JP2004282626A - 2ポート型非可逆回路素子、複合電子部品および通信装置 - Google Patents

2ポート型非可逆回路素子、複合電子部品および通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】平衡−不平衡変換器を介さないで平衡回路に接続することができるとともに、同相信号除去比が大きい2ポート型非可逆回路素子、それを備えた複合電子部品および通信装置を提供する。
【解決手段】第1中心電極21の接続部26,27はそれぞれ平衡入力端子14,15に電気的に接続されている。第2中心電極22の接続部28,29はそれぞれ平衡出力端子16,17に電気的に接続されている。平衡入力端子14と平衡出力端子16の間、並びに、平衡入力端子15と平衡出力端子17の間には、それぞれ抵抗R1,R2が電気的に接続されている。第1および第2中心電極21,22のそれぞれの接続部26〜29とアースとの間には整合用コンデンサC1〜C4が電気的に接続されている。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2ポート型非可逆回路素子、特に、マイクロ波帯で使用されるアイソレータなどの2ポート型非可逆回路素子、複合電子部品および通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の2ポート型非可逆回路素子として、例えば特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。特許文献1の2ポート型非可逆回路素子は、フェライトの上面に、第1中心電極と第2中心電極を電気的絶縁状態で互いに交差させて配置している。第1および第2中心電極のそれぞれの一端は接地されるとともに、他端は入力端子および出力端子にそれぞれ電気的に接続されている。そして、第1中心電極の他端と第2中心電極の他端の間に抵抗が電気的に接続されている。さらに、第1および第2中心電極のそれぞれの他端とアースとの間に整合用コンデンサが電気的に接続されている。ここに、入力端子および出力端子は、それぞれ不平衡型端子である。
【0003】
また、特許文献2の、例えば図11に示す2ポート型非可逆回路素子は、入力側の第1中心電極の一端が接地され、他端は不平衡型入力端子に電気的に接続されている。第1中心電極の他端とアースとの間には整合用コンデンサが電気的に接続されている。出力側の第2中心電極の一端および他端はそれぞれ整合用コンデンサを介して平衡型出力端子に電気的に接続されている。そして、第1中心電極の他端と第2中心電極の他端の間に抵抗が電気的に接続されている。さらに、第2中心電極の一端と他端の間に整合用コンデンサが電気的に接続されている。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4016510号明細書
【0005】
【特許文献2】
特開2002−299916号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の2ポート型非可逆回路素子は、入力端子および出力端子がともに不平衡型端子であるため、このままでは平衡回路に接続することができない。そこで、平衡回路に接続する際には、非可逆回路素子の入力側および出力側に平衡−不平衡変換器(バラン)を挿入していた。このように、バランと非可逆回路素子を組み合わせると、大型かつ高コストになり、複雑化して信頼性が低下する。
【0007】
また、特許文献2の2ポート型非可逆回路素子は、二つある平衡型出力端子のうち一方の出力端子のみが、抵抗を介して不平衡型入力端子に電気的に接続している。このため、二つの平衡型出力端子のバランスが悪かった。バランスが悪くなると、非可逆回路素子の同相信号除去比が小さくなり、二つの平衡型端子にそれぞれ同位相で入力される信号が出力されてしまう度合いが大きくなる。その結果、本来伝達されるべき信号波以外の不要波が非可逆回路素子を通り抜けてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、平衡−不平衡変換器を介さないで平衡回路に接続することができるとともに、同相信号除去比が大きい2ポート型非可逆回路素子、それを備えた複合電子部品および通信装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る2ポート型非可逆回路素子は、
(a)永久磁石と、
(b)永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
(c)フェライトに配置された第1中心電極と、
