JP2004268324A - 熱可塑性樹脂フィルム及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルム及びそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料 Download PDF

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一人 清原
Akira Kawakami
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Abstract

【課題】本発明の目的は、切断性、カール回復性、巻癖カール及び現像処理後のカール特性が改良された熱可塑性樹脂フィルムとそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【解決手段】3層以上の構成層からなる積層構造を有するポリエステルフィルムであって、該構成層の全てが、脂環構造を主鎖に有するポリエステルを主体に構成され、かつ表裏面の各表層を構成する2層の含水量が異なることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切断性、カール回復性、巻癖カール及び現像処理後のカール特性が改良された熱可塑性樹脂フィルムとそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、二軸配向ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムは各種の特性をバランス良く保有し、産業用資材として広く使用されている。その中で、写真感光材料の分野においても、医療用のX線写真フィルムや、印刷用、ディスプレイ用等の比較的広い面積で使用され、高い平面性が要求される分野では、優れた支持体用材料として実績がある。一方、一般消費者向けの135サイズを主体とするロール状のカラー写真フィルムあるいはモノクロ写真フィルム用の支持体としては、長年にわたり、その加工のし易さの観点からトリアセチルセルロース(以降、TACと略す)ベースに代表される繊維素系ポリマー支持体が広く使用されている。以上のように、現在のアマチュア写真市場では、TACベースを用いた写真フィルムが主流であり、撮影に使用するカメラや、現像所で使用する現像処理機、フィルムスプライーサー等の機器設計は、このTACベースの物性に合わせて設計されることとなり、現実に大量のTACベースに対し適正を有する各種の写真関連機器が存在している。
【0003】
一般に、TACベースは、光学的な等方性と優れた透明性を有し、適度な透湿性と保水性を有し、ロール状に保管した際に生じる巻き癖カールが、湿式現像処理工程で回復すると言った一般消費者用のロール形態の写真フィルムとして特徴的な特性を有しており、この特性を充たす代替品は、現在まで存在しなかった。
【0004】
撮影用フィルムに巻き癖がついたままであると、湿式現像処理工程中や現像処理後に、様々な問題、例えば、現像処理機での搬送中に折れが発生したり、現像処理機のガイドロールに巻き込まれるという問題が発生し、また、カラーネガティブフィルムである場合には、カラーペーパーへのプリント工程等で、保持たれたカール特性に起因して、プリンター内でのスリ傷の発生、ピントのボケ、搬送時のジャミング、折れ等の問題が発生する。巻き癖カールが湿式現像処理時に回復する速度や、現像処理液中での支持体としての適度な強度と剛性を維持できることも、TACベースの有利な特徴である。
【0005】
しかしながら、現在広く用いられているTACベースにおいても、様々な課題を抱えている。その一つは、TACベースを製造する際にメチレンクロライド(沸点41℃)などの塩素系炭化水素を溶媒として使用している点が、その代表として指摘されている。メチレンクロライドは、従来からセルローストリアセテートの良溶媒として用いられ、沸点が低いことから製造工程の製膜及び乾燥工程において乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。ところがメチレンクロライドは、近年環境問題等の視点より、その使用量が制限される方向にある。このため、製造工程でメチレンクロライドの回収を徹底して行う等の対策を取っているが、大がかりな回収設備が必要とされコストに対する負荷が大きいのが現状である。
【0006】
上記課題の解決方法の一つとして、例えば、特開平11−310640号には、TACの冷却溶解を用いた方法、特開平11−152342号には、溶媒を変更した方法等により、メチレンクロライドを使用しない、あるいは大幅に削減できるセルローストリアセテートフィルムの製造方法が提案されているが、未だ有機溶媒を使用するための設備投資が増大したり、あるいは引火性、爆発性などの懸念を低減するため設備投資が必要とされているのが現状であり、有機溶媒を使う以上、本質的な解決には至っていない。
【0007】
一方、TACベースを他のプラスチックベースで置き換える様々な試みがなされている。例えば、米国特許第4,141,735号では、アニール処理を施したポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略す)、ポリエチレン2,6ナフタレート(以降、PENと略す)などが実用化に向け検討されており、このうち、アニール処理されたPENベースは厚さ85μm付近のものが、APS(アドバンスドフォトシステム)用の写真用ベースフィルムとして、既に実用化されている。アニール処理されたPENベースは、ロール状に保管しても巻き癖がつきにくいことが特徴であるが、このアニール処理されたPENベースの厚さを、現在広く普及している135フォーマットの写真フィルムで使われているTACベースの厚さと同じ120μm程度にすると、支持体の機械的な物性、例えば、剛性、破断強度などが高すぎて、現行の135フォーマットのカメラや現像処理機等で故障が生じる要因となるため、135フォーマット対応のシステムには、未だ使われていないのが現状である。
【0008】
一方、特開平10−20441号、特開2000−206646号、特開2001−98089号には、フィルム強度を低下して切断容易性を高めたフィルムが提案されて、135フォーマットへの応用が試みられてはいるが、未だ実用化に耐えうる品質に到達していない。また、PENフィルムは、現状では樹脂の原料コストが高く、また融点が高いため、熱エネルギーに対する負荷や樹脂強度が高いことによる加工時のエネルギー負荷等で製造面における適性に劣るため、現在使用されているTACフィルムへの置き換えに対して、経済的な利点が少ない。従来の技術では、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート系プラスチックをはじめとする剛性の高い樹脂に熱処理等を施して、巻き癖のつきにくい材料を得る方法の検討がなされてはいるが、剛性の高い素材を用いるという観点では、TACと互換性のある写真フィルム用の支持体を見いだすのは困難であるのが現状である。
【0009】
また、ポリエチレンテレフタレートは、前述のようにシート状で使用される写真用感光材料の支持体として、その優れた寸法安定性や機械強度により実用化されているが、カールの付き易さと現像処理後の巻き癖回復性(カールのとれ易さ)が劣るため、135フォーマットのような小径のロールフィルムでは支持体として実用化できない。巻き癖カールをつきにくくする方法については、特許第3142571号、特開平8−146558号に開示されているが、ポリエチレンテレフタレートはTgが80℃付近であり、135フォーマットの写真フィルムが日常で保存される環境下で容易に巻き癖がついてしまうため、実用化には至っていない。また、アニール処理されたポリエチレン2,6ナフタレンジカルボキシレートベース(PENベース)は巻き癖が付きにくく、APSフォーマットでは実用化されているが、前述のように厚みを135フォーマットのTACと近似にすることができず、TACと互換性のあるベースとなり得ない。また、厚みの問題を別にしても、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレンジカルボキシレートは、特に、延伸した後では破断しにくいため、優れた裁断適性を有するTACベースに対応してある各種処理機器では、所望のサイズに断裁したり、パーフォレーション部の加工がし難いことが欠点となってしまい、現像前後でのフィルムの裁断、穿孔機器で故障を起こすことが知られている。
【0010】
