JP2004298926A - 突合わせ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基準ガイドブロックを上昇させて、各移動フレームを移動させると、その移動最中に基準面28a,28bにワークW1,W2が突当てられる。この際にマグネットユニットの磁力が弱磁力に調節されると、ワークW1,W2が各クランプ板上を摺動して基準面28a,28bに正対する姿勢に補正される。この姿勢補正後、マグネットユニットの磁力が強磁力に変更されると、各支持ブロックが磁化され、各マグネットユニットの各磁石本体が支持ブロック側へ引き寄せられて、ワークW1,W2が各マグネットユニットと各支持ブロックとの間に拘束される。
【選択図】 図11
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線に一致するように第1及び第2ワークの姿勢をそれぞれ補正して、その補正された第1及び第2ワークの縁端同士を突合わせるための突合わせ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車などの車輌を構成する部品のうち、車輌のボディ部品には薄板状の金属板が多用されている。このようなボディ部品には、例えば、材料となる大判の金属板をプレス加工により所望の形状に切り出したものや、或いは、プレス加工により切り出された複数のワーク(被溶接材)を溶接したものが用いられる。ここで、複数のワークを溶接する場合、各ワークはそれぞれ縁端同士が突き合わせられ、その突合わせられた縁端同士がレーザ光により溶接される。この溶接に用いるレーザ光は極めて細い光線であるので、各ワークの縁端同士を確実に密着させて接合不良を防止する必要がある。
【0003】
そこで、本願出願人は、特願2002−96970(未公開)に記載した被溶接物突合わせ方法を提案している。この被溶接物突合わせ方法によれば、第1ワークの左側縁端が基準ピンに突当てられ第1及び第2ワークの理想溶接線に一致するように位置補正された後、その第1ワークがクランプ板により固定される。この固定後、第2ワークは、その左右両側の縁端部分が仮クランプされ、その左右方向の中間部分がベンディングバーの押圧により弾性的に所定量だけ撓められる。
【0004】
第2ワークを撓めた後は、第3ワークの右側縁端が基準ピンに突当てられ第2及び第3ワークの理想溶接線に一致するように位置補正された後、その第3ワークがクランプ板により固定されて、ベンディングバーが鉛直下方へ下降される。すると、第2ワークの撓みが自己の弾性復元力により復元されて、第2ワークの左右両側の縁端が第1ワークの左側縁端と第3ワークの右側縁端とに密着されるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した被溶接物の突合わせ方法では、第1及び第3ワークの縁端のみを基準ピンに突当てて姿勢補正するため、第2ワークについては何ら姿勢補正が施されない。このため、第2ワークが第1及び第3ワークに突き当たる場合、第2ワークの縁端が傾いて、第1ワークや第3ワークの縁端を傷付けてしまうことがあり、これが溶接不良の原因となってしまうという問題点があった。そこで、第2ワークの幅方向両側にガイド部材をそれぞれ設け、そのガイド部材により第2ワークの傾きを矯正する方法も考えられる。
【0006】
しかしながら、第2ワークの加工精度が悪い場合、ガイド部材により第2ワークの幅方向両側をガイドしても、第2ワークの左右両側の縁端が第1及び第2ワークの縁端に対して傾くことがあり、各ワークの縁端間に隙間が生じてしまう。
各ワークの縁端同士を溶接するレーザ光は極めて細いので、各ワークの縁端間に隙間があると溶接箇所に接合不良が生じてしまうという問題点があった。また、寸法精度や形状精度が悪い第2ワークをガイド部材により無理にガイドすると、第2ワークに歪みが生じて、第1ワークや第3ワークとの突合わせ時の密着度が低下してしまうという問題点もあった。
【0007】
また、上記した被溶接材の突合わせ方法では、機械式バネやエアシリンダで作動するクランプ板により各ワークを基準ベースに押圧する固定方式を採用しているため、基準ベースや機械式バネやエアシリンダを支持するフレーム構造を、機械式バネやエアシリンダによる押圧力やその反力に耐え得る剛性強度に製作する必要があり、その分、装置全体としてフレーム構造が大型化してしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、装置全体を小型化できると共に、第1及び第2ワークの寸法精度の如何によらず、第1及び第2ワークの突合わせ前における第1及び第2ワークの位置決め精度を向上でき、且つ、その第1及び第2ワークの突合わせ時における第1及び第2ワークの各縁端同士の密着性を向上できる突合わせ装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために請求項1記載の突合わせ装置は、第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線に一致するように第1及び第2ワークの姿勢をそれぞれ補正して、その補正された第1及び第2ワークの縁端同士を突合わせるものであり、前記理想溶接線を境目に一方側に配設されると共に第1ワークを吸着する磁石とその磁石に対向配置される強磁性体とを有し、その強磁性体及び磁石間に第1ワークを介在させる第1クランプと、前記理想溶接線を境目に他方側に配設されると共に第2ワークを吸着する磁石とその磁石に対向配置される強磁性体とを有し、その強磁性体及び磁石間に第2ワークを介在させる第2クランプと、その第2及び第1クランプ間に配置可能で、その第1クランプ側の端面に形成され前記理想溶接線に略一致する輪郭を有する第1基準面と前記第2クランプ側の端面に形成され前記理想溶接線に一致する輪郭を有する第2基準面とを有する基準ガイドと、その基準ガイドが第1及び第2ワーク間に配置される当接位置と前記基準ガイドが第1及び第2ワーク間に存在しない退避位置との間で前記基準ガイドを移動させるガイド移動手段と、そのガイド移動手段により前記基準ガイドが当接位置に配置される場合にはその基準ガイドへ向けて、及び、その基準ガイドが前記ガイド移動手段により退避位置に配置される場合には前記理想溶接線へ向けて、前記第1及び第2クランプを相対移動させるクランプ移動手段と、そのクランプ移動手段により移動される前記第1及び第2クランプの各磁石の磁力を調節する磁気調節手段とを備えている。
【0010】
この請求項1記載の突合わせ装置によれば、第1ワークは、第1クランプの磁石と強磁性体との間に介在され、その磁石により磁化されて吸着される。ここで、ガイド移動手段により基準ガイドが当接位置に配置された場合、第1ワークの縁端は基準ガイドの第1基準面に対向される。この状態で、クランプ移動手段により第1クランプが基準ガイドへ向けて相対移動されると、第1基準面には第1ワークの縁端が突当てられる。この際に、第1クランプの磁石の磁力は磁気調節手段により弱められ、その磁石上で第1ワークが摺動可能な状態とされる。このため、第1ワークの縁端が第1基準面に対して傾いている場合、第1ワークが第1基準面に突き当り磁石上を摺動することで、第2ワークは、それの縁端と第1基準面の輪郭とが合致するように姿勢が補正される。
【0011】
一方、第2ワークは、第2クランプの磁石と強磁性体との間に介在され、その磁石により磁化されて吸着される。ここで、ガイド移動手段により基準ガイドが当接位置に配置された場合、第2ワークの縁端は基準ガイドの第2基準面に対向される。この状態で、クランプ移動手段により第2クランプが基準ガイドへ向けて相対移動されると、第2基準面には第2ワークの縁端が突当てられる。この際に、第2クランプの磁石の磁力は磁気調節手段により弱められ、その磁石上で第2ワークが摺動可能な状態とされる。このため、第2ワークの縁端が第2基準面に対して傾いている場合、第2ワークが第2基準面に突き当り磁石上を摺動することで、第2ワークは、それの縁端と第2基準面の輪郭とが一合致するように姿勢に補正される。
【0012】
理想溶接線は、第1及び第2ワークを溶接する場合の溶接方向を示す理想線であるため、第1ワークの縁端と第2ワークの縁端とを正確に突合わせた場合における両ワークの境界線と一致する。ここで、第1及び第2基準面はともにこの理想溶接線に略一致する輪郭を有するので、第1基準面の輪郭は第2ワークの縁端形状に略一致する形状となり、第2基準面の輪郭は第1ワークの縁端形状に略一致する形状となる。よって、第2ワークの縁端の代用である第1基準面に第1ワークの縁端を突当てれば、第1ワークの縁端を第2ワークの縁端に合致する向きに補正でき、また、第1ワークの縁端の代用である第2基準面に第2ワークの縁端を突当てれば、第2ワークの縁端を第1ワークの縁端に合致する向きに補正できるのである。
【0013】
このようにして、各ワークの姿勢を補正した後は、第1及び第2クランプの各磁石の磁力が磁気調節手段により強められ、その各磁石に対向する各強磁性体が磁化される。すると、各磁石と各強磁性体との間や、各磁石に吸着された各ワークと各強磁性体との間に磁気引力が生じ、各ワークが各クランプの磁石と強磁性体との双方に吸着された状態で強固に拘束される。その後、基準ガイドがガイド移動手段により退避位置へ移動されると、第1及び第2クランプはクランプ移動手段により理想溶接線へ向けて接近するように相対移動され、この結果、第1及び第2ワークの縁端同士が因り正確に合致した状態で突き合わせられる。
【0014】
