JP3954392B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧緩衝器に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧緩衝器として、実開昭53-88692、実公平4-43632、特許2870678に記載の如く、車体側チューブと車輪側チューブを摺動自在に嵌合し、車体側チューブ内にダンパシリンダを立設し、該ダンパシリンダの上端開口部にロッドガイドを固定し、車体側チューブにピストンロッドの基端部を取付け、ピストンロッドをロッドガイドからダンパシリンダ内に挿入し、ピストンロッドの先端部にピストンを設け、ダンパシリンダ内にピストンロッドを収容するピストンロッド側油室とピストンロッドを収容しないピストン側油室を形成し、ダンパシリンダの外側に、ピストン側油室と連通する油溜室と、該油溜室と接する気体室を設けたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術には以下の問題点がある。
(実開昭53-88692)
油圧緩衝器が作動すると、油溜室が気体室と接していることや、懸架スプリングの伸縮により、油溜室が攪拌され、油溜室中に気泡が巻き込まれる。この気泡は、伸長時にダンパシリンダ下部の連通孔からダンパシリンダ内の油室に侵入し、ダンパシリンダ内で発生する減衰力の応答性を悪化させる。そこで、ダンパシリンダ内に気泡が蓄積しないように、ピストンロッドとロッドガイドとの間にピストンロッドの摺動を許容するために通常形成される0.02〜0.03mm程度の摺動隙間を利用し、この気泡をダンパシリンダ外の油溜室に逃がすようにしている。
【0004】
しかしながら、ダンパシリンダ内の気泡及び作動油が摺動隙間から洩れ出ることにより、減衰力の応答性が悪くなるし、減衰力の大きさも油が洩れた分だけ低くなる。
【0005】
(実公平4-43632)
ダンパシリンダに挿入されるピストンロッド6とこれをガイドするベアリング29との間の摺動隙間にシール部材が設けられていないので、ダンパシリンダ内の気泡及び作動油がこの摺動隙間から洩れ出ることにより減衰力が低下する虞がある。
【0006】
また、ダンパシリンダの上部側壁にオリフィス孔30を設けて作動油中に混入したエアをこのオリフィス孔30からダンパシリンダ外の油溜室に逃がすようにしている。従って、ダンパシリンダ内の気泡及び作動油が上記のベアリング29とピストンロッド6との間の摺動隙間に加え、オリフィス孔30からも流出するので、減衰力の応答性が更に悪くなるし、減衰力も更に低くなる虞がある。
【0007】
(特許2870678)
ダンパシリンダに挿入されるピストンロッドをガイドするロッドガイド21の内周にオイルシール23を配設し、ダンパシリンダ内の油室S2を外側の油溜室に対して密封している。この油圧緩衝器では、ダンパシリンダ内の作動油がダンパシリンダ外に逃げないように、上記オイルシール23により完全にシールするため、ダンパシリンダ内で発生する減衰力が大きい場合、オイルシール23のシールリップでフリクションが高くなる不具合がある。また、ダンパ内に経時的に侵入した作動油を外部に排出する複雑な機構(26a、38)を伴うことが必要となるために高コストになる。
【0008】
本発明の課題は、簡易な構成により、ダンパシリンダ内の作動油中に気泡を蓄積することなく、かつダンパシリンダ内の気泡及び作動油の流出を制限し、減衰力の応答性を向上するとともに、減衰力の低下を防止することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、車体側チューブと車輪側チューブを摺動自在に嵌合し、前記車輪側チューブ内にダンパシリンダを立設し、該ダンパシリンダの上端開口部に閉塞装置をねじ部により固定し、前記車体側チューブにピストンロッドの基端部を取付け、前記ピストンロッドを前記閉塞装置に備えたガイド部から前記ダンパシリンダ内に挿入し、前記ピストンロッドの先端部にピストンを設け、前記ダンパシリンダ内に前記ピストンロッドを収容するピストンロッド側油室と前記ピストンロッドを収容しないピストン側油室を形成し、前記ダンパシリンダの外側に、前記ピストン側油室と連通する油溜室と、該油溜室と接する気体室を設けた油圧緩衝器において、前記閉塞装置と前記ピストンロッドとの間に、前記ピストンロッド側油室から前記油溜室への作動油の流れを阻止するシール部材を設け、かつ、前記閉塞装置のねじ部を絞り通路としたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記シール部材がOリングであるものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、前記閉塞装置の前記ピストンロッドが挿入される内周に、該ピストンロッドの中心軸に対して傾斜するテーパ面を備えた溝を形成し、該溝内に前記Oリングを収装したものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3の発明において更に、前記閉塞装置が、前記ダンパシリンダの内周に係止され、前記ピストンロッドが挿入される内周の上端部に該ピストンロッドの中心軸に対して傾斜するテーパ面を備えた抜け止め部材と、前記ダンパシリンダの内周に前記ねじ部により固定され、該抜け止め部材に当て止めされるハウジングと、前記ハウジングの内周にOリングを介して装填され、前記ピストンロッドをガイドするガイド部材とからなり、前記ガイド部材の下端部の端面と前記抜け止め部材の上端部のテーパ面とで前記溝を形成し、該溝内に前記Oリングを収装したものである。
【0013】
【作用】
請求項1の発明によれば下記▲1▼〜▲3▼の作用がある。
▲1▼閉塞装置とピストンロッドの間にシール部材を設け、かつ閉塞装置をダンパシリンダに固定するねじ部を気泡及び作動油の絞り通路とした。
【0014】
ピストンロッドと閉塞装置の間にシール部材を設けることにより、この間からダンパシリンダの外への作動油の洩れを阻止できる。
【0015】
また、閉塞装置とダンパシリンダの間のねじ部を気泡及び作動油の絞り通路とした。ねじ部は一種のラビリンスシールとして機能するため、ねじ部は作動油中の気泡及び作動油のダンパシリンダ外への流出に対し大きな抵抗を発生する。従って、減衰力の応答性(立ち上がり)を向上することができ、また減衰力の低下を阻止できる。
【0016】
しかしながら、作動油中の気泡は、圧縮性があること、粘性による摩擦がないこと等から、ピストン速度が比較的低いときには、ねじ部での上述の大きな抵抗を受けることがなく、ダンパシリンダの外に流出することができる。従って、簡素な構成により、ダンパシリンダ内の作動油中に気泡が蓄積することがない。
【0017】
▲2▼ダンパシリンダの上部に気泡逃し用のオリフィス孔を別途形成する必要がなく、閉塞装置のねじ部をそのまま絞り流路として利用できるので、安価に製作することができる。
【0018】
▲3▼閉塞装置のねじ部の螺合長さは容易に変えることができ、可及的に気泡のみを逃がすようにすることの設定が、オリフィス孔による場合に比べ容易である。
【0019】
請求項2の発明によれば下記▲4▼の作用がある。
▲4▼シール部材としてOリングを使用することにより、シールリップを有するオイルシールを使用する場合に比べ、作動油の高圧時にピストンロッドにシールリップの緊迫力が作用する如くがない。従って、ピストンロッドの伸縮作動性(フリクション)を良好にできる。また、シールリップを備えたシール部材よりコストを下げることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば下記▲5▼の作用がある。
▲5▼閉塞装置の内周に、ピストンロッドの中心軸に対し傾斜するテーパ面を備えた溝を形成し、この溝内に上記▲4▼のOリングを収装した。従って、Oリングの背後に空間を形成してOリングが外径方向に逃げることを可能とし、Oリングを矩形状の溝に収装した場合に比べ、ピストンロッドの伸縮作動初期のフリクションを下げることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば下記▲6▼の作用がある。
