JP2004308016A - ポリ乳酸系フラットヤーン - Google Patents
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Abstract
分解性を有し、かつ耐熱性および機械的強度に優れたフラットヤーンを提供する。
【課題】乳酸系ポリマー(a)、それより弾性率が小さいポリエステルであって、構成モノマーが乳酸とは異なるポリエステル(b)、滑剤、及び無機充填剤からなり、長さ方向に延伸されたフラットヤーンであって、該フラットヤーンの引張り強度が3cN/dtex以上でかつ熱収縮率が5%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フラットヤーン。多段延伸することによって得られる。
【選択図】なし
【課題】乳酸系ポリマー(a)、それより弾性率が小さいポリエステルであって、構成モノマーが乳酸とは異なるポリエステル(b)、滑剤、及び無機充填剤からなり、長さ方向に延伸されたフラットヤーンであって、該フラットヤーンの引張り強度が3cN/dtex以上でかつ熱収縮率が5%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フラットヤーン。多段延伸することによって得られる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸系ポリマーを主成分とした熱可塑性ポリマーからなり、機械強度と耐熱性に優れたフラットヤーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術分野】
従来、フラットヤーンは古くからポリエチレンやポリプロピレンといった素材から構成されている。これらの素材からなるフラットヤーンの二次加工品は、機械的物性に優れ、しかも非常に安価であるため多量に使用されているが、一旦その使命を終え廃棄処分されると、自然環境下でほとんど分解されないために、埋没処理した場合には、半永久的に地中に残留し、焼却処分した場合には、廃棄ガスによる大気汚染や焼却熱エネルギーによる焼却炉の低寿命化などの問題を有している。さらには、通常の高分子材料は、自然環境下でほとんど分解されていないため、景観を損ねたり、可塑剤等の添加剤の溶出により環境を汚染したり、海洋生物の生活環境を破壊したり、多くの環境保全上の問題を有しており、新しい材料が切望されている。
【0003】
このような背景から、分解性及び/又は生分解性(本出願の明細書においては、自然環境下で微生物等の作用により分解する機能や生体内で酵素等の作用により分解する機能を含包する)を有する熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸、乳酸成分を主成分とするコポリ乳酸(例えば、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の共重合体)、ポリ乳酸と他の脂肪族ポリエステルとの混合物(例えばポリ乳酸とポリブチレンサクシーネートとの混合物)等の乳酸系樹脂が注目を集めている。特にポリ乳酸は、動物の体内で数ヶ月から1年以内に100%生分解し、また、土壌や海水中等の膨潤状態に放置された場合、数週間程度で強度が低下し始め、約1年から数年程度で原形を留めず消滅し、さらに分解生成物は、人体に無害な乳酸及び/または二酸化炭素と水になるという特性を有している点で特徴的である。また、ポリ乳酸の原料である乳酸は、発酵法や化学合成法により製造され、最近では特に発酵法によるL−乳酸が大量に製造され、価格も安価になってきているので、優れた透明性と剛性を有するポリ乳酸の特徴を活かした各種の用途開発が進められている。
【0004】
本発明は乳酸系フラットヤーンに関するものであるが、既にこれに係わる幾つかの技術が開示されている。例えば特開2001−131827に、滑剤を含有し相対粘度と複屈折を規定したポリ乳酸系フラットヤーンが例示されている。上記乳酸系フラットヤーンでは複屈折を0.035以下に規定しているため、十分な機械強度と耐熱性を両立させることが難しく。また、乳酸系成分の構成割合が多いためインフレーション法によるフィルムが硬く、しわがよりやすいという問題があった。特開2002−155440にはインフレフィルムの成形性を向上するため、ポリ乳酸系樹脂に特定の脂肪族ポリエステルを20〜40重量%添加し柔軟性を付与したフラットヤーンが例示されている。ただし、乳酸成分の構成割合を下げることによりフラットヤーンの強度が低下し、延伸倍率を上げて強度を発現しようとすれば縦割れが生じてしまうという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性及び機械強度に優れたフラットヤーンを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸とそれより弾性率が小さく構成モノマーの異なるポリエステルと滑剤、無機充填剤を構成成分とする樹脂組成物を2段またはそれ以上の多段にて延伸することにより引張り強度が3cN/dtex以上でかつ熱収縮率が5パーセント(%)以下である耐熱性及び機械強度に優れたフラットヤーンが得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[乳酸系ポリマー(a)]
