JP2004320887A - ローターコアの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性の向上を図るとともに、製品精度を上げるローターコアの成形方法を実現することにある。
【解決手段】ローターコア爪磁極片内周縁部の永久磁石係止片と、前記爪磁極片の円周方向の一方の外周縁部のテーパー面とを併せ持ったローターコアの成形方法である。爪磁極片の内周面を金型で拘束し、外径方向から成形圧を加えて、前記爪磁極片の外周縁部のテーパー面と内周縁部の永久磁石係止片とを同時に成形することを可能とし、高い製品精度を有する量産性のすぐれたローターコアを実現する。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電機の回転子を構成するローターコアの製造方法及び発電機の製造方法によって製造されたローターコア又は発電機に係り、特に車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流発電機は、回転軸に相対向して固着される励磁コイルを巻回したローターコアからなる回転子と、該回転子と空隙をもって対向配置されるステータコイルを巻回した円環状のステータコアを備えた固定子とから構成されている。
【0003】
この種の発電機は、ステータコイルに誘導起電力が発生する構成であるが、ステータコイルに電流が流れると電機子反作用により磁束が発生する。
【0004】
このステータコイルの電機子反作用磁束と回転子の励磁コイル磁束との相互作用により固定子と回転子間に磁気的な起振力が生じ、この力がステータコアやブラケットなどの構造体に伝わり、その振動が磁気騒音となって放射されることが知られている。
【0005】
この磁気騒音を低減するには、例えば特許文献1(特公平6−48897号公報)にみられるように、同一軸方向に突出するローターコア爪磁極片の外周面のうち、回転方向に対して後側の外周面部にステータコア内面とローターコアとの間の隙間が広がるようにテーパー面を設けることが知られている。
【0006】
また、近年高出力化のため軸方向に相対向して設置されたローターコア爪磁極片間に永久磁石を設置することが一般的となっているが、その永久磁石の保持は特許文献2(特開平09−98556号公報)に有るように爪磁極片の内周縁部に永久磁石係止片を設けるものが知られている。
【0007】
【特許文献1】
特公平6−48897号公報
【特許文献2】
特開平09−98556号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の方法によれば性能低下を抑えながら騒音対策が出来るが、ここに記載されているテーパー面を設けるには、フライス等の切削加工が必要で、加工に時間が掛かる上に、切削バリの除去が必要な為、コスト高となってしまう問題点が有る。
【0009】
そこで、鍛造による成形方法が考えられるが、従来のようにローターコアの軸方向のみのプレス加工による押出し鍛造方法にて成形すると、爪磁極片の円周方向断面が非対称である為に、材料の流れが偏り、精度の高い成形をするには高荷重が必要となり、金型寿命が短いものになってしまう。
【0010】
また特許文献2に記載の永久磁石の保持はローターコア爪磁極片の内周縁部に切削或いは爪磁極片の成形時に一体成形するのが一般的である。
【0011】
従って、前記いずれの特許文献もテーパー面と永久磁石係止片をそれぞれ別々に形成され、生産性の点で不利になるばかりか、製品精度を上げるのに難点があった。
【0012】
本発明は、ローターコア爪磁極片の外周縁部に形成されるテーパー面と内周縁部に形成される永久磁石係止片を同時または同じ工程の中で成形する方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鍛造成形され、円周上の同一軸方向に突出した複数個の爪磁極片を有する中間ブランクの爪磁極片の内周面を金型で拘束しながら外径方向から成形圧を加えて、前記爪磁極の外周縁部のテーパー面と内周縁部の永久磁石係止片を同時にまたは同じ工程で成形することにより達成される。
【0014】
本発明は、好ましくは、一方のテーパー面と係止片は円周方向の一方の内、外周縁部に同時に成形されることにより達成される。
【0015】
本発明は、好ましくは、爪磁極片のそれぞれは内周面が同時に金型で拘束され、同時に成形されることにより達成される。
【0016】
本発明は、好ましくは、爪磁極片のそれぞれの内周面は個別に金型で拘束され、爪磁極片毎に成形されることにより達成される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における実施例を図1〜図6に基づき説明する。
【0018】
図1に示す縦断面側面図は、本発明により製造されるローターコア2を使用した車両用交流発電機の一実施例である。
【0019】
