JP2004305024A - 酵素活性の調節方法および試薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】酵素の失活を伴わずかつ簡便な酵素活性の調節が可能となる方法、試薬を提供する。
【解決手段】補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、酵素活性を調節する方法、補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、物質を酵素的に測定する方法、ならびに、少なくとも補因子と酵素および基質、ならびに当該補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む物質を酵素的に測定するための試薬。
【解決手段】補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、酵素活性を調節する方法、補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、物質を酵素的に測定する方法、ならびに、少なくとも補因子と酵素および基質、ならびに当該補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む物質を酵素的に測定するための試薬。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いた酵素活性を調節する方法、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体用いた無機リン酸の酵素的測定方法、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む酵素的測定用試薬、ならびにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を含有する無機リン酸の酵素的測定試薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酵素は、改めて記すまでもなく、生体触媒として種々の産業分野において応用されている。例えば、デンプンを原料とした単糖や二糖の生産には微生物由来のアミラーゼが使用されている。また、洗剤用酵素としてアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼなどが汚れの原因分子を分解する反応の触媒として既に商業的に成功している。一方、診断薬やライフサイエンス研究用の各種試薬などにも酵素は役立てられている。例えば、血糖測定用診断薬にはグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼなどが使用されており、中性脂肪測定用診断薬にはリパーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール3リン酸オキシダーゼなどが使用されている。また、DNAポリメラーゼやDNAリガーゼ、フォスファターゼ、各種制限エンドヌクレアーゼなどが研究用試薬として、あるいはDNA診断用試薬として使用されている。
【0003】
酵素反応に限らず、全ての化学反応において反応状態の制御は反応基質から生成物への流れを潤滑に進めるために重要な要素である。特に、産業分野においては品質管理面、製造効率面等さまざまな面から反応の制御が重視される。酵素反応を用いた種々のプロセスにおいて、反応を制御する直接の方法は酵素活性の調節になる。従来より、酵素的性質の情報を基に、温度、pH、圧力など外的条件を特定の値にすることにより酵素活性を調節する方法が、理論的あるいは経験的にとられてきた。例えば、デンプンからのグルコースの生産では初期反応を90℃以上、第二反応を60℃程度と用いる酵素に合わせて条件を調節しシステムを最適化している。また、アルカリ性フォスファターゼや制限エンドヌクレアーゼなどのライフサイエンス研究用酵素も後工程に対する影響を考慮して、熱処理等の方法で活性を抑制することが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、このような方法では酵素活性を所望の状態に変化させる際に、変化の度合いが大きい場合は多くの時間がかかり、エネルギー的にもコストがかかることになる。一例として、酵素活性を実質的にオフにする場合、高温へのシフトあるいはpHを酸性またはアルカリ性へ大きくシフトする必要がある。しかも、一般的にこのような方法では酵素の失活を伴うため、再度酵素活性をオンにすることができない。
【0005】
このような背景から、酵素自身の失活を伴わず、簡便に酵素活性を調節する方法、試薬の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況を鑑み、本発明の目的は、酵素の失活を伴わずかつ簡便な酵素活性の調節が可能となる方法、試薬を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討を行い、補因子が反応に関与する酵素においては補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いることにより、酵素活性の調節が可能となることを見い出した。また、本発明者らは上記発明を基に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を開発した。本発明を用いることにより、補因子が関与する酵素活性を調節する方法の基礎研究分野及び産業分野への応用が可能となった。
【0008】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
項1. 補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、酵素活性を調節する方法。
項2. 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物が、少なくとも当該補因子と酵素および基質を有する溶液中に含まれることを特徴とする 項1記載の酵素活性を調節する方法。
項3. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補因子とする、 項1または2記載の酵素活性を調節する方法。
項4. キレート化合物としてポリアミン亜鉛錯体を用いる、 項1〜3記載の酵素活性を調節する方法。
項5. キレート化合物としてポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いる、 項1〜3記載の酵素活性を調節する方法。
項6. 補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、物質を酵素的に測定する方法。
項7. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合し、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することを特徴とする、 項6記載の無機リン酸の酵素的測定方法。
項8. 少なくとも補因子と酵素および基質、ならびに当該補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む物質を酵素的に測定するための試薬。
項9. 補因子がニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸である、 項8記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
項10. 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物がポリアミン亜鉛錯体である、 項8または9記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
項11. 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物がポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体である、 項8または9記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
項12. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合し、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する、無機リン酸を酵素的に測定するための試薬。
【0009】
