JP2004316725A - 油圧緩衝器の減衰力調整装置 - Google Patents

油圧緩衝器の減衰力調整装置 Download PDF

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Abstract

【課題】減衰力調整用のニードル弁を中空ピストンロッドに挿通するに際し、ニードル弁の外周に設けたシール部材を損傷させることなく、中空ピストンロッドの基本長を短くすること。
【解決手段】油圧緩衝器20の減衰力調整装置240において、中空ピストンロッド210を、中空ロッド部210Aとピストンホルダ部231Aとからなるものにし、中空ロッド部210Aの先端側にシール挿入孔311を形成し、ニードル弁243に設けたシール部材310をシール挿入孔311に挿入し、ニードル弁243が螺合する筒状ねじ部材320をシール挿入孔311の開口部の内周に嵌合したもの。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空ピストンロッドの内部に、減衰力調整用のニードル弁を備える減衰力調整ロッドを挿通した油圧緩衝器の減衰力装置及びその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧緩衝器の減衰力調整装置として、特許文献1に記載の如く、ダンパシリンダの内部に中空ピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの先端部に設けたピストンによりダンパシリンダの内部をピストンロッドが収容されないピストン側油室とピストンロッドが収容されるロッド側油室とに区画し、ピストンロッドの中空部に挿通される減衰力調整ロッドに設けたニードル弁により、ピストンロッドの中空部に設けてあるピストン側油室とロッド側油室とのバイパス路の流路面積を調整可能にするものがある。
【0003】
この油圧緩衝器の減衰力装置では、ニードル弁の先端側の外周に設けたねじ部をピストンロッドの中空部に対して螺合し、減衰力調整ロッドによるニードル弁の回転により該ニードル弁を進退させてバイパス路の流路面積を調整可能にするとともに、ニードル弁の基端側の外周に設けたOリングをピストンロッドの中空部に対して封入し、バイパス路を外部に対して封止する。
【0004】
このとき、中空ピストンロッドを、中空ロッド部と、該中空ロッド部の先端部に取着されてピストンを保持するホルダ部とからなるものにしている。そして、中空ロッド部の先端側に、引抜き加工にて形成した黒皮部を切削により僅かに落とし、大径のシール挿入孔を形成している。また、ホルダ部の内周に、ニードル弁のねじ部が螺合するめねじ部を形成している。まず、ホルダ部の内周のめねじ部にニードル弁を螺合したホルダ組立体を形成し、その後、ホルダ組立体を構成するニードル弁にOリングを設け、このOリングを中空ロッド部のシール挿入孔に挿入しつつ、ホルダ組立体を中空ロッド部の外周に螺合して取着する。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−276719(3頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の油圧緩衝器の減衰力調整装置では、ホルダ部の側にニードル弁が螺合するめねじ部を形成することにより、中空ロッド部の側のシール挿入孔に挿入されるOリングが損傷することを回避できる。中空ロッド部の側のシール挿入孔の開口に、ニードル弁が螺合するめねじ部を形成する場合には、Oリングをシール挿入孔に挿入する過程で、Oリングがめねじ部によって損傷する。
【0007】
しかしながら、特許文献1の油圧緩衝器の減衰力調整装置では、ホルダ部の側にめねじ部を形成しているから、中空ロッド部に対し、ホルダ部のめねじ部がそれらの軸方向において互いに直列配置され、中空ロッド部の軸方向の外方にめねじ部が延長配置される形態になる。このため、中空ピストンロッドの基本長(油圧緩衝器の全長から最大ストローク長を差し引いた長さ)が長くなり、油圧緩衝器の全長を一定にするとき、最大ストローク長が短くなる。
【0008】
