JP2010038171A - 油圧緩衝器 - Google Patents

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保博 青木
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雅善 名倉
Atsushi Narita
淳史 成田
Shigenori Awasa
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Abstract

【課題】油圧緩衝器において、乗心地の向上と、圧縮ストローク後半での衝撃吸収能力の確保を図る。
【解決手段】フロントフォークにおいて、シリンダチューブ16の内部でサブピストン52より上部に該サブピストン52と相対するフリーピストン60を移動自在に設け、フリーピストン60が所定位置まで移動したときに、フリーピストン60とサブピストン52の間のサブタンク室53を、シリンダチューブ16の外部のリザーバ30に連通する連通路80を設け、フリーピストン60の背後の気体室73を、リザーバ30の気体室32に絞り80Aを介して連通してなるもの。
【選択図】図3

Description

本発明は二輪車用フロントフォーク等の油圧緩衝器に関する。
二輪車用フロントフォークに用いられる油圧緩衝器として、特許文献1に記載の如く、車体側チューブに車軸側チューブを摺動自在に挿入し、車体側チューブの内部で該車体側チューブに連結したダンパのシリンダチューブに、車軸側チューブの内部で該車軸側チューブに連結したピストンロッドに設けたメインピストンを摺動自在に挿入し、このメインピストンによりシリンダチューブの内部をピストン側油室とロッド側油室に区画し、メインピストンのピストン側油室とロッド側油室を連絡する流路に伸側減衰バルブを設け、シリンダチューブの内部でメインピストンより上部に該メインピストンと相対するサブピストンを設け、このサブピストンによりシリンダチューブの内部のピストン側油室に対する上方にサブタンク室を区画し、サブピストンのピストン側油室とサブタンク室を連絡可能にする流路に圧側減衰バルブを設け、シリンダチューブの内部でサブピストンより上部に該サブピストンと相対するフリーピストンを移動自在に設け、フリーピストンが所定位置まで移動したときに、フリーピストンとサブピストンの間のサブタンク室を、シリンダチューブの外部のリザーバに連通する連通路を設け、フリーピストンをサブピストンの側に向けて付勢する加圧スプリングを有してなるものがある。
この油圧緩衝器では、フリーピストンの背後の気体室を、リザーバの気体室に対して遮断している。これにより、ダンパのシリンダチューブの内部に設けられるフリーピストンは、加圧スプリングのストローク量に比例して大きくなるバネ力と、フリーピストンの背後の気体室の容積変化に比例して大きくなる気体バネ力により付勢される。従って、ダンパのシリンダチューブの内部がフリーピストンによって常に加圧され、ダンパが最伸長状態から圧縮作動を開始する当初から圧側減衰バルブによる所定の減衰力が発生する。
特開2005-30534
特許文献1に記載の油圧緩衝器では、リザーバの気体室の容積変化に依存する気体バネ力を、ダンパのシリンダチューブの内部のフリーピストンに全く及ぼすことがない。従って、圧縮ストローク前半では、フリーピストンの背後の気体室の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリングのバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
しかしながら、フリーピストンの背後の気体室の容積変化に依存する気体バネ力は小さい。従って、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、加圧スプリングのバネ力と、フリーピストンの背後の気体室の気体バネ力だけにより、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができず、衝撃吸収能力を確保できない。
本発明の課題は、油圧緩衝器において、乗心地の向上と、圧縮ストローク後半での衝撃吸収能力の確保を図ることにある。