一方、現像処理後のカールを取れやすくするための方法として、親水性の成分をポリエチレンテレフタレートへ共重合したり、ポリエチレンテレフタレートと親水性の共重合ポリエステルを積層する方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。上記技術によれば、ロール状に加工した際の巻癖カールのつき易さ、現像処理後のカールの取れ易さは、TACと近似の品質まで向上させることが可能であるが、切断性については、例えば、市場で長期間使用されているような刃の断裁部が摩耗している様な処理機のカッターでも、TACベースなら断裁トラブルもなく安定に断裁加工ができるのに対し、上記提案されている方法のフィルムは、TACの特性に遠く及ばないのが実状である。
【0011】
また、上記PETやPEN以外にも、例えば、特開平5−197072号、特開平7−311439号、特開平8−137050号、特開平8−122971号等には、シンジオタクティクスポリスチレン、ポリアミドなどを使った方法が開示されてはいるが、TACベースを代替するという品質には未だ達してはいない。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−131800号公報 (特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献2】
特開2001−290243号公報 (特許請求の範囲)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、切断性、カール回復性、巻癖カール及び現像処理後のカール特性が改良された熱可塑性樹脂フィルムとそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の各々の構成により達成される。
【0016】
1.3層以上の構成層からなる積層構造を有するポリエステルフィルムであって、該構成層の全てが、脂環構造を主鎖に有するポリエステルを主体に構成され、かつ表裏面の各表層を構成する2層の含水量が異なることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
【0017】
2.全酸成分に対する脂環構造成分の比率が50モル%以上であるポリエステルを、3層以上積層したことを特徴とする前記1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0018】
3.前記脂環構造は、シクロヘキサン環であることを特徴とする前記1または2項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0019】
4.前記シクロヘキサン環は、シクロヘキサンジメタノールを共重合したものであることを特徴とする前記3項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0020】
5.前記シクロヘキサン環は、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを共重合したものであることを特徴とする前記3項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0021】
6.前記ポリエステルは、スルホン酸金属塩をポリエステルの全酸成分に対して1モル%以上、10モル%以下含有することを特徴とする前記1または2項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0022】
7.前記スルホン酸金属塩は、スルホイソフタル酸金属塩であることを特徴とする前記6項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0023】
8.前記構成層の主成分であるポリエステルは、ポリアルキレングリコール成分を、ポリエステルの全質量に対して1質量%以上、10質量%以下共重合したものであることを特徴とする前記1または2項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0024】
9.前記ポリアルキレングリコール成分は、ポリエチレングリコール成分であることを特徴とする前記8項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0025】
10.前記ポリエチレングリコールの分子量は、300以上、6000以下であることを特徴とする前記9項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0026】
11.前記ポリエステルは、イソフタル酸をポリエステルの全酸成分に対して5モル%以上、30モル%以下共重合したものであることを特徴とする前記1または2項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0027】
12.前記ポリエステルは、共重合成分としてスルホイソフタル酸金属塩をポリエステルの全酸成分に対し1モル%以上、10モル%以下含有し、かつポリエチレングリコール成分を、ポリエステルの全質量に対し1質量%以上、10質量%以下含有していることを特徴とする前記1または2項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0028】
13.表裏面の各表層を構成する2層は、該表層の主成分であるポリエステルの前記スルホイソフタル酸金属塩の含有量、または該表層の主成分であるポリエステルの前記ポリエチレングリコール成分の含有量がお互いに異なることを特徴とする前記12項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0029】
14.表裏面の各表層を構成する2層は、お互いに膜厚が異なることを特徴とする前記12項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0030】
15.前記ポリエステルは、ポリスチレン換算分子量が2,000以上、40,000以下であることを特徴とする前記1〜14項のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0031】
16.3層以上の構成層からなる積層構造を有するポリエステルフィルムで、隣接する2層(A層、B層)間のポリエステルに含まれる脂環構造成分の全酸成分に対するモル%の差(X−Y)が、下式(1)の条件を満たすことを特徴とする前記1または2項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0032】
式(1)
−50<X−Y<50
〔式中、XはA層の脂環構造成分の全酸成分に対するモル%を表し、YはA層に隣接するB層における脂環構造成分の全酸成分に対するモル%を表す。〕
17.総膜厚は、50μm以上、250μm以下であることを特徴とする前記1〜16項のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0033】
18.前記1〜17項のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有し、ロール状形態で使用することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0034】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、3層以上の構成層からなる積層構造を有するポリエステルフィルムであって、該構成層の全てが、脂環構造を主鎖に有するポリエステルを主体に構成され、かつ表裏面の各表層を構成する2層の含水量が異なる熱可塑性樹脂フィルムにより、切断性、カール回復性、巻癖カール及び現像処理後のカール特性が改良された熱可塑性樹脂フィルムを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0035】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムであるポリエステルフィルムは、3層以上の特性の構成層が積層された構造からなるものである。例えば、単層あるいは2層構成では、特に、カールの回復特性が十分でなく、本発明の目的を達成することができない。
【0036】
本発明においては、3層以上の積層構造をとると共に、ポリエステルフィルムの表裏面を構成する各最表層(2層)の含水量が異なる積層構造とすることにより、本発明で目的とする優れたカール回復性を実現できる。したがって、4層以上の積層構造とすることも可能ではあるが、原料が多種類になる点、また熱可塑性樹脂フィルムの製造に用いる押出し機やダイなどの製造設備が複雑になるなどの理由により、本発明では、3層の積層構造をとることが特に好ましい。
【0037】