回転子1は、回転軸6に固着されたローターコア2と、このローターコア2には、電気絶縁性を有するボビンに絶縁被覆を施した導線を多数回巻回した励磁コイル4が設けられており、回転軸6と共に回転される。励磁コイル4にはブラシホルダに保持されたブラシ8と回転軸6に固着されたブラシリング9にて構成されるスリップリングとにより直流電流が供給され磁束が発生する。そして、回転子1は、励磁コイル4により励磁されてローターコア2の爪磁極片2aに極数に応じて回転子周方向にN極及びS極を発生する。また、ローターコア2の爪磁極片2aの間には起磁力を増大させるための永久磁石3が挿入され固着されている。
【0020】
固定子12は、積層鋼板によって構成された略円環状のステータコア10に設けたスロットに絶縁被覆を施した導線を多数回巻回したステータコイル11を埋設したものである。
【0021】
要するに、この発電機は、回転子1を回転させN極及びS極を発生したローターコア2の爪磁極片2aがステータコイル11と鎖交することで、誘導起電力を発生させステータコイル11から交流電流を取り出すものである。
【0022】
図2は、図1の回転子1と固定子12の要部横断面図である。固定子12は、ステータコア10に設けたスロット10aに絶縁被覆を施したステータコイル
11を埋設している。回転子1の相対向して固着されたローターコア2の爪磁極片2aの間には永久磁石3が配置されるが、永久磁石3の割れ発生等が生じた場合の飛散防止を目的とした保護カバー5により覆われている。この永久磁石3および保護カバー5は、回転子1の遠心力による径方向外周への移動を規制する為に、爪磁極片2aの内周縁部2cから円周方向に延びる永久磁石係止片2dにより径方向外周の移動を係止されている。また、ローターコア2は、爪磁極片2aの外周面2eのうち、回転方向13に対して後片側の外周縁部2iだけにステータコア内面10bと爪磁極片2aの外周面2eとの間の隙間が広がるようなテーパー面2fを形成して、磁気音を低減している。尚、このテーパー面はテーパーに近似した曲面でもよい。
【0023】
図3は、図1と図2で説明した実施例のローターコア2の斜視図である。永久磁石3および保護カバー5の径方向外周への移動を係止する為の爪磁極片2aの内周縁部2cから円周方向に延びる永久磁石係止片2dと、磁気音の発生を抑える為の外周面2eの円周方向の一方の外周縁部2iに形成されたテーパー面2fとを併せ持っている。そして、それぞれの爪磁極片2aは板部2bにより連結されている。
【0024】
前記ローターコア2は、交流発電機のローターコアとして適切な低炭素鋼の磁性材からなる鋼材が選ばれ、図4の中間ブランク20形状になるように切断−熱間鍛造−切削−潤滑処理−冷間鍛造−切削の加工法が行われ、その後再度、冷間にて爪磁極片2aの永久磁石係止片2dとテーパー面2fとを局部的に成形するものである。2gは、ローターコア爪磁極片の内周面を示す。
【0025】
図5(a)は中間ブランクの爪磁極片20aの成形直前の要部断面状態を示したものである。図5(b)は中間ブランクの爪磁極片20aの成形直前を要部縦断面状態で示したものである。図6(a)はローターコア爪磁極片2aの成形直後の要部断面状態を示したものである。図6(b)はローターコア爪磁極片2aの成形直後の要部縦断面状態を示したものである。
【0026】
図4に示す爪磁極20aの内周面20gと内周縁部20cとテーパー面を成形しない方の永久磁石係止片20jおよび板部20bが完成品寸法に仕上がった中間ブランク20の爪磁極片20aを、図5に示すように、固定されたダイス30に嵌合する。このダイスの形状は、中間ブランク20の内周面20gと内周縁部20cと略同一形状であり、完成品寸法と近似している。そして、爪磁極片2aの内周面20gを受圧する底面部30a,内周縁部20cの変形を拘束する側面部30b,係止片成形部20dを受圧し永久磁石係止片2dを成形する成形面
30cとから構成される。
【0027】
図5から図6への成形を行うには、図6(b)に示される様に、爪磁極片2aは縦断面がくさび形状であるので、成形圧40を加えるとダイスの底面部30aに沿って爪磁極片2aが移動する分力41が発生するから、図5(b)に示すように、前以て拘束力42を、中間ブランクの板部20b側より付加して固定する。2gは、ローターコア爪磁極片の内周面を示す。
【0028】
固定完了後、中間ブランク20の外周面20eから成形パンチ31で成形圧
40を加えて、パンチの成形面32を転写する事により、爪磁極片2aのうち外周縁部20iを局部的に塑性流動させて、テーパー面2fと永久磁石係止片2dを同時成形する。
【0029】
このとき、テーパー面2f成形部の材料は、爪磁極片2aの体積に比べ1.1%〜1.4% と微小であるが、中間ブランク20の鍛造時の未充填部か、ダイス30との嵌合隙間、若しくは成形パンチ31周辺の外周面2eへ流れる。しかし、永久磁石係止片2dについては、薄肉形状に圧縮されて円周方向に大きく延びるので、中間ブランク20において、係止片成形部20dの体積を調整しておくと良い。または、成形後に円周方向に延びた永久磁石係止片2dの不要な部分はトリミングしても良い。本実施例による成形パンチ面32の面圧は平均90kgf/mm 程度であり十分にダイズ鋼の許容面圧内である。また、金型表面の材料の塑性流動が少ないので焼付き等の発生が無く、良好な金型表面を維持できる。
