JP2004324605A - ターボ分子ポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】回転体4が腐蝕によって破断してその破片が外方のスペーサSや固定翼Tに衝突すると、回転体4の破片が外部装置に悪影響を与える。このような課題を解決するターボ分子ポンプを提供する。
【解決手段】ターボ機構TKにおける回転翼Bと回転軸4S等を含む回転体4具体的には円筒部4Tの外周面に、その先端が前記円筒部4Tの外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体Pをケーシング5の内周面側に設置したものである。具体的にはリング10を介して設置されている。したがって、腐食性ガスにより万一回転体4が応力腐食割れを起こした場合でも、分断した円筒部4Tの破片は先尖体Pに衝突しするため、先尖体Pが円筒部4Tの破片の衝突点に集中応力を与え、破片をさらに細かく砕くことになる。そのため、細分化により衝突エネルギーは小さくなり、ケーシング5に与える衝撃を緩和できる。
【選択図】 図1
【解決手段】ターボ機構TKにおける回転翼Bと回転軸4S等を含む回転体4具体的には円筒部4Tの外周面に、その先端が前記円筒部4Tの外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体Pをケーシング5の内周面側に設置したものである。具体的にはリング10を介して設置されている。したがって、腐食性ガスにより万一回転体4が応力腐食割れを起こした場合でも、分断した円筒部4Tの破片は先尖体Pに衝突しするため、先尖体Pが円筒部4Tの破片の衝突点に集中応力を与え、破片をさらに細かく砕くことになる。そのため、細分化により衝突エネルギーは小さくなり、ケーシング5に与える衝撃を緩和できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置や分析装置などにおける反応室等を排気して高真空領域を形成するために使用されるターボ分子ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるターボ分子ポンプは、その主体をなすターボ機構が円筒状のケーシングに回転自在に保持され、ケーシングの一方側からの分子、ガス等を吸気し他方側に排気する構成をなしている。すなわち、ターボ機構はケーシングの中央部位の軸芯に配置され、その回転軸がケーシングに架設された上下の軸受に回転自在に保持されるとともに、この回転軸は同じくケーシングに架設されたモータにて高速回転されるよう連結されている。ターボ機構は回転軸側に固定された回転翼とケーシング側に固定された固定翼との組み合わせであって、この中で回転翼がモータにて高速回転駆動される。具体的には、1分間に数万回転という回転速度で駆動され、ガス分子を圧縮して排気する。
【0003】
このようなターボ分子ポンプにおいては、回転翼に万が一応力腐蝕割れなどが生じた場合には、回転翼は分裂し半径方向に飛散し、ケーシング側に配置されている固定翼やスペーサに衝突する。この衝突によって、回転翼と固定翼ならびにスペーサ等が一体となり、この衝撃エネルギーにて半径方向に膨張し、ケーシングに衝突する。この衝突によりターボ分子ポンプの外方機器にも衝撃を与えることになる。このようなことから、この衝撃を緩和させるためにケーシングを二重構造にする方法などが採用されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
従来から常用されているターボ分子ポンプTMを具体的に示すと、図4に示すとおりとおりである。この図に示すターボ分子ポンプTMはケーシングを二重構造にしていない一般のターボ分子ポンプの全体を縦断面して示す図である。すなわち、図4において5はポンプのケーシングであり、ポンプ機台部1の上方に載架されている。ケーシング5の内方中上方には吸気口6が形成され、下方に排気口7が付設されている。
【0005】
つぎに、ターボ分子ポンプTMの主体であるターボ機構TKについて説明すると、回転軸4Sの上方部には一体的に円筒部が形成されていて、この円筒部には外周に複数段(図示例では4段)の回転翼B(図面には最上段の回転翼のみ符号を付しその他の符号は付記を省略している)が延設されている。この回転翼Bは軸芯方向に一定の間隔を有して配置されている。この回転軸4Sと回転翼Bは一体的であり、回転体4を構成している。
