JP2004349223A - メモリカード用ソケット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コンタクトブロック4の樹脂製基体7は、メモリカードの接続端子に接触する複数本のコンタクトと、メモリカードの挿入を検知するための検知スイッチを構成する固定接点板30及び可動ばね片31を保持し、コンタクトをカード挿入口に向けてハウジングの後部内に配置される。固定接点板30の一端に設けた固定接点30aは樹脂製基体7の突出片71の内側面から露出する。可動ばね片31は、固定接点30aに対向配置されハウジングの内部に挿入されるメモリカードに押圧されて固定接点30aと弾接する向きに撓められる弾接部31aを有し、弾接部31aにおける固定接点30aとの接触部位にはV字形の溝31cが形成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミニSDカードのようなメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のメモリカード用ソケットとしては、前部にメモリカードを挿入するカード挿入口が開口したハウジングと、メモリカードに設けた接続端子に接触する複数本のコンタクトが樹脂製の基体にインサート成形され、ハウジングの後部内にコンタクトをカード挿入口に向けて配置されるコンタクトブロックと、ハウジングに挿入されたメモリカードに当接して押力を受けハウジングに対してメモリカードと共に後方へスライドするスライド部材と、メモリカードが抜かれる際にスライドする方向(前方)へスライド部材を付勢する付勢ばねと、メモリカードを接続した状態でメモリカードの接続端子がコンタクトに接触する保持位置から前方へスライド部材が移動するのを禁止するプッシュオン・プッシュオフ型のロック機構とを備えたものが従来より提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また従来より、メモリカードの挿入を検知する検知スイッチを内蔵したものも提案されているが、ミニSDカード用のソケットではハウジングの奥行寸法をできるだけ小さくすることが要求されるため、図9及び図10に示すように、コンタクトブロックの基体7の一端部から前方に突出する突出片71の側方に検知スイッチを構成する固定接点30aと可動ばね片31の弾接部31aを幅方向に並べて配置し、ハウジング内部に挿入されるメモリカードで可動ばね片31の弾接部31aを固定接点30a側に押圧駆動し、固定接点板30と可動ばね片31との間を導通させることで、メモリカードの挿入を検知していた。
【0004】
固定接点板30は基体7の突出片71にインサート成形され、先端部に設けた固定接点30aが突出片71の内側面から露出している。また可動ばね片31は基体7から前方に突出する一端側がクランク状に折り曲げられ、さらにその先端部を折り曲げることで平面視の形状がへ字状の弾接部31aを連続一体に設けてある。この弾接部31aは先端部が固定接点30aに対向するとともに、中間部が両側部に対して固定接点30aと反対側に突出するように配置されている。
【0005】
ここで、ソケットにメモリカードが挿入されていない場合、弾接部31aは、そのばね力によって復帰位置(図9(b)の位置)まで移動し、固定接点30aから開離している。一方、ソケットにメモリカードが挿入されると、メモリカードの先端部によって可動ばね片31の弾接部31aが固定接点30a側に撓められて、弾接部31aと固定接点30aとが弾接し、固定接点板30と可動ばね片31との間が導通する。このように、メモリカードの挿抜操作に応じて検知スイッチがオン/オフするので、検知スイッチのオン/オフ状態からメモリカードの有無を検知することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−6576号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のメモリカード用ソケットではメモリカードが挿入されると、可動ばね片31の弾接部31aがメモリカードによって撓められて、固定接点30aに弾接するのであるが、弾接部31aにおける固定接点30aとの接触部位が平坦面になっているので、弾接部31aやクランク曲げ部31bの曲げ寸法のばらつきによって弾接部31aの位置が図9(c)中の上下方向に少しでもずれると、弾接部31aが固定接点30aから外れてしまう虞があり、電気的接続の安定性が確保できないという問題があった。
【0008】
