JP2004331417A - 塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する組成物 - Google Patents
塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する組成物 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】塩基性炭酸マグネシウムの持つ特性と、他の粒子の特性とを併せ持つ塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き組成物の提供。
【解決手段】塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を混合することにより無機微粒子を核として、その表面を塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆って塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を製造する。得られた複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの高比表面積、低かさ密度、高吸液性などの特性と、核粒子のもつ種々の特性とを併せもった複合粒子であり、それは填料又は顔料等として難沈降性及び/又は高吸液性を発揮し、特に塗料、インク、塗工剤などに含有させることによってこれら製品の品質向上、機能向上に寄与できるものである。
【選択図】 なし
【解決手段】塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を混合することにより無機微粒子を核として、その表面を塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆って塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を製造する。得られた複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの高比表面積、低かさ密度、高吸液性などの特性と、核粒子のもつ種々の特性とを併せもった複合粒子であり、それは填料又は顔料等として難沈降性及び/又は高吸液性を発揮し、特に塗料、インク、塗工剤などに含有させることによってこれら製品の品質向上、機能向上に寄与できるものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な形態の被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き組成物に関する。より詳しくは、無機微粒子表面が特定形状の塩基性炭酸マグネシウムにより覆われている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及び該被覆複合粒子を含有する難沈降性もしくは高吸液性の填料、顔料、さらには該被覆複合粒子を含有する塗料、インク又は塗工剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特許第1207124号公報
【特許文献2】特開昭61−31314号公報
【特許文献3】特開平2−208220号公報
【特許文献4】特開平3−97618号公報
【特許文献5】特許第1635418号公報
【特許文献6】特許第2602444号公報等
【特許文献7】特開平1−203248号公報
【特許文献8】特開平5−170431号公報
【特許文献9】特許第3341925号公報
【特許文献10】特開平7−92743号公報
【0003】
工業的に利用されている塩基性炭酸マグネシウムは、一般に炭マグとも呼ばれているものであり、化学式mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表される。この化学式におけるm及びnの値については、製造条件によって変化し、一定のものではなく、mは3〜5、nは3〜8のものが一般的である。この塩基性炭酸マグネシウムは、通常、薄片状微細結晶の不定形又は球状の凝集粒子として得られ、嵩密度は0.2〜0.3g/mLと低く、比表面積は10〜40m2/gと比較的高いなどの特性を持つ。
【0004】
塩基性炭酸マグネシウムは、上記したような特性を活かして、ゴム、塗料、製紙、医薬品、化粧品、建材、窯業原料などの分野で、利用されている。特にゴム用フィラーとしては、配合した天然ゴムに透明感を与える、ゴムの強度を向上させるなどの特性を有している。
【0005】
塩基性炭酸マグネシウムの製造方法としては、塩化マグネシウム等の可溶性マグネシウム塩と炭酸ナトリウムとの反応を利用したソーダ灰法、可溶性マグネシウム塩と炭酸アンモニウムとの反応を利用した炭安法、水酸化マグネシウムと炭酸ガスとの反応を利用したガス法など多くのものがある。いずれの方法においても、マグネシウム源と炭酸源との反応により中間生成物として得られる正炭酸マグネシウム(化学式MgCO3・nH2Oで表され、n=3のものが一般的)あるいは重炭酸マグネシウム(Mg(HCO3)2)を長時間熟成することによって塩基性炭酸マグネシウムを生成させる。
【0006】
この塩基性炭酸マグネシウムに関する研究開発は古くから行われてきており、例えば、特許文献1においては、正炭酸マグネシウムを含有する懸濁液を適切な温度条件にて熟成することにより、短時間でかつゴム用フィラーとして優れた性能をもつ塩基性炭酸マグネシウムを製造する方法が、特許文献2においては、水溶性硫酸塩の存在下で水溶性マグネシウム源と水溶性炭酸塩とを反応させることにより、合成樹脂の填料として優れた性能をもつ塩基性炭酸マグネシウムを製造する方法が提案されている。
【0007】
このほかにも、特許文献3においては重炭酸マグネシウム水溶液を循環させながら加熱することによって得られる特定吸油量及び比表面積を有する塩基性炭酸マグネシウムが、特許文献4においては正炭酸マグネシウム懸濁液をヒドロキシカルボン酸の共存下で加熱することによって得られる特定のX線回折パターンを示す塩基性炭酸マグネシウムが提案されている。さらに、塩基性炭酸マグネシウムの粒子形状に着目したものとしては、特許文献5及び6等があり、それらには、一次粒子が凝集してなる球状の多孔質粒子で、特定の嵩密度や比表面積等の性状を示す塩基性炭酸マグネシウムが提案されている。
【0008】
また、炭酸マグネシウムを構成成分とする複合粒子に関しても幾つかの技術が開示されている。例えば、特許文献7では、水酸化マグネシウム粒子を特定条件下にて二酸化炭素と接触させて得られる、表面を塩基性炭酸マグネシウムで被覆された水酸化マグネシウム粒子が、特許文献8では、酸化マグネシウムを二酸化炭素含有気体と接触させながら冷却することにより得られる、表面が炭酸マグネシウムで被覆され、水酸化マグネシウムに由来する赤外吸収ピークを持たない酸化マグネシウム組成物が提案されている。
【0009】
さらに、特許文献9では、キャリアとトナーからなる負帯電性現像剤において、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層中に、気相法で得られる単結晶構造の炭酸マグネシウムをはじめとするマグネシウム化合物が含有されているキャリアを用いる技術が提案されているほか、特許文献10は、着色粒子とキャリアからなる現像剤を使った画像形成法において、キャリアが磁性粒子上に気相法で得られる単結晶構造の炭酸マグネシウムと樹脂粒子とを被覆させてなる負帯電性現像剤キャリアを用いる技術が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように塩基性炭酸マグネシウムに関してはこれまで多くの研究開発がなされ、その結果も提案されているが、ゴム用フィラーなどの限られた分野でのみの使用に留まっているのが現状である。さらに、その粒子形状に関しても不定形又は球状のものしか知られておらず、性能及び用途等は充分に満足できるものとは言い難い。
【0011】
また、塩基性炭酸マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムを構成成分とする複合粒子についても、樹脂等のバインダーが必要であったり、製造方法は煩雑であったりすることから、工業的に広く使用できるものではないのが現状であり、新規用途の開拓、高性能化、高機能化等に対応できる新規な塩基性炭酸マグネシウムが嘱望されている。
【0012】
上記現状に鑑み、本発明者らは塩基性炭酸マグネシウムを用いた高機能、高性能を有する粒子の合成を目的として、塩基性炭酸マグネシウムと他の粒子との複合化に関して鋭意検討を重ねた結果、開発に成功したのが本発明である。すなわち、本発明の課題は、塩基性炭酸マグネシウムと他の粒子とを複合化することにより、塩基性炭酸マグネシウムの持つ特性と、複合化させた他の粒子との特性とを併せもつばかりでなく、複合化により新たな機能性をも発現し得る塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き組成物を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために新規な形態の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き(用途特定)組成物を提供するものである。この塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法は、塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を混合することにより無機微粒子を核として、その表面を塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆うことを特徴とするものである。さらに、本発明の填料又は顔料は、前記塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有し、難沈降性及び/又は高吸液性であり、本発明の塗料、インク又は塗工剤も前記塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有するものである。
【0015】
そして、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、前記したとおり無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により被覆されたものであるから、塩基性炭酸マグネシウムのもつ高比表面積、多孔性、低かさ密度、高吸液性などの優れた特性と、核をなす無機微粒子の特性とをあわせ持ち、更に複合化により新規な機能性、性能を発現することも期待されるものである。
【0016】