【0006】
回転軸4Sは、ポンプ機台部1に架設された固定枠3における上下の磁気軸受8にて回転自在に保持されるとともに、モータ2と結合されている。すなわち、モータ2は回転軸4Sに固定され一体的に取り付られた回転子2Kと、ポンプ機台部1側に架設され回転子2Kと協働する電極コイル5Kとにより構成されている。このモータ2にはインバータ(図示せず)から電気エネルギーが供給され、回転軸4Sを高速で回転駆動する。
【0007】
他方、ケーシング5の内周には回転翼Bに対応して一定の間隔で固定翼T(図面には最上段の固定翼のみ符号を付しその他の符号は付記を省略している)が軸芯部に向けて延設するように取り付けられている。この回転翼Bと固定翼Tはそれぞれ回転軸芯に対して逆向きに傾斜している。この回転翼Bと固定翼Tの組み合わせによってターボ機構TKが構成される。そして、この固定翼Tを一定の間隔で固定保持させるために、ケーシング5の内周にリング状のスペーサS(図面には最上段のスペーサSのみ符号を付しその他の符号は付記を省略している)が嵌合されている。このスペーサSは、ケーシング5の最下部に介在されたステータリング9との間において介設されている。
【0008】
ところで、回転体4の下方には円筒部4Tが一体的に形成され、しかもその外周面は下方に拡大する円錐状をなしている。そして、この円筒部4Tが前記ステータリング9の内周面に近接して対向している。したがってステータリング9の内周面は円筒部4Tと同様に下方に拡大する円錐状をなしている。このステータリング9には図示の二点鎖線で示すように、ネジ溝Nが形成されている。このネジ溝Nは図示のとおり、下方になるにつれてそのネジ溝Nの深さが浅く形成されている。このステータリング9と円筒部4Tとの組み合わせによってネジ溝ポンプNPが構成されている。このようにして、このネジ溝ポンプNPはドラッグポンプとして機能し、粘性流領域における分子を引き込み圧縮して排気口7から排気する。
【0009】
この図4に示されるターボ分子ポンプTMは、ターボ機構TKによるターボポンプ機構とネジ溝ポンプNPによるネジ溝ポンプ機能を有機的に結合したものであり、通常ハイブリッド形ターボ分子ポンプと称されている。ターボ分子ポンプTMとしては、このようなハイブリッド形でなく、ターボ分子機構のみを採用したものも提供されている。なお、図4においてFは図示していない被排気室またはその被排気室に接続される配管路(図示せず)にターボ分子ポンプTMを連接するためのフランジであり、5Fはケーシング5の下方に形成されたフランジでポンプ機台1のフランジ部1Fに接合されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−62879号公報(第1−6頁、図1−図2)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したターボ分子ポンプTMは、前記したように半導体製造装置における反応室等の排気に利用され、各種の流体を排気する。したがって、その長期使用の過程で腐蝕ガスなども取り扱われる。この腐蝕ガスによって回転体4に万が一応力腐蝕割れが生じた場合には、回転体4に生じた亀裂部が拡大し、回転体4は分断される。分断による破片は、回転が高速回転であるために大きな遠心力を受け、これが固定翼TやスペーサSに衝突することになる。衝突すると、その固定翼TやスペーサSに相当大きなエネルギーが与えられることになり、この衝撃によるエネルギーの衝突によって、その衝撃を受けた固定翼TやスペーサSは膨張し一体となるとともに、その破片とともに放射方向に並進運動して、外部装置すなわちケーシング5を支持する外部機械装置(図示せず)等に衝撃を与えることになる。
【0012】