次に、本発明に用いられるポリエステル樹脂について説明する。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするポリエステルである。
【0038】
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4,4′−ジ−β−ヒドロキシエチル)フルオレン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらポリエステルの中でも、透明性、機械的強度、寸法安定性などの観点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールまたは1,4−シクロヘキシレンジメチレングリコールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートユニット、ポリエチレンイソフタレートユニット、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンイソフタレートユニットを含有するポリエステルが好ましい。
【0039】
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(以下、本発明のポリエステルフィルムともいう)は、すべての構成層が脂環構造を主鎖に有するポリエステルを主体に構成されていることが、1つの特徴である。
【0040】
本発明でいう脂環構造とは、例えば、シクロペンテン、シクロヘキサンなどの脂肪族環状構造を指し、好ましくは、1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合モノマーとして使用して得られるポリエステルである。シクロヘキサン環を主鎖に有するポリエステルを得るためには、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステルを、テレフタル酸ないしテレフタル酸ジメチルといったジカルボン酸に代えて使用することによっても得ることができる。脂環構造成分は、全酸成分に対して50モル%以上含有されることが好ましい。脂環構造、とくにシクロヘキサン環を主鎖に有することによって、透明性、機械的強度、寸法安定性、などとともに後で述べるフィルムの切断性に極めて優れたフィルムが得られる。この理由は、シクロヘキサン環状構造により密度が下がり、切断に要するエネルギ−が大幅に低減されるものと考えられる。したがって、シクロヘキサン環の含有量が高いほど切断性が向上できる。本発明の目的を達成するためには、シクロヘキサン環の含有量が50モル%以上であることが好ましい。
【0041】
シクロヘキサン環は、ポリエステル主鎖に共重合されることが好ましい。ポリエステルのグリコール成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用したポリエステルは市販されており、例えば、それらの市販品を購入してPETとブレンドすることによって、シクロヘキサン環含有量が同等の混合ポリエステルを作製することは可能である。しかし、均一な混合物を得るために、例えば、二軸混練押出し機などの高い剪断力がかかる機器により溶融混練した場合、樹脂が劣化した後に着色することがあり、その原料を使用して製膜するとフィルムが好ましくない色調を呈することがある。共重合でシクロヘキサン環を導入することで、再溶融混練を省くことができ、ポリマーの熱分解防止の観点から有利である。また、混合ポリエステルで得られるフィルムの切断性は、本発明に係るシクロヘキサン環共重合ポリエステルを使用した積層フィルムよりも劣るものである。よって、複数のポリマーの混合により均一な物性を得ることは非常に難しく、共重合により均一な物性とすることが肝要と推察される。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、現像処理時の巻き癖回復のために、スルホイソフタル酸金属塩やポリアルキレングリコールなどの親水性の共重合成分を加えることが好ましい。スルホイソフタル酸金属塩としては、スルホイソフタル酸ナトリウムが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等が好ましい。特開平1−244446号、特開平4−234039号、特開平5−210199号、特開平6−82969号公報などには、スルホン酸基またはその塩を有する芳香族ジカルボン酸あるいはポリアルキレングリコールを共重合成分として含有するポリエステルについて、更に、特開平4−93937号、特開平6−11795号、特開平6−161035号、特開平6−289534号、特開平6−240020号、特開平6−110154号の各公報などには、ポリエステルを2層以上積層したポリエステルについて記載されている。上記提案されているポリエステルは、巻き癖低減、現像処理後の巻き癖回復に対し効果を有していると考えられる。
【0043】
スルホイソフタル酸金属塩は、ポリエステルを構成する全酸成分に対して1〜10モル%程度含有することが好ましい。1モル%未満では、現像処理後のカール回復性が不十分となり、また10モル%を超えて含有すると、親水性が高くなりすぎて、製膜する前の乾燥工程で十分に水分を除去することが難しくなり、溶融押出しの際に加水分解して均一な押出しが困難になる。また、例え製膜が行えたとしても、得られたフィルムの強度が低下したり、水に浸漬した際の膜強度が不足し、現像処理機中で破断するなど、種々のトラブルを引き起こす要因となる。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムでは、ポリアルキレングリコール成分を、ポリエステルの全質量に対して1質量%以上、10質量%以下共重合したものであることが好ましい。ポリアルキレングリコールは、汎用性やコストなどの面から、ポリエチレングリコールが好ましい。ポリエチレングリコールは、特に、分子量300以上、6000以下のものを、ポリエステル全質量に対して1質量%以上、10質量%以下含有することが好ましい。分子量が300未満のものを用いると得られるポリエステルフィルムの寸法安定性が劣化するため好ましくない。また、分子量が6000を超えると、重合時の発泡が大幅に多くなり、重合釜の真空系が詰まるトラブルが発生する。また、ポリアルキレングリコール成分の含有量が1質量%未満では現像処理後のカール回復性が不十分となり、10質量%を超えると巻癖カールが大幅に大きくなり、現像処理後にカールが十分に回復しなくなる。
【0045】
本発明の目的とする巻癖カール特性と現像処理後カール特性を備えた熱可塑性樹脂フィルムとするためには、各層の主成分であるポリエステルのすべてが、共重合成分としてスルホイソフタル酸金属塩を、各層の主成分であるポリエステルの全酸成分に対して、1モル%以上、10モル%以下で、かつポリエチレングリコール成分を、各層の主成分であるポリエステルの全質量に対して、1質量%以上、10質量%以下含むことが極めて好適な条件である。
【0046】
また、表層を構成する2層間において、表層を構成する主成分であるポリエステルのスルホイソフタル酸金属塩含有量、または表層を構成する主成分であるポリエステルのポリエチレングリコール成分含有量が異なるか、または、表層を構成する2層の厚みが異なることが好ましい。
【0047】
本発明のポリエステルフィルムは、表裏の各表層の含水量が異なるように作製することによって、付加されたカールが現像処理時に水を吸って回復するので、各表層において、スルホイソフタル酸金属塩含有量またはポリエチレングリコール成分含有量を異なる構成とするが、あるいは含有量が同じ場合には、各表層間の膜厚を変更することにより、含水量を変えることが好ましい。
【0048】
実際の巻癖カールと現像処理後カールは、塗設する画像形成層の種別と厚みなどにより異なるが、最適なカール挙動となるように、スルホイソフタル酸金属塩含有量、ポリエチレングリコール成分含有量、膜厚等を、それぞれのフィルム上に設ける画像形成層に合わせて適宜設計することができる。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムでは、ポリエステルを構成する全酸成分に対して、イソフタル酸成分を5モル%以上、30モル%以下含有することが好ましい。イソフタル酸成分の含有量が5モル%未満では、ポリエステルの結晶性が高くなりすぎて溶融押出しする際に結晶化して割れてしまい、安定に製膜することが困難となり、例え製膜できたとしても、得られたフィルムは脆弱で、例えば、低温、低湿下で折り曲げた場合に折れてしまう等の欠点を有する。また、イソフタル酸成分の含有量が30モル%を超えると、ポリエステルの結晶性が遅くなり、溶融押出しする前の乾燥において、ペレット同士が融着を起こす、あるいは押出し機の中で融着して安定した押出しが困難になるなどの欠点を有する。また、製膜が行えたとしても、得られるフィルムの寸法安定性が劣るという問題が生じる恐れがある。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムのポリスチレン換算分子量として、2,000以上、40,000以下であることが好ましい。2,000未満では溶融粘度が低すぎて安定した溶融押出しが困難である。また、製膜できたとしても得られるフィルムの機械的強度が不十分である。40,000を超えた分子量では、溶融粘度が高くなりすぎて、押出し機への送液負荷が大きくなる。また、製膜時に膜厚を均一に調整することが極めて困難になる。従って、得られるフィルム膜厚の均一性が低下し、平面性に劣るフィルムとなる。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに用いられるポリエステル樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分が共重合されていても良いし、他のポリマーがブレンドされていても良い。上記ポリエステル樹脂は、例えば、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば、極く少量のグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成性化合物で変性されたものでもよい。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、3層以上の積層構造を有するポリエステルフィルムであって、隣接する2層間で、主成分であるポリエステルに含まれる脂環構造成分の全酸成分に対するモル%の差が、前式(1)を満足することが好ましい。
【0053】
隣接する2層間の脂環構造成分の全酸成分に対するモル%の差が前式(1)の範囲外であると、該当する2層間の層間接着が不十分となり、例えば、カラーネガティブフィルムに加工する際、両端のパーフォレーション加工において、パーフォレーション部周辺で層間剥離を起こしたり、あるいは、現像処理終了後に、フィルム後端部などで部分的に層間剥離を起こす等の問題が発生する。
【0054】
本発明に用いられる共重合ポリエステルの重合は、通常の公知の方法で行うことができる。すなわち、ジカルボン酸成分とグリコール成分とをエステル交換後、高温、減圧下にて重縮合せしめて共重合ポリエステルを得ることができる。この際、共重合成分である金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸類やポリエチレングリコールを、エステル交換反応前、反応中または反応後に添加し、重縮合を行う。エステル交換反応の触媒組成は、例えば、特開平10−13041号に記載のものを用いることが出来る。重合終了したポリマーは、ダイからヌードル状に押出し、水冷してから3mm程度の長さに細断してペレット状にすることが好ましい。
【0055】
本発明に用いられるポリエステルには、長期保存中での劣化を防止する目的で、酸化防止剤を含有させることができる。特に、ポリエステル樹脂が、ポリオキシアルキレン基を有する化合物を含む場合に有効である。含有させる酸化防止剤は、その種類に特に限定はなく、公知の各種酸化防止剤を使用することができ、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などの酸化防止剤を挙げることができる。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤が好ましい。なお、これらの酸化防止剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組合せて使用しても良い。また、特開平5−323496号に記載されている酸化防止剤も用いることが出来る。
【0056】
本発明に用いられるポリエステルには、ライトパイピング現象を防止する目的で、染料を含有させることが好ましい。このような目的で配合される染料としては、その種類に特に限定があるわけではないが、フィルムの製造上、耐熱性に優れていることが必要であり、アンスラキノン系やペリノン系の染料が挙げられる。また、色調としては、一般の写真感光材料に見られるようにグレー染色が好ましい。これらの染料としては、例えば、Bayer社製のMACROLEXシリーズ、住友化学(株)製のSUMIPLASTシリーズ、三菱化成(株)製のDiaresinシリーズなどが挙げられ、これらを1種単独で、もしくは2種以上の染料を必要な色調となるように混合して用いることができる。この際、フィルムの分光透過率を400〜700nmの波長範囲で60%以上、85%以下とし、更に600〜700nmの波長範囲で分光透過率の最大と最小の差を10%以内とするような染料を選択して用いることが、ライトパイピング現象を防止し、かつ良好な画像特性を得る上で好ましい。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂フィルム中への着色剤の添加方法として、特に限定はなく、ポリエステルの重合から溶融押出までのいずれかの段階で、所望量の着色剤を添加し、着色してもよく、あるいは、あらかじめ高濃度のマスターペレットを用意しておき、適宜希釈して溶融押出する際に必要量を混合する方法等が挙げられ、後者は濃度をコントロールしやすい点から好ましく用いられる。特に、回収ポリエステルを含有させる場合など、染料濃度の調整が必要な場合は、上記方法が有効である。
【0058】
マスターペレットにおける染料の濃度は100〜10,000ppmが好ましい。特公平7−51635号、特公平8−15734号等に記載の方法を用いることが出来る。染料を乾燥機に投入してペレットにまぶしたり、直接押出し機供給部に供給してもよく、例えば、二軸押出し機を用いる場合には、複数の原料供給口を設けて、染料を単独で、またはポリエステルペレットと一緒に押出し機に供給する方法なども用いられる。
【0059】
ポリエステルに対する染料濃度は、各層で均一でもよいし、異なってもよい。ベース内部の光透過を防止するという目的からは均一な方が好ましい。
【0060】
染料としては、例えば、バイエル社製の染料を下記の配合割合で混練し、染料濃度2,000ppmのマスターペレットを作製し、着色ポリエステル樹脂として、混ぜてもよい。
【0061】
Macrolex Red EG:Macrolex Violet B:Macrolex Green G=1:1:1
本発明のポリエステル積層フィルムである熱可塑性樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、ポリエステル樹脂を120℃以上、170℃以下程度までの温度で十分乾燥させ、押出機へ供給し、溶融押出し、導管を経由して押出口金(ダイス)からシート状に押出し、冷却ドラム上で冷却固化し、未延伸フィルムとした後、二軸延伸し、熱固定する方法が好ましい。
【0062】
熱可塑性樹脂フィルムの乾燥は、攪拌しながら加熱する結晶化工程と水分を除去するための加熱を別々に行ってもよいし、攪拌しながら乾燥温度まで上げる一段階方式でもかまわない。水分除去の効率を上げるために減圧してもよいし、乾燥窒素などの不活性ガス雰囲気下加熱することも好ましく用いられる。また、ベント式押出し機を使用する場合は、原料ペレットの含水率が多少高くてもベントにより水分除去できる場合があり、必ずしも溶融押出し前の乾燥が必須というわけではない。
【0063】
溶融押出し機は、通常ポリエステルの押出しに使用される単軸ないし二軸押出し機が好ましく使用できる。本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、3層以上の積層構造とすることが特徴の1つであり、2台以上の押出し機が使用される。1台の押出し機から導管やギヤポンプによって2層に振り分けることができるので、必ずしも層数分の押出し機が必要というわけではない。押出し機の温度は供給する樹脂の融点±20℃程度に設定することが好ましい。押出し機で溶融押出ししたあと、フィルターで濾過することが好ましい。フィルターとしては、金網フィルター、焼結フィルターなどが使用できる。フィルターの形状は、平板状でも、ディスク状でも、ろうそく状でもかまわない。設置は1カ所に限らず、押出し機直後やダイ手前など複数設置してもよい。
【0064】
押出し機より下流、ダイより上流にギヤポンプを設置することが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、各層の厚み比率を正確に制御する必要があり、押出し機の定量精度では、厚み制御精度が不十分な場合がある。ギヤポンプは定量精度のよい3ギヤタイプが好ましい。
