JP2004332478A - 橋梁の耐震構造 - Google Patents

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誠一 浦川
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真一郎 神野
義宏 ▲勢登▼
Yoshihiro Seto
Akinori Hirose
彰則 廣瀬
Kenji Tsubomura
健二 坪村
Takehiro Nakatani
武弘 中谷
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Abstract

【課題】橋梁の支承構造を改良し、一定レベル以下の地震動に対しては固定支承として機能させて他の橋脚への負荷を軽減し、大規模地震時においては地震エネルギーを橋梁上部構造と橋台との間に設置する制震ダンパーで吸収することにより、橋梁全体の地震応答を軽減させる。
【解決手段】橋梁下部構造と橋梁上部構造の間に弾性材支承と制震ダンパーを並列状態に配設し、その橋梁下部構造の上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持して橋梁の耐震構造を構成する。また、 弾性材支承を介して橋梁下部構造の上に支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設して橋梁の耐震構造を構成する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、新設橋梁に対する耐震構造、ならびに既設橋梁に施して耐震性を補強する耐震構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の大震災の経験から、橋梁の耐震性を一段と高めることが求められている。この要求に応えて、橋梁の耐震性を高める幾つかの耐震設計が提案され実行されている。そして新設橋梁に対する従来の耐震設計の一つとして、ゴム支承を用いた水平反力分散構造あるいは免震構造によって橋梁の固有周期を操作し橋梁の固有振動の長周期化を図ることによって橋梁に作用する地震時応答加速度を減じようとするものがある。しかしこのような従来の耐震構造は、橋梁を積極的に揺らせることにより地震時応答加速度を低減させる手段であるため、また一般に従来のゴム支承を用いる耐震設計で耐震性を向上させるためには橋脚断面の大型化が必要となりこれに伴って橋脚柱自体の地震時慣性力が大きくなることから、更に地震時応答が大きくなるという問題があり、橋梁上部構造(橋梁の上部工)の変位量を制御することが困難となり実用の適用性に限界がある。
【0003】
また既設橋梁に対する従来の耐震補強設計としては、橋脚柱に鉄筋コンクリートあるいは鋼板を巻き立てて橋脚の抵抗断面あるいは耐荷力を直接補強する手法が主で、これに加えて必要に応じて支承構造を、ゴム支承を用いた水平反力分散構造あるいは免震構造に変えて橋梁の固有周期を操作し橋梁の固有振動の長周期化を図ることによって橋梁に作用する地震時応答加速度を減じようとするものがある。しかしゴム支承を用いた水平反力分散構造あるいは免震構造によって橋梁を積極的に揺らせることにより地震時応答加速度を低減させる手法は前記のように橋梁上部構造の変位量を制御することが困難で実用の適用性に問題がある上に、特に既設の耐震補強設計においては、フレキシブル橋脚(橋脚の橋軸方向すなわち橋脚の長手方向の曲げ剛性を意図的に小さくした橋脚形式)を有する橋梁のように、既設橋脚の構造上、適用が困難となる場合があり、橋梁の地震時応答エネルギーそのものを低減する技術が求められている。
【0004】
また橋梁の耐震補強構造として、特開2001−279615号公報(特許文献1)に示されるような構造が提案されている。すなわち特許文献1には、弾性支承装置やダンパーを用いる橋梁の耐震補強構造が記載されている。しかし特許文献1に示されている橋梁の耐震補強構造は、特許文献1中の記述から明らかなように、例えば「通路床組が、通路床組の主構造に対する水平変位を許諾する複数の支承装置によって主構造側から支持された構成となっており、さらに、これらの支承装置の少なくとも一部が、道路床組の主構造に対する水平変位を弾性的に規制するようになっているため、地震時に橋梁に水平力が作用した場合に、道路床組および主構造が別個の振動体として水平振動することとなる。この場合、道路床組の重量が主構造から切り離されることとなり、主構造に作用する慣性力が低減され、これにより主構造の変位も小さくなり、主構造の安全性が向上する。また、道路床組についても、主構造から絶縁されるため、地震エネルギーの入力が低減され、当然にその安全性が向上することとなる。」(特許文献1,段落[0040]参照)と記されているように、橋梁上部構造の一部である通路床組を分離して震動制御するものであって、橋梁上部構造および橋梁下部構造からなる橋梁全体の震動制御を図るものではない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−279615号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、橋梁の支承構造を改良し、一定レベル以下の地震動に対しては固定支承として機能させて他の橋脚への負荷を軽減し、大規模地震時においては地震エネルギーを橋梁上部構造と橋台(橋梁下部構造)との間に設置する制震ダンパーで吸収することにより、橋梁全体の地震応答を軽減させようとするものである。すなわち、大規模地震時においては、橋台部に設置した制震ダンパーが変位することにより、熱エネルギー消費に伴う減衰効果が生ずることと、それに伴って結果的に構造全体の応答特性が長周期化することにより、橋梁全体の地震応答を低減させようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明は、橋梁下部構造と橋梁上部構造の間に弾性材支承と制震ダンパーを並列状態に配設し、その橋梁下部構造の上に前記弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持して橋梁の耐震構造を構成する。また、 弾性材支承を介して橋梁下部構造の上に支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設して橋梁の耐震構造を構成する。
