JP2004284035A - 積層ポリエステルフィルムとその製造方法及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料とその製造方法 - Google Patents

積層ポリエステルフィルムとその製造方法及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料とその製造方法 Download PDF

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本田  誠
Kazuto Kiyohara
一人 清原
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Abstract

【課題】本発明の目的は、トリアセチルセルロースフィルムに近似の破断強度、破断伸び特性を有し、カール特性、巻き癖回復性、フィルム裁断性、カメラ装填適性、現像処理機器適性に優れた積層ポリエステルフィルムとその製造方法及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2層のポリエステル層を積層して二軸延伸された積層ポリエステルフィルムにおいて、積層した該ポリエステル層のいずれか一方の表層の引張破断エネルギーが、20MPa以上、110MPa以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリアセチルセルロースフィルムに近似の破断強度、破断伸び特性を有し、カール特性、巻き癖回復性が良好で、フィルム裁断性、カメラ装填適性、現像処理機器適性に優れた新規の積層ポリエステルフィルムとその製造方法及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、二軸配向ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムは各種の特性をバランス良く保有し、産業用資材として広く使用されている。その中で、写真感光材料の分野においても、医療用のX線写真フィルムや、印刷用、ディスプレイ用等の比較的広い面積で使用され、高い平面性が要求される分野では、優れた支持体用材料として実績がある。一方、一般消費者向けの135サイズを主体とするロール状のカラー写真フィルムあるいはモノクロ写真フィルム用の支持体としては、長年にわたり、その加工のし易さの観点からトリアセチルセルロース(以降、TACと略す)ベースに代表される繊維素系ポリマー支持体が広く使用されている。以上のように、現在のアマチュア写真市場では、TACベースを用いた写真フィルムが主流であり、撮影に使用するカメラや、現像所使用する現像処理機、フィルムスプライーサー等の機器設計は、このTACベースの物性に合わせて設計されることとなり、現実に大量のTACベースに対し適正を有する各種の写真関連機器が存在している。
【0003】
一般に、TACベースは、光学的な等方性と優れた透明性を有し、適度な透湿性と保水性を有し、ロール状に保管した際に生じる巻き癖カールが、湿式現像処理工程で回復すると言った一般消費者用のロール形態の写真フィルムとして特徴的な特性を有しており、この特性を充たす代替品は、現在まで存在しなかった。
【0004】
撮影用フィルムに巻き癖がついたままであると、湿式現像処理工程中や現像処理後に、様々な問題、例えば、現像処理機での搬送中に折れが発生したり、現像処理機のガイドロールに巻き込まれるという問題が発生し、また、カラーネガティブフィルムである場合には、カラーペーパーへのプリント工程等で、保持たれたカール特性に起因して、プリンター内でのスリ傷の発生、ピントのボケ、搬送時のジャミング、折れ等の問題が発生する。巻き癖カールが湿式現像処理時に回復する速度や、現像処理液中での支持体としての適度な強度と剛性を維持できることも、TACベースの有利な特徴である。
【0005】
また、昨今のカメラの小型によって、カメラ装填時に巻き取り軸にフィルムの舌端をセットするローディングには、ある程度の巻癖カールが必要とされている。これは、カメラの幅方向での小型化により、巻き取り軸がより内側に配置される様になったためである。その点、TACベースは、フィルム用パトローネに巻き込まれた状態である期間保管されると巻癖カールが付くため、舌端が自然に巻き取り軸の方向に向くためローディングエラーが発生しにくいとされている。すなわち、TACベースを代替する支持体においては、この様なある程度の巻癖カールの付き易さと湿式処理での巻癖カールの取れ易さを両立する必要がある。
【0006】
更に、TACベースは、その分子構造に由来すると思われる低密度とアセチル基と水酸基との間の水素結合により、低い破断伸び特性を有しており、この結果、切断性に優れ、様々な切断加工に対して極めて加工しやすい特性を併せ持っている。135サイズ形態の写真用フィルムは、一般に感光性層を塗設したのち、35mm幅へのスリッティング、24枚撮り、36枚撮り等の規定の撮影枚数に応じた長さへの切断、先端、後端形状への打ち抜き加工、パーフォレーション(穿孔)加工ののち、スプールに固定されパトローネ内に巻き込まれて、市販の一般撮影用のフィルム形態をなしている。撮影後も、いわゆる大型集中ラボで現像される際、特に個別の未現像フィルムを多数連結して長尺のロール状に加工し直してシネ型現像処理を行ったり、ノッチ処理(指定の画像コマの片側の切り欠きをいれるなど)、6駒づつに切断してネガシートに挿入したりと、ハロゲン化銀写真感光材料を現像処理からお客様にプリント画像を提供するまでの間に、様々な切断工程を経ることになる。前述のように、135システムでは、長い間、切断性に優れるTACベースを用いているため、上記の処理機器でおける切断条件の設計も、それ程厳密な条件の調整を行わなくても、トラブルを起こすことは非常に少なかった。
【0007】
しかしながら、現在広く用いられているTACベースにおいても、様々な課題を抱えている。その一つは、TACベースを製造する際にメチレンクロライド(沸点41℃)などの塩素系炭化水素を溶媒として使用している点が、その代表として指摘されている。メチレンクロライドは、従来からセルローストリアセテートの良溶媒として用いられ、沸点が低いことから製造工程の製膜及び乾燥工程において乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。ところがメチレンクロライドは、近年環境問題等の視点より、その使用量が制限される方向にある。このため、製造工程でメチレンクロライドの回収を徹底して行う等の対策を取っているが、大がかりな回収設備が必要とされコストに対する負荷が大きいのが現状である。
【0008】
上記課題の解決方法の一つとして、例えば、特開平11−310640号には、TACの冷却溶解を用いた方法、特開平11−152342号には、溶媒を変更した方法等により、メチレンクロライドを使用しない、あるいは大幅に削減できるセルローストリアセテートフィルムの製造方法が提案されているが、未だ有機溶媒を使用するための設備投資が増大したり、あるいは引火性、爆発性などの懸念を低減するため設備投資が必要とされているのが現状であり、有機溶媒を使う以上、本質的な解決には至っていない。
【0009】
一方、TACベースを他のプラスチックベースで置き換える様々な試みがなされている。例えば、米国特許第4,141,735号では、アニール処理を施したポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略す)、ポリエチレン2,6ナフタレート(以降、PENと略す)などが実用化に向け検討されており、このうち、アニール処理されたPENベースは厚さ85μm付近のものが、APS(アドバンスドフォトシステム)用の写真用ベースフィルムとして、既に実用化されている。アニール処理されたPENベースは、ロール状に保管しても巻き癖がつきにくいことが特徴であるが、このアニール処理されたPENベースの厚さを、現在広く普及している135フォーマットの写真フィルムで使われているTACベースの厚さと同じ120μm程度にすると、支持体の機械的な物性、例えば、剛性、破断強度などが高すぎて、現行の135フォーマットのカメラや現像処理機等で故障が生じる要因となるため、135フォーマット対応のシステムには、未だ使われていないのが現状である。
【0010】
上記課題に対し、米国特許第5,759,756号明細書では、ポリエチレン2,6ナフタレート層と変性ポリエチレンフタレート層とを積層する例が開示されているが、これはAPSのベースのコストを下げるには有効ではあるが、現行のハロゲン化銀写真感光材料で用いられているTACベースの厚さには適用できない。この様に、PENを主要素材とする限り、機械強度の面と溶融時の他の改質樹脂との混和の面から、TACに近似した写真フィルムのベースを得るのは難しい。
【0011】
一方、特開平10−20441号、特開2000−206646号、特開2001−98089号には、フィルム強度を低下して切断容易性を高めたフィルムが提案されて、135フォーマットへの応用が試みられてはいるが、未だ実用化に耐えうる品質に到達していない。また、PENフィルムは、現状では樹脂の原料コストが高く、また融点が高いため、熱エネルギーに対する負荷や樹脂強度が高いことによる加工時のエネルギー負荷等で製造面における適性に劣るため、現在使用されているTACフィルムへの置き換えに対して、経済的な利点が少ない。
【0012】
従来の技術では、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート系プラスチックをはじめとする剛性の高い樹脂に熱処理を施す等をして、巻き癖のつきにくい材料を得る方法の検討がなされてはいるが、舌端に巻癖カールが付きにくいために、カメラでのローディングに対しむしろエラーを起こしやすくなってしまう。舌端のみに再熱処理をして巻癖カールを付きやすくするという方法も提案はされているが、生産工程が煩雑となり、またその部分は付いた巻癖カールが現像処理時に残るため、処理機器への適性や作業性に悪影響を与えることがある。また、舌端だけに再熱処理しても、通常1〜2mの長さで使用される135フォーマット写真フィルムでは、その殆どが巻癖カールの付きにくい状態のままで、カメラの小型化と同時に狭くなっているカメラ巻き取り部で、特に巻き戻しの時に巻き取り軸によりかけられている巻き取りテンションが無くなる、もしくは小さくなった時に、巻がゆるんで詰まってしい、全駒巻き取れないトラブルが発生する。すなわち、この考え方では、TACと互換性のある写真フィルム用の支持体を見いだすのは困難である。
【0013】
また、ポリエチレンテレフタレートは、前述のようにシート状で使用される写真用感光材料の支持体として、その優れた寸法安定性や機械強度により実用化されているが、カールの付き易さと現像処理後の巻き癖回復性(カールのとれ易さ)が劣るため、135フォーマットのような小径のロールフィルムでは支持体として実用化できない。巻き癖カールをつきにくくする方法については、特許第3142571号、特開平8−146558号に開示されているが、ポリエチレンテレフタレートはTgが80℃付近であり、135フォーマットの写真フィルムが日常で保存される環境下で容易に巻き癖がついてしまうため、実用化には至っていない。
【0014】
更に、疎水性の樹脂に親水性基を導入することにより、現像処理後のカール回復をTACに近似させる方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。これらの提案されている方法は、PETを変成したり、積層時のフィルムの樹脂組成や機械強度を特定のものにするものであるが、市場で大量の撮影済み写真フィルムの処理過程で発生する様々な課題を完全には解決できていないのが現状である。
【0015】
特に、ポリエステルに変成成分を導入する方法については、どのような成分をどの程度組み合わせればよいか、また製造ロットごとの安定な組成や、光学的性質、機械物性の望ましい品質を得ることが難しい。また、変成成分を多く入れたり、組み合わせを複雑にしすぎると、ポリエチレンテレフタレートのもつ半結晶性が失われて、非晶性となり、延伸製膜でフィルムを製造するためには適さないものとなってしまう。ポリエチレンテレフタレートを主成分とした共重合樹脂の重合法については、特許第3122135号、特許第3297724号、特開平6−192408号に開示された例があるが、これらの提案は真に必要な市場での高度な要求品質水準と、製品として不可欠な性能水準と、製造コストを満たせていない。単に、ポリエチレンテレフタレートの一部に共重合成分を導入しただけでは、TACに近似した物性を持たせ、かつ写真フィルムの各システム機器で支障がないようにするのは非常に困難である。
【0016】