【0065】
積層製膜する場合に、ダイ直前に希望する層数のフィードブロックを設置してダイは単層ダイを使用する方法と、マルチマニホールドダイを使用する方法、両者の組み合わせで多層化する方法があるが、フィードブロック法は巾手の層厚み均一性を得ることが難しいという難点を有しており、本発明は層厚みを均一に制御する必要があることから、マルチマニホールドダイを使用する方法が最も適している。使用するポリエステルの溶融粘度特性に合わせてマニホールドを設計することによって、巾手に均一な層厚みを得ることができる。
【0066】
スリットダイから押し出された溶融ポリマーは、冷却ドラム上で冷却固化される。冷却ドラムは表面粗度0.2μm以下の鏡面が好ましい。ドラム表面温度を樹脂のガラス転移点より低い温度、好ましくはガラス転移点より5〜50℃低い温度に制御する。溶融ポリマーがドラムに接地した直後に、静電印加してドラムに密着させるのが好ましい。静電印加は、直径150μm程度の金属ワイヤを張って直流電圧を印加する方法が一般的であり、本発明にも好ましく適用できる。本発明の熱可塑性樹脂フィルムであるポリエステルフィルムは、その組成や分子量などによっては結晶化が早い場合があり、冷却ドラム上での冷却が不十分だと結晶化が進行し、後工程の延伸が困難になったりするケースがある。これを防止するために、冷却ドラム上のシートに風を吹き付けて、ドラム非接触面からも冷却することが効果的である。
【0067】
未延伸フィルムを2軸延伸する場合には、長手方向、いわゆる縦延伸後に、幅手方向の延伸、すなわち横延伸が汎用されるが、縦方向、横方向の延伸順序は問わない。同時に2方向に延伸する方法でもよく、縦延伸、横延伸をそれぞれ多段階でおこなってもよく、また縦延伸後の横延伸のあとにさらに縦延伸を追加してもよい。
【0068】
次いで、得られた未延伸シートを、複数のロール群または赤外線ヒーターなどの加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、ロールの周速差を利用して一段または多段縦延伸する方法である。延伸倍率は、通常2.0〜6.0倍の範囲で、配向度を続く横延伸が可能な範囲とする。低速側ロールの表面温度をTg以下とすることが好ましい。
【0069】
本発明では、上記の様にして得られた縦方向に一軸延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm(融点)−20℃の温度範囲内で、2つ以上に分割された延伸領域で昇温しながら横延伸し、次いで熱固定することが好ましい。横延伸倍率は通常3〜6倍であり、また縦、横延伸倍率の比は、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整する。特に、屈折率が長手方向1.56〜1.65、巾方向1.58〜1.67、厚み方向1.46〜1.57の範囲に入るようにすると、製造工程で破断しにくく、また適度の機械的強度を有する良好なベースが得られる。屈折率は延伸温度、延伸倍率、縦横の延伸倍率の比、また後述の熱固定温度の影響も受けるので注意が必要である。延伸温度の分割領域は少なくとも2段階、更に3段階であることが好ましい。それ以上でもかまわないが、設備が大きくなるなどの問題が生じる。各領域の温度は順次高くなるように設定し、かつ温度差は0〜50℃の範囲とすることが好ましい。
【0070】
なお、同時二軸延伸等の無接触延伸も、傷等の故障が発生しにくいことから好ましく用いることができる。
【0071】
次いで、熱固定を行うが、この前に二軸延伸フィルムを、その最終横延伸温度以下、例えば、Tg−40℃以上の範囲で、0.01〜5分間保持することが好ましい。
【0072】
縦、横方向に二軸延伸したフィルムを熱固定するに際しては、その最終横延伸温度より高温で、Tm以下の温度範囲内で、2つ以上に分割された領域で昇温しながら熱固定することが好ましい。熱固定時間は通常0.5〜300秒間である。
【0073】
熱固定されたフィルムはTg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をトリミングし巻き取られる。この際、熱固定ゾーンから冷却ゾーンにかけて、横方向に0.1〜10%の弛緩処理することが好ましい。弛緩処理とは、巾手にクリップ間隔を狭めて製膜フィルムの熱収縮率を緩和する処理を言う。熱固定終了後巻き取るまでの間に、ニップロール間で加熱しながら搬送張力を緩和することによって縦方向に弛緩処理することも好ましく、横弛緩処理と同様に製膜フィルムの熱収縮率を緩和できる。また、冷却は、最終熱固定温度〜Tgまでの温度範囲で、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は、特に限定はなく、従来公知の手段を選択して用いることができるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度の算出は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで算出した値である。これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を好ましい範囲にするように適宜調整すればよい。
【0074】
ヨコ延伸終了後巻き取りまでの間に、巻ずれ防止、巻締まり防止、後工程搬送性などのために、両端部にナーリング加工することができる。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの平均膜厚は、50〜250μmであることが好ましい。50μm未満ではハロゲン化銀写真感光材料用の支持体としての機械強度が不充分であり、250μmを越えると、厚すぎて取り扱いが不便となり、また切断性が低下する。例えば、カラーネガティブフィルムの支持体として用いる場合には現在広く使用されているTACベースの膜厚が、概ね120μm程度であることを鑑みると、カメラ内でピントを合わせるため、あるいは、現像処理機内を問題なく搬送するため、本発明のポリエステルフィルムも90〜150μm程度とすることがより好ましい。
【0076】
本発明のポリエステルフィルムの製造に際し、延伸の前または後で帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層などの機能性層を、適宜塗設してもよい。例えば、特許第2649457号、特開平5−169592号に記載の方法が使用できる。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。
【0077】
以上の様にして得られた本発明のポリエステルフィルムは、膜厚ムラが小さく、平面性に優れ、品質むらが非常に少なく、本発明の効果を最大限に発揮させることができる。
【0078】
本発明のポリエステルフィルムは、ヘーズが20%以下であることが好ましく、更に好ましくは10%以下である。ヘーズが20%より大きいと本発明のポリエステルフィルムをハロゲン化銀写真感光材料用の支持体として用いた場合、例えば、カラーネガティブフィルムの支持体として用いた場合、カラーペーパーに焼付けた際に、画像がぼけてしまい不鮮明になる。本発明でいうヘーズは、ASTM−D1003−52に従って測定したものである。
【0079】
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。特に、1000m以上の長尺フィルムを1本のロール(元巻きともいう)に積層して巻き取る場合には、表面に適度な凹凸を形成して、仕上がり元巻の巻締まりによるシワや変形を防ぐ手段が必要となる。本発明のポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのフィルムに比較すると、機械強度が大きく異なるため、巻き取りの際に易滑性付与手段を形成してあると平面性の優れた良品の歩留まりが95%以上となり、好ましい。易滑性の手段としては、特に限定はないが、ポリエステルフィルムに不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリエステルの合成時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、あるいは界面活性剤などをフィルム表面に塗布する方法などが一般的である。フィルム中に含まれる不活性粒子のサイズについては、横延伸時の破断を防ぐために0.05〜1.2μmの範囲が好ましい。0.05μm未満であると、目的とする易滑性の効果がなくなる。不活性粒子の添加量は、フィルムのヘーズから上限が存在し、0.4質量%以下が好ましい。これらの中でも、析出する粒子を比較的小さくコントロールできる内部粒子析出方法が、フィルムの透明性を損なうことなく易滑性を付与できるので好ましい。触媒としては、公知の各種触媒が使用できるが、特に、Ca系またはMn系触媒を使用すると高い透明性が得られるので好ましい。これらの触媒は1種でも良いし、2種以上を併用しても良い。少量の不活性粒子で、易滑性効果を発揮するために不活性粒子の含有量の異なる同種の樹脂を積層して、表層に不活性粒子を偏在させてもよい。本発明で使用される不活性無機粒子としては、例えば、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0080】
