JP2004317620A - ハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、下記一般式(S−I)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(S−I)
R1−(A)k−(CH2CH2O)j−(CH2)m−COOM
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、下記一般式(S−I)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(S−I)
R1−(A)k−(CH2CH2O)j−(CH2)m−COOM
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関し、更に詳しくは、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良さるとともに、塗布適性に優れ、塗布故障の無い多層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー現像処理は益々処理時間の迅速化が図られてきており、これに対応すべく、迅速処理適性を有し、かつ処理安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料(以降、単にカラー写真感光材料ともいう)が望まれている。
【0003】
現像処理時間の迅速化の観点からは、例えば、カラー印画紙に適用されるハロゲン化銀乳剤としては、実質的にヨウ化銀を含まない臭化銀、塩臭化銀及び塩化銀が用いられてきた。その中でも、塩化銀含有率が高いハロゲン化銀乳剤は、現像性が高く、迅速処理には有利であることが知られている。
【0004】
また、銀現像速度をより迅速化したり、カプラー等の発色効率を高める手段を用いることにより、カラー写真感光材料に塗設される銀量を低減させたり、バインダー量を減らして、ハロゲン化銀乳剤層等の膜厚を薄くすることにより、現像性を上げる試みがなされている。
【0005】
上記方法を適用したカラー写真感光材料の出現により、発色現像時間の迅速化が急速に進むに伴い、処理工程全体に占める乾燥工程時間の割合が増大しており、この現像処理後の乾燥時間に関しても、迅速化が求められている。一般に、カラー写真感光材料の各構成層のバインダーとしてはゼラチンが用いられているが、カラー写真感光材料に含有されるゼラチン量が多いと、乾燥工程に持ち込まれるカラー写真感光材料中の水分量が増大する結果、乾燥時間に多くの時間を要したり、あるいは梅雨時など高湿条件下においては乾燥不良を引き起こすという課題も発生し、ゼラチン量の低減が望まれている。
【0006】
また、カラー写真感光材料に含有されているゼラチンが多い場合、保存される環境雰囲気の温湿度変化に伴うゼラチン収縮により、未現像あるいは現像済のカラー写真感光材料が、不正なカールを引き起こし、その結果、取扱い上不都合を生じるという問題が発生する。また、カラー写真感光材料のカールが大きいと、自動現像機等での給送時に、搬送ローラに挟まれて送られる時に、何れか一方の搬送ローラにくっつき易くなり、このためローラに巻き付いて紙詰まりを生じたり、露光時に狭いスリット内を通す必要がある場合、このスリット内を通過しにくくなり、搬送不良(ジャム故障)を引き起こすことが多くなるため、この点からもカラー写真感光材料に含有されるゼラチン量を減ずることが求められている。
【0007】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料の構成要素として、主流をなすものは、支持体上に、いわゆるオイルプロテクテッドタイプと称される方法により親油性の色素形成カプラーや紫外線吸収化合物、抗酸化剤等の油溶性添加物を、高沸点有機溶媒に溶解された状態で、ゼラチン分散媒中に微小油滴粒子として分散して含有するハロゲン化銀乳剤層を設けたものである。
【0008】
しかしながら、この様な油滴粒子を含有するカラー写真感光材料が、未現像の状態で高温下や高湿下に長時間保存された場合には、塗膜中に存在している油滴粒子を構成する成分が、写真構成層内を移動し易くなる。未現像のカラー写真感光材料において、ハロゲン化銀乳剤層の色素形成カプラーが、他のハロゲン化銀乳剤層に移動した場合には、現像処理後には本来の発色色相に不必要な色相が混合した、いわゆる「色濁り現象」を発生させる。この「色濁り現象」の悪化は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料でバインダーとして用いられるゼラチン量を少なくすると、より顕著に発現する。
【0009】
更に、ゼラチン量の低減は、クッツキ耐性の劣化にもつながる。ゼラチンを用いるカラー写真感光材料は、高温高湿下に長期間保存すると、表面がべたつく様になり、ひどい場合には表面に接触したものと密着し、剥離する際に表面状態が損なわれることがあるが、このくっつき特性は、カラー写真感光材料に使用するゼラチン付量に大きく依存し、ゼラチン量を限度以下に低減すると、くっつきの劣化も大きい。
【0010】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料の上記課題は、ゼラチン量を低減する以外に、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中の界面活性剤の種類にも大きく影響を受けていることが判明した。
【0011】
一般に、各種界面活性剤が、上記の油滴粒子分散時や支持体上にカラー写真感光材料の各構成層を塗布する際の塗布性向上を目的として広く用いられており、界面活性剤としては、主にスルホン酸塩アニオン性界面活性剤や硫酸塩アニオン性界面活性剤のタイプが用いられているが、これら界面活性剤は、添加量が多くなると上述の「色濁り現象」の悪化やクッツキ耐性の劣化等の問題が助長されることが明らかとなった。
【0012】
従って、低ゼラチン量で短時間現像処理が可能であり、かつ色濁り現象及びクッツキ耐性が改良されたカラー写真感光材料の開発が強く望まれている。
【0013】
近年、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の様な写真構成層が数層〜十数層に及ぶ多層構成の塗布においては、生産効率上の観点から多層同時塗布が可能なスライドホッパー法やカーテンコーティング法等が、広く用いられている。
【0014】
ここでいうスライドホッパー法とは、斜降するスライド面の上縁にある複数の吐出スリットから、カラー写真感光材料の上層側の塗布液を上方から順次流延させて、スライド面上で塗膜層を形成して積層させ、一括してビードを形成させながら延展移行する支持体面に塗布するものである。均一塗布を実現する観点からは、このビードを安定に形成させるのが重要であり、ビード上下に気圧差を設け下部を負圧にすることがよく行われる。また、各塗布液の物性と各物性の相互関係が安定な塗布を行うのに重要である。
【0015】
近年は、前記の迅速処理性等の写真性能上の要請から、各写真構成層が薄膜化しているが、薄膜化は安定な塗布の阻害要因であり、如何に塗布速度を速めて生産効率の向上を図るかが大きな課題となっている。
【0016】
このスライドホッパー法による多層ビードコーティングに関しては、例えば、特開昭52−115214号、同54−1350号、同56−108566号等に記載があり、諸方法による良好な写真層の形成について数多くの努力が払われ、各種の技術開示がされている。
【0017】
一方、特公昭49−24133号、同49−35447号、同53−31005号にその基本技術が開示されるカーテンコーティング法は、スライドホッパービード塗布法に比べ、比較的高粘度における塗布性及び薄膜塗布性に優れるが、垂下する液膜両縁の液膜ガイド付近から膜裂けを起こしたり、液膜の両縁に厚膜部分又は脈状の隆起を生ずる、液膜の安定性を保証するためには供給液量を少なくとも1.4〜1.5cm3/cm・秒としなければならないことから、更なる薄膜化が困難である、液膜を形成するコーターのスライド面終端の端庇から液が離れる時に、いわゆるティーポット効果等好ましくない現象が発生したり、液膜が支持体に接触して塗設される際に塗布層と支持体間に気泡を抱き込むこと、ヒール状の液溜が生成する等の問題を有する。
【0018】
これに対して、特開昭54−6887号には案内手段としてのワイヤを液膜に順応させて移動する方法が、特開昭50−88138号、同55−73365号、同59−132966号等にはゼラチン液、水或いは低粘度ゼラチン溶液等を液膜両端縁部分の液に混ぜて垂下させ、液膜両縁の厚膜や脈条を防止する方法が、特開昭51−57734号、同52−69946号、同52−114636号、同61−292140号等には、端庇の液流下面の形状、曲率、液膜の支持体に対する着地角度により改良する方法が、特開昭50−71651号、同53−4953号、同54−50542号、同55−56867号には液膜の安定性改善に関する方法が、特開昭59−100435号には3層以上の重層カーテン塗布法において最上層、最下層となる塗布液を低粘度の薄層として液膜の安定性を得る方法が、それぞれ記載されている。
【0019】
しかしながら、前記したような各種の技術的努力にも拘らず、スライドホッパービード法、カーテンコーティング等で形成される写真層の被膜形状にはムラ状塗布故障、ハジキ状塗布故障等の被膜故障が後を絶たない。
【0020】
また、ベタイン型両性界面活性剤と少なくとも1種のスルホ琥珀酸エステル型アニオン性界面活性剤を含有し、かつ支持体に最も近い写真構成層を形成する塗布液に少なくとも1種の弗素系界面活性剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料の製造方法が提案されおり、高速塗布適性、塗布故障耐性の改良及び発汗や画像の滲みが改善さるとされている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記構成により高速塗布適性あるいは塗布故障耐性に対してはある程度の効果は発揮されるが、迅速処理適性、色濁り現象、クッツキ耐性に対しては更なる改良が必要とされている。
【0021】
この様な状況から、高速塗布適性に優れ、塗布故障が改善され、かつ迅速処理適性を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料の開発が強く望まれている。
【0022】
【特許文献1】
特開2000−10239号公報 (特許請求の範囲)
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
【0025】
1.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−I)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0026】
2.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−II)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0027】
3.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−III)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0028】
4.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記一般式(S−IV)で表される界面活性剤と、該一般式(S−IV)で表される界面活性剤を除くスルホン酸塩アニオン性界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0029】
5.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−V)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0030】
6.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−VI)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0031】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と共に、前記一般式(S−I)〜(S−VI)で表される界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0032】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤について説明する。
【0033】
本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤としては、親水基として−SO3M(Mは水素原子または、例えば、Na+、K+等の金属カチオンを表す)を有する界面活性剤であって、アニオン性界面活性剤として、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。
【0034】
代表的な界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリム等が挙げられる。
【0035】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料の構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加せしめることができる。
【0036】
本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたりに0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgである。
【0037】
次いで、本発明に係る一般式(S−I)で表される界面活性剤について説明する。
【0038】
前記一般式(S−I)において、R1はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が10〜20のアルキル基、アルケニル基またはアリール基である。Aは連結基を表し、好ましくは酸素原子である。kは0または1を表す。
【0039】
jは0〜10の整数を表し、好ましくは1〜10である。mは0〜6の整数を表す。Mは水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表すが、好ましくは金属カチオンである。
【0040】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−I)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0041】
S−I−1:C11H23COONa
S−I−2:C13H27COONa
S−I−3:C15H31COONa
S−I−4:C17H33COONa
S−I−5:C8H17CH=CHC7H15COONa
S−I−6:C13H27−O−(CH2CH2O)3−CH2COONa
S−I−7:C11H23−O−(CH2CH2O)3−CH2COONa
S−I−8:C13H27−O−(CH2CH2O)6−CH2COONa
S−I−9:C13H27−O−(CH2CH2O)7−CH2COONa
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−I)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料の構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加することができるが、その中でも、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0042】
本発明に係る一般式(S−I)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を、支持体上に重層塗布する多層カラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加する場合の使用量として、塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲で添加しうるが、好ましくは0.05〜5gである。
【0043】
次に、本発明に係る前記一般式(S−II)で表される界面活性剤について説明する。
【0044】
前記一般式(S−II)において、R2は炭素数の合計が8〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、これらは無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が10〜18のアルキル基またはアルケニル基である。Mは、水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表す。Z1はNH2またはOM′を表し、M′は水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表し、Mと同じであっても、異なっていても良い。nは1または2を表す。
【0045】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−II)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0046】
【化6】
【0047】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−II)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0048】
本発明に係る一般式(S−II)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0049】
