JP2004324881A - 等速ジョイント及びその組み付け方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニードルベアリングの装着作業を簡便化することにより、生産性を向上させて製造コストを低減することにある。
【解決手段】複数のニードルベアリング28を介してトラニオン26a(26b、26c)に外嵌されるローラ部材30を備え、ローラ部材30の内径部を、半径内方向に向かって突出するフランジ部40と、トラニオン26a(26b、26c)との間隙によって設けられる環状凹部42とによって断面L字状に構成するとともに、複数のニードルベアリング28を該ローラ部材30の内径部内にワックスによって保持する。
【選択図】図1
【解決手段】複数のニードルベアリング28を介してトラニオン26a(26b、26c)に外嵌されるローラ部材30を備え、ローラ部材30の内径部を、半径内方向に向かって突出するフランジ部40と、トラニオン26a(26b、26c)との間隙によって設けられる環状凹部42とによって断面L字状に構成するとともに、複数のニードルベアリング28を該ローラ部材30の内径部内にワックスによって保持する。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、自動車の駆動力伝達部において、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結させる等速ジョイント及びその組み付け方法に関する。
従来より、自動車の駆動力伝達部では、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結し回転力を各車軸へと伝達する等速ジョイントが用いられている。
この種の等速ジョイントに関し、本出願人は、ニードルベアリングとトラニオンとの接触面圧を低減することにより耐久性を向上させることが可能な等速ジョイントを提案している(特許文献1参照)。
本発明は、前記提案に関連してなされたものであり、転動体の装着作業を簡便化することにより、生産性を向上させて製造コストを低減することが可能な等速ジョイント及びその組み付け方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有する等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
を備え、前記複数の転動体は、前記ローラ部材の内径部内に装着される際、該ローラ部材の内径部に付着されたワックスによって保持されることを特徴とする。
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
を備え、前記複数の転動体は、前記ローラ部材の内径部内に装着される際、該ローラ部材の内径部に付着されたワックスによって保持されることを特徴とする。
さらに、本発明では、所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられた筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンを備えたスパイダと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、からなるトリポート型の等速ジョイントの組み付け方法において、
前記ローラ部材の内径部に対してワックスを供給する工程と、
前記ローラ部材の内径部内に複数の転動体を装填し、前記装填された複数の転動体が前記ワックスによって該ローラ部材に保持される工程と、
前記転動体が保持されたローラ部材を前記スパイダのトラニオンに嵌装する工程と、
を有することを特徴とする。
前記ローラ部材の内径部に対してワックスを供給する工程と、
前記ローラ部材の内径部内に複数の転動体を装填し、前記装填された複数の転動体が前記ワックスによって該ローラ部材に保持される工程と、
前記転動体が保持されたローラ部材を前記スパイダのトラニオンに嵌装する工程と、
を有することを特徴とする。
この場合、先にローラ部の内径部内に複数の転動体を装填した後、該ローラ部材の内径部に対してワックスを供給し、前記ワックスによって転動体がローラ部材に保持されるようにしてもよい。
なお、前記「ワックス」とは、常温での稠度が300未満の油脂をいう。
本発明によれば、前記ローラ部材の内径部内に複数の転動体をワックスによって保持することにより、例えば、従来から使用されていたキーストン効果を用いる転動体の保持方法が不要となり、しかも、転動体の脱落を防止することができるため、該転動体の装着作業を簡便化することができる。