また、コンタクトブロックを安価に製造するために、1枚の金属の薄板に抜き加工及び曲げ加工を施すことによって、複数本のコンタクトと固定接点板30と可動ばね片31が連結部を介して互いに連結された状態に形成し、この状態で基体7をインサート成形した後、連結部を切断してコンタクトと固定接点板30と可動ばね片31とを分離しており、コンタクトと固定接点板30と可動ばね片31とは同じ板材から形成されているので、その板厚は同じ厚みになっている。ここで、基体7にインサート成形される部分の強度を確保するためには、板材にある程度の厚み(例えば0.2mm)のものを用いる必要があり、その結果、弾接部31aの板厚が厚くなって接点圧が高くなり、カード挿入時に弾接部31aに永久歪が発生したり、弾接部31aと当接するメモリカードに傷ができるという問題があった。なお、メモリカードMCの幅寸法の公差は±0.1mmであり、幅寸法が基準寸法から+0.1mmの場合、基準寸法の場合、基準寸法から−0.1mmの場合の接圧の解析結果を図11(a)〜(c)に示す。可動ばね片31の撓み量はカード幅が広い程大きくなっており、カード幅が基準寸法の場合の接圧は4.27N、基準寸法よりも0.1mm広い場合の接圧は4.27N以上、基準寸法よりも0.1mm狭い場合の接圧は3.56Nであり、何れの場合も接圧が高すぎるため、可動ばね片31に加わる応力が980N/mm2 以上となって、可動ばね片31にへたりが生じていた。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、請求項1の発明の目的とするところは、可動ばね片の曲げ寸法がばらついても接触安定性を確保できるメモリカード用ソケットを提供することにある。また請求項2の発明の目的とするところは、上記の目的に加えて、可動ばね片に永久歪みが発生したりメモリカードに傷がつくのを防止したメモリカード用ソケットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、前部にメモリカードを挿入するカード挿入口が開口した箱状のハウジングと、メモリカードの一面に設けた接続端子に接触する複数本のコンタクトを樹脂製基体に両側方向に並行するように保持させ、ハウジングの後部内にコンタクトをカード挿入口に向けて配置されるコンタクトブロックと、該コンタクトブロックとカード挿入口との間のハウジング内部に前後方向に移動自在に配置され、カード挿入口からのメモリカードの挿抜操作に伴ってメモリカードと共に前後移動するスライド部材と、一端をハウジングの内部に露出させるようにして樹脂製基体に保持される固定接点板と、樹脂製基体に保持されて樹脂製基体から前方に突出する先端部が固定接点板の一端に対向配置され、ハウジングの内部に挿入されるメモリカードに押圧されて固定接点板と弾接する向きに撓められる可動ばね片とを備え、可動ばね片における固定接点板との接触部位に、固定接点板と可動ばね片とが対向する方向及び前後方向にそれぞれ直交する方向の両側部に行くほど固定接点板側に近付く向きに傾斜する傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、可動ばね片における固定接点板との接触部位には、固定接点板と可動ばね片とが対向する方向及び前後方向にそれぞれ直交する方向の両側部に行くほど固定接点板側に近付く向きに傾斜する傾斜面が形成されているので、可動ばね片の位置が上記直交方向において多少ばらついたとしても、可動ばね片に設けた傾斜面と固定接点板とが2点で接触するから、安定した接触を得ることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、可動ばね片は、少なくとも固定接点板との接触部位と樹脂製基体に保持された部位との間が、樹脂製基体に保持された部位に比べて薄く且つカード挿入時に永久歪が発生しない程度の板厚に形成されたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、可動ばね片の接圧を下げるために必要な部分、すなわち可動ばね片における固定接点板との接触部位と樹脂製基体に保持された部位との間の部位を、樹脂製基体に保持された部位に比べて薄く且つカード挿入時に永久歪が発生しない程度の板厚に形成しているので、接圧を下げて可動ばね片に加わる応力を低減することができ、永久歪の発生を防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。本実施形態では、ミニSDカードのようなメモリカードを挿抜自在に接続するソケットを例に説明を行う。尚、他の種類のメモリカードに対しても、本発明における技術は適用できるものであるから、特にミニSDカードに限定されるものではない。
