JP2006117616A - 免疫賦活組成物及びその製造方法 - Google Patents

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隆 木村
Hideto Obara
秀人 小原
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Etsuko Yamazaki
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Abstract

【課題】 従来のハナビラタケからのβ−グルカン抽出法に比べ、効率よく、安全且つ簡便なβ−グルカン抽出法を提供する。
【解決手段】 ハナビラタケを酵素剤で分解処理することによって得られる免疫賦活組成物であって、分子量が10万〜100万のβ−グルカンを含有することを特徴とする免疫賦活組成物及びハナビラタケの子実体又は菌糸体の乾燥粉末(粒径が0.1〜20μm)に酵素剤を作用させて分解処理することを特徴とする免疫賦活組成物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ハナビラタケの子実体や菌糸体などから得られる免疫賦活組成物及びこの免疫賦活組成物を得るための製造方法に関する。
ハナビラタケ(Sparasiss crispa)は唐松などの針葉樹にまれに生えるキノコで、幻のキノコと呼ばれている。子実体は有柄、柄は繰り返して枝を分ける。各枝は平たくなり、波型にうねりくねった花弁状、全体はハボタン状になる。白からクリーム色、一株の径は10cm〜30cmに達する。花弁状の各片は厚さ1ミリほどで、柔軟だが歯切れがよい肉質である。食用のキノコで日本のほかにヨーロッパなどでも発見されている。
ハナビラタケは、免疫を活性化させるといわれているβ−グルカンを多く含むことが知られており、今までに乾燥重量100gあたり43.6g含有する例が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかもその構造は、β−グルカンの中でも特に抗腫瘍効果(免疫賦活効果)が高いとされる6分岐β−(1→3)−グルカンである(例えば、非特許文献1参照)。この6分岐β−(1→3)−グルカンは、免疫賦活能力が高く、免疫細胞(NK細胞等)を活性化してガン細胞を攻撃し、ガンを殺滅させることが知られている。6分岐β−(1→3)−グルカンは、ハナビラタケに限らず、シイタケ、スエヒロタケ等のキノコ類でも知られ、シイタケから抽出したレンチナンやスエヒロタケから抽出したシゾフィランは、既に抗ガン剤として製薬化されている。尚、ハナビラタケからβ−グルカンを抽出する方法としては、既に熱水やアルカリ水などを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−125460号公報 特開2000−217543号公報 Biol Pharm Bull.2000 23(7):866-872
しかしながら、上述した抽出方法では、熱水抽出の場合は抽出効率が低く、アルカリ抽出の場合は安全性の問題に加えて中和操作が必要になるなど作業性が著しく悪いという問題点があった。
本発明は、ハナビラタケから安全に且つ簡便に、効率よくβ−グルカンを得ることができ、また得られたβ−グルカンが優れた免疫賦活効果を発揮することができる免疫賦活組成物の製造方法及びその免疫賦活組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、酵素剤を利用することでハナビラタケの構成組織を分解して、ハナビラタケからのβ−グルカンの抽出効率を向上させ得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ハナビラタケを酵素剤で分解処理することによって得られる免疫賦活組成物を要旨とするものである。
また、本発明は、分子量が10万〜100万のβ−グルカンを含有することを特徴とする免疫賦活組成物を要旨とするものである。
また、本発明は、ハナビラタケに酵素剤を作用させて分解処理することを特徴とする免疫賦活組成物の製造方法を要旨とするものであり、好ましくは、ハナビラタケが、ハナビラタケの子実体又は菌糸体の乾燥粉末であって、該粉末の粒径が0.1〜20μmである免疫賦活組成物の製造方法である。
さらに、本発明は、ハナビラタケに酵素剤を作用させて分解処理して、分子量が10万〜150万のβ−グルカンを含有することを特徴とする免疫賦活組成物を得ることを特徴とする免疫賦活組成物の製造方法を要旨とするものである、好ましくは、ハナビラタケが、ハナビラタケの子実体又は菌糸体の乾燥粉末であって、該粉末の粒径が0.1〜20μmである免疫賦活組成物の製造方法である。