本発明は、酵素反応を調節する試薬として補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いるが、ポリアミン亜鉛錯体を用いることが好ましい。更に、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いることがより好ましい。更に、二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体を用いることがより好ましい。このような化合物の典型としては、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolato− dizinc(II)complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし,プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛(2+)イオンの架橋配位子になっている)
【0010】
【化1】
【0011】
があるが、本発明はこの化合物に限定されるものではない。
【0012】
本発明は、モノエステルリン酸部位を有する補因子が酵素活性に関与している際の酵素活性の調節方法を提供するものである。ここでいう酵素活性への関与とは、酵素反応の基質としての働きや電子やプロトン、特定の官能基などを伝達するメディエーターとしての働きを示している。
【0013】
本発明は、従来の方法が、酵素活性を所望の状態に変化させる際に、変化の度合いが大きい場合は多くの時間がかかり、エネルギー的にもコストがかかることや、酵素の失活を伴うため、再度酵素活性をオンにすることができないなどの問題点があることに鑑みなされたという側面がある。本発明により、温度やpHを変化させる必要のない、かつ直接酵素に変化を与えることがないので酵素の失活を伴わず再度酵素活性をオンにすることができる、酵素活性の調節方法を提供することができる。
【0014】
本発明の効果については予期し得るものではないが、ポリアミン亜鉛錯体、具体的にはポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、より具体的には実施形態に含まれる二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体、更にこのような化合物の典型としては、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolatodizinc(II) complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし,プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛(2+)イオンの架橋配位子になっている)
【0015】
【化2】
【0016】
が、補因子のモノエステルリン酸部位と可逆的に結合するという性質に基づいている。ポリアミン亜鉛錯体が補因子のモノエステルリン酸部分に結合すると、その部分はプラス電荷を持つ亜鉛錯体がぶら下がった構造をとると予想される。この立体障害により酵素反応が阻害されると考えられる。
【0017】
このような化学原理に基づいて、最適な酵素活性調節条件を確立し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、対象となる酵素としては、モノエステルリン酸部位を有する補因子が反応に関与するものであれば特に制限はないが、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、カルボキシラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ等に属する各種酵素が好ましい。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、NADPHオキシダーゼ、リンゴ酸酵素、アセチルCoAカルボキシラーゼ、リブロース1,5二リン酸カルボキシラーゼ、プロテインキナーゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ、プロテインホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなど多種多様な酵素が好ましい範疇に入る。
【0019】
本発明において、酵素活性を調節する条件としては特に限定されず、対象となる酵素にとって一般的な酵素反応条件が好ましく用いられる。すなわち、本発明では、対象となる酵素及びモノエステルリン酸部位を有する補因子を含む反応系に特定の性質を有するキレート化合物を添加することで、該キレート化合物が補因子のモノエステルリン酸部位と可逆的に結合し、酵素反応を抑制する。したがって、温度、pHなどの外的条件を変化させる必要はない。例えば、37℃、pH7の条件にて行われている酵素反応を所望のレベルへと抑制するためには、この条件のまま、本発明のキレート化合物を添加すればよい。
【0020】
本発明における基質としては、対象となる酵素によって反応を受ける化合物全般を指す。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼではグルコースが、グルタミン酸デヒドロゲナーゼではグルタミン酸が挙げられる。
【0021】
本発明において、対象となる補因子としては、モノエステルリン酸部位を有するものであれば特に制限はないが、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、カルボキシラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ等に属する各種酵素が一般的に利用する補因子が好ましい。そのようなものとしては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド、アデノシントリリン酸、アデノシンジリン酸、アデノシンモノリン酸、グアノシントリリン酸、デオキシアデノシントリリン酸などが挙げられる。本発明の実施例においては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸が用いられている。
【0022】
本発明で用いられる、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物としては、補因子のモノエステルリン酸部位に対して結合能を有する錯体であればよく、特に制限はないが、好ましくは、ポリアミン亜鉛錯体が挙げられる。具体的には、例えば、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体が挙げられる。更に具体的には、二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体が挙げられる。更に具体的には、本発明者らが製作した1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolato− dizinc(II)complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし,プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛(2+)イオンの架橋配位子になっている)
【0023】
【化3】
【0024】
が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる錯体は、一般的な化学合成技術を利用して合成することが可能であるが、市販の化合物を原料としても合成することができる。例えば、化合物1(Zn2L)は,市販の1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパンと酢酸亜鉛を原料として次の方法により合成することができる。
【0026】
1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパン4.4mmolのエタノール溶液(100ml)に10M水酸化ナトリウム水溶液(0.44ml)を加え,次いで酢酸亜鉛二水和物(9.7mmol)を加える。溶媒を減圧留去することにより褐色のオイルを得ることができる。この残渣に水10mlを加えて溶解後,1M過塩素酸ナトリウム水溶液(3当量)を70℃に加温しながら滴下して加え、析出する無色の結晶を濾取し,加熱乾燥することにより化合物1
【0027】
【化4】
【0028】
の構造式であらわされる酢酸イオン付加体の二過塩素酸塩(Zn2L−CH3COO−・2ClO4 −・H2O)を高収率で得ることができる。この結晶は一分子の結晶水を含んでいる。
【0029】
元素分析,核磁気共鳴分析,および赤外線分析により,上記化学構造を確認することができる。下記にそのデータの事例を示す。
元素分析の理論値・・・C29H34Cl2N6O12Zn2: C, 40.49; H, 3.98; N, 9.77
元素分析の実測値・・・C, 40.43; H, 3.86; N, 9.85
