JP2004292415A - ハナビラタケ組成物を有効成分とする生理活性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】有用性が認められているハナビラタケについて商業規模で供給可能なハナビラタケ含有生理活性組成物を提供する。
【解決手段】ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末にエチルアルコールを加え、常温で撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行い、その後ろ過により残渣画分を回収し、その残渣を乾燥させて得られたハナビラタケ組成物を有効成分とする生理活性組成物であり、好ましくは生理活性が、抗腫瘍性活性、血糖調節性活性、抗高脂血症性活性、抗アレルギー性活性又は抗高血圧性活性である。
【選択図】 なし
【解決手段】ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末にエチルアルコールを加え、常温で撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行い、その後ろ過により残渣画分を回収し、その残渣を乾燥させて得られたハナビラタケ組成物を有効成分とする生理活性組成物であり、好ましくは生理活性が、抗腫瘍性活性、血糖調節性活性、抗高脂血症性活性、抗アレルギー性活性又は抗高血圧性活性である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハナビラタケ組成物を有効成分とする抗腫瘍性活性、血糖調節性活性、抗高脂血症性活性、抗アレルギー性活性、抗高血圧性活性などの生理活性を有する組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
きのこ類は古くから食用として利用されているが、最近その成分の生理活性が明らかにされ、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン(いずれも商品名)などは、医薬品としてその有用性が認められおり、アガリクス、メシマコブ、霊芝などは抗腫瘍作用を期待して、子実体や菌糸体の乾燥物や抽出物を健康食品素材として利用することが試みられている。例えば、マンネンダケは、子実体またはその抽出物を健康食品の原料として利用することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。さらに培養で得られる菌糸体の利用も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらのきのこの主要有効成分はβ−グルカンであることが知られており、従来からβ−グルカン等の多糖をこれらのきのこから抽出する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
このようなきのこ類に属するハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている。
このハナビラタケについても溶媒でβ‐グルカンを抽出する方法が提案され、その抽出物について医薬品分野での用途が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭58−36946号公報
【特許文献2】
特公昭58−15108号公報
【特許文献3】
特開平1−6719号公報
【特許文献4】
特開2000−217543号公報
【特許文献5】
特開2002−125460号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハナビラタケからの溶媒による抽出方法ではβ−グルカンの収量が極めて低く、商業規模で医薬品用途に供給するには有効な方法であるとは言いがたかった。
本発明は、有用性が認められているハナビラタケについて商業規模で供給可能なハナビラタケ含有生理活性組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有用性は認められてはいるものの、有効成分を効率よく取得する方法がないという課題を解決するために鋭意検討の結果、ハナビラタケの子実体または菌糸体を溶媒で洗浄した残渣中に目的の有用成分が含まれていることを見出し、さらに得られた組成物に溶媒抽出物よりも優れる抗腫瘍性活性を見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ハナビラタケを溶媒で処理して得られるハナビラタケ組成物を有効成分とする生理活性組成物を要旨とするものであり、好ましくは生理活性が、抗腫瘍性活性、血糖調節性活性、抗高脂血症性活性、抗アレルギー性活性又は抗高血圧性活性であるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するハナビラタケの子実体は天然のものでもよいし、あるいは人工栽培により得られたものであってもよい。人工栽培は、人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(例えば、特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特開2002−125460号公報参照)。
【0010】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることが出来る。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機または有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、3.5〜5.0が最も好ましい。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができることから好ましい。培養期間は菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0011】
