JP2004338183A - キートップの二色成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】デザイン性に優れたキートップの二色成形方法を提案する。
【解決手段】本発明のキートップの二色成形方法は、一次射出において、文字、図形、記号等の囲繞部(21)の外郭を形作る外側部分(20a)と囲繞部(21)の内郭を形作る内側部分(20b)のそれぞれを、光遮蔽性樹脂を用いて射出成形する。二次射出において、外側部分(20a)と内側部分(20b)のそれぞれに形成されたゲート跡(g1、g2)を被覆するように光透過性樹脂層(30)を射出成形する。光透過性樹脂層(30)として光透過性有色樹脂を用いれば、バックライトの非点灯時にはゲート跡(g1、g2)はほとんど目立たない。
【選択図】 図6
【解決手段】本発明のキートップの二色成形方法は、一次射出において、文字、図形、記号等の囲繞部(21)の外郭を形作る外側部分(20a)と囲繞部(21)の内郭を形作る内側部分(20b)のそれぞれを、光遮蔽性樹脂を用いて射出成形する。二次射出において、外側部分(20a)と内側部分(20b)のそれぞれに形成されたゲート跡(g1、g2)を被覆するように光透過性樹脂層(30)を射出成形する。光透過性樹脂層(30)として光透過性有色樹脂を用いれば、バックライトの非点灯時にはゲート跡(g1、g2)はほとんど目立たない。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は携帯電話、電話機、ファックス、コピー機、カーステレオ、カーラジオ、リモコン装置などの各種電子機器の入力操作に用いられるキートップの二色成形技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は二色成形された従来のキートップの平面図、図9は図8の9−9線断面図を示している。これらの図に示すキートップ100は、電話機用プッシュボタンの数字「0」を表示するために成形されたものであり、光遮蔽性樹脂層80と光透過性樹脂層90の二層構造を成している。光遮蔽性樹脂層80は、閉曲線を形作る数字「0」の外郭を形成するための外側部分80aと、数字「0」の内郭を形成するための内側部分80bと、両者を連通するアーム状のブリッジ80cを備えている。外側部分80aと内側部分80bとによって画成される閉曲線状の囲繞部101には、光透過性樹脂層90が充填されており、バックライトからの照射光を受けて数字「0」が発光表示されるように構成されている。
【0003】
このような構造のキートップを二色成形するには、スライド機構を備えた金型を用意し、スライド機構をスライドさせながら、外側部分80aと内側部分80bとの間を連通するためのトンネル流路を形成し、当該トンネル流路に光透過性樹脂を流し込むことにより、一回の射出で外側部分80a、内側部分80b、及びブリッジ80cから成る光遮蔽性樹脂層80を射出成形していた。
【0004】
ところが、図8に示すように、ブリッジ80cは囲繞部101を充填する光透過性樹脂層90の背後を通過するように射出成形されているため、バックライトの照射を受けたときにこのブリッジ部分が影となり、見映えが低下してデザイン上好ましくないという不都合が生じていた。このような問題は、上述の数字「0」に限らず、「A」、「B」、「O」、などのアルファベットや、「4」、「6」、「8」などの算用数字、或いは「△」、「○」、「□」などの記号のように、囲繞部を有する文字、図形、記号等を表示するためのキートップを二色成形する際にも生じる。このような問題を解決する手段として、特開平7−88884号公報、特開平7−1506号公報においては、特殊な構造をした金型を用いてキートップを二色生成する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−88884号公報
【特許文献2】
特開平7−1506号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平7−88884号公報や特開平7−1506号公報に記載の技術では、金型の構造が複雑となる。
【0007】