本発明のポリエステルフィルムでは、回収ポリエステルを含有させることができる。回収ポリエステルとは、ポリエステルフィルムの製膜工程において、エッジ屑や不良巻などとして発生するフィルム屑を回収したもの、あるいは、ポリエステル支持体を用いて作製されたハロゲン化銀写真感光材料の屑(先端加工やパーフォレーション屑、不良巻きなど)やユーザーで不要となったフィルムを回収して支持体以外の層を剥離したものである。回収ポリエステルの混合割合は、30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると、得られるポリエステルフィルムの強度、透明性や色調変化等が問題となる。回収ポリエステルは、粉砕して乾燥機や押出し機に供給してもよいし、例えば、二軸押出し機により再ペレット化してから製膜工程に供給してもよいし、解重合してモノマーとして再生してもよい。
【0081】
次に、本発明のポリエステルフィルムの物性について説明する。
一般に、カメラや現像処理機で搬送不良や搬送不良による擦り傷発生をなくすために、本発明に用いるポリエステルフィルムは、次のような物性であることが好ましい。
【0082】
熱処理後の巻癖カール度は150m−1以下であり、好ましくは130m−1以下である。これ以上のカール度を有する場合はカメラや現像処理機で搬送不良や擦り傷を発生するトラブルを生じることがある。
【0083】
現像処理後のカール度は60m−1以下が好ましい。これ以下であれば現像処理後の他のハロゲン化銀写真感光材料への画像記録時や現像処理済みのハロゲン化銀写真感光材料を裁断したり、スリーブへ挿入するなどの際に機器のトラブルを起こすようなことはない。
【0084】
幅手カール度は3〜20m−1が好ましい。これ以上あるいは以下の場合、カメラなどの搬送中に、擦り傷等のトラブルが生じることがある。
【0085】
ヤング率は2.0〜4.0GPaが好ましい。また、長手および幅手方向の熱収縮がいずれも−1.0〜+2.0%であることが好ましい。この範囲を越えると、接着層や導電層を塗設する際に塗布故障を生じたり、平面性が劣化したりする。
【0086】
本発明のポリエステルフィルムに含まれるオリゴマー等の不純物は、ハロゲン化銀写真感光材料のカブリ等の写真性能に影響することがあるので、少ない方が好ましく、例えば、オリゴマー量は3%以下、好ましくは1%以下である。
【0087】
本発明のポリエステルフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体として好ましく使用することができる。
【0088】
ハロゲン化銀写真感光材料は、支持体の少なくとも一方の面側に、ハロゲン化銀乳剤層を有するが、このハロゲン化銀乳剤層は、支持体上に直接塗設されてもよいし、他の層、例えば、ハロゲン化銀乳剤層との接着性を改善するために、親水性コロイド層を介して塗設されてもよい。また、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体には、接着性向上の為、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線処理、火炎処理、大気圧ガス中放電プラズマ処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。接着性向上の為、下引層を塗設してもよい。また、ハロゲン化銀乳剤層や下引き層以外に、導電層、バックコート層、滑り層、透明磁性層、保護層なども設けることができる。特に、導電層や滑り層はスタチック防止、擦り傷発生防止から好ましく用いられる。導電剤としては、例えば、特公昭60−51693号、特開昭61−223736号及び同62−9346号公報に記載の第4級アンモニウム基を側鎖に持つ架橋型共重合体粒子、特開平7−28194号公報に記載のアイオネン重合体架橋型あるいはアイオネン重合体を側鎖に持つ共重合体粒子等のカチオン帯電防止剤、特公昭35−6616号公報記載のアルミナゾルを主成分とするもの、特開昭57−104931号公報に記載のZnO、SnO、TiO、Al、In、SiO、MgO、BaO、MoO、ZiO等の微粒子金属酸化物、特公昭55−5982号公報に記載のV等の金属酸化物などが利用できる。滑り剤としては、例えば、特開2000−19682号公報に記載の滑り剤が使用できる。
【0089】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤層を構成するハロゲン化銀としては、任意の組成のものを使用できる。例えば塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、純臭化銀もしくは沃臭化銀がある。
【0090】
ハロゲン化銀乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す。)No.17643、22〜23頁(1979年12月)の“1.乳剤製造法(Emulsion preparation and types)”、およびRDNo.18716、648頁、グラキデ著「写真の物理と化学」ポールモンテル社刊(P.Glkides,Chimie et Physique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Dauffin,Photographic Emulsion Chemistry Focal Press 1966)、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman etal,Making and coating Photographic Emulsion, FocalPress 1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0091】
乳剤は、米国特許3,574,628号、同第3,665,394号および英国特許第1,413,748号などに記載された単分散乳剤も好ましい。
【0092】
ハロゲン化銀乳剤には物理熟成、化学熟成及び分光増感を行うことができる。このような工程で使用される添加剤は、RD No.17643、RD No.18716及びRDNo.308119(それぞれ、以下、RD17643、RD18716及びRD308119と略す。)に記載されている。下記にその記載箇所を示す。なお、下記の数値は、記載されてる頁を表す。
Figure 2004268324
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に使用できる公知の写真用添加剤も、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
Figure 2004268324
本発明に係る感光性層には、種々のカプラーを使用することが出来、その具体例は、上記RDに記載されている。以下に関連のある記載箇所を示す。
【0093】
Figure 2004268324
上記各添加剤は、RD308119XIVに記載されている分散法などにより、添加することが出来る。
【0094】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料には、RD308119VII−K項に記載されているフィルター層や中間層等の補助層を設けることも出来る。
【0095】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料は、RD308119VII−K項に記載されている順層、逆層、ユニット構成等の様々な層構成をとることが出来る。
【0096】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料を現像処理するには、例えば、T.H.ジェームズ著、セオリイ オブ ザ フォトグラフィック プロセス第4版(The Theory of The Photographic Process Forth Edition)第291〜334頁及びジャーナル オブザ アメリカン ケミカル ソサエティ(Journal of the American Chemical Society)第73巻、No.3、100頁(1951)に記載されている公知の現像剤を使用することができる。また、RD17643の28〜29頁、RD18716の615頁及びRD308119XIXに記載された通常の方法によって、現像処理することができる。