この場合、前記ワックスとして、アウタ部材の内空部内に封入される潤滑用グリスよりも稠度が低い油脂成分を用い、しかも、該ワックスの稠度としては、JIS規格により50以上300未満に設定されるとよい。前記ワックスと潤滑用グリスとがアウタ部材の内空部内に混在した場合であっても、前記潤滑用グリスの性能に影響を与えるのを回避することができるからである。
また、ローラ部材の内径部の形状を断面L字状に形成することにより、前記ローラ部材の内径部の加工性を向上させることができる。この場合、前記ローラ部材の内径部を、軸方向に沿った両端部に形成され半径内方向に向かって所定長だけ突出する一組のフランジ部と、前記一組のフランジ部の間に形成された環状凹部とによって構成してもよい。あるいは、前記断面L字状に形成されたローラ部材の内径部内に保持部材を装着するようにしてもよい。
さらに、前記トラニオンを、外径が一定に形成された円柱部と、前記円柱部の外径よりも大きく形成された拡径部とによって構成し、前記円柱部と前記拡径部との境界の周面部の曲率半径を、(円柱部の外径)×0.1よりも大きくなるように設定するとよい。円柱部と拡径部との間の段付き部に対する応力集中を防止して該トラニオンの軸強度を確保することができる。
さらにまた、前記トラニオンの付け根部分に、該トラニオンの周面部を囲繞する環状部材を装着するとよい。前記付け根部分の曲率半径を大きく設定することにより、応力集中を防止してトラニオンの軸強度を向上させることができる。
本発明によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、ローラ部材の内径部内に複数の転動体を装着する際、前記複数の転動体をワックスによってローラ部材の内径部内に保持することにより、例えば、従来から使用されていたキーストン効果を用いて転動体を保持することが不要となり、しかも、転動体の脱落が阻止されるため、該転動体の装着作業を簡便化することができる。この結果、等速ジョイントの生産性を向上させ、製造コストを低減させることができる。
本発明に係る等速ジョイントの組み付け方法について、前記方法によって組み付けられた等速ジョイントとの関係において好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において参照符号10は、本発明の実施の形態に係る等速ジョイントの組み付け方法によって組み付けられた等速ジョイントを示し、この等速ジョイント10は、図示しない第1軸の一端部に一体的に連結されて開口部を有する筒状のアウタカップ(アウタ部材)12と、第2軸14の一端部に固着されてアウタカップ12の孔部内に収納されるインナ部材16とから基本的に構成される。
前記アウタカップ12の内壁面には、図1に示されるように、軸線方向に沿って延在し、軸心の回りにそれぞれ120度の間隔をおいて3本の案内溝18a〜18cが形成される(但し、案内溝18b、18cは図示するのを省略している)。前記案内溝18a〜18cは、断面が緩やかな曲線状に形成された天井部20と、前記天井部20の両側に相互に対向し断面円弧状に形成された摺動部22a、22bとから構成される。
第2軸14にはリング状のスパイダ24が外嵌され、前記スパイダ24の外周面には、それぞれ案内溝18a〜18cに向かって膨出し軸心の回りに120度の間隔をおいて3本のトラニオン26a〜26cが一体的に形成される(但し、トラニオン26b、26cは、図示するのを省略している)。
トラニオン26a(26b、26c)の外周部には、複数本のニードルベアリング(転動体)28を介してリング状のローラ部材30が外嵌される。前記ローラ部材30の外周面は、図3に示されるように、摺動部22a、22bに面接触するように前記摺動部22a、22bの断面形状に対応して形成された円弧状面部32と、前記円弧状面部32から上面34に連続する第1環状傾斜面部36aと、前記円弧状面部32から下面38に連続する第2環状傾斜面部36bとから構成される。
なお、転動体としては、前記ニードルベアリング28に限定されるものではなく、ころ等を含む転がり軸受けであればよい。
また、ローラ部材30の内周面の上部(端部)には、半径内方向に所定長だけ突出して形成された単数のフランジ部40が設けられ、一方、前記フランジ部40の下方側には、半径内方向に突出するものが何ら形成されることがなく、トラニオン26a(26b、26c)の外周面との間隙を介して環状凹部42が形成される。換言すると、前記ローラ部材30の内径部は、前記フランジ部40と前記環状凹部42とによって断面L字状に形成される。
なお、前記ローラ部材30の内径部の形状は、前記断面L字状に限定されるものではなく、例えば、図8に示されるように、トラニオン26aの軸方向に所定間隔離間し且つ半径内方向に向かって所定長だけ突出する一組のフランジ部40a、40bを形成し、前記一組のフランジ部40a、40bの間に環状凹部42を形成した形状とし、あるいは、図9に示されるように、前記断面L字状に形成されたローラ部材30の内径部に環状溝を介して保持部材43を装着してもよい。
