JP2004329094A - 茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤 - Google Patents

茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤 Download PDF

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Abstract

【課題】茶飲料などの茶使用飲食品用に添加したときに、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を発現させることができる、茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤および香味組成物、並びに前記した優れた香気を有する茶飲料の提供。
【解決手段】ラズベリーケトンを有効成分とする茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤、ラズベリーケトンを添加含有させてなる茶使用飲食品用の香味組成物、並びにラズベリーケトンを10−3〜10ppbの濃度で添加してなる茶飲料によって上記の課題が解決される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤、フレーバーエンハンス成分を添加含有する香味組成物および茶飲料に関する。より詳細には、本発明は、茶飲料などの茶使用飲食品の香質を向上させて、コク、重厚感、深み、丸みがあって、馥郁とした香味を有する茶使用飲食品を得ることのできる、茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤、香味組成物および茶飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】
緑茶、焙じ茶、紅茶、ウーロン茶などの種々の茶飲料が、生活に無くてはならない必需品として、多くの人々に日常的に飲まれている。家庭などで茶を入れる場合には、茶葉の品種、産地、茶を入れる際の湯温、茶の入れ方などによって、味や香りが大きく変わり易く、コク、重厚感、丸み感、インパクト感があって、香味に優れる茶を入れることはかなり難しい。また、入れたてはおいしいお茶も、時間が経つとその香味が大幅に低下し易い。
【0003】
また、近年、製造技術、保存技術、流通技術などの向上によって、家庭などで茶葉を用いて直接茶を入れるだけではなく、工場で茶葉から茶エキスを水やお湯などで抽出し、その抽出液を茶飲料としてペットボトルや缶などの容器に充填した容器入りの茶飲料が、店頭や自動販売機で販売され、大量に消費されている。容器入りの茶飲料は、製造から消費者に飲まれるまでにかなりの時間が経過している場合が多く、時によっては製造から半年以上も経ってから飲まれることもある。工場で製造された容器入りの茶飲料は、時間の経過と共にその味や香りが徐々に低下し易く、そのため消費者は、製造直後の茶飲料が本来有する良好な味や香りを直接味わえない場合が多い。
【0004】
そこで、容器などに充填して販売される茶飲料などにおいて、時間が経過しても風味の低下がなく、製造直後の良好な風味を維持した茶飲料を消費者に提供することを目的として、また製造時点から香味の向上した茶飲料を提供することを目的として、茶飲料中に風味の改良剤や向上剤を添加したり、茶飲料などに添加する茶香気成分の品質の向上を図ることが従来から行われている。
【0005】
そのような従来技術としては、例えば、パームカロチンなどの特定のカロチンの熱分解物を茶飲料に添加して香りの補強をはかり、嗜好品としての価値を高める技術が知られている(特許文献1等を参照)。しかしながら、この技術で用いているカロチンの熱分解物の香気は、花香調であるため、茶の香気として必ずしも適しておらず、茶飲料の香気を十分に向上させることは困難であった。
【0006】
また、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール(特許文献2等を参照)、4−メルカプト−4−メチル−2−ペンタノン(特許文献3等を参照)を茶飲料用の添加剤として用いることが提案されている。これらの技術による場合は、柔らかくふくよかなグリーン香や軽く穏やかなグリーン香といったグリーン系の香りの再現は可能であるが、熟成感を伴い、深みのある茶葉をイメージする香気を付与することはできなかった。
【0007】
さらに、特定のチオール系化合物またはチオールエステル系化合物を緑茶飲料に添加して緑茶飲料の経時的な劣化を防止することが提案されている(特許文献4等を参照)。しかしながら、この技術による場合は、グリーン系の香りの再現は可能であるが、熟成感を伴い、深みのある茶葉をイメージする香気を付与することはできなかった。
【0008】
また、上記した従来技術とは別の技術として、茶類を水蒸気蒸留して得られる留出液を茶葉と接触させて、留出液中の加熱蒸留臭を除去した茶類フレーバーを製造する方法(特許文献5等を参照)、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸ナトリウムの添加存在下に、茶葉を蒸留して安定な香気成分を回収する方法(特許文献6等を参照)が知られている。しかしながら、これらの方法で得られた香気成分は十分に安定ではなく、経時的に劣化が進行し、根本的な解決とはならなかった。