(d)第1中心電極と電気的絶縁状態で交差してフェライトに配置された第2中心電極と、
(e)第1中心電極の一端と第2中心電極の一端の間に電気的に接続された第1抵抗と、
(f)第1中心電極の他端と第2中心電極の他端の間に電気的に接続された第2抵抗と、
(g)第1中心電極の一端に電気的に接続された第1端子および他端に電気的に接続された第2端子と、
(h)第2中心電極の一端に電気的に接続された第3端子および他端に電気的に接続された第4端子とを備え、
(i)第1端子および第2端子が平衡入力端子であり、第3端子および第4端子が平衡出力端子であること、
を特徴とする。第1抵抗と第2抵抗の抵抗値は略等しいことが好ましい。また、フェライトは平面視で平行四辺形であることが好ましい。
【0010】
以上の構成からなる2ポート型非可逆回路素子は、平衡−不平衡変換器を介さないで、平衡回路に接続可能である。
【0011】
また、2ポート型非可逆回路素子と該2ポート型非可逆回路素子に接続する平衡回路とのインピーダンス整合をとるため、例えば、中心電極の両端間を整合用コンデンサで電気的に接続したり、中心電極の各端とアースとの間をそれぞれ整合用コンデンサで電気的に接続したり、中心電極の各端と第1〜第4端子との間をそれぞれ整合用コンデンサで電気的に接続したりしている。
【0012】
また、本発明に係る複合電子部品は、前述の特徴を有する2ポート型非可逆回路素子と、2ポート型非可逆回路素子に電気的に接続された電力増幅器とを備え、電力増幅器の平衡出力端子が2ポート型非可逆回路素子の平衡入力端子に電気的に接続されていることを特徴とする。この複合電子部品は、後段回路の動作状態、あるいは、動作環境にかかわらず、電力増幅器の出力端から見た負荷インピーダンスが一定となる。従って、電力増幅器の電力負荷効率や出力歪み特性などが常に最良の状態となる。
【0013】
また、本発明に係る通信装置は、前述の特徴を有する2ポート型非可逆回路素子や複合電子部品を備えることにより、小型で優れた耐負荷変動安定性を有する通信装置が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る2ポート型非可逆回路素子、複合電子部品および通信装置の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0015】
[第1実施形態、図1〜図4]
図1に示すように、2ポート型アイソレータ1は、概略、金属製下側ケース4と、樹脂製端子ケース3と、中心電極組立体13と、金属製上側ケース8と、永久磁石9と、絶縁性部材7と、抵抗R1,R2と、整合用コンデンサC1〜C4を備えている。
【0016】
金属製下側ケース4および金属製上側ケース8は磁気回路を形成するため、例えば軟鉄などの強磁性体からなる材料で形成されている。その表面にはAgやCuをめっきして、挿入損失特性の改善を図っている。絶縁性部材7には、LCP(液晶ポリマ)、PPS、PBT、PEEK、エポキシなどの誘電体材料が用いられる。
【0017】
中心電極組立体13は、円板状のマイクロ波フェライト20の上面に、第1中心電極21および第2中心電極22を電気的絶縁状態で、それぞれの交差角が略90度になるように配置している。フェライト20は、通常、YIGフェライトで作製される。第1中心電極21は両端に接続部26,27を有し、第2中心電極22は両端に接続部28,29を有している。フェライト20の下面にはアース電極25が設けられている。中心電極組立体13は、フェライト20の下面に設けられたアース電極25が、樹脂製端子ケース3の窓部3cを通して、金属製下側ケース4の底壁4bにはんだ付け等の方法により接続され、接地される。
【0018】
中心電極21,22は、各動作周波数に対応してある程度の値のインダクタンスを持っているのが望ましい。中心電極21,22のインダクタンス値は、アイソレータ1の動作帯域幅や中心周波数における入力インピーダンスを決定する重要な要素の一つだからである。一方、中心電極21,22の幅はフェライト20の直径の20〜45%であるのが好ましい。中心電極21,22の幅がフェライト20の直径の20%未満になると、フェライト20中の高周波磁束のうち、フェライト主面と垂直な成分、換言すれば、直流バイアス磁界と平行な成分が増加してしまうからである。そのような直流バイアス磁界と平行なフェライト20中の高周波磁界成分は、中心電極21,22間の非可逆な磁気的結合に寄与しない。そのため、中心電極21と22間の結合係数が下がり、アイソレータ1の挿入損失や反射損失などの動作周波数帯域幅が劣化することとなる。
【0019】
