JP5494299B2 - 磁性粉体の脱磁方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁性粉体の脱磁方法に関する。
異方性導電フィルムは、絶縁性接着剤に導電粒子を分散させ、得られた分散物をフィルム状に成形することにより製造されている。この場合、導電粒子として、配線のファインピッチ化に応じて粒径がいっそう小さなものが使用されるようになっており、また、異方性導電接続に適した導電性と変形性とを示し、しかも比較的入手コストが易いニッケルメッキ被膜で被覆された樹脂粒子(以下、ニッケル被覆樹脂粒子と称する)の使用が望まれている。
ところが、ニッケル被覆樹脂粒子を導電粒子を使用した異方性導電フィルムで半導体チップを配線基板に異方性導電接続した場合、異方性導電接続の際に絶縁性接着剤成分を溶融流動させるため、導電粒子も移動し易くなり、結果的に磁性を有する導電粒子の凝集が発生するという問題があった。このような導電粒子の凝集が生ずることは導電粒子の局在化を招き、導通不良を生じさせたり、ショートを生じさせたりする危険性が高まる。
そこで、ニッケル被覆樹脂粒子の絶縁性接着剤への分散の際の凝集の問題を解決するために、磁化したニッケルを脱磁することが考えられる。このようなニッケル被覆樹脂粒子のような磁性粉体の脱磁技術として、筒形の容器に磁性粉体を充填して磁性粉体の回転を抑制し、その状態で容器ごと電磁石で形成された磁場内を通過させた後、その磁場から遠ざけることにより脱磁する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2001−284124号公報
しかしながら、特許文献1の脱磁方法は鋼粒ショットなどの比較的粒径が大きく、高密度の金属磁性粉体を射程にしているため、その脱磁方法を、異方性導電フィルムに使用するような微小なニッケル被覆樹脂粒子などのような比較的低密度で動き易い磁性粉体に適用した場合、磁場に筒形容器を通過させたときに、磁性粉体が動いてしまい、意図したレベルにまで脱磁することができないという問題があった。この問題は、異方性導電フィルムに使用する微細なニッケル被覆樹脂粒子だけにかぎらず、磁場の中で動き易い磁性粉体を脱磁する際に一般的に生ずる。
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、磁性粉体を効率よく脱磁できる方法、具体的には、磁界変化に応じて回転・移動してしまうようなニッケル被覆樹脂粒子等の磁性粉体を効率よく脱磁できる方法を提供することである。
本発明者らは、磁性粉体を、磁性粉体同士の相対的位置関係が実質的に変動しないような状態で脱磁処理するために、非常に簡便且つ低コストの以下の(イ)又は(ロ)の手法を見出し、本発明を完成させた。
(イ)磁性粉体を開口部を有する容器に投入し、次いで容器の口部から容器内に押圧手段を挿入し、その押圧手段で磁性粉体を押圧して容器内に仮固定して脱磁処理する方法。
(ロ)磁性粉体を液体中に投入し、次いでその液体を凝固させて凝固物中に磁性粉体を仮固定して脱磁処理する方法。
即ち、本発明は、上記(イ)に対応する脱磁方法の第1のモードとして、磁性粉体の脱磁方法であって、磁性粉体を開口部を有する容器に投入し、次いで容器の口部から容器内に押圧手段を挿入し、その押圧手段で磁性粉体を押圧して容器内に仮固定して脱磁処理することを特徴とする脱磁方法を提供する。
また、本発明は、上記(ロ)に対応する脱磁方法の第2のモードとして、磁性粉体の脱磁方法であって、磁性粉末を液体中に投入し、次いでその液体を凝固させて凝固物中に磁性粉体を仮固定して脱磁処理することを特徴とする脱磁方法を提供する。
本発明の脱磁方法によれば、磁性粉体を、磁性粉体同士の相対的位置関係が実質的に変動しないような状態で脱磁処理することができるので、磁界変化に応じて回転・移動してしまうようなニッケル被覆樹脂粒子等の磁性粉体を効率よく脱磁することができる。
図1は、本発明の脱磁方法の第1のモードの説明図である。 図2は、本発明の脱磁方法の第2のモードの説明図である。