本発明において乳酸系ポリマーの原料として用いられる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸,DL−乳酸又はそれら化合物、又は乳酸の環状2量体であるラクタイドを挙げることができる。
本発明において使用される乳酸系ポリマーの製造方法の具体例としては、例えば、
▲1▼ 乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、USP 5,310,865号に示されている製造方法)、
▲2▼ 乳酸の環状二量体(ラクタイド)を溶融重合する開環重合法(例えば、米国特許2,758, 987号に開示されている製造方法)、
▲3▼ 乳酸を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行う事によりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法には、特に限定されない。また、少量のトリメチロールプロパン、グリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合させても良く、又ジイソシアネート化合物等のような結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を上げてもよい。
【0008】
また、乳酸系ポリマー(a)は、ポリ乳酸セグメントと共に必要に応じて、それ以外の脂肪族ポリエステルセグメントを有するブロックコポリエステルをマイナー成分として含むものも用いることができる。
【0009】
[ポリエステル(b)]
乳酸系ポリマー(a)に配合されるポリエステル(b)は、乳酸系ポリマー(a)より弾性率が小さく、それとは構成モノマーの異なるポリエステルである。このようなポリエステル(b)は、軟質の生分解性ポリエステルであることが望ましく、後述する乳酸以外のヒドロキシカルボン酸、脂肪族二価アルコール及び脂肪族二塩基酸を種々組み合わせて製造できる生分解性を有するポリマーが好適である。その引張り弾性率は、なかでも、乳酸系ポリマーの引張り弾性率の1〜80%、特に5〜60%が好適である。
このようなポリエステル(b)の引張り弾性率は、通常1〜2500MPaであり、なかでも、1〜1500MPa,より好ましくは5〜1000MPa、更に好ましくは5〜750MPa、最も好ましくは5〜500MPaがよい。弾性率が2500MPaより大きいと、乳酸系ポリマーに添加した時の軟質化効果が少ない。
【0010】
本発明で示す好ましい軟質な生分解性ポリエステルとしては、例えばポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、及びβ−ヒドロキシ酪酸とβ−ヒドロキシ吉草酸とのコポリマー、ポリカプロラクトン、テレフタール酸とブタンジオールとアジピン酸の共重合体等が挙げられる。特に、ポリブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、テレフタール酸とブタンジオールとアジピン酸の共重合体は、既に容易且つ安価に入手可能で好ましい。
【0011】
また、これらの生分解性ポリエステルは、ジイソシアネート等の結合剤によってポリマー鎖が延長されたものであってもよく、また、少量のトリメチロールプロパン、グリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合されたものでもよい。
本発明においては、発明の目的を損なわない範囲で生分解性を有するポリエステルを軟質化材として用いてもよい。
ポリエステルの製造方法としては、ポリ乳酸の製造方法と同様な方法を用いることもでき、その方法は限定されない。
[ヒドロキシカルボン酸]
本発明で示すヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等を挙げることができ、さらに、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを挙げることができる。これらは、単独で又は二種以上組合せて使用することができる。
[脂肪族二価アルコール]
本発明で示す脂肪族二価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレン グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0012】
[二塩基酸]
本発明で示す脂肪族二塩基酸の具体例としては、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0013】
[乳酸系ポリマー(a)及びポリエステル(b)の分子量]