請求項2記載の突合わせ装置は、請求項1記載の突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプの磁石及び強磁性体は、第1及び第2ワークの縁端の近傍にそれぞれ配設され、前記理想溶接線の延長方向にそれぞれ延設されている。
【0015】
請求項3記載の突合わせ装置は、請求項1又は2に記載の突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプは、前記基準ガイドが当接位置に配置される状態にて前記クランプ移動手段を実行する場合、前記磁石と前記強磁性体との間にワークの厚みより大きな遊間が設けられている。
【0016】
請求項4記載の突合わせ装置は、請求項3記載の突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプは、前記磁石と前記強磁性体との間に確保される前記遊間の幅を調節する遊間調節手段を備えている。
【0017】
請求項5記載の突合わせ装置は、請求項3又は4に記載の突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプは、前記磁石を前記強磁性体へ向けて移動可能に保持する保持部材と、前記磁石を前記強磁性体から離間する方向へ付勢する付勢部材とを備え、その付勢部材による付勢によって、前記第1及び第2クランプの前記磁石と前記強磁性体との間に設けられる前記遊間を確保するものである。
【0018】
この請求項5記載の突合わせ装置によれば、請求項3又は4に記載の突合わせ装置と同様に作用する上、各ワークを各クランプの磁石及び強磁性体間に拘束する場合、磁石の磁力は磁気調節手段により弱磁力から付勢部材の付勢力を越える強磁力に切り換えられる。すると、各磁石に対向する強磁性体が磁化され、その磁化された各強磁性体と各磁石に吸着された各ワークとの間に付勢部材の付勢力を越える磁気引力が発生する。この磁気引力によって、保持部材により保持された各磁石は、付勢部材の付勢力に抗して強磁性体へ向けて移動し、各強磁性体側へ引き寄せられる。この引き寄せによって、第1及び第2クランプの磁石及び強磁性体間の遊間は縮小され、各ワークは各クランプの磁石と強磁性体とに磁力により吸着して強固に拘束される。
【0019】
請求項6記載の突合わせ装置は、請求項5記載の突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプには、前記理想溶接線の延長方向に複数の前記磁石が隣接して並設され、その複数の磁石は、前記保持部材によってそれぞれ独立に保持され、前記付勢部材によりそれぞれ独立に付勢されている。
【0020】
請求項7記載の突合わせ装置は、請求項1から6のいすれかに記載の突合わせ装置において、前記磁気調節手段は、前記基準ガイドが退避位置に配置される状態にて前記クランプ移動手段を実行する場合、前記第1クランプの磁石を前記第2クランプの磁石とは反対の極性に磁化するものである。
【0021】
請求項8記載の突合わせ装置は、請求項1から7のいすれかに記載の突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプには互いに対向する前記磁石及び強磁性体を連結する連結部材がそれぞれ設けられている。
【0022】
請求項9記載の突合わせ装置は、請求項1から8のいずれかに記載の突合わせ装置において、前記磁石は通電量に応じて磁力が変化する電磁石を備え、前記磁気調節手段はその電磁石への通電量を制御するものである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の突合わせ装置の一実施例であるクランプマシン2を装備したレーザ溶接機1の正面図(前面図)である。図1に示すように、このレーザ溶接機1は、主に、鋼板等の薄板状の強磁性体で形成された溶接対象物(以下、「ワーク」と称す)を所定の溶接位置に位置決めして固定するクランプマシン2と、そのクランプマシン2により固定されるワークをレーザ光で溶接する溶接ユニット3とを備えている。
【0024】
クランプマシン2の下部にはx軸方向に延設される載置テーブル4が配設されており、この載置テーブル4の上面にはワークが載置可能とされている。載置テーブル4はy軸方向へ移動可能な移動フレーム5により下方から支持されており、この移動フレーム5は基礎フレーム6により下方から支持されている。基礎フレーム6は、クランプマシン2の土台となるフレーム構造体であり、床面上に設置されている。
【0025】
基礎フレーム6のx軸方向両側上面には、その基礎フレーム6のy軸方向に延設されるガイドレール8,8がそれぞれ配設され、このガイドレール8,8に移動フレーム5が載架されている。ガイドレール8,8は、移動フレーム5をy軸方向へ案内するものであり、このガイドレール8,8の間であって基礎フレーム6のx軸方向中央にはサーボモータ9が配設されている。サーボモータ9は、ガイドレール8,8上の移動フレーム5をy軸方向へ往復移動させる駆動装置である。
【0026】
クランプマシン2の上部であって載置テーブル4の上方には、その載置テーブル4の上面と対向してマグネットユニット10が配設されている。マグネットユニット10は、マグネット(磁石)の磁力により強磁性体であるワークを磁気誘導により磁化して吸着させるためのものである。マグネットユニット10は載置テーブル4より横長な移動フレーム11に吊設され、この移動フレーム11にはx軸方向に間隔を隔てて2本のガイドロッド12,12が配設されている。
【0027】
ガイドロッド12,12はマグネットユニット10のy軸方向移動を案内する軸状体である。このガイドロッド12,12は、その軸芯がy軸方向を向いた状態で移動フレーム11にそれぞれ挿嵌されており、このガイドロッド12,12の一端部(図1紙面に対する奥側)にマグネットユニット10が連結されている。また、移動フレーム11には、各ガイドロッド12,12の内側にエアシリンダ13,13がそれぞれ配設されており、このエアシリンダ13,13は、マグネットユニット10をy軸方向に移動させる駆動装置である。
【0028】
移動フレーム11の上方にはx軸方向に延びる梁状体である横架フレーム14が配設されており、横架フレーム14は、移動フレーム11が吊設されるものである。この横架フレーム14の下縁にはガイドレール15がx軸方向に延設されており、このガイドレール15には、移動フレーム11の上部が吊着されている。また、移動フレーム11の前面には複数の歯を有するラック16がx軸方向に延設されており、このラック16は歯車であるピニオン17と歯合されている。
【0029】
サーボモータ18は、ラック16に歯合するピニオン17を回転させて移動フレーム11をx軸方向へ往復移動させる駆動装置であり、横架フレーム14のx軸方向中央に固定設置されている。また、横架フレーム14は、クランプマシン2とx軸方向に並設される前段テーブル19の上方にまで延長されている。前段テーブル19は、その上面に溶接前のワークを載置するものであり、この前段テーブル19には、載置されたワークを下方から押し上げるプッシュロッド20が複数本配設されている。更に、横架フレーム14の上縁にはx軸方向に延びるガイドレール21が配設されており、このガイドレール21には、溶接ユニット3が載上されている。図7には、溶接ユニット3の構造がより詳細に図示されている。
【0030】
図7に示すように、溶接ユニット3は、レーザ光線を照射するレーザヘッド3aと、そのレーザヘッド3aを支持する支持体3bと、その支持体3bをxyz空間内で移動させるヘッド移動装置3c(図1参照)と、そのヘッド移動装置3cにより支持体3bがx軸方向へ移動する際にレーザヘッド3aから照射されるレーザ光を2枚のワークの縁端同士を突合わせた突合わせ部(シーム部)に追従するようにトラッキング制御するトラッキングドライバ3dと、シーム部のy軸及びz軸方向位置を検出するためのレーザセンサ3eとを有した溶接ユニットである。この溶接ユニット3によれば、溶接時においてレーザヘッド3aの支持体3bは、ヘッド移動装置3cによりx軸方向上流側(図7右側)から下流側(図7左側)へ移動され、その移動と共にレーザヘッド3aからレーザ光を照射して溶接を行うものである。
【0031】
レーザセンサ3eは、レーザヘッド3aからx軸方向下流側(図7左側)に所定距離(例えば50mm程度)離間した位置に配設されている。このレーザセンサ3eは、y軸方向幅が最大11.5mmのレーザ光を自己の直下に位置するワークのシーム部に照射でき、その反射光をCCD受光素子にて受光することによりワークのシーム部のy軸方向位置と、レーザセンサ3aからワークのシーム部までのz軸方向高低差とを検出することができる。ここで、レーザセンサ3eは、自己が照射したレーザ光の反射光をCCD受光素子で受光するので、ワーク表面の光反射率に関わらず高い検出精度を確保できる。
【0032】
また、レーザセンサ3eは、ワークW1,W2(図14参照)の厚みt1,t2が異なる場合に生じる段差をレーザ光の反射光を用いて検出し、その段差の位置からワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ部であるシーム部のy軸及びz軸方向位置を検出するものである。トラッキングドライバ3dは、溶接開始時にレーザセンサ3eの検出結果に基づいてレーザヘッド3aからシーム部までのz軸方向の距離を調整する一方、溶接が開始されると、レーザセンサ3eにより検出されたシーム部のy軸方向位置に基づいて、その後のレーザヘッド3aの移動先を演算して、x軸方向へ移動するレーザヘッド3aのy軸方向位置をシーム部に追従するように制御(トラッキング制御)するものである。
