JP2004340186A - 締結具の脱落防止構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成となる締結具の脱落防止構造を提供する。
【解決手段】固定ねじ2は、被締結体と締結する軸部21と締結力伝達部位を有する頭部22で構成されている。軸部21の端部にねじ部2Aが形成され、頭部22とねじ部2Aの間の非ねじ部2Bは、ねじ部2Aの谷径より小さい直径dで形成されている。物品1は固定ねじ2が入る固定穴11が形成されており、固定穴11はねじ部2Aと噛合可能な対向する一対の傾斜円弧突起1A及び1Bが形成されている。ねじ部2Aを突起1A及び1Bに噛合させて通過すると非ねじ部2Bは突起1A及び1Bで遊嵌自在に保持される。物品1を倒立しても、固定ねじ2は、ねじ部2Aが一対の突起1A及び1Bに阻止されて容易に脱落しない。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、締結具の脱落防止構造に関する。特に、物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、この締結具が物品から容易に脱落しない構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
比較的軽量の物品、例えばコネクタなどの物品を非締結体となる電子機器に実装する場合は、締結具としてねじ部品が広く使用されている。コネクタなどの物品は、保守点検や交換のため電子機器との締結を解除することがある。この場合、ねじ部品がコネクタから容易に脱落しないようになっていれば、再締結に便利であり、脱落したねじ部品を捜すという事態も少なくなってくる。
【0003】
従来技術による、このような締結具の脱落防止構造を図6の断面図により説明する。
【0004】
図6(a)において、被締結体に取り着けられる物品71は、筒状の合成樹脂成形のブッシュ72が入る固定穴71Aが形成されている。ブッシュ72は、固定穴71Aの穴径より少し大きい外径の外面を有し、締結具となる固定ねじ73のねじ外径より大きい内径の内孔を有し、この外面と当該内孔が同軸となっている。
【0005】
また、当該ブッシュ72の内孔の内面に、先端の内接径が固定ねじ73のねじ外径となる複数個の爪状の突起部72Aを、等角度間隔で同心に配列している。そして、筒状の合成樹脂成型のブッシュ72を、固定穴71Aの外面から圧入し固定させ、縮径した突起部72Aの先端の内接径に固定ねじ73を嵌挿させる。このようにして、締結具の脱落を防止する構造が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
図6(b)において、締結具となる固定ねじ83は、軸部がねじ部83Aと非ねじ部83Bで構成されている。非ねじ部83Bの外径は、ねじ部83Aの谷径より僅かに小さくなっている。被締結体に取り着けられる物品81は、ねじ部83Aの外径より大きい内径を有する固定穴81Aが形成されている。
【0007】
また、図6(b)のX−X断面に示されるように、当該固定穴81A内面に、先端の内接径がねじ部83Aの谷径より僅かに大きい4個の球状の突起部81Bを、等角度間隔で同心に配列している。固定ねじ83は突起部81Bと圧入された後に、非ねじ部83Bで遊嵌自在に保持される。
【0008】
図6(b)において、物品81を被締結体から締結を解除しても、ねじ部83Aが突起部81Bに阻止されて、固定ねじ83は、物品81から容易に脱落しない。
【0009】
図6(c)において、締結具となる固定ねじ93は、軸部がねじ部93Aと非ねじ部93Bで構成されている。非ねじ部93Bの外径は、ねじ部93Aの谷径より僅かに小さくなっている。被締結体に取り着けられる物品91は、ねじ部93Aの外径より大きい内径を有する固定穴91Aが形成されている。
【0010】
図6(c)において、固定穴91Aに固定ねじ93が挿入された後に、物品91の底面から突出した非ねじ部93Bにゴムリング92が巻装される。図6(c)において、物品91を被締結体から締結を解除しても、ゴムリング92に阻止されて、固定ねじ93は、物品91から容易に脱落しない。
【0011】
【特許文献1】
実開平5−89938号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6(a)に示された第1の脱落防止構造においては、ブッシュ72を別途用意しなければならず、構成を複雑にしている。図6(b)に示された第2の脱落防止構造においては、固定ねじ83の圧入時に突起部81Bの先端を破損することが懸念される。さらに、固定穴81Aを含めて球状の突起部81Bを合成樹脂で成形する場合は、小突起では溶融樹脂が先端まで流動せず肉厚が不完全となる可能性が高いという問題がある。