本発明の脱磁方法は、磁性粉体同士の相対的位置関係が実質的に変動しないような状態で脱磁処理するものである。ここで、磁性粉体同士の相対的位置関係が実質的に変動しないような状態とは、脱磁処理の際に、磁性粉体が脱磁処理により印可される磁界により、他の磁性粉体に対して実質的に位置変位が生じず、しかもそれ自体の回転も実質的に生じない状態を意味する。また、「実質的に」という意味は、発明の効果が損なわれない範囲で、磁性粉体同士の相対的位置関係が僅かに変異してしまうことも本発明の範囲に含まれることを意味する。
以下、脱磁方法(脱磁処理)の第1のモード及び第2のモードについて更に詳細に説明する。
<脱磁方法の第1のモード>
第1のモードは、磁性粉体同士の相対的位置関係が実質的に変動しないように、磁性粉体を開口部を有する容器に投入し、次いで容器の口部から容器内に押圧手段を挿入し、その押圧手段で磁性粉体を押圧して容器内に仮固定して脱磁処理する態様である。
具体的には、第1のモードは、図1に示すように、磁性粉体1を開口部2aを有する容器2に投入し、次いで、容器2の口部2aから容器2内に挿入された押圧手段3で磁性粉体1を押圧して容器2内に仮固定し、その容器2を、脱磁コイル10により形成された脱磁用磁場の中を、磁界強度を減衰させながら矢印の方向に移動させることにより、磁性粉体を粉体の状態で脱磁処理する態様である。この場合、容器2を往復運動させてもよい。
第1のモードの脱磁方法で使用する容器及び後述する第2のモードの脱磁方法で使用することができる容器としては、非磁性材料から形成されたものであり、例えば、ガラス容器、アルミナ容器、磁器容器等を挙げることができる。容器の形状としては、筒型形、特に円筒形が好ましいが、多角筒形でもよい。底部はラウンド型になっていることが好ましい。また、底部が開閉可能となっていてもよい。
押圧手段3としては、特に制限はなく、例えば、硬質あるいは弾性を示す平板3aをプッシャ3bで押しつける構成でもよい。押圧のレベルは、脱磁すべき磁性粉体にダメージを与えないように且つ脱磁処理の際に磁性粉体の動きを抑制できるレベルであり、磁性粉体の種類、大きさ、形状、脱磁条件などに応じて決めることができる。
<脱磁方法の第2のモード>
第2のモードは、磁性粉体同士の相対的位置関係が変動しないように、磁性粉末を液体中に投入し、次いでその液体を凝固させて凝固物中に磁性粉体を仮固定して脱磁処理する態様である。
具体的には、第2のモードは、図2に示すように、磁性粉体21を容器23に入れられた液体22中に投入し、次いで、その液体22を凝固させ、凝固物中に磁性粉体21を仮固定し、その容器23を、脱磁コイル10により形成された脱磁用磁場の中を、磁界強度を減衰させながら矢印の方向に移動させることにより、磁性粉体を粉体の状態で脱磁処理する態様である。この場合、容器23を往復運動させてもよい。なお、脱磁処理後、凝固物を融解させ、濾過処理などにより脱磁処理された磁性粉体1を取得することができる。
なお、第2のモードでは、通常、容器23中で液体を凝固させるが、凝固させた後の脱磁処理の際には、容器23を取り除くことができる。
本発明の第2のモードの脱磁方法においては、磁性粉体を液体に投入した後、脱泡処理した後に液体を凝固させることが好ましい。これは、脱泡していないと、液体を凝固させたときに泡も凝固物の中に取り込まれ、泡近傍の磁性粉体が動きやすくなるからである。
液体を凝固させる具体的な手法としては、液体を、その凝固点以下に冷却することにより凝固させる方法がある。液体としては、水、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、ナフタレン等のアリール類などを使用することができる。凝固の具体例としては、液体として水を使用した場合には、0℃以下に冷却することにより凝固させることができる。シクロヘキサン(融点7℃)を使用した場合には、7℃以下、好ましくは−10℃に冷却することが挙げられる。この場合、脱磁処理後に、凝固物を液体の凝固点以上になるまで放置又は加熱し、脱磁処理した磁性粉体を常法により液体から分離すればよい。