【0015】
先ずメモリカードの形状について簡単に説明する。図7に示すメモリカードMCは従来のSDメモリを小型化したミニSDカードと呼ばれるもので、扁平な略矩形板状であって、後部(挿入側)の一方の角には切欠部101が設けてある。また、メモリカードMC後部の左右両側縁には上向き段部102をそれぞれ形成してあり、上記切欠部101よりも前側(挿入側と反対側)の位置には上面の左右両側縁に矩形状に窪んだロック用凹所103,103を形成している。また更に、メモリカードMC後部の下面には複数の接続端子104が並行に配列されている(図8参照)。
【0016】
次に本実施形態のソケットの構造を図6〜図8を参照して説明する。本実施形態は、図示するように厚さが極薄いステンレス金属板を打ち抜き且つ曲げ加工することにより形成されたベースシェル1と、このベースシェル1と同様に厚さが極薄いステンレス金属板を打ち抜き且つ曲げ加工することにより形成され、ベースシェル1上に被着することで前部にメモリカードを挿入するカード挿入口3aが開口した扁平な箱状のハウジング3をベースシェル1と共に構成するカバーシェル2と、ハウジング3の後部内に装着されるコンタクトブロック4と、コンタクトブロック4の前方側のハウジング3内に前後方向に移動自在に配置されるコ字型の樹脂成形品からなるスライダー5(スライド部材)とを主要な構成要素としたものである。
【0017】
ベースシェル1は、底板6aの左右両側に上面(ハウジング3の内側に対応)側方向に折り曲げて形成した側壁6b,6bを設けたもので、前後端が開放されている。そして、底板6aの後端には、コンタクトブロック4の樹脂製基体7に上下方向に貫通させた圧入孔8に下方から圧入してコンタクトブロック4を後部上面に固定する複数個の突出片9を折り曲げ形成している。また、各側壁6bには複数の係止孔35…を貫設してあり、各側壁6bの前端にはスライダー5のカード挿入口3aからの脱落を防止するための突片18が内側へ突設されている。また、コンタクトブロック4に保持される後述のコンタクト10…がメモリカードMCによって下方に押されたときに底板6aに接触しないよう、底板6aにはコンタクト10…を逃がすための複数の透孔11…を形成してある。
【0018】
一方、カバーシェル2は、天板20aの左右両側に折り曲げによって下向きの側壁20b,20bを一体に設けてあり、また天板20aの後端には所定間隔で複数の下向きの突出片21を折り曲げ形成している。これらの突出片21はベースシェル1上にカバーシェル2を被着する際に、ベースシェル1の後部上面に配置されるコンタクトブロック4の基体7上面に開口するように貫設された圧入孔22に圧入してコンタクトブロック4を固定するためのものである。また、天板20aの左右の端部には、それぞれ2本のスリット24が左右に並設されており、2本のスリット24で挟まれた部位には前後方向の中間部が下方へ突出するように折り曲げられてメモリカードMCをスライダー5に押し付ける押さえ片25が設けられている。また、両側壁20b,20bには、側壁6b,6bの係止孔35…に対応する位置に弾性係止片34…が切り起こしによって形成されている。
【0019】
コンタクトブロック4は、メモリカードMCの後部下面に並行配設した複数の接続端子104に夫々接触するコンタクト10…と、メモリカードMCの位置検出用の固定接点板30及び可動ばね片31とを樹脂製の基体7にインサート成形によって一体保持させており、基体7の前面側(カード挿入口3a側)にはコンタクト10…、固定接点板30、及び可動ばね片31の接触側を突出させ、後面側には回路基板等に夫々を半田付けするための半田付け端子部32…を突出させている。
【0020】
基体7の前面には段部を設けてあり、この段部に一端が開口するように上記圧入孔8…を上下方向に貫通させ、さらに基体7の後側上面に一端が開口するように圧入孔22…を上下方向に貫通させている。また、基体7の長手方向の一端部には前面側に突出する突出片71が一体に設けられており、この突出片71の上面にはハートカム溝部15が形成されている。ハートカム溝部15は、ハートカム15aとハートカム15aの周りに形成されたガイド溝15bとで構成され、後述するロック金具19のガイド軸19bをガイド溝15bに係入し、スライダー5の前後移動に伴い、ガイド溝15bとガイド溝15bの底面に形成した凹凸面(図示せず)とでガイド軸19bのガイド溝15b内での相対的な移動をガイドするようなっている。
【0021】