【0033】
図1に戻って説明する。溶接ユニット3は、レーザヘッド3aの支持体3bをx軸方向へ移動させるためのボールねじ軸22と、ボールねじナット23と、サーボモータ24とを備えており、これらはヘッド移動装置3cの一部を構成している。溶接ユニット3の支持体3bにはボールねじ軸22が螺合されるボールねじナット23が取着されている。ボールねじ軸22及びボールねじナット23は、ねじ軸22のおねじとナット23のめねじとを複数の玉で結合する「ボールねじ」であり、そのボールねじ軸22には、横架フレーム14上に配設されたサーボモータ24が連結されている。サーボモータ24は、ボールねじナット23に螺合するボールねじ軸22を回転させて、溶接ユニット3の支持体3bをx軸方向へ往復移動させる駆動装置である。
【0034】
図2は、図1のII−II線における部分的な側断面図であり、載置テーブル4より下側の部位のみを図示している。尚、図2中の1点鎖線は、載置テーブル4,4’にそれぞれ載置されるワークW1,W2の縁端同士を突合わせた場合にその両縁端が一致すべき理想位置を示した基準線z0を、図中の2点鎖線は突合わせ溶接される二枚一組の溶接対象物であるワークW1,W2を、それぞれ示している。また、基準線z0はz軸と平行な直線である。
【0035】
図2に示すように、載置テーブル4は、その載置テーブル4に比べてy軸方向に長尺な載置テーブル4’とy軸方向に並設され、その載置テーブル4’とは反対側の端部に補助テーブル4”が取着されている。これらの載置テーブル4,4’及び補助テーブル4”は、その上面に複数のフリーベア25がそれぞれ取着され、各フリーベア25の頂部は略面一とされている。複数のフリーベア25は、頂部が外部に露出された球体を転動可能に保持した部材であり、その複数のフリーベア25の球体頂部によりワークW1,W2の下面を支持するものである。よって、ワークW1,W2が載置テーブル4,4’及び補助テーブル4”上を摺動する場合にはフリーベア25の球体が転動するので、ワークW1,W2の下面の損傷を防止できる。また、フリーベア25は球体の頂部にてワークW1,W2の下面に点接触するので、各ワークW1,W2とフリーベア25との間の摩擦抵抗も低減できる。
【0036】
また、載置テーブル4,4’の下方には上記した移動フレーム5が1基ずつ配設されており、2基の移動フレーム5,5はともに上記した一対のガイドレール8,8(図1参照)に載架されている。基礎フレーム6のy軸方向両端部には、上記したサーボモータ9がそれぞれ1基ずつ配設されており、一方のサーボモータ9(図2右側)は載置テーブル4を支持する移動フレーム5を、他方のサーボモータ9(図2左側)は載置テーブル4’を支持する移動フレーム5を、それぞれy軸方向に往復移動させる駆動装置である。
【0037】
また、移動フレーム5,5には、基準線z0から所定長さ隔ててエアシリンダ26,26がそれぞれ配設されており、このエアシリンダ26,26の各シリンダロッドには、先端が各載置テーブル4,4’の上面から突出される係合ロッド27,27の下端が連結されている(図7参照)。また、移動フレーム5,5の対向面間には間隙が設けられており、この間隙には、ワークW1,W2の縁端同士を基準線z0で突合わせる前にワークW1,W2の各縁端の向きを補正するために用いられる基準ガイドブロック28が配設されている。
【0038】
図3は、図1のIII−III線における部分断面図であり、図中の一点鎖線は、載置テーブル4、4’にそれぞれ載置されるワークW1,W2の縁端同士を突合わせる場合、その突合わせられた両縁端が一致すべき理想的位置である基準線x0を示しており、この基準線x0はx軸と平行な直線であり、上記した基準線z0と同一平面(x−z平面)内に存在する。
【0039】
図3に示すように、載置テーブル4,4’にはy軸方向に複数のフリーベア25が等間隔に配列され、更に、そのフリーベア25の配列がx軸方向に平行かつ等間隔で複数並設されている。載置テーブル4,4’には、基準線x0の延長方向に平面視長方形状の支持ブロック29,29がそれぞれ延設されている。支持ブロック29,29は、マグネットユニット10,10(図5参照)と共にワークW1,W2を挟み込んでクランプ(固定)するものであり、各ブロック29,29の対向する縁辺が基準線x0と平行とされている。各支持ブロック29,29はともに鋼材などの強磁性体(強磁性材料)で形成されており、後述するマグネットユニット10,10の磁力により磁気誘導を生じて磁化される特性を有している。また、支持ブロック29,29のx軸方向両側には上記した係合ロッド27がそれぞれ配設され、クランプマシン2には合計4本の係合ロッド27が配設されている。
【0040】
図4は、図1のIV−IV線における部分断面図である。図4に示すように、支持ブロック29,29の上面はともに略水平で且つ略面一とされている。また、各支持ブロック29,29の上方にはマグネットユニット10がそれぞれ1基ずつ配設されている。各マグネットユニット10,10の下端部には、支持ブロック29,29の上面にそれぞれ対向配置されるクランプ板30,30が取着され、クランプ板30,30の下面と支持ブロック29,29の上面とは略平行とされている。クランプ板30,30は、マグネットユニット10,10の中でワークW1,W2に直接吸着する部材であり、磁気誘導により磁化される強磁性体で形成されている。
【0041】
また、移動フレーム5,5の下部にはボールねじナット32が1基ずつ固着され、各ボールねじナット32,32には、y軸方向に軸芯が向いたボールねじ軸31が1本ずつ螺合されている。この2本のボールねじ軸31,31は、その基準線z0側の端部が軸受33,33により枢支される一方、その反基準線z0側の端部がそれぞれ異なるサーボモータ9,9に連結されている。このため、サーボモータ9,9を回転駆動することにより、載置テーブル4,4’は、y軸方向へ往復移動できるのである。
【0042】
図5は、図1のV−V線における部分断面図であり、基準ガイドブロック28が退避位置にある状態を示している。図5に示すように、上記した横架フレーム14の下端面のy軸方向両側には上記したガイドレール15がそれぞれ1本ずつ配設され、この2本のガイドレール15,15によって移動フレーム11がx軸方向へ移動可能に横架フレーム14の下方に吊設されている。また、移動フレーム11には、一対のガイドレール15,15の下方に梁部11a,11bがそれぞれ設けられている。梁部11aには、上記したガイドロッド12が貫通して挿嵌されており、そのガイドロッド12の基準線z0側の端部(図5左側)にはブラケット34が取着されている。
【0043】
ブラケット34は、マグネットユニット10を吊下げた状態で支持するものである。このブラケット34には、z軸方向に軸芯が向いたガイドロッド35がz軸方向に摺動可能に挿嵌されており、このガイドロッド35の下端にはマグネットユニット10の上部が取着されている。よって、マグネットユニット10は、ガイドロッド12及びガイドロッド35によりy軸およびz軸方向に往復移動可能とされている。また、梁部11bには、梁部11aと同様に、上記したガイドロッド12、ブラケット34、ガイドロッド35及びマグネットユニット10が装着されており、梁部11aに装着される各部材12,34,35,10と、梁部11bに装着される各部材12,34,35,10とは、基準線z0に関して対称とされている。
【0044】
基準ガイドブロック28のy軸方向両端面には基準面28aと基準面28bとが形成されている。基準面28aは、一方のワークW1(図5右側)の縁端が突当てられる端面であり、基準面28bは、他方のワークW2(図5左側)の縁端が突当てられる端面である。この基準面28a及び基準面28bは、互いに反対方向を向き且つ互いに平行な滑面状に形成されている。
【0045】
図6(a)は、図5のVI−VI線における断面図であり、基準ガイドブロック28の各基準面28a,28bの輪郭形状とワークW1,W2の縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面(x−y平面)図である。図6(a)に示すように、ワークW1の縁端E1とワークW2の縁端E2とは共にほぼ直線状の輪郭を有している。このため、かかるワークW1,W2の縁端E1,E2同士の突合わせ溶接では、その理想溶接線Lが基準線x0と一致する直線となる。かかる場合、基準ガイドブロック28の基準面28a及び基準面28bは理想溶接線Lの軌跡と一致する直線状の輪郭に形成される。この基準面28a,28bにワークW1,W2の各縁端E1,E2が突当てられると、各縁端E1,E2の向きが互いに平行となるようにワークW1,W2の姿勢が補正されるのである。
【0046】
図7は、図2のVII−VII線における断面図である。なお、図2のVII’−VII’線における断面図は、図7を左右反転したものと略同一であるので、その説明を省略する。
【0047】
図7に示すように、横架フレーム14に吊設される移動フレーム11は、そのx軸方向中央に上記したブラケット34が配設されている。ブラケット34はx軸方向に長尺状に形成されており、その長手方向両端部に上記したガイドロッド35がそれぞれ1本ずつ挿嵌されている。移動フレーム11には、2本のガイドロッド35,35の内側に一対のエアシリンダ36,36が配設されており、この一対のエアシリンダ36,36は、マグネットユニット10をz軸方向に往復移動させる駆動装置である。
【0048】
