JP2004300582A - 繊維用油剤付与ガイド装置および油剤付与方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】走行糸条導入部により接糸部への走行糸条導入作業を容易にし、かつ、導入部を設けることにより随伴気流が偏流することなく、油剤を走行糸条に均一に付着させ、接糸部での白粉発生を抑制して糸条走行を安定化し、作業性・品質および工程安定性を向上することができるコンパクトな給油ガイドを提供する。
【解決手段】繊維糸条を接触走行させて糸条に油剤を付与する給油ガイド装置において、該給油ガイドの前面に走行糸条を接糸部へ導入するための60°以上90°以下の角度の傾斜面をもつ走行糸条導入部を有し、かつ該走行糸条導入部に続いてストレートな壁面とフラットな底溝を有する糸条の接糸部を有し、該接糸部には屈曲部が設けられていることを特徴とする繊維用油剤付与ガイド装置。
【選択図】図1
【解決手段】繊維糸条を接触走行させて糸条に油剤を付与する給油ガイド装置において、該給油ガイドの前面に走行糸条を接糸部へ導入するための60°以上90°以下の角度の傾斜面をもつ走行糸条導入部を有し、かつ該走行糸条導入部に続いてストレートな壁面とフラットな底溝を有する糸条の接糸部を有し、該接糸部には屈曲部が設けられていることを特徴とする繊維用油剤付与ガイド装置。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維の溶融紡糸工程における油剤を付与するための繊維用油剤付与ガイド装置に関するものである。さらに詳しくは、走行糸条を接糸部へ容易に導入し、高速に走行する糸条への油剤の均一付与および糸条の安定走行のために有効な繊維用油剤付与ガイド装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドやポリエステルなどの合成繊維の溶融紡糸工程において、走行する糸条に潤滑剤や帯電剤を含む油剤を付与している。油剤付与装置としてはガイド型油剤付与装置(以下給油ガイドという)が広く使われている。この給油ガイドは、基本的に計量された油剤を定常的に吐出する油剤吐出孔をもち、その油剤吐出孔から吐出された油剤を走行糸条接糸部で、そこを接糸走行する糸条に付与するものである。この給油ガイドは、油剤供給量を一定に供給できるため、ローラー型油剤付与装置(以下オイリングローラーという)に比べ、糸条の長さ方向に対して均一に油剤を付与しやすい長所を有する。ただし、オイリングローラー給油方式では1ローラーで多糸条を同時走行させて、多糸条に同時に油剤を付与させることが可能であるのに対して、給油ガイド方式は1給油ガイドで1糸条走行での油剤付与であり、現在のように多糸条化が主流で生産している場合で、仮に8糸条の場合は8つの給油ガイドへの走行糸を導入させる必要があり、走行糸条導入作業はオイリングローラーに比べその作業に時間がかかるという欠点も有している。
【0003】
他方、走行糸条を接糸部へ導入して走行させ、走行糸条が高速で走行する場合には、給油ガイドに糸条とともに大量の随伴気流が流れ込むために吐出孔から接糸部への油剤が偏流して接糸部への供給斑が生じたり、また、接糸部への案内部分が随伴気流を取り込むため糸条の単糸の糸揺れ、あるいは接糸部の油剤偏流、極端な場合には、油剤飛散を引き起こし油剤付着斑の問題がある。これらの問題を解決するため、糸条の給油ガイドとしては、種々の形状のものが提案されている。
【0004】
たとえば、走行糸条が接触する狭隘部と該走行糸をその内部へ導するための糸条導入スリットお有し、該走行糸条をその内部へ導入するための糸条導入スリットを有し、該狭隘部の上部は上方へ向かって末広がり形状となっており、かつ、糸条導入孔を横断する面に沿って糸条導入孔の内壁に刻設された油剤溜め溝を設ける給油ガイドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この給油ガイドを用いる場合でも走行糸条を接触する狭隘部に該走行糸条をその内部へ導入するための糸条導入スリットであり、給油ガイドへの糸掛け作業(走行糸条を給油ガイドの接糸部へ導入する作業をいう)は容易ではなかった。また、糸条導入スリット部の先端が鋭角で肉薄である。通常走行糸条を接糸部(狭隘部)へ導入する際はエアサクションガンを使用するが、エアサクションガンを糸導入スリット部の先端へ当てることもあり、当てた時は肉薄のため破損につながりやすく破損部等での作業上のトラブルとなっていた。なお、狭隘部の上部が上方へ向かって末広がり状となっているため、高速走行糸条が随伴気流をより導入しやすくなる。その狭隘部は糸条導入孔より大幅に狭くなっているため、随伴気流速度が増大され、糸条導入スリット部が影響して、随伴気流が偏流し、油剤の流れを乱すことになる。また、油剤溜り溝も同様に随伴気流が溝部に当たり偏流して油剤に気泡が混入しやすく、油剤の均一付着が困難となるばかりでなく、糸への油剤付着量が低減少し、付与されなかった油剤が装置や雰囲気の著しい汚染の原因となる。しかも、糸の付着斑が走行糸の張力変動となり糸切れや品質の悪化を招き大きなトラブルとなるといった種々の問題があった。
【0005】
また、接糸部での油剤付着斑を解消するために、接糸部において糸条方向に対して少なくとも1ヶ所以上屈曲し、かつ、屈曲前後の接糸部が直線を有している給油ガイドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案は、接糸部への糸条導入部が設けられていないため、糸案内補助ガイドを別途取付けが必要であり、この糸案内補助ガイド取付けでのコストアップおよび作業性悪化などの問題があった。
