JP2004339484A - 樹脂結晶化促進剤及び樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の微細炭素繊維からなる結晶化促進剤によれば、分子鎖が不規則で結晶化しないか、あるいは結晶化度が低く、従来の結晶化促進剤では結晶化が困難な非結晶性樹脂についても結晶化できる。前記結晶化促進剤により、成形した際の強度、摺動性、フィラーによる補強効果が高められた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
無機系結晶化促進剤としては、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、フッ化亜鉛、フッ化カドミウム、二酸化チタン、カオリン、アルミナ、非晶質シリカアルミナ粒子が知られている。
2.微細炭素繊維が、気相法炭素繊維である前記1に記載の樹脂結晶化促進剤。
3.気相法炭素繊維が、ホウ素を0.001〜5質量%含有するものである前記2に記載の樹脂結晶化促進剤。
4.前記1乃至3のいずれかに記載の樹脂結晶化促進剤と樹脂とを含有する樹脂組成物。
5.樹脂が、熱可塑性樹脂である前記4記載の樹脂組成物。
6.熱可塑性樹脂が、非結晶性熱可塑性樹脂である前記5に記載の樹脂組成物。
7.熱可塑性樹脂が、芳香族基を有する構造単位を繰り返し構造として含む重合体を含む樹脂である前記5または6に記載の樹脂組成物。
8.熱可塑性樹脂が、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンのいずれか、あるいはその混合物である前記5に記載の樹脂組成物。
9.示差走査熱量分析(DSC)測定において、ガラス転移点以外に質量変化を伴わない吸発熱ピークを示す前記4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.示差走査熱量分析(DSC)測定において、前記1乃至3のいずれかに記載の樹脂結晶化促進剤を含まない樹脂組成物に比較し、融解あるいは結晶化の吸発熱ピークが大きいか、あるいは高温側にシフトしている前記4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
11.X線回折法の測定において、樹脂に由来するピークと樹脂の秩序化に由来するピークを示す前記4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
12.X線回折法の測定において、樹脂の秩序化に由来するピークの回折角度(2θ)のバンドの半値幅が5度以内である前記4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.樹脂結晶化促進剤を0.1〜80質量%含有する前記4乃至12のいずれかに記載の樹脂組成物。
14.前記1または2に記載の結晶化促進剤と樹脂とを混練後、ガラス転移点以上の温度にてアニール処理を行うことを特徴とする結晶化及び秩序構造化された構造を含有する樹脂組成物の製造方法。
15.前記4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた導電性材料。
16.前記4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた熱伝導性材料。
17.前記4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた摺動性材料。
18.前記4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた機構部品。
溶融混合の方法は特に限定されないが、例えば、二軸押出機、プラネタリーギィアシェイカー、コーニーダーなどの変形スクリューバレル等を用いる方法がある。
結晶化が促進される結晶性樹脂については、特に制限は無いが、芳香族基を有する構造単位を繰り返し構造として含む重合体を含む樹脂である結晶性樹脂が好ましい。芳香族基としては、複素環、ベンゼン環、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環を含むものであり、例えば、ピリジル、キナゾリニル、アニリノ、フェニル、アルキル置換フェニル、ナフチル、ビフェニリルの一価基、ピリジンジイル、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、アセナフチレンの二価基が挙げられる。好ましくは、フェニル、アルキル置換フェニル、フェニレン、ビフェニレンである。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド等の通常の条件下では結晶化しにくい樹脂についても、特に本発明による微細炭素繊維からなる結晶化促進剤は有効に働く。結晶化速度が制御することにより、機械的強度、耐疲労性、耐薬品性、摺動性の特徴を有効に引き出すことができる。
なお、非結晶性樹脂であっても芳香族基を有する構造単位を繰り返し構造として含む重合体を有さないメタクリル樹脂については、上記と同様に成形温度以下でアニール処理を行ってもガラス転移点(Tg)より高温側にはピークは見られない。
平均分子量20,000、質量平均分子量32,000のポリカーボネート(PC;帝人化成製品 AD5503)を、真空条件下(20Torr)にて120℃で24時間乾燥した。ラボプラストミルにて、ポリカーボネートと2800℃にて熱処理をした平均繊維径0.15μm、アスペクト比70の気相法炭素繊維(VGCF;登録商標、昭和電工製)とを95:5(質量比)で混練りし、100mm×100mm×2mmtの平板を成形した。
本平板を180℃、200℃、220℃の各温度で2時間のアニール処理を行い、直ちに、水浴に浸した。
これら平板から試験片を作成し、示差走査熱量計(DSC;SSC5200 セイコーインスツルメンツ社製;昇温速度10deg/min)を用いて、示差熱分析を行った。その結果を図2に示す。約150℃にTg、200〜250℃にTmに由来する吸熱ピークが観察された。
また、上記試験片のX線回折装置(RAD-B,理学電機社製)で測定したX線回折干渉曲線を図3に示す。回折角度(2θ)12〜24度にポリカーボネートの無秩序構造に、26〜28度にはVGCF(登録商標)により秩序化した構造に由来するピークが共存することが観察された。
また、200℃でアニール処理を行った試料について、熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率及び動摩擦係数を以下の方法で測定した結果を表1に示す。
ASTM C-177または熱線法準じて測定した。
ASTM D-790に準じて測定した。
ASTM D-790準じて測定した。
円筒端面間連続すべり摩耗試験(荷重2kgf/cm2;相手材S45C鋼)をJIS K 7218に準じて行った。