本発明に係る免疫賦活組成物及びその製造方法によれば、ハナビラタケの子実体、菌糸体のいずれかを酵素剤で分解処理することで、免疫賦活活性の主体であるβ−グルカンを効率よく、安全且つ簡便に得ることができる。また、このβ−グルカンは酵素処理により分子量が特定の範囲にまで低下している為、体内に取り込んだときの消化吸収が飛躍的に向上し、ガンその他の成人病に対して優れた免疫賦活効果を発揮する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるハナビラタケは、ハナビラタケの子実体であっても、菌糸体であってもよい。ハナビラタケの子実体は、天然のものでもよいし、あるいは人工栽培により得られたものであってもよい。人工栽培は、人工栽培用の菌床を作製することにより行うことができる。具体的には例えば以下のように行う。すなわち、カラマツ等針葉樹の乾燥オガコに小麦粉等の栄養分を1%〜30%、好ましくは3%〜20%、さらに好ましくは5%〜10%混合する。これを通常850ccのポリプロピレン製栽培ビンに入れ殺菌をしておく。このような培地に同様のオガクズ培地で培養した種菌を接種する。接種量は通常8g〜18gである。種菌を接種した後、一定の条件下、すなわち温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20〜25℃が最も好ましく、湿度は50%〜80%、好ましくは55%〜75%、60%〜70%が最も好ましい条件下で培養し、培地に菌糸を回らせる。その後、芽出し操作として、菌掻きなどを行う。その後、ビンのふたを取って、温度約19℃、湿度約90%の栽培室に移し、子実体を成育させる。通常、芽出し操作後約56日間の生育工程により成長が終了するので、子実体の収穫を行う(詳細は、特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特開2002−125460号公報等を参照)。
一方、ハナビラタケの菌糸体は、固体培養または液体培養のいずれの方法でも得ることができる。本発明で用いられるハナビラタケの菌糸体を固体培養によって得る方法としては、上記の子実体の栽培方法の条件をそのまま踏襲できる。一方、ハナビラタケの菌糸体を液体培養によって得る方法としては、例えば、ブドウ糖2%、酵母エキス1%、リン酸2水素カリウム0.1%、ポリペプトン0.1%、大豆粉0.1%、pH4.5からなる液体培地を用いる方法がある。液体培養は一般的な好気性菌の培養方法に準ずればよく、例えば、振盪培養器を用いて500ミリリットルの三角コルベンに200ミリリットルの液体培地を入れ、25℃、回転数100回転/分で振盪培養した場合、3〜5週間で培養が完了する。元菌はハナビラタケから分離しスラント又は冷凍保存しておいた保存株をスラント等に継代しておこした後、液体培養に移す。通常、培養後の菌糸は無数の球状になり、液体部分は完全に澄んでいる。培養は必要な量に応じてスケールを変えることができ、大型タンクでも培養可能である。
培養収量後、菌糸体と培養液を分離し菌糸体を回収する。分離する方法としては、濾紙等によるロ過または遠心分離で行う。
本発明においては、上記のようにして得られたハナビラタケの子実体又は菌糸体を、そのまま次の酵素剤による分解処理に供してもよいし、まず乾燥した後、破砕機などを用いてハナビラタケの組織を機械的に粗く破砕したものを供してもよい。乾燥するには、熱風乾燥や凍結乾燥のような方法が挙げられる。また、ここで用いられる破砕機としては、ミキサーや石臼などが挙げられる。
さらに、粗破砕されたハナビラタケの粒子を粒径0.1〜20μmの乾燥粉末になるように微粉砕することが酵素反応を進行しやすくするうえで望ましい。微粉砕の方法としては、石臼破砕法、ジェットミル破砕法、超音波破砕法が挙げられるが、中でもジェットミル破砕法は生産性の観点より好ましい。ハナビラタケの粒径が20μmを超えると、その後の酵素反応を受けにくくなり、有効成分の抽出効率が低下する傾向がある。粒径が0.1μm未満であると、酵素反応時にハナビラタケの粒子が膨潤し反応容積が大きくなる点から好ましくない。
本発明においては、上記のようにして得られたハナビラタケに酵素剤を加えて分解処理を行う。本発明で用いられる酵素剤としては、ペクチナーゼ、セルラーゼ、へミセルラーゼなどである。これらの酵素としては、トリコデルマ・ビリデ、リゾプス属糸状菌等を培養することによって得られた酵素群や、一般に市販されている酵素剤(例えば、スミチームMC、セルロシンT2)を利用することもできる。酵素剤は単独で使用することもできるが、複数の酵素を使用してもよい。