1H NMR (500MHz, DMSO−d6)の結果
δ2.04 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 2.53 (3H, s, CH3), 3.06 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 3.74 (1H, t, J = 10.4 Hz, CCHC), 4.02 − 4.34 (8H, m, ArCH2), 7.54 − 7.65 (8H, m, ArH), 8.06 − 8.12 (4H, m, ArH), 8.58 (4H, m, ArH)
13C NMR (125MHz, DMSO−d6)の結果
δ58.0, 60.1, 62.0, 64.6, 122.7, 124.3, 124.4, 124.4, 139.9, 140.4, 147.0, 147.2, 154.7, 155.1
赤外線分析の結果
1609, 1576, 1556(C=O), 1485, 1439, 1266, 1108(ClO4 −), 1090(ClO4 −), 770, 625 cm−1
【0030】
上記のデータは,化合物1に対して酢酸イオンが1当量と過塩素酸イオンが2当量をカウンターイオンとしてもつ物質であることを示している。
【0031】
なお、本発明におけるキレート化合物の使用濃度としては特に限定されず、用いる酵素、補因子及び基質の濃度に依存して変更されるべきものであるが、通常0.01〜100mmol/ml、特に0.1〜10mmol/mlの範囲とすることが好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(錯体の合成)
補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物として、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolato− dizinc(II)complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(フォスタグ)を、以下のように調製した。
1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパン4.4mmolのエタノール溶液(100ml)に10M水酸化ナトリウム水溶液(0.44ml)を加え,次いで酢酸亜鉛二水和物(9.7mmol)を加えた。溶媒を減圧留去して褐色のオイルを得た。この残渣に水10mlを加えて溶解した後,1M過塩素酸ナトリウム水溶液(3当量)を70℃に加温しながら滴下して加えた。析出する無色の結晶を濾取し,加熱乾燥して化合物1の酢酸イオン付加体の二過塩素酸塩(Zn2L−CH3COO−・2ClO4 −・H2O)を得た。この結晶は一分子の結晶水を含んでいる。収量は3.0g,収率は79%であった。
元素分析,核磁気共鳴分析,および赤外線分析により,上記化学構造を確認した。下記にそのデータを示す。
元素分析によると,元素分析の理論値はC29H34Cl2N6O12Zn2: C, 40.49; H, 3.98; N, 9.77であるが,元素分析の実測値はC, 40.43; H, 3.86; N, 9.85であった。
1H NMR (500MHz, DMSO−d6)の結果は,δ2.04 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 2.53 (3H, s, CH3), 3.06 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 3.74 (1H, t, J = 10.4 Hz, CCHC), 4.02 − 4.34 (8H, m, ArCH2), 7.54 − 7.65 (8H, m, ArH), 8.06 − 8.12 (4H, m, ArH), 8.58 (4H, m, ArH)であった。
13C NMR (125MHz, DMSO−d6)の結果は,δ58.0, 60.1, 62.0, 64.6, 122.7, 124.3, 124.4, 124.4, 139.9, 140.4, 147.0, 147.2, 154.7, 155.1であった。
赤外線分析の結果は,1609, 1576, 1556(C=O), 1485, 1439, 1266, 1108(ClO4 −), 1090(ClO4 −), 770, 625 cm−1であった。
【0034】
(実施例1)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にモノエステルリン酸部位を有するニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPと略す)、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物に1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolatodizinc(II) complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(フォスタグ)を用いた系にて検討を実施した。使用したグルコースデヒドロゲナーゼの酵素活性測定方法と酵素活性の定義は以下の通りである。
0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)2.6ml、1.5M D−グルコース水溶液0.3ml、80mg/mlニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水溶液0.1mlをキュベットに調製し、37℃で約5分間予備加温する。次いで、酵素溶液0.05mlを添加し、ゆるやかに混和後、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド濃度を反映する340nmの吸光度の変化を5〜6分間記録し、その初期直線部分から1分間あたりの吸光度変化を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、同様にして吸光度変化を測定する。このようにして求めた吸光度変化速度から次式に従い酵素活性を算出する。上記条件下で1分間に1マイクロモルの還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する酵素量を1単位(1U)とする。
Vmax・Km
Vmax及びKmは、常法に従いラインウィーバーバークプロット等から求める。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPHと略す)濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、150mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)を含む水溶液を調製した。第二試薬としては、1.5mMのフォスタグ、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)を含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として0.02U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:250μlと酵素試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、第二試薬:50μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図1に示す。
これにより、酵素反応系に第二試薬、すなわちモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)を加えることにより、酵素活性を低下させることが可能であることが分かる。
【0035】
(比較例1)
補因子としてNADPではなく、モノエステルリン酸部位を有しないニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADと略す)を用い、実施例1と同様の検討を実施した。本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADHと略す)濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
結果を図1に示す。
これにより、補因子がNADの場合は酵素反応系に第二試薬、すなわちモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を加えても、酵素活性を低下させることは不可能であることが分かる。
【0036】