前記保持部材43は、ローラ部材30とトラニオン26a(26b、26c)との間に介装される複数のニードルベアリング28を保持するものであり、例えば、図示しない、サークリップ、クリップ、圧入部材、スプリングロックワッシャ、スプリングワッシャ、ワッシャ、止め輪、リテーニングリング、ばね座金、グリップ止め輪、リング等が含まれる。
前記ローラ部材30の内径部には、複数本のニードルベアリング28が周方向に沿って略平行に並設され、前記ニードルベアリング28は、後述するように、例えば、内径部の壁面に塗られるワックスによって該ローラ部材30の内径部から脱落しないように保持される。前記「ワックス」とは、常温での稠度が300未満の油脂をいう。なお、ローラ部材30の内径部に沿って装着される複数のニードルベアリング28は、それぞれ略同一の直径を有し、略同一形状に形成されているものとする。
トラニオン26a(26b、26c)は、図1に示されるように、外径が一定に形成された円柱部44と、スパイダ24に近接する前記円柱部44の下部側に設けられ、該円柱部44の外径よりも大きく形成された拡径部46とから構成される。
前記円柱部44と前記拡径部46との境界部分、すなわち前記拡径部46に近接する円柱部44の付け根部分には、図2に示されるように、曲率半径R1からなる稜線によって構成された周面部48が形成される。前記周面部48の曲率半径R1は、該周面部48に臨むニードルベアリング28の端部角部50の曲率半径R2よりも小さく形成される(R1<R2)。
トラニオン26a(26b、26c)の付け根部分の周面部48の曲率半径R1をニードルベアリング28の端部角部50の曲率半径R2よりも小さく設定することにより、トラニオン26a(26b、26c)とローラ部材30との間でニードルベアリング28が該トラニオン26a(26b、26c)の軸線方向に沿って移動した際、前記ニードルベアリング28の端部が前記周面部48に近接する拡径部46の壁面52に当接してその変位が規制される。
本実施の形態に係る等速ジョイントの組み付け方法が適用された等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
先ず、等速ジョイント10の組み付け工程について説明する。
ローラ部材30の内径部に形成された環状凹部42の壁面に対して予めワックスを塗っておき、前記環状凹部42に沿って複数のニードルベアリング28を装着する。従って、ローラ部材30の環状凹部42内に装着された複数のニードルベアリング28は、環状凹部42の壁面に塗られたワックスによって保持されることにより、搬送・組み付け作業中に前記環状凹部42から脱落することが阻止される(図3及び図4参照)。
この場合、図4に示されるように、ローラ部材30の環状凹部42に沿って環状に配置された複数のニードルベアリング28の内周側及び外周側のいずれにもワックスが存在すると、該ニードルベアリング28が好適にローラ部材30に保持される。
このワックスは、図示しない継手用ブーツを介してアウタカップ12内に封入される潤滑用グリスと比較して流動性がなく、該潤滑用グリスの粘度よりも硬質で稠度(CONSISTENCY)の低い油脂成分からなるものを使用するとよい。従って、前記ワックスは、等速ジョイント10として組み立てられたときにアウタカップ12内に封入される潤滑用グリスと混在した場合であっても、前記潤滑用グリスの性能に影響を与えることがないものが選択される。
なお、前記ワックスの塗布量は、約0.3g以上が好適である。すなわち、ワックスの塗布量が0.3g未満では、ニードルベアリング28を保持できないおそれがあり、あるいは組み付け後のローラ部材30の搬送中にニードルベアリング28が脱落するおそれがあるからである。一方、ワックスの塗布量の上限については、アウタカップ12の孔部内に封入される潤滑用グリスの量が約百数十gであることに鑑み、前記潤滑用グリスの特性を劣化させない程度の量に設定されるとよい。なお、ワックスの主成分が、前記潤滑用グリスの増ちょう剤、基油及び添加剤と同一であるとすると、前記ワックスの上限値が増大する。また、前記潤滑用グリス使用時における該潤滑用グリスの成分の設定を、前記ワックスが混合した後の値で行ってもよい。
また、前記ワックスの稠度は、ニードルベアリング28の大きさ・質量、あるいはローラ部材30自体に付与される衝撃・雰囲気温度等を考慮して適切に設定されるとよい。
ここで、ワックスの稠度(JIS規格による)とニードルベアリング28の諸特性との関係を図11に示す。なお、図11において、○印は良好、△印は普通、×印は不良であることを示す。
図11から諒解されるように、本実施の形態では、ワックスの稠度が50以上300未満に設定され、より好適には100以上250以下に設定されるとよい。良好なニードル保持性能を有し、潤滑用グリースとなじみやすい良好な対グリース相溶性を有し、且つニードルベアリング28の良好な組付性を有し、しかも初期段階において円滑なニードルベアリング28の回転抵抗を得ることができるからである。