本発明の課題は、減衰力調整用のニードル弁を中空ピストンロッドに挿通するに際し、ニードル弁の外周に設けたシール部材を損傷させることなく、中空ピストンロッドの基本長を短くすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ダンパシリンダの内部に中空ピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの先端部に設けたピストンによりダンパシリンダの内部をピストンロッドが収容されないピストン側油室とピストンロッドが収容されるロッド側油室とに区画し、ピストンロッドの中空部に挿通される減衰力調整ロッドに設けたニードル弁により、ピストンロッドの中空部に設けてあるピストン側油室とロッド側油室とのバイパス路の流路面積を調整可能にするものであり、ニードル弁の先端側の外周に設けたねじ部をピストンロッドの中空部に対して螺合し、減衰力調整ロッドによるニードル弁の回転により該ニードル弁を進退させてバイパス路の流路面積を調整可能にするとともに、ニードル弁の基端側の外周に設けたシール部材をピストンロッドの中空部に対して封入し、バイパス路を外部に対して封止する油圧緩衝器の減衰力調整装置において、中空ピストンロッドを、中空ロッド部と、該中空ロッド部の先端部に取着されてピストンを保持するホルダ部とからなるものにし、中空ロッド部の先端側にシール挿入孔を形成し、ニードル弁に設けた前記シール部材を該シール挿入孔に挿入し、ニードル弁の前記ねじ部が螺合するめねじ部を備えた筒状ねじ部材を該シール挿入孔の開口部の内周に嵌合したものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記ねじ部材が、中空ロッド部のシール挿入孔に嵌合せしめられる筒状部と、筒状部の一端に設けられるフランジ部と有し、ねじ部材のフランジ部を、中空ロッド部の端面とホルダ部の端面との間に挟持するようにしたものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の油圧緩衝器の減衰力調整装置の組立方法であって、前記ニードル弁のねじ部に前記ねじ部材を予め螺合したニードル弁組立体を形成し、ニードル弁組立体を構成するニードル弁のシール部材を中空ロッド部のシール挿入孔に挿入し、ニードル弁組立体を構成するねじ部材を該シール挿入孔の開口部の内周に嵌合し、中空ロッド部にホルダ部を取着するようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1はフロントフォーク装置を示す全体断面図、図2は本発明例のフロントフォークを示す拡大断面図、図3は図2の上部断面図、図4は図2の下部断面図、図5は図3の要部である減衰力調整装置を示す断面図、図6は本発明例の減衰力調整装置を従来例と比較して示す断面図、図7はニードル弁組立体を示す断面図である。
【0013】
車両のフロントフォーク装置1は、図1に示す如く、自動二輪車、自転車等の車両の左右両側に設けられる左右のフロントフォーク10、20からなる。フロントフォーク装置1は、そのフロントフォーク10、20の車軸ブラケット103、209に、前輪の共通の車軸2の両端部が取付けられる。
【0014】
フロントフォーク装置1は、一方のフロントフォーク10に車両が路面から受ける衝撃力を緩衝する懸架スプリング11を内蔵し、他方のフロントフォーク20に懸架スプリング11の伸縮振動を制振する減衰力発生装置21を内蔵する。フロントフォーク装置1は、懸架スプリング11の設置と減衰力発生装置21の設置をフロントフォーク10とフロントフォーク20のそれぞれに分担させ、コスト低減を図るものである。
【0015】
(フロントフォーク10)(図1)
フロントフォーク10は、図1に示す如く、車体側に支持されるアウタチューブ101内に、車軸に結合されるインナチューブ102を摺動自在に嵌合し、両チューブ101、102の間に懸架スプリング11を介装している。
【0016】
フロントフォーク10は、アウタチューブ101とインナチューブ102の内部に油室12Aとエア室12Bからなる油溜室12を設けている。
【0017】
フロントフォーク10は、懸架スプリング11と、エア室12Bに閉じ込められているエア反力に起因の気体ばねにより、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0018】
(フロントフォーク20)(図1〜図4)
フロントフォーク20は、本発明の油圧緩衝器を構成し、図1〜図4に示す如く、車体側に支持されるアウタチューブ201内に、車軸に支持されるインナチューブ202を摺動自在に嵌合し、単筒形ダンパ204を倒立にして内装している。即ち、ダンパ204は、後に詳述する如く、ダンパシリンダ206とピストンロッド210を有して構成され、ダンパシリンダ206をアウタチューブ201に取付け、ピストンロッド210をインナチューブ202に取付けて構成される。尚、アウタチューブ201の下端内周にはインナチューブ202の外周に摺接するブッシュ201Aが、インナチューブ202の上端外周にはアウタチューブ201の内周に摺接するブッシュ202Aが設けられる。アウタチューブ201の下端内周には、インナチューブ202の外周に摺接する、オイルシール(シール部材)203A、ダストシール203Bも設けられる。