【0009】
また、茶粉末や茶葉から抽出した茶エキスなどは、茶飲料に限らず、例えば、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;菓子パン、食パン等のパン類;フラワーペースト等のフィリング剤;饅頭、羊かん、ういろう等の和菓子類;錠菓類:そば、パスタなどの麺類などの種々の食品にも用いられている。茶粉末や茶エキスなどを用いて製造されたそれらの茶使用飲食品においても、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶本来の香気を発現させることが望まれているが、そのような要望を十分に満足することのできる方法は未だ見いだされていない。
【0010】
茶類には、緑茶(不発酵茶)、紅茶(発酵茶)、ウーロン茶(半発酵茶)等があり、これらの茶類を構成する香気には、フローラル香、スイート香、グリーン香などの香気、酸臭、フェノール臭、枯草感、渋味感、苦味感などを付与する香りなどがあるが、これまで広く知られていた茶香気を構成する香気成分では、熟成感を伴い、深みのある茶葉様の香気を表現することは困難であった。
【0011】
【特許文献1】
特開昭63−98353号公報
【特許文献2】
特許第3026436号公報
【特許文献3】
特許第3026437号公報
【特許文献4】
特開2003−24005号公報
【特許文献5】
特開平8−116882号公報
【特許文献6】
特開平8−73886号公報
【非特許文献1】
日本香料協会編 「香りの総合辞典」 株式会社 朝倉書店、1998年12月10日、p298
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、茶を用いた飲食品に添加したときに、コク、重厚感、丸みがあって、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶本来の香気を発現させることのできるフレーバーエンハンス用の添加剤および香味組成物を提供することである。
さらに、本発明の目的は、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を有する茶飲料を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく検討を重ねてきた。その結果、極めて微量のラズベリーケトンを単独で、または他の成分と混合して、或いは他の香味成分と混合して香味組成物の形態で、茶飲料や、茶飲料以外の茶使用飲食品に添加すると、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を茶飲料またはそれ以外の茶使用飲食品に発現させ得ることを見出し、そのような知見に基づいて本発明を完成した。
【0014】
ラズベリーケトンは、化学名:4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノンまたはp−ヒドロキシベンジルアセトンであり、天然にはラズベリーなどに存在する。ラズベリーケトンは、ラズベリーなどの天然物から抽出して得ることもできるし、化学合成によって製造することもできる。
ラズベリーケトンは、甘くソフトなラズベリー、ストロベリー様香気を有し、ラズベリーの香気成分の中で最も重要な成分である。
ラズベリーケトンは、これまで、主としてラズベリー、ストロベリー、パイナップル、ピーチなどの果実用フレーバーに用いられている。また、ラズベリーケトンは、香粧品香料において、ジャスミン、ガーデニア、チュベローズなどのフローラル系香料などにフルーティノートを与える目的でも使用されている(非特許文献1等を参照)。
【0015】
ラズベリーケトンの匂いは、甘くソフトなラズベリー、ストロベリー様香気で、固体状態では香気は弱いが希釈すると香りがでてくる。果実用フレーバーや化粧品香料としての使用においては、最終製品におけるラズベリーケトンの濃度は通常5〜54ppmとされ、その範囲において甘くソフトなラズベリー、ストロベリー様香気を感じるものとなる。
【0016】
上記のように、ラズベリーケトンは、ラズベリーまたはストロベリー様の甘いソフトな匂いの付与を目的として従来専ら用いられてきたため、ラズベリーケトンを苦味や渋味を伴う茶類用のフレーバーとして用いることは従来行われていなかった。また、ラズベリーケトンが茶類の香気成分、特に緑茶などの不発酵茶やウーロン茶などの半発酵茶の香気成分をなすとの報告もなされていない。
【0017】
そのような状況下に、本発明者らは、ラズベリーケトンを、従来用いられてきたppmのオーダーよりもはるかに少ない、ppbのオーダーで茶飲料やそれ以外の茶使用飲食品に添加したところ、ラズベリーケトン自体のフレーバーとして従来認識されてきたラズベリーまたはストロベリー様の甘いソフトな香りからは考えられない、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を増強させる作用があることを見出したのであり、本発明者らの見出ししたそのような知見は、ラズベリーケトンの本来のフレーバーからすると、全く予想外のことであった。
【0018】
したがって、本発明は、
(1) ラズベリーケトンを有効成分とすることを特徴とする茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤である。