このようなことから、使用される場合の外部機械装置の側では、この衝撃に耐えられる強度を確保するために頑丈な構造とする必要があった。また上述したようにケーシングを二重ケーシングにする方式が提案されているが、この方式は部品点数増加のため、コストアップが避けられないのみならず、ターボ分子ポンプTMの構造を複雑にし、かつ重量化する欠点がある。本発明は、このような問題を解決するターボ分子ポンプを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供するターボ分子ポンプは、上記課題を解決するために、円筒状のケーシング内に軸受を介して回転体を軸着するとともに、この回転体の外周部でかつ軸芯方向に取り付けられた複数個の回転翼と、この複数個の回転翼に対応して前記ケーシング内に配置された複数個の固定翼とを有し、前記ケーシングの軸方向一端側の吸気口からのガスを圧縮して他端側の排気口に排出するターボ分子ポンプにおいて、その先端が前記回転体の外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体をケーシング内周面側に設置したものである。したがって、回転体が遠心破壊したときの円筒部の破片が先尖体に衝突すると、先尖体と破片は点で衝突し、破片は細かく砕かれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるターボ分子ポンプについてその構成、作動を図1に示す実施例にしたがって説明する。
図1に示すように、本発明が提供するターボ分子ポンプTMには、回転体4の下方における円筒部4Tの外周面に対して、その先端が円筒部4Tの外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体Pが設置されており、この点に本発明の特徴がある。すなわち、10はケーシング5の内周面側に固定設置されたリングで、図2に示すようにこのリング10の内面側には先尖部を有する先尖体Pが複数個一定の間隔を有して内方に向けて突設されている。この先尖体Pは回転体4に使用されているアルミ合金より硬い材料たとえばステンレス鋼やセラミックス等を使用して製作されるのが望ましい。実際には焼き入れなどの熱処理を施した鋼材が使用され、しかも腐食に対する対策としてニッケル等の表面処理が施される。このようにして製作された先尖体Pは、図1に示すようにその先端は円筒部4Tの外周面に対してきわめて近接して対抗配置されている。なお、図1に於いて図4と同一の符号で示される部品は図4と同一の部品であり、その機能はであり詳細な説明は省略する。
【0015】
以上のような構成において、ターボ分子ポンプTMが腐食性ガスの排気のために長時間に亘って使用された場合に、万が一応力腐食割れが生じるときには回転破壊が生じる。具体的には回転体4の回転中では、応力は円筒部4Tの最下端部が最も高いため、腐食による回転体4の割れは円筒部4Tの最下端部から破壊が始まる可能性が高い。
【0016】
したがって、図示実施例の場合、腐食性ガスにより回転体4の材料が腐食して万一回転体4が遠心破壊を起こすと、破壊した円筒部4Tの破片は最初にこの先尖体Pに衝突する。このとき先尖体Pと破片は点で衝突するため、先尖体Pが円筒部4Tの破片の衝突点に集中応力を与え、破片をさらに細かく破くことになる。先尖体Pは図2に示すようにリング10の内周面全域に等間隔で設置されているので、全周囲ほぼ均等に破片は細分化される。そのため、細分化により衝突エネルギーは小さく、ケーシング5に与える衝撃を緩和させることができる。
【0017】
本発明は以上説明したように、先尖体Pを設置することによって、破片に対してその衝突点に集中応力を与える点を特徴とするが、この集中応力を与える作用について具体的に示すと、例えば1センチ平方メートル程度の面積で円筒部4Tと接触していたと仮定すると、それが1ミリ平方メートルの面積接触に変化しただけで、応力集中の効果は100倍となる。また、たとえ破壊までに至らない場合でも、先尖体Pが破片を突き刺してブレーキングの機能を発揮し、ケーシング5と衝突する際の移動速度が小さくなり、衝撃が緩和される。図2に示すとおり実施例では、先尖体Pを円錐状のものとして構成した例を示したが、三角や四角あるいは多角の角錐状または楔状、針状のものでもよく、要するに先端が尖っていて破片と点で衝突する形状であれば同様の効果が得られる。
【0018】
