JP2004292850A - 金属粉末とその製造方法およびそれを用いた異方導電膜 - Google Patents

金属粉末とその製造方法およびそれを用いた異方導電膜 Download PDF

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鉄也 桑原
Hideki Kashiwabara
秀樹 柏原
Kohei Shimoda
浩平 下田
Masatoshi Mashima
正利 真嶋
Keiji Koyama
恵司 小山
Hideaki Toshioka
英昭 年岡
Masamichi Yamamoto
正道 山本
Kazumasa Okada
一誠 岡田
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Abstract

【課題】現状よりもさらに異方導電特性に優れた異方導電膜を形成しうる、新規な金属粉末とその製造方法、ならびに上記金属粉末を用いた、さらなる高密度実装化の要求に十分に対応できる異方導電膜を提供する。
【解決手段】金属粉末は、微細な金属粒を多数、枝分かれのない直鎖状に繋いだ形状を有するとともに、当該鎖の形状を近似した曲線の、両末端における接線と、この曲線の両末端間を結ぶ直線とがなす角度の最大値を20°以下とした。製造方法は、金属粒のもとになる金属イオンと、還元剤と、分散剤とを含み、かつ磁場をかけた、実質的にかく拌しない静止状態の液中から、還元剤の作用によって金属イオンを還元して金属粒を析出させ、磁場によって多数の金属粒と直鎖状に繋いで金属粉末を形成する。異方導電膜は、鎖の長さが、導電接続する、接続部を構成する隣り合う電極間の距離未満とされた上記の金属粉末を、膜の厚み方向に配向させた状態で含有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鎖状の金属粉末とその製造方法、ならびに上記金属粉末を用いた異方導電膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板上に半導体パッケージを実装したり、あるいは2つのプリント配線板上の導体回路同士を電気的に接続するとともに、両プリント配線板を互いに結合、固定したりするエレクトロニクス実装の方法の1つに、フィルム状の異方導電膜を用いた方法がある(例えば特許文献1、特許文献2等参照)。
例えば半導体パッケージの実装の場合は、プリント配線板への実装面に複数のバンプを配列して接続部を形成した半導体パッケージと、当該半導体パッケージを実装する領域に、上記バンプとピッチを合わせて複数の電極を配列して接続部を形成したプリント配線板とを用意する。そしてこの両者の接続部を相対向させて、その間に異方導電膜を挟んだ状態で、両接続部の各々のバンプと電極とが1対1で膜の面方向に重なるように位置合わせしながら熱接着を行うことで、半導体パッケージが基板上に実装される。
【0003】
またプリント配線板同士の接続の場合は、それぞれの接続位置に、互いにピッチを合わせて複数の電極を配列して接続部を形成した2つのプリント配線板を用意する。そしてこの両者の接続部を相対向させて、その間に異方導電膜を挟んだ状態で、同様に両接続部の各々の電極が1対1で膜の面方向に重なるように位置合わせしながら熱接着を行うことで、配線板同士が接続される。
かかるエレクトロニクス実装に用いる異方導電膜は一般に、粉末状の導電成分を、例えば熱可塑性樹脂や硬化性樹脂等の結着剤を含む、感熱接着性を有する膜中に分散させた構造を有する。
【0004】
また異方導電膜は、膜の面方向に重なった各々のバンプ−電極対や電極−電極対が、隣接する他の対のバンプや電極と短絡する、膜の面方向の短絡が発生するのを防止すべく、面方向の導電抵抗(「絶縁抵抗」という)が高くなるように、導電成分の、式(1):
【0005】
【数1】
Figure 2004292850
【0006】
で求められる充てん率を調整してある。なお式中の、固形分の総体積とは、膜を、前記のように導電成分と結着剤とを固形分として用いて形成する場合、この両者の体積の合計量である。
そして熱接着を行うと、その際の加熱、加圧によって異方性導電膜が厚み方向に圧縮されることで、当該厚み方向の導電成分の充てん率が上昇し、導電成分同士が互いに近接もしくは接触して導電ネットワークを形成する結果、厚み方向の導電抵抗(「接続抵抗」という)が低くなる。しかしこの際、異方導電膜の面方向における導電成分の充てん率は増加しないため、面方向は、絶縁抵抗が高く導電率が低い初期の状態を維持する。
【0007】
このため異方導電膜は、厚み方向の接続抵抗が低く、かつ面方向の絶縁抵抗が高い異方導電特性を有するものとなり、かかる異方導電特性に基づいて、
* 前述したような膜の面方向の短絡が発生するのを防止して、各バンプ−電極対や電極−電極対ごとの、それぞれ電気的に独立した状態を維持しつつ、
* 各対の、1対1で膜の面方向に重なったバンプ−電極間、電極−電極間を良好に導電接続する
ことが可能となる。
【0008】
またそれとともに、膜の持つ感熱接着性によって、プリント配線板上に、半導体パッケージを熱接着によって固定したり、プリント配線板同士を熱接着によって固定したりできる。
このため異方導電膜を用いれば、エレクトロニクス実装の作業が容易になる。
従来の異方導電膜中に含まれる導電成分としては、例えば平均粒径が数μm〜数十μm程度で、かつその形状が粒状、球状、薄片状(鱗片状、フレーク状)などであるNi粉末や、あるいは表面に金メッキを施した樹脂粉末などの、種々の金属粉末が実用化されている。
【0009】
また従来の異方導電膜においては通常、上記の金属粉末を、前記式(1)で求められる充てん率が7〜10体積%となるように含有させている。