このエアシリンダ36,36のシリンダロッド36a,36aはz軸下方へ突出され、各シリンダロッド36a,36aの先端にはマグネットユニット10の上部が取着されている。このマグネットユニット10にはx軸方向に複数枚(例えば合計11板)のクランプ板30が若干の隙間(数mm程度)を隔てて隣接して並設されており、複数枚のクランプ板30が支持ブロック29のx軸方向ほぼ全域に渡って設けられている。ここで、図8を参照して、マグネットユニット10の詳細について説明する。
【0049】
図8(a)は、図7に示すマグネットユニット10を部分的に断面視した拡大図である。図8(a)に示すように、マグネットユニット10は、その筐体40に複数基(例えば合計11基)の磁石モジュール41がx軸方向に並設されており、各磁石モジュール41は、クランプ板30が下端に取着される磁石本体42と、その磁石本体42を筐体40にz軸方向へ上下動可能に吊設するホルダ部材43とを備えている。磁石本体42は強磁性体で形成された略円柱状体であり、その軸芯がz軸方向を向いている。磁石本体42の内部には、その磁石本体42の中心軸周りに軸芯部42aが設けられ、この軸芯部42aの外周にコイル42bが巻回されている。尚、各磁石モジュール41は個々に独立したものである。
【0050】
磁石本体42によれば、コイル42bの外周に円筒状の外壁部42cが設けられており、この外壁部42cと軸芯部42aとが一体形成され、この軸芯部42a及び外壁部42cの下端にはクランプ板30の上面が当接して取着されている。よって、コイル42bに通電すると、軸芯部42a、外壁部42c及びクランプ板30が磁化されるのである。また、磁石本体42は、筐体40の底板40bに設けられた円筒状のスリーブ44内にz軸方向へ摺動可能に内設され、この磁石本体42の上方には磁石本体42の上端面と間隔を隔てて筐体40の天板40aが設けられている。
【0051】
ホルダ部材43は、磁石本体42と連結されるロッド43aと、そのロッド43aを付勢する弾性スプリング43bと、その弾性スプリング43bをロッド43aに係止する係止ナット43cとを備えている。ロッド43aの下端には磁石本体42の上端が取着されており、このロッド43aの上端部は天板40aを貫通して筐体40の上方へ突出されている。このロッド43aの上端部には、係止ナット43cが螺合され、この係止ナット43cと天板40aとの間に圧縮バネで構成された弾性スプリング43bが介装されている。この弾性スプリング43bの弾性復元力によって、磁石モジュール41はz軸方向上方(支持ブロック29から離間する方向)へ向けて付勢されている。
【0052】
図8(b)は、図8(a)のB−B線における断面図である。図8(b)に示すように、筐体40の天板40aには、各磁石モジュール41に対応して1本ずつ調節ボルト45が複数螺合され、この各調節ボルト45の頭部は天板40aから各磁石本体42の上端面へ向けて突出されている。しかも、調節ボルト45の頭部には磁石本体42の上端面が当接しており、磁石本体42のz軸方向上方へ向けた移動を規制している。よって、この調節ボルト45の突出量を調節することにより、クランプ板30のz軸方向の位置を変更でき、クランプ板30と支持ブロック29間の遊間85,86(図10参照)の幅を、ワークW1,W2の厚みt1,t2に応じて変更することもできるのである。
【0053】
図7に戻って説明する。マグネットユニット10のx軸方向両側には、その支持ブロック29のx軸方向両側から突出される係合ロッド27,27との対向位置にブラケット37,37が配設されており、各ブラケット37には係合ロッド27を挿入可能な係合孔37aが穿設されている。上記したエアシリンダ26により係合ロッド27を上方へ突出させ係合孔37aに挿入すると、係合ロッド27とブラケット37とが係合されるので、かかる係合によりz軸方向上下に対向配置される載置テーブル4’とマグネットユニット10とを一体的に連結することができる。
【0054】
更に、基準ガイドブロック28は、クランプマシン2のx軸方向に左右対称に一対配設されている。各基準ガイドブロック28のx軸方向両側からは軸芯がz軸方向を向いたガイドロッド38,38が下方に垂設されており、このガイドロッド38,38は、基礎フレーム6に摺動可能にそれぞれ取着されている。2本のガイドロッド38,38の間には、基礎フレーム6に固定されたエアシリンダ39が配設されており、このエアシリンダ39は基準ガイドブロック28をz軸方向へ昇降させる駆動装置である。このエアシリンダ39はシリンダロッド39aがz軸上方へ突出され、そのシリンダロッド39aの先端は基準ガイドブロック28の下部に連結されている。
【0055】
図9は、レーザ溶接機1の電気的構成を示したブロック図である。レーザ溶接機1は、クランプマシン2の各部位の位置制御やトルク制御を行う制御ユニット50を備え、この制御ユニット50は、主に、CPU51と、ROM52と、RAM53と、入出力ポート54と、モニタ55と、入力ユニット56と、インターフェイス57とを備えている。制御ユニット50のCPU51、ROM52、RAM53は、バスラインを介して相互に接続されており、このバスラインは、入出力ポート54にそれぞれ接続されている。入出力ポート54には、更にモニタ55と、入力ユニット56と、インターフェイス57と、モータドライバ58〜60と、電流検出回路61,62と、エンコーダ63〜65と、電磁弁ドライバ66と、マグネットドライバ83,84とが接続されている。
【0056】
CPU51は、ROM52に記憶されている制御プログラムに従って入出力ポート54に接続された各部を制御し、クランプマシン2及び溶接ユニット3の各部の動作を実行する演算装置である。ROM52は、このレーザ溶接機1で実行される制御プログラムや固定値データなどを格納した書換え不能な不揮発性メモリであり、RAM53は、レーザ溶接機1の各動作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するための書換可能な揮発性メモリである。このRAM53には、移動フレーム5を駆動するサーボモータ9をトルク制御する場合に、そのサーボモータ9の出力を最大トルク値未満に制限するために設定される制限トルク値を記憶するための制限トルク値メモリ53aが設けられている。なお、RAM53は、図示しないバックアップ電源により常時電力供給されており、RAM53に記憶されるデータはレーザ溶接機1の電源オフ後も保持される。
【0057】
モニタ55は、レーザ溶接機1の動作制御時に必要となる各種のパラメータの設定状況や、その他のレーザ溶接機1に関する各種情報を表示するための表示装置であり、入力ユニット56は、各種パラメータの入力操作や、レーザ溶接機1を手動操作する場合に作業員により操作されるものである。また、インターフェイス57は、クランプマシン2によりクランプされたワークW1,W2をレーザ光により溶接する溶接ユニット3との間で各種信号やデータを送受信するためのものであり、溶接ユニット3と接続されている。
【0058】
モータドライバ58,59は、直流電動機であるサーボモータ9の駆動電流を制御する駆動回路であり、モータドライバ60は、直流電動機であるサーボモータ18の駆動電流を制御する駆動回路である。モータドライバ58,59の出力端には、サーボモータ9,9がそれぞれ1基ずつ接続されると共に、そのモータドライバ58,59から各サーボモータ9,9へ流れる電流値を検出する電流検出回路61,62が接続されている。各サーボモータ9,9の出力トルク値は、この電流検出回路61,62による検出電流値に基づいて求めることができる。
【0059】
エンコーダ63〜65は、サーボモータ9,9,18の回転変位を検出するためのセンサであり、このエンコーダ63〜65により検出された回転変位に基づいて、載置テーブル4,4’のy軸方向座標値や、マグネットユニット10,10のx軸方向座標値を求めることができる。制御ユニット50では、この求められた座標値に基づいて、サーボモータ9,9,18の回転量を調節して、載置テーブル4,4’(又は移動フレーム5,5)やマグネットユニット10,10(又は移動フレーム11)を目標位置に位置制御している。
【0060】
電磁弁ドライバ66は、4基のエアシリンダ13、4基のエアシリンダ26,4基のエアシリンダ36及び4基のエアシリンダ39にそれぞれ1基ずつ接続される電磁弁67〜82を制御する駆動回路である。また、電磁弁67〜82は、各エアシリンダ13,26,36,39のシリンダロッドを往復動作させるために圧縮空気の供給経路を切り換えると共に、その圧縮空気の供給停止して各エアシリンダ13,26,36,39のシリンダロッドを遊動可能にするものである。また、マグネットドライバ83,84は、マグネットユニット10,10の各磁石モジュール41への通電量を調節して、各磁石モジュール41が生じる磁力を変更するための回路である。
【0061】
次に、上記のように構成されたレーザ溶接機1の動作について説明する。以下の説明で用いる図10から図14は、図5に示したレーザ溶接機1の各部が動作した場合における断面図である。まず、サーボモータ18が回転され、移動フレーム11がx軸方向上流側(図1右側)へ移動されて、移動フレーム11が前段テーブル19の上方位置(図1中の2点鎖線)で位置決めされる。前段テーブル19上にはy軸方向に並べられた2枚のワークW1,W2(図示せず)が載置されており、移動フレーム11の停止後、エアシリンダ36,36,36,36によりマグネットユニット10,10が下降されて、マグネットドライバ83,84によりマグネットユニット10,10の各磁石モジュール41に通電がなされる。
【0062】