また、本発明の顔料又は填料は、塩基性炭酸マグネシウムの低かさ密度や薄片状微細結晶という形態により難沈降性及び/又は高吸液性といった特長を持つ。さらに、本発明の塗料、インク又は塗工剤は、塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を顔料あるいは填料として配合するものであり、その結果液成分と固形成分との分離を抑制あるいは防止できるほか、塗布面の吸液性を向上させることも可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、それによって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0018】
本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われていることを特徴とするものである。この塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶の集合体であるが、その内部に無機微粒子が核として存在することを特徴とする。
【0019】
核となる微粒子は、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の用途や求められる特性に応じて、適宜選択することができる。特に、表面に被覆される塩基性炭酸マグネシウムとは異なる特性をもつ無機微粒子を選択することによって、核となる無機微粒子と被覆する塩基性炭酸マグネシウムとの複合化により、広範多彩な特性を発現する塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子とすることができる。
【0020】
その粒子の具体例を挙げると、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、二酸化マンガンその他の金属酸化物等の酸化物粒子や、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化イットリウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸イットリウム、炭酸亜鉛、炭酸銅、炭酸マンガン、炭酸ジルコニル、炭酸カドミウム、炭酸コバルト、炭酸セリウム、炭酸ニッケル等の炭酸塩粒子、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、塩化銀等のハロゲン化物、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化銀、硫化鉄、硫化銅等の硫化物粒子がある。
【0021】
さらに、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、コバルト酸ニッケル、マンガン酸ランタン、アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、フェライト等の複酸化物粒子、金、銀、白金、パラジウムなどの金属粒子、スメクタイト、セリサイト、ゼオライト、クリストバライト、アパタイト等の鉱物粒子など種々の粒子が核粒子として利用可能である。
【0022】
このうちの酸化物粒子、具体的にはシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニアは、その表面により効率よく塩基性炭酸マグネシウムを被覆でき好適である。特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄は最も効率よく塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶による表面被覆ができ、最も好適である。
【0023】
核となる無機微粒子の粒子径についても、特段の制約はなく、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の用途や利用形態に応じて適宜選択することができる。核となる粒子の様態については、単分散状態であっても、凝集状態であってもよく、単分散粒子あるいは凝集粒子の表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われているのが、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子である。
【0024】
上記した無機微粒子の表面を被覆する塩基性炭酸マグネシウムに関しては、薄片状微細結晶がカードハウス状構造をなしていることが望ましく、該薄片状微細結晶の厚さが0.005〜0.5μm、径が0.1〜10μmであることがより望ましい。薄片状微細結晶からなり、また核粒子表面にカードハウス状構造をなしていることにより、高比表面積、低かさ密度、高吸液性など種々の優れた特性を発現し、薄片状微細結晶の形状を上記厚さ及び径とすることにより、さらに優れた特性を発現させることが可能となる。
【0025】
カードハウス状構造とは、元来、層状粘土鉱物結晶の集合形態を示す用語であり、粘土鉱物結晶の端面と層面との電荷の違いにより、端面と層面とが選択的に接合し、端面同士あるいは層面同士は反発し合うことで形成される、トランプのカードを立体的に組み上げたような構造のことで、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子においても、このようなカードハウス状構造あるいはそれに近い状態で薄片状微細結晶が集合することにより、空隙が多くなり比表面積の増大、吸液性の向上が図れる。
【0026】
また、本発明でいう塩基性炭酸マグネシウムとは、化学式mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表されるものであり、m及びnの値については特に限定はなく、通常の塩基性炭酸マグネシウムとして知られているmの値が3〜5、nの値が3〜8のものなどである。この塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われたのが、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子である。
【0027】
この塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の形状については、核とする粒子の種類、その粒子形状及び分散状態あるいは凝集状態や、核粒子とその表面を覆う塩基性炭酸マグネシウムとの比率、製造条件等を調節することにより様々なものを得ることができ、用途や利用形態等に応じて適宜選択することができる。塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の形状について、具体例を挙げると、球状、楕円体状、柱状あるいは不定形といった形状がある。
【0028】
上記の通り本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の外形は、用途や使用形態によって適宜選択することが可能であるが、望ましくは球状又は楕円体状とすることがよい。球状又は楕円体状とすることによって、粉体としての流動性に優れ、ハンドリングが良好となるばかりでなく、各種製品に配合させた際に、その配合状態を均一にすることができる。さらには、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子をスラリー状態で使用する場合には、球状及び/又は楕円体状であればスラリー粘度を低く抑えることもできる。なお、ここで楕円体状とは、粒子の長径/短径の値が1を超え、2以下のものをいう。
【0029】
このように、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われている本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの特徴である高比表面積、低かさ密度といった優れた粉体物性、及び吸液性などの優れた特性と、核となる粒子のもつ特性とを併せもつ複合粒子とすることができる。また複合化により、塩基性炭酸マグネシウムあるいは核となる粒子の持っている短所を相互に補完しあったり、さらに複合化によって新たな特性を発現することも期待される。
【0030】
具体的には、核粒子として酸化チタンを選択した場合、上記したような塩基性炭酸マグネシウムの優れた特性と、酸化チタンのもつ白色度、不透明性、紫外線遮蔽性などの優れた特性とを併せもつ粒子とすることができる。さらに、酸化チタンは比重が大きいため溶媒中ですぐに沈降し、他成分と分離してしまうという問題点があったが、比重が小さい塩基性炭酸マグネシウムにより表面被覆することにより、沈降を防止あるいは抑制することができる。
【0031】
また、酸化チタン粒子は、その光触媒活性により、樹脂や塗料、紙などに配合された場合に、マトリックスである有機成分を分解し、製品の劣化を起こすといった問題もあったが、本発明のように塩基性炭酸マグネシウムで表面被覆することによって、酸化チタンと有機成分とが直に接触しないため、酸化チタンの光触媒活性による製品の劣化を防止する効果もある。
【0032】
さらに、酸化チタン粒子は、比較的平滑な表面をもつ粒子であるのに対して、本発明の通り塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により被覆されることによって多孔性の表面となるので、吸液性に優れた粒子とすることもできる。また、酸化亜鉛や酸化鉄を核とした場合においても、酸化チタンの場合と同様に、沈降防止や吸液性の向上に効果的である。
【0033】
次いで、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法について述べる。
本発明の製造方法は、塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を添加等により混合することによって、該粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得ることを特徴とするものである。
【0034】
塩基性炭酸マグネシウムを生成させる方法としては、既知の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法であるガス法、ソーダ灰法、炭安法等が適用可能である。いずれの方法においても、塩基性炭酸マグネシウムの生成反応は、その反応条件によって、中間生成物として正炭酸マグネシウム(MgCO3・nH2Oで表される炭酸マグネシウム水和物、n=3が一般的)を経る場合と、正炭酸マグネシウムを経ずに直接塩基性炭酸マグネシウムが生成する場合とがある。
【0035】
ガス法とは、水酸化マグネシウムを原料として、その懸濁液に炭酸ガスを導入し塩基性炭酸マグネシウムを生成させる方法である。ソーダ灰法とは、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム等の水溶性マグネシウム塩溶液を原料として、該溶液と炭酸ナトリウム(ソーダ灰)とを混合して塩基性炭酸マグネシウムを生成させる方法である。また、炭安法とは、ソーダ灰法での炭酸ナトリウムの代わりに炭酸アンモニウムあるいは炭酸水素アンモニウムを用いる方法である。