次に、本発明に係る前記一般式(S−III)で表される界面活性剤について説明する。
【0050】
前記一般式(S−III)において、R3は炭素数の合計が8〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、これらは無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が9〜18のアルキル基またはアルケニル基である。Mは水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表す。pは1または2を表す。
【0051】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−III)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
【化7】
【0053】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−III)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0054】
本発明に係る一般式(S−III)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0055】
次に、本発明に係る前記一般式(S−IV)で表される界面活性剤について説明する。
【0056】
前記一般式(S−IV)において、R4は炭素数の合計が8〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、それらは無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が9〜18のアルキル基またはアルケニル基である。Mは水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表す。qは1または2を表す。
【0057】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−IV)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0058】
【化8】
【0059】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−IV)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0060】
本発明に係る一般式(S−IV)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0061】
次に、本発明に係る前記一般式(S−V)で表される界面活性剤について説明する。
【0062】
前記一般式(S−V)において、R5は炭素数の合計が5〜12のアルキル基またはアルケニル基を表し、それらは無置換、置換のいずれでも構わない。Z2はO−またはCH2COO−を表す。rは1〜5の整数を表す。
【0063】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−V)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
【化9】
【0065】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−V)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0066】
本発明に係る一般式(S−V)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0067】
次に、本発明に係る前記一般式(S−VI)で表される高分子界面活性剤について説明する。
【0068】
前記一般式(S−VI)において、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有するアルキル基を表し、その炭素数が3〜15であることが好ましく、さらに4〜10であることが好ましく、特に4〜7であることが好ましい。L1、L2は各々単なる結合手または連結基を表し、連結基としてはヘテロ原子、カルボニル基、アミド基、あるいはこれらと結合したアルキレン基、例えば、オキシアルキレン基を表す。ヘテロ原子としては窒素、酸素、イオウ原子が好ましい。Xpは水素、ヒドロキシ基、アニオン性基、カチオン性基または両性基を表し、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、カウンターカチオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、カウンターアニオンとして、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。
【0069】
両性基としては、前記カチオン性基とアニオン性基の結合したものが好ましい。R6、R7は各々水素原子、低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基を表す。s、tは各々重合モル比を表し、s+t=1.0であり、好ましくは0.3≦s≦0.9、0.1≦t≦0.7である。
【0070】
本発明においては、Rf基含有の異なる複数のモノマーが共重合しても良いし、Xp基含有の異なる複数のモノマーが共重合しても良い。すなわち、s=s1+s2+s3+・・・、t=t1+t2+t3+・・・という複合型構成であっても良い。
【0071】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−VI)で表される高分子フッ素系界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0072】
本発明に係るアニオン型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0073】
【化10】
【0074】
次いで、本発明に係るカチオン型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0075】
【化11】
【0076】
次いで、本発明に係るノニオン型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0077】
【化12】
【0078】
次いで、本発明に係る両性型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0079】
【化13】
【0080】
次いで、本発明に係る複合型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0081】
【化14】
【0082】
上記高分子フッ素系界面活性剤の合成方法については、特表平10−501591号、同11−504360号、特開2000−263714号を参考に合成することができる。
【0083】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−VI)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0084】
本発明に係る一般式(S−VI)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0085】
本発明のカラー写真感光材料の製造に用いる塗布手段は、あらゆる公知の塗布装置を用いることができるが、その中でもスライドホッパー塗布装置であることが好ましい。また、本発明のカラー写真感光材料の製造においては、構成層を形成する各塗布液を重層塗布するのが好ましく、その際に用いる塗布方法としては、スライドホッパービード塗布法、スライドホッパーカーテン塗布法が挙げられる。
【0086】
本発明において、塗布速度は生産性向上の観点から180m/分以上とすることが好ましく、200m/分以上のごとき高速塗布にも対応可能であり、更には230〜500m/分の塗布速度において、本発明の効果を遺憾なく発揮することができる。勿論、180m/分以下の塗布速度であっても本発明の効果を妨げるものではない。また、塗布時の塗布層の総湿潤膜厚は100μm以下、更には90μm以下で、本発明の効果を遺憾なく発揮する。
【0087】
本発明に適用される一般的なビードコーティング、あるいはカーテンコーティングの適用条件の好ましい一例を以下に示す。
【0088】
塗布速度:60〜300cm/min
塗布液粘度:1〜200mPa・s
塗布液流量:各層0.1ml/cm・sec以上で、かつ全流量が0.5〜5ml/cm・sec以内
なお、塗布液を構成する主たる溶媒は水であり、2〜20層の多層同時塗布に適用できる。
【0089】
本発明のカラー写真感光材料は、少なくとも1層の感光性層を有し、該感光性層のゼラチンに対するオイル成分の質量比が0.55以上、0.85以下であることが好ましい。感光性層のオイル成分とは、発色色素前駆体(カプラー)、画像安定剤、それらの分散溶媒(高沸点有機溶媒等)、油溶性水難溶性化合物等である。通常、これらは低沸点有機溶媒に溶解され、界面活性剤を含有したゼラチン水溶液と混合された後、分散されることにより安定な分散粒子となる。これを感光性層用塗布液に混合する。この感光性層用塗布液が他の非感光性層用塗布液とともに支持体に塗設され、乾燥されることにより感光材料が完成する。
【0090】
感光性層用塗布液中のオイル成分とゼラチンとの比率は感光材料より得られた写真プリントやフィルムの画像色素安定性に密接に関わっている。つまりこの比率が高いほど、オイル成分の安定性が劣化し、写真プリントやフィルムの色素安定性が劣化する。特に、ゼラチンに対するオイル成分の質量比が、0.85を越えるとカラー写真感光材料としての使用に耐えない。また、この比率が低いと所望の発色色素濃度を得ることができない。具体的には、該比率が0.55未満の場合、画像色素濃度が満足できるものではない。
【0091】
本発明のカラー写真感光材料に用いられるゼラチンは、牛骨、牛皮、豚皮等のいずれを原料としたゼラチンでもよいが、好ましくは牛骨を原料として製造された石灰処理ゼラチンである。また、ゼラチンのゼリー強度(パギー法による)は、好ましくは250g以上である。
【0092】
ゼラチンのカルシウム含量(パギー法による)は、好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下である。ゼラチン中のカルシウム含量を低減させるには、一般にイオン交換樹脂カラムによる処理が好ましく用いられる。また、用いられるゼラチンは、写真的活性を低減させる目的で過酸化水素等による酸化処理を行うこともできる。ゼラチンの製法の詳細については、例えばArthur Veis著「The Macromolecular Chemistry of Gelatin」,Academic Press,187〜217頁(1964年)、T.H.James:The Theory of the Photographic Process 4th.ed.1977,(Macmillan)55頁、科学写真便覧(上)72〜75頁(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124頁(コロナ社)等に記載されている。
【0093】
本発明のカラー写真感光材料に用いるゼラチン、例えば、石灰処理ゼラチンは以下のようにして作製される。まず、燐酸カルシウムを除去したコラーゲンのみからなるオセインを2〜3ヵ月間、飽和石灰水中に浸漬(石灰漬け)した後、水洗、中和し、約60℃の温湯で抽出(1番抽出)を行う。次いで、約65℃で2番抽出を、約75℃で3番抽出を、更には80℃以上で4番抽出を行う。各抽出液は瀘過、減圧濃縮後、約10℃で冷却、凝固させ、次いで乾燥して得られる。
【0094】
本発明のカラー写真感光材料に含有されるゼラチン量の総和は、処理工程の迅速化、乾燥工程の迅速化の観点から7g/m2以下が好ましく、6.5g/m2以下がより好ましい。下限については特に制限はないが、一般的には物理特性もしくは写真性能の観点から、4.0g/m2以上であることが好ましい。ゼラチンの量は、パギー法に記載された水分の測定法で、11.0%の水分を含有したゼラチンの質量に換算して求められる。
【0095】
本発明のカラー写真感光材料の製造に際し、必要に応じて支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/またはその他の特性を向上するための1または2層以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0096】
本発明のカラー写真感光材料に用いる支持体としては、どのような材質を用いてもよく、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることができる。中でも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としては、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートまたはそれらのコポリマーが好ましい。
【0097】
支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/または有機の白色顔料を用いることができ、好ましくは無機の白色顔料が用いられ、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。白色顔料として好ましくは、硫酸バリウム、酸化チタンである。
【0098】
支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良するうえで13質量%以上が好ましく、更には15質量%以上が好ましい。
【0099】
紙支持体の耐水性樹脂層中の白色顔料の分散度は、特開平2−28640号公報に記載の方法で測定することができる。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が、上記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0100】
また、反射支持体の白色顔料を含有する耐水性樹脂中や塗布された親水性コロイド層中に、処理後の白地部の分光反射濃度バランスを調整し、白色性を改良するため、群青、油溶性染料等の微量の青味付剤や赤味付剤を添加することが好ましい。
【0101】
本発明のカラー写真感光材料に用いるハロゲン化銀写真乳剤の組成は、少なくとも95モル%の塩化銀を含有する塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等のハロゲン組成を有するものである。
【0102】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、重金属イオンを含有させるのが有利である。このような目的に用いることのできる重金属イオンとしては、例えば、鉄、イリジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト等の第8〜10族金属や、カドミウム、亜鉛、水銀などの第12族遷移金属や、鉛、レニウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、クロムの各イオンを挙げることができる。中でも鉄、イリジウム、白金、ルテニウム、ガリウム、オスミウムの金属イオンが好ましい。これらの金属イオンは、塩や、錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。
【0103】
上記重金属イオンが錯体を形成する場合には、その配位子またはイオンとしてはシアン化物イオン、チオシアン酸イオン、シアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、硝酸イオン、カルボニル、アンモニア等を挙げることができる。中でも、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等が好ましい。
【0104】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に重金属イオンを含有させるためには、該重金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の場所で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、重金属化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。
【0105】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の形状は、任意のものを用いることができる。好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21、39(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有する粒子をつくり、これを用いることもできる。さらに、双晶面を有する粒子を用いてもよい。
【0106】
本発明に係るハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられる。
【0107】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の粒径は特に制限はないが、迅速処理性及び得られる感度など他の写真性能などを考慮すると、好ましくは0.1〜1.2μm、更に好ましくは0.2〜1.0μmの範囲である。
【0108】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子であり、特に好ましくは、変動係数が0.15以下の単分散乳剤を2種以上同一のハロゲン化銀乳剤層に添加することである。ここでいう変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0109】
変動係数=S/R