乳酸系ポリマー(a)及びポリエステル(b)の重量平均分子量(Mw)や分子量分布は、実質的に、成形加工が可能で、実質的に充分な機械物性を示すものであれば特に制限されないが、一般的には、重量平均分子量(Mw)で、6〜100万が好ましく、8〜50万が更に好ましく、10〜30万が最も好ましい。一般的には、重量平均分子量(Mw)が6万より小さい場合、ポリマー組成物を成形加工して得られた成形体の機械物性が充分でなかったり、逆に分子量が100万を越える場合、成形加工時の溶融粘度が極端に高くなり取扱い困難となったり、製造上不経済となったりする場合がある。
【0014】
[ポリエステル(b)の添加量]
乳酸系ポリマー(a)にポリエステル(b)を配合することにより、フィルムに柔軟性を付与し成形性を向上されることができ、フラットヤーンの縦割れを起こし難くする効果がある。ポリエステル(a)とポリエステル(b)の構成割合は
(a)が60から90重量部に対し、(b)が10〜40重量部が好適であり、さらに好ましくは、(a)が70〜90重量部に対し、(b)が10〜30重量部の範囲、さらに好ましくは、(a)が70〜80重量部に対し、(b)が20〜30重量部の範囲、中でも(a)が75重量部に対し、(b)が20〜25重量部がもっとも好ましい。
(いずれの場合も、(a)と(b)の合計100重量部とする。)
ポリエステル(b)が10重量部未満では、成形時にフィルムが硬く、フラットヤーンが縦割れを起こし易く、40重量部を越えるととフラットヤーンの強度が不十分になる傾向がある。
【0015】
[滑剤]
滑剤としては、特に限定されないが、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンなどの脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油などの脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックスなどの長鎖エステルワックスなどの脂肪酸エステル系滑剤またはこれらを複合した複合滑剤などが挙げられる。
【0016】
[無機充填剤]
無機添加剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、カオリナイト、カーボン,酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、特にタルクや炭酸カルシウムが好適である。これらは1種又は二種以上の混合物として用いることもできる。
【0017】
[滑剤と無機充填剤の添加量]
乳酸系ポリマー(a)にポリエステル(b)を配合した1軸延伸フィルムは滑り性に劣るとともに織機での製織工程にて縦割れが発生し、操業性を悪化させる場合があった。フラットヤーンの滑り性向上のため滑剤を配合し、縦割れ防止のため無機充填剤を添加する。滑剤の添加量はフラットヤーンを構成する重量の0.1〜5重量%が好適である。0.1重量%未満では実質的に効果がなく、5重量%を超えると機械物性が低下する傾向がある。
無機充填剤の添加量はフラットヤーンの0.01〜10重量%を添加することができ、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
0.01重量%より少なくなると添加した効果が発現できなくなり、逆に10重量%より多いと二次加工性や機械物性が悪くなる場合がある。
【0018】
[その他添加剤]
本発明の乳酸系ポリマー組成物には、目的(例えば成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、耐候性等の向上)に応じて各種添加剤(可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、無機添加剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、天然物)等を添加できる。
【0019】
[成形機]
本発明のヤーンを製造する際に用いられる成形機のスクリュ−としては、好ましくは分配混合型スクリューまたは分散混合型スクリューが挙げられる。物体の物理的な性質や形状を変化させないで、界面の接触面積を増やして粒子やその集合体を再配置して分散させる分配混合型スクリューとしては、具体的にピン付きスクリュー、パイナップルミキサー、ダルメージミキサーなどが挙げられる。なかでも特に好適なものとして、ダルメージミキサー、その他、大きな内部応力を作用させてその集合体を壊して分散させる分散混合型スクリューとしては、具体的にフルートマードック・イーガンミキシングなどが挙げられる。
【0020】
[押出し工程]
本発明のポリ乳酸系フラットヤーンの原反となるポリ乳酸系フィルムを成形する方法としては、例えば、溶融キャスト法、溶融押出し法、カレンダー法などの方法を用いることができるが、工業的には溶融押出法が一般的である。溶融押出法としては、公知のTダイ法、インフレーション法などが適用できる。押出し温度は170〜240℃、好ましくは、180℃〜230℃の範囲である。成形温度が低すぎると、製膜成形が不安定になり、高すぎるとポリ乳酸が分解して、得られるフィルム強度が低下したり、着色するなどの問題が発生し好ましくない。
【0021】
[延伸工程]
