JP2004339031A - 非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品 - Google Patents

非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品 Download PDF

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Yoshio Kobayashi
美穂 小林
Atsushi Inuzuka
敦 犬塚
Kobo Motomitsu
弘法 元滿
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

【課題】従来、高い絶縁抵抗を得るために非磁性フェライト中の酸化鉄の組成を低減すると、ZnO,CuOの析出量が増大し、還元雰囲気にさらされた場合に低抵抗相が析出し、絶縁不良の危険性が増大する。
【解決手段】FeとCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンおよび酸化モリブデンが添加されている非磁性フェライトであり、TiOおよびMoOの添加により、低温焼結性に優れ強度が高く、CuOやZnOの析出が抑制され、還元雰囲気にさらされた場合においても絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよび積層電子部品を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種電子機器に用いられる非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、FeとZnOのみを含むZnフェライトは非磁性フェライト材料であり、積層トランスあるいは磁気ヘッドの構成材料としてNi−Znフェライトなどと組み合わせて用いられてきた。
【0003】
さらに、このZnフェライトに数10mol%以下のCuOを含有させることによって、非磁性の特性を備えたまま900℃前後までの低温焼成化が可能であることは良く知られている。このような低温焼成化を図ることによって、Ag,Cuなどの導電率の高い電極材料との同時焼結を可能とすることができ、フェライトグリーンシートあるいはフェライトペーストなどと組み合わせることによって、インダクタンス部品あるいはノイズ対策部品などの小型で実装性に優れた積層電子部品を構成することが行われている。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−77022号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような用途で用いられる場合、用いられる磁性層および非磁性層にはAgなどの導体に接触する構造となることから高い絶縁抵抗が要求される。この高い絶縁抵抗を得るためには非磁性フェライト中のFeの組成比を低減する必要がある。このFeの組成比を低減していくとZnO,CuOの結晶粒界への析出量が増大してくる傾向がある。特に還元雰囲気中にさらされた場合には結晶粒界に析出したZnO,CuOが還元されて低抵抗相が析出することが問題であり、この材料を用いて作製した積層電子部品の内層部で絶縁不良が生じる危険性が増大するという課題があった。
【0007】
本発明の目的はZnO,CuOの結晶粒界への析出を抑制し、特性の向上および結晶構造の安定化を図ることができる絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の発明は、FeとCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンおよび酸化モリブデンを添加した非磁性フェライトであり、酸化チタンおよび酸化モリブデンの添加により、低温焼結性に優れ、CuOやZnOの析出が抑制され、還元雰囲気にさらされた場合においても強度が高く、絶縁抵抗の高い非磁性フェライトが得られる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、酸化チタンがTiO,Ti,Ti,TiOのうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライトであり、耐還元雰囲気中においても絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、酸化モリブデンがMo,MoO,Mo,MoOのうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライトであり、低温焼結性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の発明は、酸化チタンをTiO換算で0.5〜7.0wt%、酸化モリブデンをMoO換算で0.1〜1.0wt%添加した請求項1に記載の非磁性フェライトであり、低温焼結性、絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の発明は、フェライト組成がFe:41〜49モル%、CuO:6〜14モル%、残りがZnOと酸化チタンおよび酸化モリブデンであり、絶縁抵抗が1E+9Ω・cm以上である請求項1に記載の非磁性フェライトであり、低温焼結性、絶縁性に優れた非磁性フェライトを実現することができる。
【0013】
本発明の請求項6に記載の発明は、磁性絶縁体層と、磁性絶縁体層に挟まれた非磁性絶縁体層と、並列する2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルが磁性絶縁層と非磁性絶縁層の境界もしくは境界に接して内蔵した構造を有する積層電子部品であって、前記非磁性絶縁体層が請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトを用いて形成された積層電子部品であり、小型・高性能で生産性に優れた積層電子部品を実現することができる。
【0014】
本発明の請求項7に記載の発明は、磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したコモンモードチョークコイルとしての積層電子部品であり、小型・高性能で生産性に優れたコモンモードチョークコイルを実現することができる。
【0015】
本発明の請求項8に記載の発明は、磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したチップトランスとしての積層電子部品であり、小型・高性能で生産性に優れたチップトランスを実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品について実施の形態および図面を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1および図1により請求項1に記載の発明を説明する。
【0018】
図1は本発明の非磁性フェライトと比較品の焼成温度に対する焼成収縮率の関係を示す特性図である。
【0019】
本発明の非磁性フェライトの出発原料である市販のFe粉とCuO粉とZnO粉を46:10:44mol%の組成比で配合し、これに純水を適量加えてボールミルを用いて混合した後120℃で乾燥して混合粉を得る。この混合粉を880℃で仮焼した後、遊星ボールミルを用いて最大粒径が8μm以下になるまで粉砕してフェライト仮焼粉を得る。このフェライト仮焼粉にTiOの粉末を2.5wt%、MoOの粉末を0.4wt%を添加物として加え、さらにバインダーとしてブチラール樹脂(PVB)、可塑剤(DBP)および溶媒である酢酸ブチルを適量加えてボールミルを用いて十分に分散させてセラミックスラリーを得る。
【0020】
次に、このセラミックスラリーをドクターブレード法によりシート状に成形して厚み約50μmのセラミックグリーンシートを得る。このセラミックグリーンシートを5cm□のシートに切断し、このシートを用いて約1mmの厚みになるように複数枚重ねて積層して非磁性フェライトの積層成形品を得る。この積層成形品を所望のサイズに個片化したものを850〜930℃の温度変化において焼成時間−2Hrの条件で焼成して非磁性フェライトを得た(本発明品1)。
【0021】
また、比較のために本発明品と同様なプロセスを経てフェライト仮焼粉のみによる非磁性フェライトを作製した(比較品1)。
【0022】
さらに、比較のために本発明品と同様なプロセスを経てフェライト仮焼粉にTiOの粉末のみを加えた非磁性フェライトを作製した(比較品2)。
【0023】
このようにして得られた非磁性フェライトの焼成収縮率の焼成温度依存性を図1に示す。
【0024】
また、870℃−2時間の焼成条件で得られた各種非磁性フェライトの配合組成と特性との関係を(表1)に示す。
【0025】
【表1】
Figure 2004339031
【0026】