【0036】
これら塩基性炭酸マグネシウムの製造方法の中でも、ガス法は、核粒子の表面に塩基性炭酸マグネシウムをより効果的に被覆することができ、また比較的安価な水酸化マグネシウムと、燃焼排ガスなどの二酸化炭素含有ガスとを原料として用いることもできる。したがって、本発明においては、塩基性炭酸マグネシウムの製造方法として、ガス法を適用することが望ましい。
【0037】
このような塩基性炭酸マグネシウムを生成させる過程において、すなわち塩基性炭酸マグネシウムの生成が完了する以前に、無機微粒子を添加等で混合することにより、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得ることができる。核となる粒子を混合する時期に関しては、前記した通り塩基性炭酸マグネシウムの生成が完了する以前であればよいが、望ましくは塩基性炭酸マグネシウムの生成過程のなかで中間生成物である正炭酸マグネシウムの析出が完了した後であることが良い。この時期に核粒子を添加等により混合することによって、核粒子の表面をより効率よく塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により被覆することが可能となる。なお、中間生成物として正炭酸マグネシウムが析出しない条件で塩基性炭酸マグネシウムを生成させる場合においては、この限りでない。
【0038】
混合する核粒子としては、既に述べた通りの酸化物粒子や水酸化物粒子、炭酸塩粒子、ハロゲン化物粒子、硫化物粒子、複酸化物粒子、金属粒子、鉱物粒子など使用することが可能である。このなかでも酸化物粒子は、効率よくその粒子表面に塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶を被覆することができ好適であり、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄は最も効率よくその粒子表面に塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶を被覆することができ最も好適である。
【0039】
添加する際の核粒子の形態については、粉末状態であっても、懸濁液の状態であってもよく、目的とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の性状に応じて適宜選択すればよい。例えば、単分散状態の核粒子表面に塩基性炭酸マグネシウムを被覆したい場合には、超音波照射処理、せん断応力等による物理的分散処理又は分散剤の使用などにより、分散処理を施した懸濁液の状態とすればよい。
【0040】
塩基性炭酸マグネシウムを生成させる条件については、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の用途や利用形態等に応じて、反応条件等を適切に選定し、目的とする形状の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子が得られるように調節することが望ましい。球状の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得たい場合には、高温域で塩基性炭酸マグネシウムを生成させる条件がよい。例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスとを用いるガス法においては、水酸化マグネシウム懸濁液に炭酸ガスを導入する際の温度を、80℃すると球状及び/又は楕円体状の塩基性炭酸マグネシウムが生成しやすくなる。
【0041】
また、柱状の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得たい場合には、比較的低温域で塩基性炭酸マグネシウムを生成させることがよい。例えば、ガス法においては、水酸化マグネシウム懸濁液に炭酸ガスを導入する際の温度を30℃とすると、中間生成物として正炭酸マグネシウムの柱状粒子が析出し、その後45℃で塩基性炭酸マグネシウムを生成させると、柱状あるいはそれに近い形状の塩基性炭酸マグネシウムが生成しやすくなる。いずれにしても、用途や使用形態に応じた適切な粒子形状となるように、塩基性炭酸マグネシウムの生成条件を調節することが望ましい。
【0042】
核粒子を添加した後は、塩基性炭酸マグネシウムの生成が完了するまで反応を継続させることが望ましい。塩基性炭酸マグネシウムの生成完了については、反応液のpHや導電率などを観測することによって判断することができる。例えば、ガス法において、正炭酸マグネシウムを中間生成物として経て塩基性炭酸マグネシウムが生成する場合、塩基性炭酸マグネシウムの生成途上であると液のpHは徐々に低下していくのに対して、生成が完了するとpHはほぼ一定で推移する。このようにして本発明の製造方法においては、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を製造することができる。
【0043】
本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、その用途に応じて懸濁液の状態、あるいは乾燥させ乾燥粉の状態として利用することができる。懸濁液の状態で利用する場合、反応後の懸濁液をそのまま用いてもよいが、懸濁液中に含有される不純分が用途によっては悪影響を及ぼすこともあるので、適宜、水やその他の溶媒で置換、除去してもよい。
【0044】
乾燥粉の状態で利用する場合、脱水工程や乾燥工程を経ることによって乾燥粉を得ればよい。ただし、乾燥工程において乾燥凝集が起こった後の工程で解砕が必要となることもあり、場合によっては解砕することにより粒子形状が破壊される現象も認められる。したがって、乾燥粉を得るためのより望ましい手法としては、生成後の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の懸濁液の溶媒をアルコールなどの有機溶媒で置換するか、あるいは脱水後にアルコールなどの有機溶媒による洗浄工程を設け、その後乾燥させる方法がよい。
【0045】
このようなアルコールなどの有機溶媒による溶媒の置換または洗浄を行うことによって、乾燥による凝集が抑えられた乾燥粉が得られる。なお、ここで用いる有機溶媒としては、塩基性炭酸マグネシウムの溶解度が低いものが好適であり、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、アセトンなどが使用できる。
【0046】
また、有機溶媒による溶媒の置換または洗浄を行わなくても、乾燥凝集が起こり難い乾燥方法を採用しても良く、例えばスプレードライヤー、流動層乾燥機、真空乾燥機、真空凍結乾燥機あるいは攪拌乾燥機等を用いれば、乾燥凝集の抑制された乾燥粉を得ることができる。さらに、得られた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を、脂肪酸塩や樹脂酸塩カップリング剤をはじめとする各種界面活性剤などの有機系表面処理剤、あるいはリン酸塩や硫酸塩などの無機系表面処理剤にて処理し、各分野で利用しても何ら差し支えない。
【0047】
上記方法によって得られる塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われたものとなる。そして、表面に被覆された塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶という形状、及びカードハウス状構造という集合形態とにより、高比表面積、高吸油性、高吸水性、低嵩密度、多孔性など種々の優れた特性を有するばかりでなく、核となる粒子の特性をも併せもった粒子となる。さらには、塩基性炭酸マグネシウムと核粒子とが、お互いの短所を補完しあったり、複合化により新たな特性や機能性をも発現することも期待されるものである。
【0048】
次ぎに、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有する用途付き組成物に関し説明する。本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、上記の通り種々の優れた特性を有していることから様々な分野での使用が可能である。
すなわち、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を各種の製品に含有させることにより、該製品に塩基性炭酸マグネシウムの特性及び内包された微粒子の特性、さらにはそれらが複合化していることにより発現する特性を付与することが可能となる。
【0049】
特に、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、填料又は顔料として好適に使用可能であり、該被覆複合粒子を含有する填料又は顔料は、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶及びそれがカードハウス状構造をなし集合していることに由来して、液中において沈降しにくい難沈降性という特性や、吸油性や吸水性に優れる高吸液性という特性を有するものとなる。さらに、両者の複合化により新たな特性をも発揮することが期待されるものである。
【0050】
また、塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の外形を球状及び/又は楕円体状とすることにより、粉体としての流動性が高くなり、ハンドリング性に優れる填料又は顔料とすることができる。その他にも、液中に分散させたスラリーの状態で使用する場合には、スラリーの粘度を低く抑えることができたり、スラリー中への高配合が可能となるなどの特長も有する。
【0051】
以下に、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を用いる組成物について具体例を挙げて説明する。例えば、酸化チタンを核とした塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの高比表面積、高細孔容積、低かさ密度、高吸液性などの優れた特性と、酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、紫外線遮蔽性などの特性を併せもった填料又は顔料として有効であるほか、酸化チタン粒子が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶で覆われているので、酸化チタンの欠点であった易沈降性や光触媒活性による製品の劣化などの問題点を解決することもできる。
【0052】
また、マグネタイト(四三酸化鉄)を核とした塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、酸化チタンを内包したものと同様に、比重が大きく液中で沈降しやすいマグネタイトの欠点を解決できるほか、マグネタイトは吸油性や吸水性に乏しい粒子であるのに対して、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶で被覆されていることにより、吸液性に優れた顔料等とすることもできる。さらに、2種以上の顔料微粒子を核とすることもでき、2種以上の顔料微粒子を核とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、種類の異なる顔料微粒子の分離防止にも効果的である。