逆に、中心電極21,22の幅がフェライト20の直径の45%を越えると、中心電極21,22の隣り合う接続部26と28、並びに27と29が干渉し合って短絡し、特性不良となる。さらに、フェライト20の側面に形成される導体の面積が広くなり、高周波磁束の自由な出入りが阻害され、挿入損失が大きくなるなどの不具合が発生する。
【0020】
そこで、所望のインダクタンス値を得つつ、中心電極21,22の幅をフェライト20の直径の20〜45%にするために、本第1実施形態では、中心電極21,22をそれぞれ2本のラインで構成し、その2本のライン全体の幅方向の寸法をフェライト20の直径の20〜45%に設計した。なお、ラインは2本〜4本程度が適当である。
【0021】
中心電極21,22には、例えば、厚さが0.01〜0.1mm程度の銅板(銅箔)を使用する。安価で加工性に優れ、低抵抗率を有しているために低挿入損失を実現できるからである。あるいは、黄銅、りん青銅、ベリリウム銅などの同合金の表面に、銀や銅など良導体の皮膜をめっきや蒸着などの方法で形成した材料でもよい。この場合、皮膜と母材の間に下皮膜を形成すると、皮膜の付着強度が安定するとともに、防錆効果も得られる。具体的には、0.1〜5μmの銅かニッケルの下地めっきの上に、0.5〜10μmの銀めっきを施す。
【0022】
中心電極21,22は、接着性または粘着性のある絶縁フィルムでフェライト20に固定されている。フィルムの材質はポリイミドやアラミド、ポリエステル、ナイロン、テフロン(登録商標)、ゴアテックス(登録商標)などが用いられる。フィルムの厚みは0.010〜0.15mm程度が最もよく用いられる。接着剤または粘着剤としては、シリコン系、アクリル系、エポキシ系、合成ゴム系などがあり、接着の方法としては、感圧(押せば付く)、熱硬化、紫外線硬化、空気中の水分と触れることによる硬化等がある。
【0023】
図2に示すように、樹脂製端子ケース3には、平衡入力端子14,15と平衡出力端子16,17と二つのアース端子18がインサートモールドされている。これらの端子14〜18は、一端が樹脂製端子ケース3の対向する側壁3aからそれぞれ外方向へ導出され、他端が樹脂製端子ケース3の底部3bに露出してそれぞれ平衡入力引出し電極部14a,15a、平衡出力引出し電極部16a,17aおよびアース引出し電極部18aを形成している。平衡入力引出し電極部14a,15aおよび平衡出力引出し電極部16a,17aは、それぞれ中心電極21,22の接続部26,27,28,29にはんだ付けされている。樹脂製端子ケース3の材料には、LCP(液晶ポリマ)、PPS、PBT、PEEK、エポキシなどの耐熱性樹脂が用いられる。
【0024】
整合用コンデンサC1〜C4は、誘電体基板の表裏面にそれぞれホット側コンデンサ電極およびコールド側コンデンサ電極を形成した単板型コンデンサである。整合用コンデンサC1〜C4は、ホット側コンデンサ電極が中心電極21,22の接続部26〜29にそれぞれはんだ付けされ、コールド側コンデンサ電極が樹脂製端子ケース3に露出しているアース引出し電極部18aにそれぞれはんだ付けされている。
【0025】
抵抗R1の一方の端子電極は中心電極21の接続部26に接続され、他方の端子電極は中心電極22の接続部28に接続されている。抵抗R2の一方の端子電極は中心電極21の接続部27に接続され、他方の端子電極は中心電極22の接続部29に接続されている。図3はアイソレータ1の内部の電気的接続状態を示したものである。平面視矩形の永久磁石9には、通常、ストロンチウム系、バリウム系、ランタン系のフェライト磁石が使用される。
【0026】
以上の構成からなる各部品は、例えば次のようにして組み立てられる。図1に示すように、樹脂製端子ケース3の下方から金属製下側ケース4を装着する。次に、この樹脂製端子ケース3内に、中心電極組立体13や整合用コンデンサC1〜C4や抵抗R1,R2を収容し、金属製上側ケース8を装着する。金属製上側ケース8と中心電極組立体13の間には、永久磁石9および絶縁性部材7が配置される。永久磁石9は中心電極組立体13に直流磁界Hを印加する。下側ケース4と上側ケース8ははんだ付け、溶接、接着剤、機械的嵌合またはこれらの組み合わせにより、接合して金属ケースをなし、磁気回路を構成しており、ヨークとしても機能している。
【0027】
図4はアイソレータ1の電気等価回路図である。第1中心電極21の接続部26,27はそれぞれ平衡入力端子14,15に電気的に接続されている。第2中心電極22の接続部28,29はそれぞれ平衡出力端子16,17に電気的に接続されている。平衡入力端子14と平衡出力端子16の間、並びに、平衡入力端子15と平衡出力端子17の間には、それぞれ抵抗R1,R2が電気的に接続されている。第1および第2中心電極21,22のそれぞれの接続部26〜29とアースとの間には整合用コンデンサC1〜C4が電気的に接続されている。