図1および(表1)の結果より、比較品1はCuOが析出しているものの870℃焼成で焼成収縮率が15%以上となり十分に焼結しているが、TiOを加えた比較品2では、CuOの析出はしていないが十分に焼結させるためには930℃での焼成が必要となっている。これに対して、本発明品ではTiOを加えたことによりCuOもしくはZnOは析出しておらず、さらにMoOを加えたことにより870℃で十分に焼結していることがわかる。これはFe組成が少なくなったことによりCuOもしくはZnOの析出に対して、TiOの添加がFeの代わりにCu2+もしくはZn2+をスピネル結晶中に固溶させることができるものと考えられる。しかしながら一方ではTiOの添加が若干非磁性フェライトの焼結性を阻害しており、これに対してMoOが焼結助剤として作用して非磁性フェライトの焼結温度を低下させる効果を有しているものと思われる。このような相乗効果により本発明品は高い絶縁抵抗と低温焼結性を実現する非磁性フェライトを実現することができる。
【0027】
これらのことから、本発明品は非磁性の絶縁材料としてAgと同時焼成が可能であり、局所的に還元雰囲気にさらされても低抵抗相の析出が防止できるとともに従来より低い温度で焼結することができるという優れた効果を有しており、この非磁性フェライトを用いることにより、生産効率が優れ、かつAgとの同時焼成時の非磁性フェライトへのAgの拡散が少なくなり、低い直流抵抗を有する損失の小さいコイルとして同時焼成できることを示唆している。
【0028】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2により請求項2〜5に記載の発明を説明する。
【0029】
実施の形態1と同様なプロセスを経て870℃−2時間の焼成条件で焼成した(表2)に示した組成の非磁性フェライトを得た。
【0030】
この得られた非磁性フェライトの組成と特性の相関関係を比較して(表2)に示す。
【0031】
【表2】
Figure 2004339031
【0032】
(表2)の結果より、比較品はCuOやZnOの析出が認められるか、もしくはこれらの析出は認められないが焼成収縮率が10%未満となり十分に焼結しておらず、絶縁抵抗も1E+09Ω・cm未満に低下してしまう。
【0033】
これに対して、本発明品では焼成収縮率は15%前後と十分焼結しており、機械強度も高く、絶縁抵抗は1E+09Ω・cm以上であり、かつCuOやZnOの析出は認められない非磁性フェライトが得られている。この非磁性フェライトは非磁性絶縁材料としてAgと同時焼成が可能であり、還元雰囲気にさらされても低抵抗相の析出が防止されることが分かった。
【0034】
なお、CuOもしくはZnOの析出を防止するためには、Fe組成の不足を補う以上のTiOの添加は必要なく、むしろ過剰添加は焼結の阻害となるため、TiOの添加量は、Fe組成により0.5〜7wt%の範囲から最適な量を選択する。さらに好ましくは、FeとTiO総量が48mol%以上50mol%以下であることが望ましい。この添加物として用いる酸化チタンはTiOである必要はなく、TiO,Ti,Tiのうち少なくともいずれか一つを用いることによってもTiOと同様の効果を有していることを確認している。また前記酸化チタンはTiO換算で0.5〜7.0wt%が好ましい。
【0035】
また、MoOの0.1wt%以上の添加で焼結助剤として作用するが、1.2wt%以上を添加するとMoやMoOの析出が起こり、析出したMoOは焼成助剤としての効果を有していないことからMoOの組成は1.0wt%以下が望ましい。この添加物として用いる酸化モリブデンはMoOである必要はなくMo,MoO,Mo,MoOのうち少なくともいずれか一つを用いることによってもMoOと同様の効果を有していることを確認している。また前記酸化モリブデンはMoO換算で0.1〜1.0wt%が好ましい。
【0036】
なお、Fe組成が50mol%以上ではFe2+とFe3+の共存状態を招き、この価数の異なるイオン間で電子の移動が起こり、絶縁抵抗の低下の原因となり、Fe組成が40mol%以下では多くのTiOの添加が必要となりTiOが焼結を阻害するためにAgと同時焼成可能な焼成温度で焼結できなくなる。そのため、Fe組成は41〜49mol%が好ましい。
【0037】
また、CuO組成が6mol%未満ではTiOが無添加であってもAgと同時焼成できる温度では十分に焼結が進行せず、またCuO組成が14mol%以上(14mol%を含まない)では磁性を示すようになることからCuOの組成比は6〜14mol%であることが望ましい。
【0038】
なお、前記のZnO,CuOの析出の観察はX線回折装置を用いた構造解析により評価した。また絶縁抵抗は対向する電極で板状の非磁性フェライトをはさみ100Vの電圧を加えて測定した。焼成収縮率は、成形品と焼成品の寸法を測り焼成前後での寸法変化から算出した。