この場合、ワックスの稠度を50未満に設定した場合には、前記ワックスが過度に硬くなって対グリース相溶性及び組付性が劣化するという問題があり、一方、ワックスの稠度を300以上に設定した場合には、前記ワックスの状態が流動状に近づいていくためニードルベアリング28を保持するだけの保持力が得られないという問題がある。
なお、前記「稠度」とは、非常に粘い物質の変形に抵抗する稠性を示し、JIS規格によるものである。前記稠度の測定方法は、JIS規格K2220−5.3.2によれば、所定形状の円錐(質量102.5±0.05g)を保持部(質量45.50±0.02g)とともに、試料中に垂直に5.0±0.1秒間進入された後の垂直方向における進入深さを測定し、その指針の示度を10倍した値を稠度としている。
最後に、図1に示されるように、ワックスを介して内径部内に複数本のニードルベアリング28が保持されたローラ部材30をスパイダ24のトラニオン26a〜26cに嵌挿することにより、前記スパイダ24のトラニオン26a〜26cに対するローラ部材30及びニードルベアリング28の組み付け作業が完了する。
次に、等速ジョイント10の動作について説明する。
図示しない第1軸が回転すると、その回転力はアウタカップ12を介してインナ部材16に伝達され、トラニオン26a〜26cを通じて第2軸14が所定方向に回転する。
すなわち、アウタカップ12の回転力は、案内溝18a(18b、18c)の摺動部22a、22bに面接触するローラ部材30及び該ローラ部材30の環状凹部42内に保持された複数本のニードルベアリング28を介して、トラニオン26a(26b、26c)に伝達されることにより前記トラニオン26a(26b、26c)に係合する第2軸14が回転する。
この場合、第1軸を有するアウタカップ12に対して第2軸14が所定角度傾斜すると、円柱状に形成されたトラニオン26a(26b、26c)は、その軸心を回動中心として円弧状の摺動部22a、22bに沿ってローラ部材30が矢印A方向に摺動変位する(図1参照)。
また、前記トラニオン26a(26b、26c)は、複数本のニードルベアリング28と線接触しながら該トラニオン26a(26b、26c)の軸線方向(矢印B方向)に沿って変位する(図1参照)。
さらに、前記トラニオン26a(26b、26c)は、複数本のニードルベアリング28の転動作用下に該トラニオン26a(26b、26c)の軸線と略直交する方向(図1の紙面と直交する方向)に沿って変位する。
このようにして、第1軸の回転運動は、アウタカップ12に対する第2軸14の傾斜角度に影響されることなく第2軸14に円滑に伝達される。
本実施の形態では、ローラ部材30の内径部の一端部(上部)にのみフランジ部40を設け、他端部はトラニオン26a(26b、26c)との間隙によって環状凹部42とし、前記ローラ部材30の内径部を断面L字状に形成することにより、該ローラ部材30の内径部の加工性を向上させることができる。この結果、等速ジョイント10の生産性を向上させて製造コストを低減させることができる。
例えば、フランジ部40が形成されていない間隙を通じて図示しない研磨用砥石をローラ部材30の内径部内に容易に進入させることができ、ローラ部材30の内径部に対する研磨加工、仕上げ加工等を簡便に遂行することができるとともに、前記間隙を通じて切粉を好適に外部に排出することができるからである。
また、本実施の形態では、ローラ部材30の内径部の壁面に塗られたワックスを介して複数本のニードルベアリング28を保持することにより、例えば、従来から使用されていたキーストン効果を利用したニードルベアリング28の装着方法を採用しなくてもよく、しかも、該ニードルベアリング28の脱落が防止されるため、ローラ部材30の内径部に対するニードルベアリング28の装着作業が簡便化される。
この結果、等速ジョイント10の組み付け作業が簡便化されて生産性が向上し、より一層製造コストを低減することができる。なお、前記キーストン効果については、特許文献1の図8を参照するとよい。さらに、キーストン効果を利用しないでニードルベアリング28をローラ部材30の内径部に対して装着する場合、ニードルベアリング28の寸法、ニードルベアリング28の離間間隔等に対する寸法規制が、キーストン効果を利用する場合と比較して緩やかになるため、ローラ部材30の内径部に対する加工作業を簡素化することができる。
ワックスによってローラ部材30の内径部に複数のニードルベアリング28が保持されることにより、例えば、ローラ部材30の搬送・組み付け作業等において該ローラ部材30に振動等が付与された場合であっても、前記ニードルベアリング28が倒れて該ローラ部材30の内径部から脱落することを好適に阻止することができる。
