JP2717921B2 - 健康保持製剤 - Google Patents

健康保持製剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スエヒロタケの菌糸体
の加熱乾燥物を有効成分とする健康保持製剤に関する。
さらに詳しくは、腸内ビフィズス菌の増殖促進、肥満防
止及び血中中性脂肪低下を目的とする健康保持製剤に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、きのこ類の菌糸体又は子実体を利
用した食品に関しては、従来数多くの文献がある。例え
ば、特開昭51-57858号公報はきのこ種菌を培養し、得ら
れた菌糸体を培養基から分離しないでそのまま抽出処理
して得られる抽出液を、乳酸菌飲料製造工程中又は製造
工程終了後の製品に添加して乳酸菌飲料を製造すること
が記載されている。
【0003】また、特公昭59-44016号公報にはシイタ
ケ、霊芝および冬虫夏草からえらばれたきのこ菌を玄米
培養基で培養して得られるきのこ菌糸体を培養基と共に
加熱、乾燥、粉砕して得られた菌糸体粉末もしくはこれ
らの混合物を動物乳もしくは豆乳に添加し、室温で8時
間以上放置してヨーグルトを製造する方法が記載されて
いる。
【0004】特開昭62-111631 号公報はコロイド粒子大
に細砕したエノキタケ及び/又はその有効成分を牛乳に
含有せしめてなる加工牛乳に関するものである。さら
に、特開昭52-57319号公報にはシイタケの粉末又は抽出
物を野菜サラダ、煮豆、豆腐、ソーセージ、うどん等の
食品に添加してこれらの食品の防腐及び保存をはかろう
とする方法が記載されている。
【0005】また、特開昭61-21069号公報にはシイタケ
粉、シイタケ粉又は裁断したシイタケを混入したかまぼ
この製造方法が、特開昭59-14773号公報にはマツタケエ
キスを添加した魚肉ねり製品で、食感外形共にマツタケ
風のねり製品の製造法が記載されている。
【0006】これらは、きのこ類の菌糸体または子実体
を用いて、その風味を改善したりあるいは保存性を改善
しようとするものであって、きのこ類の菌糸体の有する
健康維持及び増進作用を積極的に活用しようとするもの
は、いままで知られていなかった。一方、合成医薬品を
はじめとする各種の医療技術の進歩により、日本人の平
均寿命が伸びてきている。それに伴って老人病の問題も
深刻になってきている。そして合成医薬品に関しては、
その副作用や薬害の問題も生じてきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、そのよ
うな状況に鑑み、古来より食されている物質で安全性が
高く、老人病に関連する病態を改善できる物質の探索を
続けてきたところ、驚くべきことにハラタケ目ヒラタケ
科のスエヒロタケの加熱乾燥菌糸体が腸内感染を防御す
るビフィズス菌の増殖を促進し、肥満を防止し、血中中
性脂肪低下作用を有することを見い出し本発明を完成す
るに至った。すなわち、本発明の課題は、老人病、弱者
等に投与しても長期間安全で老人病その他の疾病の治療
あるいは予防に効力を有する健康保持製剤を提供しよう
とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記知見に基
づいてなされたものでって、スエヒロタケの菌糸体の加
熱乾燥物を有効成分とする健康保持製剤に関する。本発
明におけるスエヒロタケの菌糸体の加熱乾燥物は、本出
願人の先願の特願平4−171127号明細書に記載さ
れた方法が用いられる。
【0009】本発明では、スエヒロタケを培養し、生成
する菌糸体を用いる。培養は担子菌の培養方法として用
いられている方法であれば、固体培養でも液体培養でも
いずれでもよいが、菌糸体の採取しやすさ等の点からみ
て液体深部培養を行うことが最も好ましい。培地として
は、いずれの場合も担子菌の培養培地として知られてい
る培地であればどのような培地でも用いられる。例え
ば、固体培地としては、玄米、麦、アワ、ヒエ等の穀類
を主成分としたり、あるいは鋸屑、バカス、ふすま、大
豆カス、オカラ等の副産物を主成分としたりすることが
できる。これらの培地にスエヒロタケの菌糸体を接種し
後、培養する。培養条件としては、通常は培養温度1
5〜35℃、相対湿度40〜80%で15〜60日間培
養する。このようにすると、培地全体に菌糸体がまんえ
