JP2004300111A - 7−テトラデセン−2−オンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】7−テトラデセン−2−オンの製造方法は、6−ブロモ−1−ヘキセンと1−オクチンとを出発物質とする。例えば、6−ブロモ−1−ヘキセン及び1−オクチンから1−テトラデセン−7−インを製造する第一工程と、1−テトラデセン−7−インから1,7−テトラデセジエンを製造する第二工程と、1,7−テトラデセジエンから(Z)−7−テトラデセン−2−オンを製造する第三工程とを具備する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、7−テトラデセン−2−オンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鞘翅目コガネムシ科に属するセマダラコガネ(oriental beetle, Blitopertha orientalis waterhouse)の成虫は、芝草、広葉樹や各植物等の葉や実等を食害し、幼虫は、地下に潜み芝草等の食物の根を食害する害虫である。セマダラコガネの防除方法としては薬剤散布があるが、地下で食害が進行しているために被害が目に見え始めた頃には既に手遅れとなっていることが多い。また、セマダラコガネの成虫は、体長が8.0mm〜13.5mmであるので、小さくて目立たず、発生が認識されていないケースが多い。このようにセマダラコガネによる被害を予防または防除することは非常に困難な状況にある。
そこで、この害虫を効果的に防除するために、性フェロモンを用いて発生予察を行い、的確な時期に薬剤散布が行われている。また、性フェロモン誘引剤を用いて、大量の雄成虫を捕獲したり、雌雄の配偶行為を撹乱することも行われている。1993年、蚕糸・昆虫農業技術研究所でセマダラコガネ性フェロモンの構造決定がなされている。その構造は、(Z)−7−テトラデセン−2−オン、(E)−7−テトラデセン−2−オンの2種の異性体で、天然物で7:1の混合物であることが報告されている。翌1994年には、コーネル大学のW.L.Roelofsらにより近縁種のAnomala Orientalis waterhouseの性フェロモンは(Z)−7−テトラデセン−2−オンと(E)−7−テトラデセン−2−オンの9:1の混合物であると同定されている。
(E)−および(Z)−7−テトラデセン−2−オンの製造方法としては、製法1:(E)−または(Z)−6−トリデセン−1−オールを出発原料として、(E)−および(Z)−7−テトラデセン−2−オンをそれぞれ合成する方法(Journal of Chemical Ecology, 20[9], 1994)、製法2:5−カルボキシペンチルトリフェニルホスホニウムブロミドにメチルリチウムを用いたwittig反応により、(E)−および(Z)−7−テトラデセン−2−オンの混合物を得る方法(特開平6−239705号公報、Naturwissenschaften 80, 86−87, 1993)、製法3:1−オクチンのリチウム塩を出発原料として、(Z)−7−テトラデセン−2−オンを優先的に合成する方法(Naturwissenschaften 80, 86−87, 1993)等が知られている。
しかしながら、製法1は原料が高価であるという問題点を、製法2はシス−トランス比の制御が困難であるので工業生産に適さないという問題点を、製法3は副反応が多いという問題点をそれぞれ有する。
【0003】
また、酸化反応にクロム酸を使用する製法(製法4)が特開2000−229962号公報に開示されている。図2に製法4の合成方法を示す。ここでは、例えば、1,5−ヘキサンジオールを出発物質とし、ピリジン溶液中、p−トルエンスルホニルクロライドを反応させ、6−トルエンスルホニルヘキサン−2−オールを得て(第1工程)、これをTHF溶液中、臭化リチウムにより、6−ブロモヘキサン−2−オールを得る(第2工程)。次にTHF溶液中、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(DHP)を加え、p−トルエンスルホン酸(TsOH触媒)を添加することによって1−ブロモヘキサン−5−オールテトラヒドロピラニルエーテルを製造する(第3工程)。次いで、n−ブチルリチウムの存在下で処理した1−オクチンと1−ブロモヘキサン−5−オールテトラヒドロピラニルエーテルとをヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)中で反応させることによって、7−テトラデシン−2−オールテトラヒドロピラニルエーテルを製造する(第4工程)。得られた7−テトラデシン−2−オールテトラヒドロピラニルエーテルをメタノールに溶解させ、p−トルエンスルホン酸を添加して加水分解を行うことにより、7−テトラデシン−2−オールを製造する(第5工程)。7−テトラデシン−2−オールを、溶媒中、リチウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の存在下で、溶解金属還元を行い、アセチレン結合を二重結合に還元することにより7−テトラデセン−2−オールが得られる(第6工程)。続いて、7−テトラデセン−2−オールを、酸化剤として酸化クロム(VI)を用い、溶媒である塩化メチレン中で酸化を行うことにより、7−テトラデセン−2−オンを製造する(第7工程)。反応終了後は、例えば、抽出、洗浄、濃縮、カラムクロマトグラフィー等の操作により、得られた7−テトラデセン−2−オンを単離、精製することができる。