そして、本発明は、
(2) 茶飲料用である前記(1)の添加剤である。
【0019】
さらに、本発明は、
(3) ラズベリーケトンを添加含有させてなることを特徴とする茶使用飲食品用の香味組成物である。
そして、本発明は、
(4) ラズベリーケトンの添加濃度が10−3〜10ppbである前記したした(3)の香味組成物;および、
(5) 茶飲料用である前記(4)の香味組成物;
である。
【0020】
また、本発明は、
(6) ラズベリーケトンを10−3〜10ppbの濃度で添加したことを特徴とする茶飲料である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
ラズベリーケトンを有効成分とする本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤およびラズベリーケトンを含有する本発明の香味組成物は、茶使用飲食品中に添加含有させて、茶使用飲食品における茶の風味や香りの質を向上させ、コク、重厚感、丸みがあって、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を茶使用飲食品において増強させるための剤および組成物である。
したがって、本明細書でいう「フレーバーエンハンス用の添加剤」とは、茶使用飲食品に添加したときに、茶のフレーバー(香り)を向上させて、コク、重厚感、丸みがあって、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を増強させる作用を有する剤を意味する。
【0022】
本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤は、ラズベリーケトン単独からなっていてもよいし、またはラズベリーケトンと他の成分を含む混合物の形態であってもよい。ラズベリーケトンは固体状であり、しかも茶使用飲食品中に添加する際には極めて微量で使用されるため、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンなどの溶剤に溶解させて、茶使用飲食品中に添加することが、茶使用飲食品に添加する際の取扱性が良好になり、茶使用飲食品におけるラズベリーケトンの濃度の調整が容易になり、しかも均一に可溶化することができる点から好ましい。
フレーバーエンハンス用の添加剤が、ラズベリーケトンと他の成分を含む混合物である場合は、上記した溶剤以外にも、必要に応じて、例えば、アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤などを混合してもよい。
【0023】
また、本発明の「ラズベリーケトンを添加含有する、茶使用飲食品用の香味組成物」とは、茶使用飲食品に用いられる香味料または香味料を含む混合物中にラズベリーケトンを更に添加含有させた組成物をいう。
ラズベリーケトンを添加混合する香味料や香味料混合物の例としては、茶葉を常法により熱水、温水又は冷水で抽出して得られる茶抽出液(茶エキス液)を蒸留して得られる茶溜出液、茶の香味成分を調合して得られる香料混合物などを挙げることができる。香料混合物の調合に使用される茶の香味成分には特に制限はなく、例えば、(Z)−3−ヘキセノール、β−イオノン、ヘキサナール、リナロールオキサイド、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、(E)−2−ノネナール、リナロール、サリチル酸メチル、フェニルエチルアルコール、バニリン、フェニル酢酸、インドール、ジャスミンラクトン、メチルジャスモネート、メチルシス−ジャスモネート、ゲラニオール、シスジャスモン、ホートリエノール、3−メチルノナン−2,4−ジオン、シス−4−ヘプテナール、γ−ヘキサラクトン、γ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、ダマセノン、2,4−ヘプタジエナール、4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオールなどの公知の茶用香味成分の1種または2種以上を目的に応じて適宜混合して用いることができる。
【0024】
香味組成物では、ラズベリーケトンや上記した香味成分は、溶剤(水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンなど)中に溶解させた形態にしておくことが、茶使用飲食品に添加する際の取扱性に優れ、茶使用飲食品におけるラズベリーケトンの濃度の調整が容易であり、しかも均一に可溶化することができるなどの点から好ましい。また、香味組成物は、ラズベリーケトン、上記した香味成分、溶剤以外に、必要に応じてアラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤などを含有することができる。
【0025】
本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤または香味組成物を添加含有させる茶使用飲食品で用いられる「茶」は、不発酵茶、半発酵茶および発酵茶のいずれでもよく、具体例としては、緑茶、ウーロン茶、紅茶、柿の葉茶、カミツレ茶、熊笹茶、桑茶、甜茶、ドクダミ茶、プアール茶、マテ茶、ルイボス茶、ギムネマ茶、グアバ茶などを挙げることができる。