んし、成熟した菌糸束となるので、この段階で菌糸束を
採取し、これを菌糸体として使用する。
【0010】また、液体培地としては、例えば、グルコ
ース、マルトース、キシロース、サッカロース、デン
粉、麦芽エキス、酵母エキス、ペプトン、コーンスティ
ーブリカー等の栄養素を適宜選択しこれを約1〜8重量
%程度の水溶液とし、必要に応じてリン酸塩、マグネシ
ウム塩、鉄塩等の無機塩類、その他担子菌類の生育に必
要な成分を加え、pHを調整し、これを培地として用い
るとよい。また培地には必要に応じて発泡現象を抑制す
るために消泡剤を加えてもよい。培養は、このような培
地にスエヒロタケの菌糸を接種し、好ましい培養条件
(pH、温度、通気量、撹拌条件等)で静置培養、振盪
培養、通気撹拌培養等を行うことができる。また、深部
培養によって培養することが前記した理由から好まし
い。通常は、pH4.5〜7.5、培養温度15〜35
℃、培養時間1〜30日、通気量0.1〜20l/mi
n)撹拌速度0〜1000r.p.mで通気撹拌培養を
行うことが好ましい。
【0011】培養終了後、培養混合物(ロス)を濾
過、遠心分離等の通常の分離手段を用い、菌糸体を培養
液から分離し、分離された菌糸体を水洗し、さらに好ま
しくは水分95%以下の生菌糸体を得て、これを菌糸体
として使用する。また、培養混合物(ブロス)をそのま
ま菌糸体として使用することもできる。菌糸体は培養方
法によって得られる菌糸体の形状が相違することがあ
る。例えば、振盪培養法、通気撹拌培養法等によって得
られた菌糸体は通常平均粒径0.5mm以上の粒状菌糸
体であるが、条件により繊維状の菌糸体を得ることもで
きる。静置培養法において得られる菌糸体は粒状になら
ず、全体が塊状になる。
【0012】このようにして得られた菌糸体をそのまま
あるいは適当に切断し、80乃至260℃の温度で加熱乾燥
する。培養混合物を用いる場合は、そのまま前記温度範
囲で加熱乾燥する。このようにして得られた加熱乾燥物
は生来の菌糸体の匂いや味と全く異なった香ばしい香り
と美味な味とを有する。菌糸体を上記温度で加熱処理す
ると一部の成分が変化して生の菌糸体とは違った独特の
香りと味を持つようになり、原末のままで服用が容易に
なる。
【0013】加熱処理の温度が80℃未満の場合、本発明
の特有の味と香りの発現が不十分である。又、加熱処理
の温度が 260℃を超えた場合は、過度の加熱により、表
面が焦げて水分が蒸発しにくく、味も苦味を帯びて特有
の味と香りが損なわれ、服用しにくくなる。本発明で、
より好ましい加熱温度は 110〜200 ℃であり、至適温度
範囲は 125〜180 ℃である。
【0014】加熱時間は乾燥の程度が水分含有率11重量
%以下、より好ましくは6重量%以下になるような時間
が好ましい。このようにして初めて上記の加熱処理効果
が十分に発現される。本発明は前記した特定の条件で加
熱乾燥処理を行って前記した効果が発現するのであっ
て、この点において従来の単なる熱処理や酵素失活のた
めの熱処理とは異なるものである。尚、加熱処理の温度
が80℃未満では長時間加熱して水分含有率が11重量%以
下となっても独特な香り及び風味の発現が十分ではな
い。
【0015】加熱乾燥処理は通常用いられるいずれの加
熱乾燥処理手段も用いることができるが、通常は、ドラ
ムドライヤー、フラッシュドライヤー、レート板、ス
プレードライヤー等による加熱を行うことができる。な
お、加熱処理は気相中、一般に不活性気体中又は空気中
で行なわれるが、空気中で行なうことが好ましい。加熱
処理は減圧下、加圧下、常圧下のいずれでも行なわれる
が、常圧下で行なうのが好ましい。本発明において加熱
処理の温度は、特に規定しない限り前記各種加熱手段に
おける加熱面の温度を指すものである。
【0016】このようにして得られたスエヒロタケ菌糸
体加熱乾燥物は、必要に応じて適度の粒度まで破砕ない
し粉砕して、そのままあるいは適宜の剤型にして経口的
に投与することができる。
【0017】本発明の方法によって得られたスエヒロタ
の加熱乾燥菌糸体は、それ自体ほとんど粉末状となっ
ているが、製品としての規格を一定にするためにこれを
さらに破砕し微細粉末とする。破砕には、乳鉢、グライ
ンダー、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミル、オ
シレーター、グラニュレーター等が用いられる。このよ