そこで、本発明は上述した問題を解決しつつ、デザイン性に優れたキートップの二色成形方法を提案することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の二色成形方法は、(a)文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と前記囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれを光遮蔽性樹脂で射出成形する一次射出工程と、(b)前記外側部分と前記内側部分のそれぞれについて、光遮蔽性樹脂の注入部分をゲートカットするゲートカット工程と、(c)前記ゲートカット工程の際に生じた前記外側部分と前記内側部分のそれぞれのゲート跡を被覆するように、前記外側部分と前記内側部分のそれぞれの表面に接する光透過性樹脂層を射出成形する二次射出工程とを含む。
【0009】
ゲートカット工程の際に光遮蔽性樹脂層の外側部分と内側部分のそれぞれに形成されたゲート跡を被覆するように光透過性樹脂層を射出成形することで、ゲート跡を目立たなくすることができ、デザイン上好ましい。
【0010】
本発明の二色成形方法は、(a)文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と前記囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれに光遮蔽性樹脂を注入するための複数のゲート孔がキャビティに連通するように開口している一次射出用の上側金型と、前記囲繞部の平面形状に合せて凸部が形成されたコアを有する下側金型とを型締し、前記上側金型のキャビティと前記下側金型のコアとの間に形成されるキャビティ空間へ前記複数のゲート孔を介して光遮蔽性樹脂を注入して前記内側部分と前記外側部分とを射出成形する一次射出工程と、(b)前記一次射出用の上側金型と前記下側金型の型開きを行い、前記内側部分と前記外側部分のそれぞれについて、光遮蔽性樹脂の注入部分をゲートカットするゲートカット工程と、(c)前記一次射出用の上側金型を二次射出用の上側金型に交換し、前記二次射出用の上側金型と前記下側金型とを型締し、前記二次射出用の上側金型のキャビティと前記下側金型との間に形成されるキャビティ空間に光透過性樹脂を注入して、前記ゲートカット工程の際に生じた前記内側部分と前記外側部分のそれぞれのゲート跡を被覆するように光透過性樹脂層を射出成形する二次射出工程とを含む。
【0011】
前記コアに形成された前記凸部の高さとしては、前記内側部分又は前記外側部分の膜厚の略半分が好適である。これにより、二次射出成形の際の光遮蔽性樹脂層と光透過性樹脂層の接合力を高めることができ、二次射出用の上側金型と下側金型を型開きしたときに光透過性樹脂層と光遮蔽性樹脂層が剥離することを回避できる。
【0012】
ここで、光透過性樹脂層としては、バックライトの発光波長を選択的に通過させる光透過性有色樹脂層が好ましい。これにより、バックライトの点灯時において、文字、図形、記号等の部分のみを発光させることができるとともに、バックライトの非点灯時において、ゲート跡を目立たなくすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、各図を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1乃至図4は本実施形態の二色成形方法の手順を示している。これらの図において、41は一次射出(ファーストショット)工程と二次射出(セカンドショット)工程に兼用される下側金型、42は一次射出工程に用いられる上側金型、43は二次射出工程に用いられる上側金型である。下側金型41は、キートップの裏面を射出成形するための金型であり、断面凸状のコア41bが形成されている。コア41bの表面には、キートップに形成される文字、図形、記号等の囲繞部の平面パターンに対応して凸部41aが凸設されている。
【0014】
一方、上側金型42は、一次射出工程の際に光遮蔽性樹脂層を射出成形するための金型であり、断面凹状のキャビティ50が形成されている。キャビティ50には、凸部41aの平面パターンに略一致するようにパターンに成形された凸部42aが凸設されている。さらに、キャビティ50には、文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る「外側部分」に光遮蔽性樹脂を注入するためのゲート孔(樹脂注入孔)71aと、当該囲繞部の内郭を形作る「内側部分」に光遮蔽性樹脂を注入するためのゲート孔71bが形成されている。
【0015】
図1に示すように、下側金型41と上側金型42を型締めした状態で適度な圧力下で両者を圧着すると、凸部41aと凸部42aは空隙なく密着し、コア41bとキャビティ50との間に前記囲繞部の外郭を形作る「外側部分」を射出成形するためのキャビティ空間51aと、当該囲繞部の内郭を形作る「内側部分」を射出成形するためのキャビティ空間51bとが形成される。
