JP4633337B2 - シクロヘキサノンオキシムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、シクロヘキサノンのアンモキシム化反応により、シクロヘキサノンオキシムを製造する方法に関するものである。シクロヘキサノンオキシムはε−カプロラクタムの原料等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
シクロヘキサノンオキシムを製造する方法の1つとして、チタノシリケート触媒の存在下に、シクロヘキサノンを過酸化水素とアンモニアでアンモキシム化する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この方法は、従来のヒドロキシルアミン硫酸塩でオキシム化する方法のように硫酸をアンモニアで中和する必要がなく、また、固体触媒反応であるため、生成物と触媒との分離が容易である等の利点を有している。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−59256号公報
【特許文献2】
特開平6−49015号公報
【特許文献3】
特開平6−92922号公報
【特許文献4】
特開平7−100387号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記アンモキシム化反応では、反応時間の経過につれてチタノシリケート触媒が徐々に劣化するため、シクロヘキサノンの転化率やシクロヘキサノンオキシムの選択率が十分でないことがある。そこで本発明の目的は、上記アンモキシム化反応において、チタノシリケート触媒の劣化、特に触媒活性の低下を抑制して、高収率でシクロヘキサノンオキシムを製造しうる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究を行った結果、チタノシリケートと共に、チタノシリケート以外のケイ素化合物も存在させて、シクロヘキサノンのアンモキシム化を行うことにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、チタノシリケートとこれ以外のケイ素化合物の存在下に、シクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを反応させることにより、シクロヘキサノンオキシムを製造する方法に係るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いるチタノシリケートとは、骨格を構成する元素としてチタン、ケイ素および酸素を含むゼオライトであり、実質的にチタンとケイ素と酸素から骨格が構成されるものであってもよいし、骨格を構成する元素としてさらに他の元素を含むものであってもよい。チタノシリケートとしては、ケイ素/チタンの原子比が10〜1000のものが好適に用いられ、またその形状は、例えば、微粉状であってもよいし、ペレット状であってもよい。チタノシリケートは、例えば特開昭56−96720号公報に記載の方法により、調製することができる。
【0007】
上記チタノシリケートを触媒として用い、この触媒の存在下に、シクロヘキサノンを過酸化水素とアンモニアでアンモキシム化することにより、シクロヘキサノンオキシムを製造することができる。
【0008】
原料のシクロヘキサノンは、例えば、シクロヘキサンの酸化反応により得られたものであってもよいし、シクロヘキセンの水和、脱水素反応により得られたものであってもよいし、フェノールの水素化反応により得られたものであってもよい。
【0009】
また、過酸化水素は、通常、所謂アントラキノン法により製造され、一般に濃度10〜70重量%の水溶液として市販されているので、これを用いることができる。過酸化水素の使用量は、シクロヘキサノン1モルに対して、好ましくは0.5〜3モルであり、さらに好ましくは0.5〜1.5モルである。なお、過酸化水素には、例えば、リン酸ナトリウムのようなリン酸塩、ピロリン酸ナトリウムやトリポリリン酸ナトリウムのようなポリリン酸塩、ピロリン酸、アスコルビン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトロトリ酢酸、アミノトリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等の安定剤が添加されていてもよい。
【0010】
アンモニアは、ガス状のものを用いてもよいし、液状のものを用いてもよく、また水や有機溶媒の溶液として用いてもよい。アンモニアの使用量は、シクロヘキサノン1モルに対して、好ましくは1モル以上であり、さらに好ましくは1.5モル以上である。
【0011】
上記アンモキシム化反応は、溶媒中で行ってもよく、この反応溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコールのようなアルコール類や水、またはこれらの混合溶媒が好適に用いられる。
【0012】
本発明では、上記アンモキシム化反応を、チタノシリケートと共に、チタノシリケート以外のケイ素化合物(以下、単に「ケイ素化合物」ということがある)も存在させて実施する。このようにチタノシリケートとケイ素化合物を共存させることにより、チタノシリケート触媒の劣化、特に触媒活性の低下を抑制することができ、またチタノシリケートの使用量を削減することも可能となる。なお、このケイ素化合物は、比較的高価な触媒であるチタノシリケートの劣化を抑制するために使用するものであることから、通常、チタノシリケートより安価なものが採用され、またそれ自身はアンモキシム化反応の触媒としての活性を実質的に持たないものが採用される。
【0013】
ケイ素化合物としては、通常、ケイ素および酸素を含むものが用いられる。具体的には、シリカゲル、ケイ酸、ケイ酸塩の他、結晶性シリカや結晶性メタロシリケートのような、チタノシリケート以外のゼオライトが好適に用いられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0014】
チタノシリケートおよびケイ素化合物は、それぞれ反応混合物の液相に対して、0.1〜10重量%程度の割合で存在させて、懸濁させるのが望ましい。また、ケイ素化合物によるチタノシリケートの触媒活性の低下を抑制する効果は、反応混合物の液相中に10重量%以上の濃度で水が存在する場合に、特に効果的に発揮される。
【0015】
上記アンモキシム化反応は、回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。回分式の場合、例えば、反応器にシクロヘキサノン、アンモニア、チタノシリケート、ケイ素化合物および溶媒を入れ、攪拌下、この中に過酸化水素を供給することにより、反応を行ってもよいし、反応器にシクロヘキサノン、チタノシリケート、ケイ素化合物および溶媒を入れ、攪拌下、この中に過酸化水素およびアンモニアを供給することにより、反応を行ってもよいし、反応器にチタノシリケート、ケイ素化合物および溶媒を入れ、攪拌下、この中にシクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを供給することにより、反応を行ってもよい。連続式の場合、例えば、反応器内にチタノシリケートとケイ素化合物が懸濁した反応混合物を存在させるようにして、この中に、シクロヘキサノン、過酸化水素、アンモニアおよび溶媒を供給しながら、反応器からフィルターを介して反応混合物の液相を抜き出すことにより、反応を行うことができる。なお、反応器は、過酸化水素の分解を防ぐ観点から、グラスライニングやステンレススチール製のものが好ましい。