【0019】
アウタチューブ201の上端部にはダンパ204のダンパシリンダ206の上端部がOリングを介して螺着され、ダンパシリンダ206の上部開口端はキャップ205により閉塞される。キャップ205は、Oリングを介してダンパシリンダ206の内周に挿入されて螺着される。
【0020】
インナチューブ202の下端底部内周にはオイルロックケース207がOリングを介して液密に嵌装され、このオイルロックケース207をボトムボルト208で車軸ブラケット209にOリングを介して液密に固定してある。209Aは車軸ブラケット209のボルト挿入孔に係着されるカバーである。また、ボトムボルト208にはダンパ204のピストンロッド(中空ロッド)210の基端部が螺着されるとともにロックナット208Aでロックされ、このピストンロッド210の先端部をダンパシリンダ206の軸方向の先端部に設けたオイルロックピース211の先端側から該ダンパシリンダ206の内部に挿入してある。オイルロックピース211は基端筒状部211Aをダンパシリンダ206の先端開口部にOリングを介して液密に螺着して固定される。ピストンロッド210は、オイルロックピース211における筒状部211Aの下部に備えたロッドガイド部212のブッシュ212Aで支持され、シール部材212Bを貫通してダンパシリンダ206の内部に挿入されている。シール部材212Bは、ダンパシリンダ206の後述する油室233Bを密封し、油室233Bの油がダンパシリンダ206の外に逃げ出すのを阻止する一方向性のシール機能をもつ。また、オイルロックピース211における筒状部211Aの内部に設けたスプリング室213の下側端面にはシール押え212Cを介してリバウンドスプリング214が着座されている。リバウンドスプリング214はオイルロックピース211における筒状部211Aの上側内周面に係着した止め輪215により保持される状態で、スプリング室213に納められる。
【0021】
アウタチューブ201とインナチューブ202の内部で、ダンパ204の外側には油室221とエア室222とからなる油溜室223が設けられ、油室221とエア室222とは自由界面を介して接触し、エア室222に閉じ込められているエアが気体ばねを構成する。前述したフロントフォーク10における懸架スプリング11、エア室12Bの気体ばねと、フロントフォーク20におけるエア室222の気体ばねが、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0022】
ダンパ204は、フロントフォーク20の減衰力発生装置21を構成する、ピストンバルブ装置230と、ベースバルブ装置250とを有している。ダンパ204は、ピストンバルブ装置230とベースバルブ装置250の発生する減衰力により、フロントフォーク10の懸架スプリング11と、フロントフォーク10、20の気体ばねによる衝撃力の吸収に伴う、フロントフォーク10のチューブ101、102、フロントフォーク20のチューブ201、201の伸縮振動を抑制する。
【0023】
(ピストンバルブ装置230)
ピストンバルブ装置230は、ピストンロッド210を、インナチューブ202の側のボトムボルト208に螺着されて固定される中空ロッド部210Aと、中空ロッド部210Aの先端部に螺着されて取着されるピストンホルダ部231Aとからなるものとされ、このピストンホルダ231Aにナット231B等によりメインピストン232を保持している。メインピストン232は、ダンパシリンダ206の内部をピストンロッド210が収容されないピストン側油室233Aとピストンロッド210が収容されるロッド側油室233Bとに区画し、該ダンパシリンダ206の内部を摺動する。メインピストン232は、上下のピストン232A、232Bの組立体であり、多数枚の板バルブをピラミッド状に積層した伸側板バルブ234Aを備えてピストン側油室233Aとロッド側油室233Bとを連絡可能とする伸側ポート234と、中高速用圧側板バルブ235Aと低速用圧側板バルブ235Bとを備えてピストン側油室233Aとロッド側油室233Bとを連絡可能とする圧側ポート235とを備える。
【0024】