本発明におけるポリ乳酸系フィルムは、一軸延伸することが必要である。2軸延伸フィルムから得られるフラットヤーンでは、分子が縦横に配向しているため、横方向に亀裂が少しでも存在すると、容易に切断し製織工程時で切断多発に通じるため好ましくない。1軸延伸する場合には、2段もしくは2段以上の多段延伸にて縦方向に7倍から15倍延伸するのが好ましい。1軸延伸では倍率を7倍以上にしようとすると延伸切れや白化といった問題があり、7倍未満では強度発現が不十分でかつ耐熱性が不足するといった問題がある。多段延伸でも18倍を超える延伸倍率では延伸切れを起こし易くなったり、縦割れしやすくなり強度が低下する問題がある。また、延伸温度は延伸前のヤーンの表面温度が乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)から融点(Tm)60〜120℃であるのが好ましく、Tg〜(Tm−30℃)がよりこのましい。表面温度がTgに満たない場合は延伸切れが起ったり、3倍以上延伸が不可能となったりする場合がある。逆にTmを超える場合は、延伸による強度発現の効果が少なくなる。多段延伸を行う場合は、1段目を低く、段数を増すごとに順次温度を上げて行く事が好ましい。
【0022】
本発明では、延伸したヤーンをさらに熱処理して、高温下での物理変化(例えば収縮)を抑制することもできる。その方法は、乳酸系樹脂または乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)〜融点(Tm)の間の温度、好ましくは70〜120℃、より好ましくは100〜115℃に設定した加熱槽に導き、熱処理を行った後、冷却槽にて冷却する。熱処理には、延伸操作の場合と同様に、水槽、オーブン、熱ロール等いずれの方法を用いてもよく何ら制限はない。また、冷却には、水冷、空冷いずれの方法でも良く、何ら制限はない。
【0023】
本発明のフラットヤーンは、現行の織機で製織するのに十分な強度と伸びを有し、かつ耐熱性に優れたフラットヤーンを得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術範囲を超えない限り、これに限定されるものではない。
製造例,実施例、比較例で示す物性等は、以下に示す方法により測定した。
【0025】
1)重量平均分子量(Mw)
ポリスチレンを標準としてゲルバーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)により、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒で測定した。
2)ヤーンの強度と伸び率
JIS Z1553に準じて求めた。
3)熱収縮率
延伸終了後のフラットヤーンを80℃のオーブンに10分間保持し、下式より求めた。
(加熱前のヤーンの長さ−加熱後のヤーンの長さ)/加熱前のヤーンの長さ100
4)複屈折
偏光顕微鏡を用いたレターデーション法で測定した。
【0026】
【実施例1〜4及び比較例1〜3】
数平均分子量が20万のポリ乳酸(三井化学(株)製LACEA)70重量部に対して、テレフタール酸とブタンジオールとアジピン酸の共重合体(BASF社製、ECOFLEX)20重量部、さらに、タルク30重量部とエルカ酸アミド5重量部を含有した数平均分子量20万のポリ乳酸10重量部(マスターバッチ)をチップ混合して、先端にダルメージミキサーを有するスクリューと丸ダイの装着された押出し機を用いて、インフレーション法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをスリットした後、第1および第2延伸用加熱槽として温度80〜90℃、90〜100℃に設定した2つの水槽に導き、それぞれの水槽前後に配置した延伸ローラーの速度比により、それぞれの延伸倍率を3倍と3倍として延伸した。得られたヤーンは太さ1000デニール(d)、引張強度3.5cN/dt引張伸び率20パーセント(%)であった。このときの、熱収縮率が3.5パーセント(%)であった。
同様にして、表1に示す組成物を表1の延伸倍率に2段の延伸をした結果を表1に示す(実施例2〜3)。
また、表1の実施例4に示す組成物を先端にダルメージミキサーを有するスクリューとTダイの装着された押出機を用いて、未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムをスリットし、同様にして表1の延伸倍率に2段の延伸をした結果を表1に示す(実施例4)。
さらに、表1に示す組成物について実施例1と同様の条件で、2段延伸を1段延伸とした場合についての結果を表1に示す(比較例1〜3)。
なお、PBSは、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製ビオノーレ)である。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明に係るフラットヤーンは、従来の技術によるものよりも、機械強度と耐熱性に優れ、しばり紐などの包装材料、農業用資材または種々の織布用として利用することが可能である。また、フラットヤーンから得られたスプリットヤーンは梱包、農業、漁業、林業用のロープやネット用の糸としても使用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸系ポリマーを主成分とした熱可塑性ポリマーからなり、機械強度と耐熱性に優れたフラットヤーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術分野】