本発明において、ハナビラタケより本発明の組成物を得るに際しては、上記のようにして得られたハナビラタケをあらかじめ細断して小塊ないし粉末としておくことが望ましい。細断後の大きさについては特に限定はないが、より小さくしておくことが溶媒による処理を容易とする。
【0012】
本発明においてはハナビラタケを溶媒により処理を行うことが必要である。ここで用いられる溶媒は、水系溶媒または非水系溶媒が使用できる。水系溶媒として具体的には水そのもの、あるいはアルカリや他の塩基性物質を添加したアルカリ水、アルコール等とも相溶性のある有機溶媒を加えた水性溶媒、酸や酸性物質を添加した酸性水、有機酸(例えば、乳酸、酢酸等)、無機塩類(例えば、イーストフード等)を含む水溶液、あるいはこれらの2種以上の混合物などが好適に使用できる。
また非水系溶媒として具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を使用することもできる。
【0013】
本発明において溶媒による処理とは、以下のような操作を行うことをいう。すなわち、細かく破砕あるいはスライスした新鮮なハナビラタケ子実体または菌糸体1質量部に溶媒2〜50質量部を加え、好ましくは20℃〜120℃、さらに好ましくは30℃〜100℃、さらに好ましくは40℃〜90℃で処理する。処理時間は5分〜240分、好ましくは20分〜180分、さらに好ましくは30分〜90分間処理する。その後固液分離を行い、残渣の方を常法により乾燥等することで本発明のハナビラタケ組成物を得ることができる。
【0014】
この溶媒による処理は、多段階で行ってもよく、また、異なる溶媒を用いた多段処理として行ってもよい。洗浄により得られるこの発明のハナビラタケ組成物には、主成分としてのグルカンの他未同定の成分も含有している。
【0015】
本発明の生理活性組成物は、上記のようにして得られたハナビラタケ組成物を有効成分とするものである。乾燥粉末品としたハナビラタケ組成物を治療目的に応じて、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等に製剤化すればよい。
【0016】
ここで用いられる製剤担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤ないし賦形剤等を例示できる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、乳糖、白糖、還元麦芽糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、単シロツプ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラツク、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。
【0017】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。カプセル剤は本発明の有効成分であるハナビラタケを上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。更に上記各組成物には必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を配合してもよい。
【0018】
本発明の生理活性組成物中に含まれるハナビラタケの量は特に限定されず、適宜選択すればよいが、組成物中、乾燥質量換算で、好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは5〜50質量%程度とするのがよい。
【0019】
本発明の生理活性組成物は、経口投与するのが好ましい。投与方法は、各種組成物の製剤形態、患者の年齢、性別、患者の症状の程度、その他の条件に応じて決定される。例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与される。
【0020】
本発明の生理活性組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件により適宜選択できる。通常、ハナビラタケの酵素処理物(乾燥質量換算)を0.01〜500mg/kg/日程度、好ましくは5〜100mg/kg/日程度、さらに好ましくは1〜60mg/kg/日程度の範囲となる量を目安とするのがよい。これら本発明の組成物は1日に1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
【0021】
ハナビラタケ組成物が有している生理活性としては、抗腫瘍活性、血糖調節活性、抗高脂血症活性、抗アレルギー活性、抗高血圧活性などが挙げられる。
【0022】
本発明の抗腫瘍活性を有する生理活性組成物、とりわけ抗悪性腫瘍剤が有効に治療できる悪性腫瘍としては、特に制限はないが、例えば、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、頭頚部癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚癌、悪性リンパ腫、急性白血病、エイズ、脳腫瘍等が挙げられる。
【0023】
ナチュラルキラー細胞(以下、NK細胞という。)は、抗体の介在なしに直接癌細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃することが知られているが、ハナビラタケの酵素処理物は、NK細胞を増殖させ、NK細胞活性増強を主たる作用機序として、患者に重篤な副作用を伴うことなく、このNK細胞の腫瘍細胞へのアポトーシスによって腫瘍増殖抑制効果を発現するものと考えられる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lのエチルアルコールを加え、常温で6時間撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行った。その後ろ過により残渣画分を回収し、50℃で12時間乾燥させた。得られたハナビラタケ組成物は48gであった。
【0025】