【0053】
そして、これら酸化チタンやマグネタイト等を核とし、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有する難沈降性及び/又は高吸液性を有する填料又は顔料が、本発明の填料又は顔料である。これらの填料又は顔料は、塗料、インク、塗工剤、紙、プラスチック、ゴムなどに配合することが可能である。すなわち塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を填料又は顔料として、塗料、インク、塗工剤、紙、プラスチック、ゴムなどに配合することが可能である。
【0054】
このうちの塗料、インク、塗工剤は、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有させることによって、該被覆複合粒子の優れた特性を最も効果的に発現させることができる。例えば、酸化チタンを核として塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を塗料に含有させることにより、酸化チタンの効果によって不透明性、白色性に優れた塗料となることは勿論のことである。
【0055】
さらに、酸化チタンが、塩基性炭酸マグネシウムの管状凝集粒子と複合化していることによって、塗料液中での固−液の分離が抑制できたり、酸化チタンの光触媒活性による塗膜面の劣化を抑制できる優れた塗料とすることができる。酸化チタン以外にも、各種の有色顔料を内包させても、固−液の分離が抑制され、長期保存性に優れ、また使用前の撹拌が不要あるいは簡易になる塗料とすることができる。
【0056】
インクへの適用については、例えば、修正ペン等に使用される白色インクに、酸化チタンを核となる塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を配合すれば、インク液中での固−液の分離が抑制できるばかりでなく、塩基性炭酸マグネシウムの特性である高吸液性の効果で、白色インク塗布面上に上書きする際の、筆跡の滲みを抑制し、より明瞭な筆跡とすることができる。
【0057】
同様に、製紙用等に用いられる塗工剤中に、本発明の被覆複合粒子を含有させれば、核とする粒子の光学特性のほか、塩基性炭酸マグネシウムの高吸液性によって、印刷適性や印刷後不透明度等が優れた塗工紙を得るのに好適な製紙用塗工剤とすることができる。これら塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を填料又は顔料として含有する、塗料、インク、塗工剤が、本発明の塗料、インク、塗工剤である。
【0058】
【実施例】
以下において、本発明の実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0059】
[実施例1]
水酸化マグネシウム懸濁液(30g/L)2.0Lに、液温を20℃に保持、撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/minの速度で30分間導入した後、液温が45℃になるように加温しながら撹拌して正炭酸マグネシウムを生成させ、この生成した正炭酸マグネシウムの懸濁液に、酸化チタン(粒子径0.2〜0.3μm)20gを250mLのイオン交換水に超音波分散させた懸濁液を添加した。
【0060】
その後液温が70℃になるように加温しながら撹拌して塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。生成物をSEM及びTEMにて観察したところ、その外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜10μmの球状及び楕円体状(長径/短径=1〜1.4)の凝集粒子で、その内部に粒子径0.2μmの酸化チタン粒子が核をなしている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子であることが確認された。
【0061】
[実施例2]
水酸化マグネシウム懸濁液(30g/L)2.0Lに、マグネタイト(四三酸化鉄、粒子径0.7〜0.9μm)20gを300mLのイオン交換水に分散させた懸濁液を添加した後、液温を60℃に保持、撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/minの速度で導入して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。
【0062】
生成物をSEMおよびTEMにて観察したところ、その外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜15μmの球状及び楕円体状(長径/短径=1〜1.6)の凝集粒子で、その内部に粒子径0.7〜0.9μmのマグネタイト粒子が核となっている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子であることが確認された。
【0063】
[実施例3]
水酸化マグネシウム懸濁液(30g/L)2.0Lに、液温を20℃に保持、撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/minの速度で30分間導入した後、液温が30℃になるように加温しながら撹拌して正炭酸マグネシウムを生成させ、生成した正炭酸マグネシウムの懸濁液に、酸化亜鉛(粒子径0.2〜0.5μm)15gを300mLのイオン交換水に超音波分散させた懸濁液を添加した。
【0064】
その後、液温が35℃になるように加温しながら撹拌して塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。生成物をSEM及びTEMにて観察したところ、その外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜20μmの楕円体状(長径/短径=1.4〜1.8)の凝集粒子で、その内部に粒子径0.2〜0.5μmの酸化亜鉛粒子が核をなしている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子であることが確認された。
【0065】
[比較例1]
マグネタイトの添加を、塩基性炭酸マグネシウムの生成完了後に行った以外は、実施例2と同様の操作を行った。
生成物をSEM及びTEMにて観察したところ、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜15μmの球状及び楕円体状(長径/短径=1〜1.4)の凝集粒子と、添加したマグネタイト粒子とが確認されたが、両者は複合化しておらず、互いに独立した粒子であった。
【0066】
[生成物の評価]
実施例にて得られた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、実施例1で使用した酸化チタン、実施例2で使用したマグネタイト、実施例3で使用した酸化亜鉛について、塗料、インク、塗工剤等の用途で重要な項目である吸液性及び沈降性の評価試験を行った。
【0067】
なお、この評価試験を行うのは、該用途においては、沈降性が低い、すなわち沈降し難ければ固形分と液相とが分離し難く、使用前の撹拌が必要なくなったり又は軽い撹拌のみで使用できるというメリットがあるからである。また吸液性に関しては、例えば修正液として使用される白色インク用途で、油や水などの吸液量が多い方が重ね書き時の筆跡の滲みを防止できるという利点がある。
【0068】
吸液性試験は、液成分として亜麻仁油及び精製水を用いた。亜麻仁油の吸液量はJIS K5101の吸油量に準拠して測定を行い、精製水の吸液量は亜麻仁油の代わりに精製水を使いJIS K5101と同様に測定を行った。また沈降性試験は、2.50gの粉体を100mLの精製水に分散させた懸濁液を100mLメスシリンダーに入れ、一定時間ごとに固形分の沈降容積を計測することにより評価を行った。各評価結果を表1及び図1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
その結果、すなわち表1及び図1によれば、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、一般的に顔料あるいは填料として使用されている酸化チタンやマグネタイト、酸化亜鉛と比べて、吸液量が高く、かつ沈降性が低いことがわかる。また、塩基性炭酸マグネシウムとマグネタイトとが複合化していない比較例の生成物の場合には、液中で両者が分離してしまうのに対して、実施例の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、核粒子と塩基性炭酸マグネシウムとが効果的に複合化していることが理解できる。このような難沈降性や高吸液性という特性により、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を塗料、インク、塗工剤等の填料あるいは顔料として使用することにより、これら製品の品質向上に効果的であるといえる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われた複合粒子であり、表面被覆された塩基性炭酸マグネシウムの高比表面積、低かさ密度、高吸液性などの特性と、核粒子のもつ種々の特性とを併せもった複合粒子となる。
したがって、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、難沈降性及び/又は高吸液性を有する填料又は顔料等として優れた効果を発揮し、特に塗料、インク、塗工剤などに填料又は顔料として含有させることによってこれら製品の品質向上、機能向上に寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】沈降試験における経過時間と沈降容積との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた酸化チタンを核とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の外形及び表面性状を表す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】実施例1で得られた酸化チタンを核とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の内部構造を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な形態の被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き組成物に関する。より詳しくは、無機微粒子表面が特定形状の塩基性炭酸マグネシウムにより覆われている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及び該被覆複合粒子を含有する難沈降性もしくは高吸液性の填料、顔料、さらには該被覆複合粒子を含有する塗料、インク又は塗工剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特許第1207124号公報