尚、ピストンバルブ装置230は、ピストンホルダ231Aに、バルブストッパ235C、圧側板バルブ235A、235B、メインピストン232(上下のピストン232A、232B)、伸側板バルブ234A、バルブストッパ234Bを挿着し、これらをナット231Bにより保持している。
【0025】
また、ピストンバルブ装置230は、減衰力調整装置240を有している。減衰力調整装置240は、ボトムボルト208に液密に挿着されたアジャスタ241に結合されている減衰力調整ロッド242をピストンロッド210の中空部に通し、アジャスタ241の回転操作により軸方向に進退する減衰力調整ロッド242の先端に設けたニードル弁243により、ピストンホルダ部231Aに設けてあるピストン側油室233Aとロッド側油室233Bとのバイパス路244の流路面積を調整可能にする。アジャスタ241はピストンロッド210の中空部にも液密に挿着される。245はアジャスタ241に内蔵したディテント機構部であり、ばねにより付勢されたボールをボトムボルト208に設けたディテント凹部に係合させ、アジャスタ241を回転方向の複数位置に節度感をもって順に位置付け可能にする。
【0026】
(ベースバルブ装置250)
ベースバルブ装置250は、ダンパシリンダ206の上端部に螺着されている前述のキャップ205にガイドパイプ251を螺着し、ガイドパイプ251の先端部にハウジングホルダ251Aを螺着し、このハウジングホルダ251Aにナット251B等によりサブピストン252を保持している。ガイドパイプ251の上部は小径部251Cに形成されている。サブピストン252はダンパシリンダ206の内部で前述のメインピストン232に相対するように固定配置され、ダンパシリンダ206の内周部に液密に接し、前述のピストン側油室233Aの上方にベースバルブ室253の油室253Aを区画形成する。サブピストン252は、多数枚の板バルブをピラミッド状に積層した中高速用圧側板バルブ254Aを備えてピストン側油室233Aとベースバルブ室253の油室253Aとを連絡可能とする圧側ポート254と、伸側板バルブ255A(チェックバルブ)を備えてピストン側油室233Aとベースバルブ室253の油室253Aとを連絡可能とする伸側ポート255とを備える。また、ハウジングホルダ251Aは、圧側ポート254と伸側ポート255とをバイパスしてピストン側油室233Aとベースバルブ室253の油室253Aとを連絡可能とするバイパス路256を備える。
【0027】
尚、ベースバルブ装置250は、ハウジングホルダ251Aに、バルブストッパ254B、圧側板バルブ254A、サブピストン252、伸側板バルブ255A、バルブストッパ255Bを挿着し、これらをナット251Bにより保持している。
【0028】
キャップ205に螺合された減衰力調整ロッド258は、アジャスタ259を備えるとともに、ガイドパイプ251に挿入され、アジャスタ259の回転操作により軸方向に進退する先端のニードル弁258Aによりバイパス路256の流路面積を調整可能とする。尚、キャップ205は頭部端面の中央部にアジャスタ259とそのホルダ259Aを埋込み保持している。260はアジャスタ259に内蔵したディテント機構部であり、ばねにより付勢されたボールをホルダ259Aに設けたディテント凹部に係合させ、アジャスタ259を回転方向の複数位置に節度感を持って順に位置付け可能とする。
【0029】
尚、ハウジングホルダ251Aは、バイパス路256のニードル弁258Aにより開閉される流路面積調整部より油室253A側に、分岐流路256Aを設けてある。ハウジングホルダ251Aにおいて分岐流路256Aがベースバルブ室253の油室253Aに開口する部分には低速用圧側板バルブ254Cが設けられる。
【0030】
また、ベースバルブ装置250は、ダンパシリンダ206の内部に、該ダンパシリンダ206とガイドパイプ251に沿ってOリング260A、シール部材260Bを介して液密に摺動するフリーピストン型の可動隔壁部材261を備える。隔壁部材261は、ベースバルブ室253のサブピストン252の側でピストン側油室233Aに連通している油室253Aと、キャップ205の側の体積補償室253Bとを区画する。体積補償室253Bは、内部にエアを封入され、エア室222と連通路263で連通している。キャップ205は、フロントフォーク20の激しい伸縮ストロークによってアウタチューブ201の下端内周に設けたオイルシール203Aのリップを介してエア室222、体積補償室253Bに逐次蓄圧されたエアを抜くため、キャップ205に設けた体積補償室253Bに連通するエア通路264にプラグボルト265を螺着している。尚、スプリング262が、この最大伸張時に僅かな初期荷重を有するように、隔壁部材261とキャップ205との間に介装される。