【0006】
さらに、走行糸条に対して横断する形で油剤溜め溝を設けて、接糸面に対して135°〜180°の交差角度を形成して交差する油剤供給面を有している給油ガイドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案は、高速走行糸条が随伴気流を導入しやすく、油剤溜め溝部は狭くなっているため、随伴気流の速度が増大され、油剤溜め溝部で随伴気流が偏流して油剤の流れを乱し、走行糸条が削られて接糸部での白粉が発生する。この白粉が蓄積すると糸条走行が不安定となり、糸への著しいダメージを与え、糸のタフネス低下、毛羽、糸切れなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−273023号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平11−286824号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−146623号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の諸問題を解決し、走行糸条導入部により接糸部への走行糸条導入作業を容易にし、かつ、導入部を設けることにより随伴気流カット機能を損なうことなく随伴気流をカットし、加えて接糸部での白粉発生を抑制して糸条走行を安定し、油剤を均一に付着させ、作業性・品質および工程安定性を向上することができる、繊維用油剤付与ガイド装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)繊維糸条を接触走行させて糸条に油剤を付与する給油ガイド装置において、該給油ガイドの前面に走行糸条を接糸部へ導入するための60°以上90°以下の角度の傾斜面をもつ走行糸条導入部を有し、かつ該走行糸条導入部に続いてストレートな壁面とフラットな底溝を有する糸条の接糸部を有し、該接糸部には屈曲部が設けられていることを特徴とする繊維用油剤付与ガイド装置。
【0012】
(2)ストレート部の溝幅および底溝の溝幅が走行糸条入口部側から走行糸条出口部側にわたって同一の幅を有し、さらにストレート部の奥行きの長さが2mm以上10mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
【0013】
(3)給油ガイドが接糸部において、走行糸条方向に対して1ヶ所以上屈曲しており、かつ、屈曲前後の接糸部が直線部を有していることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
【0014】
(4)糸条走行方向に対して接糸部の上流側に斜面を設け、該斜面に吐出孔を設けることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
【0015】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の給油ガイドの接糸部が形成する屈曲角のうち最大屈曲角θmax(°)および該給油ガイドの最終接糸部の延直線と最終接糸部から引き出される走行糸条とがなす角度θL(°)が下式を満足する糸道案内ガイドを最終接糸部の下流側に備えたことを特徴とした繊維用油剤付与ガイド装置。
(1)3≦θmax≦15
(2)0<θL≦15−0.8θmax
(6)請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維用油剤付与ガイド装置を用いて接糸部の糸条走行速度を4000m/min以上7000m/min以下として給油することを特徴とする油剤付与方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の給油ガイドの主要部を示す図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る給油ガイドの一例を示す正面図、図2は本発明に係る給油ガイドの一例を示す平面図、図3、図4は本発明に係る給油ガイドの一例を示す縦断面図、図5は従来の他の給油ガイド例を示す縦断面図(A)と平面図(B)である。
【0017】
図において、1は給油ガイド、2は走行糸条導入部、θは走行糸条導入角度、3はストレート部、W1は給油ガイド底溝13の溝幅、W2はストレート部3の溝幅、4は油剤吐出孔、5は油剤吐出孔上向き斜面、6a、6b、6cは接糸部、θ1,θ2は接糸部が形成する屈曲角、θLは接糸部6bの延直線と最終接糸部から糸道案内ガイド7に至る糸条走行方向とがなす角度、7は糸道案内ガイドを示す。
【0018】
本発明に係る給油ガイド1は、走行糸条導入部2とストレート部3および接糸部の形状を特徴とするものであり、走行糸条導入部2と給油ガイド底溝13との間にストレート部3を有し、接糸部は底溝13が走行糸条Yに対してフラットであることが重要である。
【0019】
走行糸条導入部2は図2に示すように、接糸部6aへの走行糸条導入作業を容易にする形状を有しているものである。また、ストレート部3は図2に示すように、走行糸条導入部2と給油ガイド底溝13との間にあり、走行糸条入口部側から走行糸条出口部側にわたって同一の幅を有し、図2の一点鎖線で示す給油ガイド中心軸線Xに対して左右対称、かつ平行な形状を有している。