また、ポリエチレンテレフタレートは、特に、延伸した後で破断しにくいため、裁断性の良いTACフィルムに最適条件を設定してある処理機器に対しては、切断しにくいことが欠点となってしまい、現像前後での写真フィルムの搬送、裁断、穿孔の機器部分、駆動部分で故障を引き起こすことが知られている。近年では、24枚撮りあるいは36枚撮りのフィルムといった1mから2m程度の長さの撮影済みの写真フィルムを、個別に市中の店頭のミニラボ現像機で現像処理することが多いが、依然として、世界規模で写真フィルム製品を供給する際には、大ラボ(ホールセールラボ)のように個別の未現像フィルムを、テープスプラーサー等で接合して長尺のロール状に加工してから現像処理する方式、例えば、ロール式自動現像機もかなり残っているので、現像処理前の加工性や現像処理中のフィルムが破断しないこと、現像処理後の取り扱い性(巻き取り易さ、束ね易さ)、切断性、穿孔性(指定の画像コマの片側の切り欠きをいれるなど)、フィルム剛性、フィルム平面性等が重要な因子であり、現行のTACフィルムのフィルムでも条件によってトラブルが発生することがある。映画用のシネフィルムでは、ポリエステルフィルムがすでに実用化されており、またAPSサイズの薄いフィルムでも実用化されているのは、切断する工程がまったくないか、特定の作業者が専用の機器で慎重に取り扱うことが可能な場合であって、135サイズのように多様な既存処理機器と熟練度を要求されない作業を前提とした場合では、TACフィルムの写真フィルムと共存可能な汎用の代替フィルムが未だ出現していないのが現状である。
【0017】
【特許文献1】
特開平5−210199号公報 (特許請求の範囲)
【0018】
【特許文献2】
特開平6−161035号公報 (特許請求の範囲)
【0019】
【特許文献3】
特開2000−131800号公報 (特許請求の範囲)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、トリアセチルセルロースフィルムに近似の破断強度、破断伸び特性を有し、カール特性、巻き癖回復性が良好で、フィルム裁断性、カメラ装填適性、現像処理機器適性に優れた新規の積層ポリエステルフィルムとその製造方法及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料とその製造方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0022】
1.少なくとも2層のポリエステル層を積層して二軸延伸された積層ポリエステルフィルムにおいて、積層した該ポリエステル層のいずれか一方の表層の引張破断エネルギーが、20MPa以上、110MPa以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【0023】
2.前記表層の破断伸度が、5%以上、130%以下で、かつ破断強度が20MPa以上、110MPa以下であることを特徴とする前記1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0024】
3.前記ポリエステル層の少なくとも1層が、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸とポリエチレングリコールを共重合させたポリエステル成分を含むことを特徴とする前記1または2項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0025】
4.前記ポリエステル層の少なくとも1層が、全エステル結合単位に対して金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸成分を1〜15mol%含有し、かつポリエステル成分に対しポリアルキレングリコール成分またはポリアルキレングリコール・ジオキシカルボニルアルキルエーテル成分を、1〜10質量%含有するコポリエステルで形成されていることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0026】
5.前記ポリエステル成分が、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分を含むポリエステル成分をブレンドまたは共重合されていることを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0027】
6.現像処理後の巻癖カール回復率が、60%以上であることを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0028】
7.前記ポリエステル層が2層の表層と該表層に挟持された少なくとも1層のコア層とから構成され、該表層の少なくとも1層の引張破断エネルギーWsが、該コア層の引張破断エネルギーWcよりも小さいことを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0029】
8.前記表層の引張破断エネルギーWsと、前記コア層の引張破断エネルギーWcとの差ΔW(Wc−Ws)が、10MPa以上、100MPa以下であることを特徴とする前記7項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0030】
9.前記コア層の引張破断エネルギーWcが、40MPa以上、150MPa以下であることを特徴とする前記7または8項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0031】
10.前記表層のポリエステル成分の示差走査熱量測定(DSC)による融解温度Tmsが、前記コア層のポリエステル成分の示差走査熱量測定(DSC)による融解温度TmCより小さいことを特徴とする前記7〜9項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0032】
11.前記表層及び前記コア層を構成する各々のポリエステル成分の固有粘度(IV)が0.95以下で、かつ全グリコール成分に対するシクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分の含有率をX(質量%)としたとき、下式(1)の条件を満たすことを特徴とする前記7〜10項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0033】
式(1)
(0.0055X+0.4)±0.05≦固有粘度(IV)≦(0.0055X+0.6)±0.05
12.総膜厚が、105〜130μmであることを特徴とする前記1〜11項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0034】
13.前記表層が、フィルムの切断工程のフィルム切断時に、最初に刃と接触する面であることを特徴とする前記1〜12項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
【0035】
14.前記1〜13項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、熱溶融共押出によりポリエステル層を積層し、キャスティング、冷却した後、ガラス転移点以上の温度でMD方向(製膜方向)とTD方向(幅手方向)とを同時または逐次延伸した後、結晶化温度以上、溶融温度未満で熱固定処理して二軸延伸製膜を行い、かつ該熱固定処理する熱固定温度THSが、下式(2)の条件を満足することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【0036】
式(2)
TmC−30℃≦THS≦TmC−5℃
〔式中、TmCはコア層のポリエステル成分の融解温度を表す。〕
15.支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀感光性層を有するロール状ハロゲン化銀写真感光材料において、該支持体が前記1〜13項のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムであることを特徴とするロール状ハロゲン化銀写真感光材料。
【0037】
16.支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀感光性層を有するロール状ハロゲン化銀写真感光材料の製造方法において、該支持体が前記14項に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするロール状ハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
【0038】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の2軸延伸された積層ポリエステルフィルム(以下、本発明のポリエステルフィルムともいう)は、少なくとも2層のポリエステル樹脂層を積層してなる。本発明のポリエステルフィルムの構成層は、何層積層してもかまわないが、製造設備が複雑化する等の観点から、一般的には2層又は3層が好ましい。本発明での「積層」とは、2種以上の溶融した樹脂を流動性をもったまま接合せしめ、一体のシートフィルム状に加工することをいう。一つの層は最終的な写真用支持体において、2μm以上の厚みを有することが、本発明の機能を発揮するために必要である。いったん固体のシートを形成してから張り合わせる、いわゆるラミネート加工や原反の搬送から巻き取りまでの途中で、塗料などによる塗布加工は、本発明で定義する「積層」の規定には包含しない。
【0039】
本発明でいう「ポリエステル」とは、上記の加熱溶融によるシート加工及び後述する延伸、熱処理に堪える熱可塑性樹脂であって、エステル結合をポリマーの主鎖にもつものである。本発明でいう「共重合させたポリエステル」とは、ポリエステルを構成する二塩基酸成分とグリコール成分のどちらかが、単一ではなく、重合段階から一分子中に複数の二塩基酸成分もしくはグリコール成分を導入することを目的として作られたポリマーのことである。従って、異なる構成成分のポリエステルを単に溶融して混ぜ合わせただけのポリマーは、「共重合ポリマー」の定義には含まない。
【0040】
また、本発明でいう「表層」(スキン層ともいう)とは、積層した本発明のポリエステルフィルムの最表層に位置するポリエステル層であり、表面側と裏面側とで2層存在するが、いずれも表層と称し、厚み、もしくは溶融キャスト時の冷却ドラム面にあたるか空気に接する面かで、表面側表層あるいは裏面側表層と識別できる。
【0041】
本発明でいう「コア層」(芯層ともいう)とは、積層した本発明のポリエステルフィルム中で、上記2層の表層で挟まれた層をいう。例えば、汎用のポリエステルと共重合ポリエステルを準備し、2層以上積層するか、あるいは、ポリエステルに不活性粒子を添加したものとしないものを積層して、実質的に特定の添加成分を厚み方向に偏在させてもよい。ただし、2層構成の場合は、コア層が存在しない。すなわち組成の異なる表層のみから構成されることになる。この場合は、片方の表層が共重合ポリエステルによる親水性を付与した表層、もう片方は、ポリエステル層で親水性は付与しない構成とするのが製造コスト面で望ましい。
【0042】
3層以上の場合、現像処理時の巻き癖カールを回復するためには、表層が共重合ポリエステル層であることが好ましい。更に、積層間の接着性向上のためには、例えば、特開平6−161035号に記載のように、ポリエステル層に共重合ポリエステルを混合することもできる。混合する割合は、5〜70質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0043】
共重合ポリエステルを含むポリエステル層を3層以上積層する場合、現像処理時の巻き癖カールを回復するため、表層のスルホイソフタル酸塩やポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジカルボン酸などの親水性の共重合成分比率を、コア層よりも多くすることが好ましい。すなわち表層の設計として、コア層より比較的、親水性にするのがよい。基本的な構成は、延伸性と剛性に優れたコア層を親水性の表層で挟む構成が好ましい。
【0044】
本発明のポリエステルフィルムは、破断性をTACに近付けるために、ポリエステルフィルムを100mm/minの速度で引っ張った時の引張破断エネルギーが20〜110MPaで有ることが特徴であり、より好ましくは30〜100MPaである。この引張破断エネルギーは、フィルムの引張試験を行ったときに得られる応力−伸び曲線が、伸び軸(横軸)と囲む面積で求められる。ただし、応力(縦軸)の単位はMPa、伸び(横軸)の単位は%で、100%を1として計算している。また、各構成層の引張破断エネルギーは、別途、ポリエステル成分を積層ポリエステルフィルムと同一の製膜条件と製膜した表層単膜を作製し、この単膜の引張破断エネルギーを測定することにより、容易に求めることができる。
【0045】
積層したポリエステルフィルムの場合、表層の引張破断エネルギーを本発明で規定する範囲にある層とすることが重要である。最外層に引張破断エネルギーが本発明の範囲にある表層を設けることにより、切断する際に破断のきっかけ(クラック)が入りやすく、切断にかかる負荷を低減することができる。引張破断エネルギーが、20MPaより低いと、通常の取扱中に破断したり、折れてしまったりして取扱性に問題が生じ、110MPaより高いと本発明の目的である、切断性に優れるポリエステルフィルムを実現できない。