▲6▼閉塞装置がハウジングと抜け止め部材の2つの分割体を有し、これらの内周の軸方向にガイド部材とシール部材を配置させて構成したので、閉塞装置の全体のダンパシリンダの内周への組付が容易となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は油圧緩衝器を示す断面図、図2は図1の油圧緩衝器の下部拡大断面図、図3は図1の油圧緩衝器の中間部拡大断面図、図4は図1の油圧緩衝器の上部拡大断面図、図5はダンパシリンダと閉塞装置を示す断面図、図6は本発明例と従来例の減衰力特性を示す線図である。
【0023】
油圧緩衝器10(フロントフォーク)は、図1〜図4に示す如く、車体側のアウタチューブ11を車輪側のインナチューブ12に摺動自在に嵌合して倒立にし、両チューブ11、12の間に懸架スプリング13を介装するとともに、単筒型ダンパ14を正立にして内装している。
【0024】
アウタチューブ11の下端内周部にはインナチューブ12の外周部が摺接するブッシュ15、オイルシール16、ダストシール17が嵌着され、インナチューブ12の上端外周部にはアウタチューブ11の内周部が摺接するブッシュ18が嵌着される。
【0025】
アウタチューブ11はアッパブラケット19A、ロアブラケット19Bを介して車体側に支持され、インナチューブ12は車軸ブラケット20を介して車軸に結合される。インナチューブ12は車軸ブラケット20との間にOリング20Aを介装される状態で、該車軸ブラケット20に螺着される。
【0026】
インナチューブ12の内部にはダンパ14のダンパシリンダ21の下端部が取着されて立設される。このとき、ダンパシリンダ21の下端部はセンタリングプレート22を介して車軸ブラケット20の底部の中央凹部に突き当てられ、車軸ブラケット20の外側からシール部材23を介して液密に挿着したセンターボルト24をダンパシリンダ21の下端内周に螺着することにより、ダンパシリンダ21を固定保持する。
【0027】
アウタチューブ11の上端部にはキャップ25の円筒部25AがOリング26を介して液密に挿着されるとともに螺着され、キャップ25の蓋部25Bの内周にはばね荷重調整アジャスター28がOリング27を介して液密に回転可能に挿入される。アジャスター28の下端内周にはピストンロッド29の基端部が螺着され、ロックナット30でロックされている。このピストンロッド29の先端部はダンパシリンダ21に挿入されている。
【0028】
インナチューブ12の内部のダンパシリンダ21の上端開口部には後述する閉塞装置80の一部たるハウジング82をも構成するオイルロックケース31が螺着され、オイルロックケース31の上端部にはばね受32が圧入されている。他方、アウタチューブ11の内部で、アジャスター28の外周には軸方向に沿う溝部28Aが設けられ、アジャスター28の外周のこの溝部28Aに回り止めされるスライダー33をキャップ25の円筒部25Aの内周に螺合している。スライダー33は筒状のスプリングカラー34を介して懸架スプリング13の上端を支持し、ばね受32によって懸架スプリング13の下端を支持する。キャップ25の円筒部25Aの内周の下端部にはスライダー33の抜け止めとなるストッパリング35が係着されている。また、オイルロックケース31は後述する油溜室39Aの内部で油の流れを許容する油路31Aを備える。アジャスター28を回動操作することにより、スライダー33を上下動し、ひいてはスプリングカラー34を介して懸架スプリング13の初期荷重を設定可能とする。
【0029】
尚、アジャスター28は、キャップ25の蓋部25Bを挟む上下に上段差部28Bと下つば部28Cを備え、上段差部28Bに衝合するように螺着したナット36と蓋つば部28Cとでキャップ25の蓋部25Bを挟む。また、アジャスター28は、ナット36を覆うアジャスタープレート37を上端部に二面幅嵌合されるとともに、該アジャスタープレート37をストッパリング37Aで抜け止め保持される。また、キャップ25の蓋部25Bと、アジャスター28のナット36との間には、Oリング等からなる弾性部材38を介装し、寸法誤差の吸収と、アジャスター28の回り止めを図り、ばね荷重調整装置の品質を向上している。
【0030】