ハナビラタケに対する酵素剤の添加割合は、酵素の種類やハナビラタケの粒径などにより一概に限定できないが、処理すべきハナビラタケに対し、概ね0.1〜10質量%、望ましくは5質量%前後である。また、酵素処理液のpHは、3.0〜8.5、望ましくはpH6.0前後である。酵素処理の温度は25〜60℃、望ましくは約50℃である。さらに、酵素処理時間は20分〜10時間、望ましくは2時間〜5時間程度である。
酵素剤による分解処理がある程度まで進行したら、処理液を加熱して酵素反応を止める。通常、80〜100℃で10分〜1時間加熱して酵素を失活させる。その後、処理液中の残渣を濾別せずに処理液を凍結乾燥やフプレードライなどの乾燥手段を施して粉末などの乾燥物としてもよいし、残渣を濾別した濾液を濃縮してエキスとしてもよい。乾燥手段としては凍結乾燥が望ましいが、β−グルカン等の有効成分が比較的熱にも強いことからスプレードライによる乾燥も可能である。以上のような操作によりハナビラタケ由来のβ−グルカンを多量に含む本発明の免疫賦活組成物を得ることができる。
本発明の免疫賦活組成物は、主成分としてβ−グルカンを多量に含有するものであり、その乾燥物中の含有量としては、1.0〜30質量%、好ましくは5.0〜30質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。
また、β−グルカンの分子量は、10万〜100万であり、好ましくは10万〜50万である。通常、ハナビラタケから抽出されるβ−グルカンの分子量は100万以上であることを考慮すると、本発明の免疫賦活組成物に含有されるβ−グルカンの分子量が酵素処理により低分子化されていることが明らかである。そのため、体内での消化吸収が一段と高まり、より免疫賦活効果を期待できることになる。
本発明におけるβ−グルカンの量は、(財)日本食品分析センター酵素法により測定した値である。すなわち、サンプル0.25gを100mL容の三角フラスコに取り、0.08Mのリン酸緩衝液(pH6.0)25mLを注いだ。次に耐熱性αアミラーゼ溶液(シグマ社、2.1万ユニット/mL)を0.05mL添加し沸騰湯浴中で30分間反応後水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7.5±0.1に調製した。次に50mg/mLのプロテアーゼ(シグマ社、バシルス属由来、7−15ユニット/mg)溶液を0.05mL添加し60℃湯浴中で30分間反応させ冷却後塩酸を加え、pH4.3±0.1に調整した。更にアミログルコシダーゼ溶液(シグマ社、食物繊維トータルアッセイキット用)を0.05mL添加し60℃湯浴中で30分間反応させた。冷却後95%エタノール140mLと共に大きな容器に移し替え1時間放置した。生じた沈殿をロ集し、ロ集物に72%硫酸5mLを加えた。4時間放置後、水70mLを添加し、更に沸騰湯浴中で2時間加水分解させた。冷却後生じたグルコース量をグルコーステストワコー(和光純薬工業製)により測定し総β−グルカンの量とした。
本発明におけるβ−グルカンの分子量は、GPC(カラム:UltrahydrogelGuard + 120 + 500(ウォーターズ社製)、溶媒:0.5Mリン酸緩衝液(pH11)、流速:0.5mL/分、検出:示差屈折計)により求めた(デキストラン換算)。
本発明の免疫賦活組成物に含有されるβ−グルカンは、本発明者らによる検討などにより6分岐β−(1→3)−グルカンであることが強く示唆されている。
また、本発明の免疫賦活組成物には、β−グルカンのほかに、低分子有効成分を含むものである。
本発明の免疫賦活組成物の形態としては、必要に応じて錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等に製剤化すればよい。
ここで用いられる製剤担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤ないし賦形剤等を例示できる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、乳糖、白糖、還元麦芽糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、単シロツプ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラツク、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。カプセル剤は本発明の有効成分であるハナビラタケを上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。更に上記各組成物には必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を配合してもよい。
