JP2004307418A - シクロヘキサノンオキシムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを反応させることにより、シクロヘキサノンオキシムを製造する際、反応系から使用済み触媒を取り出し、この使用済み触媒と未使用の触媒を併用して反応を行う。
【選択図】 なし
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、シクロヘキサノンのアンモキシム化反応により、シクロヘキサノンオキシムを製造する方法に関するものである。シクロヘキサノンオキシムはε−カプロラクタムの原料等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
シクロヘキサノンオキシムを製造する方法の1つとして、チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノンを過酸化水素とアンモニアでアンモキシム化する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この方法は、従来のヒドロキシルアミン硫酸塩でオキシム化する方法のように硫酸をアンモニアで中和する必要がなく、また、固体触媒反応であるため、生成物と触媒との分離が容易である等の利点を有している。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−59256号公報
【特許文献2】特開平6−49015号公報
【特許文献3】特開平6−92922号公報
【特許文献4】特開平7−100387号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記アンモキシム化反応では、反応時間の経過につれてチタノシリケート触媒が徐々に劣化するため、シクロヘキサノンの転化率やシクロヘキサノンオキシムの選択率が低下し、シクロヘキサノンオキシムの収率低下を招く。シクロヘキサノンオキシムの収率を所望値以上に維持するためには、ある程度使用して劣化した触媒は、新しいものと取り替える必要があるが、この触媒の劣化を抑制できれば、取り替え頻度が低減されて、触媒コストの点で有利である。そこで、本発明者等は、触媒コスト削減の観点から、上記アンモキシム化反応において、チタノシリケート触媒の劣化、特に触媒活性の低下を抑制し、ひいてはシクロヘキサノンオキシムの収率低下を抑制することを目的に、鋭意研究を行った結果、使用済みの劣化触媒を、新しい触媒と共に反応系に加えることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを反応させることによるシクロヘキサノンオキシムの製造方法であって、反応系から使用済み触媒を取り出し、この使用済み触媒と未使用の触媒を併用して反応を行うことを特徴とするシクロヘキサノンオキシムの製造方法を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いるチタノシリケートとは、骨格を構成する元素としてチタン、ケイ素および酸素を含むゼオライトであり、実質的にチタンとケイ素と酸素から骨格が構成されるものであってもよいし、骨格を構成する元素としてさらに他の元素を含むものであってもよい。チタノシリケートとしては、ケイ素/チタンの原子比が10〜1000のものが好適に用いられ、またその形状は、例えば、微粉状であってもよいし、ペレット状であってもよい。チタノシリケートは、例えば特開昭56−96720号公報に記載の方法により、調製することができる。
【0007】
上記チタノシリケートを触媒として用い、この触媒の存在下に、シクロヘキサノンを過酸化水素とアンモニアでアンモキシム化することにより、シクロヘキサノンオキシムを製造することができる。
【0008】
原料のシクロヘキサノンは、例えば、シクロヘキサンの酸化反応により得られたものであってもよいし、シクロヘキセンの水和、脱水素反応により得られたものであってもよいし、フェノールの水素化反応により得られたものであってもよい。
【0009】
また、過酸化水素は、通常、所謂アントラキノン法により製造され、一般に濃度10〜70重量%の水溶液として市販されているので、これを用いることができる。過酸化水素の使用量は、シクロヘキサノン1モルに対して、好ましくは0.5〜3モルであり、さらに好ましくは0.5〜1.5モルである。なお、過酸化水素には、例えば、リン酸ナトリウムのようなリン酸塩、ピロリン酸ナトリウムやトリポリリン酸ナトリウムのようなポリリン酸塩、ピロリン酸、アスコルビン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトロトリ酢酸、アミノトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等の安定剤が添加されていてもよい。
【0010】
アンモニアは、ガス状のものを用いてもよいし、液状のものを用いてもよく、また水や有機溶媒の溶液として用いてもよい。アンモニアの使用量は、シクロヘキサノン1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、さらに好ましくは1.5モル以上である。
【0011】
上記アンモキシム化反応は、溶媒中で行ってもよく、この反応溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコールのようなアルコール類や水、またはこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
【0012】
本発明では、上記アンモキシム化反応を、反応に未使用の新品の触媒(以下、新触媒ということがある)と共に、反応に使用済みの劣化した触媒(以下、劣化触媒ということがある)も加えて、実施する。このように新触媒と劣化触媒を併用することにより、新触媒の劣化、特に触媒活性の低下を抑制することができ、また新触媒の使用量を削減することも可能となる。なお、この劣化触媒は、単なる新触媒の活性補充のためではなく、新触媒の劣化を抑制するために使用されるものであるから、それ自身はアンモキシム化反応の触媒としての活性を実質的に持たないものであっても構わない。
【0013】
劣化触媒は、アンモキシム化反応の反応系から取り出されて、再び反応に使用されるが、この取り出し方法については、回分式反応であれば、例えば、反応終了後、反応混合物を濾過やデカンテーションに付して、劣化触媒を分離すればよい。また、連続式反応であれば、例えば、一定期間反応を行った後に反応を停止し、反応器内の残液(反応混合物)を濾過やデカンテーションに付して、劣化触媒を分離すればよい。分離された劣化触媒は、必要により、溶媒で洗浄してもよいし、また、焼成してもよい。なお、劣化触媒を含む反応混合物を、特に分離操作に付すことなく、そのまま劣化触媒として使用することも可能である。
