JP2004278765A - ボルトおよび内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボルトに軸方向荷重を作用させる外力が作用する被締結部材に形成されたネジ孔の雌ネジ部に発生する集中応力を低減するボルトを提供することを目的とする。
【解決手段】内燃機関のクランク軸は、クランクケースの上部支持壁31と上部支持壁31にボルト40により締結された下部支持壁により回転可能に支持される。ボルト40は上部支持壁31に形成されたネジ孔34にねじ込まれてネジ孔34の雌ネジ部35と螺合した雄ネジ部44を有する。上部支持壁31の許容応力はボルト40の許容応力よりも小さく、ボルト40には上部支持壁31に作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用する。雄ネジ部44には、雌ネジ部35の螺合終端部Raと軸方向A2で重なる位置に、雄ネジ部44の中心軸線L3と同心の円孔45が形成された低剛性部44bが設けられる。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被締結部材に形成されたネジ孔にねじ込まれるボルト、および該ボルトが使用された内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のボルトとして、例えば特許文献1に開示されたものがある。2つの被締結部材を締結するこのボルトにおいて、一方の被締結部材に形成された貫通孔からなる螺孔にねじ込まれる螺軸の先端部には、工具が挿入可能な六角形などの凹穴が形成される。そして、ボルトが螺軸で破断したときには、螺孔の開口から凹穴に挿入された工具により螺軸が弛められて、螺孔から螺軸が取り除かれる。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載されているように、外力が作用する被締結部材を締結するボルトの場合、該被締結部材に作用する外力に基づく軸方向荷重がボルトに作用するとき、該被締結部材に形成されたネジ孔の雌ネジ部の、雄ネジ部の先端部と螺合する部分に集中応力が発生することが知られている。
【0004】
【特許文献1】
登録実用新案第3016308号公報
【特許文献2】
実願昭63−39229号(実開平1−143418号)のマイクロフィルム
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1に開示された技術では、凹穴は工具を挿入するためのものであり、しかも螺孔が形成された前記一方の被締結部材に外力が作用するかは不明であるうえ、前記一方の被締結部材の許容応力とボルトの許容応力との関係も不明であることから、該外力に基づく軸方向荷重がボルトに作用したときに、螺軸の先端部が螺合する雌ネジ部に発生する集中応力を低減することについては考慮されていない。さらに、凹穴が形成された螺軸での径方向の肉厚は周方向に同一ではない。
【0006】
また、ボルトが内燃機関において爆発荷重が作用する被締結部材の締結に使用される場合には、雌ネジ部に発生する前述の集中応力を低減する際には、ボルトよりも許容応力が小さい被締結部材の強度低下を極力回避することが好ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜3記載の発明は、ボルトに軸方向荷重を作用させる外力が作用する被締結部材に形成されたネジ孔の雌ネジ部に発生する集中応力を低減するボルトを提供することを目的とする。そして、請求項2,3記載の発明は、さらに、請求項1記載のボルトが使用される内燃機関において、ボルトに軸方向荷重を作用させる爆発荷重が作用する機関本体の構成部材に該ボルトがねじ込まれるネジ孔が形成される場合に、該構成部材の強度低下を防止すること、もしくは強度を向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、第1被締結部材と第2被締結部材とを締結するボルトであって、前記第1被締結部材に形成されたネジ孔にねじ込まれて該ネジ孔の雌ネジ部と螺合した雄ネジ部を有するボルトにおいて、前記ボルトには前記第1被締結部材に作用する外力に基づく軸方向荷重が作用し、前記雄ネジ部には、前記雌ネジ部における前記雄ネジ部との螺合部分のうちの螺合終端部と軸方向で重なる位置に、前記雄ネジ部の中心軸線と同心の断面が円形の中空部が形成された低剛性部が形成されているボルトである。
【0009】
これによれば、雄ネジ部において中空部が形成された低剛性部では、雄ネジ部が中実である場合に比べて剛性が低下しているので、第1被締結部材に作用する外力に基づいてボルトに軸方向荷重が作用したとき、低剛性部が比較的容易に弾性変形するため、雄ネジ部のねじ山から螺合終端部のねじ山に作用する荷重が緩衝される。しかも、中空部の断面は円形であるため、螺合終端部のねじ山に作用する雄ネジ部のネジ山から荷重は、螺合終端部に対してその周方向で均等に緩衝される。
【0010】
この結果、請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、第1被締結部材に作用する外力に基づく軸方向荷重が作用するボルトのねじ山からネジ孔の螺合終端部のねじ山に作用する荷重が緩衝されるので、螺合終端部の谷底を形成する谷底部に発生する集中応力が低減する。しかも、集中応力は螺合終端部のねじ山の周方向で均等に低減するので、第1被締結部材の強度設計が容易になる。
【0011】
請求項2記載の発明は、クランク軸がクランクケースに設けられた第1軸受部と該第1軸受部にボルトにより締結された第2軸受部とにより回転可能に支持され、前記ボルトは前記第1軸受部に形成されたネジ孔にねじ込まれて該ネジ孔の雌ネジ部と螺合した雄ネジ部を有する内燃機関において、前記第1軸受部の許容応力は前記ボルトの許容応力よりも小さく、前記ボルトには前記第1軸受部に作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用し、前記雄ネジ部には、前記雌ネジ部における前記雄ネジ部との螺合部分のうちの螺合終端部と軸方向で重なる位置に、前記雄ネジ部の中心軸線と同心の断面が円形の中空部が形成された低剛性部が形成されている内燃機関である。
【0012】