【0028】
平衡入力端子14,15間に平衡信号(差動信号)が入力されると、第1中心電極21に電流が流れ、フェライト20に高周波磁界が発生する。この高周波磁界によって、第1中心電極21に磁気的に結合している第2中心電極22に電流が流れる。このとき、第1中心電極21に流れる電流と第2中心電極22に流れる電流とが同相になるように、言い換えると、接続部26と28の間、並びに、接続部27と29の間にそれぞれ電位差が発生しないように、中心電極21と22の交差角や形状、永久磁石9の直流バイアス磁界および整合用コンデンサC1〜C4の静電容量値が調整されている。抵抗R1,R2の両端は同電位となり、抵抗R1,R2に電流が流れない。これにより、平衡信号は、平衡入力端子14,15から平衡出力端子16,17に伝送される。抵抗R1,R2に電流が流れないので、電力損失は非常に小さい。
【0029】
逆に、平衡出力端子16,17間に平衡信号(差動信号)が入力されると、第2中心電極22に電流が流れ、フェライト20に高周波磁界が発生する。この高周波磁界によって、第2中心電極22に磁気的に結合している第1中心電極21に電流が流れる。このとき、第1中心電極21の両端の接続部26,27に発生する電圧がゼロであるときに、入力した平衡信号の大部分の電力が抵抗R1,R2で消費されるように、中心電極21と22の交差角や形状、永久磁石9の直流バイアス磁界および整合用コンデンサC1〜C4の静電容量値が調整されている。これにより、平衡信号は、抵抗R1,R2に大部分の電力が消費され、平衡出力端子16,17から平衡入力端子14,15に殆ど伝送されない。
【0030】
このとき、二つの抵抗R1とR2の抵抗値を略等しく設定することにより、アイソレータ1の平衡度が良好となる。すなわち、アイソレータ1の同相信号除去比が大きくなる。同相信号除去比が大きくなると、平衡出力端子16,17に同位相で入力された平衡信号が平衡入力端子14,15に伝達される度合いが小さくなる。その結果、本来伝達されるべき平衡信号波以外の不要波がアイソレータ1を通り抜けにくくなり、より一層伝達されにくくなる。
【0031】
同様に、中心電極21の両端に接続されている二つの整合用コンデンサC1とC2の静電容量を略等しく設定するとともに、中心電極22の両端に接続されている二つの整合用コンデンサC3とC4の静電容量を略等しく設定することによっても、アイソレータ1の平衡度が良好となり、同相信号除去比が大きくなる。
【0032】
このアイソレータ1は、平衡−不平衡変換器を介さないで、平衡回路に接続することができる。従って、回路を小型かつ低コストにすることができる。また、平衡−不平衡変換器を省略できるため、挿入損失や不要輻射が少なく、かつ、使用可能な周波数帯域が広がる。
【0033】
また、アイソレータ1の動作中心周波数や動作周波数帯域幅は、中心電極21,22の形状や交差角度、フェライト20の寸法や形状や特性(飽和磁化4πMs、磁気損失係数ΔH、誘電率、誘電損失など)、整合用コンデンサC1〜C4の静電容量値および永久磁石9の直流バイアス磁界にて決定される。このとき、アイソレータ1の寸法やフェライト20の形状やサイズに制約があっても、整合用コンデンサC1〜C4の静電容量値を調整することにより、最良の挿入損失や動作周波数帯域幅などの電気特性を実現しつつ、所望の中心周波数と入力インピーダンスを得ることができる。
【0034】
また、整合用コンデンサC1〜C4は全てコールド側コンデンサ電極がアース引出し電極部18aに接続されている。そのため、整合用コンデンサC1〜C4は構造的に安定した横置き構造を採ることができ、組み立て作業が容易である。さらに、整合用コンデンサC1〜C4とアースとの間に発生する浮遊容量も最小となるので、電気特性のばらつきが小さいアイソレータ1を得ることができる。
【0035】
また、整合用コンデンサC1〜C4のホット側コンデンサ電極や抵抗R1,R2の端子電極、あるいは、入出力引出し電極部14a〜17aなどのアース電位でない電極が、中心電極21,22の接続部26〜29によって殆ど覆われる構造であるため、不要電磁波の輻射を最少にすることができる。2ポート型アイソレータの場合、アイソレーションが広帯域にわたって20〜30dB以上あるような仕様が要求されることも多く、不要輻射の発生を最小限にすることができる本構造は有利である。
【0036】
[第2実施形態、図5]
第2実施形態の2ポート型アイソレータは、図5に示されている中心電極組立体43を備えたものである。
【0037】
中心電極組立体43は、平面視形状が平行四辺形のマイクロ波フェライト44と、絶縁体を被覆した2本の導線を交差角が略90度になるように交差させてフェライト44の表面に巻回してなる中心電極45,46とで構成されている。フェライト44の平面視形状は、四角形(正方形、長方形)または菱形がより好ましい。さらに、円形であってもよい。
【0038】
導線の材料としては、例えば、銅線、銀線、あるいは、鋼線を金や銀や銅で被覆したものが用いられる。また、導線は横断面が円形や矩形のものでもよい。導線は、ポリエステル、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリウレタン、エナメルなどの絶縁体で被覆されている。ただし、導線は必ずしも絶縁体で被覆されている必要はない。その場合、二つの中心電極45と46の間に絶縁フィルムを挟むとよい。また、一つの中心電極45(または46)の隣り合う部分が短絡しないように、その部分に間隙を設けたり、絶縁材を間に配置したりするとよい。
【0039】
フェライト44の表面に中心電極45,46が巻回されているので、中心電極組立体43と金属製ケースなどとの間には0.1mm以上の間隙を設けるとよい。0.1mm以上の厚みの誘電体部材やフェライトやフェライトマグネットを、中心電極組立体43と金属製ケースの間に配設してもよい。
【0040】
第1および第2中心電極45,46はそれぞれ、両端部47,48、49,50の被覆絶縁体が除去されている。各端部47〜50は、整合用コンデンサC1〜C4のホット側コンデンサ電極にはんだ付けされている。抵抗R1の一方の端子電極は端部47にはんだ付けされ、他方の端子電極は端部49にはんだ付けされている。抵抗R2の一方の端子電極は端部50にはんだ付けされ、他方の端子電極は端部48にはんだ付けされている。
【0041】
以上の構成からなる2ポート型アイソレータ41は、前記第1実施形態の2ポート型アイソレータ1と同様の作用効果を奏する。さらに、第2実施形態の2ポート型アイソレータ41は、中心電極45,46をフェライト44に巻回しているため、小型のフェライト44を用いても必要なインダクタンス値を得ることができる。その結果、動作周波数帯域が広帯域なアイソレータ41を、電気特性を劣化させることなく、小型化させることができる。
【0042】
また、等しい飽和磁化と等しい厚みを有したフェライト44を用いて、同じ動作周波数帯用のアイソレータを設計する場合でも、第1実施形態のアイソレータ1と比べて、第2実施形態のアイソレータ41の方がフェライト44の平面視形状を小さくできる。従って、フェライト44の反磁界係数Nが小さくなり、永久磁石により印加される直流磁界が小さくても良い。その結果、永久磁石を薄くすることができ、アイソレータ41の薄型化も可能となる。
【0043】
また、平面視形状が平行四辺形のフェライト44を使用して、フェライト44の隣接する側面がなす角度を必要な角度に設定することで、中心電極45,46の交差角度を容易に安定させることができる。その結果、アイソレータ41の挿入損失やアイソレーションを向上させることができる。さらに、フェライト44の対向する側面間の距離を所定の寸法に設定することで、中心電極45,46の長さ、すなわちインダクタンス値を容易にかつばらつきなく設定することができる。
【0044】
[第3および第4実施形態、図6および図7]
図6は、第3実施形態のアイソレータ51の電気等価回路図である。第1中心電極21の一端および他端はそれぞれ平衡入力端子14,15に電気的に接続されている。第2中心電極22の一端および他端はそれぞれ平衡出力端子16,17に電気的に接続されている。平衡入力端子14と平衡出力端子16の間、並びに、平衡入力端子15と平衡出力端子17の間には、それぞれ抵抗R1,R2が電気的に接続されている。第1中心電極21の一端と他端の間には整合用コンデンサC9が電気的に接続され、第2中心電極22の一端と他端の間には整合用コンデンサC10が電気的に接続されている。整合用コンデンサの数や接続箇所が少なくてすむので、安価かつ小型で、信頼性の高いアイソレータ51が得られる。
【0045】
図7は、第4実施形態のアイソレータ61の電気等価回路図である。このアイソレータ61は、前記第1実施形態のアイソレータ1において、平衡入力端子14,15および平衡出力端子16,17が、それぞれ整合用コンデンサC5,C6,C7,C8を介して中心電極21,22に電気的に接続されたものと同様のものである。整合用コンデンサC5〜C8は直流電圧阻止コンデンサとしても機能する。従って、アイソレータ61を挟んで前段回路と後段回路が信号線で電気的に接続されているとき、例えば前段回路に直流電圧が重畳されており、なおかつ、その直流電圧を後段回路に伝えたくない場合などに有効である。