ロック金具19は細幅の金属板により平面視略く字状に形成され、一端部には上述のガイド軸19bが突設され、他端部には回動軸19aが突設されている。また、ロック金具19の曲がり部の内側縁(メモリカードMC側の側縁)からは側方に突出するロック片19cが一体に形成されている。
【0022】
スライダー5は、合成樹脂成形品により略コ字型に形成されたものであって、メモリカードMCの左右の側縁をガイドする脚片5b,5cと、脚片5b,5cの後部上側縁間を連結してメモリカードMCの先端上部と当接する当接部5aとを一体に形成することで略コ字型に形成されたものであり、両脚片5b,5cの前部下側縁を平板状の連結片5eを介して一体に連結してある。左側の脚片5bの後部には内側に突出してメモリカードMCの切欠部101と当接する張出部5dが設けられている。また、当接部5aの下面は、連結片5eの上面よりも上側に位置しており、当接部5aの下面とベースシェル1の底板6a上面との間には隙間が生じ、スライダー5が押し込まれた時にはコンタクト10…は当接部5aの下側を通過して当接部5aの前方に突出する。
【0023】
なお各脚片5b,5cはメモリカードMCの左右の側部をガイドするものであり、各脚片5b,5cの後端部内側面には、上側を下側よりも内側に突出させた段部50が設けられ、メモリカードMCの左右の側縁に設けた上向き段部102が各脚片5b,5cの段部50の下側に入り込むようになっている。
【0024】
また、脚片5bの前端部の上面にはロック金具19の回動軸19aを軸支する軸穴14が形成されている。而して、ロック金具19は一方のガイド軸19bをハートカム溝部15のガイド溝15b内に係入するとともに、他方の回動軸19aを軸穴14に軸支させており、スライダー5の前後動作に伴ってガイド軸19bがガイド溝15bにガイドされてハートカム15aの周りを移動すると、ロック金具19が回動軸19aを中心として回動し、ロック金具19の回動に応じてロック片19cが左右方向に移動するのである。
【0025】
また、両脚片5b,5cの下側面には、後面側に開放されコイルばね13,13の前端部が挿入される溝(図示せず)がそれぞれ形成されている。各コイルばね13の後端はそれぞればね座片41,42を介してコンタクトブロック4に取り付けられている。コンタクトブロック4の基体7の突出片71下面にはばね座保持溝71aが形成されており、一方のばね座片41は、コイルばね13に後方から挿入されてコイルばね13の座屈を防止する座屈防止針43と、座屈防止針43の後端から連続一体に延出し、突出片71のばね座保持溝71aに嵌る取付片44とを有する。また、他方のばね座片42は、コイルばね13に後方から挿入されてコイルばね13の座屈を防止する座屈防止針45と、座屈防止針45の後端から延出し、基体7の右端に設けられた結合溝7aに凹凸結合する取付片46とを有する。ここで、両脚片5b,5cが均等にコイルばね13,13の弾発力を前方方向に受けることで、スライダー5がハウジング3内をスムーズに前後方向に摺動できるようになっている。
【0026】
ところで、上述したように基体7にはメモリカードの挿入を検知する検知スイッチが設けられており、この検知スイッチは固定接点板30と可動ばね片31とからなる(図1〜図4参照)。固定接点板30は基体7の突出片71にインサート成形によって保持され、先端部に設けた固定接点30aが突出片71の内側面から露出している。また可動ばね片31は基体7から前方に突出する一端側がクランク状に折り曲げられ、さらにその先端部を折り曲げることで平面視の形状がへ字状の弾接部31aを連続一体に設けてある。この弾接部31aは先端部が固定接点30aに対向するとともに、中間部が両側部に対して固定接点30aと反対側に突出するように配置されている。
【0027】
ここで、可動ばね片31の弾接部31aにおける固定接点30aとの接触部位にはV字形の溝31cを形成してあり、上下方向の両側部に行くほど固定接点30a側に近付く向きに傾斜する傾斜面が形成されている。而して、固定接点30aが弾接部31aに設けた溝31cに弾接することになり、弾接部31aやクランク曲げ部31bの曲げ寸法のばらつきによって弾接部31aの位置が多少上下にばらついたとしても、固定接点30aの先端面の上下の角が溝31cの傾斜面と2点で接触するように、弾接部31aの位置が調芯されるから、安定した接触を得ることができる。尚、本実施形態では弾接部31aにおける固定接点30aとの接触部位にV字形の溝31cを形成しているが、溝31cの形状をV字形に限定する趣旨のものではなく、上下方向(すなわち固定接点30aと弾接部31aとが対向する方向及び前後方向にそれぞれ直交する方向)の両側部に行くほど固定接点30a側に近付く向きに傾斜するのであれば、弧状の傾斜面でも良く、U字状の溝などでも良い。