なお、接糸部6aの底溝13は走行糸条に対してフラットであることが重要であり、糸条単糸を広げて均一に油剤を付着させる目的から可能な限り平坦となることが望ましく、曲率半径r(mm)でいうと、rは10mm以上が好ましく、より好ましくは50mm以上である。さらに図3に示すように、接糸部6aには屈曲箇所Aを設けることが好ましい。該屈曲箇所は1ケ所以上設けることが好ましく、該屈曲前後の接糸部は直線部を有していることが好ましい。
【0020】
走行糸条導入部2は、走行糸条導入作業を容易にするため、図2における、一点鎖線で示す給油ガイド中心軸線Xを中心軸としてストレート部3側から給油ガイド前面側方向に向かって拡開する左右対象の左右の傾斜面を有し、該一方の傾斜面と他方の傾斜面とがなす角度である、走行糸条導入角度θは60°以上であることが好ましく、90°以下であれば十分である。好ましくは80°以下である。90°を越えると導入部先端部を肉薄で鋭角とするか、給油ガイドを大きくする必要があり、コンパクト化が不可能となる。
【0021】
ストレート部3は、走行糸条で持ち込まれる随伴気流を乱流とせずに整流化とするには、2mm以上の奥行きの長さが好ましく、10mm以下であれば十分である。好ましくは3mm以上である。10mmを越えると給油ガイドが大きくなり、コストアップとなり、2mm未満では糸条導入部の影響を受け随伴気流が乱れ油剤付着斑につながる。
【0022】
糸条接糸部は走行糸条に対してフラットであることが油剤付着効率は良く、Rタイプは糸条単糸が重なるため油剤付着効率がフラットより低くなる。
【0023】
糸条接糸部が形成する屈曲角のなかで、最大となる屈曲角である最大屈曲角θmaxは、随伴気流の影響を受けないためには3°以上あることが好ましく、15°以下であれば十分である。好ましくは10°以下である。15°を越えると糸へのダメージが大きくなり、毛羽などの問題がある。
【0024】
油剤吐出孔4は、糸条が吐出油剤と触れる前に給油ガイド本体に触れないように接糸部上流側の斜面5に設けることが望ましい。油剤吐出孔斜面5と接糸部6aにおける糸条走行方向とのなす角度θ3はできるだけ小さくすることが望ましく、2°以上10°以下が均一付着により効果的である。
【0025】
図6は、給油ガイド1と糸条進行方向を規定する糸道案内ガイド7が付設した繊維用油剤付与ガイド装置を示すものである。この糸道案内ガイド7により給油ガイドの接糸部6bと最終接糸部から糸道案内ガイド7に至る糸条走行方向とのなす角度である、屈曲角θLと給油ガイド接糸部の最大屈曲角θmaxの関係が式(2)に示すような範囲にするといっそう効果的である。
【0026】
(2)0<θL≦15−0.8θmax
θLは0°を越える角度にすることにより、最終接糸部での糸条が十分に接触して走行でき、油剤付着が均一となる。また15−0.8θmax以下にすることにより、接糸部、案内ガイドでの擦過による糸物性の低下を防止し、糸条の走行安定性を有するものである。
【0027】
[作用]
本発明の給油ガイド1を用いて、走行糸条を接糸部への導入作業は容易となる。また、本発明の給油ガイド1を用いて走行する糸条Yに油剤を付与する場合、吐出孔4から吐出された油剤は、接糸部上部に設けられた斜面5に沿って接糸部に流れ込み、屈曲した接糸部(図3では6a,6b)に沿って流れる。そしてこの接糸部上を同時に走行する糸条Yと接糸部上で接触することにより糸に油剤が付与される。さらに糸条Yは図6の如き給油ガイド下に設けられた糸道案内ガイド7を走行することにより、給油ガイド出の屈曲角θLを任意に設定するとともに糸条を安定して走行することができる。
【0028】
走行糸条導入部と給油ガイド底溝との間にストレート部3を設けることにより、接糸部とストレート部の随伴気流は乱流とならず整流となる。また、接糸部が走行糸条に対してフラットなために接糸部での油剤の偏流を抑制でき、走行糸条への油剤均一付着が可能となる。
【0029】
接糸部に屈曲部Aを設けることにより、随伴気流による接糸部6a,6bの油剤偏流および糸条の接糸部での糸揺れを抑制でき、油剤付着がより均一可能となる。つまり吐出孔4から接糸部までの斜面5あるいは糸条走行と同じ方向にある接糸部6aでは糸条とともに流れ込む随伴気流の影響を受けやすいが、底溝がフラットなら均一付着が可能であるが、屈曲部を有することにより、随伴気流は屈曲部の上方の接糸部面6aに沿って流れるため、随伴気流を乱すことなく効率良くカットして、屈曲部の下方側の接糸部6bでは随伴気流の影響を抑制できる。また、屈曲部とその下にある接糸部6bにより糸条を規制する効果が付与され糸条への油剤付着がより均一付着となる。
【0030】
吐出孔4は、接糸部の上方の斜面5に設け油剤付着前に糸条に直接糸が触れないようにすることにより、特に高速走行時での糸の擦過によるダメージがなく、糸切れ,毛羽の問題を防止できる。
【0031】
吐出孔の形状、位置などは特に限定されるものではないが、随伴気流の影響を受けにくくするため、吐出孔は接糸部に近接し、かつ糸条が持ち込む随伴気流方向と斜面の角度が小さい方がより好ましい。
【0032】
糸道案内ガイド7は、特に限定されるものではないが、上述した所定の角度に設けることにより、給油ガイドの接糸部に過度に張力を付与することなく、かつ屈曲部下の糸条規制効果を付与することができる。特に給油ガイドの接糸部が走行糸条に対してフラットな面を有する場合には、糸道案内ガイド形状に係わらず糸条を均一に押し広げることが可能であり効果的である。
【0033】
本発明による繊維用油剤付与装置を用いることにより、接糸部への走行糸条導入作業が容易となり、油剤を糸条に均一に付与することが可能となる。特に随伴気流の多い高速化で油剤を付与する場合には、本発明の給油ガイドでの気流カット効果が顕著で、油剤の均一性および付着効率も向上させることができ、接糸部の走行速度が4000m/min以上7000m/min以下となるプロセスでの適用では効果大である。