【0013】
図6(c)に示された第3の脱落防止構造においては、ゴムリングを別途用意しなければならず、構成を複雑にしている点においては、第1の脱落防止構造と事情は同じである。
【0014】
本発明は、上述した課題を解決すべく、物品に形成される固定穴の内面に締結具の脱落を防止する成形突起を備えることにより、簡易な構成となる締結具の脱落防止構造を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を満たすため、以下のような締結具の脱落防止構造を発明した。
【0016】
(1) 物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、
前記締結具は、一端に締結部位を有している一方で、他端には締結力伝達部位を有しているとともに、前記締結部位と前記締結力伝達部位の間は非締結部位となっており、前記物品は、当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記締結部位と噛合可能な部分螺線成形の突起部分が1リード分備えられ、前記締結部位を前記突起部分に噛合させて通過し、当該突起部分を通過した後は、前記非締結部位は前記突起部分で遊嵌自在に保持されることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0017】
(2) 物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、前記締結具は、一端に締結部位を有している一方で、他端には締結力伝達部位を有しているとともに、前記締結部位と前記締結力伝達部位の間は非締結部位となっており、前記物品は、当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記締結部位と噛合可能な対向する一対の成形突起が備えられ、前記締結部位を前記成形突起に噛合させて通過し、当該成形突起を通過した後は、前記非締結部位は前記成形突起で遊嵌自在に保持されることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0018】
(3) 物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、前記締結具は、被締結体と締結する軸部と締結力伝達部位を有する頭部で構成されており、当該軸部の端部にねじ部が形成されており、当該頭部と当該ねじ部の間の非ねじ部は当該ねじ部の谷径より小さい直径で形成されており、前記物品は当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記ねじ部と噛合可能な対向する一対の傾斜円弧突起が形成されており、前記ねじ部を前記突起に噛合させて通過し、当該突起を通過した後は、前記非ねじ部は前記突起で遊嵌自在に保持されることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0019】
(4) (3)記載の締結具の脱落防止構造において、前記一対の傾斜円弧突起は前記ねじ部のリード角と同じに傾斜配置されていることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0020】
(5) (3)又は(4)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記締結具が入る固定穴及び当該固定穴に形成される一対の傾斜円弧突起は合成樹脂から成形されていることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0021】
(6) (5)記載の締結具の脱落防止構造において、前記合成樹脂はポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0022】
(7) (5)記載の締結具の脱落防止構造において、前記合成樹脂はポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0023】
(8) (3)から(7)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記締結具の軸部に入る防水パッキンリングと平座金を備えており、防水型コネクタは当該締結具が入る固定穴を有しており、当該固定穴が前記防水パッキンリングで密閉され、更に前記平座金を介して当該防水型コネクタが当該締結具で被締結体に取り着けられることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0024】