【0016】
次いで、図2に示すように、一次射出工程において、ゲート孔71a,71bに溶融した光遮蔽性樹脂を注入すると、キャビティ空間51a,51bは光遮蔽性樹脂で充填される。凸部41aと凸部42aは適度な圧力で密着しているため、凸部41aと凸部42aの間隙には光遮蔽性樹脂は侵入しない。この光遮蔽性樹脂を冷却固化させると、キャビティ空間51a,51bに充填された光遮蔽性樹脂はそれぞれ光遮蔽性樹脂層20a,20bとなる。このような光遮蔽性樹脂として、黒色系に着色されたABS樹脂などが好適である。
【0017】
図5は一次射出工程で成形される光遮蔽性樹脂層(半製品)の平面図を示している。光遮蔽性樹脂層20aは数字「0」の外郭を形作っており、光遮蔽性樹脂層20の「外側部分」を構成する。一方、光遮蔽性樹脂層20bは数字「0」の内郭を形作っており、光遮蔽性樹脂層20の「内側部分」を構成する。光遮蔽性樹脂層20bは20aの中空部分に隔離した状態で配置されており、両者の間に画成される閉曲線状の空隙は囲繞部21を形作っている。囲繞部21の平面形状は数字「0」に対応している。光遮蔽性樹脂層20aと20bの間には両者を接続するブリッジがないため、数字「0」を発光させても、当該ブリッジが影となるような不都合が生じない。
【0018】
さて、一次射出工程が終了したならば、下側金型41と上側金型42の型開きを行い、冷却固化された光遮蔽性樹脂層20a,20bのゲートカットを行って、一次射出用の上側金型42を二次射出用の上側金型43に交換すると、図3に示す状態となる。光遮蔽性樹脂層20a,20bの樹脂注入部分にはゲート跡g1,g2が形成されている。二次射出用の上側金型43には、光透過性樹脂を射出成形するための断面凹状のキャビティ60と、当該キャビティ60内へ光透過性樹脂を注入するためのゲート孔72が穿設されている。下側金型41と上側金型43を型締めした状態で適度な圧力下で両者を圧着すると、上側金型43に形成されたキャビティ60と下側金型41との間には光透過性樹脂層を射出成形するためのキャビティ空間61が形成される。
【0019】
次いで、図4に示すようにゲート孔72から溶融した光透過性樹脂を注入し、キャビティ空間61内部を光透過性樹脂で満たすと、ゲート跡g1、g2の表面は光透過性樹脂で被覆される。光透過性樹脂としては、バックライトの発光波長を選択的に通過し、それ以外の波長は吸収する一方で、バックライトの照射を受けていないときには下地(光遮蔽性樹脂層20a,20b)の表面が視認し難い光学的特性を有する光透過性有色樹脂が好ましい。このような光透過性有色樹脂としては、光源色にほぼ一致する色の樹脂が好ましい。例えば、バックライトが赤色光源の場合には、透明ダークレッド樹脂などが好適である。
【0020】
光透過性樹脂を冷却固化させると、光遮蔽性樹脂層20の表面に溶融接着した光透過性樹脂層30が形成される。このとき、ゲート跡g1,g2は光透過性樹脂層30によって完全に被覆されるため、バックライトが点灯していないときには、ゲート跡g1,g2はほとんど目立たつことはない。また、光遮蔽性樹脂層20aと20bとの間の凹部(図5の囲繞部21)に入り込んだ光透過性樹脂は、冷却固化することにより、凸部30aとなる。凸部30aは光遮蔽性樹脂層20aと20bとの間に適度な圧力で挟着されることにより、光遮蔽性樹脂層20と光透過性樹脂層30との間の接合力を高めている。凸部41aの高さを光遮蔽性樹脂層20a,20bの膜厚のほぼ半分程度にすることで、凸部30aの高さを凸部41aの高さとほぼ同程度にすることができる。これにより、二次射出用の上側金型43と下側金型41を型開きしたときに、光遮蔽性樹脂層20a,20bがコア41bに食い込むことによる光遮蔽性樹脂層20a,20bと光透過性樹脂層30との間の剥離を回避できる。
【0021】
図6は二次射出で成形されるキートップ10の平面図を示しており、図7は図6の7−7線断面図を示している。同図に示すように、光透過性樹脂層30は囲繞部21と光遮蔽性樹脂層20の全面を被覆するように射出成形されている。光遮蔽性樹脂層20a,20bにはゲートカット工程の際に形成されたゲート跡g1,g2が残存しており、これらのゲート跡g1,g2は光透過性樹脂層30によって被覆されている。上述したように、光透過性樹脂層30はバックライトの発光波長のみを通過する光透過性有色樹脂から成るため、非点灯時にはゲート跡g1,g2はほとんど目立たない。
【0022】