【0034】
【実施例】
実施例1〜4、比較例1〜4
酸化チタン0.3wt%を含有するポリエステルを図7に示す高速製糸する工程における給油ガイド1として、図3に示す給油形状でθLが5°、溝底フラット(曲率のないもの)な給油ガイドを用い、56デシテックス,36フィラメントの三角断面のポリエステル糸を製糸した。
【0035】
すなわち、紡糸口金8より溶融紡出されたポリエステル糸条Yを冷却固化した後、加熱筒9に導入し、延伸後、給油ガイド1により油剤を付与し収束した後、第1ゴデッドローラー10、第2ゴデッドローラー11で順次引き取り、引取速度を変更して巻取機12に巻き取った。
【0036】
給油には、濃度15%の油剤水溶液を用いた。糸条に対する油剤付与量は1.5%であった。
【0037】
比較として、接糸部に屈曲部がない図5に示す給油ガイドを用い、上記の実施例1〜4と同様に製糸を行った。
【0038】
接糸部の糸条走行速度は、給油ガイド前後の糸速をTSI社製(型式LS50M)糸速計を使用して5回実測し、その平均値とした。
【0039】
給油ガイドでの油剤付着状況を、糸条に付着しない油剤量として5分間あたりの給油ガイド下に落下する油滴数を測定した。
【0040】
また、油剤付着変動率△Rは、給油ガイド下の走行する糸条の油水分の変動を抵抗計を用いて5分間連続で測定し、得られた出力電圧値(R)を下記算出式で計算し比較した。
【0041】
△R(%)=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin/2)
それらの結果を表1に示した。
【0042】
走行糸条導入部と給油ガイド底溝との間にストレート部を設けて、接糸部の底溝を走行糸条に対してフラットとして屈曲部を設けることにより、油剤落下が少なくなり油剤付着性が向上し、油剤付着変動幅も小さくなることが判る。また、随伴気流の影響が大きい高速での油剤付着では特に効果がみられる。
【0043】
実施例5〜10
図3に示す給油ガイドを用い、ストレート部の奥行きの長さを下表2の条件とし、引取速度5000m/minとした以外、実施例1と同様の製糸を行い、56デシテックス,36フィラメントの三角断面糸を得た。上述の油滴落下数、油剤付着変動率△Rと、得られた糸の毛羽を測定した。その結果を表2に示した。適正なストレート部の奥行きの長さを設けることにより、接糸部の油剤流れの均一化が図れ、かつ走行糸条安定化が保持でき、油剤付着性ならびに糸の品質が安定化する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
本発明に係る給油ガイドを用いると、接糸部への走行糸条導入作業が容易となり、ストレート部の影響で随伴気流を整流化として、接糸部の底溝が走行糸条に対してフラットで接糸部に屈曲角を設けることにより、油剤を均一に付着することができるため、作業性の向上と品質および工程安定化が向上する。そして、特に随伴気流の多く発生する高速製糸においても油剤付着性を向上することができ、給油ガイド部での油滴落下,油剤飛散を抑制し、環境改善に極めて有効である。
【0047】
また、本発明の給油ガイドのみで、接糸部への走行糸条導入作業が容易なので、糸掛け補助ガイドなどの付帯装置は必要なく、給油ガイド装置のコンパクト化、コストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の給油ガイド例を示す正面図である。
【図2】本発明の給油ガイド例を示す平面図である。
【図3】本発明の給油ガイドの1具体例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の給油ガイドのその他の具体例を示す縦断面図である。
【図5】他の給油ガイド(従来例)を示す縦断面(A)と平面図(B)である。
【図6】本発明の給油ガイド,糸道案内ガイドを示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る給油ガイドが適用される工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:給油ガイド
2:走行糸条導入部
3:ストレート部
4:油剤吐出孔
5:油剤吐出孔上向き斜面
6a,6b,6c:接糸部
7:糸道案内ガイド
8:口金
9:加熱筒
10:第1ゴデットロール
11:第2ゴデットロール
12:巻取機
13:接糸部底溝
θ:走行糸条導入角度
W1:給油ガイド底溝の溝幅
W2:ストレート部溝幅
θ1:接糸部面6a,6bにより形成される屈曲角
θ2:接糸部面6a,6cにより形成される屈曲角
θmax:最大屈曲角
θ3:油剤吐出孔斜面5と接糸部6aにおける糸条走行方向とのなす角度
θL:最終接糸部面と給油ガイド出の糸条により形成される角度
Y:糸条