本発明が提供するターボ分子ポンプの特徴は、以上説明したとおりであるが、その構成などは上記並びに図示例に限定されるものではなく、種々の変形例を包含する。例えば、図示例の場合、ネジ溝ポンプNPを結合させたハイブリッド形のターボ分子ポンプTMであるが、このハイブリッド形のターボ分子ポンプTMの場合でも、円筒部4Tとステータリング9との組み合わせ方法としては、図3に示すような実施例も挙げられる。
図3は発明の要部のみを断面しその他については外観を示すもので、円筒部4Tが円錐ではなく、ステータリング9も円錐ではなく、ともに通常の円筒体として形成され、それらが近接対向する形式の実施例である。そしてステータリング9に傾斜形のネジ溝Nが形成されている。このような実施例でも図1と同様の機能が行なわれる。
【0019】
さらに図示していないが、ステータリング9をその下方の径が小さい円錐体に形成し、これに対して図の形と逆の円錐体の円筒部4Tを対向させるようにすることも可能である。ネジ溝Nを円筒部4T側かステータリング9側のいずれに形成するかはターボ分子ポンプの構成の特殊性を考慮して自由に設定できる事項である。このようにハイブリッド形のターボ分子ポンプTMの実施例でも幾つかの実施例を挙げることができる。
【0020】
さらに本発明では、このハイブリッド形のターボ分子ポンプTMに限定されず、単なるターボ機構のみのターボ分子ポンプにも本発明は適用可能である。この場合は図1のように円筒部4Tが突出していないので、先尖体Pの設置位置は先尖体Pをステータリング9の上方側に設定するなど位置と形状を充分考慮する必要がある。また、先尖体Pの設置はケーシング5の内周面に直接的に設置してもよく必ずしもリング10を介して設置する必要はない。ケーシング5の内周面に個々に設置するための取り付け孔を設け、各先尖体Pをそれぞれに設置する方式も可能である。ただし、各先尖体Pの設置間隔は破片の大きさを考慮して設定されるのが望ましい。
【0021】
また、先尖体Pの材質や大きさについては上記において説明した材料に限定されるものではなく、また大きさも回転体の大きさや破片の大きさなどの関係で自由に設定できる。本発明はこれら全ての変形実施例を包含する。なお、図1と図3において図1と同一の符号で示される部品は図1と同一の機能ならびに同一の作動をするものであり詳細な説明は省略する。
【0022】
【発明の効果】
本発明が提供するターボ分子ポンプは以上詳述したとおりであるから、つぎのような利点を有する。
腐食性ガスにより回転体4の材料が腐食して万一回転体4が応力腐食割れを起こした場合でも、分断した円筒部4Tの破片は先尖体Pに衝突し、しかも先尖体Pと破片は点で衝突するため、先尖体Pが円筒部4Tの破片の衝突点に集中応力を与え、破片をさらに細かく破くことになる。そのため、細分化により衝突エネルギーは小さく、ケーシング5に与える衝撃を緩和させ、外部装置への衝撃を緩和できる。また、先尖体Pという比較的小さい部品を設置するのみで、ケーシング5を二重構造方式にする必要もなく、したがって大型化にはならず、小型軽化、簡素化そしてコストダウンが図られ、廉価で経済的なターボ分子ポンプを提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるターボ分子ポンプを縦断面して示す図である。
【図2】本発明の要部である先尖体の構成を斜視的に示す図である。
【図3】本発明のターボ分子ポンプの変形実施例を一部断面して示す図である。
【図4】従来のターボ分子ポンプにおける構成を示す図である。
【符号の説明】
1 ポンプ機台部
2 モータ
2K 回転子
3 固定枠
4 回転体
4S 回転軸
4T 円筒部
5 ケーシング
5K 電極コイル
6 吸気口
7 排気口
8 軸受
9ステータリング
10 リング
B 回転翼
T 固定翼
S スペーサ
P 先尖体
TK ターボ機構
TM ターボ分子ポンプ