製法4は、第7工程における酸化反応においてクロム酸を用いるが、クロム酸は発癌性がある物質であり、使用を避けることが好ましい。また、反応工程が7工程に及び、総収率は20〜25%と低い。しかも、原料が高価であり、単価が高く、採算性がよくない。
また、塩化メチレン(ジクロロメタン)は人体の中枢神経抑制症状を引き起こす等、有害性が指摘されており、塩化メチレンの使用も避けることが求められている。近年、企業によっては独自の化学物質管理基準を設定し、塩化メチレンの使用を制限しているところもある。そのため、塩化メチレンを使用せずに効率的に生産できる合成方法が要求されている。
【0004】
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・ケミカル・エコロジー」、第20巻、第9号、1994年(Journal of Chemical Ecology, 20[9], 1994)
【特許文献1】
特開平6−239705号公報
【非特許文献2】
「ナチュアヴィッセンシャフテン」、第80巻、第86〜87頁、1993年(Naturwissenschaften 80, 86−87, 1993)
【特許文献2】
特開2000−229962号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決すべく為されたものであり、本発明の目的は、クロム酸及び塩化メチレンのいずれをも使用することなく、(E)−7−テトラデセン−2−オン及び/又は(Z)−7−テトラデセン−2−オンを簡便に、かつ工業的に高収率で製造し得る製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の7−テトラデセン−2−オンの製造方法は、6−ブロモ−1−ヘキセンと1−オクチンとを出発物質とすることを特徴とする。
ここで、最終工程において、位置選択的にケトンを導入することができる。
また、前記最終工程は、末端二重結合のみを酸素酸化する反応を利用することができる。
ここで前記反応は、ワッカー酸化反応であることが好ましい。
また、上記7−テトラデセン−2−オンの製造方法は、6−ブロモ−1−ヘキセン及び1−オクチンから下記式(2)で表される1−テトラデセン−7−インを製造する第一工程と、式(2)で表される1−テトラデセン−7−インから下記式(3)で表される1,7−テトラデセジエンを製造する第二工程と、式(3)で表される1,7−テトラデセジエンから(Z)−7−テトラデセン−2−オンを製造する第三工程とを具備することができる。
【0007】
【化2】
【0008】
ここで、前記第一工程は、n−ブチルリチウムを用いて増炭反応を行うことができる。
また、前記第二工程は、水素ガス吹き込み方法を用いて接触還元反応を行うことができる。
また、総収率は40%以上であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の7−テトラデセン−2−オンの製造方法は、6−ブロモ−1−ヘキセンと1−オクチンとを出発物質とする。具体的には、図1に示すように、第一工程〜第三工程からなる。以下、各工程について詳細に説明する。
なお、原料の比は特記しない限り原料に対するモル比を示す。
【0010】
第一工程においては、n−ブチルリチウムを使用して増炭反応を行う。ここでは、6−ブロモ−1−ヘキセンと1−オクチンとを出発原料として、これに、−55℃〜−70℃の温度で、例えば約−60℃以下で、n−ブチルリチウム(n−BuLi)を溶媒に溶解した溶液を滴下した後、5分〜30分間、例えば約10分間攪拌する。ここで、n−BuLiの替わりに、メチルリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、LiAl4H、LiNa、リチウム錯体、ナトリウム錯体等を用いることができ、溶媒としては、n−ヘキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイミダゾール(DMI)、ジメチルホルムアミド(DMF)等を用いることができる。また、n−BuLiの使用量は、1−オクチンの1当量に対して、1〜1.5当量の範囲であり、約1.2当量であることが好ましく、1−オクチンの使用量は、6−ブロモ−1−ヘキセン(原料1)の1当量に対して、1〜2当量の範囲であり、約1.1当量であることが好ましい。次に、攪拌しつつ、HMPAを5〜15分、例えば約5分かけて滴下し、滴下終了後、約−60℃以下を維持しながら更に10分間攪拌を続ける。また、HMPAの使用量は、n−BuLiの1当量に対して1.5〜3.3当量であり、収率に影響を与えない範囲内で減量することが好ましい。