【0046】
[第5実施形態、図8]
図8に示すように、2ポート型アイソレータ71は、概略、金属製下側ケース74と金属製上側ケース78とからなる金属ケースと、永久磁石79と、中心電極組立体90と、終端抵抗R1,R2および整合用コンデンサC1〜C4を内蔵した矩形状の積層基板100を備えている。
【0047】
中心電極組立体90は、平面視形状が長方形のマイクロ波フェライト93の上面に2組の中心電極91,92を絶縁層(図示せず)を介在させて略90度で交差するように配置している。本第5実施形態では、中心電極91,92をそれぞれ二つのラインで構成した。
【0048】
中心電極91,92は銅箔を用いてフェライト93に貼り付けてもよいし、フェライト93上にAg,Au,Ag−Pd,Cuなどの導電ペーストを印刷して形成してもよい。導電ペーストには感光性樹脂が含まれており、導電ペーストをフェライト93の全面に印刷した後、露光、現像して不要部分を除去してから焼成する。これにより、位置精度の高い厚膜の中心電極91,92が形成されるので、安定な電気特性が得られる。
【0049】
積層基板100は、中心電極用接続電極81〜84などを設けた誘電体シートと、コンデンサ電極や抵抗R1,R2などを表面に設けた誘電体シートと、平衡入力端子114,115、平衡出力端子116,117およびグランド端子118などにて構成されている。
【0050】
この積層基板100は、以下のようにして作製される。すなわち、誘電体シートは、Alを主成分とし、SiO,SrO,CaO,PbO,NaO,KO,MgO,BaO,CeO,Bのうちの1種類あるいは複数種類を副成分として含む低温焼結誘電体材料にて作製する。
【0051】
さらに、積層基板100の焼成条件(特に焼成温度1000℃以下)では焼成せず、積層基板100の基板平面方向(X−Y方向)の焼成収縮を抑制する収縮抑制シートを作製する。この収縮抑制シートの材料は、アルミナ粉末および安定化ジルコニア粉末の混合材料である。
【0052】
中心電極用接続電極81〜84やコンデンサ電極は、スクリーン印刷やフォトリソグラフィ等の方法により誘電体シートに形成されている。電極81〜84等の材料としては、抵抗率が低く、誘電体シートと同時焼成可能なAg,Cu,Ag−Pdなどが用いられる。
【0053】
抵抗R1,R2は、スクリーン印刷等の方法により誘電体シートの表面に形成されている。抵抗R1,R2の材料としては、サーメット、カーボン、ルテニウムなどが使用される。
【0054】
信号用ビアホールは、誘電体シートにレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔を形成した後、そのビアホール用孔に導電ペーストを充填することにより形成される。一般に、導電ペーストの材料としては、電極81〜84等と同一の材料(Ag,Cu,Ag−Pdなど)が用いられる。
【0055】
コンデンサ電極はそれぞれ、誘電体シートを間に挟んで対向して整合用コンデンサC1〜C4を構成する。これら整合用コンデンサC1〜C4や抵抗R1,R2は、電極81〜84や信号用ビアホールとともに、積層基板100の内部に図4と同様の電気回路を構成する。
【0056】
以上の誘電体シートは積層され、さらに、その上下に収縮抑制シートが積層された後、焼成される。これにより、焼結体が得られ、その後、超音波洗浄法や湿式ホーニング法によって、未焼結の収縮抑制材料を除去し、積層基板100とする。
【0057】
積層基板100の底面には、平衡入力端子114,115、平衡出力端子116,117およびグランド端子118が突出して配設されている。これらの厚膜の端子114〜118の表面には1〜10μmのNiめっきが施され、さらに、その表面に0.5μm以下の金めっきが施されている。これは、端子114〜118のはんだ付け性(はんだ濡れ性)改善、はんだへの溶融(はんだ喰われ)防止、マイグレーション防止を目的としている。
【0058】
以上の構成部品は以下のようにして組み立てられる。すなわち、永久磁石79は金属製上側ケース78の天井に接着剤によって固定される。積層基板100上には、中心電極組立体90が、中心電極組立体90の中心電極91,92の各々の端部が積層基板100の表面に形成された中心電極用接続電極81〜84にはんだ付けされることにより、実装される。
【0059】
積層基板100は金属製下側ケース74の底部74b上に載置され、積層基板100の裏面に設けたグランド電極がはんだによって底部74bに固定されるとともに電気的に接続される。
【0060】