しかし近時、この充てん率の範囲では、熱接着後の厚み方向の接続抵抗の値が十分でなく、より一層、接続抵抗を低くすることを求められる場合が増加しつつある。
そこで、厚み方向の接続抵抗をこれまでよりもさらに低くするべく、導電成分としての金属粉末の充てん率を、上記の範囲より高くすることが考えられる。
【0010】
しかしそうした場合、前記の一般的な金属粉末を用いた従来の異方導電膜では、膜の面方向の絶縁抵抗まで低くなるため、同方向の短絡を生じやすくなるという問題がある。
そして、これらの問題を生じやすいために従来の異方導電膜は、接続部を構成する、隣接するバンプ間、電極間のピッチが50μm以上でないと良好な異方導電特性を維持することができず、エレクトロニクス実装の分野におけるさらなる高密度実装化の要求に十分に対応できなくなりつつあるのが現状である。
【0011】
そこで発明者は先に、金属のイオンと還元剤とを含む液中で、還元剤の作用によって金属のイオンを還元させて、微細な金属粒として析出させる還元析出法(特許文献3〜5参照)を利用して、当該金属粒が多数、鎖状に繋がった形状を有する金属粉末を製造し、それを異方導電膜の導電成分として用いることを検討した。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−102523号公報(第0009欄、第0010欄、図2)
【特許文献2】
特開平8−115617号公報(第0003欄、図1)
【特許文献3】
特開平11−302709号公報(第0007欄、第0008欄)
【特許文献4】
特許第3018655号公報(第0005欄)
【特許文献5】
特開2001−200305号公報(第0007欄〜第0010欄)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
発明者の検討によると、例えばNi、Fe、Coなどの常磁性を有する金属やその合金などを、上記還元析出法によって析出させると、液中で、多数の金属粒が、自身の持つ常磁性によって自然に鎖状に繋がって、鎖状の金属粉末を形成する。
この鎖状の金属粉末を導電成分として用いて異方導電膜を形成するには、まず金属粉末を、結着剤などと配合して液状の複合材料を調製する。次にこの複合材料を膜状に塗布した状態で磁場をかけて、鎖状の金属粉末を膜の厚み方向に配向させながら固化させる。そうすると、鎖状の金属粉末が膜の厚み方向に配向された異方導電膜が製造される。
【0014】
かかる異方導電膜は、膜の厚み方向に配向した鎖状の金属粉末の作用によって、これまでよりも異方導電特性が向上する。
すなわち鎖状の金属粉末を膜の厚み方向に配向させると、膜の面方向では、隣り合う金属粉末同士が接触する機会を極力少なくすることができるので、金属粉末間に介在する樹脂の絶縁性によって十分な絶縁抵抗を確保することができる。また膜の厚み方向では、同方向に配向させた多数の、鎖状の金属粉末による良好な導電ネットワークが形成されるため、接続抵抗をこれまでよりも低くすることができる。
【0015】
そこで発明者は、上記の異方導電膜を用いて、エレクトロニクス実装の分野におけるさらなる高密度実装化の要求に対応することを検討した。
ところが、前述した還元析出法によって製造される現状の鎖状の金属粉末を、上記のように膜の厚み方向に配向させた異方導電膜は、確かに、粒状などの他の形状の金属粉末を用いたものに比べて異方導電特性は向上するものの、特に膜の面方向の絶縁抵抗が未だ十分でない場合があり、隣接するバンプ間、電極間のピッチを50μm未満、特に40μm以下の範囲内でも小さくすればするほど、短絡を生じるおそれが高まることが判明した。
【0016】
本発明の主たる目的は、現状よりもさらに異方導電特性に優れた異方導電膜を形成しうる、新規な金属粉末を提供することにある。
また本発明の他の目的は、上記の金属粉末を製造するための製造方法を提供することにある。
そして本発明のさらに他の目的は、上記の金属粉末を用いることによって、例えば接続部を構成する隣接するバンプ間、電極間のピッチが50μm未満、より好ましくは40μm以下であっても短絡の発生を現状よりもさらに確実に防止することができ、特に半導体パッケージなどの実装用として、さらなる高密度実装化の要求に十分に対応できる異方導電膜を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するため、発明者は、通常の還元析出法によって製造した、従来の、鎖状の金属粉末について解析を行った。その結果、かかる金属粉末は多数の枝分かれを有していたり、あるいはメインの鎖が大きく曲がったりしていることが多い上、多数の金属粉末が凝集している場合もあり、たとえ磁場をかけて鎖を膜の厚み方向に配向させたとしても、配向した隣り合う金属粉末間での接触を確実に防止できないため、接続部を構成する隣接するバンプ間、電極間で短絡が発生するおそれのあることが判った。
【0018】
そこで発明者は、鎖状の金属粉末の形状についてさらに検討した。
そして多数の金属粒を、枝分かれのない直鎖状に繋ぐとともに、メインの鎖をできる限り直線状にすると、配向した隣り合う金属粉末間での接触を防止して、異方導電膜の異方導電特性をこれまでよりもさらに向上することができ、接続部を構成する隣接するバンプ間、電極間での短絡の発生をより確実に防止できることを見出した。
【0019】
そこで発明者は次に、メインの鎖の直線性をどのようにして評価すればよいかについてさらに検討した。
その結果、金属粉末の顕微鏡映像を撮影し、それを画像解析して、例えば図2に太線の実線で示すように金属粉末の形状を近似した曲線Lに変換するとともに、当該曲線Lの、両末端における接線L、Lと、上記曲線Lの両末端間を結ぶ直線Lsとを求めた後、両接線L、Lと直線Lsとがなす角度θ、θ、…を測定することによって、金属粉末の、メインの鎖の直線性を評価することを考え出した。つまり直線性を評価しようとする多数の金属粉末について測定した上記角度θ、θ、…の、全ての金属粉末中での最大値が小さければ小さいほど、各金属粉末のメインの鎖は、曲線Lの両末端間を結ぶ直線Lsに近い、直線性に優れたものであると評価することができるのである。
