JP2004306344A - 離型フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含有する離型層が設けられた離型フィルムであり、下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とするプラズマディスプレイパネル製造用離型フィルム。
P−V≦700 …(1)
Si(80℃)≦3.0 …(2)
(上記式中、P−Vは離型フィルムにおける離型面の最大粗さ(nm)、Si(80℃)は離型フィルムの離型面と未処理PETフィルムとを積層後、80℃で熱プレス処理した後の離型層表面から未処理PETフィルム表面へのシリコーン移行量(kcps)を表す)
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は離型フィルムに関するものであり、詳しくはプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する場合がある)製造工程において、誘電体層あるいは隔壁形成用部材として使用されるグリーンシートの成形用として使用される離型フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムがプラズマディスプレイパネルの製造工程において、誘電体層あるいは隔壁形成用部材に用いるグリーンシート成形用として使用されている。例えば、誘電体層製造工程においては、セラミック粉体あるいはガラス粉体およびバインダー、添加剤等から構成されるスラリーを離型フィルムの離型面に塗布乾燥後、グリーンシート表面に保護フィルムを貼り合わせて積層体を得る。その後、保護フィルムあるいは支持体の一方を剥離しながら、加熱ローラーによる熱プレス処理により、ガラス基板上にグリーンシートを転写させる製造方法等からなる(特許文献1〜特許文献3に記載例がある)。
当該用途においては離型フィルムの離型面からグリーンシート表面へのシリコーン移行が極力少ないことが必要とされる。離型フィルムの離型面から、相手方グリーンシート表面へのシリコーン移行が多い場合、シリコーン自体が他の有機樹脂バインダーとの相溶性に乏しいため、グリーンシート表面に転着した場合、当該グリーンシートを例えば誘電体層として用いる場合には、誘電特性のバラツキが大きくなる等の不具合を生じる場合がある。
【0003】
一方、離型フィルムの離型層表面の表面粗度が高い場合には、セラミックスラリー塗工時にスラリーのはじきあるいはピンホールの発生、グリーンシート剥離時にはグリーンシートの破断等の不具合を生じる場合がある。
【0004】
上記不具合を解決するために表面粗度の低いポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムを使用すると、離型フィルムをロール状に巻取った際にブロッキングあるいはシワ等が発生する等の不具合を生じる場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平11−185603号公報
【特許文献3】WO 00/42622号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、プラズマディスプレイパネル製造工程において誘電体層あるいは隔壁形成用部材として使用されるグリーンシート成形用として、離型面が平坦でかつ高温雰囲気下におけるシリコーン移行が極力少ない離型フィルムを提供するものである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなる離型フィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含有する離型層が設けられた離型フィルムであり、下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とするプラズマディスプレイパネル製造用離型フィルムに存する。
P−V≦700 …(1)
Si(80℃)≦3.0 …(2)
(上記式中、P−Vは離型フィルムにおける離型面の最大粗さ(nm)、Si(80℃)は離型フィルムの離型面と未処理PETフィルムとを積層後、80℃で熱プレス処理した後の離型層表面から未処理PETフィルム表面へのシリコーン移行量(kcps)を表す)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
【0010】
ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0011】
一方、共重合ポリエステルの場合は30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0012】
何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
【0013】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0014】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0015】
使用する粒子の平均粒径は、0.1〜5μmの範囲を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を設ける場合等に不具合を生じるようになる。
【0016】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、0.01〜5重量%を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分になる場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルム表面の平滑性が不十分になる場合がある。