【0046】
本発明において、ポリエステルフィルムの引張破断エネルギーをコントロールするのには、破断伸度を5%以上、130%以下で、かつ破断強度を20MPa以上、110MPa以下とすることが好ましい。より好ましくは、破断伸度が10%以上、100%以下で、かつ破断強度が30MPa以上、100MPa以下である。引張破断エネルギーをコントロールするには、破断伸度、破断強度の他に、弾性率、降伏点応力をコントロールする方法があるが、本発明の目的である切断性に対しては破断伸度と破断強度をコントロールすることが最も効果が高いことを、鋭意検討の結果見いだした次第である。破断伸度が5%未満又は破断強度20MPa未満の場合には、通常の取扱で破断することが多くなり、破断伸度が130%より大きい又は破断強度が110MPaより大きいと、摩耗した刃やクリアランスの広がったカッター等メンテナンスが不十分な機器での切断において、TACと同等以上の切断性が得られない。
【0047】
本発明のポリエステルフィルムの場合、表層の引張破断エネルギーがコア層の引張破断エネルギーよりも小さくなるように設計することが重要である。この構成とすることによって、裁断性、穿孔性を向上できると同時に、ポリエステルフィルムに必要とされる柔軟性やスティフネスを兼ね備えることができる。表層とコア層の引張破断エネルギーの差は、10MPa以上、100MPa以下であることが好ましい。10MPa未満であると、表層の成分との物性差が殆ど無く全体的に折れやすく、取り扱いづらくなるか、裁断性、穿孔性に向上が見られない。逆に、その差が100MPaより大きいと、物性差が有りすぎて裁断又は穿孔時に両層間の界面で剥離が生じやすくなる。2層積層の場合は、後に塗設される感光層側とは反対側に位置する層を表層とする。切断性能、カール回復性能、生産性を満足するためには先にも述べたように3層積層が好ましく、原材料をあまり多種にしないためにもA(表層)/B(コア層)/A(表層)型の3層積層が好ましい。
【0048】
更に、本発明においては、切断性を向上するためには、表層の引張破断エネルギーを20〜110MPaにした上で、コア層の引張破断エネルギーを40〜150MPaにすることが好ましく、より好ましくは60MPa〜130MPaである。表層の引張破断エネルギーが20MPa未満であると、通常の取扱時に破断の原因となり易く、また表層が切断刃を受け止めるための腰(柔軟性)を付与させることが難しくなる。また、110MPaより大きいと、表層の引張破断エネルギーをコントロールした効果が、摩耗した刃やクリアランスの広がったカッター等メンテナンスが不十分な機器で切断を行った場合に、効果が薄くなってしまう。積層構造の場合、更に表層のポリエステル成分からなるフィルムの引張破断エネルギーをコントロールするのに、破断伸度を5%以上、130%以下、かつ破断強度が20MPa以上、110MPa以下とすることにより、より効果が発揮され、摩耗した刃やクリアランスの広がったカッター等メンテナンスが不十分な機器での切断に置いてもTACと同様の切断性を実現できる。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムは、ハロゲン化銀乳剤(親水性コロイド層)を塗設するなどして使用するが、本発明のような引張破断エネルギー構成にした場合、驚くべきことに、親水性コロイド層を塗設した後にカッティング性能が向上することが分かった。メカニズムは明らかではないが、親水性コロイド層は、比較的堅く造膜されており、切断するとき(ドライ状態)に比較的大きな応力が発生する。その応力が、親水性コロイド層の破壊により解放される過程で、本発明の構成のポリエステルフィルムは、特に表層の破壊まで応力がTAC同等に設計されているため、TAC同等の亀裂伝搬が生じるため、ハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を塗設された後の方が、カッティング性が向上すると考えている。
【0050】
3層以上積層の場合、表層を複数の層としてもよく、コア層を複数の層としてもよい。コア層に相当する層膜厚の合計は60〜100μmであることが好ましく、65〜90μmであることがより好ましい。60μm未満では表層が厚くなり、製膜の際に延伸ムラになりやすく、また巻き癖が付き易くなる。またコア層が100μm以上では表層の親水性層の吸水膨張による巻き癖回復性が低下してしまい、コア層の切断性向上のための樹脂の改質のため、共重合成分や混合樹脂の割合を増やさざるを得ないので、製造コストの面からも好ましくない。
【0051】
更に、2種以上の共重合成分の一部または全てが異なるポリエステル樹脂を、製造ライン中で直接混合して、コア層と表層の間に、中間層として1層以上の接着層として設けても良い。この時、積層した層間の接着性向上のためには、隣接する層間の共重合成分差をある範囲内に設定してもよい。具体的には、特開平6−289534号に記載の条件を参照することができる。なお、本発明のポリエステルフィルムを構成する層は、それぞれの構成層の厚みが2μm以上のものであり、下引層等は含まない。
【0052】
本発明のポリエステルフィルムでは、共重合成分の比率の異なる共重合ポリエステル樹脂を2種以上準備し、事前にコア層用、あるいは表層用の均一混合樹脂として使用して、それらを積層しても良い。
【0053】
次に、本発明に用いられるポリエステルについて説明する。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするポリエステルである。
【0054】
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ポリエチレングリコールジカルボン酸、ポリプロピレングリコールジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4,4′−ジ−β−ヒドロキシエチル)フルオレン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。
【0055】
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも、透明性、機械的強度、寸法安定性などの観点から、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールまたは1,4−シクロヘキシレンジメチレングリコールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを含有するポリエステルが好ましい。ポリエステルに対してエチレンテレフタレートユニットまたはポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートが70質量%以上含有されていると、透明性、機械的強度、寸法安定性などに優れたフィルムが得られる。
【0056】
また、特開平1−244446号、特開平4−234039号、特開平5−210199号、特開平6−82969号公報などには、スルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸及び/またはポリアルキレングリコールが共重合成分として含有するポリエステルについて、更に、特開平4−93937号、特開平6−11795号、特開平6−161035号、特開平6−289534号、特開平6−240020号、特開平6−110154号公報などにはポリエステルを2層以上積層したポリエステルについて記載されているが、この様なポリエステルは、巻き癖低減、現像処理後の巻き癖カール解消等の効果があり、本発明のポリエステルフィルムと組み合わせても好ましく用いることができる。
【0057】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、少なくとも一種の金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸、少なくとも一種のポリアルキレングリコール及び1,4シクロヘキサンジメタノールを共重合成分とし、芳香族二塩基酸とグリコールを主構成成分とする共重合ポリエステルであり、二塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などがあり、グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、p−キシリレングリコールなどがある。中でも、テレフタル酸とエチレングリコールを主構成成分とする5成分(テレフタル酸、スルホイソフタル酸塩、エチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール)の共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0058】
スルホン酸基またはその塩を有するジカルボン酸としては、例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(5−SIP)、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体、およびこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)で置換した化合物が用いられる。
【0059】
こうした金属スルホネート基を有するジカルボン酸成分の共重合割合は、全エステル結合単位のモル数に対して1〜15モル%であり、1モル%未満では十分な巻ぐせ解消性が得られず、15モル%を越えると延伸性に劣ったり、機械的強度に劣ったものとなり好ましくない。特に、写真現像処理条件が厳しい、例えば、現像処理液のpHが高いカラーネガティブフィルムやカラーリバーサルフィルムの発色現像処理液に適合させるには、耐アルカリ溶液の性質がベースに要求されるので、さらに1〜12モル%の共重合割合が好ましい。
【0060】
ポリアルキレンオキシジカルボン酸としては、ポリエチレンオキシジカルボン酸、ポリトリメチレンオキシジカルボン酸、ポリテトラメチレンオキシジカルボン酸などが用いられるが、このうちポリエチレンオキシジカルボン酸が好ましく、分子量は特に限定されないが300〜20,000が好ましく、更に好ましくは600〜10,000、特に1,000〜5,000のものが好ましく用いられる。ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレンオキシジカルボン酸の共重合割合は、該共重合ポリエステル反応生成物の1〜10質量%であることが好ましい。
【0061】
また、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などが用いられるが、このうちポリエチレングリコールが好ましく、分子量としては特に限定されないが、300〜20000が好ましく、さらに好ましくは600〜10000、特に800〜5000のものが好ましく用いられる。ポリエチレングリコールの分子量が、5000以下であると、製膜後のポリエステルフィルムの中に、ポリエチレングリコールのユニットが均一に分布するので、透明性が良好であり、ポリエステルフィルムが吸水後に再乾燥されても平面性が良好に維持される。また、ポリエチレングリコールの分子量が800以下であると、重合時の共重合ポリエステルの分子量や組成を均一にするのが、やや困難である。
【0062】
ポリアルキレングリコールは、反応生成物のポリエステルの全質量に対して1〜10質量%含有され、好ましくは2〜8質量%である。ポリアルキレングリコールが1質量%未満では十分な巻ぐせ解消性が得られない。また、10質量%を越えると水中浸漬直後のヤング率が低下し、ヘーズも劣化する。また、他の共重合成分との相乗効果でで共重合成分の結晶化速度が遅くなり、製膜時に延伸しにくい。
【0063】
本発明のポリエステルフィルムをハロゲン化銀写真感光材料用の支持体として用いる際には、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。
【0064】
本発明のポリエステルフィルムにおいては、他の二塩基酸とグリコールも用いることができ、例えば、二塩基酸として使用できるベンゼンジカルボン酸またはその誘導体としては、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸及びその低級アルキルエステル(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体);シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸及びヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成可能な誘導体);及びアジピン酸、コハク酸、シュウ酸、アゼライン酸、セバシン酸及びダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体(無水物、低級アルキルエステルなどのエステル形成可能な誘導体)等を、全二塩基酸の10モル%以下の量で使用しても良い。