また、液体を凝固させる他の手法としては、液体に、その液体を凝固させ得る凝固剤を更に配合し、磁性粉体が投入されたあとで、その凝固剤で液体を凝固処理する方法がある、例えば、凝固剤として液体のゲル化剤を使用する方法である。具体的には、液体が水である場合に、凝固剤としてゼラチンを使用し、ゼラチンを水に加熱溶解し、それに磁性粉体を投入し、必要に応じて脱泡処理し、次いで冷却してゲル化させることが挙げられる。この場合、ゼラチン由来のゲルは加熱より消失する可逆的なものであるので、脱磁処理後に、凝固物をゲルが消失する温度にまで加熱し、脱磁処理した磁性導電粒子を常法により液体から分離すればよい。
<本発明の脱磁方法の対象となる磁性粉体>
本発明を適用することのできる磁性粉体の具体例としては、ニッケル、鉄、酸化鉄、酸化クロム、フェライト、コバルト、センダストなどの磁性金属あるいは磁性合金の粉体、ハンダ粒子やグアナミン樹脂粒子等の導電粒子又は絶縁樹脂粒子の表面にニッケルなどの磁性材料の薄膜が形成された粉体、それらの表面に更に金メッキ薄膜が形成されたもの、あるいは絶縁性樹脂層で被覆されたものなどを挙げることができる。
これらの中でも、異方性導電接続用の導電粒子として使用するための磁性粉体としては、製造コスト、接続時の加熱加圧での変形等を考慮すると、ニッケル被覆樹脂粒子、ニッケル金属粒子を好ましく挙げることができる。コアになる樹脂としては、特に制限はないが、耐熱性、耐薬品性を備えた無機あるいは有機の材料を好ましく使用することができる。
また、磁性粉体を構成する磁性材料として使用するニッケル中には、生産時における最低限の凝集を防ぐためにリン元素を好ましくは少なくとも1質量%以上、より好ましくは4質量%以上含有させる。また、ニッケル中に、リン元素が多すぎると接続が高抵抗となるので、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下とすることが望まれる。ニッケル中のリン元素は、通常、ニッケルメッキ浴のpH調整用に使用されるリン酸化合物、亜リン酸化合物等に由来するものであるが、これに制限されるものではない。
以上説明した本発明の脱磁方法に適用する磁性粉体としては、特に制限はないが、平均粒径が小さいほど脱磁の際に動きやすいので、平均粒径が小さいほど本発明の効果を高いレベルで奏することができる。ただ、平均粒径が小さすぎると導電性粒子全体における磁性金属の割合が高くなり、磁性の影響を過多に受ける為に凝集が発生する傾向があり、大きすぎると脱磁の難易度は下がるが、脱磁の効率が低下する為に、好ましくは0.01〜10000μm、より好ましくは0.1〜1000μmである。特に、異方性導電フィルムに使用する場合はファインピッチ接続も考慮し、ニッケル被覆樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜10μmである。
<脱磁処理手法>
本発明の脱磁方法における脱磁処理の具体的な手法として、図1及び図2に関して説明したような手法の他、公知の手法を採用することができる。
本発明の脱磁方法における脱磁処理の際の磁界強度は、低すぎると脱磁の効果が得られなくなり、導電性粒子が凝集することとなり、高すぎると逆に導電性粒子が着磁する可能性があるので、100〜2000Gの範囲で適宜使用することができ、好ましくは200〜2000G、より好ましくは200〜400Gである。
また、本発明の脱磁方法における脱磁処理の際の脱磁速度は、図1及び図2のような構成の場合、遅すぎると生産効率が低下し、速すぎると脱磁の効果が得られ難くなる傾向があるので、好ましくは0.1〜100mm/s、より好ましくは1〜100mm/s、更に好ましくは1〜50mm/sである。
以上説明した本発明の脱磁方法により粉体の状態で脱磁処理された磁性粉体は、絶縁性接着剤組成物に分散させて異方性導電ペーストやフィルムにするための導電粒子として好ましく使用することができる。例えば、電気素子のバンプと配線基板の電極とを、導電粒子を含有する異方性導電ペースト又はフィルムを介して熱圧着して異方性導電接続することにより接続構造体を製造する場合において、異方性導電ペースト又はフィルムに配合すべき導電粒子として好ましく適用することができる。