【0017】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0018】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、通常、9〜125μm、好ましくは12〜100μmの範囲が好ましい。本発明における離型フィルムはグリーンシート成形用として、支持体だけではなく保護用としても使用可能であり、保護用として用いる場合には、そのフィルム厚みを、支持体として用いるときのフィルム厚み以下とすることが好ましく、具体的には保護用離型フィルムは9〜50μm、さらには9〜38μmの範囲、支持体用離型フィルムは25〜125μm、さらには25〜100μmの範囲がそれぞれ好ましい。さらに、保護用離型フィルムと支持体用離型フィルムとの合計厚みは125μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下であるのが、グリーンシートを介して両面に離型フィルムを貼り合わせた積層体構成からなるロ−ル状製品において、基材の薄膜化に伴う長尺化が図れる点でよい。
【0019】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを二軸方向に延伸する。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常130〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。
【0020】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態でMD方向(あるいは縦方向)およびTD方向(あるいは横方向)に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0021】
上述の延伸方式を使用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動式等、公知の延伸方式を採用することができる。「スクリュー方式」とは、スクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていく方式である。「パンタグラフ方式」とは、パンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていく方式である。「リニアモーター方式」とは、リニアモーター原理を応用し、クリップを個々に制御可能な方式でクリップ間隔を任意に調整することができる利点を有する。
【0022】
さらに同時二軸延伸に関しては二段階以上に分割して行ってもよく、その場合、延伸場所は一つのテンター内で行ってもよいし、複数のテンターを併用してもよい。また、上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。それは以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。上述の塗布延伸法にてポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0023】
本発明の離型フィルムを構成する離型層は、貼り合わせる相手方のグリーンシートに対する離型性を良好とするために、硬化型シリコーン樹脂を含有する必要がある。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じてアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。また、離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0024】
本発明における離型フィルムは離型面の平坦性を確保するために、離型面の最大粗さP−Vが700nm以下である必要があり、好ましくは500nm以下である。
【0025】
本発明の離型フィルムを構成する離型層の塗布量(Si)は、通常0.005〜2g/m2の範囲であり、好ましくは0.005〜1g/m2、さらに好ましくは0.005〜0.5g/m2の範囲がである。離型層の塗布量(乾燥後)が0.005g/m2未満の場合、塗工性の面での安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難な場合がある。一方、塗工量が2g/m2を超える場合、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0026】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、バーコート、ダイコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0027】
また、本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには予めコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0028】
本発明における離型フィルムの剥離力は10〜100mN/cmの範囲が好ましい。さらに好ましくは10〜80mN/cmの範囲である。また、本発明の離型フィルムを保護用として使用する場合、アクリル系粘着テープと離型層表面との剥離力は、支持体として使用する場合のそれ以下とすることが好ましい。具体的には保護用離型フィルムの剥離力は10〜30mN/cmが好ましい。一方、支持体用離型フィルムの剥離力は10〜100mN/cmの範囲が好ましい。上述の範囲を外れる場合、本来剥離する必要の無い場面において離型フィルムが容易に剥離する場合があったり、剥離時に剥離困難になったりする場合がある。
【0029】
本発明の離型フィルムは、高温雰囲気下において、離型フィルムの離型面と未処理PETフィルムを積層後、80℃で熱プレス処理した後の離型層表面から未処理PETフィルム表面へのシリコーン移行量(Si(80℃))が3.0kcps以下である必要があり、好ましくは2.5(kcps)以下である。Si(80℃)が3.0(kcps)を超える場合、離型フィルムの離型面から貼り合わせる相手方グリーンシート表面へのシリコーン移行あるいは転着により、ピンホールが多発する等の不具合を生じる。