【0065】
本発明で使用することができる上記以外の他の二価のアルコールとしては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキシレンジメチレングリコール、ビスフェノールA、p,p′−ジヒドロキシフェニルスルフォン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ポリアルキレン(例、エチレン、プロピレン)グリコール、及びp−フェニレンビス(ジメチロールシクロヘキサン)などを挙げることができる。これらは、本発明に係る二価のアルコールの10モル%以下の量で使用しても良い。
【0066】
上記ポリエステルは、例えば、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基及び/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば、極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で、実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。
【0067】
本発明のポリエステルフィルムに用いられる共重合ポリエステルの重合は、通常の公知の方法で行うことができる。すなわち、ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル交換した後、高温、減圧下にて重縮合せしめて共重合ポリエステルを得ることができ、この際、共重合成分である金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸類やポリエチレングリコールをエステル交換反応した後に添加し、重縮合を行う。エステル交換反応の触媒組成の例は、例えば、特開平10−13041号に記載のものを用いることができる。
【0068】
本発明の積層したポリエステルフィルムの製造方法としては、押出機から溶融押出した後、冷却ドラム上で冷却固化し、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸し、熱固定する方法を用いることができる。延伸は、製膜方向(MD方向)と幅手方向(TD方向)を同時に軸延伸する同時二軸延伸法、MD方向に延伸した後、TD方向に延伸する逐次二軸延伸法、また延伸を何工程かに分けて行う多段延伸法を用いても良い。本発明のポリエステルフィルムを作製するには、延伸温度、延伸倍率と熱固定温度を、用いる樹脂の熱的特性温度(ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、溶融温度(Tm))を考慮して最適条件に調整することにより実現できる。
【0069】
また、積層構造とする場合は、積層する各層のポリエステルを別々の押出機から溶融押出した後、溶融ポリマーの導管内(フィードブロックタイプ)または押出口金内(マルチマニホールドタイプ)において層流状で接合せしめて押出し、その後、同様に冷却ドラム上で冷却固化し、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸し、熱固定する共押出し方法が好ましい。積層タイプで本発明のポリエステルフィルムを製造する際には、コア層に用いる樹脂の融解温度TmCと表層に用いる樹脂の融解温度TmSが、TmS<TmCの関係であることが好ましい。
【0070】
積層タイプのポリエステルフィルムの場合、溶融して積層した後に異なる樹脂が自ずと同一の延伸条件、熱固定処理を受けることになる。本発明の構成を実現する積層二軸延伸のポリエステルフィルムを作製するためには、特に、熱固定処理における温度が重要である。すなわち、表層の引張破断エネルギーWsがコア層の引張破断エネルギーWcよりも小さくするには、表層の面配向度をコア層の面配向度よりも低くする製膜条件で製膜することにより実現できる。上記のような融解点の関係にある樹脂を用いれば、コア層の樹脂の融解温度を基準に設定した同じ熱固定温度に曝されても、融解点の低い樹脂にとっては、融解点の高い樹脂と比較して、相対的に高い温度で熱固定されることになるため、面配向性が低下するからである。この様な構成とすることで、切断時に表層にクラックが入りやすくなり、切断の起点を形成することができると考えている。更に、この様な性質を顕著にするためには、熱固定温度THSとコア層樹脂の融解点(TmC)の関係が、〔TmC−30℃≦THS≦TmC−5℃〕であることが好ましい。熱固定温度をコア層の樹脂にとってもやや高めの温度に設定することで、表層に入ったクラックがより伝搬されやすくなり、更に、コア層、表層間の層間接着が向上する。尚、面配向度は、アッベ屈折率計を用いて測定する面方向屈折率の平均と厚み方向屈折率から下式で計算される複屈折の大きさから判断することができる。一般に、複屈折が大きい方が面配向度が高い。また、屈折率の測定は表層、コア層それぞれの樹脂を積層構成で製膜するときと同条件で単層製膜したフィルムを用いて測定する。
【0071】
複屈折=(屈折率MD−屈折率TD)/2−厚み方向屈折率
本発明のポリエステルフィルムには、酸化防止剤を含有させることが好ましい。特に、ポリエステルが、ポリオキシアルキレン基を有する化合物を含む場合に有効である。本発明で用いることのできる酸化防止剤としては、その種類に特に限定はなく、各種の酸化防止剤を使用することができ、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などの酸化防止剤を挙げることができる。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。本発明における酸化防止剤の含有量は、通常、ポリエステル樹脂に対して0.1〜3.0質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%である。酸化防止剤の含有量が少ないと、溶融時や延伸製膜時のポリマーの熱劣化によりアルデヒドなどの分解生成物が発生し、これをハロゲン化銀写真感光材料の支持体として使用した場合、未露光部分の濃度が高くなる、いわゆるカブリ現象が生じやすくなり、多すぎるとポリエステルフィルムのヘーズが高くなり透明性に劣る場合がある。また、このポリエステルフィルムにハロゲン化銀乳剤層を設けた後に現像処理を行う際、平面性が劣化する。なお、これらの酸化防止剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組合せて使用しても良い。
【0072】
本発明においては、フェノール系酸化防止剤をポリエステルフィルムの質量に対し0.1〜3質量%含むことが好ましい。特に、フェノール水酸基1個あたりの分子量が110以上、500以下であって、フェノール水酸基の芳香環の2位と6位にアルキル置換基などの立体障害を有する、いわゆるヒンダードフェノール類が好ましい。前述の数値が110以下では、酸化防止剤自身が熱分解や劣化しやすく、500以上では共重合ポリエステルのポリマー鎖の酸化分解を抑える効果が小さくなり、添加量を増やさねばならない。
【0073】
本発明のポリエステルフィルムにおいては、ポリエチレングリコール(以降、PEGと略す)などのポリエーテル鎖を有する樹脂は、この部分が熱分解しやすいため、アルデヒドが生成し、該樹脂を含むフィルムをハロゲン化銀写真感光材料の支持体として使用すると、カブリなどの写真性能の劣化が通常のPETやPENより起こしやすくなるので、特に注意が必要である。また、親水基を含むフィルムでは、生成したアルデヒドが拡散しやすい。これを、従来のPETとは異なるメカニズムであり、この現象を抑制するには、抗酸化剤の選定と添加量の調整が必要である。樹脂合成時の酸素の存在を低く押さえ、PEGの酸化分解を抑制するとともに、減圧条件を厳しく制御し、重合温度、溶融温度を極力低く、例えば、290℃〜240℃に設定して、アセトアルデヒドの発生量を原料チップの段階で、50ppm以下にすることが好ましい。
【0074】
本発明のポリエステルフィルムには、ライトパイピング現象を防止する目的で、着色剤として染料を含有させることが好ましい。
【0075】
このような目的で配合される染料としては、その種類に特に限定があるわけではないが、フィルムの製造上、耐熱性に優れていることが必要であり、アンスラキノン系やペリノン系の染料が挙げられる。また、色調としては、一般の写真感光材料に見られるようにグレー染色が好ましい。これらの染料としては、Bayer社製のMACROLEXシリーズ、住友化学社製のSUMIPLASTシリーズ、三菱化成社製のDiaresinシリーズなどが挙げられ、これらを1種単独で、もしくは2種以上の染料を必要な色調となるように混合して用いることができる。この際、フィルムの分光透過率を400〜700nmの波長範囲で60%以上85%以下とし、更に600〜700nmの波長範囲で分光透過率の最大と最小の差が10%以内とするように染料を用いることが、ライトパイピング現象を防止し、かつ良好な写真プリントを得る上で好ましい。
【0076】
上記着色剤のポリエステルフィルムへの添加方法として、特に限定はなく、ポリエステルの重合から溶融押出までのいずれかの段階で必要量の着色剤を添加し、着色すればよく、又、あらかじめ高濃度のいわゆるマスターペレットを用意し、適宜希釈して溶融押出する方法は、着色剤濃度をコントロールしやすいことから好ましく用いられる。回収ポリエステルを含有させる場合などで、濃度の微調整が必要な場合は、この方法が有効である。マスターペレットにおける染料の濃度は100〜10000ppmが好ましい。
【0077】
また、ポリエステルに対して染料を同じ濃度にした場合、膜厚が厚いの支持体では、膜厚が薄いフィルムに比べトータルの染料が増加し、透過率が下がることになる。この濃度上昇が問題となる場合には、ハロゲン化銀乳剤層を塗設する面側の表層には位置するポリエステル層以外の層の濃度を低めに設定することもできる。
【0078】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、95〜130μmであることが好ましく、より好ましくは105μm〜130μmである。これよりフィルムが厚かったり、薄かったりすると既存のカメラや露光機でのピントずれが生じて問題となる。また、130μmより厚すぎた場合は、従来の135パトローネへハロゲン化銀写真感光材料を装填する際に、例えば、36枚撮りの巻径が膨らみすぎて巻き込めなかったり、逆に、105μmより薄すぎた場合にはパトローネの入り口にフィルム先端部を出した状態ですき間が生じるので、漏光によるカブリ発生の要因となるため好ましくない。
【0079】
本発明のポリエステルフィルムでは、ヘーズが2.0%以下であることが好ましく、更に好ましくは1%以下である。ヘーズが2.0%より大きいと、例えば、本発明のポリエステルフィルムをカラーネガティブフィルムの支持体として用いた場合、これを用いてカラーペーパーに焼付けた際、プリント画像がぼけてしまい不鮮明になる。なお、本発明でいうヘーズは、ASTM−D1003−52に従って測定したものである。
【0080】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、固有粘度としては表層、コア層の区別なく、いずれもが0.95以下であって、かつ下式(1)の条件を満たすことが好ましい。
【0081】
式(1)
(0.0055X+0.4)±0.05≦固有粘度(IV)≦(0.0055X+0.6)±0.05
式中、Xは全グリコール成分に対するシクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分の含有率(質量%)を表す。
【0082】
ポリエステル成分の固有粘度が、上限値より大きい場合には、製膜後のフィルムベースが強靱になりすぎて、断裁性が劣化する。また、固有粘度が下限値より小さいと、結晶化速度が速くなり、フィルムベースが脆くなったり、キャストドラム上で結晶化して白く濁ったり、あるいは冷却後の原反を延伸機に導入するまでの間に、ひび割れを起こしたり、あるいは破断しやすくなるため、製膜時の延伸が困難となる。固有粘度(IV)の測定は、ポリエステルフィルムあるいは各ポリエステル樹脂について、ウベローデ型粘度計を用いて求めることができる。具体的には、溶媒としてフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの混合溶媒(混合質量比、約55:45、流下時間を42.0±0.1秒に調整する。)のものを用い、サンプル濃度0.2g/dl、0.6g/dl、1.0g/dlの溶液(温度20℃)を調製する。ウベローデ型粘度計を用いて、それぞれの濃度(C)における比粘度(ηsp)を求め、ηsp/cをcに対してプロットし、得られた直線を濃度零に補外して固有粘度を求め、単位はdl/gで示される。