【0020】
そこで上記角度の最大値の、許容できる範囲についてさらに検討した結果、角度の最大値が20°以下であれば、鎖状の金属粉末は、異方導電膜の異方導電特性をこれまでよりもさらに向上しうる、直線性に優れたものと評価できることを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって請求項1記載の発明は、微細な金属粒を多数、枝分かれのない直鎖状に繋いだ形状を有するとともに、当該鎖の形状を近似した曲線の、両末端における接線と、この曲線の両末端間を結ぶ直線とがなす角度の最大値を20°以下としたことを特徴とする金属粉末である。
【0021】
また、かかる鎖状の金属粉末を、従来同様に異方導電膜中で厚み方向に良好に配向させるためには、当該鎖状の金属粉末が、磁場をかけることによって容易に配向するように常磁性を有しているのが好ましく、そのためには金属粉末が、常磁性を有する金属を含んでいるのが好ましいことが判った。
したがって請求項2記載の発明は、鎖状の金属粉末、またはこの金属粉末を形成する個々の金属粒を、常磁性を有する金属単体、常磁性を有する2種以上の金属の合金、常磁性を有する金属と他の金属との合金、もしくは常磁性を有する金属を含む複合体にて形成したことを特徴とする請求項1記載の金属粉末である。
【0022】
また、前述した還元析出法によって、上記のように枝分かれのない直線性に優れた鎖状の金属粉末を製造するためには、
* 金属粒のもとになる金属のイオンと、還元剤とを含む、還元析出反応用の液に、さらに分散剤を含有させておくとともに、
* 当該液に一定方向の磁場をかけながら、液を実質的にかく拌せずに静置した状態で、還元析出反応を行わせる
のが重要であることが判った。
【0023】
すなわち、液を実質的にかく拌せずに静置した状態にして還元析出反応を行わせると、液中に析出した多数の金属粒や、それが繋がった鎖に、かく拌による応力が影響するのを防止することができる。そして、液にかけた一定方向の磁場によって、液中に析出した多数の金属粒を、磁場に対応した方向によりきれいに、一直線に配列させて鎖を形成することができる。
しかも液に分散剤を含有させておくと、上記のように多数の金属粒が一直線に並んで形成された鎖の周りを当該分散剤が包むことによって、枝分かれの発生を抑制したり、多数の金属粉末が凝集するのを防止したりすることができる。
【0024】
このため、枝分かれのない直鎖状で、なおかつ直線性に優れた鎖状の金属粉末を製造することが可能となる。
したがって請求項3記載の発明は、金属粒のもとになる金属のイオンと、還元剤と、分散剤とを含む液に一定方向の磁場をかけながら、当該液を実質的にかく拌せずに静置した状態で、還元剤の作用によって金属のイオンを還元させて、液中に微細な金属粒を析出させるとともに、析出させた金属粒を多数、磁場の作用によって直鎖状に繋がらせることで、請求項1または2記載の金属粉末を製造することを特徴とする金属粉末の製造方法である。
【0025】
なお上記の製造方法において言うところの、液を実質的にかく拌せずに静置した状態としては、液のかく拌速度で表して0.1rpm以下、とくに0rpmとした状態が好ましい。これにより、前記のように液中に析出した金属粒や、それが繋がった鎖に、かく拌による応力が影響するのを防止して、金属粉末の直線性を向上することができる。
また磁場の強さは、磁束密度で表して5mT以上であるのが好ましい。磁場の強さを5mT以上とすると、地磁気や液の抵抗等に打ち勝って、析出初期の段階の微細な金属粒を、かけた磁場に対応する方向にきれいに配列できるため、やはり金属粉末の直線性を向上することができる。
【0026】
したがって請求項4記載の発明は、液のかく拌速度を0.1rpm以下、磁場の強さを5mT以上とすることを特徴とする請求項3記載の金属粉末の製造方法である。
液に加える分散剤としては、従来公知の種々の分散剤が、いずれも使用可能であり、とくに前述したように、枝分かれの発生を抑制したり、多数の金属粉末が凝集するのを防止したりする効果を考慮すると、含硫黄系分散剤、アミン系分散剤、カルボン酸基を有する炭化水素系分散剤などの高分子系分散剤が好ましい。
【0027】
したがって請求項5記載の発明は、分散剤として、含硫黄系分散剤、アミン系分散剤、およびカルボン酸基を有する炭化水素系分散剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の高分子系分散剤を用いることを特徴とする請求項3記載の金属粉末の製造方法である。
また、かかる分散剤の使用量は、還元析出法によって液中に析出させる金属粉末100重量部に対して、4〜200重量部であるのが好ましい。分散剤の使用量が上記の範囲未満では、当該分散剤による、枝分かれの発生を抑制したり、多数の金属粉末が凝集するのを防止したりする効果が不十分となって、金属粉末が、多数の枝分かれを有するものとなったり、あるいは多数の金属粉末が凝集したりするおそれがある。また逆に、分散剤の使用量が上記の範囲を超える場合には、液の粘度が高くなりすぎて、液中に析出した金属粒がきれいに一直線状に繋がるのを妨げるおそれがある。
【0028】
したがって請求項6記載の発明は、分散剤を、析出させる金属粉末100重量部に対して4〜200重量部の割合で液に含有させることを特徴とする請求項5記載の金属粉末の製造方法である。