【0030】
また、本発明における離型フィルムにおいては用途上、外部からグリーンシートへの異物の混入を防止すること、あるいは剥離帯電を防止すること等が望ましく、その観点から、離型フィルムの何れか一方のフィルム面の表面固有抵抗(R)が1×1012Ω以下、さらには1×1010Ω以下を満足することが好ましい。Rが1×1012Ωを超える場合、離型フィルムをPDP製造工程中において、グリーンシート成形用に用いた場合、何らかの作用により、離型フィルムが帯電した場合、除電が不十分になる等の不具合を生じる場合がある。
【0031】
Rが上述の範囲を満足するための具体的手法として、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止剤を含有する塗布層を設けるのが好ましい。塗布層に含有される帯電防止剤に関して、好ましくは第四級アンモニウム塩基含有カチオン系帯電防止剤がさらに好ましく、中でもイオン化された窒素元素又はピロリジウム環の何れかを主鎖に含有するポリマーを使用することによれば、特に帯電防止性が良好になるのでよい。
【0032】
主鎖にイオン化された窒素元素を含有するポリマーとして、その一例としてアイオネンポリマーが挙げられる。具体例として、特公昭53−23377号公報、特交昭54−10039号公報、特開昭47−34581号公報、特開昭56−76451号公報、特開昭58−93710号公報、特開昭61−18750号公報、特開昭63−68687号公報等の記載例が挙げられる。
詳細はALAN D.WILSON and HAVARD J.PROSSER(Ed.) DEVELOPMENTS IN IONIC POLYMERS−2ELSEVIER APPLIED SCIENCE PUBLISHER、1986年)、IONENE POLYMERS:、PROPERTIES AND APPLICATIONSに記載されている。
【0033】
一方、主鎖にピロリジウム環を含有するポリマーとして、下記構造(A)、(B)を有するポリマーが挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
【化2】
上記式(I)および(II)中、R1 、R2 は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。
【0036】
置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、カルボ低級アルコキシ基、低級アルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリ−(低級アルキル)アンモニウム低級アルキル基等であり、ニトロ基はアルキル基上でのみ、またハロゲン基はフェニル基上でのみ置換可能である。また、R1 、R2 は化学的に結合していてもよく、例えば、( CH2 )m (m=2〜5の整数)、−CH(CH3 )−CH(CH3 )− 、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=CH−、 (CH2 )2O(CH2 )2 、(CH2 )2 O(CH2 )2 等が挙げられる。上記式中のX− は、Cl− 、Br− 、1/2SO4 2− 、または1/3PO4 3−等の無機酸残基、CH3SO4 −、C2H5SO4 −のスルホン酸残基を示す。
【0037】
本発明における(I)のポリマーは、例えば、下記式(III )で表される化合物をラジカル重合触媒を用いて環化重合させることにより得られる。
【0038】
【化3】
【0039】
また、前記(II)式のポリマーは、上記(III )式の化合物を二酸化イオウを溶媒とする系で環化重合させることにより得られる。重合は、溶媒として水あるいはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ホルムアミド、ジオキサン、アセトニトリル、二酸化イオウなどの極性溶媒中で過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、第3級ブチルパーオキサイド等の重合開始剤により、公知の方法で実施できるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明における主鎖にピロリジウム環を有するポリマーは、上記(III )式の化合物と重合性のある炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を共重合成分としてもよい。
【0041】
本発明における主鎖にピロリジウム環を有するポリマーの分子量は、好ましくは500〜1000000、さらに好ましくは1000〜500000である。ポリマーの分子量が500未満の場合は、帯電防止効果はあるものの、塗膜の強度が弱かったり、ブロッキングしやすかったりする傾向がある。ポリマーの分子量が1000000より高い場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する傾向がある。
【0042】
さらに本発明における離型フィルムを構成する塗布層中には塗布層の塗膜耐久性、造膜性等を考慮して、バインダーポリマーを含有するのが好ましい。塗布層に含有されるバインダーポリマーの具体例として、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、塩素系ポリマー(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリオレフィン等が挙げられる。それらの中でも、塗布層を塗布延伸法により塗設する場合には、ノニオン系、カチオン系、両性系の水溶液または水分散体として使用可能な有機ポリマーが好ましい使用形態として挙げられる。
【0043】
塗布層中に含有されるバインダーポリマーの含有量は特に限定されるものではないが、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは10〜80重量%の範囲がよい。バインダーポリマーの含有量が10重量%未満では、塗布層の造膜性が不十分になる等の不具合を生じる場合がある。