本発明の免疫賦活組成物は、経口投与するのが好ましい。投与方法は、各種組成物の製剤形態、患者の年齢、性別、患者の症状の程度、その他の条件に応じて決定される。例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与される。
本発明の免疫賦活組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件により適宜選択できる。通常、β−グルカン(乾燥質量換算)を1〜500mg/kg/日程度、好ましくは5〜100mg/kg/日程度、さらに好ましくは10〜50mg/kg/日程度の範囲となる量を目安とするのがよい。これら本発明の組成物は1日に1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
本発明の免疫賦活組成物により花粉症などのアレルギーや悪性腫瘍を有効に治療することができる。悪性腫瘍としては、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、頭頚部癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚癌、悪性リンパ腫、急性白血病、脳腫瘍等が挙げられる。
ナチュラルキラー細胞(以下、NK細胞という。)は、抗体の介在なしに直接癌細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃することが知られているが、ハナビラタケのβ−グルカンは、NK細胞活性増強を1つの作用機序として、患者に重篤な副作用を伴うことなく、このNK細胞の腫瘍細胞への細胞障害作用によって腫瘍増殖抑制効果を発現するものと考えられる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、本実施例中、β−グルカンの量及び分子量は、上記した方法に従った。また、固形分抽出率は抽出物重量のハナビラタケ子実体若しくは菌糸体重量に対する比(重量%)で、β−グルカンの抽出率は抽出物中のβ−グルカン重量のハナビラタケ子実体若しくは菌糸体に含まれるβ−グルカン重量の比(重量%)として算出した。
実施例1〔ハナビラタケの免疫賦活組成物の調製〕
粉砕機破砕したハナビラタケ子実体(ユニチカ株式会社人工栽培品)粉末5.0g(粒径66ミクロン)を蒸留水100mL中に懸濁し、スミチームMC(新日本科学工業社製、ペクチナーゼ力価:4000ユニット/g)0.3gを添加し50℃で保温した。4時間後100℃に昇温しそのまま1時間保持することにより酵素を失活させた。その後遠心分離(8,000rpm)することにより免疫賦活組成物のエキスを得た。このエキスを凍結乾燥して2.82gの粉末を得た(固形分抽出率56.4%)。得られた粉末中の有効成分(β−グルカン)の含有量は、10.3%であり、β−グルカンの子実体粉末総含有量に対する抽出率は11.2%であった。得られたβ−グルカンの分子量は、50万と算出された。
比較例1
粉砕機破砕したハナビラタケ子実体(ユニチカ株式会社人工栽培品)粉末5.0g(粒径66ミクロン)を蒸留水100mL中に懸濁し、121℃で2時間加熱処理をした。その後遠心分離(8,000rpm)することにより免疫賦活組成物のエキスを得た。このエキスを凍結乾燥して1.80gの粉末を得た(固形分抽出率36.0%)。得られた粉末中の有効成分(β−グルカン)の含有量を測定したところ、9.5%であり、β−グルカンの子実体粉末総含有量に対する抽出率は6.6%にすぎなかった。β−グルカンの分子量は、100万と算出された。
実施例2〔ハナビラタケの免疫賦活組成物の調製〕
粉砕機破砕したハナビラタケ子実体(ユニチカ株式会社人工栽培品)粉末を更に石臼で粒径10ミクロンに破砕した微細粉末についても実施例1と同一の条件でスミチームMCによる処理を行い、免疫賦活組成物のエキスを得た。このエキスを凍結乾燥して3.27gの粉末を得た(固形分抽出率65.4%)。得られた粉末中の有効成分(β−グルカン)の含有量は28.4%であり、β−グルカンの子実体微細粉末総含有量に対する抽出率は32.7%と実施例1と較べ大きく向上していた。β−グルカンの分子量は、50万と算出された。
実施例3