以上、説明したように本実施形態によれば、複雑な金型を用いなくても、キートップの二色成形が可能となる。また、文字、図形、記号等の囲繞部の背後を連通するブリッジがないため、デザインの見栄えが低下するという不都合を回避できる。また、光遮蔽性樹脂層のゲート跡の表面を光透過性有色樹脂層で被覆することにより、ゲート跡が目立たなくできるため、デザイン上の優位性を確保できる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれに形成されたゲート跡を被覆するように光透過性樹脂層を射出成形するため、ゲート跡を目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図2】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図3】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図4】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図5】本実施形態の光遮蔽性樹脂層の平面図である。
【図6】本実施形態のキートップの平面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】従来のキートップの平面図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【符号の説明】
10…キートップ 20…光遮蔽性樹脂層 20a…光遮蔽性樹脂層(外側部分) 20b…光遮蔽性樹脂層(内側部分) 30…光透過性樹脂層 41…下側金型 42…一次射出用の上側金型 43…二次射出用の上側金型 71a,71b…ゲート孔 g1,g2…ゲート跡
【発明の属する技術分野】
本発明は携帯電話、電話機、ファックス、コピー機、カーステレオ、カーラジオ、リモコン装置などの各種電子機器の入力操作に用いられるキートップの二色成形技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は二色成形された従来のキートップの平面図、図9は図8の9−9線断面図を示している。これらの図に示すキートップ100は、電話機用プッシュボタンの数字「0」を表示するために成形されたものであり、光遮蔽性樹脂層80と光透過性樹脂層90の二層構造を成している。光遮蔽性樹脂層80は、閉曲線を形作る数字「0」の外郭を形成するための外側部分80aと、数字「0」の内郭を形成するための内側部分80bと、両者を連通するアーム状のブリッジ80cを備えている。外側部分80aと内側部分80bとによって画成される閉曲線状の囲繞部101には、光透過性樹脂層90が充填されており、バックライトからの照射光を受けて数字「0」が発光表示されるように構成されている。
【0003】
このような構造のキートップを二色成形するには、スライド機構を備えた金型を用意し、スライド機構をスライドさせながら、外側部分80aと内側部分80bとの間を連通するためのトンネル流路を形成し、当該トンネル流路に光透過性樹脂を流し込むことにより、一回の射出で外側部分80a、内側部分80b、及びブリッジ80cから成る光遮蔽性樹脂層80を射出成形していた。
【0004】
ところが、図8に示すように、ブリッジ80cは囲繞部101を充填する光透過性樹脂層90の背後を通過するように射出成形されているため、バックライトの照射を受けたときにこのブリッジ部分が影となり、見映えが低下してデザイン上好ましくないという不都合が生じていた。このような問題は、上述の数字「0」に限らず、「A」、「B」、「O」、などのアルファベットや、「4」、「6」、「8」などの算用数字、或いは「△」、「○」、「□」などの記号のように、囲繞部を有する文字、図形、記号等を表示するためのキートップを二色成形する際にも生じる。このような問題を解決する手段として、特開平7−88884号公報、特開平7−1506号公報においては、特殊な構造をした金型を用いてキートップを二色生成する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−88884号公報
【特許文献2】
特開平7−1506号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平7−88884号公報や特開平7−1506号公報に記載の技術では、金型の構造が複雑となる。
【0007】