組成物について抗腫瘍効果を評価した。その結果を図1に示す。図1は、マウスを用いたサルコーマ180固形皮下腫瘍に対する抗腫瘍効果を示す。ハナビラタケ組成物の投与量は1日、体重1kgあたり10、100mgとし、腫瘍移植後5日目から10日間経口投与した。その結果、腫瘍重量は10mg投与群で51%抑制、100mg投与群で67%抑制となりハナビラタケ組成物の抗腫瘍効果は明白である。
【0026】
実施例2
新鮮なハナビラタケ子実体1kgに、0.5質量%クエン酸水溶液3kgを加えてpH5.0以下とし、80℃で2時間処理し、フィルターで濾過して抽出残渣800gを得た。これを凍結乾燥して80gのハナビラタケ組成物を得た。この粉末1g、乳清カルシウム0.2g、イソマルトオリゴ糖0.2g、セルロース0.1gを混合し、顆粒分包に配合した。
【0027】
実施例3
実施例2の粉末1gに粉末スープ又は粉末みそ汁又は固形ブイヨンエキス又は粉末ポタージュをそれぞれ1〜5g加え、癌免疫応答誘導組成物を調製した。
【0028】
実施例4
〔NK細胞活性〕
▲1▼エフェクター細胞の調整
ヘパリン加抹消血を比重遠心分離法(Conray−Ficoll:d=1.077)にてエフェクター細胞を分離した。細胞をPBS(−)にて2回洗浄した。ここに10%FCSを加えたRPMI 1640メディウムを添加し、細胞数を1×106個/mLになるように調整した。
▲2▼標的細胞の調整(51Cr標識):K−562
継代培養細胞(K−562)を遠心分離によって集め、50〜100μCiの51Crを添加した。これを37℃で1時間培養し、PBS(−)にて3回細胞洗浄した。10%FBS加RPMI 1640メディウムを添加し、細胞数を1×106個/mLになるように調整した。
▲3▼培養
マイクロプレートの各ウェルに標的細胞を分注した。最大解離群には1N−HClを分注し、自然解離群(コントロール)には10%FBS加RPMI 1640メディウムを分注した。実験解離群にはエフェクター細胞を分注し、エフェクター細胞数/標的細胞数=20となるようにした。これをプレート遠心機にて800rpm、5分間遠心後、5%CO2培養器にて3.5時間培養した。
▲4▼測定
培養したプレートより、各ウェルの培養上清を採取し、シンチレーションカウンタにて測定し、以下の式にてNK活性を算出した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から、本発明の生理活性組成物の投与によりNK細胞活性が上昇することが明らかになった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、経口投与が可能であり、患者に負担がなくかつ副作用が全くない、若しくは極めて少ない生理活性組成物が得られる。また本発明の生理活性組成物は、NK細胞の活性を増強することにより、NK細胞がターゲットとする、たとえば、悪性腫瘍やエイズなどの免疫性疾患、肝炎などのウイルス感染症、慢性疲労症候群などの治療分野における、画期的な治療組成物として有用である。とりわけ、初期癌から末期癌にまで有効であり、長期連続投与が可能で、副作用もないことからQOLの高い治療手段を提供するものである。その性状から、既存の抗癌療法や他の薬剤との併用も多くの場合可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生理活性組成物の抗腫瘍効果を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハナビラタケ組成物を有効成分とする抗腫瘍性活性、血糖調節性活性、抗高脂血症性活性、抗アレルギー性活性、抗高血圧性活性などの生理活性を有する組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
きのこ類は古くから食用として利用されているが、最近その成分の生理活性が明らかにされ、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン(いずれも商品名)などは、医薬品としてその有用性が認められおり、アガリクス、メシマコブ、霊芝などは抗腫瘍作用を期待して、子実体や菌糸体の乾燥物や抽出物を健康食品素材として利用することが試みられている。例えば、マンネンダケは、子実体またはその抽出物を健康食品の原料として利用することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。さらに培養で得られる菌糸体の利用も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これらのきのこの主要有効成分はβ−グルカンであることが知られており、従来からβ−グルカン等の多糖をこれらのきのこから抽出する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
このようなきのこ類に属するハナビラタケは、カラマツに生えるきのこであって、非常に僅少なきのこである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用きのこである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となってきている。
このハナビラタケについても溶媒でβ‐グルカンを抽出する方法が提案され、その抽出物について医薬品分野での用途が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公昭58−36946号公報
【特許文献2】
特公昭58−15108号公報
【特許文献3】
特開平1−6719号公報
【特許文献4】
特開2000−217543号公報
【特許文献5】
特開2002−125460号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハナビラタケからの溶媒による抽出方法ではβ−グルカンの収量が極めて低く、商業規模で医薬品用途に供給するには有効な方法であるとは言いがたかった。