その後、6−ブロモ−1−ヘキセンを無水THF(dry THF)に溶解した溶液を滴下し、温度を上げて室温にて反応させる。反応時間は一概には言えないが、例えば、室温に戻してから1晩程度である。なお、本発明において室温という場合には、約15℃〜30℃を意味するものとする。
反応終了後、未反応のアニオンを分解するために、温度約−30℃に冷却して飽和アンモニウム水溶液を滴下する。その後室温に戻し、抽出を行うことにより、構造式(2)で表される1−テトラデセン−7−イン(生成物2)が得られる。ここで、飽和アンモニウム水溶液の替わりに、飽和食塩水、蒸留水等を用いることができる。また、有機層を分離した後、水層からエーテルを用いて再抽出を行うことが好ましい。
【0011】
第一工程においては、n−BuLiとHMPAを用いており、反応性も良く、比較的高収率な反応であるが、HMPAは発癌性を示す可能性があるので、反応性を損ねない程度に減量することが好ましい。また、HMPAは試薬としても高価なものである。したがって将来的には、モル比の最適化を図ることによって、HMPAの使用量を限界まで抑えることが可能となるだろう。
【0012】
第二工程においては、反応性の高い水素ガス吹き込み方法を用いて接触還元反応を行うことにより、立体選択性の高いシス型オレフィンを形成する。ここでは、まず前処理を行う。1−テトラデセン−7−イン(生成物2)を無水THFに溶解し、活性炭を添加して懸濁液を作製し、この懸濁液をセライトろ過し、これを原料溶液とする。
反応容器内をアルゴンで置換した後、リンドラー触媒、シリカゲル、キノリン、無水THFと、原料溶液とを添加し、水素ガスを吹き込んで反応を起こさせる。リンドラー触媒の使用量は、1−テトラデセン−7−イン(生成物2)の約3%に該当する量であり、水素ガスの吹き込み量は、0.5〜1.5cm3/秒で、0.5〜3時間である。また、反応時間は一概には言えないが、約1.5時間で反応が完全に完了すると考えられる。
次に、後処理を行う。反応後の溶液をセライトろ過し、濾液を塩酸で洗浄した後、続いて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄、及び、ブライン洗浄を行う。その後、乾燥、精製して、(Z)−1,7−テトラデセジエン(生成物3)を得る。
【0013】
第二工程においては、水素ガス吹き込み方法を利用することによって、従来用いられてきた、水素ガス気流下、強攪拌による反応よりも、反応時間を安定して短縮することができる。例えば、バブリングで水素化を行うことによって、1.5時間で反応が完全に完了した。また、溶媒も乾燥溶媒でなく、通常の一級THFを使用したが問題は生じなかった。
【0014】
第三工程においては、ワッカー酸化(Wacker oxydation)反応を利用して、末端オレフィンのみを酸化する。塩化第二パラジウムと塩化第一銅とを溶媒に溶解した溶液を添加した後、酸素ガスで置換した容器内で約1時間攪拌する。次に、(Z)−1,7−テトラデセジエンの水溶液を滴下した後、一晩(約15時間)、強攪拌して反応を終了させる。反応終了後、後処理を行って抽出により、粗生成物3’を得る。これを更に蒸留により精製を行い、目的とする(Z)−7−テトラデセン−2−オンを得ることができる。ここで、溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイミダゾール(DMI)等を用いることができる。塩化第二パラジウムの使用量は、(Z)−1,7−テトラデセジエン(生成物3)の1当量に対して、1.8〜3.0当量であり、例えば約2.0当量であることが好ましい。塩化第一銅の使用量は、(Z)−1,7−テトラデセジエン(生成物3)の1当量に対して、8〜12当量であり、例えば約10.0当量であることが好ましい。また、溶媒としてDMFを用いる場合には、H2O:DMF=10:1〜5:1の範囲内で混合した水溶液とすることが好ましく、DMF水溶液の使用量は、約0.5〜2.0Lであることが好ましく、例えば、約1.2Lが使用される。
【0015】
第三工程は、位置選択的にケトンを生成させる反応であるが、これまでのフェロモン合成ではあまり実績の無かった反応である。しかし、最も重要で、かつ、今後、フレキシブルに活用されることが期待される反応である。