一方、この通電と共に、複数本のプッシュロッド20によるワークW1,W2の押し上げを行うと、一方のマグネットユニット10の各クランプ板30にワークW1が吸着され、他方のマグネットユニット10の各クランプ板30にはワークW2が吸着される。この吸着後、エアシリンダ36,36,36,36によりマグネットユニット10,10を上昇させ、且つ、プッシュロッド20を下降させると、ワークW1,W2が前段テーブル19の上方に吊り上げられる。ワークW1,W2の吊り上げ後、サーボモータ18が回転され、移動フレーム11がx軸方向下流側(図1左側)へ移動されて、移動フレーム11が載置テーブル4,4’の上方位置(図1中の実線)で位置決めされると、レーザ溶接機1は、図5に示した状態となる。
【0063】
図5に示した状態において、4本の係合ロッド27(図3参照)の上方には上記した4つブラケット37の係合孔37aがそれぞれ位置決めされており、4基のエアシリンダ26によって、4本の係合ロッド27が最上位置に上昇されると、各係合孔37aに各係合ロッド27が挿入されて、互いに対向する係合ロッド27とブラケット37同士が係合される。この結果、図5において基準線z0よりy軸方向上流側(図5右側)に配設される載置テーブル4とマグネットユニット10とが一体的に連結され、図5において基準線z0よりy軸方向下流側(図5左側)に配設される載置テーブル4’とマグネットユニット10とが一体的に連結される。
【0064】
この後、電磁弁67〜70が電磁弁ドライバ66により中立状態に切り換えられると、各エアシリンダ13,13,13,13はシリンダロッドがy軸方向へ遊動可能な状態となる。この結果、載置テーブル4,4’を支持する移動フレーム5,5がサーボモータ9,9によりy軸方向へ移動される場合に、一方のマグネットユニット10(図5右側)が載置テーブル4と一緒に、他方のマグネットユニット10(図5左側)が載置テーブル4’と一緒に、y軸方向へ移動自在な状態となるのである。しかも、ワークW1,W2の突合わせ時に、マグネットユニット10,10が載置テーブル4,4’に対して相対的にy軸方向へ位置ズレすることがなく、その結果、ワークW1,W2の突合わせ精度を確保できる。
【0065】
その後、エアシリンダ36,36,36,36によりマグネットユニット10,10が最下位置まで下降されると、レーザ溶接機1は、図10に示す状態となる。図10に示すように、マグネットユニット10,10が最下位置に至った状態で、ワークW1を挟んで対向するクランプ板30及び支持ブロック29間にはワークW1の厚みt1より大きな遊間85が確保され、ワークW2を挟んで対向するクランプ板30及び支持ブロック29間にはワークW2の厚みt2より大きな遊間86が確保されている。
【0066】
そこで、遊間85,86を確保したまま、エアシリンダ39,39によって、基準ガイドブロック28を図10に示した最下位置(退避位置)から図11に示した最上位置(当接位置)まで上昇させると、図11に示すように、基準ガイドブロック28の基準面28aがワークW1の縁端E1と対向される一方、基準面28bがワークW2の縁端E2と対向される。図11に示すように、ワークW1,W2は、その縁端E1、E2が支持ブロック29,29の先端面及びクランプ板30,30の先端面より基準ガイドブロック28配設側に突出された状態でクランプ板30,30にそれぞれ吸着されている。
【0067】
支持ブロック29,29はクランプ板30,30より基準ガイドブロック28の配設側に若干突出されるので、移動フレーム5,5を、位置制御によって、図11に示す退避位置から支持ブロック29,29の先端面が基準面28a,28bに当接する直前位置(図12参照)に位置決めするように移動させると、その移動の最中に、基準ガイドブロック28の基準面28aにワークW1の縁端E1が突当てられ、基準ガイドブロック28の基準面28bにワークW2の縁端E2が突当てられる。
【0068】
この際に、マグネットユニット10,10の各磁石モジュール41の磁力は、マグネットドライバ83,84によって、各クランプ板30上でワークW1,W2が摺動可能な程度の弱磁力に調節されているので、基準面28a,28bに対してワークW1,W2の縁端E1,E2がx−y平面内で傾いている場合、ワークW1,W2がクランプ板30上を摺動して、その縁端E1,E2が基準面28a,28bに正対する姿勢に位置補正できる。
【0069】
この結果、ワークW1,W2の縁端E1,E2は、基準線x0(理想溶接線L)に一致する向きに補正される。しかも、ワークW1,W2の縁端E1、E2が基準ガイドブロック28に突当てられてクランプ板30上を摺動する場合、支持ブロック29,29とクランプ板30,30との間には上記した遊間85,86が設けられるので、ワークW1,W2と支持ブロック29,29とが擦れて損傷することを防止することができる
【0070】
図12に示すように、ワークW1,W2を基準ガイドブロック28に突当てて姿勢補正した後は、マグネットドライバ83,84によってマグネットユニット10,10の各磁石モジュール41の磁力が強磁力に変更されると、その各磁石モジュール41により磁化された各クランプ板30及びワークW1,W2の磁界の影響を受けて各支持ブロック29,29が磁化される。この磁化によってワークW1,W2とそれに上下に対向する支持ブロック29,29との間には磁気的な引力(磁気引力)が生じる。
【0071】
これによって、各マグネットユニット10,10の各磁石本体42は、弾性スプリング43bの付勢力に抗して各スリーブ44内を摺動し、支持ブロック29,29側へ引き寄せられる。この引き寄せによって、マグネットユニット10,10の各クランプ板30と各支持ブロック29,29間の遊間85,86が縮小された結果、図13に示すように、ワークW1,W2が各マグネットユニット10,10の磁化されたクランプ板30と磁化された支持ブロック29,29との間に吸着されつつ強固に拘束される。
【0072】
ワークW1,W2をマグネットユニット10,10及び支持ブロック29,29間にて拘束した後は、図13に示すように、移動フレーム5,5を位置制御することによって図12に示す位置から図13に示す退避位置まで移動させた後、更に、エアシリンダ39,39により基準ガイドブロック28を最下位置まで下降させる。このため、ワークW1,W2の縁端E1、E2は、基準ガイドブロック28の下降前に基準面28a,28bから充分に離間されるので、基準ガイドブロック28の下降によりワークW1,W2の縁端E1、E2と基準面28a,28bとが擦れて損傷することを防止できる。
【0073】
基準ガイドブロック28の下降が完了した後は、移動フレーム5,5を基準線z0側へ向けて移動させて、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士が突合わせられる。ここで、移動フレーム5,5のいずれか一方、例えば、載置テーブル4を支持する移動フレーム5(図13右側)の制御方式は、サーボモータ9による位置制御方式から、そのサーボモータ9の出力トルクを制限トルク値メモリ53aに記憶される制限トルク値以下に制限するトルク制御方式に切り換えられる。
【0074】
このため、載置フレーム4を支持する移動フレーム5はトルク制御されたサーボモータ9によりy軸方向下流側(図13左方)へ向けて移動される一方、載置テーブル4’を支持する移動フレーム5(図13左側)は、サーボモータ9を駆動装置とした位置制御によって、ワークW2の縁端E2が基準線z0に一致するようにy軸方向上流側(図13右方)へ移動される。この移動によりワークW1,W2の縁端E1,E2同士が図14に示すように突き合わさると、基準線z0上にてワークW1の縁端E1がワークW2の縁端E2に制限トルク値以下の押圧力によって押し当てられる。よって、本来は直線状であるべきワークW1,W2の縁端E1,E2に湾曲やバリが存在しても、かかる湾曲やバリをワークW1,W2間の押圧により圧潰させることができ、縁端E1,E2間の密着度を高めることができる。
【0075】
図14に示すように、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士が突き合わさると、溶接ユニット3のレーザヘッド3aが下降され、レーザヘッド3aによって縁端E1,E2間にレーザ光が照射されつつ、溶接ユニット3がサーボモータ24によってx軸方向上流側(図1右側)から下流側(図1左側)へ移動されて、ワークW1,W2の縁端E1,E2が溶接される。この溶接時においても、突き合わさったワークW1,W2の縁端E1,E2間には押圧力が作用しているので、レーザ光により溶融された金属が溶け込んで各縁端E1,E2間に残存する隙間を更に縮減できる。また、ワークW2を拘束した載置テーブル4’を駆動するサーボモータ9は最大トルクまで出力可能であるので、ワークW1の押圧力で押し戻されることがなく、ワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ位置が基準線z0からズレ動くこともない。
【0076】
溶接終了後は、レーザヘッド3aが上昇され、マグネットドライバ83,84により、マグネットユニット10,10の各磁石モジュール41への通電が停止される。これにより、各磁石モジュール41の磁力がなくなり、接合されたワークW1,W2がマグネットユニット10,10から離脱して、載置テーブル4,4’上に載置される。この後は、4基のエアシリンダ36によりマグネットユニット10,10が最上位置へ上昇される一方、4基のエアシリンダ26によって、4本の係合ロッド27が最下位置に下降され、各係合孔37aから各係合ロッド27が抜脱される。
【0077】