【0008】
また、この発明の課題解決のための具体的手段として、橋台に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し且つ前記橋台と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設して橋梁の耐震構造を構成する。また、橋台に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し且つ前記橋台と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設すると共に前記橋梁上部構造の上端部と前記橋台の間に制震ダンパーを配設して橋梁の耐震構造を構成する。
【0009】
また、高橋脚(高さの高い橋脚)を有する橋梁、とりわけフレキシブル橋脚を有する橋梁において、他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し且つ前記剛性の高い橋脚と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設して橋梁の耐震構造を構成する。また、他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設して橋梁の耐震構造を構成する。また、他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し且つ前記剛性の高い橋脚と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設すると共に前記橋脚上に弾性材支承を介して支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設して橋梁の耐震構造を構成する。
【0010】
さらに、制震ダンパーの機能を高めるために、一つの弾性材支承当り複数の制震ダンパーをその弾性材支承の近傍に配設して橋梁の耐震構造を構成する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の基本的な実施形態の一つは、橋梁下部構造と橋梁上部構造の間に弾性材支承と制震ダンパーを並列状態に配設し、橋梁下部構造の上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持した橋梁の耐震構造である。
【0012】
この発明の基本的な他の実施形態は、弾性材支承を介して橋梁下部構造の上に支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設した橋梁の耐震構造である。
【0013】
【実施例】
以下この発明を、その実施例を示す図面を参考に説明する。図1において、Aは床版、床組、桁などから成る橋梁上部構造(上部工)である。Bは橋梁下部構造(下部工)で、杭基礎b1、躯体b2,橋台11,12、橋脚21,22などから成っている。橋脚21は他の橋脚22に比し剛性の高い橋脚で、橋脚22はフレキシブル橋脚である。そして橋梁上部構造Aの両端は橋台11,12の上に、この発明に係る耐震構造Cを介して支持され、且つ橋梁上部構造Aは橋台11,12の間で橋脚21,22上で支持され、橋梁上部構造Aと橋脚21の間にはこの発明に係る耐震構造Cが装着されている。
【0014】
この発明は、橋梁の耐震性強化のために新設橋梁あるいは既設橋梁の橋梁上部構造Aと橋梁下部構造Bの間に設ける耐震構造Cに関するもので、基本的には図2に示すように、橋梁下部構造Bの上に弾性材支承3を介して橋梁上部構造Aを支持し且つその橋梁下部構造Bと橋梁上部構造Aの間に制震ダンパー4を上記弾性材支承3と並列状態に配設するものである。そして弾性材支承3は例えば従来から知られているゴム支承であり、制震ダンパー4は例えば車両のショックアブゾーバーなどで知られているオイルダンパーであるが、この発明は、橋梁下部構造Bと橋梁上部構造Aの間に設ける支承構造Cに、制震ダンパー4の振動減衰特性と、弾性材支承3の復元特性を組み合わせて用いることにより、下部工Bならびに上部工Aを含む橋梁全体の震動を制御し耐震性を高めるものである。
【0015】
図3乃至図6は、それぞれこの発明に係る更に具体的な実施例を示すものである。図3はその一つの具体的実施例を示すもので、橋台11に弾性材支承3を介して橋梁上部構造Aを支持し、且つ橋台11と橋梁上部構造Aの間に制震ダンパー4を前記弾性材支承3と並列状態に配設した耐震構造である。
【0016】
図4は他の具体的実施例を示すもので、橋台11に弾性材支承3を介して橋梁上部構造Aを支持し、且つ橋台11と橋梁上部構造Aの間に制震ダンパー4を弾性材支承3と並列状態に配設すると共に、橋梁上部構造Aの上端部と橋台11の間に制震ダンパー4aを配設した耐震構造である。そして、橋梁上部構造Aの上端部と橋台11の間に制震ダンパー4aを配設する目的は、制震機能として使用する、もしくは震動による橋梁上部構造Aの応答回転変位を抑制するためである。
【0017】
図5はまた他の具体的実施例を示すもので、A1,A2は橋梁上部構造Aを構成する二つの隣り合う橋梁上部構造で、他の橋脚に比し剛性の高い橋脚21上に弾性材支承3を介して橋梁上部構造A1,A2を支持し、且つ剛性の高い橋脚21と橋梁上部構造A2の間に制震ダンパー4を弾性材支承3と並列状態に配設した橋梁の耐震構造である。