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成繊維の溶融紡糸工程における油剤を付与するための繊維用油剤付与ガイド装置に関するものである。さらに詳しくは、走行糸条を接糸部へ容易に導入し、高速に走行する糸条への油剤の均一付与および糸条の安定走行のために有効な繊維用油剤付与ガイド装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドやポリエステルなどの合成繊維の溶融紡糸工程において、走行する糸条に潤滑剤や帯電剤を含む油剤を付与している。油剤付与装置としてはガイド型油剤付与装置(以下給油ガイドという)が広く使われている。この給油ガイドは、基本的に計量された油剤を定常的に吐出する油剤吐出孔をもち、その油剤吐出孔から吐出された油剤を走行糸条接糸部で、そこを接糸走行する糸条に付与するものである。この給油ガイドは、油剤供給量を一定に供給できるため、ローラー型油剤付与装置(以下オイリングローラーという)に比べ、糸条の長さ方向に対して均一に油剤を付与しやすい長所を有する。ただし、オイリングローラー給油方式では1ローラーで多糸条を同時走行させて、多糸条に同時に油剤を付与させることが可能であるのに対して、給油ガイド方式は1給油ガイドで1糸条走行での油剤付与であり、現在のように多糸条化が主流で生産している場合で、仮に8糸条の場合は8つの給油ガイドへの走行糸を導入させる必要があり、走行糸条導入作業はオイリングローラーに比べその作業に時間がかかるという欠点も有している。
【0003】
他方、走行糸条を接糸部へ導入して走行させ、走行糸条が高速で走行する場合には、給油ガイドに糸条とともに大量の随伴気流が流れ込むために吐出孔から接糸部への油剤が偏流して接糸部への供給斑が生じたり、また、接糸部への案内部分が随伴気流を取り込むため糸条の単糸の糸揺れ、あるいは接糸部の油剤偏流、極端な場合には、油剤飛散を引き起こし油剤付着斑の問題がある。これらの問題を解決するため、糸条の給油ガイドとしては、種々の形状のものが提案されている。
【0004】
たとえば、走行糸条が接触する狭隘部と該走行糸をその内部へ導するための糸条導入スリットお有し、該走行糸条をその内部へ導入するための糸条導入スリットを有し、該狭隘部の上部は上方へ向かって末広がり形状となっており、かつ、糸条導入孔を横断する面に沿って糸条導入孔の内壁に刻設された油剤溜め溝を設ける給油ガイドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この給油ガイドを用いる場合でも走行糸条を接触する狭隘部に該走行糸条をその内部へ導入するための糸条導入スリットであり、給油ガイドへの糸掛け作業(走行糸条を給油ガイドの接糸部へ導入する作業をいう)は容易ではなかった。また、糸条導入スリット部の先端が鋭角で肉薄である。通常走行糸条を接糸部(狭隘部)へ導入する際はエアサクションガンを使用するが、エアサクションガンを糸導入スリット部の先端へ当てることもあり、当てた時は肉薄のため破損につながりやすく破損部等での作業上のトラブルとなっていた。なお、狭隘部の上部が上方へ向かって末広がり状となっているため、高速走行糸条が随伴気流をより導入しやすくなる。その狭隘部は糸条導入孔より大幅に狭くなっているため、随伴気流速度が増大され、糸条導入スリット部が影響して、随伴気流が偏流し、油剤の流れを乱すことになる。また、油剤溜り溝も同様に随伴気流が溝部に当たり偏流して油剤に気泡が混入しやすく、油剤の均一付着が困難となるばかりでなく、糸への油剤付着量が低減少し、付与されなかった油剤が装置や雰囲気の著しい汚染の原因となる。しかも、糸の付着斑が走行糸の張力変動となり糸切れや品質の悪化を招き大きなトラブルとなるといった種々の問題があった。
【0005】
また、接糸部での油剤付着斑を解消するために、接糸部において糸条方向に対して少なくとも1ヶ所以上屈曲し、かつ、屈曲前後の接糸部が直線を有している給油ガイドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案は、接糸部への糸条導入部が設けられていないため、糸案内補助ガイドを別途取付けが必要であり、この糸案内補助ガイド取付けでのコストアップおよび作業性悪化などの問題があった。
【0006】
さらに、走行糸条に対して横断する形で油剤溜め溝を設けて、接糸面に対して135°〜180°の交差角度を形成して交差する油剤供給面を有している給油ガイドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この提案は、高速走行糸条が随伴気流を導入しやすく、油剤溜め溝部は狭くなっているため、随伴気流の速度が増大され、油剤溜め溝部で随伴気流が偏流して油剤の流れを乱し、走行糸条が削られて接糸部での白粉が発生する。この白粉が蓄積すると糸条走行が不安定となり、糸への著しいダメージを与え、糸のタフネス低下、毛羽、糸切れなどの問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−273023号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平11−286824号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−146623号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の諸問題を解決し、走行糸条導入部により接糸部への走行糸条導入作業を容易にし、かつ、導入部を設けることにより随伴気流カット機能を損なうことなく随伴気流をカットし、加えて接糸部での白粉発生を抑制して糸条走行を安定し、油剤を均一に付着させ、作業性・品質および工程安定性を向上することができる、繊維用油剤付与ガイド装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)繊維糸条を接触走行させて糸条に油剤を付与する給油ガイド装置において、該給油ガイドの前面に走行糸条を接糸部へ導入するための60°以上90°以下の角度の傾斜面をもつ走行糸条導入部を有し、かつ該走行糸条導入部に続いてストレートな壁面とフラットな底溝を有する糸条の接糸部を有し、該接糸部には屈曲部が設けられていることを特徴とする繊維用油剤付与ガイド装置。