うにして得られた粉体は、これを有効量含有させ、単独
であるいは経口的に許容される担体と混合し散剤、顆
粒、錠剤、糖衣錠、カプセル等の形態にされる。また、
必要に応じて懸濁液、液剤、乳剤、アンプル等の形態に
してもよい。担体としては、従来製剤において用いられ
ている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩解剤、表
面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶
解補助剤、溶剤などが用いられる。これらの担体は単独
で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いても
よい。
【0018】本発明の有効成分の前記スエヒロタケの菌
糸体の加熱乾燥物は、製剤中に1〜100重量%含有さ
せ、これを年令、症状、性別、個人差によって異なる
が、前記加熱乾燥物として成人1人1日当り一般に1m
g〜10g/体重kg、好ましくは10mg〜1 g/
体重kgを1回または数回に分けて経口投与するとよ
い。また、本発明の有効成分は、ビタミン剤、その他の
医薬あるいは栄養剤と併用させてもよい。
【0019】このようにして得られた製剤は、後に実施
例に示すように毒性が低く、腸内ビフィズス菌を増殖さ
せ、肥満を防止し、中性脂肪を低下させて動脈硬化ある
いは高脂血症などを予防乃至治療する等の効果を奏する
ので、長期間経口的に投与してヒトの健康を保持する医
薬品として有用である。
【0020】特に、老人、体の弱い人、体調の思わしく
ない人、婦人等の健康保持薬として好適である。また、
健常人に投与することができるのは勿論である。さら
に、本発明の健康保持薬は、ヒトばかりではなく、動
物、例えばペット、家畜等に投与してこれらの健康を維
持させることができる。
【0021】次に、実施例及び参考例をあげて、本発明
を具体的に説明する。
【参考例1】(菌糸体加熱乾燥物の製造例) ペプトン5g、酵母エキス3g、麦芽エキス3g、第一
リン酸カリ0.3g、第二リン酸カリ0.3g、硫酸マ
グネシウム7水塩0.3g、グルコース50g、水10
00mlよりなり、pH6に調製した液体培地を200
mlずつ500ml容の三角フラスコ12本に分注し、
綿栓を付した後、120℃で30分間の加圧殺菌を行っ
た。別に斜面培養したスエヒロタケ菌糸体(ヒラタケ
科、スエヒロタケ属、和名:スエヒロタケ、学名Sch
izophyllum commune Fr.CM−
556)(寄託番号:微工研菌寄第1744号)を常法
に従ってこの液体培地に接種し、23〜25℃において
6日間、ロータリーシェーカーを用いて回転数180
r.p.m.で振盪培養を行った。培養終了後、三角フ
ラスコ12本分の培養混合物(ブロス;約2400m
l)を濾布濾過し、濾布の残渣を更に水洗し、遠心分
離して脱水し粒状生菌糸体590g(水分約95%)を
得た。この粒状生菌糸体は半透明性の球形で粘性物質に
つつまれた粒状菌糸体で平均粒径3mmのものであっ
た。このようにして得られた菌糸体をそれぞれ100g
ずつ用い、電気式ホットプレートで加熱処理を行なっ
た。この時、ホットプレートの表面温度を調節して、そ
れぞれ125℃、150℃、180℃となるような条件
で加熱処理を行なった。加熱処理後の水分含有率及び加
熱乾燥体の性状及び収量を表1に示した。なお比較例と
して温度70℃、270℃で加熱処理したものと加熱処
理を行なわない生の菌糸体について表1に併記した。
【0022】
【表1】
【0023】表1により 125〜180 ℃の温度で加熱処理
することによって、加熱乾燥体の香味が優れたものとな
ることがわかる。味についてはパネラー20人の大多数か
ら、本発明の加熱乾燥物は生来の菌糸体の味とは全く異
なって、特有の味がして美味なものであり、匂いも生来
の菌糸体の匂いとは全く異なって香ばしいよい香りが生
じたという結果を得た。また、生理活性については、以
下の実施例に示す。
【0024】
【実施例1】 (急性毒性試験)乾燥菌糸体として参考例の方法で得ら
れた菌糸体(150℃で30分加熱して水分含有率5重量%と
した加熱乾燥菌糸体)を用いた。6週齢のCrj:CD(SD)系
SPF ラット (1群雌雄各5匹)を用いて乾燥菌糸体100
0、2500及び5000mg/kgを経口投与し、2週間の間一般
状態、体重を観察し、その後、屠殺し剖検を行なった。