【0028】
また可動ばね片31は、後述するようにコンタクト10…や固定接点板30と共に板厚が約0.2mmの1枚の金属の薄板に抜き加工及び曲げ加工を施して形成されるので、その板厚はコンタクト10…や固定接点板30と同じ厚みになっているが、基体7をインサート成形する前に、少なくとも固定接点30aとの接触部位と基体7に保持される付け根部31dとの間の部位(図1(a)中のA部)にプレス加工を施すことによって、このA部の厚みが、強度を持たせる必要のある付け根部31dや、接圧に関係しない固定接点30aとの接触部位に比べて約半分の厚さで、カード挿入時に永久歪が発生しないような厚み(約0.1mm)に形成されている。従って可動ばね片31のA部のばね性を弱くして接圧を下げることができ、カード挿入時に可動ばね片31に加わる応力を低減して、永久歪の発生を防止している。ここで、図5(a)〜(c)は、メモリカードMCの幅寸法が基準寸法から+0.1mmの場合、基準寸法の場合、基準寸法から−0.1mmの場合の接圧の解析結果を示しており、可動ばね片31の撓み量はカード幅が広いほど大きくなるが、カード幅が基準寸法の場合の接圧は0.21N、基準寸法よりも0.1mm広い場合の接圧は0.28N、基準寸法よりも0.1mm狭い場合の接圧は0.15Nであり、カード幅が最大の場合でも接圧が従来の20分の1以下になっている。したがって、可動ばね片31に加わる応力が847N/mm2 に低下し、弾性限度(=980N/mm2 )以内となるので、永久歪が発生することはない。
【0029】
なお、可動ばね片31に加わる応力を低減するためには、コンタクト10…や固定接点板30を形成する板材に比べて厚みの薄い別の板材から可動ばね片31を形成することも考えられるが、その場合はインサート成形の作業がやりにくく、コストアップになり、さらにソケットの上下方向の寸法が大きくなるという問題がある。それに対して、本実施形態では上述のような方法でコンタクトブロック4を形成しているので、インサート成形がやりやすく、コストアップやソケットの大型化を招くこともない。
【0030】
以上説明したようなメモリカード用ソケットを組み立てるに当たっては、コンタクト10、固定接点板30及び可動ばね片31が樹脂製基体7にインサート成形されたコンタクトブロック4の樹脂製基体7にばね座片41,42を取り付けた後、ベースシェル1の上面後部にコンタクトブロック4を載置し、ベースシェル1に設けた突出片9…をコンタクトブロック4の圧入孔8…に下方から圧入してコンタクトブロック4をベースシェル1上に固定する。次に、ばね座片41,42にコイルばね13,13の後部を挿入し、コイルばね13,13の前端部を両脚片5b,5cの下面に設けた溝内に収めるようにして、スライダー5をベースシェル1の上面前部に載置した後、ロック金具19の一端の回動軸19aを脚片5bの軸穴14内に挿入して、軸穴14に軸支させるとともに、ロック金具19の他端のガイド軸19bをガイド溝15b内に係入する。この状態ではスライダー5がコイルばね13,13により付勢されて前方(カード挿入口3a側)へ押し動かされ、両脚片5b,5cの前端部がベースシェル1の前端に設けた突片18,18の裏面に衝合し、スライダー5のそれ以上の前方への移動が規制される。
【0031】
このようにしてベースシェル1上にコンタクトブロック4、スライダー5を配置するとともに、コイルばね13,13、ロック金具19を装着した後、カバーシェル2を上方からベースシェル1に被せる。この際カバーシェル2に形成した突出片21…をコンタクトブロック4の基体7の圧入孔22に上方から圧入するとともに、両側壁20b,20bをベースシェル1の両側壁6b,6bの外側面に沿うように垂下させる。この時、カバーシェル2の両側壁20bに設けた弾性係止片34…の上向き先部が、ベースシェル1の両側壁6bに設けた係止孔35…に係止されることになり、両シェル1,2が互いに結合されて、扁平で前部にカード挿入口3aを開口した箱状のハウジング3が形成されると同時に、ソケットが完成することになる。ここで、本実施形態のソケットは、各コンタクト10…、固定接点板30、及び可動ばね片31の半田付け端子部32…の下面を低くしたSMD型のソケットであり、また金属製のハウジング3をアースすることで静電気や外部ノイズに強いものとなる。
【0032】