アウタチューブ11とインナチューブ12の内部で、ダンパシリンダ21の外周部には、油溜室39Aと気体室39Bとが設けられ、気体室39Bに閉じ込められている気体が気体ばねを構成する。油溜室39Aの作動油は、気体室39Bのばね定数の調整と、アウタチューブ11とインナチューブ12の摺接ブッシュ15、18の潤滑、インナチューブ12の下端部のオイルシール16の湿潤に寄与する。そして、これらの懸架ばね13と気体ばねの弾発力が、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0031】
ダンパ14は、ピストンバルブ装置(伸側減衰力発生装置)40と、ボトムバルブ装置(圧側減衰力発生装置)50とを有する。ダンパ14は、ピストンバルブ装置40とボトムバルブ装置50の発生する減衰力により、懸架スプリング13と気体ばねによる衝撃力の吸収に伴うアウタチューブ11とインナチューブ12の伸縮振動を抑制する。
【0032】
ダンパシリンダ21の上端開口部には後に詳述する閉塞装置80がねじ部82Aにより固定され、ピストンロッド29を閉塞装置80に備えたガイド部83Aからダンパシリンダ21の内部に挿入している。
【0033】
以下、フロントフォーク10の減衰機構について説明する。
(ピストンバルブ装置40)
ピストンバルブ装置40は、ピストンロッド29の先端部にピストンホルダ41を装着し、このピストンホルダ41に螺着されるナット41A、バルブストッパ41Bによりピストン42、バルブストッパ41Cを装着している。ピストン42は、ダンパシリンダ21の内部を摺接し、ダンパシリンダ21の内部をピストンロッド29が収容されないピストン側油室43Aとピストンロッド29が収容されるピストンロッド側油室43Bとに区画する。ピストン42は、伸側バルブ44Aを備えてピストン側油室43Aとロッド側油室43Bとを連絡可能とする伸側流路44と、圧側バルブ(チェックバルブ)45Aを備えてピストン側油室43Aとロッド側油室43Bとを連絡可能とする圧側流路45(不図示)とを備える。
【0034】
また、ピストンバルブ装置40は、アジャスター28にOリング46Aを介して液密に挿着されるとともに螺着されて外部から回転操作できる減衰力調整ロッド46にかしめ固定された減衰力調整チューブ47をピストンロッド29の中空部に通し、この減衰力調整チューブ47の先端のニードル47Aにより、ピストンホルダ41に設けてあるピストン側油室43Aとロッド側油室43Bとのバイパス路48の流路面積を調整可能とする。
【0035】
従って、フロントフォーク10の圧縮時には、ピストン側油室43Aの油が圧側流路45を通り圧側バルブ45Aを開いてロッド側油室43Bへ導かれる。
【0036】
また、フロントフォーク10の伸長時には、ダンパシリンダ21とピストンロッド29の相対速度が低速のとき、ロッド側油室43Bの油がニードル47Aのあるバイパス路48を通ってピストン側油室43Aへ導かれ、この間のニードル47Aによる絞り抵抗により伸側の減衰力を生ずる。この減衰力は、減衰力調整ロッド46によるニードル47Aの位置調整により調整される。
【0037】
また、フロントフォーク10の伸長時で、ダンパシリンダ21とピストンロッド29の相対速度が中高速のとき、ロッド側油室43Bの油が伸側流路44を通り伸側バルブ44Aを撓み変形させてピストン側油室43Aへ導かれ、伸側の減衰力を生ずる。
【0038】
(ボトムバルブ装置50)
ボトムバルブ装置50は、車軸ブラケット20に取付けたボトムケース51に、カバー52、ボルト53を介して圧側バルブ54A、バルブハウジング55、伸側バルブ56Aを保持する。バルブハウジング55は、ボトムケース51の内部を上室57Aと下室57Bに区画し、上室57Aを車軸ブラケット20に設けた上ポート58Aにより油溜室39Aに連通し、下室57Bを車軸ブラケット20に設けた下ポート58Bによりセンターボルト24の中空通路を介してピストン側油室43Aに連通している。バルブハウジング55は、圧側バルブ54Aを備えて上室57Aと下室57Bを連絡可能とする圧側流路54と、伸側バルブ56Aを備えて上室57Aと下室57Bを連絡可能とする伸側流路56(不図示)とを備える。
【0039】