(実施例2)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を10秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、150mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.3mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、5mMのリン酸カリウム(pH7.5)を含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として0.02U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:250μlと酵素試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、第二試薬:50μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図1に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)を含む酵素反応系では酵素活性が阻害されているが、ここに第二試薬、すなわち無機リン酸を加えることにより、酵素活性を回復させることが可能であることが分かる。
【0037】
(実施例3)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、および0.1〜1mMのフォスタグをそれぞれ含む水溶液を調製した。第二試薬としては、蒸留水を用いた。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図2に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、キレート化合物の濃度により調節することが可能であることが分かる。
【0038】
(実施例4)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.23mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、0〜4mMのリン酸カリウム(pH7.5)をそれぞれ含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図3に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、無機リン酸の濃度により調節することが可能であることが分かる。
また、図3におけるそれぞれの酵素反応の初期速度を計算し、無機リン酸濃度に対してプロットした。
結果を図4に示す。
これにより、酵素反応速度が無機リン酸濃度に依存することが分かる。すなわち、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、酵素反応溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0039】
(実施例5)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.24mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、0〜4mMのリン酸カリウム(pH7.5)をそれぞれ含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図5に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、無機リン酸の濃度により調節することが可能であることが分かる。
また、図5におけるそれぞれの酵素反応の初期速度を計算し、無機リン酸濃度に対してプロットした。
結果を図6に示す。
これにより、酵素反応速度が無機リン酸濃度に依存することが分かる。すなわち、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、酵素反応溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0040】
(実施例6)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.25mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、0〜4mMのリン酸カリウム(pH7.5)をそれぞれ含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図7に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、無機リン酸の濃度により調節することが可能であることが分かる。
また、図7におけるそれぞれの酵素反応の初期速度を計算し、無機リン酸濃度に対してプロットした。
結果を図8に示す。
これにより、酵素反応速度が無機リン酸濃度に依存することが分かる。すなわち、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、酵素反応溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0041】
【発明の効果】
このように、本発明は、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いた酵素活性を調節する方法、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体用いた無機リン酸の酵素的測定方法、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む酵素的測定用試薬、ならびにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を含有する無機リン酸の酵素的測定試薬を開示するものである。
【0042】
本発明によれば、安価であり、かつ簡便に、酵素の失活を伴わず酵素活性の調節が可能となる方法、試薬を提供することができる。すなわち、補因子が反応に関与する酵素においては補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いることにより、酵素活性の調節を行う方法、試薬を提供することができる。また、本発明によれば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0043】
本発明を用いることにより、補因子が関与する酵素活性を調節する方法の基礎研究分野及び産業分野への応用が可能となる。また、本発明は手法が簡潔であるため、各種自動分析装置への適用も容易であり、多数の検体処理にも適している。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1、実施例2の結果を示す。
【図2】実施例3の結果を示す。
【図3】実施例4における酵素反応の吸光度変化の結果を示す。
【図4】実施例4における酵素反応の初速度と無機リン酸濃度との関係を示す。
【図5】実施例5における酵素反応の吸光度変化の結果を示す。
【図6】実施例5における酵素反応の初速度と無機リン酸濃度との関係を示す。
【図7】実施例6における酵素反応の吸光度変化の結果を示す。
【図8】実施例6における酵素反応の初速度と無機リン酸濃度との関係を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いた酵素活性を調節する方法、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体用いた無機リン酸の酵素的測定方法、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む酵素的測定用試薬、ならびにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を含有する無機リン酸の酵素的測定試薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酵素は、改めて記すまでもなく、生体触媒として種々の産業分野において応用されている。例えば、デンプンを原料とした単糖や二糖の生産には微生物由来のアミラーゼが使用されている。また、洗剤用酵素としてアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼなどが汚れの原因分子を分解する反応の触媒として既に商業的に成功している。一方、診断薬やライフサイエンス研究用の各種試薬などにも酵素は役立てられている。例えば、血糖測定用診断薬にはグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼなどが使用されており、中性脂肪測定用診断薬にはリパーゼ、グリセロールキナーゼ、グリセロール3リン酸オキシダーゼなどが使用されている。また、DNAポリメラーゼやDNAリガーゼ、フォスファターゼ、各種制限エンドヌクレアーゼなどが研究用試薬として、あるいはDNA診断用試薬として使用されている。