【0012】
(2)ストレート部の溝幅および底溝の溝幅が走行糸条入口部側から走行糸条出口部側にわたって同一の幅を有し、さらにストレート部の奥行きの長さが2mm以上10mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
【0013】
(3)給油ガイドが接糸部において、走行糸条方向に対して1ヶ所以上屈曲しており、かつ、屈曲前後の接糸部が直線部を有していることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
【0014】
(4)糸条走行方向に対して接糸部の上流側に斜面を設け、該斜面に吐出孔を設けることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
【0015】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の給油ガイドの接糸部が形成する屈曲角のうち最大屈曲角θmax(°)および該給油ガイドの最終接糸部の延直線と最終接糸部から引き出される走行糸条とがなす角度θL(°)が下式を満足する糸道案内ガイドを最終接糸部の下流側に備えたことを特徴とした繊維用油剤付与ガイド装置。
(1)3≦θmax≦15
(2)0<θL≦15−0.8θmax
(6)請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維用油剤付与ガイド装置を用いて接糸部の糸条走行速度を4000m/min以上7000m/min以下として給油することを特徴とする油剤付与方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の給油ガイドの主要部を示す図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る給油ガイドの一例を示す正面図、図2は本発明に係る給油ガイドの一例を示す平面図、図3、図4は本発明に係る給油ガイドの一例を示す縦断面図、図5は従来の他の給油ガイド例を示す縦断面図(A)と平面図(B)である。
【0017】
図において、1は給油ガイド、2は走行糸条導入部、θは走行糸条導入角度、3はストレート部、W1は給油ガイド底溝13の溝幅、W2はストレート部3の溝幅、4は油剤吐出孔、5は油剤吐出孔上向き斜面、6a、6b、6cは接糸部、θ1,θ2は接糸部が形成する屈曲角、θLは接糸部6bの延直線と最終接糸部から糸道案内ガイド7に至る糸条走行方向とがなす角度、7は糸道案内ガイドを示す。
【0018】
本発明に係る給油ガイド1は、走行糸条導入部2とストレート部3および接糸部の形状を特徴とするものであり、走行糸条導入部2と給油ガイド底溝13との間にストレート部3を有し、接糸部は底溝13が走行糸条Yに対してフラットであることが重要である。
【0019】
走行糸条導入部2は図2に示すように、接糸部6aへの走行糸条導入作業を容易にする形状を有しているものである。また、ストレート部3は図2に示すように、走行糸条導入部2と給油ガイド底溝13との間にあり、走行糸条入口部側から走行糸条出口部側にわたって同一の幅を有し、図2の一点鎖線で示す給油ガイド中心軸線Xに対して左右対称、かつ平行な形状を有している。
なお、接糸部6aの底溝13は走行糸条に対してフラットであることが重要であり、糸条単糸を広げて均一に油剤を付着させる目的から可能な限り平坦となることが望ましく、曲率半径r(mm)でいうと、rは10mm以上が好ましく、より好ましくは50mm以上である。さらに図3に示すように、接糸部6aには屈曲箇所Aを設けることが好ましい。該屈曲箇所は1ケ所以上設けることが好ましく、該屈曲前後の接糸部は直線部を有していることが好ましい。
【0020】
走行糸条導入部2は、走行糸条導入作業を容易にするため、図2における、一点鎖線で示す給油ガイド中心軸線Xを中心軸としてストレート部3側から給油ガイド前面側方向に向かって拡開する左右対象の左右の傾斜面を有し、該一方の傾斜面と他方の傾斜面とがなす角度である、走行糸条導入角度θは60°以上であることが好ましく、90°以下であれば十分である。好ましくは80°以下である。90°を越えると導入部先端部を肉薄で鋭角とするか、給油ガイドを大きくする必要があり、コンパクト化が不可能となる。
【0021】
ストレート部3は、走行糸条で持ち込まれる随伴気流を乱流とせずに整流化とするには、2mm以上の奥行きの長さが好ましく、10mm以下であれば十分である。好ましくは3mm以上である。10mmを越えると給油ガイドが大きくなり、コストアップとなり、2mm未満では糸条導入部の影響を受け随伴気流が乱れ油剤付着斑につながる。
【0022】
糸条接糸部は走行糸条に対してフラットであることが油剤付着効率は良く、Rタイプは糸条単糸が重なるため油剤付着効率がフラットより低くなる。
【0023】
糸条接糸部が形成する屈曲角のなかで、最大となる屈曲角である最大屈曲角θmaxは、随伴気流の影響を受けないためには3°以上あることが好ましく、15°以下であれば十分である。好ましくは10°以下である。15°を越えると糸へのダメージが大きくなり、毛羽などの問題がある。
【0024】
油剤吐出孔4は、糸条が吐出油剤と触れる前に給油ガイド本体に触れないように接糸部上流側の斜面5に設けることが望ましい。油剤吐出孔斜面5と接糸部6aにおける糸条走行方向とのなす角度θ3はできるだけ小さくすることが望ましく、2°以上10°以下が均一付着により効果的である。
【0025】