ローラ部材30の内径部を断面L字状に形成した場合、前記ローラ部材30の内径部に保持された複数のニードルベアリング28のトラニオン軸方向に対する移動を規制し、ニードルベアリング28の端部とトラニオン26a(26b、26c)との適切な当接面を確保する必要がある。そこで、ニードルベアリング28の端部角部50とトラニオン26a(26b、26c)との干渉を回避するために、トラニオン26a(26b、26c)の付け根部分の周面部48の曲率半径R1をニードルベアリング28の端部角部50の曲率半径R2より小さくなるように設定し、前記周面部48近傍に形成された拡径部46の壁面52を当接面として機能させている。
その際、円柱部44と拡径部46との間の段付き部に対する応力集中を考慮して、前記トラニオン26a(26b、26c)の付け根部分の周面部48の曲率半径R1を、(円柱部44の外径)×0.1よりも大きくなるように設定すると好適である。
なお、図5に示される第1変形例に係る等速ジョイント10aでは、拡径部46を設けることがなく円柱部44のみによってトラニオン26a(26b、26c)を形成し、あるいは、図6に示される第2変形例に係る等速ジョイント10bでは、トラニオン26a(26b、26c)に球面部53に形成してもよい。なお、図6では、ローラ部材30の上下方向を逆転させてフランジ部40が下部側となるように組み付けられている。
さらに、図7に示される第3変形例に係る等速ジョイント10cでは、トラニオン26a(26b、26c)の軸強度を増大させるために付け根部分を囲繞する断面略三角形を呈するリング状のワッシャ(環状部材)54を設けるとよい。前記ワッシャ54の外径はローラ部材30の環状凹部42の内径よりも若干小さく設定され、前記ワッシャ54が環状凹部42内に沿って進入可能に設けられる。また、前記ワッシャ54がローラ部材30の環状凹部42に係合することにより、トラニオン26a(26b、26c)の軸線を回転中心として該ローラ部材30と一体的に回動するように設けられる。
この場合、トラニオン26a(26b、26c)の周面部48の曲率半径R1をニードルベアリング28の端部角部50の曲率半径R2より大きく設定して応力集中を阻止することができるとともに、ニードルベアリング28の端部角部50が前記ワッシャ54に当接して干渉を回避することができる。
前記ワッシャ54には、ニードルベアリング28が当接する環状平面56が形成される。なお、前記ワッシャ54に代替して、図10に示されるように、環状平面56を有する平板状のワッシャ54aを用いてもよい。
次に、ローラ部材30の環状凹部42に対するワックスの供給方法について以下に説明する。
第1の方法としては、図12に示されるように、ローラ部材30の環状凹部42と治具60の外周面との間に沿って複数のニードルベアリング28を環状に装填する。続いて、図13に示されるように、前記ローラ部材30の環状凹部42と治具60の外周面との間の空間部にワックスを注入することにより、複数のニードルベアリング28が前記ワックスによって保持される。
第2の方法としては、前記ニードルベアリング28の装填とワックスの注入とを前記とは逆転させて、図14に示されるように、ローラ部材30の環状凹部42と治具60の外周面との間の空間部に先にワックスを注入した後、前記注入されたワックスの中に複数のニードルベアリング28を装填してもよい(図13参照)。
第3の方法としては、図15に示されるように、先ず、ローラ部材30の環状凹部42の壁面に対して所定量のワックスを塗布した後、図16に示されるように、複数のニードルベアリング28をローラ部材30の環状凹部42に沿って装填する。さらに、図17に示されるように、環状に配置された複数のニードルベアリング28の内周側から、再度、所定量のワックスを塗布することにより、該ニードルベアリング28がワックスによって保持される。
第4の方法としては、図18に示されるように、環状凹部42を含むローラ部材30の孔部全体62にワックスを注入した後、図19に示されるように、複数のニードルベアリング28をローラ部材30の環状凹部42に沿って挿入することにより、該ニードルベアリング28がワックスによって保持される。この第4の方法では、ワックスが治具の機能を兼用している。
このように第1〜第4の方法のいずれかを用いることにより、ニードルベアリング28がローラ部材30に保持された状態で好適に搬送、組み付け等を遂行することができる。
10、10a〜10c…等速ジョイント
16…インナ部材 18a〜18c…案内溝
26a〜26c…トラニオン 28…ニードルベアリング
30…ローラ部材 40、40a、40b…フランジ部
42…環状凹部 43…保持部材
44…円柱部 46…拡径部
48…周面部 50…端部角部
52…壁面 54、54a…ワッシャ