また、ペーストの状態で脱磁処理された磁性粉体は、ペースト組成物として絶縁性接着組成物を使用した場合には、脱磁処理後の磁性粉体含有ペースト組成物を、異方性導電ペーストとして使用することができる。また、フィルムの状態で処理された磁性粉体は、フィルム形成樹脂組成物として絶縁性接着組成物を使用した場合には、脱磁処理後の磁性粉体含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用することができる。
なお、上述の接続構造体の製造において、電気素子、そのバンプ、配線基板、その電極、磁性粉体(導電粒子)以外の異方性導電ペースト又はフィルムの構成、熱圧着条件等については、従来の異方性導電フィルムを使用する異方性導電接続により接続構造体を製造する場合に同様の構成とすることができる。
例えば、電気素子としては、発光素子、半導体チップ、半導体モジュールなどの公知の電気素子を適用することができる。また、バンプの材質、サイズにも特に制限はなく、従来公知のバンプを適用することができる。さらに、配線基板としても、ガラス配線基板、フレキシブル配線基板、ガラスエポキシ配線基板などの公知の配線基板を挙げることができる。配線、電極についても、特に制限はなく、銅、金、アルミ、ITOなどの公知の材料から形成されたものを適用することができる。
異方性導電フィルムを構成する絶縁性接着剤組成物としては、従来の異方性導電接着剤において用いられている熱硬化性のバインダー樹脂組成物の中から適宜選択して使用することができる。例えば、熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型尿素樹脂、熱硬化型メラミン樹脂、熱硬化型フェノール樹脂等に、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤等の硬化剤を配合した絶縁性接着剤組成物を挙げることができる。中でも、硬化後の接着強度が良好な点を考慮すると、熱硬化型エポキシ樹脂をバインダー樹脂として使用した絶縁性接着剤組成物を好ましく使用することができる。
このような熱硬化型エポキシ樹脂としては、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、エステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物等を好ましく使用することができる。また、これらの化合物にはモノマーやオリゴマーが含まれる。
このような絶縁性接着剤組成物には、必要に応じてシリカ、マイカなどの充填剤、顔料、帯電防止剤などを含有させることができる。着色料、防腐剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤、溶媒などを配合することもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1(脱磁方法の第2のモードによる脱磁処理)
(導電粒子の脱磁処理)
開口部内径10cm、深さ20cmの容量900mlのガラス製の耐溶剤性円筒形容器に、後述するように調製された、平均粒径3〜4μmのニッケル被覆樹脂粒子100gを投入し、更に、シクロヘキサン500gを投入し、分散混同した。
このシクロヘキサン混合物を−40℃に冷却し凝固させた。凝固したシクロヘキサン混合物が入ったガラス容器を貫通型の脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)に装着し、表1〜表3に示した条件で脱磁処理した。脱磁処理後、室温に戻し、ニッケル被覆樹脂粒子をシクロヘキサンから濾取し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させることにより、脱磁処理した導電粒子を得た。
(ニッケル被覆樹脂粒子の調製)