前記本発明の金属粉末を用いて、高密度実装化の要求に十分に対応しうる、異方導電特性に優れた異方導電膜を形成するためには、金属粉末の鎖を、先に述べたように膜の厚み方向に配向させるとともに、当該金属粉末の鎖の長さを、導電接続する、接続部を構成する隣り合う電極間の距離未満とする必要がある。これにより、膜の厚み方向に配向させた金属粉末が熱接着時に膜の面方向に倒れこんでも、隣り合う電極間で短絡が発生するのをより確実に防止することができる。
【0029】
したがって請求項7記載の発明は、鎖の長さが、導電接続する、接続部を構成する隣り合う電極間の距離未満とされた請求項1または2記載の金属粉末を、導電成分として、膜の厚み方向に配向させた状態で含有することを特徴とする異方導電膜である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
〈金属粉末〉
本発明の金属粉末は、前記のように微細な金属粒を多数、枝分かれのない直鎖状に繋いだ形状を有するとともに、当該鎖の形状を近似した曲線の、両末端における接線と、上記曲線の両末端間を結ぶ直線とがなす角度の最大値(以下「最大接線角度」という)θmaxが20°以下であることを特徴とするものである。
【0031】
金属粉末が枝分かれのない状態とは、例えば図1に示すように、全ての金属粉末がいずれも、全く枝分かれを有しない状態を指す。枝分かれが少しでもあれば、隣り合う金属粉末同士で短絡したり、あるいは枝が絡み合って凝集したりするためである。
金属粉末の最大接線角度θmaxが20°以下に限定される理由は、先に述べたとおりである。なお最大接線角度θmaxは0°、すなわちいずれの金属粉末も完全に直線状であるのが最も理想的であるが、金属粉末の生産性等を考慮すると上記の許容範囲(θmax≦20°)内であるものを用いることで、十分に発明の目的を達成することができる。
【0032】
最大接線角度θmaxを測定する具体的な方法の一例を説明すると、まず前記図1に示すように測定したい金属粉末の顕微鏡映像を、CCDカメラ等を用いてコンピュータに取り込む。なお図に示した顕微鏡映像は、金属粉末を樹脂中に分散した液状の混合物を基材上に膜状に塗布し、磁場をかけて金属粉末を膜の面方向に配向させた状態で混合物を固化させて得たサンプルの表面を撮影したものである。
【0033】
次に取り込んだ顕微鏡映像をコンピュータで画像解析して、図2に太線の実線で示すように金属粉末の形状を近似した曲線Lに変換する。なお図では、上側の曲線Lが放物線に変換され、下側の曲線Lがサイン波状に変換されているが、金属粉末の形状によってはその他の曲線に変換される場合もある。
そしてコンピュータを用いて、それぞれの曲線Lについて、両末端における接線L、Lと、両末端間を結ぶ直線Lsとを求めるとともに、接線L、Lと曲線Lとがなす角度θ、θ、θ、θを測定して、その中での最大値を最大接線角度θmaxとする。
【0034】
金属粉末の、その他の物性値については、当該金属粉末の用途等に応じて適宜、設定することができる。
例えば前述した、接続部を構成する隣接するバンプ間、電極間のピッチが50μm未満、より好ましくは40μm以下という高密度実装化の要求に対応した異方導電膜用の金属粉末においては、その太さを規定する、金属粒の一次粒子径が500nm以下であるのが好ましい。金属粒の一次粒子径が500nmを超える場合には鎖が太くなりすぎて、接続部を構成する隣接するバンプ間、電極間で短絡を生じやすくなるおそれがある。
【0035】
ただし、金属粒の一次粒子径があまりに小さすぎると、鎖が細くなりすぎるとともに、金属粉末自体のサイズが小さくなり過ぎて、導電成分としての機能が不十分になるおそれがある。よって金属粒の一次粒子径は、上記の範囲内でも特に30nm以上であるのが好ましい。
また鎖の、太さDと長さLとの比L/Dで規定されるアスペクト比は、前述した、鎖状の金属粉末による、異方導電膜に異方導電特性を付与する効果を考慮すると、10以上であるのが好ましい。すなわちアスペクト比が10未満の金属粉末は、異方導電膜中で膜の厚み方向に配向させても良好な導電ネットワークを形成することができず、膜の厚み方向の接続抵抗を十分に低くできない場合があり、その結果として異方導電膜に良好な異方導電特性を付与できないおそれがある。
【0036】
また、後述する異方導電膜のところでも説明するが、熱接着時に、膜の厚み方向に配向させた金属粉末が横倒しになっても、接続部を構成する隣接するバンプ間、電極間で短絡が発生するのをより確実に防止することを考慮すると、金属粉末の鎖の長さは、接続部を構成する隣り合う電極間の距離未満であるのが好ましい。
また、上述した横倒し時の短絡を防止する効果をさらに確実なものとするためには、鎖の長さは、隣り合う電極間の距離の0.9倍以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
本発明の金属粉末は、その用途等に応じて、種々の金属にて形成することができる。例えば異方導電膜用の金属粉末は、膜中で厚み方向に良好に配向させるために、磁場をかけることによって容易に配向するように常磁性を有しているのが好ましく、そのためには金属粉末が、常磁性を有する金属を含んでいるのが好ましい。
常磁性を有する金属を含む金属粉末の具体例としては、下記(a)〜(f)のいずれか1種、もしくは2種以上の混合物などを挙げることができる。
(a) 常磁性を有する金属単体、常磁性を有する2種以上の金属の合金、または常磁性を有する金属と他の金属との合金から形成したサブミクロンオーダーの金属粒を、自身の磁性によって多数個、鎖状に繋がらせた金属粉末。
(b) 上記(a)の金属粉末の表面にさらに、常磁性を有する金属単体、常磁性を有する2種以上の金属の合金、または常磁性を有する金属と他の金属との合金からなる金属層を析出させて、金属粒間を強固に結合した金属粉末。