【0039】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3および図2〜図5により請求項6,7,8に記載の発明を説明する。
【0040】
図2(a)は本発明の積層電子部品の一例であるコモンモードチョークコイルの積層成型品の構造図であり、図2(b)はその等価回路を示す回路図である。また図3はその斜視図であり、図4(a)〜図4(d)は構造断面図である。また図5(a)は本発明の積層電子部品の他の一例である積層トランスの積層構造図であり、図5(b)はその等価回路を示す回路図である。
【0041】
次に、積層電子部品の一例であるコモンモードチョークコイルの積層構造について製造方法を説明しながら詳細に説明する。
【0042】
まず始めに、非磁性フェライトの出発原料である酸化鉄と酸化亜鉛と酸化銅を用いてFe:ZnO:CuO=46:44:10mol%の組成比になるように配合し、これに純水を適量加えてボールミルを用いて混合した後、120℃で乾燥させて混合粉を得る。
【0043】
この混合粉を880℃で仮焼した後、遊星ボールミルを用いて最大粒径が8μm以下になるまで粉砕してフェライト仮焼粉を得る。このフェライト仮焼粉にTiOの粉末を2.5wt%、MoOの粉末を0.4wt%加え、さらにブチラール樹脂と酢酸ブチルを適量加えてボールミルを用いて十分に分散させてセラミックスラリーを得る。このセラミックスラリーをドクターブレード法により約50μmの非磁性絶縁体層となる非磁性フェライト用グリーンシート1を得た。
【0044】
一方、磁性フェライトの出発原料である酸化鉄と酸化ニッケルと酸化亜鉛と酸化銅をFe:NiO:ZnO:CuO=48:21:21:10mol%の組成比になるよう配合し、前記非磁性フェライト用グリーンシート1と同様なプロセスを経て磁性絶縁体層となる磁性フェライト用グリーンシート3を得た。それぞれのグリーンシート1,3を多数個取りとするために5cm□に切断した。
【0045】
次に、5cm□に切断された磁性フェライト用グリーンシート3を複数枚積層して厚み400μmとし、さらにこの上にAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する2本の電極ラインから構成される下層のコイルパターン2−1,2−2として形成した。
【0046】
その後、この上に層間のコイルパターン2−1,2−2を接続するビア5を形成した非磁性フェライト用グリーンシート1を積層した後、この非磁性フェライト用グリーンシート1も上にAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する2本の電極ラインから構成される上層のコイルパターン2−1,2−2として印刷し、非磁性フェライト用グリーンシート1のビア5を介して接続された2本の螺旋状のコイルを形成した。
【0047】
この2本の螺旋状のコイルはコイルパターン2−1と2−2が磁性フェライト用グリーンシート3の上面にほぼ並行な渦巻き状に設けられるとともに、さらに非磁性フェライト用グリーンシート1を挟むようにして非磁性フェライト用グリーンシート1の上層に設けられたコイルパターン2−1と2−2は非磁性フェライト用グリーンシート1に設けられたビア5を介して接続されてほぼ並行な渦巻き状に設けられた構成となっている。
【0048】
次に、この上に磁性フェライト用グリーンシート3を複数枚積層して厚み約1mmの積層成形品を得た。
【0049】
その後、この積層成形品を128個のコモンモードチョークコイルの個片に切断した後880℃−2時間の焼成条件で焼成し、その後端面部に表出した引出電極部2−1a,2−1b,2−2a,2−2bにAgあるいはCuの端面電極4を厚膜プロセスあるいはめっきプロセスにより形成することにより図2に示すような1.2×1.0×0.8mmの128個のコモンモードチョークコイルを得ることができた(本発明品9)。
【0050】
この得られたコモンモードチョークコイルの電気的な特性は結合係数が0.9以上、コモンモードインピーダンスが90Ω以上であった。
【0051】
以上説明してきた本発明によるコモンモードチョークコイルは内蔵する2つのコイルを形成するコイルパターン2−1,2−2の間の少なくとも一部に非磁性フェライト1が介在し、この非磁性フェライト1がコイル近傍に周回する磁束を断ち切り、2つのコイル間の磁気的な結合を強化する作用を有する構造を実現している。
【0052】
その結果、このコモンモードチョークコイルは結合係数が大きくなり、コモンモードノイズフィルターとしてコモンモードノイズを効率良く除去することが可能となる。
【0053】