本発明は、有用性が認められているハナビラタケについて商業規模で供給可能なハナビラタケ含有生理活性組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有用性は認められてはいるものの、有効成分を効率よく取得する方法がないという課題を解決するために鋭意検討の結果、ハナビラタケの子実体または菌糸体を溶媒で洗浄した残渣中に目的の有用成分が含まれていることを見出し、さらに得られた組成物に溶媒抽出物よりも優れる抗腫瘍性活性を見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ハナビラタケを溶媒で処理して得られるハナビラタケ組成物を有効成分とする生理活性組成物を要旨とするものであり、好ましくは生理活性が、抗腫瘍性活性、血糖調節性活性、抗高脂血症性活性、抗アレルギー性活性又は抗高血圧性活性であるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するハナビラタケの子実体は天然のものでもよいし、あるいは人工栽培により得られたものであってもよい。人工栽培は、人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(例えば、特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特開2002−125460号公報参照)。
【0010】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることが出来る。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機または有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、3.5〜5.0が最も好ましい。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができることから好ましい。培養期間は菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0011】
本発明において、ハナビラタケより本発明の組成物を得るに際しては、上記のようにして得られたハナビラタケをあらかじめ細断して小塊ないし粉末としておくことが望ましい。細断後の大きさについては特に限定はないが、より小さくしておくことが溶媒による処理を容易とする。
【0012】
本発明においてはハナビラタケを溶媒により処理を行うことが必要である。ここで用いられる溶媒は、水系溶媒または非水系溶媒が使用できる。水系溶媒として具体的には水そのもの、あるいはアルカリや他の塩基性物質を添加したアルカリ水、アルコール等とも相溶性のある有機溶媒を加えた水性溶媒、酸や酸性物質を添加した酸性水、有機酸(例えば、乳酸、酢酸等)、無機塩類(例えば、イーストフード等)を含む水溶液、あるいはこれらの2種以上の混合物などが好適に使用できる。
また非水系溶媒として具体的には、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を使用することもできる。
【0013】
本発明において溶媒による処理とは、以下のような操作を行うことをいう。すなわち、細かく破砕あるいはスライスした新鮮なハナビラタケ子実体または菌糸体1質量部に溶媒2〜50質量部を加え、好ましくは20℃〜120℃、さらに好ましくは30℃〜100℃、さらに好ましくは40℃〜90℃で処理する。処理時間は5分〜240分、好ましくは20分〜180分、さらに好ましくは30分〜90分間処理する。その後固液分離を行い、残渣の方を常法により乾燥等することで本発明のハナビラタケ組成物を得ることができる。
【0014】
この溶媒による処理は、多段階で行ってもよく、また、異なる溶媒を用いた多段処理として行ってもよい。洗浄により得られるこの発明のハナビラタケ組成物には、主成分としてのグルカンの他未同定の成分も含有している。
【0015】
本発明の生理活性組成物は、上記のようにして得られたハナビラタケ組成物を有効成分とするものである。乾燥粉末品としたハナビラタケ組成物を治療目的に応じて、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等に製剤化すればよい。
【0016】
ここで用いられる製剤担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤ないし賦形剤等を例示できる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、乳糖、白糖、還元麦芽糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、単シロツプ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラツク、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。
【0017】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。カプセル剤は本発明の有効成分であるハナビラタケを上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。更に上記各組成物には必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を配合してもよい。
【0018】
本発明の生理活性組成物中に含まれるハナビラタケの量は特に限定されず、適宜選択すればよいが、組成物中、乾燥質量換算で、好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは5〜50質量%程度とするのがよい。
【0019】
本発明の生理活性組成物は、経口投与するのが好ましい。投与方法は、各種組成物の製剤形態、患者の年齢、性別、患者の症状の程度、その他の条件に応じて決定される。例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与される。
【0020】