(c) 上記(a)の金属粉末の表面にさらに、他の金属や合金からなる金属層を析出させて、金属粒間を強固に結合した金属粉末。
(d) 上記(b)の金属粉末の表面にさらに、他の金属や合金からなる金属層を析出させて、金属粒間を強固に結合した金属粉末。
(e) 常磁性を有する金属単体、常磁性を有する2種以上の金属の合金、または常磁性を有する金属と他の金属との合金から形成した粒状の芯材の表面を、他の金属や合金からなる被覆層で被覆して複合体を得、この複合体を金属粒として、芯材の磁性によって多数個、鎖状に繋がらせた金属粉末。
(f) 上記(e)の金属粉末の表面にさらに、他の金属や合金からなる金属層を析出させて、金属粒間を強固に結合した金属粉末。
【0038】
金属粒や芯材等を形成する、常磁性を有する金属または合金としては、例えばNi、Fe、Coおよびこれらのうち2種以上の合金等をあげることができ、とくにNi単体やNi−Fe合金(パーマロイ)等が好ましい。かかる金属や合金にて形成した金属粒は、鎖状に繋がる際の磁気的な相互作用が強いため、金属粒間の接触抵抗を低減して、金属粉末内での導電性を向上する効果に優れている。
また上記の、常磁性を有する金属や合金とともに(c)〜(f)の複合体を形成する他の金属としては、Cu、Rb、Rh、Pd、Ag、Re、PtおよびAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の、導電性に優れた金属やその合金などをあげることができる。金属粉末の導電性を向上することを考慮すると、これらの金属で形成する部分は、上記(c)〜(f)のように鎖の外表面に露出している部分であるのが好ましい。被覆は、例えば無電解めっき法、電解めっき法、還元析出法、真空状着法などの種々の成膜方法によって形成できる。
【0039】
なお金属層や被覆層は、上記の金属や合金からなる単層構造を有していてもよいし、同一または異なる金属や合金からなる2層以上の積層構造を有していてもよい。
本発明の金属粉末は、その直線性を活かして、異方導電膜用以外にも、例えば異方性電磁波シールド部材、透光性電磁波シールド部材などの導電成分として使用することも可能である。
【0040】
〈金属粉末の製造方法〉
上記本発明の金属粉末は、先に述べた本発明の製造方法によって製造することができる。
本発明の製造方法においては、まずチタンイオンなどの還元剤と、錯化剤と、分散剤と、そして金属粒のもとになる1種または2種以上の金属のイオンとを含有する還元析出反応用の水性の液を調製する。
【0041】
次にこの液に一定方向の磁場をかけながら、当該液を実質的にかく拌せずに静置した状態で、アンモニア水等を加えて液のpHを9〜10に調整する。
そうすると3価のチタンイオンが錯化剤と結合して配位化合物を形成して、Ti(III)からTi(IV)に酸化する際の活性化エネルギーが低くなり、還元電位が高くなる。具体的には、Ti(III)とTi(IV)との電位差が1Vを超える。この値は、Ni(II)からNi(0)への還元電位や、Fe(II)からFe(0)への還元電位などに比べて著しく高く、各種の金属のイオンを効率よく還元、析出させることができる値である。
【0042】
そしてTi(III)が還元剤として機能して、自身がTi(IV)に酸化する際に、同じ液中に存在する1種または2種以上の金属のイオンを還元して液中に析出させる。すなわち液中に、上記金属単体または合金からなる微細な金属粒が多数、析出する。
析出した金属粒は、先に説明したように液中に含有させた分散剤と、液にかけた磁場と、そして液を実質的にかく拌せずに静置させていることとの相乗作用によって、液にかけた磁場に対応する方向、具体的には磁場の磁束線に沿う方向にきれいに配列しながら鎖状に繋がって、枝分かれのない直鎖状の、しかも直線性に優れた金属粉末を形成する。また、このあとさらに析出を続けると、上記金属粉末の表面にさらに金属層が析出して、金属粒同士を強固に結合する。
【0043】
つまり前記(a)(b)などの金属粉末や、その元になる金属粒、あるいは前記(e)(f)の金属粉末の元になる複合体のうち芯材などを、上記の方法によって製造することができる。
このうち金属粒や芯材は個々の粒径が揃っており、一次粒子径の粒度分布がシャープである。これは、還元反応が系中で均一に進行するためである。したがってかかる金属粒や芯材から形成される金属粉末はいずれも、太さが均一に揃っている。
【0044】
金属粉末を製造した後の液は、電解再生を行うことで、何度でも繰り返し、還元析出法による金属粉末の製造に再利用することができる。すなわち、金属粉末を製造した後の液を電解処理することで、Ti(IV)をTi(III)に還元してやれば、再び還元析出用の液として使用することができる。これは、還元析出時にチタンイオンが殆ど消費されない、つまり析出させる金属とともに殆ど析出されないためである。
【0045】
還元剤としてのチタンイオンは、例えば三塩化チタンや四塩化チタンなどの、水溶性の塩として供給する。
四塩化チタンを使用する場合は、上に述べた使用後の液を再生する時と同様に液を電界処理して、Ti(IV)をTi(III)に還元した状態で、還元析出反応に供すればよい。
またTi(IV)は金属粒の成長を抑制する機能を有する上、液中で、Ti(III)とともに複数個ずつがクラスターを構成して、全体として水和および錯体化した状態で存在する。
【0046】
このため電界処理の条件を調整して、液中に、Ti(III)とTi(IV)とが共存した状態で還元析出反応を行うようにすると、1つのクラスター中で、1つの同じ金属粒に、Ti(III)による成長促進の機能と、Ti(IV)による成長抑制の機能とが作用して、金属粒を通常よりもゆっくり成長させることができる。そしてこの方法によれば、金属粒の真球度を高めることができる上、その一次粒子径をより小さくすることができる。