(ここに、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
ここでいう粒径とは、球状のハロゲン化銀粒子の場合はその直径を、また、立方体や球状以外の形状の粒子の場合は、その投影像を同面積の円像に換算したときの直径を表す。
【0110】
ハロゲン化銀乳剤の調製装置や調製方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0111】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。ハロゲン化銀粒子は、一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を調製した後で成長させてもよい。種粒子を調製する方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0112】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなどいずれでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に、同時混合法の一形式として、例えば、特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0113】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許第2,921,164号等に記載された水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化して添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行なう装置などを用いてもよい。
【0114】
更に、必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物または増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、または、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0115】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法を組み合わせて用いることができる。本発明に係るハロゲン化銀乳剤に適用するカルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることができるが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としてはチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。また、本発明に係る金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することができる。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることができる。更に、本発明に係るハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いてもよい。
【0116】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤には、カラー写真感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることができる。この様な目的に用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号公報明細書7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される化合物を挙げることができ、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、1−(3−メトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール等の化合物を挙げることができる。これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。
【0117】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤としては、画像露光により表面に潜像を形成する表面潜像型ハロゲン化銀乳剤を用いて、現像を行うことによりネガ画像を形成する乳剤を用いても、あるいは粒子表面が予めかぶらされていない内部潜像型ハロゲン化銀乳剤を用い、画像露光後カブリ処理(造核処理)を施し、次いで表面現像を行うか、又は画像露光後、カブリ処理を施しながら表面現像を行うことにより直接ポジ画像を得ることができる乳剤を用いることができる。尚、内部潜像型ハロゲン化銀乳剤とは、ハロゲン化銀結晶粒子の主として内部に感光核を有し、露光によって粒子内部に潜像が形成されるようなハロゲン化銀粒子含有の乳剤を言う。
【0118】
本発明のカラー写真感光材料には、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で、種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的に対し、公知の化合物を制限なく用いることができるが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号公報308ページに記載のAI−1〜11の染料および特開平6−3770号公報に記載の染料が好ましく用いられ、赤外線吸収染料としては、特開平1−280750号公報の2ページ左下欄に記載の一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物が好ましい分光特性を有し、ハロゲン化銀写真乳剤の写真特性への影響もなく、また残色による汚染もなく好ましい。好ましい化合物の具体例として、同公報3ページ左下欄〜5ページ左下欄に挙げられた例示化合物(1)〜(45)を挙げることができる。
【0119】
これらの染料の添加量としては、鮮鋭性を改良する目的にはカラー写真感光材料の未現像処理試料の680nmにおける分光反射濃度が0.7以上にする量が好ましく、更には0.8以上にすることがより好ましい。
【0120】
本発明のカラー写真感光材料には、イエローカプラー、マゼンタカプラー、シアンカプラーに組み合わせて、400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層を有する。
【0121】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、1種または2種以上の増感色素を組み合わせて含有する。本発明に係るハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、公知の化合物をいずれも用いることができるが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号公報28ページに記載のBS−1〜8を単独でまたは組み合わせて好ましく用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。また、半導体レーザーを用いるなどして赤外光により画像露光を行う場合には、赤外感光性増感色素を用いる必要があるが、赤外感光性増感色素としては、特開平4−285950号公報6〜8ページに記載のIRS−1〜11の色素が好ましく用いられる。また、これらの赤外、赤、緑、青感光性増感色素に特開平4−285950号公報8〜9ページに記載の強色増感剤SS−1〜SS−9や特開平5−66515号公報15〜17ページに記載の化合物S−1〜S−17を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0122】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。増感色素の添加方法としては、メタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶媒や水に溶解して溶液として添加してもよいし、固体分散物として添加してもよい。
【0123】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得るいかなる化合物をも用いることができるが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0124】
本発明のカラー写真感光材料に好ましく用いることのできるシアンカプラーとしては、特開平4−114154号公報5ページ左下欄に記載の一般式(C−I)、(C−II)で表されるカプラーを挙げることができる。具体的な化合物は、同公報5ページ右下欄〜6ページ左下欄にCC−1〜CC−9として記載されているものを挙げることができる。
【0125】
本発明のカラー写真感光材料に好ましく用いることのできるマゼンタカプラーとしては、特開平4−114154号公報4ページ右上欄に記載の一般式(M−I)、(M−II)で表されるカプラーを挙げることができる。具体的な化合物は、同公報4ページ左下欄〜5ページ右上欄にMC−1〜MC−11として記載されているものを挙げることができる。上記マゼンタカプラーのうち、より好ましいのは、同号公報4ページ右上欄に記載の一般式(M−I)で表されるカプラーであり、その中でも、上記一般式(M−I)のRMが3級アルキル基であるカプラーが、耐光性に優れ特に好ましい。同公報5ページ上欄に記載されているMC−8〜MC−11は青から紫、赤に到る色の再現に優れ、さらにディテールの描写力にも優れており好ましい。
【0126】
本発明のカラー写真感光材料に好ましく用いることのできるイエローカプラーとしては、特開平4−114154号公報3ページ右上欄に記載の一般式(Y−I)で表されるカプラーを挙げることができる。具体的な化合物は、同公報3ページ左下欄以降にYC−1〜YC−9として記載されているものを挙げることができる。中でも同公報の一般式[Y−1]のRY1がアルコキシ基であるカプラーまたは特開平6−67388号公報に記載の一般式[I]で示されるカプラーは好ましい色調の黄色を再現でき好ましい。このうち、特に好ましい化合物例としては特開平4−114154号公報4ページ左下欄に記載されているYC−8、YC−9、および特開平6−67388号公報13〜14ページに記載のNo(1)〜(47)で示される化合物を挙げることができる。最も好ましい化合物は、特開平4−81847号公報1ページおよび同号公報11ページ〜17ページに記載の一般式[Y−1]で示される化合物である。
【0127】
本発明のカラー写真感光材料に用いられるカプラーやその他の有機化合物を添加するのに水中油滴型乳化分散法を用いる場合には、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後、または、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。カプラーを溶解して分散するために用いることのできる高沸点有機溶媒としては、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル類、が好ましく用いられる。また、高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0であることが好ましい。また、二種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0128】
また、高沸点有機溶媒を用いる方法に代えて、あるいは高沸点有機溶媒と併用して、水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマー化合物を、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒に溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて種々の分散手段により乳化分散する方法をとることもできる。この時用いられる水不溶性で有機溶媒可溶性のポリマーとしては、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)等を挙げることができる。
【0129】
上記各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することが好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平2−66541号公報3ページ記載の一般式IおよびIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号公報記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物特開平64−90445号公報記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号公報記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が特にマゼンタ色素用として好ましい。また特開平1−196049号公報記載の一般式I′で示される化合物および特開平5−11417号公報記載の一般式IIで示される化合物が特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0130】
発色色素の吸収波長をシフトさせる目的で、特開平4−114154号公報9ページ左下欄に記載の化合物(d−11)、同号公報明細書10ページ左下欄に記載の化合物(A′−1)等の化合物を用いることができる。また、これ以外にも米国特許第4,774,187号に記載の蛍光色素放出化合物を用いることもできる。
【0131】
本発明のカラー写真感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物をハロゲン化銀乳剤層とハロゲン化銀乳剤層の間の層に添加して色濁りを防止したり、あるいはハロゲン化銀乳剤層に添加してカブリ等を改良することが好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2、5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は、特開平4−133056号公報記載の一般式IIで示される化合物であり、同号公報明細書13〜14ページ記載の化合物II−1〜II−14および17ページ記載の化合物1が挙げられる。
【0132】
本発明のカラー写真感光材料中には、紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては、特開平1−250944号公報記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号公報記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号公報記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号公報記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号公報記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0133】
本発明のカラー写真感光材料には、バインダーであるゼラチンが現像処理過程等で溶融するのを防止する目的で、ゼラチンに対する硬膜剤を含有する。
【0134】
硬膜剤としては、例えば、ビニルスルホン型硬膜剤、クロロトリアジン型硬膜剤、高分子硬膜剤、カルボキシル基活性型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、特開昭61−249054号、同61−245153号公報に記載の化合物を使用することが好ましい。また、写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐためコロイド層中に特開平3−157646号公報記載のような防腐剤および抗カビ剤を添加することが好ましい。また、カラー写真感光材料または現像処理後の表面物性を改良するため、保護層に、例えば、特開平6−118543号公報や特開平2−73250号公報に記載の滑り剤を添加することが好ましい。
【0135】
本発明のカラー写真感光材料を用いて、写真画像を形成するには、ネガ上に記録された画像を、プリントしようとするハロゲン化銀写真感光材料上に光学的に結像させて焼き付けてもよいし、画像を一旦デジタル情報に変換した後その画像をCRT(陰極線管)上に結像させ、この像をプリントしようとするハロゲン化銀写真感光材料上に結像させて焼き付けてもよいし、デジタル情報に基づいてレーザー光の強度を変化させて走査することによって焼き付けてもよい。
【0136】
本発明のカラー写真感光材料では、発色現像主薬を内蔵していないことが好ましく、特に、直接鑑賞用の画像を形成するカラー写真感光材料に適用することが好ましい。例えば、カラーペーパー、カラー反転ペーパー、ポジ画像を形成する感光材料、ディスプレイ用感光材料、カラープルーフ用感光材料を挙げることができる。特に、反射支持体を有するカラー写真感光材料に適用することが好ましい。
【0137】
本発明のカラー写真感光材料の現像処理において用いられる芳香族一級アミン現像主薬としては、公知の化合物を用いることができる。これらの化合物の例として下記の化合物を挙げることができる。
【0138】
CD−1:N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2:2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3:2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4:4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5:2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン
CD−7:N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8:N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明において、上記の芳香族一級アミン現像主薬を含む発色現像液は、任意のpH域で使用できるが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0139】
本発明において、発色現像の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上、60℃以下で処理することが好ましい。
【0140】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが好ましい。
【0141】
発色現像液には、上記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することができる。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。
【0142】
本発明のカラー写真感光材料は、発色現像後、漂白処理及び定着処理を施される。漂白処理は定着処理と同時に行なってもよい。定着処理の後は、通常は水洗処理が行なわれる。また、水洗処理の代替として、安定化処理を行なってもよい。本発明のカラー写真感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料をはさんで搬送するローラートトランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともに感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが、この際の補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技法94−16935に記載の方法が最も好ましい。
【0143】
本発明のカラー写真感光材料をカラープルーフ用感光材料に適用した場合、画像を形成するには光源部走査露光方式の自動現像機を用いることが好ましい。特に好ましい画像形成のための機器、システムの具体例としては、コニカ社製KonsensusL、Konsensus570、KonsensusII等を挙げることができる。
【0144】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0145】
《多層カラー写真感光材料の作製》
〔試料101の作製〕
坪量160g/m2の紙パルプの両面をポリエチレンでラミネートし、紙支持体を作製した。ただし、ハロゲン化銀乳剤層を塗布する面側には、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンを12質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートし、反射支持体を作製した。この反射支持体表面をコロナ放電した後、ゼラチン下塗層を設け、後記の表1及び表2に示す構成の各層を、特開昭49−35447号公報に記載されているような自由落下カーテン膜方式カーテン塗布方式で、350m/分の塗布速度で塗布をして、多層カラー写真感光材料である試料101を作製した。
【0146】
(塗布液の調製)
以下に、塗布液調製方法の一例を示す。
【0147】
〈第1層塗布液の調製〉
イエローカプラー(Y−1)の23.4g、色素画像安定剤(ST−1)の3.34g、色素画像安定剤(ST−2)の3.34g、色素画像安定剤(ST−5)の3.34g、ステイン防止剤(HQ−1)の0.34g、画像安定剤Aの5.0g、高沸点有機溶媒(DBP)の5.0g及び高沸点有機溶媒(DNP)の1.67gに、酢酸エチルを60ml加えて溶解し、10%界面活性剤(SU−1)5mlを含有する7%ゼラチン水溶液320ml中に、超音波ホモジナイザーを用いて乳化分散させてイエローカプラー分散液500mlを調製した。このイエローカプラー分散液を、下記条件で調製した青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)と混合した後、塗布用の界面活性剤として、スルホコハク酸型界面活性剤(SU−2)を塗布液1Lに対して0.5g相当となるように添加し、第1層塗布液を調製した。
【0148】
〈第7層塗布液の調製〉
高沸点有機溶媒(DBP)の2.0g及び高沸点有機溶媒(DIDP)の2gに、酢酸エチルを6ml加えて混合し、10%界面活性剤(SU−1)を2ml含有する7%ゼラチン水溶液40mlに、超音波ホモジナイザーを用いて乳化分散させて70mlの高沸点有機溶媒の乳化分散液を調製した。この乳化分散液を11%ゼラチン水溶液に混合した後、平均粒径2μmの二酸化珪素の分散液を加え、更に塗布用としてスルホコハク酸型界面活性剤(SU−2)を塗布液1Lに対し、2.0g相当となるように添加し、第7層塗布液を調製した。
【0149】
その他の層の各塗布液についても、上記第1層、第7層塗布液の調製に準じて、各添加剤を表1及び表2に記載の塗布量になるように添加して、各層塗布液を調製した。
【0150】
なお、表1、2に記載の各ハロゲン化銀乳剤の添加量は、銀に換算して表示した。また、各層に適宜F−1を添加した。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
DBP:ジブチルフタレート
DNP:ジノニルフタレート
DOP:ジオクチルフタレート
DIDP:ジ−i−デシルフタレート
PVP:ポリビニルピロリドン
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−4:2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノンHQ−5:2,5−ジ〔(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル〕ハイドロキノン
画像安定剤A:P−t−オクチルフェノール
【0154】
【化15】
【0155】
【化16】
【0156】
【化17】
【0157】
【化18】
【0158】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
〈青感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)を、pAgを7.3、pHを3.0に制御しつつ、30分かけて同時添加した。続いて、下記(C液)及び(D液)を、pAgを8.0、pHを5.5に制御しつつ、180分かけて同時添加した。この時、pAgの制御は、特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0159】
(A液)
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200ml
(B液)
硝酸銀 10g
水を加えて 200ml
(C液)
塩化ナトリウム 102.7g
K2IrCl6 4×10−8モル/モルAg
K4Fe(CN)6 2×10−5モル/モルAg
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600ml
(D液)
硝酸銀 300g
水を加えて 600ml
上記各溶液の添加を終了した後、花王アトラス社製デモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して、平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1を調製した。
【0160】
次に、上記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、(C液)と(D液)の添加時間を、それぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1Bを調製した。
【0161】
次いで、上記調製したEMP−1に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、EMP−1Bに対しても同様に化学増感を施した後、増感されたEMP−1とEMP−1Bを銀量で1:1の比率で混合して青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)を調製した。
【0162】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10−4モル/モルAgX
STAB−1:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−2、及び平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−2Bを調製した。
【0163】
上記EMP−2に対し、下記化合物を用い55℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−2Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−2とEMP−2Bを銀量で1:1の比率で混合し、緑感性ハロゲン化銀乳剤(Em−G)を調製した。
【0164】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 4×10−4モル/モルAgX
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−3、及び平均粒径0.38μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−3Bを調製した。
【0165】
上記EMP−3に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−3Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−3とEMP−3Bを銀量で1:1の比率で混合し、赤感性ハロゲン化銀乳剤(Em−R)を調製した。
【0166】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10−4モル/モルAgX
安定剤:SS−1 2.0×10−3モル/モルAgX
【0167】
【化19】
【0168】
〔試料102〜117の作製〕
次いで、上記作製した試料101において、第1層と第7層に添加の界面活性剤の種類及び添加量を表3の様に変更した以外は同様にして、試料102〜117を作製した。
【0169】
【表3】
【0170】
《カラー写真感光材料の評価》
上記作製した試料101〜117について、下記の各評価を行った。
【0171】
〔露光及び現像処理〕
上記作製した試料について、光学ウェッジを介して、赤色光、緑色光、青色光の各単色光及び白色光で露光を施した後、下記の現像処理を行って、発色現像済の各試料を作製した。
【0172】
(現像処理工程)
〈処理工程〉
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 35.0±0.3℃ 45秒 162ml/m2
漂白定着 35.0±0.5℃ 45秒 216ml/m2
安定化 30〜34℃ 90秒 248ml/m2
乾燥 60〜80℃ 60秒
現像処理液の組成を下記に示す。
【0173】
〈発色現像液タンク液〉
純水 800ml
トリエタノールアミン 10g
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン 5g
臭化カリウム 0.02g
塩化カリウム 2g
亜硫酸カリウム 0.3g
1−ヒドロキシルエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
カテコール−3,5−ジホスホン酸二ナトリウム 1.0g
N−エチル−N−(βメタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミ
ノアニリン硫酸塩 4.5g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンスルホン酸誘導体) 1.0g
炭酸カリウム 27g
水を加えて全量を1リットルとし、pH=10.60に調整した。
【0174】
〈発色現像液補充液〉
純水 800ml
トリエタノールアミン 10g
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン 5g
亜硫酸カリウム 0.4g
1−ヒドロキシルエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
カテコール−3,5−ジホスホン酸二ナトリウム 1.0g
N−エチル−N−(βメタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミ
ノアニリン硫酸塩 8.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンスルホン酸誘導体) 1.3g
炭酸カリウム 30g
水を加えて全量を1リットルとし、pH=10.60に調整した。
【0175】
〈漂白定着液タンク液及び補充液〉
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 60g
エチレンジアミン四酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウムまたは氷酢酸でpH=5.7に調整した。
【0176】
〈水洗液タンク液及び補充液〉
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 1.0g
エチレングリコール 1.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 2.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
水酸化アンモニウム(20%水溶液) 3.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンスルホン酸誘導体) 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸または水酸化カリウムでpH=7.0に調整した。
【0177】
(色濁り耐性の評価)
青色光で露光を行った各現像処理済み試料について、X−Rite社製のX−Rite310TRにより、ステータスA測定法で、イエロー濃度1.8の点のマゼンタ濃度D0を測定した。同様に、60℃、80%RHの恒温恒湿機に7日間保存した各試料を、上記と同様の方法で青色光による単色露光を施し、前記現像処理工程を行った後、各試料をX−Rite社製のX−Rite310TRにより、ステータスA測定法で、イエロー濃度1.8の点のマゼンタ濃度D1を測定し、ΔD(D1−D0)を求めて、これを色濁り耐性の尺度とした。ΔDが小さいほど色濁り耐性に優れていることを表す。
【0178】
(くっつき耐性の評価)
白色光で露光した試料を、現像処理工程を行った後、得られた黒地試料を25℃、55%RHの条件下で2時間調湿した後、3.5cm×12cmに切断し、ハロゲン化銀乳剤層塗設面同士を重ね合わせた試料を積層した状態で、セロテープ(R)で固定した後、40℃、80%RHの条件下で24時間放置し、その後剥離して、ハロゲン化銀乳剤塗設面の接着の程度を目視観察して、下記の基準に則りくっつき耐性の評価を行った。
【0179】
A:接着が全く起きていない
B:接着面積が1〜10%であり、試料間の剥離に抵抗力はない
C:接着面積が11〜20%であり、試料間の剥離を行うと剥離音が出て、剥離に抵抗あり
D:接着面積が21〜50%であり、試料間の剥離を行うと画像表面を損なう
E:接着面積が51%以上であり、試料間の剥離を行うと画像形成層を破壊し、画像表面を著しく損なう
(塗布故障耐性の評価)
前記作製した未現像状態の各試料のハロゲン化銀乳剤層塗設面側について、尾引故障及びスジ故障の発生の有無について目視観察を行い、下記の基準に則り塗布故障耐性の評価を行った。
【0180】
A:塗布故障は全く見られず、塗布性が良好である
B:1m2当たり1〜5個の尾引き状塗布故障又はスジ状塗布故障が見られる
C:1m2当たり6〜9個の尾引き状塗布故障又はスジ状塗布故障が見られる
D:1m2当たり10個以上の尾引き状塗布故障又はスジ状塗布故障が見られる
(塗布ムラ耐性の評価)
上記作製した青色、緑色、赤色の各々の単色露光試料を目視観察し、下記の基準に則り塗布ムラ耐性の評価を行った。
【0181】
A:塗布面の濃度ムラは目視では判別できず、塗布性が良好である
B:1m2当たり1〜3箇所程度の微細な濃度ムラ状塗布故障が見られる
C:1m2当たり4〜6箇所程度の微細な濃度ムラ状塗布故障が見られる
D:1m2当たり7箇所以上の微細な濃度ムラ状塗布故障、若しくは大柄の濃度ムラ状故障が見られる
以上により得られた各評価結果を、表4に示す。
【0182】
【表4】
【0183】
表4より明らかなように、本発明で規定する界面活性剤の組み合わせからなる本発明の試料は、比較例に対し、色濁りの発生が低減され、くっつき耐性、塗布故障耐性及び塗布ムラ耐性に優れ、良好な高速塗布適性を有していることが分かる。
【0184】
【発明の効果】
本発明により、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関し、更に詳しくは、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良さるとともに、塗布適性に優れ、塗布故障の無い多層構成のハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラー現像処理は益々処理時間の迅速化が図られてきており、これに対応すべく、迅速処理適性を有し、かつ処理安定性に優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料(以降、単にカラー写真感光材料ともいう)が望まれている。