(9) (3)から(8)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記ねじ部を前記傾斜円弧突起に噛合させて通過した状態では、当該締結具の先端は当該物品に形成された固定穴の底面に突出しないことを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0025】
(10) (3)から(9)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記ねじ部は呼び径がM2からM3を含むことを特徴とする締結具の脱落防止構造。
【0026】
(1)記載の発明によれば、「物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、前記締結具は、一端に締結部位を有している一方で、他端には締結力伝達部位を有しているとともに、前記締結部位と前記締結力伝達部位の間は非締結部位となっており、前記物品は、当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記締結部位と噛合可能な部分螺線成形の突起部分が1リード分備えられ、前記締結部位を前記突起部分に噛合させて通過し、当該突起部分を通過した後は、前記非締結部位は前記突起部分で遊嵌自在に保持される」ことを特徴としてよい。
【0027】
(2)記載の発明によれば、「物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、前記締結具は、一端に締結部位を有している一方で、他端には締結力伝達部位を有しているとともに、前記締結部位と前記締結力伝達部位の間は非締結部位となっており、前記物品は、当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記締結部位と噛合可能な対向する一対の成形突起が備えられ、前記締結部位を前記成形突起に噛合させて通過し、当該突起を通過した後は、前記非締結部位は前記成形突起で遊嵌自在に保持される」ことを特徴としてよい。
【0028】
(3)記載の発明によれば、「物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、前記締結具は、被締結体と締結する軸部と締結力伝達部位を有する頭部で構成されており、当該軸部の端部にねじ部が形成されており、当該頭部と当該ねじ部の間の非ねじ部は当該ねじ部の谷径より小さい直径で形成されており、前記物品は当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記ねじ部と噛合可能な対向する一対の傾斜円弧突起が形成されており、前記ねじ部を前記突起に噛合させて通過し、当該突起を通過した後は、前記非ねじ部は前記突起で遊嵌自在に保持される」ことを特徴としてよい。
【0029】
物品を被締結体に取り着ける締結具は、締結用機械要素の「ねじ」又は「ボルト」であってよい。締結具の一端に有する「締結部位」はこれら「ねじ」又は「ボルト」の軸部に形成される「おねじ」であってよい。
【0030】
したがって、物品が締結具で取り着けられる被締結体は、この「おねじ」に適合する「めねじ」が形成されてよい。また、被締結体にこの「おねじ」が入る貫通穴を形成し、この「おねじ」に適合する「ナット」で物品を締結してもよい。
【0031】
被締結体が薄板の場合は、被締結体にボスを形成し、「めねじ」を形成してもよく、「ナット」をインサートしてもよい。さらに、薄板被締結体に「ナット」を溶接してもよく、板ナットを溶接してもよい。被締結体が柔軟材の場合は「めねじ」の山(ヘリサート)をインサートしてもよい。
【0032】
この「おねじ」及びは「めねじ」は平行ねじであってよく、ねじ面の形状は、三角ねじ、角ねじ、てい形ねじ、のこ歯ねじ、丸ねじであってよく、右ねじであっても左ねじであってもよい。
【0033】
締結力伝達部位を有する頭部は、「ボルト」にあっては六角ボルトや四角ボルト又は六角穴付きボルトであってよく、六角ボルトは「すりわり」を形成してもよく、十字穴を形成してもよい。これらに工具が回転力を与え、締結力が伝達される。
【0034】
締結力を付与する工具としては、「六角ボルト」にあっては、スパナ、めがねレンチ、ソケットレンチであってよく、「六角ボルト」にあっては、六角棒スパナであってよい。「すりわり付き六角ボルト」にあっては、すりわり付きねじ用ねじ回しであってよく、「十字穴付き六角ボルト」にあっては、十字ねじ回しであってよい。
【0035】
締結力伝達部位を有する頭部は、「ボルト」以外のねじ部品にあっては、なべねじ、皿ねじ、丸皿ねじ、トラスねじ、バインドねじ、丸ねじであってよく、この「ねじ」の頭部に「すりわり」を形成してもよく、十字穴を形成してもよい。
【0036】