そこで、本発明は上述した問題を解決しつつ、デザイン性に優れたキートップの二色成形方法を提案することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の二色成形方法は、(a)文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と前記囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれを光遮蔽性樹脂で射出成形する一次射出工程と、(b)前記外側部分と前記内側部分のそれぞれについて、光遮蔽性樹脂の注入部分をゲートカットするゲートカット工程と、(c)前記ゲートカット工程の際に生じた前記外側部分と前記内側部分のそれぞれのゲート跡を被覆するように、前記外側部分と前記内側部分のそれぞれの表面に接する光透過性樹脂層を射出成形する二次射出工程とを含む。
【0009】
ゲートカット工程の際に光遮蔽性樹脂層の外側部分と内側部分のそれぞれに形成されたゲート跡を被覆するように光透過性樹脂層を射出成形することで、ゲート跡を目立たなくすることができ、デザイン上好ましい。
【0010】
本発明の二色成形方法は、(a)文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と前記囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれに光遮蔽性樹脂を注入するための複数のゲート孔がキャビティに連通するように開口している一次射出用の上側金型と、前記囲繞部の平面形状に合せて凸部が形成されたコアを有する下側金型とを型締し、前記上側金型のキャビティと前記下側金型のコアとの間に形成されるキャビティ空間へ前記複数のゲート孔を介して光遮蔽性樹脂を注入して前記内側部分と前記外側部分とを射出成形する一次射出工程と、(b)前記一次射出用の上側金型と前記下側金型の型開きを行い、前記内側部分と前記外側部分のそれぞれについて、光遮蔽性樹脂の注入部分をゲートカットするゲートカット工程と、(c)前記一次射出用の上側金型を二次射出用の上側金型に交換し、前記二次射出用の上側金型と前記下側金型とを型締し、前記二次射出用の上側金型のキャビティと前記下側金型との間に形成されるキャビティ空間に光透過性樹脂を注入して、前記ゲートカット工程の際に生じた前記内側部分と前記外側部分のそれぞれのゲート跡を被覆するように光透過性樹脂層を射出成形する二次射出工程とを含む。
【0011】
前記コアに形成された前記凸部の高さとしては、前記内側部分又は前記外側部分の膜厚の略半分が好適である。これにより、二次射出成形の際の光遮蔽性樹脂層と光透過性樹脂層の接合力を高めることができ、二次射出用の上側金型と下側金型を型開きしたときに光透過性樹脂層と光遮蔽性樹脂層が剥離することを回避できる。
【0012】
ここで、光透過性樹脂層としては、バックライトの発光波長を選択的に通過させる光透過性有色樹脂層が好ましい。これにより、バックライトの点灯時において、文字、図形、記号等の部分のみを発光させることができるとともに、バックライトの非点灯時において、ゲート跡を目立たなくすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、各図を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1乃至図4は本実施形態の二色成形方法の手順を示している。これらの図において、41は一次射出(ファーストショット)工程と二次射出(セカンドショット)工程に兼用される下側金型、42は一次射出工程に用いられる上側金型、43は二次射出工程に用いられる上側金型である。下側金型41は、キートップの裏面を射出成形するための金型であり、断面凸状のコア41bが形成されている。コア41bの表面には、キートップに形成される文字、図形、記号等の囲繞部の平面パターンに対応して凸部41aが凸設されている。
【0014】
一方、上側金型42は、一次射出工程の際に光遮蔽性樹脂層を射出成形するための金型であり、断面凹状のキャビティ50が形成されている。キャビティ50には、凸部41aの平面パターンに略一致するようにパターンに成形された凸部42aが凸設されている。さらに、キャビティ50には、文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る「外側部分」に光遮蔽性樹脂を注入するためのゲート孔(樹脂注入孔)71aと、当該囲繞部の内郭を形作る「内側部分」に光遮蔽性樹脂を注入するためのゲート孔71bが形成されている。
【0015】