そのうちでも、本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤および香味組成物は、不発酵茶または半発酵茶を使用して得られる飲食品、特に不発酵茶の代表である緑茶または半発酵茶の代表であるウーロン茶を使用して得られる飲食品の香気向上用の添加剤および香味組成物として好適に用いられる。
【0026】
また、本発明における「茶使用飲食品」とは、上記したような茶自体(茶葉、茶粉末、茶の茎など)、或いは茶自体(茶葉、茶粉末、茶の茎など)を用いるかまたは茶粉末、茶葉、茶の茎などから抽出した茶エキスなどを用いて製造した飲食品などを意味し、そのような飲食品であればその種類を問わず、いずれでもよい。茶粉末、茶の茎、またはそれらから抽出した茶エキスなどを用いて製造した茶使用飲食品の具体例としては、各種の茶飲料;茶類の粉末や抽出液(エキス)等を添加したアイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;ケーキ、クッキー、チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;菓子パン、食パン等のパン類;饅頭、羊かん、ういろう等の和菓子類;錠菓類:フラワーペーストなどのフィリング剤;そば、素麺、パスタなどの麺類などの種々の食品を挙げることができる。
そのうちでも、本発明のフレーバーエンハンサー用の添加剤および香味組成物は、茶飲料、特に不発酵茶または半発酵茶を使用して得られる茶飲料に添加して用いることが好ましく、緑茶飲料およびウーロン茶飲料に添加して用いることがより好ましい。
茶飲料としては、茶葉を常法により熱水、温水又は冷水で抽出して得られる茶抽出液(茶エキス液)、茶の香味成分を適宜調合して得られる茶香味を含有する調合飲料などを挙げることができる。
本発明のフレーバーエンハンサー用の添加剤または香味組成物を添加した茶飲料は、従来の茶飲料と同様に、ペットボトル、缶などの容器に充填して流通、販売することができ、製造後に時間が経過しても、その優れた香味は良好に維持される。
【0027】
本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤または香味組成物を、茶使用飲食品に添加することによって、ラズベリーケトンでフレーバーエンハンスされた茶使用飲食品を得ることができる。
茶使用飲食品が茶飲料である場合は、茶飲料中でのラズベリーケトンの添加含有量(添加濃度)が、好ましくは10−3〜10ppb、より好ましくは10−2〜10ppb、さらに好ましくは10−1〜10ppbになるような量でフレーバーエンハンス用の添加剤または香味組成物を茶飲料に添加するのがよい。茶飲料におけるラズベリーケトンの添加濃度を前記の範囲にすることによって、茶のフレーバー(香り)を向上させて、コク、重厚感、丸みがあって、熟成感を伴った、深みのある、茶類本来の馥郁とした香味を有する茶飲料を得ることができる。
【0028】
茶飲料におけるラズベリーケトンの添加濃度が10−3ppb未満であると、他の香味成分などを併用しても相乗効果が生じず、茶本来の香味を向上させることが困難である。一方、茶飲料におけるラズベリーケトンの添加濃度が10ppb(10ppm)を超えると、ラズベリーケトンの甘い匂いが強くなり、茶本来の香味が損なわれ、茶飲料とはイメージの異なる飲料になり易い。
【0029】
本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤が、ラズベリーケトン単独からなる場合は、茶飲料におけるラズベリーケトンの添加含有濃度が、前記した範囲になるような量で、ラズベリーケトンを茶飲料中に添加含有させるとよい。
また、本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤がラズベリーケトンと他の成分との混合物である場合や、本発明の香味組成物においては、これらの混合物および香味組成物におけるラズベリーケトンの濃度を、好ましくは10−3〜10ppb、より好ましくは10−2〜10ppb、さらに好ましくは10−1〜10ppbにしておくと、ラズベリーケトンの添加濃度が上記した範囲、すなわち10−3〜10ppb、特に10−2〜10ppb、さらには10−1〜10ppb範囲にある茶飲料を円滑に製造することができる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、%は質量%を意味するものとする。
【0031】
《実施例1》
緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液100質量部に対し、ラズベリーケトンの1ppmエタノール溶液を1質量部の割合で加えて、ラズベリーケトンを10ppbの濃度で含有する本発明の緑茶飲料を得た。このものは熟成感を伴い、深みのある茶葉様のイメージする香気を持ったものであった。
【0032】
《実施例2》
(1) 緑茶葉1kgに温度90℃のお湯30リットルを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液を100倍の濃度に濃縮して、緑茶飲料用香味組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた緑茶飲料用香味組成物100質量部に対し、ラズベリーケトンの100ppmエタノール溶液を1質量部の量で加えて、ラズベリーケトンを100ppb含有する本発明の茶飲料用の香味組成物を製造した。