また、2つのコイル間の絶縁不良はノイズ以外に伝送すべき信号レベルを低下させてしまうために二つのコイル間の絶縁抵抗は少なくとも1E+09Ω以上が必要であることが分かった。
【0054】
また、非磁性フェライト用グリーンシート1は薄いほど結合係数の大きなコモンモードチョークコイルが得られるが、特に厚さ50μm以下が望ましく、結合係数が0.9以上の優れたコモンモードチョークコイルを得ることができた。
【0055】
以上の結果より、より高周波帯域で優れた性能を発揮することができる小型のコモンモードチョークコイルを実現することができる。
【0056】
また、比較のためにTiOとMoOを添加しない非磁性フェライトを用いて同様なプロセスを経て得たコモンモードチョークコイル(比較品18)を作製した。
【0057】
得られたコモンモードチョークコイルの特性を比較して(表3)に示す。
【0058】
【表3】
Figure 2004339031
【0059】
(表3)の結果より、比較品18の絶縁不良率が6.45%であったのに対して、本発明品9では絶縁不良率が0%であることがわかる。なおこの絶縁不良率は全数128個に対して、平行ライン間に15Vの電圧を加えたときの絶縁抵抗が1E+09Ω未満の積層電子部品の比を算出して表した。
【0060】
以上の結果より、酸化チタンの添加が脱脂後の残留炭素や大量焼成などに起因する焼成工程における局所的な還元雰囲気の発生にもかかわらず、非磁性フェライト中のCuOもしくはZnOの析出を抑制することにより還元雰囲気中にて発生するCuOもしくはZnOの低抵抗相の出現を防止して二つのコイル間の絶縁抵抗を確保し、量産性の安定化に有効であることを示唆している。
【0061】
さらに、酸化チタンの添加によって低温焼成を阻害する傾向にあるのを酸化モリブデンの添加により低温焼結性を高めることの相乗効果により優れた非磁性フェライトを実現していることからAgなどの低抵抗電極材料と同時焼成することが可能となり、小型高性能な積層電子部品を実現することができる。
【0062】
また、コモンモードチョークコイルのコイルパターン2−1,2−2は所望するインダクタンス特性やクロストーク特性によってさまざまな形態を取ることができるが、非磁性フェライト1が2つのコイルで形成するコイルパターン2−1,2−2に接触している限り、いずれの場合も同様な効果を得ることができ、特に2つのコイルパターン2−1,2−2間が狭くなるほど効果は大きくなる。
【0063】
また、図4(a)〜(d)は2ターンの螺旋状コイルを有する別のコモンモードチョークコイルの断面構造図を示しており、これらのコイルパターン2−1,2−2は各種グリーンシート1,3の積層の順番やグリーンシートの圧縮特性によって磁性フェライト用グリーンシート3と非磁性フェライト用グリーンシート1の境界でどちらかあるいはそれらの中間に埋蔵されうるが、いずれの場合も優れた特性のコモンモードチョークコイルが得られた。
【0064】
次に、図5(a)、図5(b)を用いて本発明の積層電子部品の他の一例である積層型のチップトランスの例を示す。
【0065】
図5(a)に示す本発明による積層型のチップトランスは前記コモンモードチョークコイルと同様の組成を有する磁性絶縁体層となる磁性フェライト30で挟まれた一次コイル21(引出電極部21a、引出電極部21b)と2次コイル22(引出電極部22a、引出電極部22b)を形成するコイル間の少なくとも一部に前記コモンモードチョークコイルと同様の組成を有する非磁性絶縁体層となる非磁性フェライト10を配置し、この非磁性フェライト10のビア5を介して接続された2本のAgを主成分とする線幅30μm、線間幅25μmの並列する電極ラインから構成される螺旋状の一次コイル21、二次コイル22から形成され、880℃−2時間の焼成条件にて得ることができる。
【0066】
このような構成とすることにより、それぞれのコイルの近傍に周回する磁束を断ち切り、2つのコイル間21,22の磁気的な結合を強化することができる。
【0067】
その結果、積層型のチップトランスの結合係数が大きくなり、トランスとして高効率なエネルギーの授受が可能となる。また本発明による非磁性フェライト10を用いることにより、高絶縁抵抗を安定して得ることができることからエネルギー損失の小さな優れた結合係数を有する小型の積層トランスを得ることができる。
【0068】
なお、磁性フェライト30は六方晶フェライトを用いた場合においても同様の効果が認められた。
【0069】
また、本発明に用いる磁性フェライト用グリーンシート3は所望する厚さの積層電子部品になるように複数枚積層するが、厚みの厚いグリーンシートを用いるならば一枚でもよい。
【0070】