【0083】
本発明のポリエステルフィルムベースには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。特に、1000m以上の長尺を1本のロール(元巻)に積層して巻き取る場合には、表面に適度な凹凸を形成して、仕上がり元巻の巻締まりによるシワや変形を防ぐ手段が必要となる。本発明のポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートフィルムとは機械強度が異なるため、巻き取りの際に易滑性付与手段を形成してあると平面性が向上し、歩留まりが95%以上となり、好ましい。易滑性付与手段としては、特に限定はないが、ポリエステルに不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリエステルの合成時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、あるいは界面活性剤などをフィルム表面に塗布する方法などが一般的である。
【0084】
これらの中でも、析出する粒子を比較的小さくコントロールできる内部粒子析出方法が、フィルムの透明性を損なうことなく易滑性を付与できるので好ましい。触媒としては、公知の各種触媒が使用できるが、特に、Ca、Mnを使用すると高い透明性が得られるので好ましい。これらの触媒は1種でも良いし、2種を併用しても良い。
【0085】
本発明のポリエステルフィルムは、多層構成を有することが特徴であり、上記の酸化防止、ライトパイピング防止、易滑性などの機能付与、または上記以外の各種添加剤の添加は、全層に添加することもできるが、少なくとも表面層(スキン層)に添加されていることが好ましい。また、他の層(例えば、コア層)の添加量を減らす、あるいは添加しないことで、ポリエステルフィルムの透明性を高くすることもできる。特に、易滑性付与のマット剤は、本発明では表層に偏在させることによりフィルムの破断しやすさを制御できる点で、好ましい。
【0086】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、マット剤として不活性無機粒子を用いることができ、例えば、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルク、カオリン等が例示される。
【0087】
これらの易滑性付与手段としては、特に限定を加えるものではないが、ハロゲン化銀写真感光材料用の支持体としては、透明性が重要な要件となるため、ポリエステルフィルムと比較的近い屈折率をもつSiOを用いた外部粒子系による易滑性付与は良く知られているが、本発明では、特に、断裁性の観点から、シクロヘキシレンジメチレングリコールが共重合されたポリエステルを含む層に、平均粒径が0.05〜1.5μmのシリカ粒子が、0.001〜0.5質量%存在し、この層が最外層にあることによって、例えば、膜厚が120μmのポリエステルフィルムの断裁、穿孔時の初期の切り込みの入りやすさが、飛躍的に改善されることが明らかになった。特に、スルホイソフタル酸とポリエチレングリコールを共重合成分として含有するポリエチレンテレフタレートとシクロヘキシレンジメチレングリコールを50%以上の共重合比で含有するポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを混合した場合に、切り込みの入りやすさの改善が顕著である。
【0088】
尚、本発明でいう平均粒径とは、粉体そのまま、あるいは液中、固体中に分散された粉粒体を一粒子ずつ直径を測定し、全粒子について平均した値のことである。実際の計測にあたっては、一粒子の形状が真球でない場合には粒子に外接する仮想球の直径と内接する仮想球の直径の平均値とする。電子顕微鏡下で一定の倍率で多数の写真撮影撮影を行い500個以上の異なる場所にある粒子の直径の平均値を求め、これを平均粒径とする。上記のデータを統計処理してヒストグラムを作ると、通常は単一の山の分布が得られるが、同一種の粒子を数えて、複数の山を持つヒストグラムが得られた場合には、複数の平均粒径の異なる粒子が混合していると見なし、おのおのの山の最頻値の粒径をそれぞれの平均粒径とする。
【0089】
更に、共重合されたポリエステルのみの層、あるいはポリエチレンテレフタレートフィルムにおいても、平均粒径0.1〜2.5μmの有機粒子を0.001〜5質量%の範囲で含ませることで、断裁性が改善されることも判明した。
【0090】
有機粒子を用いる場合には、ポリエステルの溶融押し出し温度である280℃で溶融したり分解しないものが望ましい。窒素気流中で常温から300℃まで、10℃/minで昇温したときの300℃での質量減少率が、10%以下のものが好ましく用いられる。有機粒子は、製膜後のポリエステルフィルム中で、有機粒子表面とポリエステル樹脂との結着が良好なものが、フィルムの透明性の点から好ましい。3次元架橋させたポリメタクリル酸メチル(PMMA)、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子、メラミンホルムアルデヒド粒子などが好ましく、粒径分布は平均粒径の15%上下限の幅に質量分率で90%の粒子が含まれる単分散粒子であれば、なお好ましい。上記の他に、内部粒子系による易滑性付与ではCa、Mn、Mgなどの金属とPの添加量を調整することにより易滑性をコントロールすることが可能であり併用すると好ましい。本発明のポリエステルフィルムにおいては、表層に平均粒径が0.05〜1.5μmの不活性微粒子を0.001〜0.5質量%含有させることが好ましい。
【0091】
本発明でいう不活性微粒子とは、上記、易滑性粒子をはじめ、樹脂中に添加して、製膜した後、フィルムの引き裂き強度を適度に低減させつつ、透明性を維持できる粒子のことであって、断裁性、穿孔性を向上させることのできるものをいう。この場合、不活性微粒子がポリエステル中に均一で一次粒子に分散できることが必要であることはいうまでもない。
【0092】
本発明でいう切断性とは、特に、ハロゲン化銀カラー写真感光材料用の各種処理機器を中心とした様々なシステム機器で、ハサミやカッターにより切断工程を有しており、この切断工程での切り易さ、切り口のなめらかさ、打ち抜き機や引きちぎったりする際の切断トラブルを生じないこと、あるいは、カメラなどの機器内を搬送時に、頑丈すぎて逆に駆動部材やガイドロールを破損したりしないこと、など支持体に起因する切断の際の必要な性質全体のことをさす。すなわち、市場での写真システムの一部として使用されるさまざまな機器でのフィルムの駆動、搬送、型抜き、切り離し、修正加工において、支持体が望ましく切断されるべき箇所で正確に切断され、切断や破断が起こるべきでない場所や工程では必要な支持体の強度を保って切れることがない、といった観点での特性が良好なことをいう。切断性について本発明では、現実的な評価の視点を考慮して4つの因子から検討を加え、既存の三酢酸セルロース(TAC)ベースに近似、あるいはさらに改良した切断性を達成した。すなわち、本発明では、切断性を、断裁性、切り込み性、穿孔性、脆弱性の4つの因子に分けて、それぞれの特性に対し改良を付加したものである。本発明でいう断裁性とは、切断される点が時間とともにフィルム上を移動しつつ上刃と下刃の接点が切り進んでいくときの状態または性質をいい、いわゆるハサミで裁断するような態様での切断性である。また、切り込みや亀裂が入った後の切断が進行する抵抗エネルギーと関連があると見られており、切断された断面の形状の安定性とも関連する因子である。また、切り込み性とは、人が指先で引きちぎったり、ナイフやハサミなどで微少な切り込みを形成する際の容易性をいう。ハロゲン化銀写真感光材料の支持体では、通常の取り扱いでは破れたり傷が入ったりすることは望ましくないが、意図的に手動で切除できる程度の切り込み可能であることが求められる場合がよくある。一般に、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体に使用される樹脂フィルムは切り込みがあれば、そこを起点として引き裂くことが可能であるので、切り込み性は製造工程での搬送時の破断トラブルの発生も含め、製品として市場に販売された後、現像処理で回収されるまで、切断性に起因するトラブルの支配因子として重要である。穿孔性とは、例えば、フィルムそのものあるいは感光性層等の機能層を塗布したハロゲン化銀写真感光材料を、金型で打ち抜くような場合の切れ味をいう。すなわち、一定の長さの破断がほぼ同時に発生するような状態、または張力を懸けたフィルムの片面から刃で切り落とすような状態での切断の性質をいう。穿孔性がよいとは、打ち抜き機などでバリが発生せず、打ち抜いた周辺部での波打ちなどの変形がなく、厚み方向の破断面がなめらかであることをいう。脆弱性とは特に低温、低湿時での支持体の割れやすさと関係づけられ、応力が集中した部分に最初の切り口(破断のきっかけ)が生じ比較的短時間にひびが広がって割れてしまう性質のことである。ハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層は、特に、低温低湿下では破断やひび割れが容易に発生するので、支持体が同様に脆弱であるとフィルムの破断につながり、極限状況でのカメラ撮影などの際にカメラ内でフィルムが破断したりするので問題となる。これらの指標を単一の機械物性の計測で完全に表すことは困難であり、実際の切断性に起因するトラブルは上記の複合で生じる場合も多い。しかし、実際のハロゲン化銀写真感光材料の製造工程での断裁機、穿孔機、また現像処理機に内蔵されるカッターユニットや、未現像フィルムを編集するスプライサーなどに搭載されるカッター、現像処理後のハロゲン化銀写真感光材料にノッチを打つノッチャー(コマを検出するために半円の打抜きを行う機械)などを種々検討した結果、後述するいくつかの評価法が、実機でのハロゲン化銀写真感光材料の切断性の良否と対応することが判明した。
【0093】
2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートは、通常は、破断強度が140MPa以上、破断伸びが130%以上となり、機械強度の特性から、写真用支持体に使用される三酢酸セルロース(TAC)の代用とするのは非常に困難であることが判明した。そこで、ポリエステルそのものに変性成分を加えて、コア層と表層で用いる樹脂を使い分け、さらには製膜条件、特に、熱固定温度を調整して、本発明で規定する範囲に引張破断エネルギーを低下させ、更に必要な場合には不活性粒子を表層に含有させることにより、従来のポリエチレンテレフタレートベースより破断しやすく、様々なカット機構を持つ処理機器で、TACと同等の切断性を有するポリエステルフィルムベースを得ることができる。
【0094】
特に注目される点は、TACと同じ厚みで、即ち、全体厚みが105〜130μmで、上記の様々なカット機構を持つ処理機器でTACと同等の切断性を有すること、TACと同等の剛性を達成できる点である。製膜時の熱的な効果は、先にも述べたが、更には親水性ポリエステルとシクロヘキシレンジメチレングリコールを多量に含むポリエステルとが互いに相溶性の良くないため、両方の樹脂相間で界面が生じ、破断伝播を助長していることがと考えられる。これにより、切り込みの入りやすさが改善され、破断強度、破断伸びの値が低下したと考えられる。また、シクロヘキシレンジメチレングリコールを多量(分子中に50%以上)に含むテレフタレートのポリマーは、シクロヘキサン環の立体効果で密度がポリエチレンテレフタレートのホモポリマーの密度より低く、分子間に働く凝集力が低いと推定されるので、ポリエチレンテレフタレートより破断強度が低下すると思われる。
【0095】
本発明では、組成の異なる複数ポリエステルの混合して形成した層を、この層と同一組成の共重合ポリエステルの単独層に置き換えるとヘーズは若干改善するが、ベースフィルム全体の機械強度が向上して、切断性は本来のTACベース近似から遠ざかることになる。
【0096】
層中における樹脂の不均一さが切断性を向上させていると推定されるが、不均一にしすぎると樹脂の屈折率の差により光の散乱が顕著になってヘーズが劣化する。また、層内に不均一な樹脂が分布すると製膜時の平面性が損なわれる。
【0097】
本発明のポリエステルフィルムでは、回収ポリエステルを用いることができる。回収ポリエステルとは、写真用ポリエステル支持体の製膜工程において、エッジ屑や不良巻などとして発生するフィルム屑を回収して粉砕した物、あるいは、ポリエステル支持体を用いて作られたハロゲン化銀写真感光材料の屑(先端加工やパーフォ屑、不良巻きなど)やユーザーで不要となったフィルムを回収して支持体以外の層を剥離し、粉砕した物である。回収ポリエステルは、ハロゲン化銀乳剤が塗設される面の支持体の表層(スキン層)以外の層に混合することが好ましく、3層以上の場合は中間層の少なくとも1層に混合することが好ましい。混合する割合は、40質量%以下であることが好ましい。40質量%以上では強度、透明性等が問題となる。また、特公平7−332号、特公平7−333号に記載される方法を用いることもできる。なお、回収ポリエステルとして、PETボトルなどの回収屑も考えられるが、不純物、写真性能への影響等の問題からあまり好ましくない。ただし、こうした屑も性能に影響しない範囲で混合させることは可能であり、資源リサイクルの観点からは好ましい。