【0003】
現像処理時間の迅速化の観点からは、例えば、カラー印画紙に適用されるハロゲン化銀乳剤としては、実質的にヨウ化銀を含まない臭化銀、塩臭化銀及び塩化銀が用いられてきた。その中でも、塩化銀含有率が高いハロゲン化銀乳剤は、現像性が高く、迅速処理には有利であることが知られている。
【0004】
また、銀現像速度をより迅速化したり、カプラー等の発色効率を高める手段を用いることにより、カラー写真感光材料に塗設される銀量を低減させたり、バインダー量を減らして、ハロゲン化銀乳剤層等の膜厚を薄くすることにより、現像性を上げる試みがなされている。
【0005】
上記方法を適用したカラー写真感光材料の出現により、発色現像時間の迅速化が急速に進むに伴い、処理工程全体に占める乾燥工程時間の割合が増大しており、この現像処理後の乾燥時間に関しても、迅速化が求められている。一般に、カラー写真感光材料の各構成層のバインダーとしてはゼラチンが用いられているが、カラー写真感光材料に含有されるゼラチン量が多いと、乾燥工程に持ち込まれるカラー写真感光材料中の水分量が増大する結果、乾燥時間に多くの時間を要したり、あるいは梅雨時など高湿条件下においては乾燥不良を引き起こすという課題も発生し、ゼラチン量の低減が望まれている。
【0006】
また、カラー写真感光材料に含有されているゼラチンが多い場合、保存される環境雰囲気の温湿度変化に伴うゼラチン収縮により、未現像あるいは現像済のカラー写真感光材料が、不正なカールを引き起こし、その結果、取扱い上不都合を生じるという問題が発生する。また、カラー写真感光材料のカールが大きいと、自動現像機等での給送時に、搬送ローラに挟まれて送られる時に、何れか一方の搬送ローラにくっつき易くなり、このためローラに巻き付いて紙詰まりを生じたり、露光時に狭いスリット内を通す必要がある場合、このスリット内を通過しにくくなり、搬送不良(ジャム故障)を引き起こすことが多くなるため、この点からもカラー写真感光材料に含有されるゼラチン量を減ずることが求められている。
【0007】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料の構成要素として、主流をなすものは、支持体上に、いわゆるオイルプロテクテッドタイプと称される方法により親油性の色素形成カプラーや紫外線吸収化合物、抗酸化剤等の油溶性添加物を、高沸点有機溶媒に溶解された状態で、ゼラチン分散媒中に微小油滴粒子として分散して含有するハロゲン化銀乳剤層を設けたものである。
【0008】
しかしながら、この様な油滴粒子を含有するカラー写真感光材料が、未現像の状態で高温下や高湿下に長時間保存された場合には、塗膜中に存在している油滴粒子を構成する成分が、写真構成層内を移動し易くなる。未現像のカラー写真感光材料において、ハロゲン化銀乳剤層の色素形成カプラーが、他のハロゲン化銀乳剤層に移動した場合には、現像処理後には本来の発色色相に不必要な色相が混合した、いわゆる「色濁り現象」を発生させる。この「色濁り現象」の悪化は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料でバインダーとして用いられるゼラチン量を少なくすると、より顕著に発現する。
【0009】
更に、ゼラチン量の低減は、クッツキ耐性の劣化にもつながる。ゼラチンを用いるカラー写真感光材料は、高温高湿下に長期間保存すると、表面がべたつく様になり、ひどい場合には表面に接触したものと密着し、剥離する際に表面状態が損なわれることがあるが、このくっつき特性は、カラー写真感光材料に使用するゼラチン付量に大きく依存し、ゼラチン量を限度以下に低減すると、くっつきの劣化も大きい。
【0010】
ハロゲン化銀カラー写真感光材料の上記課題は、ゼラチン量を低減する以外に、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中の界面活性剤の種類にも大きく影響を受けていることが判明した。
【0011】
一般に、各種界面活性剤が、上記の油滴粒子分散時や支持体上にカラー写真感光材料の各構成層を塗布する際の塗布性向上を目的として広く用いられており、界面活性剤としては、主にスルホン酸塩アニオン性界面活性剤や硫酸塩アニオン性界面活性剤のタイプが用いられているが、これら界面活性剤は、添加量が多くなると上述の「色濁り現象」の悪化やクッツキ耐性の劣化等の問題が助長されることが明らかとなった。
【0012】
従って、低ゼラチン量で短時間現像処理が可能であり、かつ色濁り現象及びクッツキ耐性が改良されたカラー写真感光材料の開発が強く望まれている。
【0013】
近年、ハロゲン化銀カラー写真感光材料の様な写真構成層が数層〜十数層に及ぶ多層構成の塗布においては、生産効率上の観点から多層同時塗布が可能なスライドホッパー法やカーテンコーティング法等が、広く用いられている。
【0014】
ここでいうスライドホッパー法とは、斜降するスライド面の上縁にある複数の吐出スリットから、カラー写真感光材料の上層側の塗布液を上方から順次流延させて、スライド面上で塗膜層を形成して積層させ、一括してビードを形成させながら延展移行する支持体面に塗布するものである。均一塗布を実現する観点からは、このビードを安定に形成させるのが重要であり、ビード上下に気圧差を設け下部を負圧にすることがよく行われる。また、各塗布液の物性と各物性の相互関係が安定な塗布を行うのに重要である。
【0015】
近年は、前記の迅速処理性等の写真性能上の要請から、各写真構成層が薄膜化しているが、薄膜化は安定な塗布の阻害要因であり、如何に塗布速度を速めて生産効率の向上を図るかが大きな課題となっている。
【0016】
このスライドホッパー法による多層ビードコーティングに関しては、例えば、特開昭52−115214号、同54−1350号、同56−108566号等に記載があり、諸方法による良好な写真層の形成について数多くの努力が払われ、各種の技術開示がされている。
【0017】
一方、特公昭49−24133号、同49−35447号、同53−31005号にその基本技術が開示されるカーテンコーティング法は、スライドホッパービード塗布法に比べ、比較的高粘度における塗布性及び薄膜塗布性に優れるが、垂下する液膜両縁の液膜ガイド付近から膜裂けを起こしたり、液膜の両縁に厚膜部分又は脈状の隆起を生ずる、液膜の安定性を保証するためには供給液量を少なくとも1.4〜1.5cm3/cm・秒としなければならないことから、更なる薄膜化が困難である、液膜を形成するコーターのスライド面終端の端庇から液が離れる時に、いわゆるティーポット効果等好ましくない現象が発生したり、液膜が支持体に接触して塗設される際に塗布層と支持体間に気泡を抱き込むこと、ヒール状の液溜が生成する等の問題を有する。
【0018】
これに対して、特開昭54−6887号には案内手段としてのワイヤを液膜に順応させて移動する方法が、特開昭50−88138号、同55−73365号、同59−132966号等にはゼラチン液、水或いは低粘度ゼラチン溶液等を液膜両端縁部分の液に混ぜて垂下させ、液膜両縁の厚膜や脈条を防止する方法が、特開昭51−57734号、同52−69946号、同52−114636号、同61−292140号等には、端庇の液流下面の形状、曲率、液膜の支持体に対する着地角度により改良する方法が、特開昭50−71651号、同53−4953号、同54−50542号、同55−56867号には液膜の安定性改善に関する方法が、特開昭59−100435号には3層以上の重層カーテン塗布法において最上層、最下層となる塗布液を低粘度の薄層として液膜の安定性を得る方法が、それぞれ記載されている。
【0019】
しかしながら、前記したような各種の技術的努力にも拘らず、スライドホッパービード法、カーテンコーティング等で形成される写真層の被膜形状にはムラ状塗布故障、ハジキ状塗布故障等の被膜故障が後を絶たない。
【0020】
また、ベタイン型両性界面活性剤と少なくとも1種のスルホ琥珀酸エステル型アニオン性界面活性剤を含有し、かつ支持体に最も近い写真構成層を形成する塗布液に少なくとも1種の弗素系界面活性剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料の製造方法が提案されおり、高速塗布適性、塗布故障耐性の改良及び発汗や画像の滲みが改善さるとされている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記構成により高速塗布適性あるいは塗布故障耐性に対してはある程度の効果は発揮されるが、迅速処理適性、色濁り現象、クッツキ耐性に対しては更なる改良が必要とされている。
【0021】
この様な状況から、高速塗布適性に優れ、塗布故障が改善され、かつ迅速処理適性を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料の開発が強く望まれている。
【0022】
【特許文献1】
特開2000−10239号公報 (特許請求の範囲)
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
【0025】
1.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−I)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0026】
2.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−II)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0027】
3.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−III)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0028】
4.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、前記一般式(S−IV)で表される界面活性剤と、該一般式(S−IV)で表される界面活性剤を除くスルホン酸塩アニオン性界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0029】
5.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−V)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0030】
6.支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、前記一般式(S−VI)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0031】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と共に、前記一般式(S−I)〜(S−VI)で表される界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0032】
以下、本発明の詳細について説明する。
はじめに、本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤について説明する。
【0033】
本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤としては、親水基として−SO3M(Mは水素原子または、例えば、Na+、K+等の金属カチオンを表す)を有する界面活性剤であって、アニオン性界面活性剤として、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。
【0034】
代表的な界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリム等が挙げられる。
【0035】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料の構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加せしめることができる。
【0036】
本発明に係るスルホン酸塩アニオン性界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたりに0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgである。
【0037】
次いで、本発明に係る一般式(S−I)で表される界面活性剤について説明する。
【0038】
前記一般式(S−I)において、R1はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が10〜20のアルキル基、アルケニル基またはアリール基である。Aは連結基を表し、好ましくは酸素原子である。kは0または1を表す。
【0039】
jは0〜10の整数を表し、好ましくは1〜10である。mは0〜6の整数を表す。Mは水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表すが、好ましくは金属カチオンである。
【0040】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−I)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0041】
S−I−1:C11H23COONa
S−I−2:C13H27COONa
S−I−3:C15H31COONa
S−I−4:C17H33COONa
S−I−5:C8H17CH=CHC7H15COONa
S−I−6:C13H27−O−(CH2CH2O)3−CH2COONa
S−I−7:C11H23−O−(CH2CH2O)3−CH2COONa
S−I−8:C13H27−O−(CH2CH2O)6−CH2COONa
S−I−9:C13H27−O−(CH2CH2O)7−CH2COONa
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−I)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料の構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加することができるが、その中でも、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0042】
本発明に係る一般式(S−I)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を、支持体上に重層塗布する多層カラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加する場合の使用量として、塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲で添加しうるが、好ましくは0.05〜5gである。
【0043】
次に、本発明に係る前記一般式(S−II)で表される界面活性剤について説明する。
【0044】
前記一般式(S−II)において、R2は炭素数の合計が8〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、これらは無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が10〜18のアルキル基またはアルケニル基である。Mは、水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表す。Z1はNH2またはOM′を表し、M′は水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表し、Mと同じであっても、異なっていても良い。nは1または2を表す。
【0045】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−II)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0046】
【化6】
【0047】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−II)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0048】
本発明に係る一般式(S−II)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0049】
次に、本発明に係る前記一般式(S−III)で表される界面活性剤について説明する。
【0050】
前記一般式(S−III)において、R3は炭素数の合計が8〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、これらは無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が9〜18のアルキル基またはアルケニル基である。Mは水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表す。pは1または2を表す。
【0051】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−III)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
【化7】
【0053】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−III)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0054】
本発明に係る一般式(S−III)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0055】