ここで、メモリカードMCを挿着していない状態では、コイルばね13の弾発力を受けてスライダー5がカード挿入口3a方向に移動した状態にあり、この時ロック金具19のガイド軸19bは初期位置(図8のa)に移動しており、ガイド溝15b内で最も外側(メモリカードMCと反対側)の位置に移動しているので、ロック金具19が回動軸19aを中心として左回りに一杯まで回転し、ロック片19cがメモリカードMCのロック用凹所103から外に退避している。
【0033】
次に、メモリカードMCをコネクタ装置へ挿着する場合の各部の動作について説明する。まずメモリカードMCを前後方向及び表裏方向を正規な方向に向けてハウジング3のカード挿入口3aから挿入すると、メモリカードMCの先部がハウジング3内のスライダー5の両脚片5b,5c間に挿入されて、メモリカードMCの下面両側部の上向き段部102,102が段部50,50と当接する。更にメモリカードMCをハウジング3内に挿入すると、やがてメモリカードMCの先部の片側に形成した切欠部101がスライダー5の張出部5dに衝合するとともに、メモリカードMCの先部が当接部5aと衝合してスライダー5を後方へ押すことになる。そして、スライダー5に加わるコイルばね13,13の弾発力に抗して更にメモリカードMCを押し入れると、メモリカードMCの移動に共動してスライダー5が後退することになる。このスライダー5の後退によりロック金具19のガイド軸19bがハートカム溝部15のガイド溝15b内をガイド溝15b底部の凹凸面によってガイドされながらハートカム15aの左側のガイド溝15b内(図8の位置b)に移動することになる。この時、ガイド軸19bの移動に伴って、ロック金具19は回動軸19aを中心として回動するのであるが、ハートカム15aの左側のガイド溝15bは前後方向に沿って略真っ直ぐに延びているので、ロック金具19の傾きは十分小さく、ロック片19cはメモリカードMCのロック用凹所103内に係入していない。
【0034】
そして、メモリカードMCをスライダー5の当接部5a後面がコンタクトブロック4の基体7前面に当たる位置に近い位置まで押し込むと、ロック金具19のガイド軸19bがガイド溝15bの後端の位置(図8のc)に至ることになり、それ以上の押し込みができなくなる。この位置でメモリカードMCに加えていた押し込み力を解除すると、コイルばね13の弾発力によりスライダー5がメモリカードMCと共に前方へ戻りかけるが、ロック金具19のガイド軸19bがガイド溝15bに案内されながら移動してハートカム15aの凹部15c(図8の位置d)に嵌り込むことになり、これ以上のスライダー5の前方移動が規制されて、メモリカードMCはその位置でハウジング3内に留まることになる。
【0035】
さて上記メモリカードMCは押し込みによってその先部が所定位置へ移動すると、各コンタクト10…の先部がメモリカードMCの裏面に形成した対応する接続端子104にコンタクト10…の長さに応じて順次接触することになる。また、図4に示すように前方に突出する可動ばね片31の弾接部31aがメモリカードMCの切欠部101側面で押されて固定接点30aに接触し、検知スイッチがオン状態になるので、このスイッチ信号を利用して外部の検出回路(図示せず)によりメモリカードMCが正規位置に挿着されたことを検出することができる。
【0036】
上述のスライダー5の移動はハートカム15aの凹部15cにロック金具19のガイド軸19bが嵌り込むことで規制されるが、メモリカードMCはそのままではハウジング3内より脱落する恐れがある。そこで本実施形態では、スライダー5がカードロック位置へ移動すると、このスライダー5の前後移動に伴って回動するロック金具19のロック片19cが脚片5bの内側(メモリカードMC側)に突出し、その先端部がメモリカードMCのロック用凹所103に係入しメモリカードMCをロックする。
【0037】
以上のように挿着されたメモリカードMCをソケットから取り出すときには、まずハウジング3のカード挿入口3aより露出するメモリカードMCの後部を挿入方向に押してスライダー5とともにメモリカードMCを挿入方向へ移動させる。この移動によってロック金具19のガイド軸19bがハートカム15aの凹部15cから離脱するとともにガイド溝15bにガイドされて凹部15cより右側のガイド溝15b内の位置(図8の位置e)へ移動する。この時、ロック金具19は回動軸19aを中心として右回りに回転し、ロック片19cがさらにメモリカードMC側に移動して、ロック片19cの略全体がロック用凹所103内に係入する。
【0038】