【0098】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルを積層する方法としては、従来公知の方法で行うことができる。例えば、複数の押出機及びフィードブロック式ダイあるいはマルチマニフォールド式ダイによる共押出し法、積層体を構成する単層フィルムまたは積層フィルム上に、積層体を構成するその他の樹脂を押出機から溶融押出し、冷却ドラム上で冷却固化させる押出しラミネート法、積層体を構成する単層フィルムまたは積層フィルムを必要に応じてアンカー剤や接着剤を介して積層するドライラミネート法などが挙げられる。中でも製造工程が少なくてすみ、各層間の接着性が良好な共押出し法が好ましい。
【0099】
未延伸シートを得る方法及び縦方向に一軸延伸する方法は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、原料のポリエステルをペレット状に成型し、熱風乾燥あるいは熱をかけながら真空乾燥する。乾燥温度は熱で酸化分解しない範囲で高い方が好ましく、通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃である。真空乾燥は酸素、水分を減らし酸化を防止できることから好ましく用いられる。乾燥は含水率が100ppm、好ましくは30ppm以下とするのがよい。その後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法などにより冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。
【0100】
次いで得られた未延伸シートを、複数のロール群及び/または赤外線ヒーターなどの加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段または多段縦延伸する方法である。延伸倍率は、通常、2.5〜6倍の範囲で、続く横延伸が可能な範囲とする必要がある。延伸温度の設定は各構成層のポリエステルのTgのなかで最も高いTgを基準にすることが好ましい。
【0101】
本発明では、上記の様にして得られた縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm(融解点)−20℃の温度範囲内で、2つ以上に分割された延伸領域で昇温しながら横延伸し、次いで熱固定することが好ましい。横延伸倍率は通常3〜6倍であり、また縦、横延伸倍率の比は、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整する。延伸温度の分割領域は少なくとも2段階、更に3段階であることが好ましい。それ以上でもかまわないが、設備が大きくなるなどの問題が生じる。各領域の温度は順次高くなるように設定し、かつ温度差は1〜50℃の範囲とすることが好ましい。なお、同時二軸延伸等の無接触延伸も、傷等の故障が発生しにくいことから好ましく用いることができる。
【0102】
次いで、熱固定を行うのであるが、この前に二軸延伸フィルムを、その最終横延伸温度以下で、Tg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持することが好ましい。縦、横方向に二軸延伸したフィルムを、熱固定するに際しては、その最終横延伸温度より高温で、Tm−20℃以下の温度範囲内で、2つ以上に分割された領域で昇温しながら熱固定することが好ましい。熱固定時間は通常0.5〜300秒間である。熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また、冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度の算出は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで算出した値である。これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
【0103】
また、本発明のポリエステルフィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で、帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層などの機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。例えば、特許第2649457号、特開平5−169592号に記載の方法が使用できる。更に、強度を向上させる目的で、多段縦延伸、再縦延伸、再縦横延伸、横・縦延伸など公知の延伸フィルムに用いられる延伸を行うこともできる。以上の様にして得られたポリエステルフィルムは、厚みムラが小さく、平面性に優れ、品質むらが非常に少ないので本発明の効果を最大限に発揮させることができる。
【0104】
本発明においては、得られた本発明のポリエステルフィルムにアニール処理を施すことも好ましい態様である。アニール処理とは、ポリエステルフィルムの巻癖を低減するため、ポリエステルフィルムに施す熱処理である。この熱処理の効果は、ガラス転移点を越える温度に晒されると消失する。
【0105】
熱処理は、50℃以上、ガラス転移点温度以下の温度で0.1時間以上、1500時間以下の条件で行うことが好ましく、更に好ましくは、0.2〜72時間行うことである。このアニール処理の中で、特に好ましい熱処理方法は、例えば、ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートの場合には、Tgが約85℃であり、従って84℃以下の温度で、更に好ましくは77℃以下で24時間程度熱処理することである。特に、短時間で熱処理をするために、Tg以上に一度昇温し、Tg近傍の温度で徐々に冷却することが非常に効率的で好ましい。ポリエチレンテレフタレートの場合、一例として、一度85℃以上、120℃以下の温度に保った後、90℃まで冷却し、その後70℃まで40分間で徐冷することで熱処理時間を著しく短縮できる。このような熱処理を行ったフィルムを示差熱分析計で測定すると、Tg近傍に吸熱ピークが出現し、この吸熱ピークが大きいほど巻癖は付きにくくなる。また、419mJ/g以上、更には838mJ/g以上となるように熱処理することが好ましい。
【0106】
次に、本発明のポリエステルフィルムの物性について説明する。
カメラや現像処理機での搬送不良や搬送不良による擦り傷発生を防止する目的で、本発明のポリエステルフィルムは次のような物性であることが好ましい。
【0107】
通常、室温保存時の巻癖カールは60m−1以上、120m−1以下であり、好ましくは70m−1以上、115m−1以下である。これより巻癖カールが小さいと、カメラ装填時のローディングでトラブルを起こすことがあり、これ以上のカール度を有する場合は、カメラや現像処理機で搬送不良や擦り傷を発生する要因となることがある。また、感光性層が塗設されたハロゲン化銀写真感光材料の場合は、感光性層のバインダーである親水性コロイド性は、ポリエステルよりも巻癖カールが付きやすいため、上記の値よりも10〜20m−1程度大きな数値になるが、この値は、支持体のスティフネスと感光性層の種類(感度等の違い)により変化してくるものである。
【0108】
熱処理後の巻癖カール度は135m−1以下であり、好ましくは130m−1以下である。これ以上のカール度を有する場合は、カメラや現像処理機で搬送不良や搬送不良により擦り傷を発生するトラブルを生じることがある。
【0109】
現像処理後のカール度は55m−1以下が好ましい。更に好ましくは45m−1以下である。これ以下であれば現像処理後の印画紙への焼き付け操作や現像済み写真フィルムを裁断したり、スリーブへ挿入するなどの際に機器のトラブルが低減される。
【0110】
従って、本発明のポリエステルフィルムでは、現像処理後のカール回復率が、60%以上であることが好ましい。これ以下であると小型化され、複雑な搬送系路を有する高速処理のミニラボ処理機(自動現像機)で、現像中のハロゲン化銀写真感光材料が折れたり、キズが入ったり、現像ムラなどが発生して問題となる。この様なカール性能を実現するためには、フィルムのスティフネスと吸水率を本発明の範囲内でポリエステルを変性することで実現できる。また、積層構造の場合は、表裏の吸水層を非対称積層することによって、吸水層の吸脱湿時の膨張収縮を利用したアンチカールの付与も可能であるため、乾燥時のカール、温水中のカール、処理後カールの設計範囲が広がり更に好ましい。
【0111】
幅手カール度は3〜20m−1であることが好ましい。これ以上あるいは以下の場合、親水性コロイド層を塗布した後の幅手カールが大きくなり、カメラなどの搬送中に擦り傷を発生するトラブルを生じることがある。
【0112】
ヤング率は2.0〜3.4Gpaであることが好ましい。また、ループスティフネスは0.1〜0.3Nであることが好ましい。この範囲以外では、カメラへのフィルムの駆動ローディングや自動巻き上げの際のトラブル、現像処理、印画紙焼き付け処理操作等で搬送トラブルを生じることがある。
【0113】
水中に浸漬した直後のヤング率は1.8Gpa以上であることが好ましい。これ以下では、現像処理中にフィルムが折れるトラブルを生じることがある。
【0114】
長手及び幅手方向の熱収縮は、いずれも−1.0〜+2.0%であることが好ましい。この範囲を越えると、接着層や導電層を塗設する際に塗布故障を生じたり、平面性が劣化したりする。
【0115】
なお、上記に記載した各物性値は、本発明のポリエステルフィルムに塗設される親水性コロイド層としては25μm以下の場合であり、これを越える場合、上記物性値の好ましい範囲は自ずと変化する。
【0116】
また、本発明のポリエステルフィルムに含まれるオリゴマー、ジエチレングリコール(DEG)等の不純物は、カブリ等の写真性能に影響することがあるので少ない方が好ましい。例えば、オリゴマー量は3%以下、好ましくは1%以下である。DEGは5mol%以下、好ましくは3mol%以下である。
【0117】
次いで、本発明のポリエステルフィルムを用いたハロゲン化銀写真感光材料の詳細について説明する。
【0118】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、上記説明した本発明のポリエステルフィルムを辞したいとして用い、少なくとも一方の面側に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有することにより、ハロゲン化銀写真感光材料を構成する。ハロゲン化銀乳剤層は、支持体上に直接塗設されてもよいし、他の層、例えば、ハロゲン化銀乳剤を含まない親水性コロイド層を介して塗設されてもよい。
【0119】
この際、支持体である本発明のポリエステルフィルムには、接着性向上を目的として、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線処理、火炎処理、大気圧ガス中放電プラズマ処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。更に、接着性向上の為、下引層を塗設してもよい。
【0120】
また、ハロゲン化銀乳剤層や下引き層以外に、導電層、バックコート層、滑り層、透明磁性層、保護層なども設けることができる。特に、導電層や滑り層はスタチック防止、擦り傷発生防止から好ましく用いられる。導電剤としては、例えば、特公昭60−51693号、特開昭61−223736号及び同62−9346号公報に記載の第4級アンモニウム基を側鎖に持つ架橋型共重合体粒子、特開平7−28194号公報に記載のアイオネン重合体架橋型あるいはアイオネン重合体を側鎖に持つ共重合体粒子等のカチオン帯電防止剤、特公昭35−6616号公報記載のアルミナゾルを主成分とするもの、特開昭57−104931号公報に記載のZnO、SnO、TiO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、ZiO等の微粒子金属酸化物、特公昭55−5982号公報に記載のV等の金属酸化物などが利用できる。滑り剤としては、例えば特開2000−19682号公報に記載の滑り剤が使用できる。
【0121】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料では、ハロゲン化銀乳剤層を構成するハロゲン化銀としては、任意の組成のものを使用できる。例えば、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、純臭化銀もしくは沃臭化銀がある。
【0122】