【0031】
ダンパシリンダ206内にピストンロッド210が進入する圧縮時に、このスプリング262が収縮し、このときのスプリング262のばね荷重分だけ、ダンパシリンダ206内の油室が加圧され、伸張時におけるダンパシリンダ内油室のキャビテーションの発生を防止し、また伸張時に続く圧縮時の減衰力発生の遅れ(さぼり)も回避する。
【0032】
尚、ベースバルブ装置250は、フロントフォーク20のピストンロッド210がストロークする度に、該ピストンロッド210の外周面に付着した油室221の油をロッドガイド部212のシール部材212Bからダンパシリンダ206の内部に持ち込む。これにより、ダンパシリンダ206の内部の油室233A、233B、253Aの作動油が一定量以上になると、可動隔壁部材261がその油圧により上方へ移動し、隔壁部材261の内周のシール部材260Bがガイドパイプ251の小径部251Cに到達したときに、ダンパシリンダ206の余剰油を体積補償室253Bから連通路263、エア室222経由でダンパシリンダ206の外の油室221に排出するブロー機能を有する。
【0033】
従って、フロントフォーク20は以下の如くに減衰作用を行なう。
(圧縮時)
フロントフォーク20の圧縮時には、ピストン速度の極低速時に、ベースバルブ装置250においてサブピストン252のニードル弁258Aを流れる油により圧側減衰力を生じ、低速時には、ピストンバルブ装置230においてメインピストン232の低速用圧側板バルブ235Bを流れる油により圧側減衰力を生じ、かつベースバルブ装置250においてサブピストン252の低速用圧側板バルブ254Cを流れる油により圧側減衰力を生じ、中高速時に、ピストンバルブ装置230においてメインピストン232の中高速用圧側板バルブ235Aを流れる油により圧側減衰力を生じ、かつベースバルブ装置250においてサブピストン252の圧側板バルブ254Aを流れる油により圧側減衰力を生ずる。
【0034】
(伸張時)
フロントフォーク20の伸張時には、ピストン速度の低速時に、ピストンバルブ装置230においてメインピストン232のニードル弁241を流れる油により伸側減衰力を生じ、中高速時に、ピストンバルブ装置230においてメインピストン232の伸側板バルブ234Aを流れる油により伸側減衰力を生じ、ベースバルブ装置250では殆ど減衰力を生じない。
【0035】
これらの圧側と伸側の減衰力により、フロントフォーク10とフロントフォーク20の伸縮振動が抑制される。
【0036】
尚、フロントフォーク20の最圧縮時には、ダンパシリンダ206の軸方向の先端部に設けたオイルロックピース211が、インナチューブ202の底部に設けてあるオイルロックケース207に嵌合し、両者の間に区画形成されるオイルロック油室270において圧縮される油によりオイルロック作用を生ぜしめ、ダンパ204の底つきを防止する。
【0037】
また、フロントフォーク20の最伸張時には、ピストンロッド210に設けているピストンホルダ部231Aの下端面が、ダンパシリンダ206の開口部に設けてあるオイルロックピース211のロッドガイド部212に支持されているリバウンドスプリング214に衝合し、伸び切りの緩衝作用を果たす。
【0038】
しかるに、フロントフォーク20にあっては、減衰力調整装置240において、ニードル弁243をピストンロッド210(中空ロッド部210Aとホルダ部231A)に挿通するに際し、以下の構成を具備する(図5〜図7)。
【0039】
ピストンホルダ部231Aは、図5に示す如く、中心軸上に設けた縦孔244Aを先端面にてピストン側油室233Aに開口し、縦孔244Aに直交する横孔244Bを基端側の外周面にてロッド側油室233Bに開口し、縦孔244Aと横孔244Bによりバイパス路244を形成する。
【0040】
ピストンホルダ部231Aは、横孔244Bよりも基端側の内周に設けためねじ部301を中空ロッド部210Aの先端側外周に設けたねじ部302に螺合することにて、中空ロッド部210Aに取着される。
【0041】
ニードル弁243は先端側の外周にねじ部243Aを設け、ニードル弁243の基端側の外周に形成した環状溝243BにOリング等のシール部材310を設ける。
【0042】
そして、中空ロッド部210Aの先端側に大径のシール挿入孔311を形成し、ニードル弁243に設けたシール部材310をシール挿入孔311に挿入する。更に、ニードル弁243のねじ部243Aが螺合するめねじ部321を備えた円筒状等の筒状ねじ部材320の円筒状等の筒状部320Aを、中空ロッド部210Aのシール挿入孔311の開口部の内周に圧入して嵌合する。