次に、本発明に係る前記一般式(S−IV)で表される界面活性剤について説明する。
【0056】
前記一般式(S−IV)において、R4は炭素数の合計が8〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、それらは無置換、置換のいずれでも構わないが、好ましくは炭素数の合計が9〜18のアルキル基またはアルケニル基である。Mは水素原子またはNa+、K+等の金属カチオンを表す。qは1または2を表す。
【0057】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−IV)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0058】
【化8】
【0059】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−IV)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0060】
本発明に係る一般式(S−IV)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0061】
次に、本発明に係る前記一般式(S−V)で表される界面活性剤について説明する。
【0062】
前記一般式(S−V)において、R5は炭素数の合計が5〜12のアルキル基またはアルケニル基を表し、それらは無置換、置換のいずれでも構わない。Z2はO−またはCH2COO−を表す。rは1〜5の整数を表す。
【0063】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−V)で表される界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0064】
【化9】
【0065】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−V)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0066】
本発明に係る一般式(S−V)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0067】
次に、本発明に係る前記一般式(S−VI)で表される高分子界面活性剤について説明する。
【0068】
前記一般式(S−VI)において、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有するアルキル基を表し、その炭素数が3〜15であることが好ましく、さらに4〜10であることが好ましく、特に4〜7であることが好ましい。L1、L2は各々単なる結合手または連結基を表し、連結基としてはヘテロ原子、カルボニル基、アミド基、あるいはこれらと結合したアルキレン基、例えば、オキシアルキレン基を表す。ヘテロ原子としては窒素、酸素、イオウ原子が好ましい。Xpは水素、ヒドロキシ基、アニオン性基、カチオン性基または両性基を表し、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、カウンターカチオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、カウンターアニオンとして、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。
【0069】
両性基としては、前記カチオン性基とアニオン性基の結合したものが好ましい。R6、R7は各々水素原子、低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基を表す。s、tは各々重合モル比を表し、s+t=1.0であり、好ましくは0.3≦s≦0.9、0.1≦t≦0.7である。
【0070】
本発明においては、Rf基含有の異なる複数のモノマーが共重合しても良いし、Xp基含有の異なる複数のモノマーが共重合しても良い。すなわち、s=s1+s2+s3+・・・、t=t1+t2+t3+・・・という複合型構成であっても良い。
【0071】
以下に、本発明に係る前記一般式(S−VI)で表される高分子フッ素系界面活性剤の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0072】
本発明に係るアニオン型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0073】
【化10】
【0074】
次いで、本発明に係るカチオン型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0075】
【化11】
【0076】
次いで、本発明に係るノニオン型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0077】
【化12】
【0078】
次いで、本発明に係る両性型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0079】
【化13】
【0080】
次いで、本発明に係る複合型の高分子フッ素系界面活性剤の具体例を以下に示す。
【0081】
【化14】
【0082】
上記高分子フッ素系界面活性剤の合成方法については、特表平10−501591号、同11−504360号、特開2000−263714号を参考に合成することができる。
【0083】
本発明のカラー写真感光材料において、本発明に係る一般式(S−VI)で表される界面活性剤は、本発明のカラー写真感光材料を構成する親水性コロイド層のいずれの層にも添加できるが、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましい。
【0084】
本発明に係る一般式(S−VI)で表される界面活性剤の添加量は、本発明のカラー写真感光材料1m2あたり0.1〜1000mgであり、好ましくは1〜100mgであり、また、複数の写真構成層を形成する塗布液を支持体上に重層塗布するカラー写真感光材料の製造方法においては、支持体に隣接する層及び支持体から最も離れた層の少なくとも一層に添加することが好ましく、そのときの使用量は塗布液1kg当たり0.005〜50gの範囲であり、好ましくは0.05〜5gである。
【0085】
本発明のカラー写真感光材料の製造に用いる塗布手段は、あらゆる公知の塗布装置を用いることができるが、その中でもスライドホッパー塗布装置であることが好ましい。また、本発明のカラー写真感光材料の製造においては、構成層を形成する各塗布液を重層塗布するのが好ましく、その際に用いる塗布方法としては、スライドホッパービード塗布法、スライドホッパーカーテン塗布法が挙げられる。
【0086】
本発明において、塗布速度は生産性向上の観点から180m/分以上とすることが好ましく、200m/分以上のごとき高速塗布にも対応可能であり、更には230〜500m/分の塗布速度において、本発明の効果を遺憾なく発揮することができる。勿論、180m/分以下の塗布速度であっても本発明の効果を妨げるものではない。また、塗布時の塗布層の総湿潤膜厚は100μm以下、更には90μm以下で、本発明の効果を遺憾なく発揮する。
【0087】
本発明に適用される一般的なビードコーティング、あるいはカーテンコーティングの適用条件の好ましい一例を以下に示す。
【0088】
塗布速度:60〜300cm/min
塗布液粘度:1〜200mPa・s
塗布液流量:各層0.1ml/cm・sec以上で、かつ全流量が0.5〜5ml/cm・sec以内
なお、塗布液を構成する主たる溶媒は水であり、2〜20層の多層同時塗布に適用できる。
【0089】
本発明のカラー写真感光材料は、少なくとも1層の感光性層を有し、該感光性層のゼラチンに対するオイル成分の質量比が0.55以上、0.85以下であることが好ましい。感光性層のオイル成分とは、発色色素前駆体(カプラー)、画像安定剤、それらの分散溶媒(高沸点有機溶媒等)、油溶性水難溶性化合物等である。通常、これらは低沸点有機溶媒に溶解され、界面活性剤を含有したゼラチン水溶液と混合された後、分散されることにより安定な分散粒子となる。これを感光性層用塗布液に混合する。この感光性層用塗布液が他の非感光性層用塗布液とともに支持体に塗設され、乾燥されることにより感光材料が完成する。
【0090】
感光性層用塗布液中のオイル成分とゼラチンとの比率は感光材料より得られた写真プリントやフィルムの画像色素安定性に密接に関わっている。つまりこの比率が高いほど、オイル成分の安定性が劣化し、写真プリントやフィルムの色素安定性が劣化する。特に、ゼラチンに対するオイル成分の質量比が、0.85を越えるとカラー写真感光材料としての使用に耐えない。また、この比率が低いと所望の発色色素濃度を得ることができない。具体的には、該比率が0.55未満の場合、画像色素濃度が満足できるものではない。
【0091】
本発明のカラー写真感光材料に用いられるゼラチンは、牛骨、牛皮、豚皮等のいずれを原料としたゼラチンでもよいが、好ましくは牛骨を原料として製造された石灰処理ゼラチンである。また、ゼラチンのゼリー強度(パギー法による)は、好ましくは250g以上である。
【0092】
ゼラチンのカルシウム含量(パギー法による)は、好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下である。ゼラチン中のカルシウム含量を低減させるには、一般にイオン交換樹脂カラムによる処理が好ましく用いられる。また、用いられるゼラチンは、写真的活性を低減させる目的で過酸化水素等による酸化処理を行うこともできる。ゼラチンの製法の詳細については、例えばArthur Veis著「The Macromolecular Chemistry of Gelatin」,Academic Press,187〜217頁(1964年)、T.H.James:The Theory of the Photographic Process 4th.ed.1977,(Macmillan)55頁、科学写真便覧(上)72〜75頁(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124頁(コロナ社)等に記載されている。
【0093】
本発明のカラー写真感光材料に用いるゼラチン、例えば、石灰処理ゼラチンは以下のようにして作製される。まず、燐酸カルシウムを除去したコラーゲンのみからなるオセインを2〜3ヵ月間、飽和石灰水中に浸漬(石灰漬け)した後、水洗、中和し、約60℃の温湯で抽出(1番抽出)を行う。次いで、約65℃で2番抽出を、約75℃で3番抽出を、更には80℃以上で4番抽出を行う。各抽出液は瀘過、減圧濃縮後、約10℃で冷却、凝固させ、次いで乾燥して得られる。
【0094】
本発明のカラー写真感光材料に含有されるゼラチン量の総和は、処理工程の迅速化、乾燥工程の迅速化の観点から7g/m2以下が好ましく、6.5g/m2以下がより好ましい。下限については特に制限はないが、一般的には物理特性もしくは写真性能の観点から、4.0g/m2以上であることが好ましい。ゼラチンの量は、パギー法に記載された水分の測定法で、11.0%の水分を含有したゼラチンの質量に換算して求められる。
【0095】
本発明のカラー写真感光材料の製造に際し、必要に応じて支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/またはその他の特性を向上するための1または2層以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0096】
本発明のカラー写真感光材料に用いる支持体としては、どのような材質を用いてもよく、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることができる。中でも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としては、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートまたはそれらのコポリマーが好ましい。
【0097】
支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/または有機の白色顔料を用いることができ、好ましくは無機の白色顔料が用いられ、例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。白色顔料として好ましくは、硫酸バリウム、酸化チタンである。
【0098】
支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良するうえで13質量%以上が好ましく、更には15質量%以上が好ましい。
【0099】
紙支持体の耐水性樹脂層中の白色顔料の分散度は、特開平2−28640号公報に記載の方法で測定することができる。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が、上記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0100】
また、反射支持体の白色顔料を含有する耐水性樹脂中や塗布された親水性コロイド層中に、処理後の白地部の分光反射濃度バランスを調整し、白色性を改良するため、群青、油溶性染料等の微量の青味付剤や赤味付剤を添加することが好ましい。
【0101】
本発明のカラー写真感光材料に用いるハロゲン化銀写真乳剤の組成は、少なくとも95モル%の塩化銀を含有する塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等のハロゲン組成を有するものである。
【0102】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤においては、重金属イオンを含有させるのが有利である。このような目的に用いることのできる重金属イオンとしては、例えば、鉄、イリジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト等の第8〜10族金属や、カドミウム、亜鉛、水銀などの第12族遷移金属や、鉛、レニウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、クロムの各イオンを挙げることができる。中でも鉄、イリジウム、白金、ルテニウム、ガリウム、オスミウムの金属イオンが好ましい。これらの金属イオンは、塩や、錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。
【0103】
上記重金属イオンが錯体を形成する場合には、その配位子またはイオンとしてはシアン化物イオン、チオシアン酸イオン、シアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、硝酸イオン、カルボニル、アンモニア等を挙げることができる。中でも、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等が好ましい。
【0104】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に重金属イオンを含有させるためには、該重金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の場所で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、重金属化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。
【0105】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の形状は、任意のものを用いることができる。好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21、39(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有する粒子をつくり、これを用いることもできる。さらに、双晶面を有する粒子を用いてもよい。
【0106】
本発明に係るハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられる。
【0107】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の粒径は特に制限はないが、迅速処理性及び得られる感度など他の写真性能などを考慮すると、好ましくは0.1〜1.2μm、更に好ましくは0.2〜1.0μmの範囲である。
【0108】
本発明に係るハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子であり、特に好ましくは、変動係数が0.15以下の単分散乳剤を2種以上同一のハロゲン化銀乳剤層に添加することである。ここでいう変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0109】
変動係数=S/R
(ここに、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
ここでいう粒径とは、球状のハロゲン化銀粒子の場合はその直径を、また、立方体や球状以外の形状の粒子の場合は、その投影像を同面積の円像に換算したときの直径を表す。
【0110】