従来、フラットヤーンは古くからポリエチレンやポリプロピレンといった素材から構成されている。これらの素材からなるフラットヤーンの二次加工品は、機械的物性に優れ、しかも非常に安価であるため多量に使用されているが、一旦その使命を終え廃棄処分されると、自然環境下でほとんど分解されないために、埋没処理した場合には、半永久的に地中に残留し、焼却処分した場合には、廃棄ガスによる大気汚染や焼却熱エネルギーによる焼却炉の低寿命化などの問題を有している。さらには、通常の高分子材料は、自然環境下でほとんど分解されていないため、景観を損ねたり、可塑剤等の添加剤の溶出により環境を汚染したり、海洋生物の生活環境を破壊したり、多くの環境保全上の問題を有しており、新しい材料が切望されている。
【0003】
このような背景から、分解性及び/又は生分解性(本出願の明細書においては、自然環境下で微生物等の作用により分解する機能や生体内で酵素等の作用により分解する機能を含包する)を有する熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸、乳酸成分を主成分とするコポリ乳酸(例えば、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸の共重合体)、ポリ乳酸と他の脂肪族ポリエステルとの混合物(例えばポリ乳酸とポリブチレンサクシーネートとの混合物)等の乳酸系樹脂が注目を集めている。特にポリ乳酸は、動物の体内で数ヶ月から1年以内に100%生分解し、また、土壌や海水中等の膨潤状態に放置された場合、数週間程度で強度が低下し始め、約1年から数年程度で原形を留めず消滅し、さらに分解生成物は、人体に無害な乳酸及び/または二酸化炭素と水になるという特性を有している点で特徴的である。また、ポリ乳酸の原料である乳酸は、発酵法や化学合成法により製造され、最近では特に発酵法によるL−乳酸が大量に製造され、価格も安価になってきているので、優れた透明性と剛性を有するポリ乳酸の特徴を活かした各種の用途開発が進められている。
【0004】
本発明は乳酸系フラットヤーンに関するものであるが、既にこれに係わる幾つかの技術が開示されている。例えば特開2001−131827に、滑剤を含有し相対粘度と複屈折を規定したポリ乳酸系フラットヤーンが例示されている。上記乳酸系フラットヤーンでは複屈折を0.035以下に規定しているため、十分な機械強度と耐熱性を両立させることが難しく。また、乳酸系成分の構成割合が多いためインフレーション法によるフィルムが硬く、しわがよりやすいという問題があった。特開2002−155440にはインフレフィルムの成形性を向上するため、ポリ乳酸系樹脂に特定の脂肪族ポリエステルを20〜40重量%添加し柔軟性を付与したフラットヤーンが例示されている。ただし、乳酸成分の構成割合を下げることによりフラットヤーンの強度が低下し、延伸倍率を上げて強度を発現しようとすれば縦割れが生じてしまうという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性及び機械強度に優れたフラットヤーンを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸とそれより弾性率が小さく構成モノマーの異なるポリエステルと滑剤、無機充填剤を構成成分とする樹脂組成物を2段またはそれ以上の多段にて延伸することにより引張り強度が3cN/dtex以上でかつ熱収縮率が5パーセント(%)以下である耐熱性及び機械強度に優れたフラットヤーンが得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[乳酸系ポリマー(a)]
本発明において乳酸系ポリマーの原料として用いられる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸,DL−乳酸又はそれら化合物、又は乳酸の環状2量体であるラクタイドを挙げることができる。
本発明において使用される乳酸系ポリマーの製造方法の具体例としては、例えば、
▲1▼ 乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、USP 5,310,865号に示されている製造方法)、
▲2▼ 乳酸の環状二量体(ラクタイド)を溶融重合する開環重合法(例えば、米国特許2,758, 987号に開示されている製造方法)、
