JP2004331907A - 真空用グリース組成物及び転動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高真空且つ高温下においても使用可能な真空用グリース組成物、及び、高真空且つ高温下においても長寿命な転動装置を提供する。
【解決手段】玉軸受10の軸受空間に、シラハイドロカーボン油を基油とし、ジウレアを増ちょう剤とする真空用グリース組成物Gを充填した。
【選択図】 図1
【解決手段】玉軸受10の軸受空間に、シラハイドロカーボン油を基油とし、ジウレアを増ちょう剤とする真空用グリース組成物Gを充填した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高真空且つ高温下での使用に好適なグリース組成物に関する。また、高真空且つ高温下においても長寿命な転動装置に係り、特に、ターボ分子ポンプのタービン翼支持用軸受等のような高速条件下で使用される転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空下において使用される転がり軸受用の潤滑グリースとしては、従来はフッ素グリースが使用されていた。ここでフッ素グリースとは、例えば、基油としてパーフルオロアルキルエーテルやフルオロシリコーン等の潤滑油を用い、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂を用いたグリースのことである。
【0003】
このようなフッ素グリースは、炭化水素系潤滑油を基油とするグリースよりも蒸気圧が遙かに低いので真空用途に適するが、その反面、潤滑性が劣っていた。また、軸受回転時の発熱も大きいため、高速回転する軸受や負荷荷重の大きい軸受を潤滑する用途には不向きであった。
一方、気体分子を排出することを目的とする機器は一般に真空ポンプと呼ばれているが、その中でもターボ分子ポンプは、タービン翼先端の回転速度を気体分子の運動速度よりも速くすることによって気体分子をかき出す方式の真空ポンプである。ターボ分子ポンプのタービン翼は、通常は毎分1万回転以上の速度で回転する。
【0004】
このようなタービン翼の支持軸受部に通常のグリースで潤滑された転がり軸受を適用すると、タービン翼の支持軸受部は高真空に晒されるので、グリースの油分が激しく蒸発する。また、転がり軸受は回転時に大きく発熱し、しかも真空下では空冷による冷却が期待できず回転に伴う温度上昇が大気中よりも大きくなりやすいので、グリースの油分の蒸発がさらに助長される。よって、該転がり軸受に長寿命を期待することは難しい。
【0005】
このような理由から、タービン翼の支持軸受部には磁気軸受が用いられているが、グリース潤滑された転がり軸受を用いることができれば、装置の簡略化,運転経費の削減等の大きなメリットが得られる。
このような背景から、ターボ分子ポンプのような高真空且つ高温下においても使用可能なグリースが種々検討され、例えば、特開2002−98160号公報にはターボ分子ポンプのタービン翼支持軸受に好適なグリースが開示されている。このグリースはアルキルシクロペンタン油を基油として用いたものであり、フッ素グリースに匹敵する低蒸気圧と、フッ素グリースよりも優れた潤滑性とを有するとともに、優れた耐熱性を有している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−98160号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載のグリースは、ターボ分子ポンプのタービン翼支持軸受を長寿命とすることが可能であるが、さらなる長寿命化が可能な真空用グリースが望まれていた。また、ターボ分子ポンプは今後さらに小型化,高速化することが予想され、軸受使用温度はさらに高温化することを考えると、前記公報に記載のグリースよりも優れた耐熱性を有する真空用グリースが必要となると考えられる。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高真空且つ高温下においても使用可能な真空用グリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、高真空且つ高温下においても長寿命な転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の真空用グリース組成物は、下記の化学式(I)で表されるシラハイドロカーボン油を基油として用いたことを特徴とする。
【0009】
【化2】
【0010】
なお、化学式(I)中のR1 ,R2 ,及びR3 は、相互に同種又は異種の炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。
また、本発明の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1に記載の真空用グリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0011】
前述のようなシラハイドロカーボン油は蒸気圧が極めて低いので、高真空且つ高温下においても蒸発損失が少ない。また、優れた耐熱性を有しているので、高温下においても熱劣化しにくい。よって、本発明の真空用グリース組成物は、高真空且つ高温下においても好適に使用可能であり、本発明の転動装置は、高真空且つ高温下においても長寿命である。なお、前述のようなシラハイドロカーボン油は、前記公報に記載のグリースに使用されたアルキルシクロペンタン油よりも、蒸気圧が低く且つ耐熱性が優れている。