【0047】
しかもこの方法によれば、電解処理の条件を調整して、Ti(III)とTi(IV)の存在比率を調整することによって、上述したクラスター中での、両者の、相反する機能の強弱の割合を変更できるため、金属粒の一次粒子径を任意に制御することも可能である。
錯化剤としては、例えばエチレンジアミン、クエン酸、酒石酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸などのカルボン酸や、あるいはそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0048】
分散剤としては、先に述べたように含硫黄系分散剤、アミン系分散剤、カルボン酸基を有する炭化水素系分散剤などの高分子系分散剤が好ましい。
また分散剤は、これも先に述べたように、析出させる金属粉末100重量部に対して4〜200重量部の割合で液に含有させるのが好ましい。
なお分散剤を加えることによる、枝分かれの発生を抑制する効果などをより一層、良好なものとするためには、当該分散剤は、析出させる金属粉末100重量部に対して40重量部以上の割合で液に含有させるのがさらに好ましい。また、液の粘度が高くなりすぎるのを防止して、液中に析出した金属粒がよりスムースに、直鎖状に繋がるのを促進することを考慮すると、分散剤は、析出させる金属粉末100重量部に対して170重量部以下の割合で液に含有させるのがさらに好ましい。
【0049】
分散剤は、前述した枝分かれの発生を抑制したり、金属粉末の凝集を防止したりする機能に加えて、鎖の過剰な成長を抑制する機能をも有している。したがって分散剤の、析出させる金属粉末100重量部に対する割合を上記の範囲内で調整することによって、鎖の長さを任意に制御することも可能である。具体的には、分散剤の割合を多くするほど鎖の長さを短くすることができ、逆に割合を少なくするほど鎖の長さを長くことができる。
【0050】
金属のイオンは、当該金属の水溶性の塩として供給する。
液のかく拌速度は、前述したように0.1rpm以下であるのが好ましく、0rpm、つまり全くかく拌しない状態が特に好ましい。
また液にかける磁場の強さは、これも前述したように5mT以上であるのが好ましい。なお磁場の強さは、金属粒をよりきれいに直線状に配列させることを考慮すると、強ければ強いほど好ましいことになるが、磁場があまりに強すぎてもそれ以上の効果が期待できない上、かかる強い磁場を発生させるためのコイルや永久磁石が大掛かりになるという問題がある。
【0051】
したがって、液にかける磁場の強さは8T以下であるのが好ましい。
〈異方導電膜〉
本発明の異方導電膜は、鎖の長さが、導電接続する、接続部を構成する隣り合う電極間の距離未満とされた、本発明の鎖状の金属粉末を、導電成分として、膜の厚み方向に配向させた状態で含有することを特徴とするものである。
(金属粉末)
金属粉末としては、前述した本発明の金属粉末の特徴を有し、なおかつ鎖の長さを上記の範囲内、特に隣り合う電極間の距離の0.9倍以下に調整した種々の金属粉末を使用することができる。
【0052】
金属粉末の鎖の長さを上記の範囲に調整するためには、先に述べたように、還元析出法によって金属粉末を製造するに際し、液に含有させる分散剤の割合を調整するなどの方法を採用すればよい。
ただし、鎖の長さがあまりに短すぎると、膜の厚み方向に配向させた状態としても良好な導電ネットワークを形成することができず、膜の厚み方向の接続抵抗を十分に低くできない場合がある。このため鎖の長さは、導電接続する、接続部を構成する複数の電極の、高さのばらつきよりも大きいことがさらに好ましい。
【0053】
また金属粉末は、膜の厚み方向に良好に配向させることを考慮すると、磁場をかけることによって容易に配向するように常磁性を有しているのが好ましく、そのためには前述した(a)〜(f)のいずれかの構成とするのが好ましい。
また膜の厚み方向に良好な導電ネットワークを形成して、同方向の接続抵抗をより一層、低くすることを考慮すると、金属粉末は、導電性に優れた金属またはその合金からなる被覆などを有しているのが好ましく、そのためには上記の中でも(c)〜(f)の構成を採用するのがさらに好ましい。
【0054】
ただし、後述する実施例、比較例の結果から明らかなように、上記被膜を有さない(a)(b)などの単純な構造の金属粉末であっても、膜の厚み方向の接続抵抗を、十分に実用可能な範囲まで低くすることは可能である。
(結着剤)
鎖状の金属粉末とともに異方導電膜を形成する結着剤としては、当該用途において結着剤として従来公知の、成膜性および接着性を有する種々の化合物がいずれも使用可能である。かかる結着剤としては、例えば熱可塑性樹脂や硬化性樹脂、液状硬化性樹脂などがあり、特に好ましくはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂などをあげることができる。
【0055】
(異方導電膜とその製造方法)
本発明の異方導電膜は、前記のように金属粉末の鎖を、膜の厚み方向に配向させた状態で固定している必要がある。
かかる異方導電膜は、
(A) 下地面と交差する方向に磁場をかけた下地上に、鎖状の金属粉末と結着剤とを、適当な溶媒とともに所定の割合で配合して調製した複合材料を塗布して、金属粉末の鎖を、上記磁場の方向に沿う膜の厚み方向に配向させた状態で複合材料を固化または硬化させることによって、金属粉末の鎖の配向を固定するか、あるいは
(B) 鎖状の金属粉末を、下地面と交差する方向に磁場をかけた下地上に散布して、金属粉末の鎖を、上記磁場の方向に配向させた状態で、結着剤を含む、流動性を有する塗剤を塗布して固化または硬化させることによって、金属粉末の鎖の配向を固定したのち、
下地からはく離することによって製造できる。
【0056】