【特許文献2】特開昭61−31314号公報
【特許文献3】特開平2−208220号公報
【特許文献4】特開平3−97618号公報
【特許文献5】特許第1635418号公報
【特許文献6】特許第2602444号公報等
【特許文献7】特開平1−203248号公報
【特許文献8】特開平5−170431号公報
【特許文献9】特許第3341925号公報
【特許文献10】特開平7−92743号公報
【0003】
工業的に利用されている塩基性炭酸マグネシウムは、一般に炭マグとも呼ばれているものであり、化学式mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表される。この化学式におけるm及びnの値については、製造条件によって変化し、一定のものではなく、mは3〜5、nは3〜8のものが一般的である。この塩基性炭酸マグネシウムは、通常、薄片状微細結晶の不定形又は球状の凝集粒子として得られ、嵩密度は0.2〜0.3g/mLと低く、比表面積は10〜40m2/gと比較的高いなどの特性を持つ。
【0004】
塩基性炭酸マグネシウムは、上記したような特性を活かして、ゴム、塗料、製紙、医薬品、化粧品、建材、窯業原料などの分野で、利用されている。特にゴム用フィラーとしては、配合した天然ゴムに透明感を与える、ゴムの強度を向上させるなどの特性を有している。
【0005】
塩基性炭酸マグネシウムの製造方法としては、塩化マグネシウム等の可溶性マグネシウム塩と炭酸ナトリウムとの反応を利用したソーダ灰法、可溶性マグネシウム塩と炭酸アンモニウムとの反応を利用した炭安法、水酸化マグネシウムと炭酸ガスとの反応を利用したガス法など多くのものがある。いずれの方法においても、マグネシウム源と炭酸源との反応により中間生成物として得られる正炭酸マグネシウム(化学式MgCO3・nH2Oで表され、n=3のものが一般的)あるいは重炭酸マグネシウム(Mg(HCO3)2)を長時間熟成することによって塩基性炭酸マグネシウムを生成させる。
【0006】
この塩基性炭酸マグネシウムに関する研究開発は古くから行われてきており、例えば、特許文献1においては、正炭酸マグネシウムを含有する懸濁液を適切な温度条件にて熟成することにより、短時間でかつゴム用フィラーとして優れた性能をもつ塩基性炭酸マグネシウムを製造する方法が、特許文献2においては、水溶性硫酸塩の存在下で水溶性マグネシウム源と水溶性炭酸塩とを反応させることにより、合成樹脂の填料として優れた性能をもつ塩基性炭酸マグネシウムを製造する方法が提案されている。
【0007】
このほかにも、特許文献3においては重炭酸マグネシウム水溶液を循環させながら加熱することによって得られる特定吸油量及び比表面積を有する塩基性炭酸マグネシウムが、特許文献4においては正炭酸マグネシウム懸濁液をヒドロキシカルボン酸の共存下で加熱することによって得られる特定のX線回折パターンを示す塩基性炭酸マグネシウムが提案されている。さらに、塩基性炭酸マグネシウムの粒子形状に着目したものとしては、特許文献5及び6等があり、それらには、一次粒子が凝集してなる球状の多孔質粒子で、特定の嵩密度や比表面積等の性状を示す塩基性炭酸マグネシウムが提案されている。
【0008】
また、炭酸マグネシウムを構成成分とする複合粒子に関しても幾つかの技術が開示されている。例えば、特許文献7では、水酸化マグネシウム粒子を特定条件下にて二酸化炭素と接触させて得られる、表面を塩基性炭酸マグネシウムで被覆された水酸化マグネシウム粒子が、特許文献8では、酸化マグネシウムを二酸化炭素含有気体と接触させながら冷却することにより得られる、表面が炭酸マグネシウムで被覆され、水酸化マグネシウムに由来する赤外吸収ピークを持たない酸化マグネシウム組成物が提案されている。
【0009】
さらに、特許文献9では、キャリアとトナーからなる負帯電性現像剤において、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層中に、気相法で得られる単結晶構造の炭酸マグネシウムをはじめとするマグネシウム化合物が含有されているキャリアを用いる技術が提案されているほか、特許文献10は、着色粒子とキャリアからなる現像剤を使った画像形成法において、キャリアが磁性粒子上に気相法で得られる単結晶構造の炭酸マグネシウムと樹脂粒子とを被覆させてなる負帯電性現像剤キャリアを用いる技術が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように塩基性炭酸マグネシウムに関してはこれまで多くの研究開発がなされ、その結果も提案されているが、ゴム用フィラーなどの限られた分野でのみの使用に留まっているのが現状である。さらに、その粒子形状に関しても不定形又は球状のものしか知られておらず、性能及び用途等は充分に満足できるものとは言い難い。
【0011】
また、塩基性炭酸マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムを構成成分とする複合粒子についても、樹脂等のバインダーが必要であったり、製造方法は煩雑であったりすることから、工業的に広く使用できるものではないのが現状であり、新規用途の開拓、高性能化、高機能化等に対応できる新規な塩基性炭酸マグネシウムが嘱望されている。
【0012】
上記現状に鑑み、本発明者らは塩基性炭酸マグネシウムを用いた高機能、高性能を有する粒子の合成を目的として、塩基性炭酸マグネシウムと他の粒子との複合化に関して鋭意検討を重ねた結果、開発に成功したのが本発明である。すなわち、本発明の課題は、塩基性炭酸マグネシウムと他の粒子とを複合化することにより、塩基性炭酸マグネシウムの持つ特性と、複合化させた他の粒子との特性とを併せもつばかりでなく、複合化により新たな機能性をも発現し得る塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き組成物を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために新規な形態の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、その製造方法及びそれを含有する用途付き(用途特定)組成物を提供するものである。この塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法は、塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を混合することにより無機微粒子を核として、その表面を塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆うことを特徴とするものである。さらに、本発明の填料又は顔料は、前記塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有し、難沈降性及び/又は高吸液性であり、本発明の塗料、インク又は塗工剤も前記塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有するものである。
【0015】
そして、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、前記したとおり無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により被覆されたものであるから、塩基性炭酸マグネシウムのもつ高比表面積、多孔性、低かさ密度、高吸液性などの優れた特性と、核をなす無機微粒子の特性とをあわせ持ち、更に複合化により新規な機能性、性能を発現することも期待されるものである。
【0016】
また、本発明の顔料又は填料は、塩基性炭酸マグネシウムの低かさ密度や薄片状微細結晶という形態により難沈降性及び/又は高吸液性といった特長を持つ。さらに、本発明の塗料、インク又は塗工剤は、塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を顔料あるいは填料として配合するものであり、その結果液成分と固形成分との分離を抑制あるいは防止できるほか、塗布面の吸液性を向上させることも可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、それによって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0018】
本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われていることを特徴とするものである。この塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶の集合体であるが、その内部に無機微粒子が核として存在することを特徴とする。
【0019】
核となる微粒子は、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の用途や求められる特性に応じて、適宜選択することができる。特に、表面に被覆される塩基性炭酸マグネシウムとは異なる特性をもつ無機微粒子を選択することによって、核となる無機微粒子と被覆する塩基性炭酸マグネシウムとの複合化により、広範多彩な特性を発現する塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子とすることができる。
【0020】
その粒子の具体例を挙げると、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、二酸化マンガンその他の金属酸化物等の酸化物粒子や、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化イットリウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸イットリウム、炭酸亜鉛、炭酸銅、炭酸マンガン、炭酸ジルコニル、炭酸カドミウム、炭酸コバルト、炭酸セリウム、炭酸ニッケル等の炭酸塩粒子、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、塩化銀等のハロゲン化物、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化銀、硫化鉄、硫化銅等の硫化物粒子がある。
【0021】