【0044】
さらに塗布層には架橋剤を併用してもよく、具体例としては、メチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネートカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋成分はバインダーポリマーと予め結合していてもよい。
【0045】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、無機系粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、バリウム塩等が挙げられる。さらに必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0046】
本発明における離型フィルムを構成する塗布層の塗布量(乾燥後)は通常0.005〜1g/m2、好ましくは0.01〜0.5g/m2、さらに好ましくは0.03〜0.5g/m2の範囲である。塗布量が0.005g/m2未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、一方、1g/m2を超えて塗布した場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0048】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0049】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置((株)島津製作所(製)SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0050】
(3)離型フィルムの剥離力(F)の評価
測定試料の離型層に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0051】
(4)離型層の塗布量(Si)の測定
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、離型フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CH3)2のユニットとしての塗布量(Si)(g/m2)を算出した。
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
【0052】
(5)離型フィルムの離型面の最大粗さ(P−V)評価
直接位相検出干渉法、いわゆるマイケルソンの干渉を利用した2光束干渉法を用いた、非接触表面計測システム「マイクロマップ社製Micromap512)」により、試料フィルムの離型面の最大粗さ(P−V)を計測した。なお、測定波長は554nmとし、対物レンズは20倍を用いて、20°視野計測し、その平均値を採用した。
【0053】
(6)離型フィルムの残留接着率の評価
▲1▼残留接着力
試料フィルムの離型面に日東電工(製)No.31B粘着テープを2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃で1時間加熱処理する。次いで、圧着したサンプルからNo.31B粘着テープを剥がし、JIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力を測定する。これを残留接着力とする。
【0054】
▲2▼基礎接着力
残留接着力の場合と同じテープ(No.31B)を用いてJIS−C−2107に準じてステンレス板に粘着テープを圧着して、同様の要領にて測定を行う。この時の値を基礎接着力とする。これらの測定値を用いて、下記式に基づいて残留接着率を求める。
残留接着率(%)=(残留接着力/基礎接着力)×100
なお、測定は20±2℃、65±5%RHにて行う。
【0055】
(7)離型フィルムの離型面からのシリコーン移行性(Si(80℃),Si(常温))の評価(実用特性代用評価)
試料フィルムの離型面と未処理PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製ダイアホイル「T100タイプ−50μm」)を積層した後、80℃で、10kg/cm2の荷重で、30分間熱プレス処理をした。また、常温の場合には、温度をかけない以外は上記と同様にした。その後、(4)項の要領にて試料フィルムの離型面と接する側の未処理PETフィルム表面の珪素元素量を測定した。なお、本評価の前に予め使用する試料フィルムおよび未処理PETフィルムの各フィルム面の珪素元素量は測定しておく。
【0056】
(8)離型フィルムの帯電防止性(R)の評価
日本ヒューレット・パッカード社製の測定電極であるHP16008B(商品名)を23℃、50%RH雰囲気下にて測定試料を設置し、100Vの電圧を印加し、同社高抵抗計HP4339B(商品名)で表面固有抵抗を測定した。
【0057】
(9)誘電体層形成性評価(実用特性代用評価)
試料フィルム(幅1000mm)の離型面に下記組成からなるスラリーを塗布し、100℃、3分間熱処理後に塗布量(乾燥後)が60g/m2のグリーンシートを成形した。その後、グリーンシート表面に保護用離型フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製ダイアホイル「MRF25(25μmシリコーンコートフィルム)」)を貼り合わせた。次に保護用離型フィルムを剥離しながら、試料フィルム面側より加熱ロ−ラーにて加熱ロール表面温度80℃、ロール圧3kg/cm、加熱ローラー移動速度1m/分の条件下、熱転写によりガラス基板上にグリーンシートを転写した後に試料フィルムを剥離した。グリーンシートを積層したガラス基板を380℃、10分間焼成後、得られた誘電体層表面(測定対象面積:2m2)を走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製)による表面観察を行い、下記判定基準により判定を行った。