N ネジ溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置や分析装置などにおける反応室等を排気して高真空領域を形成するために使用されるターボ分子ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるターボ分子ポンプは、その主体をなすターボ機構が円筒状のケーシングに回転自在に保持され、ケーシングの一方側からの分子、ガス等を吸気し他方側に排気する構成をなしている。すなわち、ターボ機構はケーシングの中央部位の軸芯に配置され、その回転軸がケーシングに架設された上下の軸受に回転自在に保持されるとともに、この回転軸は同じくケーシングに架設されたモータにて高速回転されるよう連結されている。ターボ機構は回転軸側に固定された回転翼とケーシング側に固定された固定翼との組み合わせであって、この中で回転翼がモータにて高速回転駆動される。具体的には、1分間に数万回転という回転速度で駆動され、ガス分子を圧縮して排気する。
【0003】
このようなターボ分子ポンプにおいては、回転翼に万が一応力腐蝕割れなどが生じた場合には、回転翼は分裂し半径方向に飛散し、ケーシング側に配置されている固定翼やスペーサに衝突する。この衝突によって、回転翼と固定翼ならびにスペーサ等が一体となり、この衝撃エネルギーにて半径方向に膨張し、ケーシングに衝突する。この衝突によりターボ分子ポンプの外方機器にも衝撃を与えることになる。このようなことから、この衝撃を緩和させるためにケーシングを二重構造にする方法などが採用されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
従来から常用されているターボ分子ポンプTMを具体的に示すと、図4に示すとおりとおりである。この図に示すターボ分子ポンプTMはケーシングを二重構造にしていない一般のターボ分子ポンプの全体を縦断面して示す図である。すなわち、図4において5はポンプのケーシングであり、ポンプ機台部1の上方に載架されている。ケーシング5の内方中上方には吸気口6が形成され、下方に排気口7が付設されている。
【0005】
つぎに、ターボ分子ポンプTMの主体であるターボ機構TKについて説明すると、回転軸4Sの上方部には一体的に円筒部が形成されていて、この円筒部には外周に複数段(図示例では4段)の回転翼B(図面には最上段の回転翼のみ符号を付しその他の符号は付記を省略している)が延設されている。この回転翼Bは軸芯方向に一定の間隔を有して配置されている。この回転軸4Sと回転翼Bは一体的であり、回転体4を構成している。
【0006】
回転軸4Sは、ポンプ機台部1に架設された固定枠3における上下の磁気軸受8にて回転自在に保持されるとともに、モータ2と結合されている。すなわち、モータ2は回転軸4Sに固定され一体的に取り付られた回転子2Kと、ポンプ機台部1側に架設され回転子2Kと協働する電極コイル5Kとにより構成されている。このモータ2にはインバータ(図示せず)から電気エネルギーが供給され、回転軸4Sを高速で回転駆動する。
【0007】
他方、ケーシング5の内周には回転翼Bに対応して一定の間隔で固定翼T(図面には最上段の固定翼のみ符号を付しその他の符号は付記を省略している)が軸芯部に向けて延設するように取り付けられている。この回転翼Bと固定翼Tはそれぞれ回転軸芯に対して逆向きに傾斜している。この回転翼Bと固定翼Tの組み合わせによってターボ機構TKが構成される。そして、この固定翼Tを一定の間隔で固定保持させるために、ケーシング5の内周にリング状のスペーサS(図面には最上段のスペーサSのみ符号を付しその他の符号は付記を省略している)が嵌合されている。このスペーサSは、ケーシング5の最下部に介在されたステータリング9との間において介設されている。
【0008】
ところで、回転体4の下方には円筒部4Tが一体的に形成され、しかもその外周面は下方に拡大する円錐状をなしている。そして、この円筒部4Tが前記ステータリング9の内周面に近接して対向している。したがってステータリング9の内周面は円筒部4Tと同様に下方に拡大する円錐状をなしている。このステータリング9には図示の二点鎖線で示すように、ネジ溝Nが形成されている。このネジ溝Nは図示のとおり、下方になるにつれてそのネジ溝Nの深さが浅く形成されている。このステータリング9と円筒部4Tとの組み合わせによってネジ溝ポンプNPが構成されている。このようにして、このネジ溝ポンプNPはドラッグポンプとして機能し、粘性流領域における分子を引き込み圧縮して排気口7から排気する。
【0009】