締結力を付与する工具としては、これら「すりわり付きねじ」にあっては、すりわり付きねじ用ねじ回しであってよく、「十字穴付きねじ」にあっては、十字ねじ回しであってよい。
【0037】
締結部位となるねじ部と噛合可能な「部分螺線成形の突起部分」は、つる巻線状の「めねじ」の山であってよく、「部分螺線成形の突起部分」は、この固定穴の内部に「めねじ」の山が1リード分備えられているとしてよい。そして、この「部分螺線成形の突起部分」はねじ部のリード角と同じに傾斜配置されていてよい。「部分螺線成形の突起部分」は肉厚が十分に確保できる体積を有しているとしてよい。
【0038】
そして、これら「部分螺線成形の突起部分」にあっては、突起部分を挟む分割金型において溶融体が先端まで流動し肉厚が十分確保できることが期待できる。これら「部分螺線成形の突起部分」は、例えばロストワックス法により金属鋳物により成形可能と考えられるが、射出成形法による合成樹脂より成形されたほうが成形形状はより好適である。
【0039】
締結部位となるねじ部を前記突起部分に噛合させて通過し、当該突起部分を通過した後は、前記非締結部位となる非ねじ部はねじ部の谷径より小さい直径で形成されているので、この締結具は突起部分で遊嵌自在に保持されるとしてよい。
【0040】
締結部位となるねじ部と噛合可能な「対向する一対の成形突起」は、傾斜円弧突起であってよく、傾斜円弧突起は、この固定穴の内部に「めねじ」の山が円弧状に形成されているとしてよい。また、この一対の傾斜円弧突起はそれぞれが4分割円弧であってよい。そして、この一対の傾斜円弧突起はねじ部のリード角と同じに傾斜配置されていてよい。傾斜円弧突起は肉厚が十分に確保できる体積を有しているとしてよい。
【0041】
そして、これら傾斜円弧突起にあっては、突起を挟む分割金型において溶融体が先端まで流動し肉厚が十分確保できることが期待できる。これら傾斜円弧突起は、例えばロストワックス法により金属鋳物により成形可能と考えられるが、射出成形法による合成樹脂より成形されたほうが成形形状はより好適である。
【0042】
締結部位となるねじ部を前記傾斜円弧突起に噛合させて通過し、当該突起を通過した後は、前記非締結部位となる非ねじ部はねじ部の谷径より小さい直径で形成されているので、この締結具は傾斜円弧突起で遊嵌自在に保持されるとしてよい。なお、「遊嵌」とは、遊びをもった状態にはめることを意味しており、又は「はめたもの」と、「はめられたもの」の間に動くことのできる隙間があることを意味している。
【0043】
このような締結具の脱落防止構造において、物品を被締結体から締結を解除しても、締結具は、ねじ部が成形突起に阻止されて、遊嵌自在に保持されており、物品から容易に脱落しないという効果がある。
【0044】
このような好適な実施様態による締結具の脱落防止構造においては、構成が簡易であり、脱落防止用の突起は成形容易であるという利点がある。さらに、電気部品に多く使用される絶縁性の合成樹脂製品の物品にあっては好適な締結具の脱落防止構造である。
【0045】
(6)記載の発明によれば、「(5)記載の締結具の脱落防止構造において、前記合成樹脂はポリフェニレンスルフィドである」ことを特徴としてよい。
【0046】
(7)記載の発明によれば、「(5)記載の締結具の脱落防止構造において、前記合成樹脂はポリブチレンテレフタレートである」ことを特徴としてよい。
【0047】
好ましい様態の締結具の脱落防止構造において、締結具の脱落を防止するための一対の突起を有するこの物品は、例えば、電気部品にあってはポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、以下PPSと略称する)で成形されてよい。
【0048】
このPPSにあっては耐熱性、剛性を有し、寸法安定性、耐薬品、難燃性、電気絶縁性に優れる代表的なエンジニアリングプラスチックであり、ガラス繊維、カーボン繊維などを配合した複合体として用いられてもよい。
【0049】
好ましい様態の締結具の脱落防止構造において、締結具の脱落を防止するための一対の突起を有するこの物品は、例えば、電気部品にあってはポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、以下PBTと略称する)で成形されてもよい。
【0050】
このPBTにあっては高い融点と結晶化度をもち、吸水率や熱膨張係数が低いため、優れた寸法安定性を示す。又、電気絶縁性に優れ、吸湿による電気特性の変化が小さく、絶縁破壊電圧が高いという特徴をもっている。
【0051】
(8)記載の発明によれば、「(3)から(7)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記締結具の軸部に入る防水パッキンリングと平座金を備えており、防水型コネクタは当該締結具が入る固定穴を有しており、当該固定穴が前記防水パッキンリングで密閉され、更に前記平座金を介して当該防水型コネクタが当該締結具で被締結体に取り着けられる」ことを特徴としてよい。