【0058】
《スラリー組成》
・ガラス粉体(PbO−B2O3−SiO2=70重量%:10重量%:20重量%) 100部:・バインダー樹脂(組成:ポリメチルメタアクリレート:重量平均分子量(Mw)=4万GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析による)) 30部:・粘着付与剤(エチレングリコールジアクリレート) 5部:・酢酸エチル/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 60部
【0059】
《判定基準》
▲1▼深さ10μm以上のクレーター(凹み)発生状況
○…誘電体層表面に深さ10μm以上のクレーター(凹み)が2個/m2以下
△…誘電体層表面に深さ10μm以上のクレーター(凹み)が3〜5個/m2
×…誘電体層表面に深さ10μm以上のクレーター(凹み)が6個/m2以上
×が実用上、問題あるレベルである。
▲2▼深さ3μm以上10μm未満のクレーター(凹み)発生状況
○…少ない(全クレーター数の1割未満)
×…多い(全クレーター数の1割以上)
【0060】
〈ポリエステルの製造〉
製造例1(ポリエチレンテレフタレートA1)
テレフタル酸86部、エチレングリコール70部を反応器にとり、約250℃で4時間エステル交換反応を行った。三酸化アンチモンを0.03部およびリン酸0.01部、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子を0.1部加え、250℃から285℃まで徐々に昇温すると共に圧力を徐々に減じて0.5mmHgとした。4時間後、重合反応を停止し、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレートA1を得た。
【0061】
製造例2(ポリエチレンテレフタレートA2)
製造例1において、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子0.1部を用いる 代わりに平均粒径0.1μmの二酸化珪素粒子0.1部を用いる以外は製造例2と同様にして製造し、ポリエチレンテレフタレートA2を得た。
【0062】
製造例3(ポリエチレンテレフタレートA3)
製造例1において、平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子0.1部を用いる 代わりに平均粒径1.5μmの二酸化珪素粒子6部を用いる以外は製造例2と 同様にして製造し、ポリエチレンテレフタレートA3を得た。
【0063】
〈ポリエステルフィルムの製造〉
製造例4(PETフィルムF1)
製造例2で製造したポリエチレンテレフタレートA2を180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し、静電印加密着法を用いて、表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られたシートをテンターに導き、90℃で縦方向に3.5倍、横方向に3.8倍、同時二軸延伸した後、230℃にて熱固定を行い、厚さ38μmのPETフィルムF1を得た。
【0064】
製造例5(PETフィルムF2)
製造例4において、フィルム厚みが異なる以外は製造例4と同様にして製造し、厚さ50μmのPETフィルムF2を得た。
【0065】
製造例6(PETフィルムF3)
製造例4において、フィルム厚みが異なる以外は製造例4と同様にして製造し、厚さ25μmのPETフィルムF3を得た。
【0066】
製造例7(PETフィルムF4)
製造例2で製造したポリエチレンテレフタレートA2を180℃で4時間不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、85℃で縦方向に3.5倍延伸した。その後、下記組成からなる塗布剤を塗布した後、フィルムをテンターに導き、横方向に3.7倍延伸した後、230℃にて熱固定を行い、塗工量が0.06g/m2(乾燥後)の塗布層が設けられた、厚さ38μmのPETフィルムF4を得た。
【0067】
《塗布剤組成》
帯電防止剤(第一工業製薬社製:シャロールDC−303P) 85重量%:PVA系樹脂(けん化度=88モル%、重合度=500のポリビニルアルコール) 10重量%:粒子(平均粒径0.05μmのシリカゾル) 5重量%
【0068】
製造例8(PETフィルムF5)
製造例7においてフィルム厚みが異なる以外は製造例7と同様にして製造し、塗布層が設けられた、厚さ50μmのPETフィルムF5を得た。
【0069】
製造例9(PETフィルムF6)
製造例7においてフィルム厚みが異なる以外は製造例7と同様にして製造し、塗布層が設けられた、厚さ25μmのPETフィルムF6を得た。
【0070】
製造例10(PETフィルムF7)
製造例4において、ポリエチレンテレフタレートA2の代わりにポリエチレンテレフタレートA1を用いる以外は製造例4と同様にして製造し、塗布層が設けられた、厚さ38μmのPETフィルムF7を得た。
【0071】
製造例11(PETフィルムF8)
製造例4において、ポリエチレンテレフタレートA2の代わりにポリエチレンテレフタレートA3を用いる以外は製造例4と同様にして製造し、塗布層が設けられた、厚さ38μmのPETフィルムF8を得た。
【0072】
実施例1
製造例8で得られたPETフィルムF5の塗布層が設けられていない面に下記離型剤組成からなる離型層を塗布量(乾燥後)が0.1g/m2になるように設けて、離型フィルムを得た。
【0073】
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:X−62−5508) 100部:硬化剤(信越化学製:PL−5000) 5部:トルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1) 2000部
【0074】
実施例2