いずれの投与群でも死亡例は認められず、一般状態、体
重、剖検についても異常は認められなかった。このこと
から、本発明の有効成分は、極めて、安全な物質である
ことが確認された。
【0025】
【実施例2】光岡知足著「腸内菌の世界」(叢文社発
行)に記載される方法によって腸内ビフィズス菌増殖活
性を測定した。すなわち、7〜8週齢のC3H/He(J) マウ
ス (10匹) に実施例1と同じ加熱乾燥菌糸体500mg/kgを
蒸留水で5%懸濁液にして、一週間(6回)経口投与
し、その後、各動物より新鮮糞便を採取した後、秤量
し、100倍量の嫌気性希釈液 (嫌気性PBS:KH2PO4 4.5g
、Na2HPO4 6.0g、l-システィン・HCl ・H2O 0.5g、ツ
イン80 0.5g 、寒天1.0g、蒸留水1000ml) を加え、滅菌
乳鉢で粉砕後、10倍希釈系列を作成し、その0.1ml をビ
フィドバクテリウム セレクティヴ(Bifidobacterium S
elective) 寒天培地 (BS寒天培地) に塗布し、嫌気性グ
ローブボックス中で37℃で5〜6日間培養後、生菌数を
測定した。なお、対照群には蒸留水のみを投与した。ま
た、試験中、日本クレア製固型飼料CA-1及び水は自由に
摂取させた。その結果を表2に示した。
【0026】
【表2】 この結果、本発明における有効成分の加熱乾燥菌糸体は
腸内ビフィズス菌をいちじるしく増殖させる作用がある
ことが判明した。
【0027】
【実施例3】酵素法によって血清中の中性脂肪及び体重
の変動を測定した。すなわち、17週齢のC3H/Heマウス
(18匹) を日本クレア製固型飼料CA-1に21.5%の牛脂を
含めた飼料で12週間飼育し、肥満モデルマウスを作成し
た。参考例1による加熱乾燥菌糸体を蒸留水に懸濁した
加熱乾燥菌糸体の 2.5%懸濁液を調製し、これを菌糸体
として250mg/kg、4週間経口投与し、体重を測定した。
そしてこれを屠殺し、採血し、血清中の中性脂肪を測定
した。対照群には、蒸留水のみを投与した。試験期間中
飼料及び水は自由に摂取させた。この結果を表3に示し
た。
【0028】
【表3】 表3に示すように、乾燥菌糸体の投与は、血清中性脂肪
を低下させ、その結果、動脈硬化の発症を予防乃至治療
し、さらに肥満を抑制することが判明した。
【0029】
【実施例4】参考例1の方法で得られた加熱乾燥菌糸体
の粉末45重量部、澱粉15重量部、乳糖16重量部、
結晶セルロース21重量部、ポリビニルアルコール3重
量部及び水30重量部を均一に練合後、押し出し造粒し
乾燥し、ついで篩別して1410μ〜177μの大きさ
の顆粒剤を得た。この顆粒剤を健康保持剤とした。
【0030】
【発明の効果】本発明の健康保持剤は、その有効成分の
加熱乾燥させたスエヒロタケ菌糸体の香ばしい風味によ
って摂取しやすく、毒性がなく、長期間経口摂取するこ
とによって腸内ビフィズス菌の増殖を促進し、血中の中
性脂肪を低下させて動脈硬化、高脂血症等の発症を防
ぎ、肥満を防止し、健康を保持するのに有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−312980(JP,A) 特開 平2−72121(JP,A) 特開 平2−211848(JP,A) 特開 昭60−45531(JP,A) 特開 昭53−115810(JP,A) 特開 平5−336920(JP,A) 特開 平7−23772(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハラタケ目ヒラタケ科スエヒロタケ属の
    菌糸体の加熱乾燥物を有効成分とする腸内ビフィズス菌
    増殖促進健康保持製剤。
  2. 【請求項2】 ハラタケ目ヒラタケ科スエヒロタケ属の
    菌糸体の加熱乾燥物を有効成分とする肥満防止健康保持
    製剤。
  3. 【請求項3】 ハラタケ目ヒラタケ科スエヒロタケ属の
    菌糸体の加熱乾燥物を有効成分とする血中中性脂肪低下
    健康保持製剤。
  4. 【請求項4】 ハラタケ目ヒラタケ科スエヒロタケ属の
    菌糸体の加熱乾燥物が菌糸体を80〜260℃の温度で
    加熱して水分含有量11重量%以下に乾燥されたもので
    ある請求項1〜3記載の製剤。
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