ハロゲン化銀乳剤は、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す。)No.17643、22〜23頁(1979年12月)の「1.乳剤製造法(Emulsion preparation and types)」、及びRDNo.18716、648頁、グラキデ著「写真の物理と化学」ポールモンテル社刊(P.Glkides,Chimie et Physique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Dauffin,Photographic Emulsion Chemistry Focal Press 1966)、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman etal,Making and coating Photographic Emulsion, FocalPress 1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。乳剤は、米国特許3,574,628号、同3,665,394号及び英国特許1,413,748号などに記載された単分散乳剤も好ましい。
【0123】
ハロゲン化銀乳剤には物理熟成、化学熟成及び分光増感を行うことができる。このような工程で使用される添加剤は、RDNo.17643、RDNo.18716及びRDNo.308119(それぞれ、以下、RD17643、RD18716及びRD308119と略す。)に記載されている。下記にその記載箇所を示す。なお、下記に記載の各数値は、記載されている頁を表す。
Figure 2004284035
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に使用できる公知の写真用添加剤も、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
Figure 2004284035
本発明に係る感光性層には、種々のカプラーを使用することが出来、その具体例は、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
【0124】
Figure 2004284035
上記各添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することが出来る。
【0125】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料には、前述RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることも出来る。
【0126】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料は、前述RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることが出来る。
【0127】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料を現像処理するには、例えば、T.H.ジェームズ著、セオリイ オブ ザ ホトグラフィック プロセス第4版(The Theory of The Photographic Process Forth Edition)第291〜334頁及びジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)第73巻、No.3、100頁(1951)に記載されている公知の現像剤を使用することができる。また、前述のRD17643の28〜29頁、RD18716の615頁及びRD308119XIXに記載された通常の方法によって、現像処理することができる。
【0128】
本発明のロール状ハロゲン化銀写真感光材料としては、例えば、一般用モノクロ感光材料、一般用カラーネガフィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーペーパー等、汎用のハロゲン化銀写真感光材料を挙げることができるが、特に好ましくは、一般用カラーネガフィルムまたはカラーリバーサルフィルムである。
【0129】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0130】
《共重合ポリエステルの調製》
(共重合ポリエステルAの調製)
撹拌機、添加剤導入口、窒素ガス導入口、真空流出系を備えた反応器に、テレフタル酸ジメチル(TP)の100質量部、エチレングリコール(EG)の64質量部に、酢酸カルシウムの水和物と酢酸マンガンの水和物とをそれぞれテレフタル酸ジメチルの1モルに対し2×10−4モルの割合となる量を添加し、窒素雰囲気下で190℃に加熱してエステル交換反応を行った。昇温中の温度が160℃付近でメタノールの流出を確認し、190℃、2時間半で反応を完結させた。得られた生成物に、5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸(SIP)のエチレングリコール溶液(濃度35質量%)の32質量部(5.8モル%/全酸性分)、ポリエチレングリコール(数平均分子量1000)の8.4質量部(6.7質量%/全ポリマー)、三酸化アンチモンの0.05質量部、リン酸トリメチルエステルの0.13質量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(CIBA−GEIGY社製)の0.4質量部、及び酢酸ナトリウムの0.04質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、過剰のエチレングリコールを反応混合物から留出させ、280℃、67Paで攪拌トルクをモニターしながら重合を行い、常法に従いペレット化して共重合ポリエステルaを得た。この共重合ポリエステルaを用いて、バイエル社製の染料を下記の配合割合で混練し、染料濃度200ppmのペレットを作製し、ポリエステルAとした。
【0131】
Macrolex Red EG:Macrolex Violet B:Macrolex Green G=1:1:1
この共重合ポリエステルAの固有粘度(IV)は0.54であった。
【0132】
(共重合ポリエステルBの調製)
市販のポリエチレンテレフタレートb(固有粘度0.65)を用いて、共重合ポリエステルAと同様の上記染料を配合、混練して、染料濃度を2000ppmにしてマスターペレットを調製し、ポリエチレンテレフタレートbとマスターペレットとを9:1の割合でブレンドしてブレンドポリエステルbを調製した。このブレンドポリエステルbと上記ポリエステルAとを、質量比で7:3の割合でタンブラー型混合機でブレンドして、共重合ポリエステルBを調製した。
【0133】
(共重合ポリエステルC)
DS2000(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート100%、イソフタル酸成分17%を共重合したポリエチレンテレフタレート)を、共重合ポリエステルCとした。
【0134】
(共重合ポリエステルD)
上記ポリエステルAとDN004(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを70%共重合したポリエチレンテレフタレート)の95:5の混合物を、共重合ポリエステルDとした。
【0135】
(共重合ポリエステルE)
上記ポリエステルAと、ポリエチレンテレフタレートとDN004(前出)の20:60:20の混合物を、共重合ポリエステルEとした。
【0136】
《ポリエステルフィルムの作製》
〔ポリエステルフィルム1の作製:本発明〕
上記調製した共重合ポリエステルAと共重合ポリエステルBとを、各々140℃で4時間真空乾燥した後、3台の押出機を用いて280℃で溶融押出し、それぞれ40メッシュのフィルターを通過させてから、Tダイ内で層状に接合し、45℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させて冷却固化し、3層構成の積層未延伸シートを得た。このとき共重合ポリエステルAが、両面の表層(外層)を構成し、共重合ポリエステルBがコア層(内層)であり、各層の厚さの比が20:70:30(コア層が70)となるように各押出機の押出し量を調整した。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて90℃で縦方向に3.5倍延伸した。得られた1軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、第1延伸ゾーン100℃で総横延伸倍率の50%延伸し、更に、第2延伸ゾーン120℃で総横延伸倍率3.6倍となるように延伸した。次いで、100℃で2秒間熱処理し、さらに第1熱固定ゾーン170℃で5秒間熱固定し、第2熱固定ゾーンの温度(熱固定温度THS)を210℃で15秒間熱固定した。次いで、横方向に5%弛緩処理しながら室温まで30秒かけて徐冷して、厚さ120μm(各層の膜厚20μm/70μm/30μm)の積層2軸延伸ポリエステルフィルムであるポリエステルフィルム1を得た。両端部をトリミングして、両端に高さ25μm、幅9mmのナーリング加工を施して、400mを直径220mmのコアに巻き取った。
【0137】
〔ポリエステルフィルム2の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム1の作製において、第2熱固定ゾーンの温度(THS)を220℃に変更した以外は同様にして、ポリエステルフィルム2を作製した。
【0138】
〔ポリエステルフィルム3の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム2の作製において、表層で用いたポリエステルAに代えてポリエステルCを用い、各ポリエステルの乾燥条件を130℃で4時間に変更した以外は同様にして、ポリエステルフィルムを作製し、20μmの表層が内側になるように、直径220mmのコアに巻き取った状態で、70℃、100時間のアニール処理を施して、ポリエステルフィルム3を作製した。
【0139】
〔ポリエステルフィルム4の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム2の作製において、表層で用いたポリエステルAに代えてポリエステルEを用い、またコア層で用いたポリエステルBに代えてポリエステルDを用いた以外は同様にして、ポリエステルフィルム4を作製した。
【0140】
〔ポリエステルフィルム5の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム1の作製において、表層で用いたポリエステルAに代えてポリエステルDを用い、またコア層で用いたポリエステルBに代えてポリエステルEを用いた以外は同様にして、ポリエステルフィルム5を作製した。
【0141】
〔ポリエステルフィルム6の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム5の作製において、第2熱固定ゾーンの温度を230℃に変更した以外は同様にして、ポリエステルフィルム6を作製した。
【0142】
〔ポリエステルフィルム7の作製:比較例〕
前記共重合ポリエステルBの調製で用いたブレンドポリエステルbを、ポリエステルフィルム1の方法と同様にして製膜し、膜厚が120μmの単層構成のポリエステルフィルムを作製した後、直径220mmのコアに巻き取った状態で、70℃、100時間のアニール処理を施して、ポリエステルフィルム7を作製した。
【0143】
〔ポリエステルフィルム8の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム4の作製において、第2熱固定ゾーンの温度を210℃に変更した以外は同様にして、ポリエステルフィルム8を作製した。
【0144】
〔ポリエステルフィルム9の作製:本発明〕
上記ポリエステルフィルム6の作製において、各ポリエステルの乾燥条件を110℃、4時間に変更し、更に第2熱固定ゾーンの温度を240℃に変更した以外は同様にして、ポリエステルフィルム9を作製した。
【0145】
〔ポリエステルフィルムの各特性評価〕
(各ポリエステルの単膜の作製)
上記各ポリエステルフィルムの作製に用いた各ポリエステル樹脂を、それぞれ積層製膜した時と同一の製膜条件で、120μm厚の単膜を作製した。
【0146】
(各単膜の引張破断エネルギー、破断強度及び破断伸度の測定)
上記作製した各ポリエステルフィルム単膜を、温度23℃、相対湿度55%に調整された部屋に4時間以上放置した後、試料幅10mm、長さ150mmに切断し、チャック間隔を100mmとし、引張速度100mm/minで引張試験を行った。ポリエステルフィルムの製膜方向のタテ(長手方向)、ヨコ(幅手方向)について計測し得られた応力−伸び曲線から、長手方向及び幅手方向の破断強度、破断伸度を求め、また引張破断エネルギーは応力−伸び曲線と伸び軸(横軸)とで囲む面積を算出して求めた。ただし、応力の単位はMPaで、伸びの単位は、%で表示した。
【0147】
(各単膜の融解温度Tmの測定)