3μmのジビニルベンゼン系樹脂粒子(5g)に、パラジウム触媒を浸漬法により担持させた。次いで、この樹脂粒子に対し、硫酸ニッケル六水和物、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミン及び硝酸タリウムから調製された無電解ニッケルメッキ液(pH12、メッキ液温50℃)を用いて無電解ニッケルメッキを行い、種々のリン含有量を有するニッケルめっき層(金属層)が表面に形成されたニッケル被覆樹脂粒子を導電粒子として得た。得られた導電粒子の平均粒子径は3〜4μmの範囲であった。
(異方性導電フィルムの作成)
導電粒子として脱磁処理したニッケル被覆樹脂粒子35質量部と、成膜成分としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部と、液状成分としてビスフェノールAエポキシ化合物(EP828、ジャパンエポキシレジン(株))30質量部と、アミン系硬化剤(PHX3941HP、旭化成(株))39質量部と、エポキシシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)1質量部とを、トルエンで固形分が50質量%となるように希釈し、混合することにより異方性導電接着剤を調製した。この接着剤を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥厚25μmとなるようにバーコーターで塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより、異方性導電フィルムを作成した。
(接続構造体の作成)
更に、この異方性導電フィルムを、ITO電極を有するガラス配線基板の電極と、高さ15μmの金バンプが形成された13mm×1.5mm角のICチップのバンプとの間に配置し、フリップチップボンダーで180℃、40MPaで15秒間加熱加圧することにより接続構造体を得た。
比較例1
(異方性導電フィルムの作成)
脱磁処理したニッケル被覆樹脂粒子に代えて、脱磁処理していないニッケル被覆樹脂粒子を使用すること以外、実施例1と同様にして異方性導電接着剤を調製し、更に異方性導電フィルムを作成し、加えて接続構造体を得た。
(評価)
得られた異方性導電フィルム又は接続構造体について、「絶縁性」及び「接続抵抗」を、脱磁速度可変条件下(表1)、及びリン含有量可変条件下(表2)で、以下に説明するように評価した。
<絶縁性>
剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がしていない実施例1及び比較例1のそれぞれの異方性導電フィルムの接着層面に、ガラス基板上に櫛の歯状に配設されたITO配線に有するショート評価用絶縁TEG(高さ15μmの金バンプが形成された13mm×1.5mm角のICチップ;バンプサイズ25×140μm;バンプ間スペース10μm)を、ボンダーで到達温度180℃、圧着時間15秒という条件で圧着した。そしてバンプ間の絶縁抵抗を測定し、ショートの発生数をカウントし、以下の評価基準に従って評価した。得られた結果を表1及び表2に示す。なお、ショート発生部分においては、光学顕微鏡を用いて導電粒子の詰まり具合等から、凝集の有無、程度についても観察した。
ランク 内容
A: 絶縁ショート発生数が40サンプル中、10個未満
B: 絶縁ショート発生数が40サンプル中、10個以上20個未満
C: 絶縁ショート発生数が40サンプル中、20個以上
<接続抵抗>
実施例1及び比較例1で得た直後の接続構造体の導通抵抗を、4端子法により測定した。
得られた結果を表1及び表2に示す。
ランク 内容
A: 接続抵抗値が10Ω未満
B: 接続抵抗値が10Ω以上50Ω未満
C: 接続抵抗値が50Ω以上










































Figure 0005494299
Figure 0005494299
<実施例1及び比較例1の総合評価>