▲3▼ 乳酸を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行う事によりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法には、特に限定されない。また、少量のトリメチロールプロパン、グリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合させても良く、又ジイソシアネート化合物等のような結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を上げてもよい。
【0008】
また、乳酸系ポリマー(a)は、ポリ乳酸セグメントと共に必要に応じて、それ以外の脂肪族ポリエステルセグメントを有するブロックコポリエステルをマイナー成分として含むものも用いることができる。
【0009】
[ポリエステル(b)]
乳酸系ポリマー(a)に配合されるポリエステル(b)は、乳酸系ポリマー(a)より弾性率が小さく、それとは構成モノマーの異なるポリエステルである。このようなポリエステル(b)は、軟質の生分解性ポリエステルであることが望ましく、後述する乳酸以外のヒドロキシカルボン酸、脂肪族二価アルコール及び脂肪族二塩基酸を種々組み合わせて製造できる生分解性を有するポリマーが好適である。その引張り弾性率は、なかでも、乳酸系ポリマーの引張り弾性率の1〜80%、特に5〜60%が好適である。
このようなポリエステル(b)の引張り弾性率は、通常1〜2500MPaであり、なかでも、1〜1500MPa,より好ましくは5〜1000MPa、更に好ましくは5〜750MPa、最も好ましくは5〜500MPaがよい。弾性率が2500MPaより大きいと、乳酸系ポリマーに添加した時の軟質化効果が少ない。
【0010】
本発明で示す好ましい軟質な生分解性ポリエステルとしては、例えばポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、及びβ−ヒドロキシ酪酸とβ−ヒドロキシ吉草酸とのコポリマー、ポリカプロラクトン、テレフタール酸とブタンジオールとアジピン酸の共重合体等が挙げられる。特に、ポリブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン、テレフタール酸とブタンジオールとアジピン酸の共重合体は、既に容易且つ安価に入手可能で好ましい。
【0011】
また、これらの生分解性ポリエステルは、ジイソシアネート等の結合剤によってポリマー鎖が延長されたものであってもよく、また、少量のトリメチロールプロパン、グリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合されたものでもよい。
本発明においては、発明の目的を損なわない範囲で生分解性を有するポリエステルを軟質化材として用いてもよい。
ポリエステルの製造方法としては、ポリ乳酸の製造方法と同様な方法を用いることもでき、その方法は限定されない。
[ヒドロキシカルボン酸]
本発明で示すヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等を挙げることができ、さらに、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを挙げることができる。これらは、単独で又は二種以上組合せて使用することができる。
[脂肪族二価アルコール]
本発明で示す脂肪族二価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレン グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ一ル、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0012】
[二塩基酸]
本発明で示す脂肪族二塩基酸の具体例としては、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合せて使用することができる。
【0013】
[乳酸系ポリマー(a)及びポリエステル(b)の分子量]
乳酸系ポリマー(a)及びポリエステル(b)の重量平均分子量(Mw)や分子量分布は、実質的に、成形加工が可能で、実質的に充分な機械物性を示すものであれば特に制限されないが、一般的には、重量平均分子量(Mw)で、6〜100万が好ましく、8〜50万が更に好ましく、10〜30万が最も好ましい。一般的には、重量平均分子量(Mw)が6万より小さい場合、ポリマー組成物を成形加工して得られた成形体の機械物性が充分でなかったり、逆に分子量が100万を越える場合、成形加工時の溶融粘度が極端に高くなり取扱い困難となったり、製造上不経済となったりする場合がある。
【0014】
[ポリエステル(b)の添加量]
乳酸系ポリマー(a)にポリエステル(b)を配合することにより、フィルムに柔軟性を付与し成形性を向上されることができ、フラットヤーンの縦割れを起こし難くする効果がある。ポリエステル(a)とポリエステル(b)の構成割合は
(a)が60から90重量部に対し、(b)が10〜40重量部が好適であり、さらに好ましくは、(a)が70〜90重量部に対し、(b)が10〜30重量部の範囲、さらに好ましくは、(a)が70〜80重量部に対し、(b)が20〜30重量部の範囲、中でも(a)が75重量部に対し、(b)が20〜25重量部がもっとも好ましい。