【0003】
酵素反応に限らず、全ての化学反応において反応状態の制御は反応基質から生成物への流れを潤滑に進めるために重要な要素である。特に、産業分野においては品質管理面、製造効率面等さまざまな面から反応の制御が重視される。酵素反応を用いた種々のプロセスにおいて、反応を制御する直接の方法は酵素活性の調節になる。従来より、酵素的性質の情報を基に、温度、pH、圧力など外的条件を特定の値にすることにより酵素活性を調節する方法が、理論的あるいは経験的にとられてきた。例えば、デンプンからのグルコースの生産では初期反応を90℃以上、第二反応を60℃程度と用いる酵素に合わせて条件を調節しシステムを最適化している。また、アルカリ性フォスファターゼや制限エンドヌクレアーゼなどのライフサイエンス研究用酵素も後工程に対する影響を考慮して、熱処理等の方法で活性を抑制することが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、このような方法では酵素活性を所望の状態に変化させる際に、変化の度合いが大きい場合は多くの時間がかかり、エネルギー的にもコストがかかることになる。一例として、酵素活性を実質的にオフにする場合、高温へのシフトあるいはpHを酸性またはアルカリ性へ大きくシフトする必要がある。しかも、一般的にこのような方法では酵素の失活を伴うため、再度酵素活性をオンにすることができない。
【0005】
このような背景から、酵素自身の失活を伴わず、簡便に酵素活性を調節する方法、試薬の開発が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況を鑑み、本発明の目的は、酵素の失活を伴わずかつ簡便な酵素活性の調節が可能となる方法、試薬を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討を行い、補因子が反応に関与する酵素においては補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いることにより、酵素活性の調節が可能となることを見い出した。また、本発明者らは上記発明を基に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を開発した。本発明を用いることにより、補因子が関与する酵素活性を調節する方法の基礎研究分野及び産業分野への応用が可能となった。
【0008】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
項1. 補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、酵素活性を調節する方法。
項2. 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物が、少なくとも当該補因子と酵素および基質を有する溶液中に含まれることを特徴とする 項1記載の酵素活性を調節する方法。
項3. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補因子とする、 項1または2記載の酵素活性を調節する方法。
項4. キレート化合物としてポリアミン亜鉛錯体を用いる、 項1〜3記載の酵素活性を調節する方法。
項5. キレート化合物としてポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いる、 項1〜3記載の酵素活性を調節する方法。
項6. 補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、物質を酵素的に測定する方法。
項7. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合し、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することを特徴とする、 項6記載の無機リン酸の酵素的測定方法。
項8. 少なくとも補因子と酵素および基質、ならびに当該補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む物質を酵素的に測定するための試薬。
項9. 補因子がニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸である、 項8記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
項10. 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物がポリアミン亜鉛錯体である、 項8または9記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
項11. 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物がポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体である、 項8または9記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
項12. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合し、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する、無機リン酸を酵素的に測定するための試薬。
【0009】
本発明は、酵素反応を調節する試薬として補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いるが、ポリアミン亜鉛錯体を用いることが好ましい。更に、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いることがより好ましい。更に、二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体を用いることがより好ましい。このような化合物の典型としては、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolato− dizinc(II)complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし,プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛(2+)イオンの架橋配位子になっている)
【0010】
【化1】
【0011】
があるが、本発明はこの化合物に限定されるものではない。
【0012】
本発明は、モノエステルリン酸部位を有する補因子が酵素活性に関与している際の酵素活性の調節方法を提供するものである。ここでいう酵素活性への関与とは、酵素反応の基質としての働きや電子やプロトン、特定の官能基などを伝達するメディエーターとしての働きを示している。
【0013】
本発明は、従来の方法が、酵素活性を所望の状態に変化させる際に、変化の度合いが大きい場合は多くの時間がかかり、エネルギー的にもコストがかかることや、酵素の失活を伴うため、再度酵素活性をオンにすることができないなどの問題点があることに鑑みなされたという側面がある。本発明により、温度やpHを変化させる必要のない、かつ直接酵素に変化を与えることがないので酵素の失活を伴わず再度酵素活性をオンにすることができる、酵素活性の調節方法を提供することができる。
【0014】
本発明の効果については予期し得るものではないが、ポリアミン亜鉛錯体、具体的にはポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、より具体的には実施形態に含まれる二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体、更にこのような化合物の典型としては、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolatodizinc(II) complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし,プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛(2+)イオンの架橋配位子になっている)
【0015】
【化2】
【0016】
が、補因子のモノエステルリン酸部位と可逆的に結合するという性質に基づいている。ポリアミン亜鉛錯体が補因子のモノエステルリン酸部分に結合すると、その部分はプラス電荷を持つ亜鉛錯体がぶら下がった構造をとると予想される。この立体障害により酵素反応が阻害されると考えられる。