各単膜を細かく切り刻み、10mgをアルミ製サンプルパンに封入し、24hr以上、真空乾燥した。その後、示差走査熱量測定(DSC)((株)リガク製DSC8230型)で10℃/分で室温から300℃まで窒素ガス雰囲気中で昇温し(1st.run)、5分間保持してサンプルを溶融する。溶融したサンプルをサンプルパンごと液体窒素に浸し急冷した後、再びサンプルパンごと24hr以上真空乾燥する。2回目の真空乾燥を終えたサンプルを先と同様にDSCで10℃/分で0℃から300℃まで昇温しガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)を測定した。なお、TgはDSC曲線がベースラインから偏奇し始める温度、Tc、Tmは吸発熱ピークのピーク温度を取ることにより求めた。
【0148】
(常温常湿時の巻癖カールの測定)
積層したポリエステルフィルムを、35mm(製膜時の横方法)×120mm(製膜方向)の帯状に切断し、温度23℃、相対湿度55%の環境下で1日放置した後、直径が10.8mmのコアに巻き付けた。この時、ハロゲン化銀感光性層を塗布する予定面が内側になるようにして巻いた。その後、この条件で2週間放置した後、コアから解放し、1分経過後にポリエステルフィルムの巻癖カール度を測定した。カール度は1/rで表し、rはカールした支持体の曲率半径を表し、単位はmである。
【0149】
(カール回復率の測定)
積層したポリエステルフィルムを、35mm(製膜時の横方法)×120mm(製膜方向)の帯状に切断し、温度23℃、相対湿度55%の環境下で1日放置した後、直径が10.8mmのコアに巻き付けた。この時、ハロゲン化銀感光性層を塗布する予定面が内側になるようにして巻いた。その後、温度55℃、相対湿度20%の条件下で4時間熱処理を行った。熱処理後、温度23℃、相対湿度55%の条件下で30分かけて放冷した後にコアから解放し、1分経過後にポリエステルフィルムのカール度Aを上記の方法と同様にして測定し、これを熱処理後の巻癖カールとした。
【0150】
次いで、上記熱処理を行った各ポリエステルフィルムを、ミニラボ処理機(KP50QA コニカ製)で現像処理を行い、出口から排出したポリエステルフィルムを、温度23℃、相対湿度55%の条件下で1時間放置した後に、ポリエステルフィルムの中央部のカール度Bを測定して、これを現像処理後の巻癖カールとした。
【0151】
上記測定した熱処理後巻癖カール値(カール度A)と現像処理後の巻癖カール値(カール度B)から、下記に則りカール回復率(%)を求めた。
【0152】
回復率(%)=(カール度A−カール度B)/カール度A×100
(ミニラボ機でのカット性の評価)
市販の35サイズカラーネガフィルム(24枚撮り)を、連続1500本カットして、フィルム切断ナイフを摩耗させたミニラボKP50QA(コニカ製)を用いて、35mm幅×1.2mの各ポリエステルフィルムと基準の120μm厚のトリアセチルセルロースフィルム(TAC)とをカットし、その破断面を目視観察し、下記の基準に則りミニラボ機におけるカット性の評価を行った。なお、摩耗したフィルム切断ナイフで問題が発生(△または×)したサンプルについては、刃を摩耗させていない同型のミニラボで同様の試験を行った。
【0153】
◎:基準であるTACフィルムと同等のカット性を有している
○:TACより切断面が僅かに粗さが認められるが、全く問題なく切断できる
△:摩耗した刃であると切断部にややバリが観察されるが、通常の切断性を有する刃であれば全く問題がない
×:摩耗した刃及び通常の刃でも、切断部周辺にバリやヒゲ、亀裂の発生があり、切断できないフィルムが発生する
(ノッチャーカット性)
35mm幅で長さ1.2mに断裁した各ポリエステルフィルムと基準の120μm厚のトリアセチルセルロースフィルム(TAC)とを、ノッチャー(KPN−1200DX;コニカ製)を用いて各駒毎にノッチを入れ、そのノッチ部を顕微鏡にて観察し、下記の基準に則りノッチャーカット性の評価を行った。
【0154】
◎:基準のTACと同等の特性を有している
○:TACより僅かに劣るが、一つのフィルム全長にわたって均一にノッチが打ち抜かれている
△:一部のノッチ部でわずかにバリが観察され、ノッチャーの刃の摩耗状態によってはバリ等の発生が懸念されるレベルにあるが、実用上許容される範囲である
×:ノッチ部周辺にバリやヒゲ、亀裂が多発し、またノッチの打ち抜きができない箇所が発生している
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0155】
【表1】
Figure 2004284035
【0156】
《ハロゲン化銀写真感光材料の作製》
上記作製したポリエステルフィルム1〜9の膜厚20μmの表層面側(ただし、ポリエステルフィルム7は単層のため面の規定は行わない)に、特開2001−33913号の実施例11に記載の下引き層、バック層及びハロゲン化銀乳剤層を塗布した。この後、135サイズ(35mm巾)に断裁し、135サイズの36枚撮りフィルムのISO規格通りにパーフォレーション加工を施した後、規定のパトローネに装填して、135サイズ用のハロゲン化銀カラー写真感光材料である試料1〜9を作製した。
【0157】
上記作製した各試料を、ポリエステルフィルムの評価と同様の方法で、常温常湿時の巻癖カール、カール回復性、ミニラボ機でのカット性及びノッチャーカット性の評価と、下記の方法に準じてローディング&リワインディング(L&R)の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0158】
(ローディング&リワインディング(L&R)の評価)
上記作製した試料1〜9をそれぞれ100本用意し、これを23℃、相対湿度55%の環境下で、フィルムの先端を折り曲げずにそのままカメラ(Z−up150、コニカ社製)に装填した後、ローディングと撮影終了後のリワインディングを繰り返して行い、下記の基準に則りローディング&リワインディング(L&R)の評価を行った。
【0159】
◎:全ての試料が、トラブルなくローディングとリワインディングが行えた
○:ミスフィードあるいは巻き戻しできなかった試料が、1本発生した
△:ミスフィードあるいは巻き戻しできなかった試料が、2、3本発生した
×:ミスフィードあるいは巻き戻しできなかった試料が、4本以上発生した
【0160】
【表2】
Figure 2004284035
【0161】
表1及び表2の結果より、本発明のポリエステルフィルムは、TACに近似の引張破断エネルギー、破断強度あるいは破断伸度を有し、本発明のポリエステルフィルムとそれを用いて作製したハロゲン化銀写真感光材料は、比較例に対し、常温常湿下での巻癖カール、カール回復性、ミニラボ機やノッチャーでの切断性及びカメラ装填時のローディング性、リワインディング性に優れていることが分かる。
【0162】
【発明の効果】
本発明により、トリアセチルセルロースフィルムに近似の破断強度、破断伸び特性を有し、カール特性、巻き癖回復性が良好で、フィルム裁断性、カメラ装填適性、現像処理機器適性に優れた新規の積層ポリエステルフィルムとその製造方法及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料とその製造方法を提供することができた。

Claims (16)

  1. 少なくとも2層のポリエステル層を積層して二軸延伸された積層ポリエステルフィルムにおいて、積層した該ポリエステル層のいずれか一方の表層の引張破断エネルギーが、20MPa以上、110MPa以下であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
  2. 前記表層の破断伸度が、5%以上、130%以下で、かつ破断強度が20MPa以上、110MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
  3. 前記ポリエステル層の少なくとも1層が、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸とポリエチレングリコールを共重合させたポリエステル成分を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. 前記ポリエステル層の少なくとも1層が、全エステル結合単位に対して金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸成分を1〜15mol%含有し、かつポリエステル成分に対しポリアルキレングリコール成分またはポリアルキレングリコール・ジオキシカルボニルアルキルエーテル成分を、1〜10質量%含有するコポリエステルで形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. 前記ポリエステル成分が、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分を含むポリエステル成分をブレンドまたは共重合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 現像処理後の巻癖カール回復率が、60%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  7. 前記ポリエステル層が2層の表層と該表層に挟持された少なくとも1層のコア層とから構成され、該表層の少なくとも1層の引張破断エネルギーWsが、該コア層の引張破断エネルギーWcよりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 前記表層の引張破断エネルギーWsと、前記コア層の引張破断エネルギーWcとの差ΔW(Wc−Ws)が、10MPa以上、100MPa以下であることを特徴とする請求項7に記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 前記コア層の引張破断エネルギーWcが、40MPa以上、150MPa以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の積層ポリエステルフィルム。
  10. 前記表層のポリエステル成分の示差走査熱量測定(DSC)による融解温度Tmsが、前記コア層のポリエステル成分の示差走査熱量測定(DSC)による融解温度TmCより小さいことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  11. 前記表層及び前記コア層を構成する各々のポリエステル成分の固有粘度(IV)が0.95以下で、かつ全グリコール成分に対するシクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分の含有率をX(質量%)としたとき、下式(1)の条件を満たすことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
    式(1)
    (0.0055X+0.4)±0.05≦固有粘度(IV)≦(0.0055X+0.6)±0.05
  12. 総膜厚が、105〜130μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  13. 前記表層が、フィルムの切断工程のフィルム切断時に、最初に刃と接触する面であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルム。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法であって、熱溶融共押出によりポリエステル層を積層し、キャスティング、冷却した後、ガラス転移点以上の温度でMD方向(製膜方向)とTD方向(幅手方向)とを同時または逐次延伸した後、結晶化温度以上、溶融温度未満で熱固定処理して二軸延伸製膜を行い、かつ該熱固定処理する熱固定温度THSが、下式(2)の条件を満足することを特徴とする積層ポリエステルフィルムの製造方法。
    式(2)
    TmC−30℃≦THS≦TmC−5℃
    〔式中、TmCはコア層のポリエステル成分の融解温度を表す。〕
  15. 支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀感光性層を有するロール状ハロゲン化銀写真感光材料において、該支持体が請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層ポリエステルフィルムであることを特徴とするロール状ハロゲン化銀写真感光材料。
  16. 支持体上に、少なくとも1層のハロゲン化銀感光性層を有するロール状ハロゲン化銀写真感光材料の製造方法において、該支持体が請求項14に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法で製造されたことを特徴とするロール状ハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
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