請求項1の発明は、車体側チューブに車軸側チューブを摺動自在に挿入し、車体側チューブの内部で該車体側チューブに連結したダンパのシリンダチューブに、車軸側チューブの内部で該車軸側チューブに連結したピストンロッドに設けたメインピストンを摺動自在に挿入し、このメインピストンによりシリンダチューブの内部をピストン側油室とロッド側油室に区画し、メインピストンのピストン側油室とロッド側油室を連絡する流路に伸側減衰バルブを設け、シリンダチューブの内部でメインピストンより上部に該メインピストンと相対するサブピストンを設け、このサブピストンによりシリンダチューブの内部のピストン側油室に対する上方にサブタンク室を区画し、サブピストンのピストン側油室とサブタンク室を連絡可能にする流路に圧側減衰バルブを設け、シリンダチューブの内部でサブピストンより上部に該サブピストンと相対するフリーピストンを移動自在に設け、フリーピストンが所定位置まで移動したときに、フリーピストンとサブピストンの間のサブタンク室を、シリンダチューブの外部のリザーバに連通する連通路を設け、フリーピストンをサブピストンの側に向けて付勢する加圧スプリングを有してなる油圧緩衝器において、フリーピストンの背後の気体室を、リザーバの気体室に絞りを介して連通してなるようにしたものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記フリーピストンが有底筒状体をなし、該フリーピストンの底部をサブピストン寄りに配置するとともに、該フリーピストンの下部外周と上部外周のそれぞれにシリンダチューブの内周に摺接する上下のシール部材を設け、フリーピストンがシリンダチューブの内部を移動するとき、フリーピストンの上下のシール部材に挟まれる間で、シリンダチューブのチューブ壁を内外に貫通する貫通孔と、フリーピストンの筒壁を内外に貫通する貫通孔と、フリーピストンの外周とシリンダチューブの内周の摺動隙間が互いに連通する通路により、フリーピストンの背後の気体室とリザーバの気体室を前記絞りを介して連通する通路を構成するようにしたものである。
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、前記フリーピストンの外周とシリンダチューブの内周の摺動隙間により、前記絞りを構成するようにしたものである。
請求項4の発明は、請求項1の発明において更に、前記フリーピストンの背後の気体室とリザーバの気体室を連通する通路に、該通路の絞り度合を調整できるアジャスタを設けたものである。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において更に、前記フリーピストンが有底筒状体をなし、該フリーピストンの底部をサブピストン寄りに配置するとともに、該フリーピストンの下部外周と上部外周のそれぞれにシリンダチューブの内周に摺接する上下のシール部材を設け、フリーピストンがシリンダチューブの内部を所定位置まで移動したときに、フリーピストンの下シール部材が、フリーピストンの上下のシール部材に挟まれる間で、サブタンク室をシリンダチューブに設けた前記連通路の側に開放するようにしたものである。
(請求項1)
(a)リザーバの気体室の容積変化に依存する気体バネ力を、絞りを介して、フリーピストンの背後の気体室、ひいてはフリーピストンに及ぼすものにある。
従って、絞り度合を大きくするとき、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストンに及びにくく、フリーピストンの背後の気体室の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリングのバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
他方、絞り度合を小さくするとき、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストンに及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
(請求項2)
(b)フリーピストンの上下のシール部材に挟まれる間で、シリンダチューブのチューブ壁を内外に貫通する貫通孔と、フリーピストンの筒壁を内外に貫通する貫通孔と、フリーピストンの外周とシリンダチューブの内周の摺動隙間が互いに連通する通路により、フリーピストンの背後の気体室とリザーバの気体室を上述(a)の絞りを介して連通する通路を構成することができる。
(請求項3)
(c)上述(b)のフリーピストンの外周とシリンダチューブの内周の摺動隙間を、上述(a)の絞りとするとき、この絞り(摺動隙間)の大きさが圧縮ストロークに依存して変化する。