図6は、給油ガイド1と糸条進行方向を規定する糸道案内ガイド7が付設した繊維用油剤付与ガイド装置を示すものである。この糸道案内ガイド7により給油ガイドの接糸部6bと最終接糸部から糸道案内ガイド7に至る糸条走行方向とのなす角度である、屈曲角θLと給油ガイド接糸部の最大屈曲角θmaxの関係が式(2)に示すような範囲にするといっそう効果的である。
【0026】
(2)0<θL≦15−0.8θmax
θLは0°を越える角度にすることにより、最終接糸部での糸条が十分に接触して走行でき、油剤付着が均一となる。また15−0.8θmax以下にすることにより、接糸部、案内ガイドでの擦過による糸物性の低下を防止し、糸条の走行安定性を有するものである。
【0027】
[作用]
本発明の給油ガイド1を用いて、走行糸条を接糸部への導入作業は容易となる。また、本発明の給油ガイド1を用いて走行する糸条Yに油剤を付与する場合、吐出孔4から吐出された油剤は、接糸部上部に設けられた斜面5に沿って接糸部に流れ込み、屈曲した接糸部(図3では6a,6b)に沿って流れる。そしてこの接糸部上を同時に走行する糸条Yと接糸部上で接触することにより糸に油剤が付与される。さらに糸条Yは図6の如き給油ガイド下に設けられた糸道案内ガイド7を走行することにより、給油ガイド出の屈曲角θLを任意に設定するとともに糸条を安定して走行することができる。
【0028】
走行糸条導入部と給油ガイド底溝との間にストレート部3を設けることにより、接糸部とストレート部の随伴気流は乱流とならず整流となる。また、接糸部が走行糸条に対してフラットなために接糸部での油剤の偏流を抑制でき、走行糸条への油剤均一付着が可能となる。
【0029】
接糸部に屈曲部Aを設けることにより、随伴気流による接糸部6a,6bの油剤偏流および糸条の接糸部での糸揺れを抑制でき、油剤付着がより均一可能となる。つまり吐出孔4から接糸部までの斜面5あるいは糸条走行と同じ方向にある接糸部6aでは糸条とともに流れ込む随伴気流の影響を受けやすいが、底溝がフラットなら均一付着が可能であるが、屈曲部を有することにより、随伴気流は屈曲部の上方の接糸部面6aに沿って流れるため、随伴気流を乱すことなく効率良くカットして、屈曲部の下方側の接糸部6bでは随伴気流の影響を抑制できる。また、屈曲部とその下にある接糸部6bにより糸条を規制する効果が付与され糸条への油剤付着がより均一付着となる。
【0030】
吐出孔4は、接糸部の上方の斜面5に設け油剤付着前に糸条に直接糸が触れないようにすることにより、特に高速走行時での糸の擦過によるダメージがなく、糸切れ,毛羽の問題を防止できる。
【0031】
吐出孔の形状、位置などは特に限定されるものではないが、随伴気流の影響を受けにくくするため、吐出孔は接糸部に近接し、かつ糸条が持ち込む随伴気流方向と斜面の角度が小さい方がより好ましい。
【0032】
糸道案内ガイド7は、特に限定されるものではないが、上述した所定の角度に設けることにより、給油ガイドの接糸部に過度に張力を付与することなく、かつ屈曲部下の糸条規制効果を付与することができる。特に給油ガイドの接糸部が走行糸条に対してフラットな面を有する場合には、糸道案内ガイド形状に係わらず糸条を均一に押し広げることが可能であり効果的である。
【0033】
本発明による繊維用油剤付与装置を用いることにより、接糸部への走行糸条導入作業が容易となり、油剤を糸条に均一に付与することが可能となる。特に随伴気流の多い高速化で油剤を付与する場合には、本発明の給油ガイドでの気流カット効果が顕著で、油剤の均一性および付着効率も向上させることができ、接糸部の走行速度が4000m/min以上7000m/min以下となるプロセスでの適用では効果大である。
【0034】
【実施例】
実施例1〜4、比較例1〜4
酸化チタン0.3wt%を含有するポリエステルを図7に示す高速製糸する工程における給油ガイド1として、図3に示す給油形状でθLが5°、溝底フラット(曲率のないもの)な給油ガイドを用い、56デシテックス,36フィラメントの三角断面のポリエステル糸を製糸した。
【0035】
すなわち、紡糸口金8より溶融紡出されたポリエステル糸条Yを冷却固化した後、加熱筒9に導入し、延伸後、給油ガイド1により油剤を付与し収束した後、第1ゴデッドローラー10、第2ゴデッドローラー11で順次引き取り、引取速度を変更して巻取機12に巻き取った。
【0036】
給油には、濃度15%の油剤水溶液を用いた。糸条に対する油剤付与量は1.5%であった。
【0037】
比較として、接糸部に屈曲部がない図5に示す給油ガイドを用い、上記の実施例1〜4と同様に製糸を行った。
【0038】
接糸部の糸条走行速度は、給油ガイド前後の糸速をTSI社製(型式LS50M)糸速計を使用して5回実測し、その平均値とした。
【0039】
給油ガイドでの油剤付着状況を、糸条に付着しない油剤量として5分間あたりの給油ガイド下に落下する油滴数を測定した。
【0040】
また、油剤付着変動率△Rは、給油ガイド下の走行する糸条の油水分の変動を抵抗計を用いて5分間連続で測定し、得られた出力電圧値(R)を下記算出式で計算し比較した。
【0041】
△R(%)=(Rmax−Rmin)/(Rmax+Rmin/2)
それらの結果を表1に示した。
【0042】
走行糸条導入部と給油ガイド底溝との間にストレート部を設けて、接糸部の底溝を走行糸条に対してフラットとして屈曲部を設けることにより、油剤落下が少なくなり油剤付着性が向上し、油剤付着変動幅も小さくなることが判る。また、随伴気流の影響が大きい高速での油剤付着では特に効果がみられる。
【0043】
実施例5〜10