このアイソレータ71は、中心電極91,92や積層基板100の形成にスクリーン印刷やフォトリソグラフィ技術を用いているため、複雑な回路や配線を高精度に形成することができる。そのため、帯域通過フィルタ(BPF)や低域通過フィルタ(LPF)、帯域除去フィルタ(BEF、ノッチフィルタ)、方向性結合器、静電容量による結合器などをアイソレータ71内に容易に作り込むことも可能である。
【0061】
[第6〜第8実施形態、図9〜図11]
図9は、前記第1実施形態のアイソレータ1と平衡型増幅器121,122とを接続した複合電子部品120の電気回路図である。図9において、R11〜R14は抵抗、SL1〜SL12はインダクタンス、Tr1,Tr2は初段の電界効果型トランジスタ、TR3,TR4は終段の電界効果型トランジスタ、C11〜C21はコンデンサである。
【0062】
この複合電子部品120は、後段回路の動作状態(例えば、後段回路の電源供給の有無や電源電圧の状態)、あるいは、動作環境(例えば、周囲温度やアンテナ素子などの負荷装置の動作状況)にかかわらず、平衡型増幅器122の出力端から見た負荷インピーダンスが一定となる。その結果、平衡型増幅器121,122の電力負荷効率や出力歪み特性などを常に最良の状態で保つことができる。
【0063】
また、図10は、第1実施形態のアイソレータを平衡型発振器132と平衡型周波数混合器(ミキサ)134の間に挿入した場合の電気回路ブロック図である。図10において、131は可変容量ダイオード、133,135,137は平衡型増幅器、136は平衡型フィルタ(例えば表面弾性波フィルタ)である。
【0064】
この回路は、平衡型周波数混合器134や平衡型フィルタ136の動作状態、あるいは、この回路の動作環境にかかわらず、平衡型増幅器133の出力端から見た負荷インピーダンスが一定となる。その結果、平衡型発振器132の発振周波数や出力電力などが変動せず、最良の動作状態を常に保つことができる。特に、平衡型周波数混合器134の電源が断続的に供給されている場合でも、平衡型発振器132の発振周波数が瞬間的に変動しない。
【0065】
また、図11は、第1実施形態のアイソレータ1を通信装置である携帯電話150のRF部分に組み込んだ電気回路ブロック図である。図11において、138は平衡型変調器/復調器、139,142は平衡型フィルタ、140は平衡型周波数混合器、141,143は平衡型増幅器である。アイソレータ1の平衡出力端子の一方は受信機部分の周波数混合器134に接続され、他方は送信機部分の周波数混合器140に接続されている。
【0066】
この回路は、平衡型発振器132の発振周波数や出力電力などが変動せず、最良の動作状態を常に保つことができる。特に、送信機部分の周波数混合器140の電源が断続的に供給されている場合でも、受信機部分に供給される発振器132の出力が瞬間的に変動しない。また、このアイソレータ1は発振器132の出力を分配する機能も有している。
【0067】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、本発明に係る2ポート型非可逆回路素子は、アイソレータ以外に、カップラー内蔵の非可逆回路素子などであってもよい。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、平衡入出力端子を有しているので、平衡−不平衡変換器を介さないで、2ポート型非可逆回路素子を平衡回路に接続することができる。また、第1中心電極の一端と第2中心電極の一端の間に電気的に接続された第1抵抗の抵抗値と、第1中心電極の他端と第2中心電極の他端の間に電気的に接続された第2抵抗の抵抗値とを、略等しく設定しているので、2ポート型非可逆回路素子の同相信号除去比が大きくなる。この結果、本来伝達されるべき平衡信号波以外の不要波が2ポート型非可逆回路素子を通り抜けにくくなり、より一層伝達されにくくなる。
【0069】
同様に、第1中心電極および第2中心電極の少なくともいずれか一つの中心電極の両端とアースとの間にそれぞれ電気的に接続されている二つの整合用コンデンサの静電容量値を略等しく設定することによっても、2ポート型非可逆回路素子の同相信号除去比を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る2ポート型非可逆回路素子の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した2ポート型非可逆回路素子の内部平面図。
【図3】図1に示した2ポート型非可逆回路素子の内部接続状態を示す概略構成図。
【図4】図1に示した2ポート型非可逆回路素子の電気等価回路図。