圧縮ストロークの前半では、摺動隙間の長さを長くして絞り度合(摺動隙間の抵抗力)を大きくすることにより、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストンに及びにくく、フリーピストンの背後の気体室の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリングのバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
他方、圧縮ストロークの後半では、摺動隙間の長さを短くして絞り度合(摺動隙間の抵抗力)を小さくすることにより、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力が徐々にフリーピストンに及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
(請求項4)
(d)フリーピストンの背後の気体室とリザーバの気体室を連通する通路に、該通路の絞り度合を調整できるアジャスタを設ける。アジャスタの操作により絞り度合を調整することにより、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力が、フリーピストンに及ぶ程度を可変的に決定できる。
アジャスタによる絞り度合を大きくすることにより、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストンに及びにくく、フリーピストンの背後の気体室の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリングのバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
アジャスタによる絞り度合を小さくすることにより、リザーバの気体室の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストンに及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
アジャスタの操作により絞り度合を最大から最小まで変化する間、リザーバの気体室の気体バネ力と、フリーピストンの背後の気体室の気体バネ力のそれぞれがフリーピストンに及ぶ波及度合を、その絞り度合の変化に応じて変動させるものになる。これにより、フロントフォークが架装される二輪車の使用者の嗜好に応じた乗心地と圧縮ストローク後半での衝撃吸収能力のバランスを任意に調整できる。
(請求項5)
(e)フリーピストンがシリンダチューブの内部を所定位置まで移動したときに、フリーピストンの下シール部材が、フリーピストンの上下のシール部材に挟まれる間で、サブタンク室をシリンダチューブに設けた連通路の側に開放するものとする。ダンパの伸縮繰り返しによってシリンダチューブに侵入する作動油の量が増え、シリンダチューブの油室及びサブタンク室が高圧化されたとき、フリーピストンが圧縮ストロークの通常上昇端より更に最上昇端まで上昇し、サブタンク室の高圧余剰油を上記連通路からリザーバに排出できる。
図1は実施例1の油圧緩衝器を示す全体断面図、図2は図1の下部断面図、図3は図1の上部断面図、図4はフリーピストンの圧縮ストローク端を示す断面図、図5は実施例2の油圧緩衝器の上部断面図、図6はフリーピストンの圧縮ストローク端を示す断面図、図7は実施例3の油圧緩衝器の上部断面図、図8はフリーピストンの圧縮ストローク端を示す断面図である。
(実施例1)(図1〜図4)
フロントフォーク10(油圧緩衝器)は、図1〜図3に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)11内に車軸側チューブ(インナチューブ)12を摺動自在に挿入し、両チューブ11、12の間に懸架スプリング13を介装するとともに、単筒型ダンパ14を倒立にして内装している。
車体側チューブ11は車体側に支持され、車軸側チューブ12は車軸に結合される。
車体側チューブ11の上端部にはダンパ14のシリンダチューブ16(上シリンダチューブ16A)の上端部がOリングを介して螺着され、シリンダチューブ16の上部開口端はフォークボルト15により閉塞される。フォークボルト15は、Oリングを介して上シリンダチューブ16Aの内周に挿入されて螺着される。