実施例1において、160℃、240℃の各温度2時間のアニール処理を行い、同様にDSC測定、X線回折を測定した。それらの結果を実施例1の結果と併せて、図2及び図3(各々最上の曲線及び最下の曲線)に示した。ポリカーボネートの結晶化による新たなピークは見られなかった。
熱可塑性ポリイミド(PI;三井化学製品 オーラム400)95質量%に、5質量%VGCF(登録商標)を添加して溶融混合してサンプルを調製した。これをDSCで窒素気流下(50ml毎分)400℃で10分保持したあと、毎分5度の冷却速度条件下で測定したところ、結晶化ピーク(Tc)が358℃であることが観察された。また、DSCで370℃で保持したときの等温結晶化測定においては結晶化ピークまでの時間が195秒と観測された。
VGCF(登録商標)を添加しない熱可塑性ポリイミドのみ(比較例2)についても、同様にDSC測定を行ったところ結晶化ピーク(Tc)は356℃、結晶化ピークまでの時間は256秒であった。
また、樹脂複合材としての基本特性(熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率及び動摩擦係数)を実施例1と同様に測定した結果を表1に示す。
実施例1のVGCF(登録商標)に代えて、ホウ素を0.1質量%含有するVGCF(登録商標)を用い、200℃、2時間のアニール処理を行った。同様に本試料のDSC測定、X線回折を測定したところ実施例1と同様のピークが観察された。
実施例1のVGCF(登録商標)に代えて、1200℃にて熱処理をしたものを用い、200℃、2時間のアニール処理を行い、同様に本試料のDSC測定、X線回折測定を行った。それらの結果を図4及び図5に示す。なお、比較のため2800℃にて熱処理をした実施例1のアニール処理した試料についての測定結果も図4及び図5に併せて示した。
実施例1でVGCF(登録商標)を用いないこと以外は、実施例1と全く同様にして平板を作成した。この平板試料について、160℃、180℃、200℃、220℃、240℃の各温度で2時間のアニール処理を行い、同様にDSC測定、X線回折測定を行った。それらの結果を図6及び図7に示した。ポリカーボネートの結晶化による新たなピークは見られなかった。また、熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率及び動摩擦係数を実施例1と同様に測定した結果を表1に示す。
ポリメチルメタクリレート(PMMA;旭化成製品 60N、数平均分子量76,000、質量平均分子量150,000)を真空条件下(20Torr)にて80℃で24時間乾燥した。ラボプラストミルにて、ポリメチルメタクリレートと2800℃にて熱処理をした繊維径0.15μm、アスペクト比70の気相法炭素繊維(VGCF;登録商標)とを95:5(質量比)で混練し、100mm×100mm×2mmtの平板を成形した。
本平板を150℃、2時間のアニール処理を行い、直ちに、水浴に浸した。
この平板から試験片を作成し、示差走査熱量計(DSC;SSC 5200 セイコーインスツルメンツ社製;昇温速度10deg/min)を用いて、示差熱分析を行った(比較例4)。VGCF(登録商標)を添加しないポリメチルメタクリレートのみ(比較例5)についても、同様にDSC測定を行った。その結果、DSC測定では約100℃にTgが観測されたが、吸熱ピークは全く観察されなかった。また、熱伝導率、曲げ強度、曲げ弾性率及び動摩擦係数を実施例1と同様に測定した結果を表1に示す。
Claims (18)
- 繊維径0.001μm〜5μm、アスペクト比5〜15,000の微細炭素繊維からなる樹脂結晶化促進剤。
- 微細炭素繊維が、気相法炭素繊維である請求項1に記載の樹脂結晶化促進剤。
- 気相法炭素繊維が、ホウ素を0.001〜5質量%含有するものである請求項2に記載の樹脂結晶化促進剤。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂結晶化促進剤と樹脂とを含有する樹脂組成物。
- 樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項4記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、非結晶性熱可塑性樹脂である請求項5に記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、芳香族基を有する構造単位を繰り返し構造として含む重合体を含む樹脂である請求項5に記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂が、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンのいずれか、あるいはその混合物である請求項5に記載の樹脂組成物。
- 示差走査熱量分析(DSC)測定において、ガラス転移点以外に質量変化を伴わない吸発熱ピークを示す請求項4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 示差走査熱量分析(DSC)測定において、請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂結晶化促進剤を含まない樹脂組成物に比較し、融解あるいは結晶化の吸発熱ピークが大きいか、あるいは高温側にシフトしている請求項4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- X線回折法の測定において、樹脂に由来するピークと樹脂の秩序化に由来するピークを示す請求項4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- X線回折法の測定において、樹脂の秩序化に由来するピークの回折角度(2θ)のバンドの半値幅が5度以内である請求項4乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 樹脂結晶化促進剤を0.1〜80質量%含有する請求項4乃至12のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の結晶化促進剤と樹脂とを混練後、ガラス転移点以上の温度にてアニール処理を行うことを特徴とする結晶化及び秩序構造化された構造を含有する樹脂組成物の製造方法。
- 請求項4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた導電性材料。
- 請求項4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた熱伝導性材料。
- 請求項4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた摺動性材料。
- 請求項4乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた機構部品。
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