(3) 上記(2)で得られ香味組成物を、緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液100質量部に対し1質量部の割合で添加して、ラズベリーケトンを添加含有する緑茶飲料(ラズベリーケトンの濃度;約10ppb)を製造した。これにより得られた緑茶飲料は、熟成感を伴い、深みのある茶葉様をイメージする香気を持った緑茶飲料であり、しかも24時間経過後も、その良好な香気が失われずに維持されていた。
【0033】
《実施例3》
(1) 下記の表1に示す緑茶飲料用の香味組成物100質量部にラズベリーケトンの100ppmエタノール溶液を5質量部の量で加えて、ラズベリーケトンを5ppmの濃度で含有する本発明の香味組成物を調製した。
【0034】
【表1】
Figure 2004329094
【0035】
(2) 緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液100質量部に、上記(1)で得られた香味組成物を0.1質量部の量で加えて、ラズベリーケトンを5ppbの濃度で含有する緑茶飲料を製造した。
(3) 上記(2)で得られた緑茶飲料を、下記の表2に示す評価基準(7段階評価)にしたがって8名のパネルにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0036】
《比較例1》
緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液[実施例3の(2)で用いたのと同じ緑茶抽出液](ラズベリーケトンを添加してない茶飲料)を、そのまま8名のパネルに飲んでもらい、下記の表2に示す評価基準(7段階評価)にしたがって評価してもらってその平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0037】
《比較例2》
(1) 上記の表1の緑茶飲料用の香味組成物100質量部に、ラズベリーケトン2質量部を加えて、ラズベリーケトンを2%(2×10ppb)の濃度で含有する緑茶飲料用の香味組成物を調製した。
(2) 緑茶葉10gに温度90℃のお湯300mlを注ぎ、約1分間放置してから茶葉を濾して得られた緑茶抽出液[実施例3の(2)で用いたのと同じ緑茶抽出液]100質量部に、上記(1)で得られた香味組成物1質量部を加えて、ラズベリーケトンを200ppm(2×10ppb)の濃度で含有する緑茶飲料を製造した。
(3) 上記(2)で得られた緑茶飲料を、下記の表2に示す評価基準(7段階評価)にしたがって8名のパネルにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0038】
【表2】
Figure 2004329094
【0039】
【表3】
Figure 2004329094
【0040】
上記の表3に見るように、ラズベリーケトンを10−3〜10ppbの範囲内の添加濃度で含有する実施例3の緑茶飲料は、熟成感を伴った、深みのある重厚な香味を有している。
それに対して、ラズベリーケトンを含有しない比較例1の緑茶飲料は、実施例3の茶飲料に比べて香味に劣っている。
また、ラズベリーケトンを添加含有させたものの、その添加濃度が200ppm(2×10ppb)と高く、本発明の範囲から外れている比較例2の緑茶飲料は、緑茶の風味が大きく損なわれていて、緑茶飲料らしくないことがわかる。
【0041】
《実施例4》
ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液100質量部に対し、ラズベリーケトンの1ppmエタノール溶液を1質量部の量で加え、ラズベリーケトンを10ppb含有する本発明のウーロン茶飲料を得た。このものは熟成感を伴い、深みのあるウーロン茶葉様のイメージする香気を持ったものであった。
【0042】
《実施例5》
(1) ウーロン茶葉1kgに温度100℃のお湯30リットルを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液を100倍の濃度に濃縮して、ウーロン茶飲料用の香味組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた香味組成物100質量部に対して、ラズベリーケトンの100ppmエタノール溶液を2質量部の量で加え、ラズベリーケトンを2ppm(2×10ppb)の濃度で含有する本発明のウーロン飲料用の香味組成物を製造した。
(3) ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液100質量部に、上記(2)で得られた香味組成物1質量部を添加して、ラズベリーケトンを約20ppb)の濃度で含有するウーロン茶飲料を製造した。このウーロン茶飲料は、熟成感を伴い、深みのあるウーロン茶葉様をイメージする香気を有していた。しかも、24時間経過後も、その良好な香気が失われずに維持されていた。
【0043】
《実施例6》
(1) 下記の表4のウーロン茶飲料用の香味組成物100質量部に、ラズベリーケトンの100ppmエタノール溶液を5質量部の量で加え、ラズベリーケトンを5ppmの濃度で含有する本発明の香味組成物を調製した。