【0018】
図6は更に他の具体的実施例を示すもので、他の橋脚に比し剛性の高い橋脚21上に弾性材支承3を介して支持された二つの隣り合う橋梁上部構造A1,A2の間に制震ダンパー4aを配設した橋梁の耐震構造である。
【0019】
また別の具体的実施例として、他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し、且つ前記剛性の高い橋脚と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設すると共に、前記橋脚上に弾性材支承を介して支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設して橋梁の耐震構造を構成する。
【0020】
渓谷を跨ぐような長大橋においては、高さの高いフレキシブル橋脚を有する鋼トラス橋が多用されているが、
図5,6に示すような震動制御技術を活用することにより、フレキシブル橋脚の補強規模を小さくできる上に、トラス主構など鋼上部工の補強が免れ、補強工事コストを大幅に低減し、補強工期を短縮し、工期中の通行規制を最小限に留めることができて、実用上極めて有用なものとなる。
【0021】
また、制震ダンパーの機能を高めるために、一つの弾性材支承当り複数の制震ダンパーをその弾性材支承の近傍に配設することも極めて有効である。
【0022】
【発明の効果】
上記の実施例からも明らかなように、この発明によれば、橋梁下部構造と橋梁上部構造の間に弾性材支承と制震ダンパーを並列状態に配設してその橋梁下部構造の上に前記弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持しすることにより、あるいはまた、弾性材支承を介して橋梁下部構造の上に支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設しすることにより、橋梁上部構造および橋梁下部構造からなる橋梁全体の震動を制御して耐震性を高めることができる。そして、従来耐震補強が困難であった小型の柱断面を有する橋脚や小型の基礎を有する橋脚を用いた橋梁、あるいは橋脚等の断面補強に伴って橋梁上部構造への負担が増大し橋梁上部構造の補強が必要となるような橋梁、さらに補強対策が極めて困難とされてきた既設フレキシブル橋脚橋梁であっても、橋梁上部構造の補強を不要もしくは最小に留めることができ、耐震工事コスト、工期、工期中の通行規制などの各面で従来より大幅改善となり合理的な耐震補強が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る耐震構造を備えた橋梁の概要を示す側面図。
【図2】この発明に係る橋梁の耐震構造の基本構成図。
【図3】この発明の一実施例を示す橋梁耐震構造の要部側面図。
【図4】この発明の他の実施例を示す橋梁耐震構造の要部側面図。
【図5】この発明の更に他の実施例を示す橋梁耐震構造の要部側面図。
【図6】この発明の別の実施例を示す橋梁耐震構造の要部側面図。
【符号の説明】
A,A1,A2:橋梁上部構造
B:橋梁下部構造
C:この発明の耐震構造
11,12:基準時刻における測定点水槽
21:橋脚(剛性の高い橋脚)
22:フレキシブル橋脚
3:弾性材支承
4,4a:制震ダンパー

Claims (9)

  1. 橋梁下部構造と橋梁上部構造の間に弾性材支承と制震ダンパーを並列状態に配設し、前記橋梁下部構造の上に前記弾性材支承を介して前記橋梁上部構造を支持したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  2. 弾性材支承を介して橋梁下部構造の上に支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  3. 橋台に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し、且つ前記橋台と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  4. 橋台に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し、且つ前記橋台と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設すると共に、前記橋梁上部構造の上端部と前記橋台の間に制震ダンパーを配設したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  5. 他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し、且つ前記剛性の高い橋脚と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  6. 他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  7. 他の橋脚に比し剛性の高い橋脚上に弾性材支承を介して橋梁上部構造を支持し、且つ前記剛性の高い橋脚と前記橋梁上部構造の間に制震ダンパーを前記弾性材支承と並列状態に配設すると共に、前記橋脚上に弾性材支承を介して支持された二つの隣り合う橋梁上部構造の間に制震ダンパーを配設したことを特徴とする橋梁の耐震構造。
  8. 1弾性材支承当り複数の制震ダンパーをその弾性材支承の近傍に配設したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の橋梁の耐震構造。
  9. 橋梁下部構造がフレキシブル橋脚を有している請求項1乃至8のいずれか1項に記載の橋梁の耐震構造。
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