また、ボトムバルブ装置50は、カバー52にOリング59を介して液密に挿着されて外部から回転操作できる減衰力調整ロッド61と、減衰力調整ロッド61に係着されてボルト53に螺着されるニードル61Aとを有し、このニードル61Aにより、バルブハウジング55に設けてある上室57Aと下室57Bとのバイパス流路62の流路面積を調整可能とする。
【0040】
従って、フロントフォーク10の圧縮時には、ダンパシリンダ21に進入したピストンロッド29の進入容積分の油が、ピストン側油室43Aから、下ポート58B、下室57B、バイパス流路62、上室57A、上ポート58Aを通って油溜室39A、或いは下ポート58B、下室57B、圧側流路54、上室57A、上ポート58Aを通って油溜室39Aに排出される。このとき、ダンパシリンダ21とピストンロッド29の相対速度が低速のときには、バイパス流路62に設けてあるニードル61Aによる絞り抵抗により圧側の減衰力を得る。この減衰力は、減衰力調整ロッド61によるニードル61Aの位置調整により調整される。また、ダンパシリンダ21とピストンロッド29の相対速度が中高速のときには、圧側流路54を通る油が圧側バルブ54Aを撓み変形させて、圧側の減衰力を生ずる。
【0041】
フロントフォーク10の伸長時には、ダンパシリンダ21から退出するピストンロッド29の退出容積分の油が、油溜室39Aから上ポート58A、上室57A、伸側流路56、下室57B、下ポート58Bを通ってピストン側油室43Aに還流される。
【0042】
従って、フロントフォーク10は以下の如くに減衰作用を行なう。
(圧縮時)
フロントフォーク10の圧縮時には、ボトムバルブ装置50において、バルブハウジング55の圧側バルブ54A或いはニードル61Aを流れる油により圧側減衰力を生じ、ピストンバルブ装置40では殆ど減衰力を生じない。
【0043】
(伸長時)
フロントフォーク10の伸長時には、ピストンバルブ装置40において、ピストン42のニードル47A或いは伸側バルブ44Aを流れる油により伸側減衰力を生じ、ボトムバルブ装置50では殆ど減衰力を生じない。
【0044】
これらの圧側と伸側の減衰力により、フロントフォーク10の伸縮振動が抑制される。
【0045】
尚、油圧緩衝器10にあっては、ピストンロッド29の外周にストッパリング70Aで保持したピースホルダ70Bが圧入され、このピースホルダ70Bにチェック弁付オイルロックピース72Cを保持し、最圧縮時に、オイルロックピース70Cを前述のオイルロックケース31に進入させて最圧縮時の緩衝作用を果たす。また、アウタチューブ11の内周上端部にはストッパラバー71を装填し、このストッパラバー71を前述のキャップ25の円筒部25Aでバックアップ支持し、最圧縮時に、インナチューブ12の上端部がストッパラバー71に衝合することにより最圧縮ストロークを規制する。
【0046】
また、油圧緩衝器10にあっては、ダンパシリンダ21の内周にリバウンドスプリング72を内蔵し、このリバウンドスプリング72の上端部を後述する閉塞装置80の抜け止め部材81に挿着し、最伸長時に、このリバウンドスプリング72をピストンロッド29のピストンホルダ41の上端面との間で圧縮し、最伸長時の緩衝作用を果たす。
【0047】
しかるに、油圧緩衝器10は、ダンパシリンダ21の上端開口部に固定されてピストンロッド29を挿入可能とする閉塞装置80を以下の如くに構成している。
【0048】
閉塞装置80は、図5に示す如く、抜け止め部材81と、ハウジング82と、ガイド部材83とから構成され、シール部材84を付帯的に備える。
【0049】
抜け止め部材81は、ダンパシリンダ21の内周に係着したCリング等のストッパリング85に係止され、ピストンロッド29が挿入される内周の上端部に該ピストンロッド29の中心軸に対して傾斜するテーパ面81Aを備える。尚、抜け止め部材81の下端部には前述のリバウンドスプリング72が挿着されるスプリング挿着部81Bを備える。
【0050】
ハウジング82は、ダンパシリンダ21の上端開口部の内周にねじ部82Aにより螺合されて固定され、抜け止め部材81の上端面に当て止めされる。尚、本実施形態において、ハウジング82は前述のオイルロックケース31をその上部に一体に備える。
【0051】