【0097】
以上、本発明のポリエステルフィルムをハロゲン化銀写真感光材料、特に、カラーネガティブフィルムに適用する例について詳細に説明したが、本発明のポリエステルフィルムを、印刷用写真材料をはじめとするロール状のハロゲン化銀写真材料の支持体として、好ましく使用することができる。
【0098】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0099】
《ポリエステル樹脂の調製》
(ポリエステルAの調製)
撹拌機、添加剤導入口、窒素ガス導入口、真空流出系を備えた反応器に、テレフタル酸ジメチル(DMT)を88質量部、イソフタル酸ジメチル(IPA)を12質量部、1,4シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を144質量部に、酢酸カルシウムの水和物と酢酸マンガンの水和物とをそれぞれテレフタル酸ジメチルに対するモル比で2×10−4モル添加し、常法によりエステル交換反応を行った。得られた生成物に、5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸(SIP)の11質量部(5.8モル%/全酸成分)、ポリエチレングリコール(PEG)(数平均分子量1000)の9.3質量部(7.4モル%/ポリマー)、三酸化アンチモンの0.05質量部、リン酸トリメチルエステルの0.13質量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(CIBA−GEIGY社製)の0.4質量部および酢酸ナトリウムの0.04質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、67Paで重合を行い、常法に従いペレット化して共重合ポリエステルを得た。
【0100】
この共重合ポリエステルを用いて、バイエル社製の染料を下記の配合割合で混練し、染料濃度200ppmのペレットを作製し、ポリエステルAとした。
【0101】
Macrolex Red EG:Macrolex Violet B:Macrolex Green G=1:1:1
(ポリエステルB、Cの調製)
上記ポリエステルAの調製において、SIPの添加量、PEGの分子量及び添加量を表1に記載のように変更した以外は同様にして、ポリエステルBおよびCを得た。
【0102】
(ポリエステルDの調製)
撹拌機、添加剤導入口、窒素ガス導入口、真空流出系を備えた反応器にテレフタル酸ジメチルの88質量部、イソフタル酸ジメチル(IPA)の12質量部、1,4シクロヘキサンジメタノール(CHDM)の41質量部、エチレングリコールの35質量部に、酢酸カルシウムの水和物と酢酸マンガンの水和物とをそれぞれテレフタル酸ジメチルに対するモル比で2×10−4モル添加し、200℃、窒素雰囲気下でエステル交換反応を行った。その後、5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸(SIP)の11質量部(5.8モル%/全酸成分)、ポリエチレングリコール(PEG)(数平均分子量1000)の9.3質量部(7.4モル%/ポリマー)、三酸化アンチモンの0.05質量部、リン酸トリメチルエステルの0.13質量部、酸化防止剤としてイルガノックス1010(CIBA−GEIGY社製)の0.4質量部および酢酸ナトリウムの0.04質量部、平均粒径0.2μmのシリカ粒子の0.002質量部をそれぞれ添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、60Paの圧力下で重合を行い、共重合ポリエステルを得た。次いで、ポリエステルAと同様に染料を添加してポリエステルDとした。
【0103】
(ポリエステルE〜Oの調製)
上記ポリエステルDの調製において、SIPの添加量、PEGの分子量及び添加量、CHDMの添加量を表1に記載のように変更した以外は同様にして、ポリエステルE〜Oを得た。
【0104】
以下に、ポリエステルA〜Oの詳細を、表1に示す。
なお、表1に記載のポリエステル分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレン換算分子量を算出した。
【0105】
また、表1に記載の化合物略称の詳細は、以下の通りである。
CHDM:1,4シクロヘキサンジメタノール
SIP:5−ナトリウムスルホジ(β−ヒドロキシエチル)イソフタル酸
PEG:ポリエチレングリコール
IPA:イソフタル酸ジメチル
【0106】
【表1】
Figure 2004268324
【0107】
《積層ポリエステルフィルム及びハロゲン化銀写真感光材料の作製》
〔試料1の作製〕
(ポリエステルフィルム1の作製)
上記調製したポリエステルAとポリエステルBを、各々160℃で8時間除湿空気乾燥した後、3台の押出機を用いて270℃で溶融押出し、40メッシュのフィルターを通過させてから、マルチマニホールド3層Tダイ内で層状に接合し、45℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させて冷却固化し、3層構成の積層未延伸シートを得た。このときポリエステルAが両外層、ポリエステルBが中間層になるように押出し、各層の厚さの比が20:70:30となるように各押出機の押出し量を調整した。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、予熱ロール温度75℃、赤外線ヒータ出力200Vで縦方向に3.3倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、95℃で倍率3.5倍に延伸した。次いで100℃で2秒間熱処理し、さらに220℃で熱固定した。熱固定ゾーンの後半から冷却ゾーンにかけて横方向に5%弛緩処理しながらベース温度50℃以下まで冷却し、両端の膜厚が均一でない部分をトリミングしたあと、両端に高さ20μm、幅9mmのナーリング加工を施して、直径220mmのコアに巻き取り、二軸延伸積層のポリエステルフィルム1を得た。得られたフィルムの平均厚みは120μmで、3層各層の膜厚は20μm、70μm、30μmであった。
【0108】
(ハロゲン化銀写真感光材料の作製)
次いで、このポリエステルフィルム1上に、特開2001−33913号公報の実施例11に記載の下引層、バック層、ハロゲン化銀乳剤層を塗布した。ハロゲン化銀乳剤層は、第1層側に塗設した。次いで、この試料を135サイズ(35mm巾)に断裁し、カラーネガティブフィルムのISO規格通りにパーフォレーション加工し、パトローネに装填して、36枚撮りの135用カラーネガティブフィルムである試料1を作製した。
【0109】
〔試料2〜11の作製〕
上記試料1の作製において、支持体であるポリエステルフィルム1に代えて、表2に記載の組み合わせで作製した2軸延伸積層のポリエステルフィルム2〜11を用いた以外は同様にして、試料2〜11の作製した。なお、各積層ポリエステルフィルムの製膜の際には、使用するポリエステルによっては融点やガラス転移点が異なるので、使用するポリエステルに合わせて、押出し機設定温度、タテ延伸予熱ロール温度、赤外線ヒータ出力、ヨコ延伸温度、熱固定温度などの調整を適宜行った。
【0110】
《各試料の特性評価》
上記作製したポリエステルフィルム及び試料について、以下の評価を行った。
【0111】
〔ポリエステルの含水量の測定〕
各試料の作製に用いた各ポリエステルの含水量を、下記の方法に従って測定した。
【0112】
20μmの膜厚で構成するポリエステル層の含水量については、膜厚が20μmの単膜を単層ダイを用いて、上記積層フィルムの作製方法と同様にして、溶融押出し二軸延伸法で製膜し、得られたフィルムを23℃、20%RHに調湿された雰囲気下で4時間以上放置した後、23℃の蒸留水に24時間浸漬し、しかるのち、微量水分計(三菱化学(株)製、CA−20型)により乾燥温度150℃で測定した値(g/m)を求めた。
【0113】
〔層間接着性の評価〕
積層製膜した各ポリエステルフィルムに、片刃カミソリでフィルムが切断しない深さにキズを入れ、そこにセロテープ(R)を貼ったあと、垂直上部方向に勢いよく剥がし、剥離した面積及び各層間での剥離有無を目視観察し、下記の基準に則り層間接着性の評価を行った。
【0114】
A:剥離なし
B:剥離面積が1〜20%未満である
C:剥離面積20以上である
上記評価ランクにおいて、Aであれば実用的に問題ない。Bは、例えば、パーフォレーション穴加工した際にパーフォレーション穴周辺が部分的に剥離するなどの問題を起こす懸念があり、レベルCは実用に耐えない品質であると判定した。