この結果、載置テーブル4,4’がマグネットユニット10,10とはそれぞれ別々に移動可能となり、その後、電磁弁67〜70が電磁弁ドライバ66により切り換えられて、各エアシリンダ13,13,13,13によって各マグネットユニット10,10がそれぞれ図5に示した位置まで移動される。一方、載置テーブル4,4’を支持する移動フレーム5,5は、溶接後のワークW1,W2が次工程へ搬送された後、サーボモータ9,9によって図5に示す位置までそれぞれ移動される。この後、次のワークW1,W2が前段テーブル19から取り寄せる動作が再び行われる。
【0078】
以上説明したように、本実施例のレーザ溶接機1によれば、従来のように、クランプマシン2によって、ワークW1,W2のいずれか一方の縁端のみを基準ガイドブロック28に突当てて姿勢を補正し、その姿勢補正された一方のワークの縁端を基準面として、他方のワークの姿勢を補正することもできる。しかしながら、本実施例では、クランプマシン2により突合わせられる2枚一組のワークW1,W2は、それぞれ基準ガイドブロック28の基準面28a,28bに別々に突当てられて、それぞれの姿勢が突合わせに適した向きに補正される。
【0079】
このため、ワークW1,W2の一方を基準として他方の姿勢補正を行う従来方式や従来方法のように、非基準側のワークの縁端が傾いたまま、基準側のワークの縁端に突き当たって基準側のワークの縁端が傷付けられるような事故を防止できる。しかも、ワークW1,W2は基準ガイドブロック28に別々に突当てられて姿勢補正(位置補正)されるので、従来方式や従来方法に問題となっていた突合せ時のワーク同士の重なりや乗り上げ現象の発生が防止でき、ワークW1,W2の突合せ時における精度安定性を著しく向上でき、装置の稼働率も向上でき、更に、不良の発生率の削減を達成できるのである。
【0080】
また、弾性スプリング43bによる磁石本体42の付勢力は、ワークW1,W2が支持ブロック29及びクランプ板30の双方に吸着されて拘束される状態(本クランプ状態)での各磁石モジュール41の吸着力の略2.5%程度と極めて弱く、図12に示したようにワークW1,W2が吸着されたクランプ板30を、支持ブロック29から遊間85,86だけ離間させた状態(仮クランプ状態)で吊り上げるために必要な最低限の力とされている。よって、弾性スプリング43bの付勢力が、それとは逆方向に作用する磁石モジュール41の磁気引力の大きな損失となることはない。なお、本実施例では、本クランプ時における弾性スプリング43bの付勢力は略5kgf程度とされ、これに対して磁石モジュール41のクランプ板30によるワークの吸着力は略200kgf程度とすることができる。
【0081】
しかも、上記の通り、ワークW1,W2の本クランプ時には、複数基(合計22基)の磁石モジュール41の磁力を使用するので、支持ブロック29とクランプ板30との間に磁気引力は生じるが、かかる磁気引力の反力がマグネットユニット10や支持ブロック29を支える構造体、各部材4,4’,5,5,6,11,14などに作用することがない。よって、その分、レーザ溶接機1全体としての各部を低剛性化できる。従って、レーザ溶接機1では、クランプマシン2、溶接ユニット3及びワークW1,W2の搬送装置として機能する移動フレーム11などの機能が異なる複数の装置を、各装置の設計上要求される精度を損なうことなく、同一のフレーム構造体に集約させることができる。
【0082】
また、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士を突合わせる場合に、例えば、基準側となるワークW2をクランプするマグネットユニット10の各磁石モジュール41の磁力に比べて、非基準側となるワークW1をクランプするマグネットユニット10の各磁石モジュールの磁力を若干弱めておけば、非基準側のワークW1が支持ブロック29とクランプ板30との間で若干ズレ動くことを許容することもできる。この場合、基準側のワークW2を拘束するマグネットユニット10の各磁石モジュール41に定格以上の電圧を印加して強磁力を発生させることもできる。
【0083】
また、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士を突合わせる場合(図14参照)、マグネットドライバ83,84によって、一方のマグネットユニット10の各磁石モジュール41と、他方のマグネットユニット10の各磁石モジュール41とを反対の極性に磁化させることができる。かかる場合には、一方のマグネットユニット10により磁化されるワークW1と、他方のマグネットユニット10により磁化されるワークW2とは、それぞれ反対の極性に磁化されるので、この磁化により両ワークW1,W2の縁端E1,E2間に生じる磁気引力によって両ワークW1,W2の縁端E1,E2同士を吸着でき、結果、突合わせ後の両ワークW1,W2の縁端E1,E2間の隙間を更に低減できる。
【0084】
また、マグネットユニット10の各磁石モジュール41は、その各ホルダ部材43によってそれぞれが独立した状態で筐体40に吊設されるので、マグネットユニット10や、磁石モジュール41や、磁石本体42や、ホルダ部材43などの機械的精度が多少悪くても、確実にワークW1,W2をクランプすることができる。また、ワークW1,W2のx軸方向両端をガイドせずにワークW1,W2の縁端E1,E2同士を突合わせるので、ワークW1,W2のx軸方向両端をガイドすることにより生じる変形や歪みを防止でき、かかる変形や歪みに起因するワークW1,W2同士の突合わせ精度の低下を防止できる。
【0085】
ところで、ワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ面が理想溶接線L(基準線x0,z0)に対して位置ズレすると、レーザヘッド3aから照射されるレーザ光が支持ブロック29,29と干渉して、レーザ光の出力低下を起こして溶接不良が発生する虞がある。しかしながら、本実施例のレーザ溶接機1では、上記のようにワークW1,W2の突合わせ精度が向上されるので、かかるワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ面が理想溶接線L(又は基準線x0,z0)に対してより正確に一致させることができ、レーザ光と支持ブロック29,29との干渉に起因する溶接不良を防止できる。
【0086】
また、上記のクランプマシン2により高精度に突合わせられたワークW1,W2は、ワークW1,W2の縁端E1,E2のシーム部(接合部)に追従して移動されるレーザヘッド3aにより溶接されるので、溶接時の安定性を飛躍的に向上でき、溶接不良の発生を更に低減できる。
【0087】
次に、上記実施例の変形例について説明する。第2実施例のレーザ溶接機は、上記した第1実施例のレーザ溶接機1に対して、図14に示したワークW1,W2の縁端E1,E2を突合わせる場合における移動フレーム5,5の制御方式をいずれもサーボモータ9,9による位置制御に変更したものである。具体的には、第2実施例のレーザ溶接機1では、載置フレーム4,4’を支持する移動フレーム5,5を別々にサーボモータ9,9により駆動して別々に位置制御することによって、ワークW1,W2の縁端E1,E2が基準線x0,z0に一致するように位置制御している。
【0088】
ワークW1,W2の縁端E1,E2の加工精度が許容限度内である場合、第1実施例のようにトルク制御によってワークW1をワークW2に押圧させて、その縁端E1,E2の湾曲やバリを圧潰させずとも、縁端E1,E2間の密着度を充分に確保することが可能な場合がある。かかる場合には、上記したように移動フレーム5,5を別々にサーボモータ9,9により駆動して別々に位置制御することによって、ワークW1,W2の縁端E1,E2を最小限の力で突合わせることができるので、トルク制御による弊害であるワークW1,W2の材料の曲がりを防止できる。また、溶接熱によるワークW1,W2の熱膨張で支持ブロック29,29及びマグネットユニット10,10を介してサーボモータ9,9に加わる反力を、トルク制御によるトルク制限を受けずにサーボモータ9,9の最大出力トルクの範囲内で担うことができる。
【0089】
第3実施例のレーザ溶接機は、上記した第2実施例のレーザ溶接機がワークW1,W2の縁端E1,E2を基準線x0,z0に一致させるように移動フレーム5,5を位置制御するのに対して、移動フレーム5,5を位置制御する場合にワークW1,W2の縁端E1,E2の目標位置を基準線x0,z0から若干量だけ偏移して、ワークW1,W2間に若干の押し当て力を作用させたものである。
【0090】
第3実施例のレーザ溶接機は、移動フレーム5,5を位置制御する場合、ワークW1の縁端E1のy軸方向の目標位置を基準線x0,z0よりy軸方向下流側に若干量(例えば0mm〜0.2mm程度)だけ偏移させる一方、ワークW2の縁端E2のy軸方向の目標位置を基準線x0,z0よりy軸方向上流側に若干量(例えば0mm〜0.2mm程度)だけ偏移させることで、その双方の偏移量に応じてサーボモータ9,9の出力トルクを増加させ、この増加分の出力トルクでワークW1,W2の縁端E1,E2面間に若干の押し付け力を付与すことができる。しかも、かかる場合にあっても、溶接熱によるワークW1,W2の熱膨張で支持ブロック29,29及びマグネットユニット10,10を介してサーボモータ9,9に加わる反力を、トルク制御によるトルク制限を受けずにサーボモータ9,9の最大出力トルクの範囲内で担うことができるのである。
【0091】
図6(b)は、第4実施例のレーザ溶接機における基準ガイドブロック28の各基準面28a,28bの輪郭形状とワークW1,W2の縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面(x−y平面)図である。