ガイド部材83は、ハウジング82の内周にOリング86を介して遊挿状態で装填され、ピストンロッド29をガイドするガイド部83Aを備える。ガイド部材83は、Oリング86の装着溝83Bを外周に形成され、ガイド部83Aを構成するブッシュを内周に圧入される。ガイド部材83はOリング86を介してハウジング82の内周に装填されることで、ハウジング82に対して径方向に変位でき、アウタチューブ11、インナチューブ12、ダンパシリンダ21、ピストンロッド29等の同芯度の加工組付誤差を吸収可能とする。
【0052】
閉塞装置80にあっては、ガイド部材83の下端部の端面(ピストンロッド29の中心軸に対して直交する端面)と抜け止め部材81の上端部の前述のテーパ面81Aとで直角三角形断面状(二等辺三角形断面状等の他の三角形断面状でも可)のV溝87を形成し、この溝87の内部にシール部材84たるOリング84Aを収装する。このシール部材84(Oリング84A)は、閉塞装置80とピストンロッド29との間で、ピストンロッド側油室43Bから油溜室39Aへの作動油の流れを阻止する。
【0053】
また、閉塞装置80にあっては、ダンパシリンダ21の内周にハウジング82を固定するための前述のねじ部82Aを、ピストンロッド側油室43Bと油溜室39Aの間で気泡及び作動油に対する絞り通路として機能させる。ねじ部82Aはピストンロッド側油室43Bと油溜室39Aの間で曲折した狭い隙間を成形し、一種のラビリンスシールとして機能する。
【0054】
従って、本実施形態によれば以下の作用がある。
▲1▼閉塞装置80とピストンロッド20の間にシール部材84を設け、かつ閉塞装置80をダンパシリンダ21に固定するねじ部82Aを気泡及び作動油の絞り通路とした。
【0055】
ピストンロッド20と閉塞装置80の間にシール部材84を設けることにより、この間からダンパシリンダ21の外への作動油の洩れを阻止できる。
【0056】
また、閉塞装置80とダンパシリンダ21の間のねじ部82Aを気泡及び作動油の絞り通路とした。ねじ部82Aは一種のラビリンスシールとして機能するため、ねじ部82Aは作動油中の気泡及び作動油のダンパシリンダ21外への流出に対し大きな抵抗を発生する。従って、減衰力の応答性(立ち上がり)を向上することができ、また減衰力の低下を阻止できる。
【0057】
しかしながら、作動油中の気泡は、圧縮性があること、粘性による摩擦がないこと等から、ピストン速度が比較的低いときには、ねじ部82Aでの上述の大きな抵抗を受けることがなく、ダンパシリンダ21の外に流出することができる。従って、簡素な構成により、ダンパシリンダ21内の作動油中に気泡が蓄積することがない。
【0058】
図6は横軸にピストンロッドのストローク(ST)をとり、縦軸に伸側減衰力(TEN)と圧側減衰力(COMP)をプロットし、各ピストン速度VP1、VP2…における減衰力特性線図であり、本発明例(図1〜図5の油圧緩衝器10)を実線で示し、従来例(実開昭53-88692の油圧緩衝器)を1点鎖線で示した。本発明の採用により、従来例に比して、減衰力の低下を防止できることが認められる。
【0059】
▲2▼ダンパシリンダ21の上部に気泡逃し用のオリフィス孔を別途形成する必要がなく、閉塞装置80のねじ部82Aをそのまま絞り流路として利用できるので、安価に製作することができる。
【0060】
▲3▼閉塞装置80のねじ部82Aの螺合長さは容易に変えることができ、可及的に気泡のみを逃がすようにすることの設定が、オリフィス孔による場合に比べ容易である。
【0061】
▲4▼シール部材84としてOリング84Aを使用することにより、シールリップを有するオイルシールを使用する場合に比べ、作動油の高圧時にピストンロッド20にシールリップの緊迫力が作用する如くがない。従って、ピストンロッド20の伸縮作動性(フリクション)を良好にできる。また、シールリップを備えたシール部材84よりコストを下げることができる。
【0062】
▲5▼閉塞装置80の内周に、ピストンロッド20の中心軸に対し傾斜するテーパ面81Aを備えた溝87を形成し、この溝87内に上記▲4▼のOリング84Aを収装した。従って、Oリング84Aの背後にV溝状空間を形成してOリング84Aが外径方向に逃げることを可能とし、Oリング84Aを矩形状の溝87に収装した場合に比べ、ピストンロッド20の伸縮作動初期のフリクションを下げることができる。