【0044】
【表4】
Figure 2004329094
【0045】
(2) ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液100質量部に、上記(1)で得られた香味組成物を0.1質量部の量で加えて、ラズベリーケトンを5ppbの濃度で含有するウーロン茶飲料を製造した。
(3) 上記(2)で得られたウーロン茶飲料を、下記の表5に示す評価基準(7段階評価)にしたがって8名のパネルにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0046】
《比較例3》
ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液[実施例6の(2)で用いたのと同じウーロン茶抽出液](ラズベリーケトンを添加してない茶飲料)を、そのまま8名のパネルに飲んでもらい、下記の表5に示す評価基準(7段階評価)にしたがって評価してもらってその平均値を採ったところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0047】
《比較例4》
(1) 上記の表4の緑茶飲料用の香味組成物100質量部に、ラズベリーケトン2質量部を加えて、ラズベリーケトンを2%(2×10ppb)の濃度で含有するウーロン茶飲料用香味組成物を調製した。
(2) ウーロン茶葉10gに温度100℃のお湯300mlを注ぎ、約3分間放置してから茶葉を濾して得られたウーロン茶抽出液[実施例6の(2)で用いたのと同じウーロン茶抽出液]100質量部に、上記(1)で得られた香味組成物1質量部を加えて、ラズベリーケトンを200ppm(2×10ppb)の濃度で含有するウーロン茶飲料を製造した。
(3) 上記(2)で得られたウーロン茶飲料を、下記の5に示す評価基準(7段階評価)にしたがって8名のパネルにより評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0048】
【表5】
Figure 2004329094
【0049】
【表6】
Figure 2004329094
【0050】
上記の表6に見るように、ラズベリーケトンを10−3〜10ppbの範囲内の添加濃度で含有する実施例6のウーロン茶飲料は、熟成感を伴った、深みのある重厚な香味を有している。
それに対して、ラズベリーケトンを含有しない比較例3のウーロン茶飲料は、実施例6のウーロン茶飲料に比べて香味に劣っている。
また、ラズベリーケトンを添加含有するものの、その添加濃度が200ppm(2×10ppb)と高く、本発明の範囲から外れている比較例4のウーロン茶飲料は、ウーロン茶の風味が大きく損なわれていて、ウーロン茶飲料らしくないことがわかる。
【0051】
《実施例7》
(1) この実施例7では、下記の表7に示す抹茶プリン用配合を用いて、ラズベリーケトンを添加含有させた抹茶プリンを製造した。
【0052】
【表7】
Figure 2004329094
【0053】
(2) 上記の表7に示した抹茶プリン用の配合のうち、砂糖、脱脂粉乳、抹茶、ゲル化剤および乳化剤を予め粉体混合しておき、ホイップクリーム(植物性脂肪分40%)、全脂加糖練乳および水の混合物に加えて、80℃で10分間加熱撹拌溶解し、次いで残りの原料を混合した後、水にて全量を100質量部に補正し、14700kPaにて均質化し、容器に充填後、冷却固化して抹茶プリンを製造した。それにより得られた抹茶プリンは、熟成感を伴い、深みのある茶葉をイメージする香気を有する抹茶プリンであった。
【0054】
【発明の効果】
ラズベリーケトンを有効成分とする本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤またはラズベリーケトンを添加含有させた本発明の香味組成物を茶飲料やその他の茶使用飲食品に添加することによって、茶使用飲食品における茶のフレーバー(香り)を向上させて、コク、重厚感、丸みがあって、熟成感を伴った、深みのある、馥郁とした、茶類本来の香気を発現させることができる。
特に、ラズベリーケトンを有効成分とする本発明のフレーバーエンハンス用の添加剤またはラズベリーケトンを添加含有させた本発明の香味組成物を添加することによって製造した、ラズベリーケトンの添加濃度が10−3〜10ppbの範囲にある茶飲料、特に緑茶飲料などの非発酵茶飲料およびウーロン茶飲料などの半発酵茶飲料は、上記した優れた茶本来の香気を有し、しかもその優れた茶本来の香気が保存によっても失われず、長期間にわたって良好に維持される。

Claims (6)

  1. ラズベリーケトンを有効成分とすることを特徴とする茶使用飲食品のフレーバーエンハンス用の添加剤。
  2. 茶飲料用である請求項1に記載の添加剤。
  3. ラズベリーケトンを添加含有させてなることを特徴とする茶使用飲食品用の香味組成物。
  4. ラズベリーケトンの添加濃度が10−3〜10ppbである請求項3に記載の香味組成物。
  5. 茶飲料用である請求項4に記載の香味組成物。
  6. ラズベリーケトンを10−3〜10ppbの濃度で添加したことを特徴とする茶飲料。
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