その後、メモリカードMCの押し込み力を解除すると、スライダー5はコイルばね13,13の弾発力により前方へ移動することなる。この移動に伴ってロック金具19のガイド軸19bはガイド溝15bにガイドされながらハートカム15aの右側のガイド溝15b内(図8の位置f)を通って前方へ移動し、ロック金具19が回動軸19aを中心に左回りに回転して、ロック片19cがロック用凹所103から退避する。そして、スライダー5がコイルばね13,13の弾発力によりカード挿入口3a側へ移動して初期位置に復帰すると、ロック片19cがロック用凹所103から外に出て、メモリカードMCのロックを解除する。この時、メモリカードMCの後部がハウジング3のカード挿入口3aから外部へ大きく露出し、メモリカードMCをハウジング3から取り出すことができることになる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明では、可動ばね片における固定接点板との接触部位には、固定接点板と可動ばね片とが対向する方向及び前後方向にそれぞれ直交する方向の両側部に行くほど固定接点板側に近付く向きに傾斜する傾斜面が形成されているので、可動ばね片の位置が上記直交方向において多少ばらついたとしても、可動ばね片に設けた傾斜面と固定接点板とが2点で接触するから、安定した接触を得ることができる。
【0040】
また、請求項2の発明では、可動ばね片の接圧を下げるために必要な部分、すなわち可動ばね片における固定接点板との接触部位と樹脂製基体に保持された部位との間の部位を、樹脂製基体に保持された部位に比べて薄く且つカード挿入時に永久歪が発生しない程度の板厚に形成しているので、接圧を下げて可動ばね片に加わる応力を低減することができ、永久歪の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のメモリカード用ソケットに用いるコンタクトブロックを示し、(a)は正面図、(b)は一部省略せる上面図、(c)は側面図である。
【図2】同上を示し、(a)はコンタクトブロックの側断面図、(b)は弾接部の要部拡大図である。
【図3】同上のコンタクトブロックを前側から見た断面図である。
【図4】同上の検知スイッチを示す要部拡大斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は同上の可動ばね片のばね特性の解析結果を説明する図である。
【図6】同上の分解斜視図である。
【図7】同上の外観斜視図である。
【図8】同上のカバーシェルを外した状態の要部拡大図である。
【図9】従来のメモリカード用ソケットに用いるコンタクトブロックを示し、(a)は正面図、(b)は一部省略せる上面図、(c)は側面図である。
【図10】同上の側断面図である。
【図11】(a)〜(c)は同上の可動ばね片のばね特性の解析結果を説明する図である。
【符号の説明】
4 コンタクトブロック
7 樹脂製基体
30 固定接点板
30a 固定接点
31 可動ばね片
31a 弾接部
71 突出片
Claims (2)
- 前部にメモリカードを挿入するカード挿入口が開口した箱状のハウジングと、メモリカードの一面に設けた接続端子に接触する複数本のコンタクトを樹脂製基体に両側方向に並行するように保持させ、前記ハウジングの後部内に前記コンタクトを前記カード挿入口に向けて配置されるコンタクトブロックと、該コンタクトブロックと前記カード挿入口との間のハウジング内部に前後方向に移動自在に配置され、前記カード挿入口からのメモリカードの挿抜操作に伴ってメモリカードと共に前後移動するスライド部材と、一端を前記ハウジングの内部に露出させるようにして前記樹脂製基体に保持される固定接点板と、前記樹脂製基体に保持されて前記樹脂製基体から前方に突出する先端部が前記固定接点板の一端に対向配置され、前記ハウジングの内部に挿入されるメモリカードに押圧されて前記固定接点板と弾接する向きに撓められる可動ばね片とを備え、前記可動ばね片における前記固定接点板との接触部位に、前記固定接点板と前記可動ばね片とが対向する方向及び前後方向にそれぞれ直交する方向の両側部に行くほど前記固定接点板側に近付く向きに傾斜する傾斜面を形成したことを特徴とするメモリカード用ソケット。
- 前記可動ばね片は、少なくとも前記固定接点板との接触部位と前記樹脂製基体に保持された部位との間が、前記樹脂製基体に保持された部位に比べて薄く且つカード挿入時に永久歪が発生しない程度の板厚に形成されたことを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
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