【0052】
好ましい様態の締結具の脱落防止構造において、防水パッキンリングと平座金を備え、防水構造と締結具の脱落防止構造を兼ね備えた好適な防水型コネクタが提供できる。さらに、防水パッキンリングも締結具と共に物品に付随しており、防水パッキンリングの脱落を防止できるという効果も期待できる。
【0053】
(9)記載の発明によれば、「(3)から(8)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記ねじ部を前記傾斜円弧突起に噛合させて通過した状態では、当該締結具の先端は当該物品に形成された固定穴の底面に突出しない」ことを特徴としてよい。
【0054】
好ましい様態の締結具の脱落防止構造において、この発明による締結具を遊嵌自在に保持する物品を着座させたときに、すなわち、固定穴を有する物品の底面と締結具の底面が一致したときに、ねじ部が傾斜円弧突起に当接しないように、ねじ部の長さと固定穴における傾斜円弧突起の位置を予め決定しておけば、当該傾斜円弧突起の破損を防止できる。
【0055】
物品を締結から解除した後に、物品の取り扱いは様々であり、物品を衝撃的に載置する場合もあれば、ゆるやかに載置する場合もある。物品を衝撃的に載置する場合に、この実施様態は有効であるが、ゆるやかに載置する場合にあっても、大重量物品において傾斜円弧突起を破損させない好適な実施様態である。
【0056】
(10)記載の発明によれば、「(3)から(9)のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、前記ねじ部は呼び径がM2からM3を含む」ことを特徴としてよい。
【0057】
好ましい様態の締結具の脱落防止構造において、締結具は、脱落時に発見が困難な呼び径がM2からM3程度の小ねじを含んでおり、物品(部品)が微細化している電子機器にあっては特に有用な締結具の脱落防止構造である。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0059】
図1は、本発明における実施形態による締結具の脱落防止構造を示す断面図である。図1における実施形態において、符号1は物品、符号2は締結具(以下、固定ねじという)である。
【0060】
図1において、物品1は、固定ねじ2が入る固定穴11が形成されている。固定穴11は、固定ねじ2と噛合可能な対向する一対の成形突起1A及び1Bが形成されている。固定ねじ2は平座金3を介して物品1を被締結体に取り着ける。
【0061】
固定ねじ2は軸部21と頭部22で構成されており、軸部21は端部にねじ部2Aが形成されており、頭部22とねじ部2Aの間の非ねじ部2Bは、当該ねじ部2Aの谷径より小さい直径dで形成されている。
【0062】
図1において、ねじ部2Aを突起1A及び1Bに噛合させて通過すると、通過した後は、固定ねじ2は、非ねじ部2Bが突起1A及び1Bで遊嵌自在に保持される。図1において、物品1を倒立した状態においても、ねじ部2Aが突起1A及び1Bで阻止されることにより、固定ねじ2は物品1から容易に脱落しない。
【0063】
なお、固定穴11は、締結部位となるねじ部2Aと噛合可能な部分螺線成形の突起部分が1リード分備えられてもよい。例えば、三角ねじの山のねじ面が山脈状に1リード分備えられてもよい。
【0064】
図1の実施形態において、固定ねじ2として十字穴付きなべ小ねじを例示したが、固定ねじ2はボルトであってもよく、皿ねじであってもよい。さらに頭部22には十字穴の他にすりわりが形成されてもよく、六角穴が形成されてもよい。
【0065】
次に、固定穴11に形成されている突起1A及び1Bの詳細を図2により説明する。図2(a)は固定穴11の平面図、図2(b)は図2(a)のX−X断面図、図2(c)は図2(a)のY−Y断面図である。
【0066】
図2において、固定穴11の内径Dは、ねじ部2Aの外径d(図1参照)より大きく形成されている。そして、対向する一対の突起1A及び1Bは円弧状に形成されている。
【0067】
また、突起1A及び1Bにおける先端の内接径Dは、ねじ部2A(図1参照)の谷径より僅かに小さく、ねじ部2Aの外径d(図1参照)より大きく形成されている。
【0068】
この突起1A及び1Bは、ねじ部2Aと噛合可能なように傾斜配置されており、その傾斜角度θはねじ部2Aのリード角と同じになっている。この突起1A及び1Bは、ねじ部2Aに適合する「めねじ」を固定穴11に部分配置又は分割配置しているとしてもよい。
【0069】