【0017】
このような化学原理に基づいて、最適な酵素活性調節条件を確立し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、対象となる酵素としては、モノエステルリン酸部位を有する補因子が反応に関与するものであれば特に制限はないが、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、カルボキシラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ等に属する各種酵素が好ましい。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、NADPHオキシダーゼ、リンゴ酸酵素、アセチルCoAカルボキシラーゼ、リブロース1,5二リン酸カルボキシラーゼ、プロテインキナーゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ、プロテインホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼ、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなど多種多様な酵素が好ましい範疇に入る。
【0019】
本発明において、酵素活性を調節する条件としては特に限定されず、対象となる酵素にとって一般的な酵素反応条件が好ましく用いられる。すなわち、本発明では、対象となる酵素及びモノエステルリン酸部位を有する補因子を含む反応系に特定の性質を有するキレート化合物を添加することで、該キレート化合物が補因子のモノエステルリン酸部位と可逆的に結合し、酵素反応を抑制する。したがって、温度、pHなどの外的条件を変化させる必要はない。例えば、37℃、pH7の条件にて行われている酵素反応を所望のレベルへと抑制するためには、この条件のまま、本発明のキレート化合物を添加すればよい。
【0020】
本発明における基質としては、対象となる酵素によって反応を受ける化合物全般を指す。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼではグルコースが、グルタミン酸デヒドロゲナーゼではグルタミン酸が挙げられる。
【0021】
本発明において、対象となる補因子としては、モノエステルリン酸部位を有するものであれば特に制限はないが、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、カルボキシラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ等に属する各種酵素が一般的に利用する補因子が好ましい。そのようなものとしては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、フラビンアデニンジヌクレオチド、アデノシントリリン酸、アデノシンジリン酸、アデノシンモノリン酸、グアノシントリリン酸、デオキシアデノシントリリン酸などが挙げられる。本発明の実施例においては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸が用いられている。
【0022】
本発明で用いられる、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物としては、補因子のモノエステルリン酸部位に対して結合能を有する錯体であればよく、特に制限はないが、好ましくは、ポリアミン亜鉛錯体が挙げられる。具体的には、例えば、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体が挙げられる。更に具体的には、二核亜鉛(II)錯体を基本構造にもつヘキサアミン二核亜鉛(II)錯体が挙げられる。更に具体的には、本発明者らが製作した1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolato− dizinc(II)complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(ただし,プロパノール骨格の水酸基はアルコラートとして二つの亜鉛(2+)イオンの架橋配位子になっている)
【0023】
【化3】
【0024】
が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる錯体は、一般的な化学合成技術を利用して合成することが可能であるが、市販の化合物を原料としても合成することができる。例えば、化合物1(Zn2L)は,市販の1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパンと酢酸亜鉛を原料として次の方法により合成することができる。
【0026】
1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパン4.4mmolのエタノール溶液(100ml)に10M水酸化ナトリウム水溶液(0.44ml)を加え,次いで酢酸亜鉛二水和物(9.7mmol)を加える。溶媒を減圧留去することにより褐色のオイルを得ることができる。この残渣に水10mlを加えて溶解後,1M過塩素酸ナトリウム水溶液(3当量)を70℃に加温しながら滴下して加え、析出する無色の結晶を濾取し,加熱乾燥することにより化合物1
【0027】
【化4】
【0028】
の構造式であらわされる酢酸イオン付加体の二過塩素酸塩(Zn2L−CH3COO−・2ClO4 −・H2O)を高収率で得ることができる。この結晶は一分子の結晶水を含んでいる。
【0029】
元素分析,核磁気共鳴分析,および赤外線分析により,上記化学構造を確認することができる。下記にそのデータの事例を示す。
元素分析の理論値・・・C29H34Cl2N6O12Zn2: C, 40.49; H, 3.98; N, 9.77
元素分析の実測値・・・C, 40.43; H, 3.86; N, 9.85
1H NMR (500MHz, DMSO−d6)の結果
δ2.04 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 2.53 (3H, s, CH3), 3.06 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 3.74 (1H, t, J = 10.4 Hz, CCHC), 4.02 − 4.34 (8H, m, ArCH2), 7.54 − 7.65 (8H, m, ArH), 8.06 − 8.12 (4H, m, ArH), 8.58 (4H, m, ArH)
13C NMR (125MHz, DMSO−d6)の結果
δ58.0, 60.1, 62.0, 64.6, 122.7, 124.3, 124.4, 124.4, 139.9, 140.4, 147.0, 147.2, 154.7, 155.1
赤外線分析の結果
1609, 1576, 1556(C=O), 1485, 1439, 1266, 1108(ClO4 −), 1090(ClO4 −), 770, 625 cm−1
【0030】
上記のデータは,化合物1に対して酢酸イオンが1当量と過塩素酸イオンが2当量をカウンターイオンとしてもつ物質であることを示している。
【0031】
なお、本発明におけるキレート化合物の使用濃度としては特に限定されず、用いる酵素、補因子及び基質の濃度に依存して変更されるべきものであるが、通常0.01〜100mmol/ml、特に0.1〜10mmol/mlの範囲とすることが好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(錯体の合成)
補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物として、1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolato− dizinc(II)complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(フォスタグ)を、以下のように調製した。
1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパン4.4mmolのエタノール溶液(100ml)に10M水酸化ナトリウム水溶液(0.44ml)を加え,次いで酢酸亜鉛二水和物(9.7mmol)を加えた。溶媒を減圧留去して褐色のオイルを得た。この残渣に水10mlを加えて溶解した後,1M過塩素酸ナトリウム水溶液(3当量)を70℃に加温しながら滴下して加えた。析出する無色の結晶を濾取し,加熱乾燥して化合物1の酢酸イオン付加体の二過塩素酸塩(Zn2L−CH3COO−・2ClO4 −・H2O)を得た。この結晶は一分子の結晶水を含んでいる。収量は3.0g,収率は79%であった。