ハロゲン化銀乳剤の調製装置や調製方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0111】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。ハロゲン化銀粒子は、一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を調製した後で成長させてもよい。種粒子を調製する方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0112】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなどいずれでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に、同時混合法の一形式として、例えば、特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0113】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許第2,921,164号等に記載された水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化して添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行なう装置などを用いてもよい。
【0114】
更に、必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物または増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、または、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0115】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法を組み合わせて用いることができる。本発明に係るハロゲン化銀乳剤に適用するカルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることができるが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としてはチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。また、本発明に係る金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することができる。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることができる。更に、本発明に係るハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いてもよい。
【0116】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤には、カラー写真感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることができる。この様な目的に用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号公報明細書7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される化合物を挙げることができ、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、1−(3−メトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール等の化合物を挙げることができる。これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。
【0117】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤としては、画像露光により表面に潜像を形成する表面潜像型ハロゲン化銀乳剤を用いて、現像を行うことによりネガ画像を形成する乳剤を用いても、あるいは粒子表面が予めかぶらされていない内部潜像型ハロゲン化銀乳剤を用い、画像露光後カブリ処理(造核処理)を施し、次いで表面現像を行うか、又は画像露光後、カブリ処理を施しながら表面現像を行うことにより直接ポジ画像を得ることができる乳剤を用いることができる。尚、内部潜像型ハロゲン化銀乳剤とは、ハロゲン化銀結晶粒子の主として内部に感光核を有し、露光によって粒子内部に潜像が形成されるようなハロゲン化銀粒子含有の乳剤を言う。
【0118】
本発明のカラー写真感光材料には、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で、種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的に対し、公知の化合物を制限なく用いることができるが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号公報308ページに記載のAI−1〜11の染料および特開平6−3770号公報に記載の染料が好ましく用いられ、赤外線吸収染料としては、特開平1−280750号公報の2ページ左下欄に記載の一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物が好ましい分光特性を有し、ハロゲン化銀写真乳剤の写真特性への影響もなく、また残色による汚染もなく好ましい。好ましい化合物の具体例として、同公報3ページ左下欄〜5ページ左下欄に挙げられた例示化合物(1)〜(45)を挙げることができる。
【0119】
これらの染料の添加量としては、鮮鋭性を改良する目的にはカラー写真感光材料の未現像処理試料の680nmにおける分光反射濃度が0.7以上にする量が好ましく、更には0.8以上にすることがより好ましい。
【0120】
本発明のカラー写真感光材料には、イエローカプラー、マゼンタカプラー、シアンカプラーに組み合わせて、400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層を有する。
【0121】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、1種または2種以上の増感色素を組み合わせて含有する。本発明に係るハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、公知の化合物をいずれも用いることができるが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号公報28ページに記載のBS−1〜8を単独でまたは組み合わせて好ましく用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。また、半導体レーザーを用いるなどして赤外光により画像露光を行う場合には、赤外感光性増感色素を用いる必要があるが、赤外感光性増感色素としては、特開平4−285950号公報6〜8ページに記載のIRS−1〜11の色素が好ましく用いられる。また、これらの赤外、赤、緑、青感光性増感色素に特開平4−285950号公報8〜9ページに記載の強色増感剤SS−1〜SS−9や特開平5−66515号公報15〜17ページに記載の化合物S−1〜S−17を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0122】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。増感色素の添加方法としては、メタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶媒や水に溶解して溶液として添加してもよいし、固体分散物として添加してもよい。
【0123】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得るいかなる化合物をも用いることができるが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0124】
本発明のカラー写真感光材料に好ましく用いることのできるシアンカプラーとしては、特開平4−114154号公報5ページ左下欄に記載の一般式(C−I)、(C−II)で表されるカプラーを挙げることができる。具体的な化合物は、同公報5ページ右下欄〜6ページ左下欄にCC−1〜CC−9として記載されているものを挙げることができる。
【0125】
本発明のカラー写真感光材料に好ましく用いることのできるマゼンタカプラーとしては、特開平4−114154号公報4ページ右上欄に記載の一般式(M−I)、(M−II)で表されるカプラーを挙げることができる。具体的な化合物は、同公報4ページ左下欄〜5ページ右上欄にMC−1〜MC−11として記載されているものを挙げることができる。上記マゼンタカプラーのうち、より好ましいのは、同号公報4ページ右上欄に記載の一般式(M−I)で表されるカプラーであり、その中でも、上記一般式(M−I)のRMが3級アルキル基であるカプラーが、耐光性に優れ特に好ましい。同公報5ページ上欄に記載されているMC−8〜MC−11は青から紫、赤に到る色の再現に優れ、さらにディテールの描写力にも優れており好ましい。
【0126】
本発明のカラー写真感光材料に好ましく用いることのできるイエローカプラーとしては、特開平4−114154号公報3ページ右上欄に記載の一般式(Y−I)で表されるカプラーを挙げることができる。具体的な化合物は、同公報3ページ左下欄以降にYC−1〜YC−9として記載されているものを挙げることができる。中でも同公報の一般式[Y−1]のRY1がアルコキシ基であるカプラーまたは特開平6−67388号公報に記載の一般式[I]で示されるカプラーは好ましい色調の黄色を再現でき好ましい。このうち、特に好ましい化合物例としては特開平4−114154号公報4ページ左下欄に記載されているYC−8、YC−9、および特開平6−67388号公報13〜14ページに記載のNo(1)〜(47)で示される化合物を挙げることができる。最も好ましい化合物は、特開平4−81847号公報1ページおよび同号公報11ページ〜17ページに記載の一般式[Y−1]で示される化合物である。
【0127】
本発明のカラー写真感光材料に用いられるカプラーやその他の有機化合物を添加するのに水中油滴型乳化分散法を用いる場合には、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後、または、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。カプラーを溶解して分散するために用いることのできる高沸点有機溶媒としては、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル類、が好ましく用いられる。また、高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0であることが好ましい。また、二種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0128】
また、高沸点有機溶媒を用いる方法に代えて、あるいは高沸点有機溶媒と併用して、水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマー化合物を、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒に溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて種々の分散手段により乳化分散する方法をとることもできる。この時用いられる水不溶性で有機溶媒可溶性のポリマーとしては、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)等を挙げることができる。
【0129】
上記各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することが好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平2−66541号公報3ページ記載の一般式IおよびIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号公報記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物特開平64−90445号公報記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号公報記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が特にマゼンタ色素用として好ましい。また特開平1−196049号公報記載の一般式I′で示される化合物および特開平5−11417号公報記載の一般式IIで示される化合物が特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0130】
発色色素の吸収波長をシフトさせる目的で、特開平4−114154号公報9ページ左下欄に記載の化合物(d−11)、同号公報明細書10ページ左下欄に記載の化合物(A′−1)等の化合物を用いることができる。また、これ以外にも米国特許第4,774,187号に記載の蛍光色素放出化合物を用いることもできる。
【0131】
本発明のカラー写真感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物をハロゲン化銀乳剤層とハロゲン化銀乳剤層の間の層に添加して色濁りを防止したり、あるいはハロゲン化銀乳剤層に添加してカブリ等を改良することが好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2、5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は、特開平4−133056号公報記載の一般式IIで示される化合物であり、同号公報明細書13〜14ページ記載の化合物II−1〜II−14および17ページ記載の化合物1が挙げられる。
【0132】
本発明のカラー写真感光材料中には、紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては、特開平1−250944号公報記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号公報記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号公報記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号公報記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号公報記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0133】
本発明のカラー写真感光材料には、バインダーであるゼラチンが現像処理過程等で溶融するのを防止する目的で、ゼラチンに対する硬膜剤を含有する。
【0134】
硬膜剤としては、例えば、ビニルスルホン型硬膜剤、クロロトリアジン型硬膜剤、高分子硬膜剤、カルボキシル基活性型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、特開昭61−249054号、同61−245153号公報に記載の化合物を使用することが好ましい。また、写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐためコロイド層中に特開平3−157646号公報記載のような防腐剤および抗カビ剤を添加することが好ましい。また、カラー写真感光材料または現像処理後の表面物性を改良するため、保護層に、例えば、特開平6−118543号公報や特開平2−73250号公報に記載の滑り剤を添加することが好ましい。
【0135】
本発明のカラー写真感光材料を用いて、写真画像を形成するには、ネガ上に記録された画像を、プリントしようとするハロゲン化銀写真感光材料上に光学的に結像させて焼き付けてもよいし、画像を一旦デジタル情報に変換した後その画像をCRT(陰極線管)上に結像させ、この像をプリントしようとするハロゲン化銀写真感光材料上に結像させて焼き付けてもよいし、デジタル情報に基づいてレーザー光の強度を変化させて走査することによって焼き付けてもよい。
【0136】
本発明のカラー写真感光材料では、発色現像主薬を内蔵していないことが好ましく、特に、直接鑑賞用の画像を形成するカラー写真感光材料に適用することが好ましい。例えば、カラーペーパー、カラー反転ペーパー、ポジ画像を形成する感光材料、ディスプレイ用感光材料、カラープルーフ用感光材料を挙げることができる。特に、反射支持体を有するカラー写真感光材料に適用することが好ましい。
【0137】
本発明のカラー写真感光材料の現像処理において用いられる芳香族一級アミン現像主薬としては、公知の化合物を用いることができる。これらの化合物の例として下記の化合物を挙げることができる。
【0138】
CD−1:N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2:2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3:2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4:4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5:2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン
CD−7:N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8:N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明において、上記の芳香族一級アミン現像主薬を含む発色現像液は、任意のpH域で使用できるが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0139】
本発明において、発色現像の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上、60℃以下で処理することが好ましい。
【0140】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが好ましい。