(いずれの場合も、(a)と(b)の合計100重量部とする。)
ポリエステル(b)が10重量部未満では、成形時にフィルムが硬く、フラットヤーンが縦割れを起こし易く、40重量部を越えるととフラットヤーンの強度が不十分になる傾向がある。
【0015】
[滑剤]
滑剤としては、特に限定されないが、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンなどの脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油などの脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックスなどの長鎖エステルワックスなどの脂肪酸エステル系滑剤またはこれらを複合した複合滑剤などが挙げられる。
【0016】
[無機充填剤]
無機添加剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、カオリナイト、カーボン,酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、特にタルクや炭酸カルシウムが好適である。これらは1種又は二種以上の混合物として用いることもできる。
【0017】
[滑剤と無機充填剤の添加量]
乳酸系ポリマー(a)にポリエステル(b)を配合した1軸延伸フィルムは滑り性に劣るとともに織機での製織工程にて縦割れが発生し、操業性を悪化させる場合があった。フラットヤーンの滑り性向上のため滑剤を配合し、縦割れ防止のため無機充填剤を添加する。滑剤の添加量はフラットヤーンを構成する重量の0.1〜5重量%が好適である。0.1重量%未満では実質的に効果がなく、5重量%を超えると機械物性が低下する傾向がある。
無機充填剤の添加量はフラットヤーンの0.01〜10重量%を添加することができ、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
0.01重量%より少なくなると添加した効果が発現できなくなり、逆に10重量%より多いと二次加工性や機械物性が悪くなる場合がある。
【0018】
[その他添加剤]
本発明の乳酸系ポリマー組成物には、目的(例えば成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、耐候性等の向上)に応じて各種添加剤(可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、無機添加剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、天然物)等を添加できる。
【0019】
[成形機]
本発明のヤーンを製造する際に用いられる成形機のスクリュ−としては、好ましくは分配混合型スクリューまたは分散混合型スクリューが挙げられる。物体の物理的な性質や形状を変化させないで、界面の接触面積を増やして粒子やその集合体を再配置して分散させる分配混合型スクリューとしては、具体的にピン付きスクリュー、パイナップルミキサー、ダルメージミキサーなどが挙げられる。なかでも特に好適なものとして、ダルメージミキサー、その他、大きな内部応力を作用させてその集合体を壊して分散させる分散混合型スクリューとしては、具体的にフルートマードック・イーガンミキシングなどが挙げられる。
【0020】
[押出し工程]
本発明のポリ乳酸系フラットヤーンの原反となるポリ乳酸系フィルムを成形する方法としては、例えば、溶融キャスト法、溶融押出し法、カレンダー法などの方法を用いることができるが、工業的には溶融押出法が一般的である。溶融押出法としては、公知のTダイ法、インフレーション法などが適用できる。押出し温度は170〜240℃、好ましくは、180℃〜230℃の範囲である。成形温度が低すぎると、製膜成形が不安定になり、高すぎるとポリ乳酸が分解して、得られるフィルム強度が低下したり、着色するなどの問題が発生し好ましくない。
【0021】
[延伸工程]
本発明におけるポリ乳酸系フィルムは、一軸延伸することが必要である。2軸延伸フィルムから得られるフラットヤーンでは、分子が縦横に配向しているため、横方向に亀裂が少しでも存在すると、容易に切断し製織工程時で切断多発に通じるため好ましくない。1軸延伸する場合には、2段もしくは2段以上の多段延伸にて縦方向に7倍から15倍延伸するのが好ましい。1軸延伸では倍率を7倍以上にしようとすると延伸切れや白化といった問題があり、7倍未満では強度発現が不十分でかつ耐熱性が不足するといった問題がある。多段延伸でも18倍を超える延伸倍率では延伸切れを起こし易くなったり、縦割れしやすくなり強度が低下する問題がある。また、延伸温度は延伸前のヤーンの表面温度が乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)から融点(Tm)60〜120℃であるのが好ましく、Tg〜(Tm−30℃)がよりこのましい。表面温度がTgに満たない場合は延伸切れが起ったり、3倍以上延伸が不可能となったりする場合がある。逆にTmを超える場合は、延伸による強度発現の効果が少なくなる。多段延伸を行う場合は、1段目を低く、段数を増すごとに順次温度を上げて行く事が好ましい。