この図4に示されるターボ分子ポンプTMは、ターボ機構TKによるターボポンプ機構とネジ溝ポンプNPによるネジ溝ポンプ機能を有機的に結合したものであり、通常ハイブリッド形ターボ分子ポンプと称されている。ターボ分子ポンプTMとしては、このようなハイブリッド形でなく、ターボ分子機構のみを採用したものも提供されている。なお、図4においてFは図示していない被排気室またはその被排気室に接続される配管路(図示せず)にターボ分子ポンプTMを連接するためのフランジであり、5Fはケーシング5の下方に形成されたフランジでポンプ機台1のフランジ部1Fに接合されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−62879号公報(第1−6頁、図1−図2)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したターボ分子ポンプTMは、前記したように半導体製造装置における反応室等の排気に利用され、各種の流体を排気する。したがって、その長期使用の過程で腐蝕ガスなども取り扱われる。この腐蝕ガスによって回転体4に万が一応力腐蝕割れが生じた場合には、回転体4に生じた亀裂部が拡大し、回転体4は分断される。分断による破片は、回転が高速回転であるために大きな遠心力を受け、これが固定翼TやスペーサSに衝突することになる。衝突すると、その固定翼TやスペーサSに相当大きなエネルギーが与えられることになり、この衝撃によるエネルギーの衝突によって、その衝撃を受けた固定翼TやスペーサSは膨張し一体となるとともに、その破片とともに放射方向に並進運動して、外部装置すなわちケーシング5を支持する外部機械装置(図示せず)等に衝撃を与えることになる。
【0012】
このようなことから、使用される場合の外部機械装置の側では、この衝撃に耐えられる強度を確保するために頑丈な構造とする必要があった。また上述したようにケーシングを二重ケーシングにする方式が提案されているが、この方式は部品点数増加のため、コストアップが避けられないのみならず、ターボ分子ポンプTMの構造を複雑にし、かつ重量化する欠点がある。本発明は、このような問題を解決するターボ分子ポンプを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明が提供するターボ分子ポンプは、上記課題を解決するために、円筒状のケーシング内に軸受を介して回転体を軸着するとともに、この回転体の外周部でかつ軸芯方向に取り付けられた複数個の回転翼と、この複数個の回転翼に対応して前記ケーシング内に配置された複数個の固定翼とを有し、前記ケーシングの軸方向一端側の吸気口からのガスを圧縮して他端側の排気口に排出するターボ分子ポンプにおいて、その先端が前記回転体の外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体をケーシング内周面側に設置したものである。したがって、回転体が遠心破壊したときの円筒部の破片が先尖体に衝突すると、先尖体と破片は点で衝突し、破片は細かく砕かれる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるターボ分子ポンプについてその構成、作動を図1に示す実施例にしたがって説明する。
図1に示すように、本発明が提供するターボ分子ポンプTMには、回転体4の下方における円筒部4Tの外周面に対して、その先端が円筒部4Tの外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体Pが設置されており、この点に本発明の特徴がある。すなわち、10はケーシング5の内周面側に固定設置されたリングで、図2に示すようにこのリング10の内面側には先尖部を有する先尖体Pが複数個一定の間隔を有して内方に向けて突設されている。この先尖体Pは回転体4に使用されているアルミ合金より硬い材料たとえばステンレス鋼やセラミックス等を使用して製作されるのが望ましい。実際には焼き入れなどの熱処理を施した鋼材が使用され、しかも腐食に対する対策としてニッケル等の表面処理が施される。このようにして製作された先尖体Pは、図1に示すようにその先端は円筒部4Tの外周面に対してきわめて近接して対抗配置されている。なお、図1に於いて図4と同一の符号で示される部品は図4と同一の部品であり、その機能はであり詳細な説明は省略する。
