布22上に直接載置され、バインダー24は強化材23に浸透して不織布22と強化材23とを一体化している点が、第1の実施形態と異なっている。不織布22、強化材23およびバインダー24は、第1の実施形態と同様のものを用いることができるので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施形態においても、積層体21は、互いに重ね合わせられた不織布22と強化材23とをバインダー24で一体化して構成されているので、実質的には第1の実施形態と同様の効果を有し、包装材料として好適に用いることができる。
【0057】
ここで、本実施形態の積層体21の製造方法の例について説明する。
【0058】
本実施形態の積層体21の製造には、いわゆるオーバーラミと呼ばれる方法を用いることができる。この方法によれば、不織布22と強化材23とを互いに重ね合わせ、その強化材23側から溶融状態のバインダー24を供給することによって、バインダー24を強化材23中に少なくとも不織布22との境界部まで染み込ませ、その状態でバインダー24を固化させることで、不織布22と強化材23とを一体化させる。
【0059】
図4および図5に、オーバーラミの代表的な例を示す。図4に示す例では、不織布22と強化材23とは、強化材23を上にして互いに重ね合わせられて、ローラ33に掛け渡されたコンベア32によって搬送される。一方、コンベア32の上方には、溶融状態とされたバインダー24を押し出すノズル31が配置されている。不織布22と強化材23とを互いに重ね合わせて搬送しながら、ノズル31からバインダー24を押し出すと、押し出されたバインダー24は強化材23上に供給され、強化材23中に染み込んでいく。染み込んだバインダー24は、少なくとも不織布22と強化材23との境界まで達し、不織布22および強化材23とともに、一対のピンチローラ34a,34bで加圧挟持される。その後、バインダー24が固化することで不織布22と強化材23とが一体化され、積層体21(図3参照)が得られる。
【0060】
図5に示す例では、不織布22と強化材23とは、強化材23を上にして互いに重ね合わせられて、ローラ35上に繰り出される。ローラ35の上方には、図4と同様のノズル31が配置されている。ノズル31から溶融状態のバインダー24を押し出しながら、ローラ35によって、不織布22および強化材23を重ね合わせた状態で送ることで、バインダー24は強化材23側から供給されて強化材23に染み込み、さらに、ピンチローラ35との間で加圧挟持される。その後、バインダー24が固化することで不織布22と強化材23とが一体化され、積層体21(図3参照)が得られる。図5に示す方法は、図4に示す方法と比べて、より簡単な装置構成で積層体21を得ることができる。
【0061】
本実施形態では、第1の実施形態と比べてさらに簡単な方法で、適度な通気性を有し、しかも機械的強度に優れた積層体21を製造することができる。これはやはり、バインダー4として無機フィラー入りの樹脂を用いているからに他ならない。
【0062】
本実施形態の積層体21も、印刷を施すことができる。印刷を施す場合、第1の実施形態と同様に、印刷性の良好な不織布22に施すのが好ましい。また、図3に示したように、不織布22がバインダー24に覆われる形態の場合は、不織布22と強化材23との一体化後に、バインダー24の表面に印刷を施してもよい。
【0063】
以上、本発明について2つの代表的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の積層体は、脱酸素剤、乾燥剤、吸湿剤、消臭剤、発熱剤、防虫剤、除湿剤または芳香剤などの機能性物品の包装用の包装材料に好適に利用できる。これらの機能性物品を収納する包装体は、機能性物品が機能すればどのような形態でもよい。包装体が袋の形態である場合には、積層体は、その袋の一部分、片面、または全体に使用される。積層体で袋全体を構成する場合、袋の形成は、シート材から袋を形成する一般的な製袋包装機を用いることができる。
【0064】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について比較例とともに説明する。
【0065】
ここでは、以下の実施例1、2に示すような積層体を作製し、それぞれについて、縦方向および横方向の引張り強度、突刺し強度、および透湿度を測定した。引張り強度は、JIS P 8113(1998)に準拠して測定した。突刺し強度は、食品衛生法「器具及び容器包装の規格基準 突き刺し強度試験」に準拠して測定した。この試験は、直径が1mmで先端が0.5Rの球形になっている針を試料面に突き刺し、針が貫通するまでの最大荷重をNで表したものである。透湿度は、JIS Z 0208(カップ法)に準拠して測定した。また、比較のため、網状構造を有する強化材と、無機フィラーを含有した延伸PE透湿性フィルムとを積層した積層体を作製し(比較例1)、同様に引張り強度、突刺し強度、および透湿度を測定した。
【0066】
(実施例1)
不織布として、ポリエステル樹脂からなる「ミライフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番TY1010E(目付量20g/m2)を用いるとともに、強化材として、ポリエチレン製の割繊維不織布である「日石ワリフ」(日石プラスト(株)製、商品名)の品番SS(T)(目付量20g/m2)を用い、両者を、サンドラミによって積層一体化し、積層体を作製した。バインダーとしては、炭酸カルシウムの含有量を50wt%とした低密度ポリエチレン樹脂を用いた。バインダーの厚みは35μmとした。
【0067】
(実施例2)
不織布、強化材およびバインダーは実施例1と同じものを用いたが、不織布と強化材との積層一体化をオーバーラミで行って積層体を作製した。