図3に示す給油ガイドを用い、ストレート部の奥行きの長さを下表2の条件とし、引取速度5000m/minとした以外、実施例1と同様の製糸を行い、56デシテックス,36フィラメントの三角断面糸を得た。上述の油滴落下数、油剤付着変動率△Rと、得られた糸の毛羽を測定した。その結果を表2に示した。適正なストレート部の奥行きの長さを設けることにより、接糸部の油剤流れの均一化が図れ、かつ走行糸条安定化が保持でき、油剤付着性ならびに糸の品質が安定化する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
本発明に係る給油ガイドを用いると、接糸部への走行糸条導入作業が容易となり、ストレート部の影響で随伴気流を整流化として、接糸部の底溝が走行糸条に対してフラットで接糸部に屈曲角を設けることにより、油剤を均一に付着することができるため、作業性の向上と品質および工程安定化が向上する。そして、特に随伴気流の多く発生する高速製糸においても油剤付着性を向上することができ、給油ガイド部での油滴落下,油剤飛散を抑制し、環境改善に極めて有効である。
【0047】
また、本発明の給油ガイドのみで、接糸部への走行糸条導入作業が容易なので、糸掛け補助ガイドなどの付帯装置は必要なく、給油ガイド装置のコンパクト化、コストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の給油ガイド例を示す正面図である。
【図2】本発明の給油ガイド例を示す平面図である。
【図3】本発明の給油ガイドの1具体例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の給油ガイドのその他の具体例を示す縦断面図である。
【図5】他の給油ガイド(従来例)を示す縦断面(A)と平面図(B)である。
【図6】本発明の給油ガイド,糸道案内ガイドを示す縦断面図である。
【図7】本発明に係る給油ガイドが適用される工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:給油ガイド
2:走行糸条導入部
3:ストレート部
4:油剤吐出孔
5:油剤吐出孔上向き斜面
6a,6b,6c:接糸部
7:糸道案内ガイド
8:口金
9:加熱筒
10:第1ゴデットロール
11:第2ゴデットロール
12:巻取機
13:接糸部底溝
θ:走行糸条導入角度
W1:給油ガイド底溝の溝幅
W2:ストレート部溝幅
θ1:接糸部面6a,6bにより形成される屈曲角
θ2:接糸部面6a,6cにより形成される屈曲角
θmax:最大屈曲角
θ3:油剤吐出孔斜面5と接糸部6aにおける糸条走行方向とのなす角度
θL:最終接糸部面と給油ガイド出の糸条により形成される角度
Y:糸条
Claims (6)
- 繊維糸条を接触走行させて糸条に油剤を付与する給油ガイド装置において、該給油ガイドの前面に走行糸条を接糸部へ導入するための60°以上90°以下の角度の傾斜面を持つ走行糸条導入部を有し、かつ該走行糸条導入部に続いてストレートな壁面とフラットな底溝を有する糸条の接糸部を有し、該接糸部には屈曲部が設けられていることを特徴とする繊維用油剤付与ガイド装置。
- ストレート部の溝幅および底溝の溝幅が走行糸条入口部側から走行糸条出口部側にわたって同一の幅を有し、さらにストレート部の奥行きの長さが2mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
- 給油ガイドが接糸部において、走行糸条方向に対して1ヶ所以上屈曲しており、かつ、屈曲前後の接糸部が直線部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
- 糸条走行方向に対して接糸部の上流側に斜面を設け、該斜面に吐出孔を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維用油剤付与ガイド装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の給油ガイドの接糸部が形成する屈曲角のうち最大屈曲角θmax(°)および該給油ガイドの最終接糸部の延直線と最終接糸部から引き出される走行糸条とがなす角度θL(°)が下式を満足する糸道案内ガイドを最終接糸部の下流側に備えたことを特徴とした繊維用油剤付与ガイド装置。
(1)3≦θmax≦15
(2)0<θL≦15−0.8θmax - 請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維用油剤付与ガイド装置を用いて接糸部の糸条走行速度を4000m/min以上7000m/min以下として給油することを特徴とする油剤付与方法。
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JP2003091218A JP2004300582A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 繊維用油剤付与ガイド装置および油剤付与方法 |
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JP2021116505A (ja) * | 2020-01-29 | 2021-08-10 | 湯浅糸道工業株式会社 | オイリングノズル |
-
2003
- 2003-03-28 JP JP2003091218A patent/JP2004300582A/ja active Pending
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