16…インナ部材 18a〜18c…案内溝
26a〜26c…トラニオン 28…ニードルベアリング
30…ローラ部材 40、40a、40b…フランジ部
42…環状凹部 43…保持部材
44…円柱部 46…拡径部
48…周面部 50…端部角部
52…壁面 54、54a…ワッシャ
Claims (10)
- 所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられ一方の伝達軸に連結される筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に挿入されて他方の伝達軸に連結されるインナ部材とを有する等速ジョイントにおいて、
前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンと、
前記案内溝に接触し、前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、
前記トラニオンと前記ローラ部材との間に転動自在に介装される複数の転動体と、
を備え、前記複数の転動体は、前記ローラ部材の内径部内に装着される際、該ローラ部材の内径部に付着されたワックスによって保持されることを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
前記ワックスは、アウタ部材の内空部内に封入される潤滑用グリスよりも稠度が低い油脂成分からなることを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項1又は2記載の等速ジョイントにおいて、
前記ワックスの稠度は、JIS規格により50以上300未満に設定されることを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
前記ローラ部材の内径部は、半径内方向に向かって突出する単数のフランジ部と環状凹部とによって断面L字状に形成されることを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
前記ローラ部材の内径部は、軸方向に沿った両端部に形成され半径内方向に向かって所定長だけ突出する一組のフランジ部と、前記一組のフランジ部の間に形成された環状凹部とを有することを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項4記載の等速ジョイントにおいて、
前記断面L字状に形成されたローラ部材の内径部に保持部材が装着されることを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
前記トラニオンは、外径が一定に形成された円柱部と、前記円柱部の外径よりも大きく形成された拡径部とを有し、前記円柱部と前記拡径部との境界の周面部の曲率半径を、(円柱部の外径)×0.1よりも大きくなるように設定したことを特徴とする等速ジョイント。 - 請求項1記載の等速ジョイントにおいて、
前記トラニオンの付け根部分には、該トラニオンの周面部を囲繞する環状部材が装着されることを特徴とする等速ジョイント。 - 所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられた筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンを備えたスパイダと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、からなるトリポート型の等速ジョイントの組み付け方法において、
前記ローラ部材の内径部に対してワックスを供給する工程と、
前記ローラ部材の内径部内に複数の転動体を装填し、前記装填された複数の転動体が前記ワックスによって該ローラ部材に保持される工程と、
前記転動体が保持されたローラ部材を前記スパイダのトラニオンに嵌装する工程と、
を有することを特徴とする等速ジョイントの組み付け方法。 - 所定間隔離間し軸線方向に沿って延在する複数の案内溝が内周面に設けられた筒状のアウタ部材と、前記アウタ部材の開口する内空部内に設けられ前記案内溝に向かって膨出する複数のトラニオンを備えたスパイダと、前記案内溝に接触し前記トラニオンに外嵌されるリング状のローラ部材と、からなるトリポート型の等速ジョイントの組み付け方法において、
前記ローラ部材の内径部内に複数の転動体を装填する工程と、
前記ローラ部材の内径部に対してワックスを供給し、前記装填された複数の転動体が前記ワックスによって該ローラ部材に保持される工程と、
前記転動体が保持されたローラ部材を前記スパイダのトラニオンに嵌装する工程と、
を有することを特徴とする等速ジョイントの組み付け方法。
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