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF4を使用し、塗布層が設けられていない面に離型層を設ける以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0075】
実施例3
実施例1において、離型層を塗布層上に設ける以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0076】
実施例4
実施例1においてPETフィルムF5の代わりに三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製「ダイアホイルT100G(G01)タイプ−50μm」を使用し、塗布層が設けられていない面に離型層を設ける以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0077】
実施例5
実施例1において、PETフィルムF5の代わりに三菱化学ポリエステルフィルム(株)社製「ダイアホイルT100タイプ−50μm」を使用する以外は 実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0078】
実施例6
実施例1において、離型剤組成を下記組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:X−62−9201A)100部:硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:X−62−9201B) 25部:硬化剤(信越化学製:PL−50T) 5部:トルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1) 2000部
【0079】
実施例7
実施例2において、離型剤組成を下記組成に変更する以外は実施例2と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0080】
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:KS−847H) 100部:硬化剤(信越化学製:PL−50T) 5部:トルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1) 2000部
【0081】
実施例8
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF6を使用する以外は実施例7と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0082】
実施例9
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF1を使用する以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0083】
実施例10
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF3を使用する以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0084】
実施例11
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF2を使用する以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0085】
実施例12
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF7を使用する以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。
【0086】
比較例1
実施例1において、離型剤組成を下記組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムはシリコーン移行が多く、本発明の用途には不適当であった。
【0087】
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂(信越化学製:KS−778) 100部:硬化剤(信越化学製:PL−50T) 5部:トルエン/MEK混合溶媒(混合比率は1:1) 2000部
【0088】
比較例2
実施例1において、PETフィルムF5の代わりにPETフィルムF8を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムは離型面の粗度が大きく、得られるグリーンシート面の平坦性が不十分な状況にあった。
上記実施例および比較例で得られた各フィルムの特性を表1および2にまとめて示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【発明の効果】
本発明の離型フィルムによれば、プラズマディスプレイパネル製造工程において、誘電体層あるいは隔壁形成用部材として使用されるグリーンシート成形用として、離型面が平坦でかつ高温雰囲気下、グリーンシート表面へのシリコーン移行が極力少ない離型フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
Claims (1)
- ポリエステルフィルムの片面に硬化型シリコーン樹脂を含有する離型層が設けられた離型フィルムであり、下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とするプラズマディスプレイパネル製造用離型フィルム。
P−V≦700 …(1)
Si(80℃)≦3.0 …(2)
(上記式中、P−Vは離型フィルムにおける離型面の最大粗さ(nm)、Si(80℃)は離型フィルムの離型面と未処理PETフィルムとを積層後、80℃で熱プレス処理した後の離型層表面から未処理PETフィルム表面へのシリコーン移行量(kcps)を表す)
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