元素分析,核磁気共鳴分析,および赤外線分析により,上記化学構造を確認した。下記にそのデータを示す。
元素分析によると,元素分析の理論値はC29H34Cl2N6O12Zn2: C, 40.49; H, 3.98; N, 9.77であるが,元素分析の実測値はC, 40.43; H, 3.86; N, 9.85であった。
1H NMR (500MHz, DMSO−d6)の結果は,δ2.04 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 2.53 (3H, s, CH3), 3.06 (2H, dd, J = 12.1 and 12.3 Hz, CCHN), 3.74 (1H, t, J = 10.4 Hz, CCHC), 4.02 − 4.34 (8H, m, ArCH2), 7.54 − 7.65 (8H, m, ArH), 8.06 − 8.12 (4H, m, ArH), 8.58 (4H, m, ArH)であった。
13C NMR (125MHz, DMSO−d6)の結果は,δ58.0, 60.1, 62.0, 64.6, 122.7, 124.3, 124.4, 124.4, 139.9, 140.4, 147.0, 147.2, 154.7, 155.1であった。
赤外線分析の結果は,1609, 1576, 1556(C=O), 1485, 1439, 1266, 1108(ClO4 −), 1090(ClO4 −), 770, 625 cm−1であった。
【0034】
(実施例1)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にモノエステルリン酸部位を有するニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPと略す)、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物に1,3−ビス[ビス(2−ピリジルメチル)アミノ]−2−ハイドロキシプロパノラート(IUPAC名:1,3−bis[bis(2−pyridylmethyl)amino]−2−propanolatodizinc(II) complex)を基本骨格とするポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体(フォスタグ)を用いた系にて検討を実施した。使用したグルコースデヒドロゲナーゼの酵素活性測定方法と酵素活性の定義は以下の通りである。
0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)2.6ml、1.5M D−グルコース水溶液0.3ml、80mg/mlニコチンアミドアデニンジヌクレオチド水溶液0.1mlをキュベットに調製し、37℃で約5分間予備加温する。次いで、酵素溶液0.05mlを添加し、ゆるやかに混和後、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド濃度を反映する340nmの吸光度の変化を5〜6分間記録し、その初期直線部分から1分間あたりの吸光度変化を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、同様にして吸光度変化を測定する。このようにして求めた吸光度変化速度から次式に従い酵素活性を算出する。上記条件下で1分間に1マイクロモルの還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを生成する酵素量を1単位(1U)とする。
Vmax・Km
Vmax及びKmは、常法に従いラインウィーバーバークプロット等から求める。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPHと略す)濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、150mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)を含む水溶液を調製した。第二試薬としては、1.5mMのフォスタグ、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)を含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として0.02U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:250μlと酵素試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、第二試薬:50μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図1に示す。
これにより、酵素反応系に第二試薬、すなわちモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)を加えることにより、酵素活性を低下させることが可能であることが分かる。
【0035】
(比較例1)
補因子としてNADPではなく、モノエステルリン酸部位を有しないニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADと略す)を用い、実施例1と同様の検討を実施した。本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADHと略す)濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
結果を図1に示す。
これにより、補因子がNADの場合は酵素反応系に第二試薬、すなわちモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を加えても、酵素活性を低下させることは不可能であることが分かる。
【0036】
(実施例2)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を10秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、150mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.3mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、5mMのリン酸カリウム(pH7.5)を含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として0.02U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:250μlと酵素試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、第二試薬:50μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図1に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)を含む酵素反応系では酵素活性が阻害されているが、ここに第二試薬、すなわち無機リン酸を加えることにより、酵素活性を回復させることが可能であることが分かる。
【0037】
(実施例3)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、および0.1〜1mMのフォスタグをそれぞれ含む水溶液を調製した。第二試薬としては、蒸留水を用いた。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図2に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、キレート化合物の濃度により調節することが可能であることが分かる。
【0038】
(実施例4)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.23mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、0〜4mMのリン酸カリウム(pH7.5)をそれぞれ含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図3に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、無機リン酸の濃度により調節することが可能であることが分かる。
また、図3におけるそれぞれの酵素反応の初期速度を計算し、無機リン酸濃度に対してプロットした。
結果を図4に示す。