車軸側チューブ12の下端部には車軸ブラケット19が螺着され、車軸側チューブ12と車軸ブラケット19の間にオイルロックカラー17の基端部を挟持している。オイルロックカラー17は車軸側チューブ12の下端部内周にOリングを介して液密に嵌装されるとともに、車軸ブラケット19の内側の底面の上にOリングを介して液密に着座している。また、車軸ブラケット19にはボトムボルト18が外側からOリングを介して液密に螺着されている。このボトムボルト18にはダンパ14のピストンロッド(中空ロッド)20の基端部が螺着されるとともにロックナット18Aでロックされ、このピストンロッド20の先端部をシリンダチューブ16に挿入してある。ピストンロッド20は、シリンダチューブ16(下シリンダチューブ16B)の下端側の開口部に螺着したロッドガイド21のブッシュ21Aで支持され、シール部材21Bを貫通してシリンダチューブ16の内部に挿入されている。シール部材21Bは、シリンダチューブ16の後述する油室43Bを密封し、油室43Bの油がシリンダチューブ16の外に逃げ出すのを阻止する一方向性のシール機能をもつ。尚、ロッドガイド21の外周部にはオイルロックカラー22を設けてある。また、ロッドガイド21の内側端面にはリバウンドスプリング23が支持されている。尚、シリンダチューブ16A、16Bはパイプナット16Cで接続ロックされる。
懸架スプリング13は、オイルロックカラー17の基端部外周段差面と、シリンダチューブ16(下シリンダチューブ16B)に外装して軸方向に係止した孔開きスプリングカラー25(多数の連通孔25Aを備える)の先端部に固定したスプリング受け26との間に介装されている。また、車体側チューブ11と車軸側チューブ12の内部で、ダンパ14の外側にはリザーバ30を構成する油室31と気体室32とが設けられ、油室31と気体室32とは自由界面を介して接触し、気体室32に閉じ込められている気体が気体バネを構成する。これらの懸架スプリング13と気体バネの弾発力が、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
ダンパ14は、メインバルブ装置(伸側減衰バルブ装置)40と、サブバルブ装置(圧側減衰バルブ装置)50とを有している。ダンパ14は、メインバルブ装置40とサブバルブ装置50の発生する減衰力により、懸架スプリング13と気体バネによる衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ11と車軸側チューブ12の伸縮振動を抑制する。
(メインバルブ装置40)
メインバルブ装置40は、ピストンロッド20の先端部にピストンホルダ41を装着し、このピストンホルダ41にメインピストン42を装着している。メインピストン42は、シリンダチューブ16の内部をピストンロッド20が収容されないピストン側油室43Aとピストンロッド20が収容されるロッド側油室43Bとに区画し、該シリンダチューブ16の内部を摺動する。メインピストン42は、伸側減衰バルブ44Aを備えてピストン側油室43Aとロッド側油室43Bとを連絡可能とする伸側流路44と、圧側減衰バルブ(チェックバルブ)45Aを備えてピストン側油室43Aとロッド側油室43Bとを連絡可能とする圧側流路45とを備える。
また、メインバルブ装置40は、車軸ブラケット19に螺着してある前述のボトムボルト18に外部から回転操作できるアジャスタ46を設けている。メインバルブ装置40は、アジャスタ46に結合されている減衰力調整ロッド47をピストンロッド20の中空部に通し、アジャスタ46の回転操作により軸方向に進退する減衰力調整ロッド47の先端のニードル47Aにより、ピストンホルダ41に設けてあるピストン側油室43Aとロッド側油室43Bとのバイパス路48の流路面積を調整可能とする。
(サブバルブ装置50)
サブバルブ装置50は、上シリンダチューブ16Aの上端部に螺着されている前述のフォークボルト15にガイドパイプ51(支持軸)を螺着するとともに、ロックナット15Aでロックし、ガイドパイプ51の先端部にピストンホルダ51Aを螺着し、このピストンホルダ51Aにナット51B等によりサブピストン52を保持している。サブピストン52はシリンダチューブ16の内部でメインピストン42に相対配置され、上シリンダチューブ16Aの内周部に液密に接し、前述のピストン側油室43Aの上方にサブタンク室53を区画形成する。サブピストン52は、圧側減衰バルブ54Aを備えてピストン側油室43Aとサブタンク室53とを連絡可能とする圧側流路54と、伸側減衰バルブ55Aを備えてピストン側油室43Aとサブタンク室53とを連絡可能とする伸側流路55とを備える。また、ピストンホルダ51Aは、圧側流路54と伸側流路55とをバイパスしてピストン側油室43Aとサブタンク室53とを連絡可能とするバイパス路56を備える。
フォークボルト15に螺合された減衰力調整ロッド58は、アジャスタ59を備えるとともに、ガイドパイプ51に挿入され、アジャスタ59の回転操作により軸方向に進退する先端のニードル58Aによりバイパス流路56の流路面積を調整可能とする。尚、フォークボルト15は頭部端面の中央部にアジャスタ59とそのホルダ59Aを埋込み保持している。