ブドウ糖2%、酵母エキス1%、リン酸2水素カリウム0.1%、ポリペプトン0.1%、大豆粉0.1%、pH4.5からなる液体培地5ミリリットルを入れた試験管にハナビラタケ菌糸体一白金耳を植菌し25℃で1週間振盪培養した。次いで500ミリリットルの三角コルベンに200ミリリットルの液体培地を入れ、25℃、回転数100回転/分で3週間振盪培養した。尚、培養は5連で行った。培養液を遠心分離(8,000rpm)することにより100gの菌糸体を得た。
上記した液体培養により得られたハナビラタケ菌糸体を凍結乾燥後粉砕機破砕した。ハナビラタケ菌糸体粉末5.0g(粒径50ミクロン)を蒸留水100mL中に懸濁し、セルロシンT2(エイチビィアイ社製、セルラーゼ力価:6000ユニット/g)0.3gを添加し50℃で保温した。4時間後100℃に昇温しそのまま1時間保持することにより酵素を失活させた。その後遠心分離(8,000rpm)することにより免疫賦活組成物のエキスを得た。このエキスを凍結乾燥して3.4gの粉末を得た(固形分抽出率68.0%)。得られた粉末中の有効成分(β−グルカン)の含有量は2.8%であり、β−グルカンの菌糸体粉末総含有量に対する抽出率は11.8%であった。β−グルカンの分子量は、48万と算出された。
比較例2
実施例3のハナビラタケ菌糸体の粉砕機破砕粉末5.0gを蒸留水100mL中に懸濁し、121℃で2時間加熱処理をした。その後遠心分離(8,000rpm)することにより免疫賦活組成物のエキスを得た。このエキスを凍結乾燥して1.85gの粉末を得た(固形分抽出率37.0%)。得られた粉末中の有効成分(β−グルカン)の含有量を測定したところ、1.0%であり、β−グルカンの菌糸体粉末総含有量に対する抽出率は2.1%にすぎなかった。β−グルカンの分子量は150万と算出された。
実施例4〔ハナビラタケの免疫賦活組成物のNK活性〕
A,B,C3名の血液からPBMC(末梢血単核細胞)画分を分離し、10%FCS加RPMI−1640培地で4×10/mL濃度に調製した。PBMC浮遊液に200μg/mLの実施例1〜3の免疫賦活組成物及び比較例1〜2の組成物をそれぞれ終濃度100μg/mLとなるように添加し一晩インキュベートした。インキュベートされたPBMCのK-562ヒト慢性骨髄性白血病細胞に対する傷害活性からNK細胞活性(%)を求めた。図1に各群のNK細胞活性促進効果(無添加時の値との差)を示した。実施例1と比較例1、実施例3と比較例2から、熱水抽出により得られた免疫賦活組成物よりは酵素剤分解処理によって得られたそれの方がNK細胞活性促進効果が高く、実施例1と実施例2を比較することにより粒径10μmのハナビラタケの子実体微粉末を酵素剤分解処理によって得られた免疫賦活組成物の方が粒径66μmのハナビラタケの子実体粉末を酵素剤分解処理によって得たそれよりもNK細胞活性促進効果が高いことが判明した。
実施例5〔ハナビラタケの免疫賦活組成物の抗腫瘍活性〕
ICRマウス(6週齢、メス)の左腋窩に注射針を用いてザルコーマ180を1×10個移植した。移植7日後、実施例1〜3で得られた免疫賦活組成物及び比較例1〜2で得られた組成物(いずれもエキス)を胃ゾンデ法によりそれぞれ1.2mL/Kg/日強制投与した。尚、コントロール群には同量の水を投与した(各群10匹)。投与14日後の各群の腫瘍体積(長径×短径×短径×0.5)を図2にまとめた。実施例1と比較例1、実施例3と比較例2から、熱水抽出により得られた免疫賦活組成物よりは酵素剤分解処理によって得られたそれの方が抗腫瘍効果が高く、実施例1と実施例2を比較することにより粒径10μmのハナビラタケの子実体微粉末を酵素剤分解処理によって得られた免疫賦活組成物の方が粒径66μmのハナビラタケの子実体粉末を酵素剤分解処理によって得たそれよりも抗腫瘍効果が高いことが判明した。
実施例1〜3で得られた免疫賦活組成物及び比較例1〜2で得られた組成物について、NK細胞活性促進効果を示した図である。 実施例1〜3で得られた免疫賦活組成物及び比較例1〜2で得られた組成物について、担癌マウスに対する抗腫瘍活性を示した図である。

Claims (5)

  1. ハナビラタケを酵素剤で分解処理することによって得られる免疫賦活組成物。
  2. 分子量が10万〜100万のβ−グルカンを含有することを特徴とする免疫賦活組成物。
  3. ハナビラタケに酵素剤を作用させて分解処理することを特徴とする免疫賦活組成物の製造方法。
  4. ハナビラタケに酵素剤を作用させて分解処理して請求項2記載の免疫賦活組成物を得ることを特徴とする免疫賦活組成物の製造方法。
  5. ハナビラタケが、ハナビラタケの子実体又は菌糸体の乾燥粉末であって、該粉末の粒径が0.1〜20μmである請求項3又は4に記載の免疫賦活組成物の製造方法。
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