【0141】
発色現像液には、上記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することができる。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。
【0142】
本発明のカラー写真感光材料は、発色現像後、漂白処理及び定着処理を施される。漂白処理は定着処理と同時に行なってもよい。定着処理の後は、通常は水洗処理が行なわれる。また、水洗処理の代替として、安定化処理を行なってもよい。本発明のカラー写真感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料をはさんで搬送するローラートトランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともに感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが、この際の補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技法94−16935に記載の方法が最も好ましい。
【0143】
本発明のカラー写真感光材料をカラープルーフ用感光材料に適用した場合、画像を形成するには光源部走査露光方式の自動現像機を用いることが好ましい。特に好ましい画像形成のための機器、システムの具体例としては、コニカ社製KonsensusL、Konsensus570、KonsensusII等を挙げることができる。
【0144】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0145】
《多層カラー写真感光材料の作製》
〔試料101の作製〕
坪量160g/m2の紙パルプの両面をポリエチレンでラミネートし、紙支持体を作製した。ただし、ハロゲン化銀乳剤層を塗布する面側には、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンを12質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートし、反射支持体を作製した。この反射支持体表面をコロナ放電した後、ゼラチン下塗層を設け、後記の表1及び表2に示す構成の各層を、特開昭49−35447号公報に記載されているような自由落下カーテン膜方式カーテン塗布方式で、350m/分の塗布速度で塗布をして、多層カラー写真感光材料である試料101を作製した。
【0146】
(塗布液の調製)
以下に、塗布液調製方法の一例を示す。
【0147】
〈第1層塗布液の調製〉
イエローカプラー(Y−1)の23.4g、色素画像安定剤(ST−1)の3.34g、色素画像安定剤(ST−2)の3.34g、色素画像安定剤(ST−5)の3.34g、ステイン防止剤(HQ−1)の0.34g、画像安定剤Aの5.0g、高沸点有機溶媒(DBP)の5.0g及び高沸点有機溶媒(DNP)の1.67gに、酢酸エチルを60ml加えて溶解し、10%界面活性剤(SU−1)5mlを含有する7%ゼラチン水溶液320ml中に、超音波ホモジナイザーを用いて乳化分散させてイエローカプラー分散液500mlを調製した。このイエローカプラー分散液を、下記条件で調製した青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)と混合した後、塗布用の界面活性剤として、スルホコハク酸型界面活性剤(SU−2)を塗布液1Lに対して0.5g相当となるように添加し、第1層塗布液を調製した。
【0148】
〈第7層塗布液の調製〉
高沸点有機溶媒(DBP)の2.0g及び高沸点有機溶媒(DIDP)の2gに、酢酸エチルを6ml加えて混合し、10%界面活性剤(SU−1)を2ml含有する7%ゼラチン水溶液40mlに、超音波ホモジナイザーを用いて乳化分散させて70mlの高沸点有機溶媒の乳化分散液を調製した。この乳化分散液を11%ゼラチン水溶液に混合した後、平均粒径2μmの二酸化珪素の分散液を加え、更に塗布用としてスルホコハク酸型界面活性剤(SU−2)を塗布液1Lに対し、2.0g相当となるように添加し、第7層塗布液を調製した。
【0149】
その他の層の各塗布液についても、上記第1層、第7層塗布液の調製に準じて、各添加剤を表1及び表2に記載の塗布量になるように添加して、各層塗布液を調製した。
【0150】
なお、表1、2に記載の各ハロゲン化銀乳剤の添加量は、銀に換算して表示した。また、各層に適宜F−1を添加した。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
DBP:ジブチルフタレート
DNP:ジノニルフタレート
DOP:ジオクチルフタレート
DIDP:ジ−i−デシルフタレート
PVP:ポリビニルピロリドン
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−4:2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノンHQ−5:2,5−ジ〔(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル〕ハイドロキノン
画像安定剤A:P−t−オクチルフェノール
【0154】
【化15】
【0155】
【化16】
【0156】
【化17】
【0157】
【化18】
【0158】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
〈青感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)を、pAgを7.3、pHを3.0に制御しつつ、30分かけて同時添加した。続いて、下記(C液)及び(D液)を、pAgを8.0、pHを5.5に制御しつつ、180分かけて同時添加した。この時、pAgの制御は、特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0159】
(A液)
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200ml
(B液)
硝酸銀 10g
水を加えて 200ml
(C液)
塩化ナトリウム 102.7g
K2IrCl6 4×10−8モル/モルAg
K4Fe(CN)6 2×10−5モル/モルAg
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600ml
(D液)
硝酸銀 300g
水を加えて 600ml
上記各溶液の添加を終了した後、花王アトラス社製デモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して、平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1を調製した。
【0160】
次に、上記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、(C液)と(D液)の添加時間を、それぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1Bを調製した。
【0161】
次いで、上記調製したEMP−1に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、EMP−1Bに対しても同様に化学増感を施した後、増感されたEMP−1とEMP−1Bを銀量で1:1の比率で混合して青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)を調製した。
【0162】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10−4モル/モルAgX
STAB−1:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−2、及び平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−2Bを調製した。
【0163】
上記EMP−2に対し、下記化合物を用い55℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−2Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−2とEMP−2Bを銀量で1:1の比率で混合し、緑感性ハロゲン化銀乳剤(Em−G)を調製した。
【0164】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 4×10−4モル/モルAgX
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−1の調製において、(A液)と(B液)、(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−3、及び平均粒径0.38μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−3Bを調製した。
【0165】
上記EMP−3に対し、下記化合物を用い、60℃にて化学増感を行った。又、上記EMP−3Bに対しても同様に化学増感した後、増感されたEMP−3とEMP−3Bを銀量で1:1の比率で混合し、赤感性ハロゲン化銀乳剤(Em−R)を調製した。
【0166】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10−4モル/モルAgX
安定剤:SS−1 2.0×10−3モル/モルAgX
【0167】
【化19】
【0168】
〔試料102〜117の作製〕
次いで、上記作製した試料101において、第1層と第7層に添加の界面活性剤の種類及び添加量を表3の様に変更した以外は同様にして、試料102〜117を作製した。
【0169】
【表3】
【0170】
《カラー写真感光材料の評価》
上記作製した試料101〜117について、下記の各評価を行った。
【0171】
〔露光及び現像処理〕
上記作製した試料について、光学ウェッジを介して、赤色光、緑色光、青色光の各単色光及び白色光で露光を施した後、下記の現像処理を行って、発色現像済の各試料を作製した。
【0172】
(現像処理工程)
〈処理工程〉
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 35.0±0.3℃ 45秒 162ml/m2
漂白定着 35.0±0.5℃ 45秒 216ml/m2
安定化 30〜34℃ 90秒 248ml/m2
乾燥 60〜80℃ 60秒
現像処理液の組成を下記に示す。
【0173】
〈発色現像液タンク液〉
純水 800ml
トリエタノールアミン 10g
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン 5g
臭化カリウム 0.02g
塩化カリウム 2g
亜硫酸カリウム 0.3g
1−ヒドロキシルエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
カテコール−3,5−ジホスホン酸二ナトリウム 1.0g
N−エチル−N−(βメタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミ
ノアニリン硫酸塩 4.5g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンスルホン酸誘導体) 1.0g
炭酸カリウム 27g
水を加えて全量を1リットルとし、pH=10.60に調整した。
【0174】
〈発色現像液補充液〉
純水 800ml
トリエタノールアミン 10g
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン 5g
亜硫酸カリウム 0.4g
1−ヒドロキシルエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
カテコール−3,5−ジホスホン酸二ナトリウム 1.0g
N−エチル−N−(βメタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミ
ノアニリン硫酸塩 8.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンスルホン酸誘導体) 1.3g
炭酸カリウム 30g
水を加えて全量を1リットルとし、pH=10.60に調整した。
【0175】
〈漂白定着液タンク液及び補充液〉
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 60g
エチレンジアミン四酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウムまたは氷酢酸でpH=5.7に調整した。
【0176】
〈水洗液タンク液及び補充液〉
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 1.0g
エチレングリコール 1.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 2.0g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
水酸化アンモニウム(20%水溶液) 3.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンスルホン酸誘導体) 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸または水酸化カリウムでpH=7.0に調整した。
【0177】
(色濁り耐性の評価)
青色光で露光を行った各現像処理済み試料について、X−Rite社製のX−Rite310TRにより、ステータスA測定法で、イエロー濃度1.8の点のマゼンタ濃度D0を測定した。同様に、60℃、80%RHの恒温恒湿機に7日間保存した各試料を、上記と同様の方法で青色光による単色露光を施し、前記現像処理工程を行った後、各試料をX−Rite社製のX−Rite310TRにより、ステータスA測定法で、イエロー濃度1.8の点のマゼンタ濃度D1を測定し、ΔD(D1−D0)を求めて、これを色濁り耐性の尺度とした。ΔDが小さいほど色濁り耐性に優れていることを表す。
【0178】
(くっつき耐性の評価)
白色光で露光した試料を、現像処理工程を行った後、得られた黒地試料を25℃、55%RHの条件下で2時間調湿した後、3.5cm×12cmに切断し、ハロゲン化銀乳剤層塗設面同士を重ね合わせた試料を積層した状態で、セロテープ(R)で固定した後、40℃、80%RHの条件下で24時間放置し、その後剥離して、ハロゲン化銀乳剤塗設面の接着の程度を目視観察して、下記の基準に則りくっつき耐性の評価を行った。
【0179】
A:接着が全く起きていない
B:接着面積が1〜10%であり、試料間の剥離に抵抗力はない
C:接着面積が11〜20%であり、試料間の剥離を行うと剥離音が出て、剥離に抵抗あり
D:接着面積が21〜50%であり、試料間の剥離を行うと画像表面を損なう
E:接着面積が51%以上であり、試料間の剥離を行うと画像形成層を破壊し、画像表面を著しく損なう
(塗布故障耐性の評価)
前記作製した未現像状態の各試料のハロゲン化銀乳剤層塗設面側について、尾引故障及びスジ故障の発生の有無について目視観察を行い、下記の基準に則り塗布故障耐性の評価を行った。
【0180】
A:塗布故障は全く見られず、塗布性が良好である
B:1m2当たり1〜5個の尾引き状塗布故障又はスジ状塗布故障が見られる
C:1m2当たり6〜9個の尾引き状塗布故障又はスジ状塗布故障が見られる
D:1m2当たり10個以上の尾引き状塗布故障又はスジ状塗布故障が見られる
(塗布ムラ耐性の評価)
上記作製した青色、緑色、赤色の各々の単色露光試料を目視観察し、下記の基準に則り塗布ムラ耐性の評価を行った。
【0181】
A:塗布面の濃度ムラは目視では判別できず、塗布性が良好である
B:1m2当たり1〜3箇所程度の微細な濃度ムラ状塗布故障が見られる
C:1m2当たり4〜6箇所程度の微細な濃度ムラ状塗布故障が見られる
D:1m2当たり7箇所以上の微細な濃度ムラ状塗布故障、若しくは大柄の濃度ムラ状故障が見られる
以上により得られた各評価結果を、表4に示す。
【0182】
【表4】
【0183】
表4より明らかなように、本発明で規定する界面活性剤の組み合わせからなる本発明の試料は、比較例に対し、色濁りの発生が低減され、くっつき耐性、塗布故障耐性及び塗布ムラ耐性に優れ、良好な高速塗布適性を有していることが分かる。
【0184】
【発明の効果】
本発明により、優れた迅速処理適性を有し、色濁り耐性、クッツキ耐性が改良されるとともに、高速塗布適性に優れ、塗布故障の無いハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することができた。
Claims (6)
- 支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、下記一般式(S−I)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(S−I)
R1−(A)k−(CH2CH2O)j−(CH2)m−COOM
(式中、R1はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。Aは連結基を表す。kは0または1を表し、jは0〜10の整数を表し、mは0〜6の整数を表す。Mは水素原子または金属カチオンを表す。) - 支持体上に、少なくとも95モル%の塩化銀を含有するハロゲン化銀乳剤を含むハロゲン化銀乳剤層と、非感光性親水コロイド層とを有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、スルホン酸塩アニオン性界面活性剤と、下記一般式(S−VI)で表される界面活性剤とを含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
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