サブバルブ装置50は、上シリンダチューブ16Aの内部であって、上シリンダチューブ16Aとガイドパイプ51の間の環状空間にて、フリーピストン60を移動可能に設けるとともに、フリーピストン60とフォークボルト15との間に介装される加圧スプリング70を有する。加圧スプリング70は、圧縮コイルバネからなり、フリーピストン60をサブピストン52の側に向けて付勢する。
このとき、フリーピストン60は、有底筒状体をなし、フリーピストン60の底部61をサブピストン52寄りに配置するとともに、フリーピストン60の底部61〜筒部62の下部外周に下ピストンリング63L及びオイルシール等の下シール部材64Lを設け、フリーピストン60の筒部62の上部外周に上ピストンリング63U及びオイルシール等の上シール部材64Uを設ける。また、フリーピストン60は、フリーピストン60の底部61の内周凹部にオイルシール等のシール部材65を設ける。フリーピストン60がダンパ14の伸縮に伴なってシリンダチューブ16に進入、退出するピストンロッド20の容積を補償するために上シリンダチューブ16Aとガイドパイプ51の間の環状空間を移動する通常移動域で、下ピストンリング63Lと下シール部材64Lは上シリンダチューブ16Aの下側の小内径部71を摺動し、上ピストンリング63Uと上シール部材64Uは上シリンダチューブ16Aの上側の大内径部72を摺動し、シール部材65はガイドパイプ51のストレートな外周を摺動する。フリーピストン60は、上述の通常移動域で、シール部材64L、64Uが上シリンダチューブ16Aの小内径部71、大内径部72を液密に摺動し、シール部材65がガイドパイプ51の外周を液密に摺動することにより、サブピストン52の側でピストン側油室43Aに連通しているサブタンク室53と、フリーピストン60の背後の気体室(体積補償室)73とを区画する。
サブバルブ装置50は、フリーピストン60の背後の気体室73を、リザーバ30の気体室32に絞り80Aを介して連通する。本実施例では、フリーピストン60が上シリンダチューブ16Aの内部を上述の如くに移動するとき、フリーピストン60の上下のシール部材64L、64Uに挟まれる間で、上シリンダチューブ16Aのチューブ壁を内外に貫通して大内径部72の下端寄りに開口する貫通孔81と、フリーピストン60の筒部62の筒壁を内外に貫通する貫通孔82と、フリーピストン60の外周と上シリンダチューブ16Aの内周の摺動隙間83により、フリーピストン60の背後の気体室73とリザーバ30の気体室32を常に連通する通路80を形成する。通路80の摺動隙間83を形成する要素には、上シリンダチューブ16Aの内径(φ)と、フリーピストン60の外径dと、貫通孔81と貫通孔82の距離L(摺動隙間83の長さL)があるが、これらの3要素(φ、d、L)を適切に設定し、この摺動隙間83を通過する作動油に対し抵抗力を発生させることにより、この通路80を絞り80Aとする。絞り80Aの摺動隙間83による抵抗力は貫通孔81と貫通孔82の距離Lの大小により増減するものになり、フリーピストン60の移動ストロークに依存し、ひいてはダンパ14の圧縮ストロークに依存するものになる。これにより、ダンパ14の圧縮ストロークに応じて、リザーバ30の気体室32の気体バネ力が絞り80A(摺動隙間83)を介してフリーピストン60の背後の気体室73に導入されるものになる。ダンパ14の圧縮ストロークの前半では、図3に示す如く、摺動隙間83の長さLが長くなり、絞り80Aの絞り度合は大きくなり、リザーバ30の気体室32の気体バネ力はフリーピストン60の背後の気体室73に導入されにくい。ダンパ14の圧縮ストロークの後半では、図4に示す如く、摺動隙間83の長さLが短くなり、絞り80Aの絞り度合は小さくなり、リザーバ30の気体室32の気体バネ力はフリーピストン60の背後の気体室73に導入され易い。