従来法ではクロム酸を用いたアルコールからの酸化反応によりケトンを合成してきた。ところが、本発明においては、第三工程において、末端二重結合のみを触媒により酸素酸化する反応を採った。その結果、▲1▼有害なクロム酸を使用せず、▲2▼3工程という短ステップで、▲3▼収率が約45%という高収率で、▲4▼安定して、かつ、▲5▼高額で立体選択的な反応が必要な試薬であるジオールを使用せずに目的物である(Z)−7−テトラデセン−2−オンを得ることができる。また、シントンとしてジチアンが用いられることがあるが、本発明によれば、▲6▼その匂いが問題であったジチアンを使用せずに目的物である(Z)−7−テトラデセン−2−オンを得ることができるという利点もある。したがって、第三工程は本発明の目的を達成するための要ともなる反応である。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部は重量部を意味する。
第一工程は、n−ブチルリチウムを用いたカップリング反応を変形したものであり、n−ブチルリチウムを用いて増炭反応を行った。
温度計、三方コック、滴下ロートを備えた3Lの4つ口フラスコに、1−オクチンを138.9g、無水THF(dry THF)を1.2L仕込み、フラスコ内をアルゴンで置換した。アセトン−ドライアイスバス等の冷却手段を用いて−60℃以下に冷却したところに、1.6モルのn−ブチルリチウム(n−BuLi)を含むn−ヘキサン溶液(574mL)を滴下した。なお、n−BuLiの使用量は1−オクチンの1当量に対して1.2当量に該当する。滴下終了後、反応溶液を−60℃以下に維持しながらスリーワンモータを用いて10分間攪拌した。次いで、強く攪拌しつつ、蒸留したヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)の490mLを約5分間で滴下した。なお、HMPAの使用量は、n−BuLiの1当量に対して3当量に該当する。滴下終了後、−60℃以下に維持しながら、10分間スリーワンモータを用いて攪拌を行った。その後、フラスコ内に6−ブロモ−1−ヘキセンを75g含む無水THF溶液(300mL)を滴下した。滴下終了後、アセトン−ドライアイスバスをそのまま放置し、ゆっくりと室温まで戻した後、一晩、室温下でスリーワンモータによる攪拌を行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)およびガスクロマトグラフィー(GC)により反応が終了したことを確認した。
次に、−30℃以下になるまで冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(500mL)を徐々に滴下して未反応のアニオンを分解した。アセトン−ドライアイスバスを取り除き、室温まで戻して攪拌することにより、有機層と水層に分離した。有機層を減圧濃縮し、また水層からはエーテル(500mL)を用いて3回再抽出を行った。減圧濃縮した有機層の残渣と、再抽出を行ったエーテル層とを混合し、その後、ブラインで3回洗浄を行った。これを、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、減圧濃縮して黄色油状の粗生成物(86.5g)を得た。1.2kgのシリカゲルを用いてクロマトグラフィーによる精製を行い、式(2)で示される1−テトラデセン−7−イン(生成物2、75g、収率=84.9%、化学純度(c.p.)=95%)を得た。ただし、クロマトグラフィーによる精製において、展開溶媒は、ヘキサン:エーテル=50:1〜10:1である。
【0017】
第二工程においては、反応性の高い水素ガス吹き込み方法で接触還元反応を行った。
第一工程において得られた1−テトラデセン−7−インについて前処理を行った。すなわち、1−テトラデセン−7−イン(生成物2、75g)を、遮光したナスフラスコ内で無水THF(150mL)に溶解させ、活性炭(10g)を加えてアルゴン置換を行った。その後、遮光したナスフラスコ内の懸濁液を、室温で約30分間、スターラを用いて攪拌した。この懸濁液をセライトろ過し、これを原料溶液とした。
温度計、三方コック、及び、バブル吹き込み用のパスツールピペット(バブラー)を備えた1Lの4つ口フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、リンドラー触媒(2.2g)、シリカゲル(100g)、蒸留キノリン(4.4g)、無水THF(合計700mL)を仕込んだ。ここに、前処理により得られた原料溶液を入れ、300〜400rpmの速度で強く攪拌を行いながら、1cm3/秒で1.5時間、H2ガスを吹き込んだ。なお、フラスコ内における攪拌は、スリーワンモータによる攪拌を行うものとする。また、H2ガスを吹き込み始めて反応が始まると、わずかに温度が上昇し(35℃)、反応が完全に終了すると、室温より低い温度(13℃)になった。薄層クロマトグラフィー(TLC)(ヘキサン:エチルアセテート=10:1)およびガスクロマトグラフィー(GC)により反応終了を確認した。反応は1.5時間で完全に完了した。