【0043】
筒状ねじ部材320は、中空ロッド部210Aのシール挿入孔311に嵌合せしめられる上述の筒状部320Aと、筒状部320Aの一端に設けられるフランジ部320Bとを有する。そして、ピストンホルダ部231Aのめねじ部301を中空ロッド部210Aのねじ部302に螺合した状態で、筒状ねじ部材320のフランジ部320Bを、中空ロッド部210Aの端面とピストンホルダ部231Aの端面との間に挟持する。
【0044】
これにより、減衰力調整装置240にあっては、ニードル弁243のねじ部243Aを筒状ねじ部材320のめねじ部321に螺合した状態で、アジャスタ241及び減衰力調整ロッド242によるニードル弁243の回転により、ニードル弁243を進退させてバイパス路244のバルブシート244C(縦孔244Aの基端開口に設けたバルブシート244C)に接離し、バイパス路244の流路面積を調整可能にする。また、ニードル弁243の外周に設けたシール部材310を中空ロッド部210Aの中空部(シール挿入孔311)に封入し、バイパス路244を外部に対して封止する。
【0045】
フロントフォーク20において、減衰力調整装置240は以下の手順で組立てられる。
【0046】
(1)ニードル弁243のねじ部243Aに筒状ねじ部材320のめねじ部321を予め螺合したニードル弁組立体330を形成する(図7(A))。ニードル弁243の環状溝243Bにはシール部材310が設けられる。
【0047】
(2)ニードル弁組立体330を構成するニードル弁243のシール部材310を、中空ロッド部210Aのシール挿入孔311に挿入する(図7(B))。
【0048】
(3)ニードル弁組立体330を構成する筒状ねじ部材320の筒状部320Aを中空ロッド部210Aのシール挿入孔311の開口部の内周に圧入して嵌合する(図7(B))。
【0049】
(4)中空ロッド部210Aの先端側外周のねじ部302に、ピストンホルダ部231Aのめねじ部301を螺合して取着する。
【0050】
減衰力調整ロッド242は、上述(1)のニードル弁243の外周に嵌合しても良く、上述(2)〜(4)で中空ロッド部210Aに組付けられたニードル弁243の外周に対し該中空ロッド部210Aの基端側開口(ボトムボルト208への螺合側)から挿入して嵌合しても良い。減衰力調整ロッド242とニードル弁243は、それらの非円形断面(例えばD形断面)を互いに嵌合して回転方向に係合する。
【0051】
尚、アジャスタ241が、ボトムボルト208と、ボトムボルト208に螺着される中空ロッド部210Aの両者に液密に挿着される。そして、中空ロッド部210Aの中空部において、アジャスタ241と減衰力調整ロッド242が、そらの非円形断面(例えばD形断面)を互いに嵌合して回転方向に係合せしめられる。
【0052】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(請求項1に対応する作用効果)
▲1▼ニードル弁243が螺合するめねじ部321を備えた筒状ねじ部材320を、中空ロッド部210Aに嵌合したから、めねじ部321が中空ロッド部210Aに対しそれらの軸方向において互いに並列配置され、めねじ部321の長さ分だけ、ピストンホルダ部231Aの長さを短くすることができる。その結果、フロントフォーク20の基本長を短くし、フロントフォーク20の最大ストロークを大きくとることができる。
【0053】
図6(A)は本発明例であり、図6(B)は筒状ねじ部材320を用いず、ピストンホルダ部231Aの側にニードル弁243のねじ部243Aが螺合するねじ部321Aを形成した従来例であり、本発明では、従来例に比し、ピストンホルダ部231Aの長さがLだけ短くなり、ピストンロッド210の基本長をLだけ短くできる。
【0054】
また、ニードル弁243の外周に螺合する筒状ねじ部材320を、中空ロッド部210Aに形成したシール挿入孔311に嵌合するようにしたから、中空ロッド部210Aへのニードル弁243の組付け時に、ニードル弁243の外周のシール部材310が損傷することがない。
【0055】
(請求項2に対応する作用効果)
▲2▼筒状ねじ部材320が筒状部320Aのみからなる場合に、筒状ねじ部材320の筒状部320Aを単に中空ロッド部210Aの内周に、例えば圧入により嵌合して固定した場合等には、車両のジャンプ後の着地におけるように、ピストン側油室233Aに大きな圧力が発生したとき、筒状ねじ部材320が中空ロッド部210Aの内周に対し軸方向にずれ移動するおそれがある。