【0012】
なお、本発明は、種々の転動装置に適用することができ、例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等があげられる。
本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る真空用グリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。この玉軸受10は、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在に配設された複数の玉3と、複数の玉3を保持する保持器4と、外輪2に取り付けられた非接触形のシール5,5と、で構成されている。また、内輪1と外輪2とシール5,5とで囲まれた軸受空間(空隙部)には真空用グリース組成物Gが充填され、シール5により玉軸受10内に密封されている。そして、このような真空用グリース組成物Gにより、前記両輪1,2の軌道面と玉3との接触面が潤滑されている。
【0014】
この真空用グリース組成物Gは、82質量%の基油と18質量%の増ちょう剤とで構成されており、基油には前述の化学式(I)で表されるシラハイドロカーボン油、増ちょう剤にはウレア化合物が使用されている。このような真空用グリース組成物Gは、高真空且つ高温下においても蒸発損失が少なく、しかも優れた耐熱性を有しているシラハイドロカーボン油が基油として使用されているので、高真空且つ高温下においても好適に使用可能である。
【0015】
よって、真空用グリース組成物Gが充填された玉軸受10は、高真空且つ高温下においても長寿命であり、ターボ分子ポンプのタービン翼支持用軸受として好適に使用可能である。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
例えば、真空用グリース組成物の基油の種類は、前述の化学式(I)で表されるシラハイドロカーボン油であれば特に限定されるものではない。例えば、化学式(I)中のR1 ,R2 ,及びR3 は、脂肪族炭化水素基,脂環式炭化水素基,芳香族炭化水素基等のいずれの炭化水素基でもよい。そして、1種のシラハイドロカーボン油を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の目的が損なわれない程度の量であれば、シラハイドロカーボン油に他種の基油を混合してもよい。
【0017】
また、増ちょう剤の種類はウレア化合物に限定されるものではなく、グリース組成物の増ちょう剤として一般的に使用されるものであれば、問題なく使用することができる。例えば、金属石けんや金属複合石けん等があげられる。
さらに、本発明の真空用グリース組成物には、その各種性能をさらに向上させるために、所望により種々の添加剤を添加してもよい。使用される添加剤としては、例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性剤,及び金属不活性化剤等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
また、本実施形態においては転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0019】
また、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
次に、シラハイドロカーボン油を基油とする9種のグリース組成物(実施例1〜9)と、トリス(2−オクチルドデシル)シクロペンタンを基油とする2種のグリース組成物(比較例1,2)とを用意して、種々の評価を行った。これらの11種のグリース組成物について、使用した増ちょう剤の種類,基油の種類,基油の80℃における蒸気圧及び40℃における動粘度を、表1にまとめて示す。なお、11種のグリース組成物の混和ちょう度は、いずれも280〜290である。
【0020】
【表1】
【0021】
これらのグリース組成物を、日本精工株式会社製の単列アンギュラ玉軸受(呼び番号10BGR02XT,内径10mm,外径30mm,幅9mm)の軸受空間に充填した。充填量は、軸受空間容積の100体積%である。なお、このアンギュラ玉軸受は、窒化ケイ素製の転動体と樹脂製の保持器とを備えており、接触角は15°である。
【0022】
このアンギュラ玉軸受を簡易スピンドル(図示せず)に組み付けて29.1Nの予圧を負荷した上、0.02Paの真空下でdmn110万という回転速度で回転させた。そして、回転中のアンギュラ玉軸受の外輪の温度とスピンドルのG値とを測定し、異常な昇温又は異常な振動が生じるまでの時間を耐久寿命として評価した。
【0023】
また、上記と同様にdmn110万という回転速度で10時間回転させ、異常な昇温又は異常な振動が生じなかったら回転速度を上げてさらに10時間回転させた。そして、異常な昇温又は異常な振動が生じなかったら回転速度をさらに上げて10時間回転させるという操作を繰り返し行って(すなわち、回転速度を段階的に上げていく)、異常な昇温又は異常な振動が生じた時の回転速度を最高回転速度として評価した。