【0092】
第4実施例のレーザ溶接機は、上記した第1実施例に対して、基準ガイドブロック28の形状を変更したものである。図6(b)に示すように、ワークW1の縁端E1とワークW2の縁端E2とが互いにほぼ合致する凹凸状(図中では曲線状で図示している)の輪郭を有する場合、これらの縁端E1,E2同士の突合わせ溶接では、その理想溶接線Lが縁端E1,E2の輪郭と略一致する凹凸状となる。かかる場合、基準面28a及び基準面28bの輪郭が理想溶接線Lの軌跡に略一致するように形成されると、基準面28aの輪郭はワークW2の縁端E2の輪郭に、基準面28bの輪郭はワークW1の縁端E1の輪郭に適合した形状となる。
【0093】
よって、このように形成された基準面28a,28bにワークW1,W2の各縁端E1,E2が突当てられれば、凹凸状の縁端E1,E2同士であっても正確に突合わせることができる。しかも、ワークW1,W2は、ワークW1,W2の縁端E1,E2のシーム部(接合部)に追従して移動されるレーザヘッド3aにより溶接されるので、ワークW1,W2の縁端E1,E2が凹凸状であるために溶接線が凹凸状となっても、レーザ光による溶接を実現することができる。
【0094】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0095】
例えば、本実施例のレーザヘッド3aにツインスポットビーム方式を採用すれば、レーザヘッド3aによる本溶接を行う以前に、ワークW1,W2のシーム部のバリ等を溶かし込みを行うことができ、これによりワークW1,W2の突合せ精度を更に向上させることができる。また、レーザヘッド3aがシングルスポット方式であっても、ヤグレーザ方式を採用することによって、ツインスポットビーム方式と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、本実施例では、マグネットユニット10,10を上方に、支持ブロック29,29を下方に配設したが、これらの位置関係は必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、マグネットユニットと支持ブロックとを上下入れ替えて配設しても良い。また、本実施例では、マグネットユニット10,10に対向する側に各磁石モジュール41により磁化される支持ブロック29,29を配設したが、かかる支持ブロック自体を磁石としても良い。また、本実施例では、クランプ板30及び支持ブロック29の対向面を互いに平行な平面に形成したが、かかるクランプ板及び支持ブロックの対向面は必ずしも平面に限られるものではなく、クランプするワークの凹凸形状に適合する面形状に形成しても良い。
【0097】
また、本実施例では、磁石モジュール41として電磁石を採用したが、かかる磁石モジュールは必ずしも電磁石に限定されるものではなく、磁力を強弱させることが可能であれば永久磁石や永電磁マグネットを採用しても良い。例えば、永久磁石を採用する場合には、クランプ板を磁化させる永久磁石と、その永久磁石をz軸方向に上下させる移動機構とを磁石モジュール内に設け、その移動機構をマグネットドライバにより制御して上下させることで、クランプ板に作用する永久磁石の磁界の強さを調節して、クランプ板の吸着力を調節するのである。
【0098】
また、永電磁マグネットを採用する場合には、クランプ板を磁化させる永久磁石と、その永久磁石の磁界を相殺する電磁石とをマグネットモジュール内に設け、その電磁石への通電量をマグネットドライバにより制御することで、電磁石が発生する磁界の強度を調節して、クランプ板の吸着力を調節するのである。
【0099】
また、第3実施例では、ワークW1,W2を突合わせる場合において基準線x0,z0に対する縁端E1,E2の偏移量を、例えば、略0mm〜0.2mm程度とする旨説明したが、かかる偏移量は、必ずしもこの数値に限定されるものではなく、レーザ光の光線幅やバリの突出量に応じて適宜変更しても良い。
【0100】
【発明の効果】請求項1記載の突合わせ装置によれば、基準ガイドには第1ワークの縁端の向きを補正する第1基準面と、第2ワークの縁端の向きを補正する第2基準面とが設けられるので、かかる第1及び第2基準面に第1及び第2ワークの縁端を突当てることにより第1及び第2ワークの双方を個別にそれぞれ姿勢補正することができる。よって、第1又は第2ワークの一方の縁端が傾いて、その第1又は第2ワークの他方の縁端を傷付けることを防止できるという効果がある。
【0101】
また、基準ガイドの第1及び第2基準面はともに理想溶接線に略一致する輪郭を有するので、第1及び第2ワークを基準ガイドを用いて姿勢補正する場合に、第1ワークの縁端が突当てられる第1基準面を第2ワークの縁端の代用とし、第2ワークの縁端が突当てられる第2基準面を第1ワークの縁端の代用とすることができる。よって、第1基準面に第1ワークの縁端を、又、第2基準面に第2ワークの縁端を突当てれば、第1ワークの縁端を第2ワークの縁端に合致する姿勢に、第2ワークの縁端を第1ワークの縁端に合致する姿勢に、それぞれ補正することができ、結果、各ワークを突合わせる場合に各ワークの縁端同士の密着度を高めることができるという効果がある。
【0102】
しかも、従来のようにガイド部材に因らずとも第1及び第2ワークの縁端同士が合致する状態に第1及び第2ワークの姿勢を正確に補正できるのである。また、第1及び第2ワークの寸法精度や形状精度が多少悪くとも、第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線に略一致する形状であれば、より確実に第1及び第2ワークの縁端同士を密着させて突合わせることができるという効果がある。
【0103】
また、第1及び第2クランプは、磁気調節手段により各磁石の磁力を強めることにより、各磁石に対向する各強磁性体を磁化して、その磁化された各強磁性体及び各磁石間に各ワークを挟んで拘束するものである。よって、クランプ板を機械式バネやエアシリンダにより押し付ける従来のクランプ方式のように、第1及び第2クランプによる各ワークの拘束に伴ってフレーム構造に過大な負荷荷重が作用することがないので、突合わせ装置のフレーム構造の剛性強度を小さくでき、その結果、フレーム構造を軽量かつ小型化できるという効果がある。従って、かかる突合わせ装置のフレーム構造に他の装置、例えば、溶接加工装置や搬送装置を一纏めに集約することもできるのである。
【0104】
請求項2記載の突合わせ装置は、請求項1記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、第1及び第2クランプの磁石及び強磁性体は、第1及び第2ワークの縁端の近傍にそれぞれ配設され理想溶接線の延長方向にそれぞれ延設されるので、第1及び第2ワークの両縁端近傍をその両縁端の延長方向に沿って吸着して拘束できる。このように各ワークを拘束することによって、第1及び第2ワークの縁端を突合わせる場合に、両縁端同士の位置ズレを抑制することができるという効果がある。
【0105】
請求項3記載の突合わせ装置は、請求項1又は2に記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、基準ガイドが当接位置に配置される状態にてクランプ移動手段が実行されると、第1及び第2クランプは基準ガイドへ向けて相対移動され、第1及び第2ワークの縁端が基準ガイドの第1及び第2基準面に突当てられるが、かかる場合、第1及び第2クランプにおける磁石と強磁性体との間には各ワークの厚みより大きな遊間を設けることができる。
【0106】
このため、第1及び第2ワークが基準面に突当てられる場合には、各磁石に吸着された各ワークを、各強磁性体から離間させた状態で各磁石上を摺動させることができ、各ワークと各強磁性体との間に生じる摩擦抵抗も回避でき、更に、各強磁性体の表面との摩擦による各ワーク表面の傷付を防止できるという効果がある。
【0107】
請求項4記載の突合わせ装置によれば、請求項3記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、第1及び第2クランプは、遊間調節手段によって磁石と強磁性体との間に確保される遊間の幅を調節できるので、厚みが異なるワークを取り扱う場合でも、そのワークの厚みに適した幅の遊間を確保できるという効果がある。
【0108】
請求項5記載の突合わせ装置によれば、請求項3又は4に記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、磁気調節手段により磁石の磁力を強弱させることによって、磁石と強磁性体との間に設けられる遊間を開閉して、ワークが磁石にのみ吸着される仮クランプ状態とワークが磁石と強磁性体との双方に密着して吸着される本クランプ状態とを切り換えることができるという効果がある。
【0109】
請求項6記載の突合わせ装置は、請求項5記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、第1及び第2クランプには理想溶接線の延長方向に複数の磁石が隣接して並設されるので、この複数の磁石によって理想溶接線の延長方向に延在する各ワークの縁端をほぼ連続的に吸着することができるという効果がある。このため、ワークの縁端をその延在方向に飛び飛びに磁石で吸着する場合に危惧されるワークの歪みを抑制できるという効果がある。
【0110】