【0063】
▲6▼閉塞装置80がハウジング82と抜け止め部材81の2つの分割体を有し、これらの内周の軸方向にガイド部材83とシール部材84を配置させて構成したので、閉塞装置80の全体のダンパシリンダ21の内周への組付が容易となる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の閉塞装置は、抜け止め部材とハウジングとガイド部材の如くの分割体からなるものに限らず、他の2個以上の分割体からなるもの、又は単一体からなるものでも良い。また、本発明の閉塞装置に付帯するシール部材の装着溝は、必ずしも、ピストンロッドの中心軸に対して傾斜するテーパ面を備えた溝であることを要しない。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、簡易な構成により、ダンパシリンダ内の作動油中に気泡を蓄積することなく、かつダンパシリンダ内の気泡及び作動油の流出を制限し、減衰力の応答性を向上するとともに、減衰力の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は油圧緩衝器を示す断面図である。
【図2】図2は図1の油圧緩衝器の下部拡大断面図である。
【図3】図3は図1の油圧緩衝器の中間部拡大断面図である。
【図4】図4は図1の油圧緩衝器の上部拡大断面図である。
【図5】図5はダンパシリンダと閉塞装置を示す断面図である。
【図6】図6は本発明例と従来例の減衰力特性を示す線図である。
【符号の説明】
10 油圧緩衝器
11 アウタチューブ(車体側チューブ)
12 インナチューブ(車輪側チューブ)
21 ダンパシリンダ
29 ピストンロッド
39A 油溜室
39B 気体室
42 ピストン
43A ピストン側油室
43B ピストンロッド側油室
80 閉塞装置
81 抜け止め部材
81A テーパ面
82 ハウジング
82A ねじ部
83 ガイド部材
83A ガイド部
84 シール部材
84A Oリング
87 溝

Claims (4)

  1. 車体側チューブと車輪側チューブを摺動自在に嵌合し、
    前記車輪側チューブ内にダンパシリンダを立設し、該ダンパシリンダの上端開口部に閉塞装置をねじ部により固定し、
    前記車体側チューブにピストンロッドの基端部を取付け、
    前記ピストンロッドを前記閉塞装置に備えたガイド部から前記ダンパシリンダ内に挿入し、
    前記ピストンロッドの先端部にピストンを設け、前記ダンパシリンダ内に前記ピストンロッドを収容するピストンロッド側油室と前記ピストンロッドを収容しないピストン側油室を形成し、
    前記ダンパシリンダの外側に、前記ピストン側油室と連通する油溜室と、該油溜室と接する気体室を設けた油圧緩衝器において、
    前記閉塞装置と前記ピストンロッドとの間に、前記ピストンロッド側油室から前記油溜室への作動油の流れを阻止するシール部材を設け、かつ、
    前記閉塞装置のねじ部を絞り通路としたことを特徴とする油圧緩衝器。
  2. 前記シール部材がOリングである請求項1に記載の油圧緩衝器。
  3. 前記閉塞装置の前記ピストンロッドが挿入される内周に、該ピストンロッドの中心軸に対して傾斜するテーパ面を備えた溝を形成し、該溝内に前記Oリングを収装した請求項2に記載の油圧緩衝器。
  4. 前記閉塞装置が、
    前記ダンパシリンダの内周に係止され、前記ピストンロッドが挿入される内周の上端部に該ピストンロッドの中心軸に対して傾斜するテーパ面を備えた抜け止め部材と、
    前記ダンパシリンダの内周に前記ねじ部により固定され、該抜け止め部材に当て止めされるハウジングと、
    前記ハウジングの内周にOリングを介して装填され、前記ピストンロッドをガイドするガイド部材とからなり、
    前記ガイド部材の下端部の端面と前記抜け止め部材の上端部のテーパ面とで前記溝を形成し、該溝内に前記Oリングを収装した請求項3に記載の油圧緩衝器。
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