【0014】
新触媒と劣化触媒を併用してアンモキシム化反応を実施する方法としては、回分式の場合、例えば、反応器にシクロヘキサノン、アンモニア、チタノシリケート、新触媒、劣化触媒および溶媒を入れ、攪拌下、この中に過酸化水素を供給することにより、反応を行ってもよいし、反応器にシクロヘキサノン、新触媒、劣化触媒および溶媒を入れ、攪拌下、この中に過酸化水素およびアンモニアを供給することにより、反応を行ってもよいし、反応器に新触媒、劣化触媒および溶媒を入れ、攪拌下、この中にシクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを供給することにより、反応を行ってもよい。連続式の場合、例えば、反応器内に新触媒と劣化触媒が懸濁した仕込液(スタートアップ液)を入れ、この中に、シクロヘキサノン、過酸化水素、アンモニアおよび溶媒を供給しながら、反応器からフィルターを介して反応混合物の液相を抜き出すことにより、反応を行うことができる。なお、反応器は、過酸化水素の分解を防ぐ観点から、グラスライニングやステンレススチール製のものが好ましい。
【0015】
新触媒および劣化触媒は、それぞれ反応混合物の液相に対して、0.1〜20重量%程度の割合となるように、懸濁させて使用するのが望ましい。また、新触媒と劣化触媒の使用割合については、劣化触媒が新触媒の通常0.01〜100重量倍、好ましくは0.1〜20重量倍である。なお、劣化触媒による新触媒の劣化を抑制する効果は、反応混合物の液相中に10重量%以上の濃度で水が存在する場合に、特に効果的に発揮される。
【0016】
上記アンモキシム化反応の反応温度は通常50〜100℃である。また、反応圧力は常圧でもよいが、反応混合物の液相へのアンモニアの溶解量を高めるためには、加圧下で反応を行うのが好ましく、この場合、窒素やヘリウム等の不活性ガスを用いて、圧力を調整してもよい。
【0017】
得られた反応混合物の後処理操作については、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、反応混合物から触媒を濾過等により分離した後、液相を蒸留に付することにより、シクロヘキサノンオキシムを分離することができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムの分析はガスクロマトグラフィーにより行い、この分析結果に基づいてシクロヘキサノンの転化率、シクロヘキサノンオキシムの選択率およびシクロヘキサノンオキシムの収率を算出した。
【0019】
参考例1(劣化触媒の取得)
チタノシリケートとして反応に未使用の新触媒7gを使用した。容量1リットルのオートクレーブを反応器として用い、この中に、シクロヘキサノンを67g/時間、含水t−ブチルアルコール(水12重量%)を252g/時間、および60重量%過酸化水素水を43g/時間の速度で供給し、かつアンモニアを、反応混合物の液相中に2重量%の濃度で存在するように供給しながら、反応器からフィルターを介して反応混合物の液相を抜き出すことにより、温度85℃、圧力0.25MPa、滞留時間72分の条件で連続式反応を行った。この間、反応器内の反応混合物中には、液相に対し1.4重量%の割合でチタノシリケートを存在させた。
【0020】
反応開始から29時間後に、触媒活性の低下による気相部酸素濃度の急激な上昇が観測されたので、反応を停止した。反応器内の反応混合物を加圧濾過し、濾別した触媒を、t−ブチルアルコールで洗浄後、窒素気流下で30分乾燥した。こうして得られた劣化触媒を、実施例1で使用した。なお、反応開始から24.5時間後に抜き出した液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は、91.3%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は98.2%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は89.6%であった。
【0021】
比較例1
チタノシリケートとして反応に未使用の新触媒5gを使用し、反応混合物液相に対するチタノシリケートの割合を1.0重量%とした以外は、参考例1と同様に反応を行った。
【0022】
反応開始から6時間後に、触媒活性の低下による気相部酸素濃度の急激な上昇が観測された。また、反応開始から5.5時間後に抜き出した液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は、87.6%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は90.4%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は79.3%であった。
【0023】
実施例1
チタノシリケートとして反応に未使用の新触媒5gと、参考例1で得られた反応に使用済の劣化触媒2gを使用し、反応混合物液相に対するチタノシリケートの割合を1.4重量%(新品触媒1.0重量%+劣化触媒0.4重量%)とした以外は、参考例1と同様に反応を行った。
【0024】
反応開始から20時間後に、触媒活性の低下による気相部酸素濃度の急激な上昇が観測された。また、反応開始から18.5時間後に抜き出した液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は、89.4%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は95.9%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は85.8%であった。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒のチタノシリケートの劣化が抑制された条件で、シクロヘキサノンを過酸化水素とアンモニアによりアンモキシム化することができ、高収率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができる。
Claims (1)
- チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを反応させることによるシクロヘキサノンオキシムの製造方法であって、反応系から使用済み触媒を取り出し、この使用済み触媒と未使用の触媒を併用して反応を行うことを特徴とするシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
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