図1に示すように、下側金型41と上側金型42を型締めした状態で適度な圧力下で両者を圧着すると、凸部41aと凸部42aは空隙なく密着し、コア41bとキャビティ50との間に前記囲繞部の外郭を形作る「外側部分」を射出成形するためのキャビティ空間51aと、当該囲繞部の内郭を形作る「内側部分」を射出成形するためのキャビティ空間51bとが形成される。
【0016】
次いで、図2に示すように、一次射出工程において、ゲート孔71a,71bに溶融した光遮蔽性樹脂を注入すると、キャビティ空間51a,51bは光遮蔽性樹脂で充填される。凸部41aと凸部42aは適度な圧力で密着しているため、凸部41aと凸部42aの間隙には光遮蔽性樹脂は侵入しない。この光遮蔽性樹脂を冷却固化させると、キャビティ空間51a,51bに充填された光遮蔽性樹脂はそれぞれ光遮蔽性樹脂層20a,20bとなる。このような光遮蔽性樹脂として、黒色系に着色されたABS樹脂などが好適である。
【0017】
図5は一次射出工程で成形される光遮蔽性樹脂層(半製品)の平面図を示している。光遮蔽性樹脂層20aは数字「0」の外郭を形作っており、光遮蔽性樹脂層20の「外側部分」を構成する。一方、光遮蔽性樹脂層20bは数字「0」の内郭を形作っており、光遮蔽性樹脂層20の「内側部分」を構成する。光遮蔽性樹脂層20bは20aの中空部分に隔離した状態で配置されており、両者の間に画成される閉曲線状の空隙は囲繞部21を形作っている。囲繞部21の平面形状は数字「0」に対応している。光遮蔽性樹脂層20aと20bの間には両者を接続するブリッジがないため、数字「0」を発光させても、当該ブリッジが影となるような不都合が生じない。
【0018】
さて、一次射出工程が終了したならば、下側金型41と上側金型42の型開きを行い、冷却固化された光遮蔽性樹脂層20a,20bのゲートカットを行って、一次射出用の上側金型42を二次射出用の上側金型43に交換すると、図3に示す状態となる。光遮蔽性樹脂層20a,20bの樹脂注入部分にはゲート跡g1,g2が形成されている。二次射出用の上側金型43には、光透過性樹脂を射出成形するための断面凹状のキャビティ60と、当該キャビティ60内へ光透過性樹脂を注入するためのゲート孔72が穿設されている。下側金型41と上側金型43を型締めした状態で適度な圧力下で両者を圧着すると、上側金型43に形成されたキャビティ60と下側金型41との間には光透過性樹脂層を射出成形するためのキャビティ空間61が形成される。
【0019】
次いで、図4に示すようにゲート孔72から溶融した光透過性樹脂を注入し、キャビティ空間61内部を光透過性樹脂で満たすと、ゲート跡g1、g2の表面は光透過性樹脂で被覆される。光透過性樹脂としては、バックライトの発光波長を選択的に通過し、それ以外の波長は吸収する一方で、バックライトの照射を受けていないときには下地(光遮蔽性樹脂層20a,20b)の表面が視認し難い光学的特性を有する光透過性有色樹脂が好ましい。このような光透過性有色樹脂としては、光源色にほぼ一致する色の樹脂が好ましい。例えば、バックライトが赤色光源の場合には、透明ダークレッド樹脂などが好適である。
【0020】
光透過性樹脂を冷却固化させると、光遮蔽性樹脂層20の表面に溶融接着した光透過性樹脂層30が形成される。このとき、ゲート跡g1,g2は光透過性樹脂層30によって完全に被覆されるため、バックライトが点灯していないときには、ゲート跡g1,g2はほとんど目立たつことはない。また、光遮蔽性樹脂層20aと20bとの間の凹部(図5の囲繞部21)に入り込んだ光透過性樹脂は、冷却固化することにより、凸部30aとなる。凸部30aは光遮蔽性樹脂層20aと20bとの間に適度な圧力で挟着されることにより、光遮蔽性樹脂層20と光透過性樹脂層30との間の接合力を高めている。凸部41aの高さを光遮蔽性樹脂層20a,20bの膜厚のほぼ半分程度にすることで、凸部30aの高さを凸部41aの高さとほぼ同程度にすることができる。これにより、二次射出用の上側金型43と下側金型41を型開きしたときに、光遮蔽性樹脂層20a,20bがコア41bに食い込むことによる光遮蔽性樹脂層20a,20bと光透過性樹脂層30との間の剥離を回避できる。
【0021】
図6は二次射出で成形されるキートップ10の平面図を示しており、図7は図6の7−7線断面図を示している。同図に示すように、光透過性樹脂層30は囲繞部21と光遮蔽性樹脂層20の全面を被覆するように射出成形されている。光遮蔽性樹脂層20a,20bにはゲートカット工程の際に形成されたゲート跡g1,g2が残存しており、これらのゲート跡g1,g2は光透過性樹脂層30によって被覆されている。上述したように、光透過性樹脂層30はバックライトの発光波長のみを通過する光透過性有色樹脂から成るため、非点灯時にはゲート跡g1,g2はほとんど目立たない。