【0068】
(比較例1)
実施例1で用いた強化材と、透湿性フィルムとして知られている、無機フィラーを含有した延伸PEフィルムである「ポーラム」((株)トクヤマ製、商品名)とを、熱圧着によって積層し、積層体を作製した。
【0069】
実施例1,2および比較例1の各強度および透湿度についての測定結果を表1にまとめる。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から分かるように、実施例1,2と比較例1とで強度を比べると、引張り強度も突刺し強度も、実施例1,2の方が高い値を示した。特に突刺し強度は、実施例1,2は大幅な向上が認められた。また、透湿度について見ると、実施例1,2は、乾燥剤や脱酸素剤などを収納する包装材料に使用するのに適した透湿度であったが、比較例1は、このような用途に用いるには大きすぎる値となった。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、微細なフィラメントで構成される不織布層と網状構造の強化材層とを積層することにより、紙粉が発生せず、かつ引張り強度および突刺し強度に優れた積層体とすることができる。しかも、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーに用いることで、適度な通気性を持たせることができ、したがって、本発明による積層体は、乾燥剤や脱酸素剤等の包装材料として特に好適に用いることができる。また、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーに用いることで、不織布層と強化材層とを、熱接着や接着剤による接着によることなく、簡単なプロセスで積層一体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による積層体の模式的断面図である。
【図2】図1に示した積層体の製造方法の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による積層体の模式的断面図である。
【図4】図3に示した積層体の製造方法の一例を説明するための図である。
【図5】図3に示した積層体の製造方法の他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1,21 積層体
2,22 不織布
3,23 強化材
4,24 バインダー
11,31 ノズル
12a,12b,33,35 ローラ
32 コンベア
34a,34b,36 ピンチローラ
Claims (9)
- 微細なフィラメントで構成される不織布層と、網状構造の強化材層とを、無機フィラーを含有した樹脂をバインダーとして一体化してなる積層体。
- 前記強化材層は、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる割繊維不織布である、請求項1に記載の積層体。
- 前記不織布層は、フィラメントが一方向に配列され延伸された一方向延伸配列不織布、または2枚の前記一方向延伸配列不織布をフィラメントの配列方向が直交するように積層した直交積層不織布である、請求項1または2に記載の積層体。
- 前記無機フィラーを含有した樹脂はポリオレフィン系樹脂である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記無機フィラーは炭酸カルシウムである、請求項4に記載の積層体。
- 前記炭酸カルシウムの含有量は、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して30〜70質量部である、請求項5に記載の積層体。
- 前記無機フィラーは硫酸バリウムである、請求項4に記載の積層体。
- 微細なフィラメントで構成される不織布と、網状構造の強化材とを、それぞれ別の方向から繰り出して互いに重ね合わせる工程と、
繰り出された前記不織布と前記強化材の合流部に、無機フィラーを含有した樹脂を溶融状態で供給する工程と、
前記不織布と前記強化材との合流部に供給された前記樹脂を固化し、前記不織布と前記強化材とを一体化する工程とを有する、積層体の製造方法。 - 微細なフィラメントで構成される不織布と、網状構造の強化材とを、互いに重ね合わせる工程と、
無機フィラーを含有した樹脂を、互いに重ね合わせられた前記不織布と前記強化材とに、前記強化材側から供給し、少なくとも前記不織布と前記強化材との境界部まで染み込ませる工程と、
前記強化材側から供給された前記樹脂を固化し、前記不織布と前記強化材とを一体化する工程とを有する、積層体の製造方法。
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JP2007307729A (ja) * | 2006-05-16 | 2007-11-29 | Asahi Kasei Fibers Corp | 吸湿性シート |
JP2014087960A (ja) * | 2012-10-30 | 2014-05-15 | Taiyodoseikosha Co Ltd | 複合シートおよび複合シートの製造方法、並びに物品収容具 |
-
2002
- 2002-07-23 JP JP2002213799A patent/JP2004050729A/ja active Pending
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JP2014087960A (ja) * | 2012-10-30 | 2014-05-15 | Taiyodoseikosha Co Ltd | 複合シートおよび複合シートの製造方法、並びに物品収容具 |
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