【0015】
以上のような構成において、ターボ分子ポンプTMが腐食性ガスの排気のために長時間に亘って使用された場合に、万が一応力腐食割れが生じるときには回転破壊が生じる。具体的には回転体4の回転中では、応力は円筒部4Tの最下端部が最も高いため、腐食による回転体4の割れは円筒部4Tの最下端部から破壊が始まる可能性が高い。
【0016】
したがって、図示実施例の場合、腐食性ガスにより回転体4の材料が腐食して万一回転体4が遠心破壊を起こすと、破壊した円筒部4Tの破片は最初にこの先尖体Pに衝突する。このとき先尖体Pと破片は点で衝突するため、先尖体Pが円筒部4Tの破片の衝突点に集中応力を与え、破片をさらに細かく破くことになる。先尖体Pは図2に示すようにリング10の内周面全域に等間隔で設置されているので、全周囲ほぼ均等に破片は細分化される。そのため、細分化により衝突エネルギーは小さく、ケーシング5に与える衝撃を緩和させることができる。
【0017】
本発明は以上説明したように、先尖体Pを設置することによって、破片に対してその衝突点に集中応力を与える点を特徴とするが、この集中応力を与える作用について具体的に示すと、例えば1センチ平方メートル程度の面積で円筒部4Tと接触していたと仮定すると、それが1ミリ平方メートルの面積接触に変化しただけで、応力集中の効果は100倍となる。また、たとえ破壊までに至らない場合でも、先尖体Pが破片を突き刺してブレーキングの機能を発揮し、ケーシング5と衝突する際の移動速度が小さくなり、衝撃が緩和される。図2に示すとおり実施例では、先尖体Pを円錐状のものとして構成した例を示したが、三角や四角あるいは多角の角錐状または楔状、針状のものでもよく、要するに先端が尖っていて破片と点で衝突する形状であれば同様の効果が得られる。
【0018】
本発明が提供するターボ分子ポンプの特徴は、以上説明したとおりであるが、その構成などは上記並びに図示例に限定されるものではなく、種々の変形例を包含する。例えば、図示例の場合、ネジ溝ポンプNPを結合させたハイブリッド形のターボ分子ポンプTMであるが、このハイブリッド形のターボ分子ポンプTMの場合でも、円筒部4Tとステータリング9との組み合わせ方法としては、図3に示すような実施例も挙げられる。
図3は発明の要部のみを断面しその他については外観を示すもので、円筒部4Tが円錐ではなく、ステータリング9も円錐ではなく、ともに通常の円筒体として形成され、それらが近接対向する形式の実施例である。そしてステータリング9に傾斜形のネジ溝Nが形成されている。このような実施例でも図1と同様の機能が行なわれる。
【0019】
さらに図示していないが、ステータリング9をその下方の径が小さい円錐体に形成し、これに対して図の形と逆の円錐体の円筒部4Tを対向させるようにすることも可能である。ネジ溝Nを円筒部4T側かステータリング9側のいずれに形成するかはターボ分子ポンプの構成の特殊性を考慮して自由に設定できる事項である。このようにハイブリッド形のターボ分子ポンプTMの実施例でも幾つかの実施例を挙げることができる。
【0020】
さらに本発明では、このハイブリッド形のターボ分子ポンプTMに限定されず、単なるターボ機構のみのターボ分子ポンプにも本発明は適用可能である。この場合は図1のように円筒部4Tが突出していないので、先尖体Pの設置位置は先尖体Pをステータリング9の上方側に設定するなど位置と形状を充分考慮する必要がある。また、先尖体Pの設置はケーシング5の内周面に直接的に設置してもよく必ずしもリング10を介して設置する必要はない。ケーシング5の内周面に個々に設置するための取り付け孔を設け、各先尖体Pをそれぞれに設置する方式も可能である。ただし、各先尖体Pの設置間隔は破片の大きさを考慮して設定されるのが望ましい。
【0021】
また、先尖体Pの材質や大きさについては上記において説明した材料に限定されるものではなく、また大きさも回転体の大きさや破片の大きさなどの関係で自由に設定できる。本発明はこれら全ての変形実施例を包含する。なお、図1と図3において図1と同一の符号で示される部品は図1と同一の機能ならびに同一の作動をするものであり詳細な説明は省略する。
【0022】
【発明の効果】