次に、アルゴンガスをバブルとして吹き込んだ後、セライトろ過を行い、濾液を1Nの冷HCl水溶液で2回洗浄した。続いて、飽和NaHCO3水溶液で2回洗浄した後、ブラインで1回洗浄を行った。これを、Na2SO4を用いて乾燥した後、減圧濃縮して淡黄色油状の粗生成物(74.9g)を得た。1kgのシリカゲルを用いてクロマトグラフィーによる精製を行って、(Z)−1,7−テトラデセジエン(生成物3、65g、収率=85.8%、c.p.=95%)を得た。ただし、クロマトグラフィーによる精製において、展開溶媒は、ヘキサン:エーテル=2:1である。
【0018】
第三工程において、末端オレフィンのみを酸化する Wacker oxygen 反応を行った。
3方コック及びセプタムを備えた2Lの反応フラスコに、塩化第二パラジウムの119g、及び、塩化第一銅の331.7gをジメチルホルムアミド水溶液(水:DMF=7:1)500mLに溶解した溶液を加えた。フラスコ内を酸素ガスで完全に置換した後、スリーワンモータを用いて1時間攪拌した。次に、フラスコ内に、第2工程において得られた(Z)−1,7−テトラデセジエン(生成物3)の65gをジメチルホルムアミド水溶液(水:DMF=7:1)700mLに溶解した溶液を滴下した。滴下後、酸素ガスのバルーンで圧力を加えた状態で、スリーワンモータを用いて一晩(約15時間)強攪拌を行った。TLC(ヘキサン:エチルアセテート=10:1)及びガスクロマトグラフィー(GC)により反応終了を確認した。
次に、1Nの塩酸水溶液(500mL)を加えて十分に攪拌した後、エチルエーテル(1L)で抽出し、セライトろ過して有機層と水層とを分離した。有機層はエバポレータを用いて減圧濃縮しておく。また、水層は、エーテル(500mL)で3回再抽出を行った後、減圧濃縮しておいた有機層に混合した。これを、ブライン、水のそれぞれで洗浄を行った。次に、Na2SO4を用いて乾燥した後、減圧濃縮し、黒黄色油状の粗生成物3’(64.9g)を得た。続いて、粗生成物3’をシリカゲル(900g)を用いてクロマトグラフィーによる精製を行い、精製物(55g)を得た。ただし、クロマトグラフィーによる精製において展開溶媒は、ヘキサン:エーテル=20:1〜5:1である。更に、この精製物を蒸留により精製し(0.4mmHg,95℃)、目的物である(Z)−7−テトラデセン−2−オン(生成物4、50g、収率=71.1%、c.p.=96.0%)を得た。
第一工程〜第三工程の全工程における目的物の収率は、51.8%であった。
【0019】
従来法において2級水酸基の酸化によりケトン生成を行う場合には、使用する触媒や中間体の保護の必要性等の点から工程数が多くなりがちであったが、本発明によれば、3工程という非常に少ない工程数で目的物を得ることができる。したがって、本発明によれば、出発原料の価格が高くても、工程数が3工程と少ないので、総合的には価格を安価に抑えることができる。
【0020】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、クロム酸および塩化メチレンのいずれをも使用することなく、安定して、高収率で、少ない工程数で、(E)−7−テトラデセン−2−オン及び/又は(Z)−7−テトラデセン−2−オンを製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の7−テトラデセン−2−オンの製造方法を示す図である。
【図2】従来の7−テトラデセン−2−オンの製造方法を示す図である。
Claims (8)
- 6−ブロモ−1−ヘキセンと1−オクチンとを出発物質とすることを特徴とする7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
- 最終工程で、位置選択的にケトンを導入することを特徴とする請求項1記載の7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
- 前記最終工程が、末端二重結合のみを酸素酸化する反応を利用することを特徴とする請求項1又は2記載の7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
- 前記反応が、ワッカー酸化反応であることを特徴とする請求項3記載の7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
- 前記第一工程が、n−ブチルリチウムを用いて増炭反応を行うことを特徴とする請求項5記載の7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
- 前記第二工程が、水素ガス吹き込み方法を用いて接触還元反応を行うことを特徴とする請求項6又は7記載の7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
- 総収率が40%以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の7−テトラデセン−2−オンの製造方法。
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