サブバルブ装置50は、フロントフォーク10のピストンロッド20がストロークする度に、該ピストンロッド20の外周面に付着した油室31の油をロッドガイド部21のシール部材21Bからシリンダチューブ16の内部に持ち込む。これにより、シリンダチューブ16の内部の油室43A、43B、53の作動油が徐々に増加し、それらの油室43A、43B、53の油圧が高圧化され、フリーピストン60が前述の通常移動域の上昇端(ダンパ14の圧縮ストロークの通常上昇端)より更に上方の所定位置たる最上昇端まで移動すると、フリーピストン60とサブピストン52の間のサブタンク室53が、シリンダチューブ16の外部のリザーバ30に連通する連通路84を設ける。本実施例では、フリーピストン60が上述の最上昇端まで移動すると、フリーピストン60の下シール部材64Lが、フリーピストン60の上下のシール部材64L、64Uに挟まれる間で、上シリンダチューブ16Aの小内径部71から大内径部72の側に入って大内径部72との間にブロー通路を形成し、サブタンク室53を大内径部72に開口している貫通孔81の側に開口する。本実施例では、貫通孔81が上述の連通路84を構成する。これにより、ダンパ14の余剰油及び高圧がサブタンク室53からフリーピストン60の外周、上シリンダチューブ16Aの貫通孔81経由でシリンダチューブ16の外のリザーバ30に排出され、解放される。
尚、フロントフォーク10にあっては、フロントフォーク10の伸縮によって車体側チューブ11と車軸側チューブ12の摺動部からリザーバ30の気体室32、フリーピストン60の背後の気体室73に侵入した空気を排出するための排気プラグ34を、フォークボルト15に設けてある。
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)リザーバ30の気体室32の容積変化に依存する気体バネ力を、絞り80Aを介して、フリーピストン60の背後の気体室73、ひいてはフリーピストン60に及ぼすものにある。
従って、絞り度合を大きくするとき、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及びにくく、フリーピストン60の背後の気体室73の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリング70のバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
他方、絞り度合を小さくするとき、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
(b)フリーピストン60の上下のシール部材64L、64Uに挟まれる間で、シリンダチューブ16のチューブ壁を内外に貫通する貫通孔81と、フリーピストン60の筒壁を内外に貫通する貫通孔82と、フリーピストン60の外周とシリンダチューブ16の内周の摺動隙間83が互いに連通する通路80により、フリーピストン60の背後の気体室73とリザーバ30の気体室32を上述(a)の絞り80Aを介して連通する通路80を構成することができる。
(c)上述(b)のフリーピストン60の外周とシリンダチューブ16の内周の摺動隙間83を、上述(a)の絞り80Aとするとき、この絞り80A(摺動隙間83)の大きさが圧縮ストロークに依存して変化する。
圧縮ストロークの前半では、摺動隙間83の長さLを長くして絞り度合(摺動隙間83の抵抗力)を大きくすることにより、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及びにくく、フリーピストン60の背後の気体室73の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリング70のバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
他方、圧縮ストロークの後半では、摺動隙間83の長さLを短くして絞り度合(摺動隙間83の抵抗力)を小さくすることにより、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力が徐々にフリーピストン60に及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
(d)フリーピストン60がシリンダチューブ16の内部を所定位置まで移動したときに、フリーピストン60の下シール部材64Lが、フリーピストン60の上下のシール部材64L、64Uに挟まれる間で、サブタンク室53をシリンダチューブ16に設けた連通路84の側に開放するものとする。ダンパ14の伸縮繰り返しによってシリンダチューブ16に侵入する作動油の量が増え、シリンダチューブ16の油室43A、43B及びサブタンク室53が高圧化されたとき、フリーピストン60が圧縮ストロークの通常上昇端より更に最上昇端まで上昇し、サブタンク室53の高圧余剰油を上記連通路84からリザーバ30に排出できる。
(実施例2)(図5、図6)