なお(A)の方法で使用する複合材料や(B)の方法で使用する塗剤は、液状硬化性樹脂等の液状の結着剤を用いることで、溶媒を省略してもよい。
これらの方法を実施する際にかける磁場の強さは、金属粉末中に含まれる、常磁性を有する金属の種類や割合等によって異なるものの、異方導電膜中の金属粉末を、当該膜の厚み方向に十分に配向させることを考慮すると、磁束密度で表して1mT以上、中でも10mT以上、とくに40mT以上であるのが好ましい。
【0057】
磁場をかける方法としては、ガラス基板、プラスチック基板などの下地の上下に磁石を配置する方法や、あるいは下地として磁石の表面を利用する方法などをあげることができる。後者の方法は、磁石の表面から出る磁力線が、当該表面から、異方導電膜の厚み程度までの領域では、磁石の表面に対してほぼ垂直であることを利用したもので、異方導電膜の製造装置を簡略化できるという利点がある。
【0058】
かくして製造した異方導電膜における、前記式(1)で求められる、導電成分としての金属粉末の充てん量は、0.05〜20体積%とするのが好ましい。
またその厚みは、異方導電膜を介して電極とバンプ、あるいは電極と電極を圧着させた際に良好に導電接着させることを考慮すると、10μm〜100μmであるのが好ましい。
上記本発明の異方導電膜は、導電成分としての、鎖状の金属粉末の機能により、例えば半導体パッケージの実装において、隣接する電極間のピッチが50μm未満、より好ましくは40μm以下であっても短絡を生じることが無い。このためエレクトロニクス実装の分野における、さらなる高密度実装化の要求に十分に対応することが可能となる。
【0059】
なお本発明の異方導電膜は、上記の用途以外にも、例えばIC用ソケットのピン実装用などにも使用できる。また、現在はワイヤボンディングやμBGA(μボールグリッドアレイ)接続している三次元パッケージに使用することも可能である。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
〔金属粉末の作製〕
純水に、分散剤としてのポリアクリル酸〔平均分子量1,000,000、和光純薬(株)製〕を溶解して、当該ポリアクリル酸の濃度が2g/リットルの分散性溶媒とした。ポリアクリル酸の、析出させる金属粉末100重量部に対する割合は83重量部であった。
【0061】
次にこの分散性溶媒に、硫酸ニッケルと、クエン酸三ナトリウムとを溶解し、次いで三塩化チタンを混合して還元析出反応用の液を調製した。次に述べるpH調整後の液における各成分のモル濃度は、Ni(II)が0.04モル/リットル、クエン酸が0.3モル/リットル、Ti(III)が0.1モル/リットルとした。
次にこの液を、円筒状の電磁石コイル内に配置した反応槽中に入れ、電磁石コイルに電流を流して、コイルの中心軸上で20mTの磁場をかけた状態で、アンモニア水と、必要に応じて少量の分散性溶媒とを加えて液のpHを9に調整するとともに、各成分のモル濃度を上記の値に調整して、還元析出反応を開始させた。液温は23±1℃とし、液のかく拌はなしとした。
【0062】
そして、15分経過時点で液中に析出した沈殿をロ別し、水、次いでエタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥して鎖状の金属粉末を得た。
〔異方導電膜の製造〕
2種の固形エポキシ樹脂〔旭化成(株)製の品番6099(樹脂Aとする)、6144(樹脂Bとする)〕と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤〔旭化成(株)製の品番HX3721(硬化剤とする)〕とを、重量比で樹脂A/樹脂B/硬化剤=70/30/40の割合で、酢酸ブチルとメチルイソブチルケトンとの重量比75/25の混合溶媒に溶解して、樹脂分、すなわち樹脂A、樹脂Bおよび硬化剤の3成分の合計の濃度が40重量%である樹脂溶液を調製した。
【0063】
次にこの樹脂溶液に、前記式(1)で求められる充てん率が0.5体積%となるように、先に作製した鎖状の金属粉末を配合し、遠心かく拌ミキサーを用いてかく拌して均一に分散させることで、異方導電膜用の液状の複合材料を調製した。
そしてこの複合材料を、PETフィルム上に、ドクターナイフを用いて塗布した後、40mTの磁場をかけながら80℃で5分間、次いで100℃で10分間、加熱して溶媒を乾燥、除去するとともに樹脂を予備硬化させて、鎖状の金属粉末が膜の厚み方向に配向した状態で固定された、厚み40μmの異方導電膜を製造した。
【0064】
実施例2
金属粉末の作製に用いる分散性溶媒として、ポリアクリル酸の濃度を0.5g/リットルに調製したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、鎖状の金属粉末を作製した。ポリアクリル酸の、析出させる金属粉末100重量部に対する割合は21重量部であった。
またこの鎖状の金属粉末を同量、用いたこと以外は実施例1と同様にして、鎖状の金属粉末が膜の厚み方向に配向した、厚み40μmの異方導電膜を製造した。
【0065】
比較例1
金属粉末の作製時に、分散性溶媒ではなく、ポリアクリル酸を含有しない単なる純水を用いるとともに、還元析出反応時の液を、400rpmのかく拌速度でかく拌しつづけたこと以外は実施例1と同様にして、鎖状の金属粉末を作製した。
またこの鎖状の金属粉末を同量、用いたこと以外は実施例1と同様にして、鎖状の金属粉末が膜の厚み方向に配向した、厚み40μmの異方導電膜を製造した。
【0066】
金属粉末の形状評価
実施例、比較例で作製した鎖状の金属粉末を、実施例1で使用したのと同じ樹脂溶液中に所定量、配合し、遠心かく拌ミキサーを用いてかく拌して均一に分散させることで形状評価用の液状の複合材料を調製した。