本発明の生理活性組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件により適宜選択できる。通常、ハナビラタケの酵素処理物(乾燥質量換算)を0.01〜500mg/kg/日程度、好ましくは5〜100mg/kg/日程度、さらに好ましくは1〜60mg/kg/日程度の範囲となる量を目安とするのがよい。これら本発明の組成物は1日に1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
【0021】
ハナビラタケ組成物が有している生理活性としては、抗腫瘍活性、血糖調節活性、抗高脂血症活性、抗アレルギー活性、抗高血圧活性などが挙げられる。
【0022】
本発明の抗腫瘍活性を有する生理活性組成物、とりわけ抗悪性腫瘍剤が有効に治療できる悪性腫瘍としては、特に制限はないが、例えば、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、頭頚部癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚癌、悪性リンパ腫、急性白血病、エイズ、脳腫瘍等が挙げられる。
【0023】
ナチュラルキラー細胞(以下、NK細胞という。)は、抗体の介在なしに直接癌細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃することが知られているが、ハナビラタケの酵素処理物は、NK細胞を増殖させ、NK細胞活性増強を主たる作用機序として、患者に重篤な副作用を伴うことなく、このNK細胞の腫瘍細胞へのアポトーシスによって腫瘍増殖抑制効果を発現するものと考えられる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
ハナビラタケ(Sparassis crispa)子実体(ユニチカ製)を凍結乾燥した粉末50gに1Lのエチルアルコールを加え、常温で6時間撹拌を行いハナビラタケの溶媒処理を行った。その後ろ過により残渣画分を回収し、50℃で12時間乾燥させた。得られたハナビラタケ組成物は48gであった。
【0025】
組成物について抗腫瘍効果を評価した。その結果を図1に示す。図1は、マウスを用いたサルコーマ180固形皮下腫瘍に対する抗腫瘍効果を示す。ハナビラタケ組成物の投与量は1日、体重1kgあたり10、100mgとし、腫瘍移植後5日目から10日間経口投与した。その結果、腫瘍重量は10mg投与群で51%抑制、100mg投与群で67%抑制となりハナビラタケ組成物の抗腫瘍効果は明白である。
【0026】
実施例2
新鮮なハナビラタケ子実体1kgに、0.5質量%クエン酸水溶液3kgを加えてpH5.0以下とし、80℃で2時間処理し、フィルターで濾過して抽出残渣800gを得た。これを凍結乾燥して80gのハナビラタケ組成物を得た。この粉末1g、乳清カルシウム0.2g、イソマルトオリゴ糖0.2g、セルロース0.1gを混合し、顆粒分包に配合した。
【0027】
実施例3
実施例2の粉末1gに粉末スープ又は粉末みそ汁又は固形ブイヨンエキス又は粉末ポタージュをそれぞれ1〜5g加え、癌免疫応答誘導組成物を調製した。
【0028】
実施例4
〔NK細胞活性〕
▲1▼エフェクター細胞の調整
ヘパリン加抹消血を比重遠心分離法(Conray−Ficoll:d=1.077)にてエフェクター細胞を分離した。細胞をPBS(−)にて2回洗浄した。ここに10%FCSを加えたRPMI 1640メディウムを添加し、細胞数を1×106個/mLになるように調整した。
▲2▼標的細胞の調整(51Cr標識):K−562
継代培養細胞(K−562)を遠心分離によって集め、50〜100μCiの51Crを添加した。これを37℃で1時間培養し、PBS(−)にて3回細胞洗浄した。10%FBS加RPMI 1640メディウムを添加し、細胞数を1×106個/mLになるように調整した。
▲3▼培養
マイクロプレートの各ウェルに標的細胞を分注した。最大解離群には1N−HClを分注し、自然解離群(コントロール)には10%FBS加RPMI 1640メディウムを分注した。実験解離群にはエフェクター細胞を分注し、エフェクター細胞数/標的細胞数=20となるようにした。これをプレート遠心機にて800rpm、5分間遠心後、5%CO2培養器にて3.5時間培養した。
▲4▼測定
培養したプレートより、各ウェルの培養上清を採取し、シンチレーションカウンタにて測定し、以下の式にてNK活性を算出した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から、本発明の生理活性組成物の投与によりNK細胞活性が上昇することが明らかになった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、経口投与が可能であり、患者に負担がなくかつ副作用が全くない、若しくは極めて少ない生理活性組成物が得られる。また本発明の生理活性組成物は、NK細胞の活性を増強することにより、NK細胞がターゲットとする、たとえば、悪性腫瘍やエイズなどの免疫性疾患、肝炎などのウイルス感染症、慢性疲労症候群などの治療分野における、画期的な治療組成物として有用である。とりわけ、初期癌から末期癌にまで有効であり、長期連続投与が可能で、副作用もないことからQOLの高い治療手段を提供するものである。その性状から、既存の抗癌療法や他の薬剤との併用も多くの場合可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生理活性組成物の抗腫瘍効果を示す図である。
Claims (6)
- ハナビラタケを溶媒で処理して得られるハナビラタケ組成物を有効成分とする生理活性組成物。
- 生理活性が、抗腫瘍性活性である請求項1記載の組成物。
- 生理活性が、血糖調節性活性である請求項1記載の組成物。
- 生理活性が、抗高脂血症性活性である請求項1記載の組成物。
- 生理活性が、抗アレルギー性活性である請求項1記載の組成物。
- 生理活性が、抗高血圧性活性である請求項1記載の組成物。
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