本発明が提供するターボ分子ポンプは以上詳述したとおりであるから、つぎのような利点を有する。
腐食性ガスにより回転体4の材料が腐食して万一回転体4が応力腐食割れを起こした場合でも、分断した円筒部4Tの破片は先尖体Pに衝突し、しかも先尖体Pと破片は点で衝突するため、先尖体Pが円筒部4Tの破片の衝突点に集中応力を与え、破片をさらに細かく破くことになる。そのため、細分化により衝突エネルギーは小さく、ケーシング5に与える衝撃を緩和させ、外部装置への衝撃を緩和できる。また、先尖体Pという比較的小さい部品を設置するのみで、ケーシング5を二重構造方式にする必要もなく、したがって大型化にはならず、小型軽化、簡素化そしてコストダウンが図られ、廉価で経済的なターボ分子ポンプを提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるターボ分子ポンプを縦断面して示す図である。
【図2】本発明の要部である先尖体の構成を斜視的に示す図である。
【図3】本発明のターボ分子ポンプの変形実施例を一部断面して示す図である。
【図4】従来のターボ分子ポンプにおける構成を示す図である。
【符号の説明】
1 ポンプ機台部
2 モータ
2K 回転子
3 固定枠
4 回転体
4S 回転軸
4T 円筒部
5 ケーシング
5K 電極コイル
6 吸気口
7 排気口
8 軸受
9ステータリング
10 リング
B 回転翼
T 固定翼
S スペーサ
P 先尖体
TK ターボ機構
TM ターボ分子ポンプ
N ネジ溝
Claims (1)
- 円筒状のケーシング内に軸受を介して回転体を軸着するとともに、この回転体の外周部でかつ軸芯方向に取り付けられた複数個の回転翼と、この複数個の回転翼に対応して前記ケーシング内に配置された複数個の固定翼とを有し、前記ケーシングの軸方向一端側の吸気口からのガスを圧縮して他端側の排気口に排出するターボ分子ポンプにおいて、その先端が前記回転体の外周面に近接して対向する先尖部を有する先尖体をケーシング内周面側に設置したことを特徴とするターボ分子ポンプ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003123367A JP2004324605A (ja) | 2003-04-28 | 2003-04-28 | ターボ分子ポンプ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003123367A JP2004324605A (ja) | 2003-04-28 | 2003-04-28 | ターボ分子ポンプ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004324605A true JP2004324605A (ja) | 2004-11-18 |
Family
ID=33501280
Family Applications (1)
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JP2003123367A Pending JP2004324605A (ja) | 2003-04-28 | 2003-04-28 | ターボ分子ポンプ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004324605A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013185577A (ja) * | 2012-03-12 | 2013-09-19 | Shimadzu Corp | ターボ分子ポンプ |
-
2003
- 2003-04-28 JP JP2003123367A patent/JP2004324605A/ja active Pending
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JP2013185577A (ja) * | 2012-03-12 | 2013-09-19 | Shimadzu Corp | ターボ分子ポンプ |
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