前者の試験による耐久寿命及び外輪温度の評価結果と、後者の試験による最高回転速度の評価結果とを、表2に示す。なお、表2中の耐久寿命は、比較例2のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受の耐久寿命を1とした場合の相対値で示してある。
【0024】
【表2】
【0025】
表2から、シラハイドロカーボン油を基油とする実施例1〜9のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受は、アルキルシクロペンタン油を基油とする比較例1,2のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受と比べて、耐久寿命が優れていることが分かる。また、実施例3と実施例8との比較、及び、実施例4と実施例9との比較から、増ちょう剤としてリチウム石けんを用いたグリース組成物はジウレアを用いたものと比べて、耐久寿命は若干劣るものの最高回転速度は優れていることが分かる。
【0026】
実施例1〜7のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受について、耐久寿命及び外輪温度を、基油の40℃における動粘度をパラメータとしてグラフ化した(図2を参照)。図2のグラフから、基油の動粘度が105mm2 /s以下であると耐久寿命が優れていることが分かる。また、外輪温度が73.4℃以下であると耐久寿命が優れていることが分かる。実施例1,2のグリース組成物は基油の動粘度が大きく、軸受回転時の発熱が大きいため、耐久寿命が若干短くなったと考えられる。これらの結果から、シラハイドロカーボン油の40℃における動粘度は、105mm2 /s以下とすることが好ましいと言える。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の真空用グリース組成物は、高真空且つ高温下でも使用可能である。また、本発明の転動装置は、高真空且つ高温下でも長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
【図2】グリース組成物の基油の40℃における動粘度と、軸受の耐久寿命及び外輪温度と、の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 玉
10 玉軸受
G 真空用グリース組成物
【発明の属する技術分野】
本発明は、高真空且つ高温下での使用に好適なグリース組成物に関する。また、高真空且つ高温下においても長寿命な転動装置に係り、特に、ターボ分子ポンプのタービン翼支持用軸受等のような高速条件下で使用される転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空下において使用される転がり軸受用の潤滑グリースとしては、従来はフッ素グリースが使用されていた。ここでフッ素グリースとは、例えば、基油としてパーフルオロアルキルエーテルやフルオロシリコーン等の潤滑油を用い、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂を用いたグリースのことである。
【0003】
このようなフッ素グリースは、炭化水素系潤滑油を基油とするグリースよりも蒸気圧が遙かに低いので真空用途に適するが、その反面、潤滑性が劣っていた。また、軸受回転時の発熱も大きいため、高速回転する軸受や負荷荷重の大きい軸受を潤滑する用途には不向きであった。
一方、気体分子を排出することを目的とする機器は一般に真空ポンプと呼ばれているが、その中でもターボ分子ポンプは、タービン翼先端の回転速度を気体分子の運動速度よりも速くすることによって気体分子をかき出す方式の真空ポンプである。ターボ分子ポンプのタービン翼は、通常は毎分1万回転以上の速度で回転する。
【0004】
このようなタービン翼の支持軸受部に通常のグリースで潤滑された転がり軸受を適用すると、タービン翼の支持軸受部は高真空に晒されるので、グリースの油分が激しく蒸発する。また、転がり軸受は回転時に大きく発熱し、しかも真空下では空冷による冷却が期待できず回転に伴う温度上昇が大気中よりも大きくなりやすいので、グリースの油分の蒸発がさらに助長される。よって、該転がり軸受に長寿命を期待することは難しい。
【0005】
このような理由から、タービン翼の支持軸受部には磁気軸受が用いられているが、グリース潤滑された転がり軸受を用いることができれば、装置の簡略化,運転経費の削減等の大きなメリットが得られる。
このような背景から、ターボ分子ポンプのような高真空且つ高温下においても使用可能なグリースが種々検討され、例えば、特開2002−98160号公報にはターボ分子ポンプのタービン翼支持軸受に好適なグリースが開示されている。このグリースはアルキルシクロペンタン油を基油として用いたものであり、フッ素グリースに匹敵する低蒸気圧と、フッ素グリースよりも優れた潤滑性とを有するとともに、優れた耐熱性を有している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−98160号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載のグリースは、ターボ分子ポンプのタービン翼支持軸受を長寿命とすることが可能であるが、さらなる長寿命化が可能な真空用グリースが望まれていた。また、ターボ分子ポンプは今後さらに小型化,高速化することが予想され、軸受使用温度はさらに高温化することを考えると、前記公報に記載のグリースよりも優れた耐熱性を有する真空用グリースが必要となると考えられる。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高真空且つ高温下においても使用可能な真空用グリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、高真空且つ高温下においても長寿命な転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の真空用グリース組成物は、下記の化学式(I)で表されるシラハイドロカーボン油を基油として用いたことを特徴とする。