【図5】本発明に係る2ポート型非可逆回路素子の別の実施形態を示す概略構成図。
【図6】本発明に係る2ポート型非可逆回路素子のさらに別の実施形態を示す電気等価回路図。
【図7】本発明に係る2ポート型非可逆回路素子のさらに別の実施形態を示す電気等価回路図。
【図8】本発明に係る2ポート型非可逆回路素子のさらに別の実施形態を示す分解斜視図。
【図9】本発明に係る複合電子部品の一実施形態を示す電気回路図。
【図10】図1に示した2ポート型非可逆回路素子を組み込んだ回路の一例を示す電気回路ブロック図。
【図11】本発明に係る通信装置の一実施形態を示す電気回路ブロック図。
【符号の説明】
1,41,51,61,71…2端子型アイソレータ
4,74…金属製下側ケース
8,78…金属製上側ケース
9,79…永久磁石
14,15,114,115…平衡入力端子
16,17,116,117…平衡出力端子
20,44,93…フェライト
21,45,91…第1中心電極
22,46,92…第2中心電極
120…複合電子部品
150…携帯電話
R1,R2…抵抗
C1〜C10…整合用コンデンサ

Claims (9)

  1. 永久磁石と、
    前記永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
    前記フェライトに配置された第1中心電極と、
    前記第1中心電極と電気的絶縁状態で交差して前記フェライトに配置された第2中心電極と、
    前記第1中心電極の一端と前記第2中心電極の一端の間に電気的に接続された第1抵抗と、
    前記第1中心電極の他端と前記第2中心電極の他端の間に電気的に接続された第2抵抗と、
    前記第1中心電極の一端に電気的に接続された第1端子および他端に電気的に接続された第2端子と、
    前記第2中心電極の一端に電気的に接続された第3端子および他端に電気的に接続された第4端子とを備え、
    前記第1端子および第2端子が平衡入力端子であり、前記第3端子および第4端子が平衡出力端子であること、
    を特徴とする2ポート型非可逆回路素子。
  2. 前記第1中心電極の一端と他端の間に整合用コンデンサが電気的に接続されるとともに、前記第2中心電極の一端と他端の間に整合用コンデンサが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の2ポート型非可逆回路素子。
  3. 前記第1中心電極および第2中心電極の一端もしくは他端の少なくとも一つとアースとの間に整合用コンデンサが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2ポート型非可逆回路素子。
  4. 前記第1中心電極および第2中心電極の少なくともいずれか一つの中心電極の両端とアースとの間にそれぞれ整合用コンデンサが電気的に接続され、一つの中心電極の両端に電気的に接続されている二つの整合用コンデンサの静電容量値が略等しいことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の2ポート型非可逆回路素子。
  5. 前記第1端子、第2端子、第3端子および第4端子の少なくとも一つが整合用コンデンサを介して前記第1中心電極もしくは第2中心電極に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の2ポート型非可逆回路素子。
  6. 前記第1抵抗と前記第2抵抗の抵抗値が略等しいことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の2ポート型非可逆回路素子。
  7. 前記フェライトが平面視で平行四辺形であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の2ポート型非可逆回路素子。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか一つに記載の2ポート型非可逆回路素子と、
    前記2ポート型非可逆回路素子に電気的に接続された電力増幅器とを備え、
    前記電力増幅器の平衡出力端子が前記2ポート型非可逆回路素子の平衡入力端子に電気的に接続されていること、
    を特徴とする複合電子部品。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の2ポート型非可逆回路素子、および、請求項8に記載の複合電子部品の少なくとも一つを備えたことを特徴とする通信装置。
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