実施例2のフロントフォーク10が実施例1のフロントフォーク10と異なる点は、フリーピストン60の背後の気体室73を、リザーバ30の気体室32に連通して絞り90Aを介する通路90を、フォークボルト15に設けた孔状通路91と、この孔状通路91に連通するように上シリンダチューブ16Aの上端部に設けた孔状通路92により形成し、この通路90に、この通路90の絞り度合を調整できるアジャスタ93を設けたことにある。アジャスタ93は、フォークボルト15に螺着されて外部から螺動操作でき、その螺動位置の調整により、通路90の絞り度合を調整できる。図5はダンパ14の圧縮ストローク開始端を示し、図6はダンパ14の圧縮ストローク上昇端を示す。
従って、フロントフォーク10において、リザーバ30の気体室32とフリーピストン60の背後の気体室73は通路90により常に連通する。アジャスタ93の回転操作により、アジャスタ93の先端のニードル93Aがフォークボルト15に設けた孔状通路91の導通面積を増減し、絞り90Aを形成する。
尚、実施例2のフリーピストン60では、実施例1において絞り80A(摺動隙間83)が設けられる通路80を形成するための貫通孔82は撤去した。
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)リザーバ30の気体室32の容積変化に依存する気体バネ力を、絞り90Aを介して、フリーピストン60の背後の気体室73、ひいてはフリーピストン60に及ぼすものにある。
従って、絞り度合を大きくするとき、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及びにくく、フリーピストン60の背後の気体室73の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリング70のバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
他方、絞り度合を小さくするとき、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
(b)フリーピストン60の背後の気体室73とリザーバ30の気体室32を連通する通路90に、該通路90の絞り度合を調整できるアジャスタ93を設ける。アジャスタ93の操作により絞り度合を調整することにより、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力が、フリーピストン60に及ぶ程度を可変的に決定できる。
アジャスタ93による絞り度合を大きくすることにより、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及びにくく、フリーピストン60の背後の気体室73の気体バネ力を適度に発揮させることにより、加圧スプリング70のバネ力を小さくすることができ、乗心地を向上できる。
アジャスタ93による絞り度合を小さくすることにより、リザーバ30の気体室32の大きな容積変化に依存する気体バネ力がフリーピストン60に及び、大きな反力が必要となる圧縮ストローク後半で、衝撃を吸収するのに十分な反力を発生させることができ、衝撃吸収能力を確保できる。
アジャスタ93の操作により絞り度合を最大から最小まで変化する間、リザーバ30の気体室32の気体バネ力と、フリーピストン60の背後の気体室73の気体バネ力のそれぞれがフリーピストン60に及ぶ波及度合を、その絞り度合の変化に応じて変動させるものになる。これにより、フロントフォーク10が架装される二輪車の使用者の嗜好に応じた乗心地と圧縮ストローク後半での衝撃吸収能力のバランスを任意に調整できる。
(c)フリーピストン60がシリンダチューブ16の内部を所定位置まで移動したときに、フリーピストン60の下シール部材64Lが、フリーピストン60の上下のシール部材64L、64Uに挟まれる間で、サブタンク室53をシリンダチューブ16に設けた連通路84の側に開放するものとする。ダンパ14の伸縮繰り返しによってシリンダチューブ16に侵入する作動油の量が増え、シリンダチューブ16の油室43A、43B及びサブタンク室53が高圧化されたとき、フリーピストン60が圧縮ストロークの通常上昇端より更に最上昇端まで上昇し、サブタンク室53の高圧余剰油を上記連通路84からリザーバ30に排出できる。
(実施例3)(図7、図8)
実施例3のフロントフォーク10は、実施例1のフロントフォーク10に実施例2のフロントフォーク10を組合せたものである。即ち、実施例3のフロントフォーク10は、フリーピストン60の背後の気体室73をリザーバ30の気体室32に連通する通路80に絞り80Aを設けると同時に、フリーピストン60の背後の気体室73をリザーバ30の気体室32に連通する通路90に絞り90Aを設けるものである。図7はダンパ14の圧縮ストローク開始端を示し、図8はダンパ14の圧縮ストローク上昇端を示す。