【0009】
【化2】
【0010】
なお、化学式(I)中のR1 ,R2 ,及びR3 は、相互に同種又は異種の炭化水素基であり、nは0〜2の整数である。
また、本発明の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1に記載の真空用グリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0011】
前述のようなシラハイドロカーボン油は蒸気圧が極めて低いので、高真空且つ高温下においても蒸発損失が少ない。また、優れた耐熱性を有しているので、高温下においても熱劣化しにくい。よって、本発明の真空用グリース組成物は、高真空且つ高温下においても好適に使用可能であり、本発明の転動装置は、高真空且つ高温下においても長寿命である。なお、前述のようなシラハイドロカーボン油は、前記公報に記載のグリースに使用されたアルキルシクロペンタン油よりも、蒸気圧が低く且つ耐熱性が優れている。
【0012】
なお、本発明は、種々の転動装置に適用することができ、例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等があげられる。
本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る真空用グリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。この玉軸受10は、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在に配設された複数の玉3と、複数の玉3を保持する保持器4と、外輪2に取り付けられた非接触形のシール5,5と、で構成されている。また、内輪1と外輪2とシール5,5とで囲まれた軸受空間(空隙部)には真空用グリース組成物Gが充填され、シール5により玉軸受10内に密封されている。そして、このような真空用グリース組成物Gにより、前記両輪1,2の軌道面と玉3との接触面が潤滑されている。
【0014】
この真空用グリース組成物Gは、82質量%の基油と18質量%の増ちょう剤とで構成されており、基油には前述の化学式(I)で表されるシラハイドロカーボン油、増ちょう剤にはウレア化合物が使用されている。このような真空用グリース組成物Gは、高真空且つ高温下においても蒸発損失が少なく、しかも優れた耐熱性を有しているシラハイドロカーボン油が基油として使用されているので、高真空且つ高温下においても好適に使用可能である。
【0015】
よって、真空用グリース組成物Gが充填された玉軸受10は、高真空且つ高温下においても長寿命であり、ターボ分子ポンプのタービン翼支持用軸受として好適に使用可能である。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
例えば、真空用グリース組成物の基油の種類は、前述の化学式(I)で表されるシラハイドロカーボン油であれば特に限定されるものではない。例えば、化学式(I)中のR1 ,R2 ,及びR3 は、脂肪族炭化水素基,脂環式炭化水素基,芳香族炭化水素基等のいずれの炭化水素基でもよい。そして、1種のシラハイドロカーボン油を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明の目的が損なわれない程度の量であれば、シラハイドロカーボン油に他種の基油を混合してもよい。
【0017】
また、増ちょう剤の種類はウレア化合物に限定されるものではなく、グリース組成物の増ちょう剤として一般的に使用されるものであれば、問題なく使用することができる。例えば、金属石けんや金属複合石けん等があげられる。
さらに、本発明の真空用グリース組成物には、その各種性能をさらに向上させるために、所望により種々の添加剤を添加してもよい。使用される添加剤としては、例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性剤,及び金属不活性化剤等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
また、本実施形態においては転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0019】
また、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
次に、シラハイドロカーボン油を基油とする9種のグリース組成物(実施例1〜9)と、トリス(2−オクチルドデシル)シクロペンタンを基油とする2種のグリース組成物(比較例1,2)とを用意して、種々の評価を行った。これらの11種のグリース組成物について、使用した増ちょう剤の種類,基油の種類,基油の80℃における蒸気圧及び40℃における動粘度を、表1にまとめて示す。なお、11種のグリース組成物の混和ちょう度は、いずれも280〜290である。