また、すべてのコイルパターン2−1,2−2,21,22の形成方法はスクリーン印刷でもよく、さらにファインパターンを形成するためには、めっき転写、凹版転写工法が有効であり、これらの技術と組み合わせることにより直流抵抗の小さな小型のコモンモードチョークコイルあるいは積層チップトランスを実現することができる。
【0071】
次に、Fe:ZnO:CuO=46:44:10mol%の組成比に対してTiOを4.0wt%、MoOを0.5wt%添加された組成を有する非磁性フェライト用グリーンシート10とFe:NiO:ZnO:CuO=48:21:21:10mol%の組成比を有する磁性フェライト用グリーンシート30とコイルパターン2−1,2−1,21,22をCuペーストを用いてスクリーン印刷することにより作製した積層成形体の個片を980℃−2時間の窒素雰囲気焼成によって積層チップトランスを作製した。得られた積層チップトランスは絶縁抵抗性に優れ、卑金属であるCuを用いることにより生産性に優れたものとすることができる。
【0072】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、FeとCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、さらにTiOとMoOが添加されている非磁性フェライトおよびそれを用いた積層電子部品であり、絶縁抵抗の高い非磁性フェライトおよび絶縁不良の抑制された積層電子部品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における非磁性フェライトと比較品の焼成温度に対する焼成収縮率の関係を示す特性図
【図2】(a)本発明の実施の形態3におけるコモンモードチョークコイルの一例を示す構成図
(b)同等価回路図
【図3】同斜視図
【図4】(a)〜(d)同他のコモンモードチョークコイルの構造断面図
【図5】(a)同本発明の積層電子部品の他の一例である積層型のチップトランスの構成図
(b)同等価回路図
【符号の説明】
1 非磁性フェライト用グリーンシート
2−1 コイルパターン
2−2 コイルパターン
2−1a,2−1b 引出電極部
2−2a,2−2b 引出電極部
3 磁性フェライト用グリーンシート
4 端面電極
5 ビア
10 非磁性フェライト
21 一次コイル
21a,21b 引出電極部
22 二次コイル
22a,22b 引出電極部

Claims (8)

  1. FeとCuOとZnOとを含むフェライトの組成に対して、添加物として酸化チタンおよび酸化モリブデンを添加した非磁性フェライト。
  2. 酸化チタンがTiO,Ti,Ti,TiOのうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライト。
  3. 酸化モリブデンがMo,MoO,Mo,MoOのうち少なくともいずれか一つである請求項1に記載の非磁性フェライト。
  4. 酸化チタンをTiO換算で0.5〜7.0wt%、酸化モリブデンをMoO換算で0.1〜1.0wt%添加した請求項1に記載の非磁性フェライト。
  5. フェライト組成がFe:41〜49モル%、CuO:6〜14モル%、残りがZnOと酸化チタンおよび酸化モリブデンであり、絶縁抵抗が1E+9Ω・cm以上である請求項1に記載の非磁性フェライト。
  6. 磁性絶縁体層と、磁性絶縁体層に挟まれた非磁性絶縁体層と、並列する2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルが磁性絶縁層と非磁性絶縁層の境界もしくは境界に接して内蔵した構造を有する積層電子部品であって、前記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトを用いて形成した積層電子部品。
  7. 磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したコモンモードチョークコイルとしての積層電子部品。
  8. 磁性絶縁体層上に2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、このコイル上に非磁性絶縁体層を設け、この非磁性絶縁体層上に上記と同様の2本の電極ラインから構成される螺旋状のコイルを設け、この両コイルを非磁性絶縁体層上に設けたコイルの上に磁性絶縁体層を設け、上記非磁性絶縁体層を請求項1〜5のいずれか一つに記載の非磁性フェライトで構成したチップトランスとしての積層電子部品。
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