図2の実施形態において、物品1は、例えばエンジニアリングプラスチックとして好適なPPSで組成されており、固定穴11と突起1A及び1Bが射出成形法により成形される。なお、物品1は、PBTで成形してもよい。
【0070】
突起1A及び1Bは肉厚が十分に確保できる体積を有しているとしてよく、これら突起1A及び1Bにあっては、突起1A及び1Bを挟む分割金型において溶融体が先端まで流動し肉厚が十分確保できることが期待できる。そして、PPSを使用すれば突起1A及び1Bは十分な強度が得られることが期待できる。又、PPSはPBTであってもよい。
【0071】
次に、本発明による締結具の脱落防止構造を電気部品に適用した例を、図3の斜視分解組立図により説明する。図3において、符号4は防水パッキンリング、符号5は防水型コネクタであり、その他の符号は図1と同じものである。なお、図3の適用例の説明において、図1の実施形態と重複する構成と作用については、説明を割愛する。
【0072】
図3において、防水型コネクタ5は、例えばサーボモータの駆動端子に接続されるプラグであり、PPS又はPBTで成形されるプラグハウジング5Aを有し、底面にソケットコンタクトを有する端子台5Bを突出している。
【0073】
プラグハウジング5Aは上面から座ぐり穴付きの固定穴11が2箇所設けらている。固定穴11には前述の突起1A及び1Bがそれぞれ形成されている。図3において、固定ねじ2の軸部21に入る防水パッキンリング4と平座金3を備えている。
【0074】
図4は図3の組立状態図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図であり、図4(a)は固定穴11を部分断面にしている。図4に示されるように、固定穴11の座ぐり穴が防水パッキンリング4で密閉され、更に平座金3を介して防水型コネクタ5が固定ねじ2で被締結体となるサーボモータに取り着けられる。
【0075】
図3及び図4で示された本発明の適用例において、防水パッキンリング4と平座金3を備えており、防水構造と締結具の脱落防止構造を兼ね備えた好適な防水型コネクタが提供できる。さらに、防水パッキンリング4も固定ねじ2と共に防水型コネクタ5に付随しており、防水パッキンリング4の脱落を防止できるという効果も期待できる。
【0076】
図5は、サーボモータから取り外した防水型コネクタ5を、例えば作業テーブル等の平面状に載置した状態図である。図5において、固定ねじ2は上方に突出した状態になっている。
【0077】
図5の実施形態において、防水型コネクタ5の底面から突起1A及び1Bまでの距離Lは、ねじ部2Aの長さLより大きくなっている。したがって、防水型コネクタ5を平面状に載置した状態において、ねじ部2Aは突起1A及び1Bに当接することはなく、突起1A及び1Bの破損を免れる。
【0078】
本発明による実施製品の固定ねじは、例えば、呼び径がM2からM3の十字穴付きなべ子ねじである。このような小ねじが例えば装置内又は床に脱落したときは、捜すのが特に困難であり、この発明は、物品(部品)が微細化している電子機器にあっては特に有用な締結具の脱落防止構造である。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、締結具は、軸部と頭部で構成されており、軸部の端部にねじ部が形成されており、頭部とねじ部の間の非ねじ部はねじ部の谷径より小さい直径で形成されている。物品は締結具が入る固定穴が形成されており、固定穴はねじ部と噛合可能な対向する一対の傾斜円弧突起が形成されている。ねじ部を一対の突起に噛合させて通過するとねじ部は突起で遊嵌自在に保持される。
【0080】
このような締結具の脱落防止構造においては、物品を倒立しても、締結具はねじ部が一対の突起に阻止されて容易に脱落することはないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における実施形態による締結具の脱落防止構造を示す断面図である。
【図2】本発明における固定穴に形成されている突起の詳細を示す図である。
【図3】本発明における締結具の脱落防止構造を電気部品に適用した例を示す斜視分解組立図である。
【図4】本発明における実施形態による締結具の脱落防止構造の組立状態図である。
【図5】本発明における物品を平面上に載置した状態図である。
【図6】従来技術による締結具の脱落防止構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 物品
1A・1B 突起(成形突起、傾斜円弧突起)
2 固定ねじ(締結具)
2A ねじ部
2B 非ねじ部
3 平座金
4 防水パッキンリング
5 防水型コネクタ
5A プラグハウジング
5B 端子台
11 固定穴
21 軸部
22 頭部

Claims (10)

  1. 物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、