さらに、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、コバルト酸ニッケル、マンガン酸ランタン、アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、フェライト等の複酸化物粒子、金、銀、白金、パラジウムなどの金属粒子、スメクタイト、セリサイト、ゼオライト、クリストバライト、アパタイト等の鉱物粒子など種々の粒子が核粒子として利用可能である。
【0022】
このうちの酸化物粒子、具体的にはシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニアは、その表面により効率よく塩基性炭酸マグネシウムを被覆でき好適である。特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄は最も効率よく塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶による表面被覆ができ、最も好適である。
【0023】
核となる無機微粒子の粒子径についても、特段の制約はなく、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の用途や利用形態に応じて適宜選択することができる。核となる粒子の様態については、単分散状態であっても、凝集状態であってもよく、単分散粒子あるいは凝集粒子の表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われているのが、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子である。
【0024】
上記した無機微粒子の表面を被覆する塩基性炭酸マグネシウムに関しては、薄片状微細結晶がカードハウス状構造をなしていることが望ましく、該薄片状微細結晶の厚さが0.005〜0.5μm、径が0.1〜10μmであることがより望ましい。薄片状微細結晶からなり、また核粒子表面にカードハウス状構造をなしていることにより、高比表面積、低かさ密度、高吸液性など種々の優れた特性を発現し、薄片状微細結晶の形状を上記厚さ及び径とすることにより、さらに優れた特性を発現させることが可能となる。
【0025】
カードハウス状構造とは、元来、層状粘土鉱物結晶の集合形態を示す用語であり、粘土鉱物結晶の端面と層面との電荷の違いにより、端面と層面とが選択的に接合し、端面同士あるいは層面同士は反発し合うことで形成される、トランプのカードを立体的に組み上げたような構造のことで、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子においても、このようなカードハウス状構造あるいはそれに近い状態で薄片状微細結晶が集合することにより、空隙が多くなり比表面積の増大、吸液性の向上が図れる。
【0026】
また、本発明でいう塩基性炭酸マグネシウムとは、化学式mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表されるものであり、m及びnの値については特に限定はなく、通常の塩基性炭酸マグネシウムとして知られているmの値が3〜5、nの値が3〜8のものなどである。この塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われたのが、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子である。
【0027】
この塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の形状については、核とする粒子の種類、その粒子形状及び分散状態あるいは凝集状態や、核粒子とその表面を覆う塩基性炭酸マグネシウムとの比率、製造条件等を調節することにより様々なものを得ることができ、用途や利用形態等に応じて適宜選択することができる。塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の形状について、具体例を挙げると、球状、楕円体状、柱状あるいは不定形といった形状がある。
【0028】
上記の通り本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の外形は、用途や使用形態によって適宜選択することが可能であるが、望ましくは球状又は楕円体状とすることがよい。球状又は楕円体状とすることによって、粉体としての流動性に優れ、ハンドリングが良好となるばかりでなく、各種製品に配合させた際に、その配合状態を均一にすることができる。さらには、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子をスラリー状態で使用する場合には、球状及び/又は楕円体状であればスラリー粘度を低く抑えることもできる。なお、ここで楕円体状とは、粒子の長径/短径の値が1を超え、2以下のものをいう。
【0029】
このように、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われている本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの特徴である高比表面積、低かさ密度といった優れた粉体物性、及び吸液性などの優れた特性と、核となる粒子のもつ特性とを併せもつ複合粒子とすることができる。また複合化により、塩基性炭酸マグネシウムあるいは核となる粒子の持っている短所を相互に補完しあったり、さらに複合化によって新たな特性を発現することも期待される。
【0030】
具体的には、核粒子として酸化チタンを選択した場合、上記したような塩基性炭酸マグネシウムの優れた特性と、酸化チタンのもつ白色度、不透明性、紫外線遮蔽性などの優れた特性とを併せもつ粒子とすることができる。さらに、酸化チタンは比重が大きいため溶媒中ですぐに沈降し、他成分と分離してしまうという問題点があったが、比重が小さい塩基性炭酸マグネシウムにより表面被覆することにより、沈降を防止あるいは抑制することができる。
【0031】
また、酸化チタン粒子は、その光触媒活性により、樹脂や塗料、紙などに配合された場合に、マトリックスである有機成分を分解し、製品の劣化を起こすといった問題もあったが、本発明のように塩基性炭酸マグネシウムで表面被覆することによって、酸化チタンと有機成分とが直に接触しないため、酸化チタンの光触媒活性による製品の劣化を防止する効果もある。
【0032】
さらに、酸化チタン粒子は、比較的平滑な表面をもつ粒子であるのに対して、本発明の通り塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により被覆されることによって多孔性の表面となるので、吸液性に優れた粒子とすることもできる。また、酸化亜鉛や酸化鉄を核とした場合においても、酸化チタンの場合と同様に、沈降防止や吸液性の向上に効果的である。
【0033】
次いで、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法について述べる。
本発明の製造方法は、塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を添加等により混合することによって、該粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得ることを特徴とするものである。
【0034】
塩基性炭酸マグネシウムを生成させる方法としては、既知の塩基性炭酸マグネシウムの製造方法であるガス法、ソーダ灰法、炭安法等が適用可能である。いずれの方法においても、塩基性炭酸マグネシウムの生成反応は、その反応条件によって、中間生成物として正炭酸マグネシウム(MgCO3・nH2Oで表される炭酸マグネシウム水和物、n=3が一般的)を経る場合と、正炭酸マグネシウムを経ずに直接塩基性炭酸マグネシウムが生成する場合とがある。
【0035】
ガス法とは、水酸化マグネシウムを原料として、その懸濁液に炭酸ガスを導入し塩基性炭酸マグネシウムを生成させる方法である。ソーダ灰法とは、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム等の水溶性マグネシウム塩溶液を原料として、該溶液と炭酸ナトリウム(ソーダ灰)とを混合して塩基性炭酸マグネシウムを生成させる方法である。また、炭安法とは、ソーダ灰法での炭酸ナトリウムの代わりに炭酸アンモニウムあるいは炭酸水素アンモニウムを用いる方法である。
【0036】
これら塩基性炭酸マグネシウムの製造方法の中でも、ガス法は、核粒子の表面に塩基性炭酸マグネシウムをより効果的に被覆することができ、また比較的安価な水酸化マグネシウムと、燃焼排ガスなどの二酸化炭素含有ガスとを原料として用いることもできる。したがって、本発明においては、塩基性炭酸マグネシウムの製造方法として、ガス法を適用することが望ましい。
【0037】
このような塩基性炭酸マグネシウムを生成させる過程において、すなわち塩基性炭酸マグネシウムの生成が完了する以前に、無機微粒子を添加等で混合することにより、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得ることができる。核となる粒子を混合する時期に関しては、前記した通り塩基性炭酸マグネシウムの生成が完了する以前であればよいが、望ましくは塩基性炭酸マグネシウムの生成過程のなかで中間生成物である正炭酸マグネシウムの析出が完了した後であることが良い。この時期に核粒子を添加等により混合することによって、核粒子の表面をより効率よく塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により被覆することが可能となる。なお、中間生成物として正炭酸マグネシウムが析出しない条件で塩基性炭酸マグネシウムを生成させる場合においては、この限りでない。
【0038】
混合する核粒子としては、既に述べた通りの酸化物粒子や水酸化物粒子、炭酸塩粒子、ハロゲン化物粒子、硫化物粒子、複酸化物粒子、金属粒子、鉱物粒子など使用することが可能である。このなかでも酸化物粒子は、効率よくその粒子表面に塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶を被覆することができ好適であり、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄は最も効率よくその粒子表面に塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶を被覆することができ最も好適である。
【0039】
添加する際の核粒子の形態については、粉末状態であっても、懸濁液の状態であってもよく、目的とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の性状に応じて適宜選択すればよい。例えば、単分散状態の核粒子表面に塩基性炭酸マグネシウムを被覆したい場合には、超音波照射処理、せん断応力等による物理的分散処理又は分散剤の使用などにより、分散処理を施した懸濁液の状態とすればよい。
【0040】