また、複数の磁石はそれぞれ独立に保持部材により保持され且つそれぞれ独立に付勢部材により付勢されるので、磁気調節手段により磁力が強められ強磁性体との間に付勢部材の付勢力より強力な磁気引力が作用すると、複数の磁石がそれぞれ独立して強磁性体に引き寄せられて、その複数の磁石がそれぞれ個別にワークを強磁性体との間で挟み込むのである。このように複数の磁石が分担してワークを強磁性体との間に挟み込むので、個々の磁石と強磁性体との平行度に若干の狂いがあっても、複数の磁石全体としてはワークを強磁性体との間に強固に固定することができるという効果がある。
【0111】
請求項7記載の突合わせ装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、基準ガイドが退避位置に配置される状態にてクランプ移動手段が実行されると、第1及び第2クランプは理想溶接線へ向けて相対移動され、第1及び第2ワークの縁端同士が突合わせられるが、かかる場合、磁気調節手段によって、第1クランプの磁石を第2クランプの磁石とは反対の極性に磁化することができる。よって、第1クランプの磁石により磁化される第1ワークと、第2クランプの磁石により磁化される第2ワークとは、それぞれ反対の極性に磁化されるので、両ワークの縁端間に磁気引力を生じさせることができる。この結果、突合わせられる両ワークの縁端間には磁気引力による吸着力が生じるので、その両縁端間の隙間を更に低減できるという効果がある。
【0112】
請求項8記載の突合わせ装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、第1クランプの磁石及び強磁性体は連結部材により連結され、第2クランプの磁石及び強磁性体は連結部材により連結されるので、第1及び第2クランプをクランプ移動手段により理想溶接線へ向けて相対移動させ第1及び第2ワークの縁端同士を突合わせる場合、各クランプの磁石が強磁性体に対して相対的にズレ動くことを防止することができるという効果がある。このため、第1及び第2ワークの縁端同士を突合わせ時における各ワークのズレ動きを防止して、各ワークの位置決め精度を保持しつつ突合わせを行うことができるという効果がある。
【0113】
請求項9記載の突合わせ装置によれば、請求項1から8のいずれかに記載の突合わせ装置の奏する効果に加え、電磁石への通電量を磁気調節手段により制御することによって、第1クランプ及び第2クランプの各磁石の磁力を電気的に瞬時に変更できるので、仮クランプ状態から本クランプ状態に変更する間までの応答速度を、空気圧シリンダ等の機械的方式による場合に比べて大幅に高速化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の突合わせ装置の一実施例であるクランプマシンを装備したレーザ溶接機の正面図である。
【図2】図1のII−II線における部分的な側断面図である。
【図3】図1のIII−III線における部分断面図である。
【図4】図1のIV−IV線における部分断面図である。
【図5】図1のV−V線における部分断面図である。
【図6】(a)は、図5のVI−VI線における断面図であって基準ガイドブロックの各基準面の輪郭形状と各ワークの縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面図であり、(b)は、第4実施例のレーザ溶接機における基準ガイドブロックの各基準面の輪郭形状と各ワークの縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面図である。
【図7】図2のVII−VII線における断面図である。
【図8】(a)は、図7に示すマグネットユニットを部分的に断面視した拡大図であり、(b)は、(a)のB−B線における断面図である。
【図9】レーザ溶接機の電気的構成を示したブロック図である。
【図10】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図11】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図12】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図13】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図14】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【符号の説明】
2 クランプマシン(突合わせ装置)
9,9 サーボモータ(クランプ移動手段)
10,10 マグネットユニット(第1クランプの一部、第2クランプの一部)
27 係合ロッド(連結部材の一部)
28 基準ガイドブロック(基準ガイド)
28a,28b 基準面(第1基準面、第2基準面)
29,29 支持ブロック(第1クランプの強磁性体、第2クランプの強磁性体、第1クランプの一部、第2クランプの一部)
30 クランプ板(磁石の一部、電磁石)
37 ブラケット(連結部材の一部)
39,39 エアシリンダ(ガイド移動手段)
40 筐体(保持部材の一部)
42 磁石本体(磁石の一部、電磁石)
43b 弾性スプリング(付勢部材)
44 スリーブ(保持部材の一部)
45 調節ボルト(遊間調節手段)
83,84 マグネットドライバ(磁気調節手段)
85,86 遊間
E1,E2 ワークの縁端(第1ワークの縁端、第2ワークの縁端)
L 理想溶接線
W1,W2 ワーク(第1ワーク、第2ワーク)
t1,t2 厚み(第1ワークの厚み、第2ワークの厚み)
Claims (9)
- 第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線に一致するように第1及び第2ワークの姿勢をそれぞれ補正して、その補正された第1及び第2ワークの縁端同士を突合わせるための突合わせ装置において、
前記理想溶接線を境目に一方側に配設されると共に第1ワークを吸着する磁石とその磁石に対向配置される強磁性体とを有し、その強磁性体及び磁石間に第1ワークを介在させる第1クランプと、
前記理想溶接線を境目に他方側に配設されると共に第2ワークを吸着する磁石とその磁石に対向配置される強磁性体とを有し、その強磁性体及び磁石間に第2ワークを介在させる第2クランプと、
その第2及び第1クランプ間に配置可能で、その第1クランプ側の端面に形成され前記理想溶接線に略一致する輪郭を有する第1基準面と前記第2クランプ側の端面に形成され前記理想溶接線に一致する輪郭を有する第2基準面とを有する基準ガイドと、
その基準ガイドが第1及び第2ワーク間に配置される当接位置と前記基準ガイドが第1及び第2ワーク間に存在しない退避位置との間で前記基準ガイドを移動させるガイド移動手段と、
そのガイド移動手段により前記基準ガイドが当接位置に配置される場合にはその基準ガイドへ向けて、及び、その基準ガイドが前記ガイド移動手段により退避位置に配置される場合には前記理想溶接線へ向けて、前記第1及び第2クランプを相対移動させるクランプ移動手段と、
そのクランプ移動手段により移動される前記第1及び第2クランプの各磁石の磁力を調節する磁気調節手段とを備えていることを特徴とする突合わせ装置。 - 前記第1及び第2クランプの磁石及び強磁性体は、第1及び第2ワークの縁端の近傍にそれぞれ配設され、前記理想溶接線の延長方向にそれぞれ延設されていることを特徴とする請求項1記載の突合わせ装置。
- 前記第1及び第2クランプは、前記基準ガイドが当接位置に配置される状態にて前記クランプ移動手段を実行する場合、前記磁石と前記強磁性体との間に第1及び第2ワークの厚みより大きな遊間が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の突合わせ装置。
- 前記第1及び第2クランプは、前記磁石と前記強磁性体との間に確保される前記遊間の幅を調節する遊間調節手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の突合わせ装置。
- 前記第1及び第2クランプは、前記磁石を前記強磁性体へ向けて移動可能に保持する保持部材と、前記磁石を前記強磁性体から離間する方向へ付勢する付勢部材とを備え、
その付勢部材による付勢によって、前記第1及び第2クランプの前記磁石と前記強磁性体との間に設けられる前記遊間を確保するものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の突合わせ装置。 - 前記第1及び第2クランプには、前記理想溶接線の延長方向に複数の前記磁石が隣接して並設され、
その複数の磁石は、前記保持部材によってそれぞれ独立に保持され、前記付勢部材によりそれぞれ独立に付勢されていることを特徴とする請求項5記載の突合わせ装置。 - 前記磁気調節手段は、前記基準ガイドが退避位置に配置される状態にて前記クランプ移動手段を実行する場合、前記第1クランプの磁石を前記第2クランプの磁石とは反対の極性に磁化するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の突合わせ装置。
- 前記第1及び第2クランプは、前記磁石及び強磁性体を連結する連結部材を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の突合わせ装置。
- 前記磁石は通電量に応じて磁力が変化する電磁石を備え、
前記磁気調節手段はその電磁石への通電量を制御するものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の突合わせ装置。
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