    前記締結具は、一端に締結部位を有している一方で、他端には締結力伝達部位を有しているとともに、前記締結部位と前記締結力伝達部位の間は非締結部位となっており、
    前記物品は、当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記締結部位と噛合可能な部分螺線成形の突起部分が1リード分備えられ、
    前記締結部位を前記突起部分に噛合させて通過し、当該突起部分を通過した後は、前記非締結部位は前記突起部分で遊嵌自在に保持されることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  2. 物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、
    前記締結具は、一端に締結部位を有している一方で、他端には締結力伝達部位を有しているとともに、前記締結部位と前記締結力伝達部位の間は非締結部位となっており、
    前記物品は、当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記締結部位と噛合可能な対向する一対の成形突起が備えられ、
    前記締結部位を前記成形突起に噛合させて通過し、当該突起を通過した後は、前記非締結部位は前記成形突起で遊嵌自在に保持されることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  3. 物品を被締結体に取り着ける締結具の脱落防止構造であって、
    前記締結具は、被締結体と締結する軸部と締結力伝達部位を有する頭部で構成されており、当該軸部の端部にねじ部が形成されており、当該頭部と当該ねじ部の間の非ねじ部は当該ねじ部の谷径より小さい直径で形成されており、
    前記物品は当該締結具が入る固定穴が形成されており、当該固定穴は前記ねじ部と噛合可能な対向する一対の傾斜円弧突起が形成されており、
    前記ねじ部を前記突起に噛合させて通過し、当該突起を通過した後は、前記非ねじ部は前記突起で遊嵌自在に保持されることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  4. 請求項3記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記一対の傾斜円弧突起は前記ねじ部のリード角と同じに傾斜配置されていることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  5. 請求項3又は4のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記締結具が入る固定穴及び当該固定穴に形成される一対の傾斜円弧突起は合成樹脂から成形されていることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  6. 請求項5記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記合成樹脂はポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  7. 請求項5記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記合成樹脂はポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  8. 請求項3から7のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記締結具の軸部に入る防水パッキンリングと平座金を備えており、
    防水型コネクタは当該締結具が入る固定穴を有しており、当該固定穴が前記防水パッキンリングで密閉され、更に前記平座金を介して当該防水型コネクタが当該締結具で被締結体に取り着けられることを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  9. 請求項3から8のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記ねじ部を前記傾斜円弧突起に噛合させて通過した状態では、当該締結具の先端は当該物品に形成された固定穴の底面に突出しないことを特徴とする締結具の脱落防止構造。
  10. 請求項3から9のいずれかに記載の締結具の脱落防止構造において、
    前記ねじ部は呼び径がM2からM3を含むことを特徴とする締結具の脱落防止構造。
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