これにより、酵素反応速度が無機リン酸濃度に依存することが分かる。すなわち、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、酵素反応溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0039】
(実施例5)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.24mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、0〜4mMのリン酸カリウム(pH7.5)をそれぞれ含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図5に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、無機リン酸の濃度により調節することが可能であることが分かる。
また、図5におけるそれぞれの酵素反応の初期速度を計算し、無機リン酸濃度に対してプロットした。
結果を図6に示す。
これにより、酵素反応速度が無機リン酸濃度に依存することが分かる。すなわち、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、酵素反応溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0040】
(実施例6)
基質にD−グルコース、酵素にグルコースデヒドロゲナーゼ(Code:GLD−311,東洋紡製)、補因子にNADP、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物にフォスタグを用いた系にて検討を実施した。
本系における酵素活性の検出は、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADPH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を12秒ごとに記録することにより行った。
まず、第一試薬として、250mMのD−グルコース、0.2mMのNADP、50mMのトリス−塩酸(pH7.5)、0.25mMのフォスタグを含む水溶液を調製した。第二試薬としては、0〜4mMのリン酸カリウム(pH7.5)をそれぞれ含む水溶液を調製した。また、酵素水溶液として5U/mlのグルコースデヒドロゲナーゼを含むトリス−塩酸(pH7.5)水溶液を調製した。
第一試薬:200μlと第二試薬:5μlを混合し、37℃で5分間反応させた後、酵素試薬:100μlを添加、混合し、更に37℃で5分間反応させた。一連の酵素反応を、340nmの吸光度変化として記録した。
結果を図7に示す。
これにより、モノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物(この場合はフォスタグ)による酵素活性の阻害は、無機リン酸の濃度により調節することが可能であることが分かる。
また、図7におけるそれぞれの酵素反応の初期速度を計算し、無機リン酸濃度に対してプロットした。
結果を図8に示す。
これにより、酵素反応速度が無機リン酸濃度に依存することが分かる。すなわち、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、酵素反応溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0041】
【発明の効果】
このように、本発明は、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いた酵素活性を調節する方法、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体用いた無機リン酸の酵素的測定方法、補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む酵素的測定用試薬、ならびにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を含有する無機リン酸の酵素的測定試薬を開示するものである。
【0042】
本発明によれば、安価であり、かつ簡便に、酵素の失活を伴わず酵素活性の調節が可能となる方法、試薬を提供することができる。すなわち、補因子が反応に関与する酵素においては補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を用いることにより、酵素活性の調節を行う方法、試薬を提供することができる。また、本発明によれば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合しポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することによる無機リン酸の酵素的測定方法を提供することができる。
【0043】
本発明を用いることにより、補因子が関与する酵素活性を調節する方法の基礎研究分野及び産業分野への応用が可能となる。また、本発明は手法が簡潔であるため、各種自動分析装置への適用も容易であり、多数の検体処理にも適している。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1、実施例2の結果を示す。
【図2】実施例3の結果を示す。
【図3】実施例4における酵素反応の吸光度変化の結果を示す。
【図4】実施例4における酵素反応の初速度と無機リン酸濃度との関係を示す。
【図5】実施例5における酵素反応の吸光度変化の結果を示す。
【図6】実施例5における酵素反応の初速度と無機リン酸濃度との関係を示す。
【図7】実施例6における酵素反応の吸光度変化の結果を示す。
【図8】実施例6における酵素反応の初速度と無機リン酸濃度との関係を示す。
Claims (12)
- 補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、酵素活性を調節する方法。
- 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物が、少なくとも当該補因子と酵素および基質を有する溶液中に含まれることを特徴とする請求項1記載の酵素活性を調節する方法。
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補因子とする、請求項1または2記載の酵素活性を調節する方法。
- キレート化合物としてポリアミン亜鉛錯体を用いる、請求項1〜3記載の酵素活性を調節する方法。
- キレート化合物としてポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体を用いる、請求項1〜3記載の酵素活性を調節する方法。
- 補因子のモノエステルリン酸部分に、キレート化合物を、選択的かつ可逆的に結合させることを特徴とする、物質を酵素的に測定する方法。
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合し、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する溶液中に無機リン酸を添加することを特徴とする、請求項6記載の無機リン酸の酵素的測定方法。
- 少なくとも補因子と酵素および基質、ならびに当該補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物を含む物質を酵素的に測定するための試薬。
- 補因子がニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸である、請求項8記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
- 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物がポリアミン亜鉛錯体である、請求項8または9記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
- 補因子のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合するキレート化合物がポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体である、請求項8または9記載の物質を酵素的に測定するための試薬。
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸のモノエステルリン酸部分に選択的かつ可逆的に結合し、ポリアミン化合物を配位子として有する二核亜鉛錯体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸と酵素および基質を少なくとも含有する、無機リン酸を酵素的に測定するための試薬。
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