本実施例によれば、実施例1の(a)〜(d)の作用効果、及び実施例2の(a)〜(c)の作用効果を有する。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
図1は実施例1の油圧緩衝器を示す全体断面図である。 図2は図1の下部断面図である。 図3は図1の上部断面図である。 図4はフリーピストンの圧縮ストローク端を示す断面図である。 図5は実施例2の油圧緩衝器の上部断面図である。 図6はフリーピストンの圧縮ストローク端を示す断面図である。 図7は実施例3の油圧緩衝器の上部断面図である。 図8はフリーピストンの圧縮ストローク端を示す断面図である。
符号の説明
10 フロントフォーク(油圧緩衝器)
11 車体側チューブ
12 車軸側チューブ
14 ダンパ
16、16A、16B シリンダチューブ
20 ピストンロッド
30 リザーバ
32 気体室
42 メインピストン
43A ピストン側油室
43B ロッド側油室
44 伸側流路
44A 伸側減衰バルブ
52 サブピストン
53 サブタンク室
54 圧側流路
54A 圧側減衰バルブ
60 フリーピストン
64L 下シール部材
64U 上シール部材
70 加圧スプリング
73 気体室
80 通路
80A 絞り
81 貫通孔
82 貫通孔
83 摺動隙間
84 連通路
90 通路
90A 絞り
93 アジャスタ

Claims (5)

  1. 車体側チューブに車軸側チューブを摺動自在に挿入し、
    車体側チューブの内部で該車体側チューブに連結したダンパのシリンダチューブに、車軸側チューブの内部で該車軸側チューブに連結したピストンロッドに設けたメインピストンを摺動自在に挿入し、このメインピストンによりシリンダチューブの内部をピストン側油室とロッド側油室に区画し、メインピストンのピストン側油室とロッド側油室を連絡する流路に伸側減衰バルブを設け、
    シリンダチューブの内部でメインピストンより上部に該メインピストンと相対するサブピストンを設け、このサブピストンによりシリンダチューブの内部のピストン側油室に対する上方にサブタンク室を区画し、サブピストンのピストン側油室とサブタンク室を連絡可能にする流路に圧側減衰バルブを設け、
    シリンダチューブの内部でサブピストンより上部に該サブピストンと相対するフリーピストンを移動自在に設け、フリーピストンが所定位置まで移動したときに、フリーピストンとサブピストンの間のサブタンク室を、シリンダチューブの外部のリザーバに連通する連通路を設け、
    フリーピストンをサブピストンの側に向けて付勢する加圧スプリングを有してなる油圧緩衝器において、
    フリーピストンの背後の気体室を、リザーバの気体室に絞りを介して連通してなることを特徴とする油圧緩衝器。
  2. 前記フリーピストンが有底筒状体をなし、該フリーピストンの底部をサブピストン寄りに配置するとともに、該フリーピストンの下部外周と上部外周のそれぞれにシリンダチューブの内周に摺接する上下のシール部材を設け、
    フリーピストンがシリンダチューブの内部を移動するとき、フリーピストンの上下のシール部材に挟まれる間で、シリンダチューブのチューブ壁を内外に貫通する貫通孔と、フリーピストンの筒壁を内外に貫通する貫通孔と、フリーピストンの外周とシリンダチューブの内周の摺動隙間が互いに連通する通路により、フリーピストンの背後の気体室とリザーバの気体室を前記絞りを介して連通する通路を構成する請求項1に記載の油圧緩衝器。
  3. 前記フリーピストンの外周とシリンダチューブの内周の摺動隙間により、前記絞りを構成する請求項2に記載の油圧緩衝器。
  4. 前記フリーピストンの背後の気体室とリザーバの気体室を連通する通路に、該通路の絞り度合を調整できるアジャスタを設けた請求項1に記載の油圧緩衝器。
  5. 前記フリーピストンが有底筒状体をなし、該フリーピストンの底部をサブピストン寄りに配置するとともに、該フリーピストンの下部外周と上部外周のそれぞれにシリンダチューブの内周に摺接する上下のシール部材を設け、
    フリーピストンがシリンダチューブの内部を所定位置まで移動したときに、フリーピストンの下シール部材が、フリーピストンの上下のシール部材に挟まれる間で、サブタンク室をシリンダチューブに設けた前記連通路の側に開放する請求項1〜4のいずれかに記載の油圧緩衝器。
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