【0115】
〔切断性の評価〕
35mm幅に断裁した各試料を、フィルムスプライーサーであるミトモ社製のスプライサーMS650Dのカッター部分で切断した。このカッター刃は、10年ほど使用したもので、刃の切断面が摩耗しているものである。また、各試料を、コニカ社製のコニカミニラボKP50QAに通し、後端カッターで切断した。このときカッターの可動刃の固定部分をゆるめて、可動刃と固定刃のクリアランスを広げて切れ味を悪くし、下記の基準に則り切断性の評価を行った。
【0116】
A:いずれの装置においても、問題なく断裁ができた
B:いずれかの装置で、10本通したときに1、2本の切断不良が発生する
C:いずれかの装置で、10本通したときに3本以上で切断不良が発生する
上記評価ランクにおいて、レベルAであれば実用的に問題ない。レベルBは実用上許容される下限の品質であり、レベルCは実用に耐えない。なお、現在市販されているTAC支持体を用いたカラーネガティブフィルムは、全てレベルAである。
【0117】
〔巻癖カール度の測定〕
各試料を作製した直後に、35mm(製造時の横方向)×120mm(製造時の縦方向)の帯状に切断し、温度23℃、相対湿度55%の条件下で1日放置した後、直径が10.8mmであるコアに、ハロゲン化銀乳剤層面側が内側になるように巻き付けた。なお、試料に幅手カールがあるときはその支持体の凹面が外になるようにして巻く。その後、温度55℃、相対湿度20%の環境下で24時間熱処理を行った。熱処理後、温度23℃、相対湿度55%の環境下で30分かけて放冷した後にコアから解放し、30分経過後に試料の巻癖カール度を測定した。カール度は1/rで表し、rはカールした試料の曲率半径を表し、単位はmである。
【0118】
〔現像処理後の回復カール度の測定〕
各試料を、35mm(製造時の横方向)×120mm(製造時の縦方向)の帯状に切断し、温度23℃、相対湿度55%の環境下で1日放置した後、直径が10.8mmであるコアにハロゲン化銀乳剤層面側が内側になるように巻き付け、熱処理後の巻癖カール度と同様に熱処理を行った。熱処理後、ミニラボ(コニカ社製、KP50QA)で処理し、出口から排出後、温度23℃、相対湿度55%の条件下で1時間放置した後に、フィルム中央部のカール度を上記と同様の方法で測定した。
【0119】
以上により得られた結果を、表2に各ポリエステルフィルムの構成を、表3に各評価結果を示す。
【0120】
【表2】
Figure 2004268324
【0121】
【表3】
Figure 2004268324
【0122】
表2、3より明らかなように、本発明の構成からなる試料は、ポリエステルフィルムの層間接着性に優れ、また切断性、熱処理前後での巻癖カール、及び現像処理後のカール回復性に優れていることが分かる。これに対し、比較例である試料10は、CHDMを含有していない層があるため、切断性が劣り、かつ層間のCHDM含有量に差があるため層間接着性が実用に耐えない。また比較例である試料11は、第1層と第3層が同じ含水量であるため、現像処理後のカール回復性が不十分であることが分かる。
【0123】
【発明の効果】
本発明により、切断性、カール回復性、巻癖カール及び現像処理後のカール特性が改良された熱可塑性樹脂フィルムとそれを用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供することができた。

Claims (18)

  1. 3層以上の構成層からなる積層構造を有するポリエステルフィルムであって、該構成層の全てが、脂環構造を主鎖に有するポリエステルを主体に構成され、かつ表裏面の各表層を構成する2層の含水量が異なることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
  2. 全酸成分に対する脂環構造成分の比率が50モル%以上であるポリエステルを、3層以上積層したことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 前記脂環構造は、シクロヘキサン環であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 前記シクロヘキサン環は、シクロヘキサンジメタノールを共重合したものであることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  5. 前記シクロヘキサン環は、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを共重合したものであることを特徴とする請求項3に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  6. 前記ポリエステルは、スルホン酸金属塩をポリエステルの全酸成分に対して1モル%以上、10モル%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  7. 前記スルホン酸金属塩は、スルホイソフタル酸金属塩であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  8. 前記構成層の主成分であるポリエステルは、ポリアルキレングリコール成分を、ポリエステルの全質量に対して1質量%以上、10質量%以下共重合したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  9. 前記ポリアルキレングリコール成分は、ポリエチレングリコール成分であることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  10. 前記ポリエチレングリコールの分子量は、300以上、6000以下であることを特徴とする請求項9に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  11. 前記ポリエステルは、イソフタル酸をポリエステルの全酸成分に対して5モル%以上、30モル%以下共重合したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  12. 前記ポリエステルは、共重合成分としてスルホイソフタル酸金属塩をポリエステルの全酸成分に対し1モル%以上、10モル%以下含有し、かつポリエチレングリコール成分を、ポリエステルの全質量に対し1質量%以上、10質量%以下含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  13. 表裏面の各表層を構成する2層は、該表層の主成分であるポリエステルの前記スルホイソフタル酸金属塩の含有量、または該表層の主成分であるポリエステルの前記ポリエチレングリコール成分の含有量がお互いに異なることを特徴とする請求項12に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  14. 表裏面の各表層を構成する2層は、お互いに膜厚が異なることを特徴とする請求項12に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  15. 前記ポリエステルは、ポリスチレン換算分子量が2,000以上、40,000以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  16. 3層以上の構成層からなる積層構造を有するポリエステルフィルムで、隣接する2層(A層、B層)間のポリエステルに含まれる脂環構造成分の全酸成分に対するモル%の差(X−Y)が、下式(1)の条件を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
    式(1)
    −50<X−Y<50
    〔式中、XはA層の脂環構造成分の全酸成分に対するモル%を表し、YはA層に隣接するB層における脂環構造成分の全酸成分に対するモル%を表す。〕
  17. 総膜厚は、50μm以上、250μm以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有し、ロール状形態で使用することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017204000A (ja) * 2006-06-23 2017-11-16 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 多層光学フィルム、その作製方法及びそれを有するトランザクションカード

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