【0016】
上記アンモキシム化反応の反応温度は通常50〜100℃である。また、反応圧力は常圧でもよいが、反応混合物の液相へのアンモニアの溶解量を高めるためには、加圧下で反応を行うのが好ましく、この場合、窒素やヘリウム等の不活性ガスを用いて、圧力を調整してもよい。
【0017】
得られた反応混合物の後処理操作については、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、反応混合物からチタノシリケートとケイ素化合物を濾過等により分離した後、液相を蒸留に付することにより、シクロヘキサノンオキシムを分離することができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、シクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンオキシムの分析はガスクロマトグラフィーにより行い、この分析結果に基づいてシクロヘキサノンの転化率、シクロヘキサノンオキシムの選択率およびシクロヘキサノンオキシムの収率を算出した。
【0019】
実施例1
容量1リットルのオートクレーブを反応器として用い、この中に、シクロヘキサノンを67g/時間、含水t−ブチルアルコール(水12重量%)を252g/時間、および60重量%過酸化水素水を43g/時間の速度で供給し、かつアンモニアを、反応混合物の液相中に2重量%の濃度で存在するように供給しながら、反応器からフィルターを介して反応混合物の液相を抜き出すことにより、温度85℃、圧力0.25MPa、滞留時間72分の条件で連続式反応を行った。この間、反応器内の反応混合物中には、液相に対し0.9重量%の割合でチタノシリケートを存在させるとともに、液相に対し6重量%の割合でシリカゲル(ワコーゲルLP−20、和光純薬工業(株)より入手)を存在させた。反応開始から5.5時間後に抜き出した液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は99.1%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は99.5%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は98.6%であった。
【0020】
比較例1
反応混合物液相に対するチタノシリケートの割合を1.3重量%とし、シリカゲルを使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、シクロヘキサノンの転化率は98.6%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は99.5%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は98.1%であった。
【0021】
液相に対して0.9重量%のチタノシリケートを使用した実施例1に比べて、この比較例1では、チタノシリケートの使用量が液相に対して1.3重量%と多いにもかかわらず、シリカゲルを使用しなかったため、シクロヘキサノンの転化率が実施例1と同等以下であった。
【0022】
比較例2
反応混合物液相に対するチタノシリケートの割合を1.2重量%とし、シリカゲルを使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、シクロヘキサノンの転化率は93.0%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は99.0%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は92.1%であった。
【0023】
液相に対して0.9重量%のチタノシリケートを使用した実施例1に比べて、この比較例2では、チタノシリケートの使用量が液相に対して1.2重量%と多いにもかかわらず、シリカゲルを使用しなかったため、シクロヘキサノンの転化率が実施例1より6%ほど低かった。
【0024】
実施例2
容量200mlのSUS316製オートクレーブを反応器として用い、この中に、シクロヘキサノン12.8g、25重量%アンモニア水13.2g、含水t−ブチルアルコール(水13重量%)19.7g、チタノシリケート1g、およびケイ酸(半井化学薬品(株)より入手)3gを入れ、攪拌下、80℃に調節した。この中に、30%過酸化水素水14.9gを55分かけて供給した後、35分保持した。反応混合物から触媒を分離し、液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は70.9%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は74.4%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は52.7%であった。
【0025】
比較例3
ケイ酸を使用しなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。その結果、シクロヘキサノンの転化率は68.0%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は70.6%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は48.0%であった。
【0026】
実施例3
反応混合物液相に対するチタノシリケートの割合を1.0重量%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応開始から16時間後に、触媒活性の低下による気相部酸素濃度の急激な上昇が観測された。また、反応開始から15.5時間後に抜き出した液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は85.3%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は96.7%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は82.5%であった。
【0027】
比較例4
反応混合物液相に対するチタノシリケートの割合を1.0重量%とし、シリカゲルを使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応開始から6時間後に、触媒活性の低下による気相部酸素濃度の急激な上昇が観測された。また、反応開始から5.5時間後に抜き出した液相を分析した結果、シクロヘキサノンの転化率は87.6%、シクロヘキサノンオキシムの選択率は90.4%であり、シクロヘキサノンオキシムの収率は79.3%であった。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒のチタノシリケートの劣化が抑制された条件で、シクロヘキサノンを過酸化水素とアンモニアによりアンモキシム化することができ、高収率でシクロヘキサノンオキシムを製造することができる。
Claims (1)
- チタノシリケートとシリカゲルの存在下(ただし、チタノシリケートがケイ素化合物に担持されている場合を除く)に、シクロヘキサノン、過酸化水素およびアンモニアを反応させることを特徴とするシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
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