【0022】
本発明では、延伸したヤーンをさらに熱処理して、高温下での物理変化(例えば収縮)を抑制することもできる。その方法は、乳酸系樹脂または乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)〜融点(Tm)の間の温度、好ましくは70〜120℃、より好ましくは100〜115℃に設定した加熱槽に導き、熱処理を行った後、冷却槽にて冷却する。熱処理には、延伸操作の場合と同様に、水槽、オーブン、熱ロール等いずれの方法を用いてもよく何ら制限はない。また、冷却には、水冷、空冷いずれの方法でも良く、何ら制限はない。
【0023】
本発明のフラットヤーンは、現行の織機で製織するのに十分な強度と伸びを有し、かつ耐熱性に優れたフラットヤーンを得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術範囲を超えない限り、これに限定されるものではない。
製造例,実施例、比較例で示す物性等は、以下に示す方法により測定した。
【0025】
1)重量平均分子量(Mw)
ポリスチレンを標準としてゲルバーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)により、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒で測定した。
2)ヤーンの強度と伸び率
JIS Z1553に準じて求めた。
3)熱収縮率
延伸終了後のフラットヤーンを80℃のオーブンに10分間保持し、下式より求めた。
(加熱前のヤーンの長さ−加熱後のヤーンの長さ)/加熱前のヤーンの長さ100
4)複屈折
偏光顕微鏡を用いたレターデーション法で測定した。
【0026】
【実施例1〜4及び比較例1〜3】
数平均分子量が20万のポリ乳酸(三井化学(株)製LACEA)70重量部に対して、テレフタール酸とブタンジオールとアジピン酸の共重合体(BASF社製、ECOFLEX)20重量部、さらに、タルク30重量部とエルカ酸アミド5重量部を含有した数平均分子量20万のポリ乳酸10重量部(マスターバッチ)をチップ混合して、先端にダルメージミキサーを有するスクリューと丸ダイの装着された押出し機を用いて、インフレーション法にて未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをスリットした後、第1および第2延伸用加熱槽として温度80〜90℃、90〜100℃に設定した2つの水槽に導き、それぞれの水槽前後に配置した延伸ローラーの速度比により、それぞれの延伸倍率を3倍と3倍として延伸した。得られたヤーンは太さ1000デニール(d)、引張強度3.5cN/dt引張伸び率20パーセント(%)であった。このときの、熱収縮率が3.5パーセント(%)であった。
同様にして、表1に示す組成物を表1の延伸倍率に2段の延伸をした結果を表1に示す(実施例2〜3)。
また、表1の実施例4に示す組成物を先端にダルメージミキサーを有するスクリューとTダイの装着された押出機を用いて、未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムをスリットし、同様にして表1の延伸倍率に2段の延伸をした結果を表1に示す(実施例4)。
さらに、表1に示す組成物について実施例1と同様の条件で、2段延伸を1段延伸とした場合についての結果を表1に示す(比較例1〜3)。
なお、PBSは、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製ビオノーレ)である。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明に係るフラットヤーンは、従来の技術によるものよりも、機械強度と耐熱性に優れ、しばり紐などの包装材料、農業用資材または種々の織布用として利用することが可能である。また、フラットヤーンから得られたスプリットヤーンは梱包、農業、漁業、林業用のロープやネット用の糸としても使用できる。
Claims (3)
- 乳酸系ポリマー(a)、それより弾性率が小さいポリエステルであって、構成モノマーが乳酸とは異なるポリエステル(b)、滑剤、及び無機充填剤からなり、長さ方向に延伸されたフラットヤーンであって、該フラットヤーンの引張り強度が3cN/dtex以上でかつ熱収縮率が5%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フラットヤーン。
- 2段またはそれ以上の多段にて7〜15倍延伸されて得られることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系フラットヤーン。
- 乳酸系ポリマー(a)60〜90重量部及びポリエステル(b)を10〜40重量部(合計100重量部)を含有していることを特徴とする請求項1または2記載のポリリ乳酸系フラットヤーン。
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