塩基性炭酸マグネシウムを生成させる条件については、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の用途や利用形態等に応じて、反応条件等を適切に選定し、目的とする形状の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子が得られるように調節することが望ましい。球状の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得たい場合には、高温域で塩基性炭酸マグネシウムを生成させる条件がよい。例えば、水酸化マグネシウムと炭酸ガスとを用いるガス法においては、水酸化マグネシウム懸濁液に炭酸ガスを導入する際の温度を、80℃すると球状及び/又は楕円体状の塩基性炭酸マグネシウムが生成しやすくなる。
【0041】
また、柱状の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を得たい場合には、比較的低温域で塩基性炭酸マグネシウムを生成させることがよい。例えば、ガス法においては、水酸化マグネシウム懸濁液に炭酸ガスを導入する際の温度を30℃とすると、中間生成物として正炭酸マグネシウムの柱状粒子が析出し、その後45℃で塩基性炭酸マグネシウムを生成させると、柱状あるいはそれに近い形状の塩基性炭酸マグネシウムが生成しやすくなる。いずれにしても、用途や使用形態に応じた適切な粒子形状となるように、塩基性炭酸マグネシウムの生成条件を調節することが望ましい。
【0042】
核粒子を添加した後は、塩基性炭酸マグネシウムの生成が完了するまで反応を継続させることが望ましい。塩基性炭酸マグネシウムの生成完了については、反応液のpHや導電率などを観測することによって判断することができる。例えば、ガス法において、正炭酸マグネシウムを中間生成物として経て塩基性炭酸マグネシウムが生成する場合、塩基性炭酸マグネシウムの生成途上であると液のpHは徐々に低下していくのに対して、生成が完了するとpHはほぼ一定で推移する。このようにして本発明の製造方法においては、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を製造することができる。
【0043】
本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、その用途に応じて懸濁液の状態、あるいは乾燥させ乾燥粉の状態として利用することができる。懸濁液の状態で利用する場合、反応後の懸濁液をそのまま用いてもよいが、懸濁液中に含有される不純分が用途によっては悪影響を及ぼすこともあるので、適宜、水やその他の溶媒で置換、除去してもよい。
【0044】
乾燥粉の状態で利用する場合、脱水工程や乾燥工程を経ることによって乾燥粉を得ればよい。ただし、乾燥工程において乾燥凝集が起こった後の工程で解砕が必要となることもあり、場合によっては解砕することにより粒子形状が破壊される現象も認められる。したがって、乾燥粉を得るためのより望ましい手法としては、生成後の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の懸濁液の溶媒をアルコールなどの有機溶媒で置換するか、あるいは脱水後にアルコールなどの有機溶媒による洗浄工程を設け、その後乾燥させる方法がよい。
【0045】
このようなアルコールなどの有機溶媒による溶媒の置換または洗浄を行うことによって、乾燥による凝集が抑えられた乾燥粉が得られる。なお、ここで用いる有機溶媒としては、塩基性炭酸マグネシウムの溶解度が低いものが好適であり、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、アセトンなどが使用できる。
【0046】
また、有機溶媒による溶媒の置換または洗浄を行わなくても、乾燥凝集が起こり難い乾燥方法を採用しても良く、例えばスプレードライヤー、流動層乾燥機、真空乾燥機、真空凍結乾燥機あるいは攪拌乾燥機等を用いれば、乾燥凝集の抑制された乾燥粉を得ることができる。さらに、得られた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を、脂肪酸塩や樹脂酸塩カップリング剤をはじめとする各種界面活性剤などの有機系表面処理剤、あるいはリン酸塩や硫酸塩などの無機系表面処理剤にて処理し、各分野で利用しても何ら差し支えない。
【0047】
上記方法によって得られる塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われたものとなる。そして、表面に被覆された塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶という形状、及びカードハウス状構造という集合形態とにより、高比表面積、高吸油性、高吸水性、低嵩密度、多孔性など種々の優れた特性を有するばかりでなく、核となる粒子の特性をも併せもった粒子となる。さらには、塩基性炭酸マグネシウムと核粒子とが、お互いの短所を補完しあったり、複合化により新たな特性や機能性をも発現することも期待されるものである。
【0048】
次ぎに、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有する用途付き組成物に関し説明する。本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、上記の通り種々の優れた特性を有していることから様々な分野での使用が可能である。
すなわち、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を各種の製品に含有させることにより、該製品に塩基性炭酸マグネシウムの特性及び内包された微粒子の特性、さらにはそれらが複合化していることにより発現する特性を付与することが可能となる。
【0049】
特に、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、填料又は顔料として好適に使用可能であり、該被覆複合粒子を含有する填料又は顔料は、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶及びそれがカードハウス状構造をなし集合していることに由来して、液中において沈降しにくい難沈降性という特性や、吸油性や吸水性に優れる高吸液性という特性を有するものとなる。さらに、両者の複合化により新たな特性をも発揮することが期待されるものである。
【0050】
また、塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の外形を球状及び/又は楕円体状とすることにより、粉体としての流動性が高くなり、ハンドリング性に優れる填料又は顔料とすることができる。その他にも、液中に分散させたスラリーの状態で使用する場合には、スラリーの粘度を低く抑えることができたり、スラリー中への高配合が可能となるなどの特長も有する。
【0051】
以下に、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を用いる組成物について具体例を挙げて説明する。例えば、酸化チタンを核とした塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの高比表面積、高細孔容積、低かさ密度、高吸液性などの優れた特性と、酸化チタンのもつ高不透明性、高隠蔽性、紫外線遮蔽性などの特性を併せもった填料又は顔料として有効であるほか、酸化チタン粒子が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶で覆われているので、酸化チタンの欠点であった易沈降性や光触媒活性による製品の劣化などの問題点を解決することもできる。
【0052】
また、マグネタイト(四三酸化鉄)を核とした塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、酸化チタンを内包したものと同様に、比重が大きく液中で沈降しやすいマグネタイトの欠点を解決できるほか、マグネタイトは吸油性や吸水性に乏しい粒子であるのに対して、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶で被覆されていることにより、吸液性に優れた顔料等とすることもできる。さらに、2種以上の顔料微粒子を核とすることもでき、2種以上の顔料微粒子を核とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、種類の異なる顔料微粒子の分離防止にも効果的である。
【0053】
そして、これら酸化チタンやマグネタイト等を核とし、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有する難沈降性及び/又は高吸液性を有する填料又は顔料が、本発明の填料又は顔料である。これらの填料又は顔料は、塗料、インク、塗工剤、紙、プラスチック、ゴムなどに配合することが可能である。すなわち塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を填料又は顔料として、塗料、インク、塗工剤、紙、プラスチック、ゴムなどに配合することが可能である。
【0054】
このうちの塗料、インク、塗工剤は、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を含有させることによって、該被覆複合粒子の優れた特性を最も効果的に発現させることができる。例えば、酸化チタンを核として塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を塗料に含有させることにより、酸化チタンの効果によって不透明性、白色性に優れた塗料となることは勿論のことである。
【0055】
さらに、酸化チタンが、塩基性炭酸マグネシウムの管状凝集粒子と複合化していることによって、塗料液中での固−液の分離が抑制できたり、酸化チタンの光触媒活性による塗膜面の劣化を抑制できる優れた塗料とすることができる。酸化チタン以外にも、各種の有色顔料を内包させても、固−液の分離が抑制され、長期保存性に優れ、また使用前の撹拌が不要あるいは簡易になる塗料とすることができる。
【0056】
インクへの適用については、例えば、修正ペン等に使用される白色インクに、酸化チタンを核となる塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を配合すれば、インク液中での固−液の分離が抑制できるばかりでなく、塩基性炭酸マグネシウムの特性である高吸液性の効果で、白色インク塗布面上に上書きする際の、筆跡の滲みを抑制し、より明瞭な筆跡とすることができる。
【0057】
同様に、製紙用等に用いられる塗工剤中に、本発明の被覆複合粒子を含有させれば、核とする粒子の光学特性のほか、塩基性炭酸マグネシウムの高吸液性によって、印刷適性や印刷後不透明度等が優れた塗工紙を得るのに好適な製紙用塗工剤とすることができる。これら塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を填料又は顔料として含有する、塗料、インク、塗工剤が、本発明の塗料、インク、塗工剤である。