脱磁処理していない導電粒子を使用した比較例1の結果は、リン含量可変下において絶縁性が「B」又は「C」評価であった。それに対し、脱磁処理した導電粒子を使用した実施例1の結果は、脱磁速度可変下、リン含量可変下のいずれにおいても、極端な条件下で一部に絶縁性が「C」評価があるものの、基本的に「A」又は「B」評価であった。これらの結果から、本発明の異方性導電接着剤及び接続構造体は、使用した磁性粉体である導電粒子の脱磁が効率よく実現されていたため、良好な接続信頼性、絶縁信頼性を示したことがわかる。なお、以下に、脱磁条件の傾向についての知見を示す。
<絶縁性についての評価>
1)脱磁速度可変の場合
表1からわかるように、脱磁速度の増大とともに、絶縁性が低下する傾向が見て取れるが、大きく低下するものではない。
2)リン含有量可変の場合
表2の結果からわかるように、リンの含有量によらず、磁界強度が200〜2000Gであれば、絶縁性が低下することはない。なお、光学顕微鏡観察の結果、「ショート」の発生した箇所では、導電粒子の凝集が観察され、特に評価「C」の場合に顕著であった。
<接続抵抗についての評価>
脱磁処理をしない場合の接続抵抗値は低いものであり、脱磁処理をした場合にそれよりも接続抵抗値が増大しないことが望まれるが、表1及び表2の「接続抵抗」の欄の結果から、脱磁速度、リン含有量を変化させても、好ましい接続抵抗値が維持されることがわかる。
実施例2(脱磁方法の第1のモードによる脱磁処理)
開口部内径60mm、深さ70mmの容量100mlのガラス製の耐溶剤性円筒形容器に、実施例1で調製したものと同じ平均粒径3〜4μmのニッケル被覆樹脂粒子(脱磁未処理)100gを入れた。樹脂粒子の表面は開口部から20mmの位置であった。なお、ニッケル中には、リン原子が4質量%含有されていた。
次に、開口部から直径60mm、厚さ10mmの円盤状のガラス板を、樹脂粒子表面に置き、それを500Nの力で押しつけ、脱着可能に固定した。このガラス容器を貫通型の脱磁装置(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)に装着し、磁界強度400G、脱磁速度50mm/s、室温下で脱磁処理を行った。
この実施例で得た導電粒子を使用する以外は、実施例1と同様にして異方性導電接着剤、更に異方性導電フィルムならびに接続構造体を作成した。得られた異方性導電フィルム及び接続構造体を用いて、実施例1と同様に試験評価したところ、実施例1の評価結果と同じ傾向を示した。
本発明の脱磁方法によれば、磁性粉体を、磁性粉体同士の相対的位置関係が実質的に変動しない状態で脱磁処理することができるので、磁場変化に応じて回転・移動してしまうようなニッケル被覆樹脂粒子等の磁性粉体を効率よく脱磁することができる。従って、本発明の脱磁方法は、異方性導電フィルムの製造にも有用である。
1、21 磁性粉体
2、23 筒形容器
2a 開口部
3 押圧手段
10 脱磁コイル
22 液体

Claims (8)

  1. 磁性粉体の脱磁方法であって、
    磁性粉末を液体中に投入し、脱泡処理した後にその液体を凝固させて凝固物中に磁性粉末を仮固定して脱磁処理することを特徴とする脱磁方法。
  2. 液体を、その凝固点以下に冷却することにより凝固させる請求項記載の脱磁方法。
  3. 液体に、その液体を凝固させ得る凝固剤を更に配合し、磁性粉体が投入されたあとで、凝固剤で液体を凝固処理して固定化する請求項記載の脱磁方法。
  4. 磁性粉体の平均粒径が、0.1〜1000μmである請求項1〜のいずれかに記載の脱磁方法。
  5. 磁性粉体が、ニッケル被覆樹脂粉末またはニッケル金属粒子である請求項1〜のいずれかに記載の脱磁方法。
  6. 脱磁処理の際の磁界強度を、200〜2000Gに調整する請求項1〜のいずれかに記載の脱磁方法。
  7. ニッケル中にリン元素が、1〜10質量%含有されている請求項5記載の脱磁方法。
  8. 脱磁処理の際の脱磁速度が、1〜100mm/sである請求項1〜のいずれかに記載の脱磁方法。
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