【0022】
以上、説明したように本実施形態によれば、複雑な金型を用いなくても、キートップの二色成形が可能となる。また、文字、図形、記号等の囲繞部の背後を連通するブリッジがないため、デザインの見栄えが低下するという不都合を回避できる。また、光遮蔽性樹脂層のゲート跡の表面を光透過性有色樹脂層で被覆することにより、ゲート跡が目立たなくできるため、デザイン上の優位性を確保できる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれに形成されたゲート跡を被覆するように光透過性樹脂層を射出成形するため、ゲート跡を目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図2】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図3】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図4】本実施形態のキートップ成形手順を示す工程図である。
【図5】本実施形態の光遮蔽性樹脂層の平面図である。
【図6】本実施形態のキートップの平面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】従来のキートップの平面図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【符号の説明】
10…キートップ 20…光遮蔽性樹脂層 20a…光遮蔽性樹脂層(外側部分) 20b…光遮蔽性樹脂層(内側部分) 30…光透過性樹脂層 41…下側金型 42…一次射出用の上側金型 43…二次射出用の上側金型 71a,71b…ゲート孔 g1,g2…ゲート跡
Claims (4)
- (a)文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と前記囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれを光遮蔽性樹脂で射出成形する一次射出工程と、
(b)前記外側部分と前記内側部分のそれぞれについて、光遮蔽性樹脂の注入部分をゲートカットするゲートカット工程と、
(c)前記ゲートカット工程の際に生じた前記外側部分と前記内側部分のそれぞれのゲート跡を被覆するように、前記外側部分と前記内側部分のそれぞれの表面に接する光透過性樹脂層を射出成形する二次射出工程を含む、キートップの二色成形方法。 - (a)文字、図形、記号等の囲繞部の外郭を形作る外側部分と前記囲繞部の内郭を形作る内側部分のそれぞれに光遮蔽性樹脂を注入するための複数のゲート孔がキャビティに連通するように開口している一次射出用の上側金型と、前記囲繞部の平面形状に合せて凸部が形成されたコアを有する下側金型とを型締めし、前記上側金型のキャビティと前記下側金型のコアとの間に形成されるキャビティ空間へ前記複数のゲート孔を介して光遮蔽性樹脂を注入して前記内側部分と前記外側部分とを射出成形する一次射出工程と、
(b)前記一次射出用の上側金型と前記下側金型の型開きを行い、前記内側部分と前記外側部分のそれぞれについて、光遮蔽性樹脂の注入部分をゲートカットするゲートカット工程と、
(c)前記一次射出用の上側金型を二次射出用の上側金型に交換し、前記二次射出用の上側金型と前記下側金型とを型締めし、前記二次射出用の上側金型のキャビティと前記下側金型との間に形成されるキャビティ空間に光透過性樹脂を注入して、前記ゲートカット工程の際に生じた前記内側部分と前記外側部分のそれぞれのゲート跡を被覆するように前記光遮蔽性樹脂層の表面に光透過性樹脂層を射出成形する二次射出工程を含む、キートップの二色成形方法。 - 請求項2に記載の二色成形方法であって、前記一次射出用の上側金型のコアに形成された前記凸部の高さは前記内側部分又は前記外側部分の膜厚の略半分である、キートップの二色成形方法。
- 請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の二色成形方法であって、前記光透過性樹脂層はバックライトの発光波長を選択的に通過させる光透過性有色樹脂層である、キートップの二色成形方法。
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