次にこの複合材料を、PETフィルム上に、ドクターナイフを用いて塗布した後、40mTの磁場をかけながら80℃で5分間、次いで100℃で10分間、加熱して溶媒を乾燥、除去するとともに樹脂を予備硬化させて、鎖状の金属粉末が膜の面方向に配向した、厚み40μmの形状評価用の膜を作製した。
【0067】
そして図1に示すように、上記膜の表面の顕微鏡映像を、顕微鏡に接続したCCDカメラを用いてコンピュータに取り込み、コンピュータで画像解析を行って、写り込んだ全ての金属粉末について枝分かれの有無を確認するとともに、全ての金属粉末の、メインの鎖を近時曲線に変換した。なお図1は、実施例1の金属粉末を含む膜の顕微鏡映像である。
そして全ての近時曲線について、図2に太線の実線で示すように金属粉末の形状を近似した曲線Lに変換するとともに、当該曲線Lの、両末端における接線L、Lと、上記曲線Lの両末端間を結ぶ直線Lsとを求めた後、両接線L、Lと直線Lsとがなす角度θ、θ、…を測定して、その最大値を、最大接線角度θmaxとした。
【0068】
さらに全ての曲線Lについて全長を求めて、金属粉末の最大長とした。
接続抵抗の測定
幅15μm、長さ50μm、厚み2μmのAu電極が15μm間隔で配列された電極パターンを有するFPCの、上記電極パターン上に、実施例、比較例で製造した異方導電膜を重ねて、80℃に加熱しながら0.1N/mmの圧力で10秒間、加圧して仮接着した。
【0069】
次にこの異方導電膜上に、片面にAl膜を蒸着したガラス基板を、Al膜が異方導電膜と接するように重ねた状態で、200℃に加熱しながら3N/mmの圧力で加圧して本接着した。
そして異方導電膜とAl膜とを介して導電接続された隣り合う2つのAu電極間の抵抗値を測定し、この測定値を1/2にして、異方導電膜の厚み方向の接続抵抗とした。
【0070】
絶縁抵抗の測定
幅15μm、長さ50μm、厚み2μmのAu電極が15μm間隔で配列された電極パターンを有するFPCの、上記電極パターン上に、実施例、比較例で製造した異方導電膜を重ねて、80℃に加熱しながら0.1N/mmの圧力で10秒間、加圧して仮接着した。
次にこの異方導電膜上に、今度はAl膜を蒸着していないガラス基板を重ねた状態で、200℃に加熱しながら3N/mmの圧力で加圧して本接着した。
【0071】
そして異方導電膜を介してガラス基板が熱接着された、隣り合う2つのAu電極間の抵抗値を測定して、異方導電膜の面方向の絶縁抵抗とした。
以上の結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
Figure 2004292850
【0073】
表より、比較例1で作製した金属粉末は、多数の枝分かれを有しており、また最大長が大きい上、多数が凝集していて最大接線角度θmaxを求めることができなかった。
また比較例1の金属粉末を用いた異方導電膜は、膜の厚み方向の接続抵抗が0.1Ωであって、接続抵抗は良好であったが、膜の面方向の絶縁抵抗が1GΩであって、絶縁抵抗は未だ十分でなかった。
【0074】
これに対し、実施例1、2で作製した金属負末は、いずれも全く枝分かれを有しておらず、また最大長が小さい上、最大接線角度θmaxが20°以下であって直線性にも優れていること判った。
また実施例1、2の金属粉末を用いた異方導電膜はいずれも、膜の厚み方向の接続抵抗が0.1Ωであって、接続抵抗は良好である上、膜の面方向の絶縁抵抗が100GΩ、および50GΩという高い値を示し、絶縁抵抗にも優れることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、実施例1で作製した金属粉末の粒子形状を示す顕微鏡写真である。
【図2】金属粉末の、鎖の形状を近似した曲線から、当該鎖の直線性を評価するための最大接線角度を求める方法を説明する図である。

Claims (7)

  1. 微細な金属粒を多数、枝分かれのない直鎖状に繋いだ形状を有するとともに、当該鎖の形状を近似した曲線の、両末端における接線と、この曲線の両末端間を結ぶ直線とがなす角度の最大値を20°以下としたことを特徴とする金属粉末。
  2. 鎖状の金属粉末、またはこの金属粉末を形成する個々の金属粒を、常磁性を有する金属単体、常磁性を有する2種以上の金属の合金、常磁性を有する金属と他の金属との合金、もしくは常磁性を有する金属を含む複合体にて形成したことを特徴とする請求項1記載の金属粉末。
  3. 金属粒のもとになる金属のイオンと、還元剤と、分散剤とを含む液に一定方向の磁場をかけながら、当該液を実質的にかく拌せずに静置した状態で、還元剤の作用によって金属のイオンを還元させて、液中に微細な金属粒を析出させるとともに、析出させた金属粒を多数、磁場の作用によって直鎖状に繋がらせることで、請求項1または2記載の金属粉末を製造することを特徴とする金属粉末の製造方法。
  4. 液のかく拌速度を0.1rpm以下、磁場の強さを5mT以上とすることを特徴とする請求項3記載の金属粉末の製造方法。
  5. 分散剤として、含硫黄系分散剤、アミン系分散剤、およびカルボン酸基を有する炭化水素系分散剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の高分子系分散剤を用いることを特徴とする請求項3記載の金属粉末の製造方法。
  6. 分散剤を、析出させる金属粉末100重量部に対して4〜200重量部の割合で液に含有させることを特徴とする請求項5記載の金属粉末の製造方法。
  7. 鎖の長さが、導電接続する、接続部を構成する隣り合う電極間の距離未満とされた請求項1または2記載の金属粉末を、導電成分として、膜の厚み方向に配向させた状態で含有することを特徴とする異方導電膜。
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