【0058】
【実施例】
以下において、本発明の実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0059】
[実施例1]
水酸化マグネシウム懸濁液(30g/L)2.0Lに、液温を20℃に保持、撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/minの速度で30分間導入した後、液温が45℃になるように加温しながら撹拌して正炭酸マグネシウムを生成させ、この生成した正炭酸マグネシウムの懸濁液に、酸化チタン(粒子径0.2〜0.3μm)20gを250mLのイオン交換水に超音波分散させた懸濁液を添加した。
【0060】
その後液温が70℃になるように加温しながら撹拌して塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。生成物をSEM及びTEMにて観察したところ、その外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜10μmの球状及び楕円体状(長径/短径=1〜1.4)の凝集粒子で、その内部に粒子径0.2μmの酸化チタン粒子が核をなしている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子であることが確認された。
【0061】
[実施例2]
水酸化マグネシウム懸濁液(30g/L)2.0Lに、マグネタイト(四三酸化鉄、粒子径0.7〜0.9μm)20gを300mLのイオン交換水に分散させた懸濁液を添加した後、液温を60℃に保持、撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/minの速度で導入して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。
【0062】
生成物をSEMおよびTEMにて観察したところ、その外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜15μmの球状及び楕円体状(長径/短径=1〜1.6)の凝集粒子で、その内部に粒子径0.7〜0.9μmのマグネタイト粒子が核となっている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子であることが確認された。
【0063】
[実施例3]
水酸化マグネシウム懸濁液(30g/L)2.0Lに、液温を20℃に保持、撹拌しながら、二酸化炭素25容量%と空気75容量%とからなる二酸化炭素含有ガスを8.0L/minの速度で30分間導入した後、液温が30℃になるように加温しながら撹拌して正炭酸マグネシウムを生成させ、生成した正炭酸マグネシウムの懸濁液に、酸化亜鉛(粒子径0.2〜0.5μm)15gを300mLのイオン交換水に超音波分散させた懸濁液を添加した。
【0064】
その後、液温が35℃になるように加温しながら撹拌して塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。生成物をSEM及びTEMにて観察したところ、その外形は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜20μmの楕円体状(長径/短径=1.4〜1.8)の凝集粒子で、その内部に粒子径0.2〜0.5μmの酸化亜鉛粒子が核をなしている塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子であることが確認された。
【0065】
[比較例1]
マグネタイトの添加を、塩基性炭酸マグネシウムの生成完了後に行った以外は、実施例2と同様の操作を行った。
生成物をSEM及びTEMにて観察したところ、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合した径5〜15μmの球状及び楕円体状(長径/短径=1〜1.4)の凝集粒子と、添加したマグネタイト粒子とが確認されたが、両者は複合化しておらず、互いに独立した粒子であった。
【0066】
[生成物の評価]
実施例にて得られた塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子、実施例1で使用した酸化チタン、実施例2で使用したマグネタイト、実施例3で使用した酸化亜鉛について、塗料、インク、塗工剤等の用途で重要な項目である吸液性及び沈降性の評価試験を行った。
【0067】
なお、この評価試験を行うのは、該用途においては、沈降性が低い、すなわち沈降し難ければ固形分と液相とが分離し難く、使用前の撹拌が必要なくなったり又は軽い撹拌のみで使用できるというメリットがあるからである。また吸液性に関しては、例えば修正液として使用される白色インク用途で、油や水などの吸液量が多い方が重ね書き時の筆跡の滲みを防止できるという利点がある。
【0068】
吸液性試験は、液成分として亜麻仁油及び精製水を用いた。亜麻仁油の吸液量はJIS K5101の吸油量に準拠して測定を行い、精製水の吸液量は亜麻仁油の代わりに精製水を使いJIS K5101と同様に測定を行った。また沈降性試験は、2.50gの粉体を100mLの精製水に分散させた懸濁液を100mLメスシリンダーに入れ、一定時間ごとに固形分の沈降容積を計測することにより評価を行った。各評価結果を表1及び図1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
その結果、すなわち表1及び図1によれば、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、一般的に顔料あるいは填料として使用されている酸化チタンやマグネタイト、酸化亜鉛と比べて、吸液量が高く、かつ沈降性が低いことがわかる。また、塩基性炭酸マグネシウムとマグネタイトとが複合化していない比較例の生成物の場合には、液中で両者が分離してしまうのに対して、実施例の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、核粒子と塩基性炭酸マグネシウムとが効果的に複合化していることが理解できる。このような難沈降性や高吸液性という特性により、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子を塗料、インク、塗工剤等の填料あるいは顔料として使用することにより、これら製品の品質向上に効果的であるといえる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われた複合粒子であり、表面被覆された塩基性炭酸マグネシウムの高比表面積、低かさ密度、高吸液性などの特性と、核粒子のもつ種々の特性とを併せもった複合粒子となる。
したがって、本発明の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子は、難沈降性及び/又は高吸液性を有する填料又は顔料等として優れた効果を発揮し、特に塗料、インク、塗工剤などに填料又は顔料として含有させることによってこれら製品の品質向上、機能向上に寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】沈降試験における経過時間と沈降容積との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた酸化チタンを核とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の外形及び表面性状を表す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】実施例1で得られた酸化チタンを核とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の内部構造を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
Claims (11)
- 無機微粒子を核として、その表面が塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆われていることを特徴とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子。
- 塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶がカードハウス状構造をなす、請求項1に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子。
- 塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶の厚さが、0.005〜0.5μm、径が0.1〜10μmである請求項1又は2に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子。
- 外形が球状及び/又は楕円体状である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子。
- 無機微粒子が酸化物粒子である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子。
- 無機微粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化鉄である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子。
- 塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、無機微粒子を混合することにより無機微粒子を核として、その表面を塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶により覆うことを特徴とする塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法。
- 塩基性炭酸マグネシウムの生成をガス法により行う、請求項7に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法。
- 塩基性炭酸マグネシウムの生成過程において、正炭酸マグネシウムの析出が完了した後に無機微粒子を混合する請求項7又は8に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子の製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子が含有された難沈降性及び/又は高吸液性を有する填料又は顔料。
- 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塩基性炭酸マグネシウム被覆複合粒子が含有された塗料、インク又は塗工剤。
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