【0056】
筒状ねじ部材320にフランジ部320Bを設け、このフランジ部320Bを中空ロッド部210Aの端面とホルダ部231Aの端面との間に挟持することにより、このような筒状ねじ部材320のずれ移動を阻止できる。
【0057】
(請求項3に対応する作用効果)
▲3▼ニードル弁243の外周のねじ部243Aに、予め筒状ねじ部材320を螺合したニードル弁組立体330を形成し、このニードル弁組立体330を中空ロッド部210Aのシール挿入孔311に組付け、ホルダ部231Aを単体で中空ロッド部210Aに取着するようにした。その結果、ホルダ部231Aがニードル弁243を予め組付けられた状態で中空ロッド部210Aのシール挿入孔311に組付けられるものに比して、組付性が向上する。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、減衰力調整用のニードル弁を中空ピストンロッドに挿通するに際し、ニードル弁の外周に設けたシール部材を損傷させることなく、中空ピストンロッドの基本長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はフロントフォーク装置を示す全体断面図である。
【図2】図2は本発明例のフロントフォークを示す拡大断面図である。
【図3】図3は図2の上部断面図である。
【図4】図4は図2の下部断面図である。
【図5】図5は図3の要部である減衰力調整装置を示す断面図である。
【図6】図6は本発明例の減衰力調整装置を従来例と比較して示す断面図である。
【図7】図7はニードル弁組立体を示す断面図である。
【符号の説明】
20 フロントフォーク(油圧緩衝器)
206 ダンパシリンダ
210 ピストンロッド
210A 中空ロッド部
231A ピストンホルダ部
232 ピストン
233A ピストン側油室
233B ロッド側油室
240 減衰力調整装置
242 減衰力調整ロッド
243 ニードル弁
243A ねじ部
244 バイパス路
310 シール部材
311 シール挿入孔
320 筒状ねじ部材
320A 筒状部
320B フランジ部
321 めねじ部
330 ニードル弁組立体

Claims (3)

  1. ダンパシリンダの内部に中空ピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの先端部に設けたピストンによりダンパシリンダの内部をピストンロッドが収容されないピストン側油室とピストンロッドが収容されるロッド側油室とに区画し、
    ピストンロッドの中空部に挿通される減衰力調整ロッドに設けたニードル弁により、ピストンロッドの中空部に設けてあるピストン側油室とロッド側油室とのバイパス路の流路面積を調整可能にするものであり、
    ニードル弁の先端側の外周に設けたねじ部をピストンロッドの中空部に対して螺合し、減衰力調整ロッドによるニードル弁の回転により該ニードル弁を進退させてバイパス路の流路面積を調整可能にするとともに、ニードル弁の基端側の外周に設けたシール部材をピストンロッドの中空部に対して封入し、バイパス路を外部に対して封止する油圧緩衝器の減衰力調整装置において、
    中空ピストンロッドを、中空ロッド部と、該中空ロッド部の先端部に取着されてピストンを保持するホルダ部とからなるものにし、
    中空ロッド部の先端側にシール挿入孔を形成し、ニードル弁に設けた前記シール部材を該シール挿入孔に挿入し、ニードル弁の前記ねじ部が螺合するめねじ部を備えた筒状ねじ部材を該シール挿入孔の開口部の内周に嵌合したことを特徴とする油圧緩衝器の減衰力調整装置。
  2. 前記ねじ部材が、中空ロッド部のシール挿入孔に嵌合せしめられる筒状部と、筒状部の一端に設けられるフランジ部と有し、
    ねじ部材のフランジ部を、中空ロッド部の端面とホルダ部の端面との間に挟持する請求項1に記載の油圧緩衝器の減衰力調整装置。
  3. 請求項1又は2に記載の油圧緩衝器の減衰力調整装置の組立方法であって、
    前記ニードル弁のねじ部に前記ねじ部材を予め螺合したニードル弁組立体を形成し、
    ニードル弁組立体を構成するニードル弁のシール部材を中空ロッド部のシール挿入孔に挿入し、
    ニードル弁組立体を構成するねじ部材を該シール挿入孔の開口部の内周に嵌合し、
    中空ロッド部にホルダ部を取着する油圧緩衝器の減衰力調整装置の組立方法。
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