【0030】
よって、この方法によれば、軸方向のみのプレス動作により押出し成形するのと異なり、成形精度が優れ、金型に掛かる応力や摩擦の少ない成形が可能であり金型寿命等の問題も無い。また、切削加工と比べ加工時間も短い上、切削バリ除去の必要が無い。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、ローターコア爪磁極片の外周縁部に形成されるテーパー面と内周縁部に形成される永久磁石係止片を同時成形することができるので、製品精度が高く、量産性の優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られたローターコアを使用した車両用交流発電機の一実施例である。
【図2】図1の要部横断面部分図である。
【図3】本発明により得られたローターコアの一実施例の斜視図である。
【図4】本発明により製造されるローターコア中間ブランクの一実施例の斜視図である。
【図5】(a)は中間ブランク爪磁極片20aの成形直前の要部断面図で、(b)は中間ブランク爪磁極片20aの成形直前の要部縦断面図である。
【図6】(a)はローターコア爪磁極片2aの成形直後の要部断面図で、(b)はローターコア爪磁極片2aの成形直後の要部縦断面図である。
【符号の説明】
2…ローターコア、2a…爪磁極片、2b…板部、2c…内周縁部、2d…永久磁石係止片、2e…外周面、2f…テーパー面、2g…ローターコア爪磁極片の内周面、2i…外周縁部、10…ステータコア、30…ダイス、31…成形パンチ、40…成形圧。

Claims (14)

  1. 回転軸に相対向して固着されるローターコアの成形方法であって、円周上の同一軸方向に突出した複数個の爪磁極片を有する中間ブランクと前記中間ブランクの爪磁極片の内周面を金型で拘束しながら外径方向から成形圧を加えて、前記爪磁極の外周縁部のテーパー面と内周縁部の永久磁石係止片を成形することを特徴としたローターコアの製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記爪磁極の外周縁部のテーパー面と内周縁部の永久磁石係止片は、加えられた成形圧によって、同じ工程で成形されることを特徴とするローターコアの製造方法。
  3. 請求項1において、
    前記爪磁極の外周縁部のテーパー面と内周縁部の永久磁石係止片は、加えられた成形圧によって、同時に成形されることを特徴とするローターコアの製造方法。
  4. 請求項1において、
    前記金型は、複数の部材からなり、前記中間ブランクと前記爪磁極片の内周面とを加圧形成することを特徴とするローターコアの製造方法。
  5. 請求項1において、一方のテーパー面と係止片は円周方向の一方の内、外周縁部に同時に成形されていることを特徴とするローターコアの製造方法。
  6. 請求項6において、爪磁極片のそれぞれは内周面が同時に金型で拘束され、同時に成形されることを特徴とするローターコアの製造方法。
  7. 請求項6において、爪磁極片のそれぞれの内周面は個別に金型で拘束され、爪磁極片毎に成形されることを特徴とするローターコアの製造方法。
  8. 請求項1において、前記永久磁石係止片は、トリミングにより不要部が除かれていることを特徴としたローターコアの製造方法。
  9. 請求項1において、前記テーパー面と前記永久磁石係止片は、所定の形状が得られるように体積に基づいて調整されることを特徴としたローターコアの製造方法。
  10. 請求項1において、前記中間ブランク及び前記爪磁極片は、前記中間ブランクの爪磁極片を連結する板部側より拘束力を付加して固定されることを特徴としたローターコアの製造方法。
  11. 回転軸に相対向して固着されるローターコアを鍛造成形する工程と、前記コアの円周上の同一軸方向に突出した複数個の爪磁極片を有する中間ブランクと前記中間ブランクの爪磁極片の内周面を金型で拘束する工程と、前記コアの外径方向から成形圧を加え、前記爪磁極の外周縁部のテーパー面と内周縁部の永久磁石係止片を同時に成形する工程とを含むことを特徴とした発電機の製造方法。
  12. 請求項11において、
    一方の前記テーパー面と前記永久磁石係止片は円周方向の一方の前記内周縁部と前記外周縁部に同時に成形されることを特徴とする発電機の製造方法。
  13. 請求項11において、
    前記爪磁極片のそれぞれは内周面が同時に金型で拘束され、同時に成形されることを特徴とする発電機の製造方法。
  14. 請求項11において、
    前記爪磁極片のそれぞれの内周面は個別に金型で拘束され、前記爪磁極片毎に成形されることを特徴とする発電機の製造方法。
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