【0020】
【表1】
【0021】
これらのグリース組成物を、日本精工株式会社製の単列アンギュラ玉軸受(呼び番号10BGR02XT,内径10mm,外径30mm,幅9mm)の軸受空間に充填した。充填量は、軸受空間容積の100体積%である。なお、このアンギュラ玉軸受は、窒化ケイ素製の転動体と樹脂製の保持器とを備えており、接触角は15°である。
【0022】
このアンギュラ玉軸受を簡易スピンドル(図示せず)に組み付けて29.1Nの予圧を負荷した上、0.02Paの真空下でdmn110万という回転速度で回転させた。そして、回転中のアンギュラ玉軸受の外輪の温度とスピンドルのG値とを測定し、異常な昇温又は異常な振動が生じるまでの時間を耐久寿命として評価した。
【0023】
また、上記と同様にdmn110万という回転速度で10時間回転させ、異常な昇温又は異常な振動が生じなかったら回転速度を上げてさらに10時間回転させた。そして、異常な昇温又は異常な振動が生じなかったら回転速度をさらに上げて10時間回転させるという操作を繰り返し行って(すなわち、回転速度を段階的に上げていく)、異常な昇温又は異常な振動が生じた時の回転速度を最高回転速度として評価した。
前者の試験による耐久寿命及び外輪温度の評価結果と、後者の試験による最高回転速度の評価結果とを、表2に示す。なお、表2中の耐久寿命は、比較例2のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受の耐久寿命を1とした場合の相対値で示してある。
【0024】
【表2】
【0025】
表2から、シラハイドロカーボン油を基油とする実施例1〜9のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受は、アルキルシクロペンタン油を基油とする比較例1,2のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受と比べて、耐久寿命が優れていることが分かる。また、実施例3と実施例8との比較、及び、実施例4と実施例9との比較から、増ちょう剤としてリチウム石けんを用いたグリース組成物はジウレアを用いたものと比べて、耐久寿命は若干劣るものの最高回転速度は優れていることが分かる。
【0026】
実施例1〜7のグリース組成物を充填したアンギュラ玉軸受について、耐久寿命及び外輪温度を、基油の40℃における動粘度をパラメータとしてグラフ化した(図2を参照)。図2のグラフから、基油の動粘度が105mm2 /s以下であると耐久寿命が優れていることが分かる。また、外輪温度が73.4℃以下であると耐久寿命が優れていることが分かる。実施例1,2のグリース組成物は基油の動粘度が大きく、軸受回転時の発熱が大きいため、耐久寿命が若干短くなったと考えられる。これらの結果から、シラハイドロカーボン油の40℃における動粘度は、105mm2 /s以下とすることが好ましいと言える。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の真空用グリース組成物は、高真空且つ高温下でも使用可能である。また、本発明の転動装置は、高真空且つ高温下でも長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
【図2】グリース組成物の基油の40℃における動粘度と、軸受の耐久寿命及び外輪温度と、の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 玉
10 玉軸受
G 真空用グリース組成物
Claims (2)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003132897A JP2004331907A (ja) | 2003-05-12 | 2003-05-12 | 真空用グリース組成物及び転動装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003132897A JP2004331907A (ja) | 2003-05-12 | 2003-05-12 | 真空用グリース組成物及び転動装置 |
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---|---|---|---|---|
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CN114456867A (zh) * | 2020-10-21 | 2022-05-10 | 中国石油化工股份有限公司 | 润滑脂及其制备方法 |
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2003
- 2003-05-12 JP JP2003132897A patent/JP2004331907A/ja active Pending
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CN114456868A (zh) * | 2020-10-21 | 2022-05-10 | 中国石油化工股份有限公司 | 润滑脂及其制备方法 |
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