これによれば、クランクケースを通じて爆発荷重が作用する第1軸受部のネジ孔にねじ込まれたボルトの低剛性部では、請求項1記載のボルトと同様に剛性が低下しているので、第1軸受部およびクランク軸を介して爆発荷重が作用する第2軸受部を締結するボルトに、該爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用したとき、低剛性部と螺合終端部との間で、請求項1と同様の作用がなされる。さらに、雄ネジ部から螺合終端部に作用する荷重の緩衝する手段である中空部は、ボルトに形成されるので、ネジ孔の空洞を大きくする必要がないか、または空洞を極力小さくできる。
【0013】
この結果、請求項2記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、第1軸受部に作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用するボルトのネジ山から螺合終端部のネジ山に作用する荷重が緩衝されるので、螺合終端部での谷底部に発生する集中応力が低減する。しかも、集中応力は雄ネジ部の周方向で均等に低減するので、第1軸受部の強度設計が容易になる。さらに、集中応力を低減するために、第1軸受部に形成されるネジ孔の空洞を大きくする必要がないか、または極力小さくできるので、第1軸受部の強度低下が防止され、もしくは強度が向上して、第1軸受部ひいては内燃機関の大型化および重量増を招来することなく、第1軸受部の所要の強度を確保できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、シリンダブロックとクランク軸を回転可能に支持するクランクケースとがボルトにより締結され、前記ボルトは前記クランクケースに形成されたネジ孔にねじ込まれて該ネジ孔の雌ネジ部と螺合した雄ネジ部を有する内燃機関において、前記クランクケースの許容応力は前記ボルトの許容応力よりも小さく、前記ボルトには前記クランクケースに作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用し、前記雄ネジ部には、前記雌ネジ部における前記雄ネジ部との螺合部分のうちの螺合終端部と軸方向で重なる位置に、前記雄ネジ部の中心軸線と同心の断面が円形の中空部が形成された低剛性部が形成されている内燃機関である。
【0015】
これによれば、爆発荷重が作用するクランクケースのネジ孔にねじ込まれたボルトの低剛性部では、請求項1記載のボルトと同様に剛性が低下しているので、クランクケースおよびシリンダブロックを締結するボルトに、該爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用したとき、低剛性部と螺合終端部との間で、請求項1と同様の作用がなされる。さらに、雄ネジ部から螺合終端部に作用する荷重の緩衝する手段である中空部は、ボルトに形成されるので、ネジ孔の空洞を大きくする必要がないか、または空洞を極力小さくできる。
【0016】
この結果、請求項3記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、クランクケースに作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用するボルトのネジ山から螺合終端部のネジ山に作用する荷重が緩衝されるので、螺合終端部での谷底部に発生する集中応力が低減する。しかも、集中応力は雄ネジ部の周方向で均等に低減するので、クランクケースの強度設計が容易になる。さらに、集中応力を低減するために、クランクケースに形成されるネジ孔の空洞を大きくする必要がないか、または極力小さくできるので、クランクケースの強度低下が防止され、もしくは強度が向上して、クランクケースひいては内燃機関の大型化および重量増を招来することなく、クランクケースの所要の強度を確保できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図5を参照して説明する。
図1〜図3は第1実施例を説明するための図である。図1,図2を参照すると、本発明に係るボルトであるジャーナルボルト40が使用された内燃機関Eは、自動二輪車などの車両に搭載されるDOHC型の直列4気筒4ストローク内燃機関である。内燃機関Eは、4つのシリンダ2が一体成形されたシリンダブロック1と、シリンダブロック1の下部であるスカート部から構成される上部クランクケース半体3aの下端部に多数のボルトにより結合された下部クランクケース半体3bと、シリンダブロック1の上端部に結合されたシリンダヘッド4と、シリンダヘッド4の上端部に結合されたヘッドカバー5とを構成部材として構成される機関本体を備える。
【0018】
各シリンダ2には、ピストン6が往復動可能に嵌合されて、シリンダヘッド4とピストン6との間には燃焼室7が形成される。また、上部クランクケース半体3aと下部クランクケース半体3bとからなるクランクケース3には、該クランクケース3により形成されるクランク室8内に収容されたクランク軸10が回転可能に支持される。そして、各ピストン6はコンロッド9を介してクランク軸10に連結され、ピストン6の往復運動がクランク軸10の回転運動に変換される。
【0019】
一方、シリンダヘッド4には、燃焼室7毎に、燃焼室7に開口する1対の吸気ポート11をそれぞれ開閉する1対の吸気弁12および燃焼室7に開口する1対の排気ポート(図示されず)をそれぞれ開閉する1対の排気弁(図示されず)が装着される。各吸気弁12および前記各排気弁は、タイミングチェーン13を有する伝動機構を介してクランク軸10に連動して、クランク軸10の1/2の回転速度で回転駆動される吸気カム軸14および排気カム軸(図示されず)を有する動弁装置Vにより、クランク軸10の回転に同期して所定の時期に開閉作動される。この動弁装置Vは、シリンダヘッド4とヘッドカバー5とから形成される動弁室15内に配置される。
【0020】
各シリンダ2において、図示されない吸気装置で形成された混合気が、ピストン6が下降する吸気行程で、開弁した1対の吸気弁12を通って吸気ポート11から燃焼室7内に吸入される。シリンダ2内に吸入された混合気は、圧縮行程で上昇するピストン6により圧縮された後、点火栓により点火されて燃焼し、膨張行程で燃焼ガスの圧力により下降するピストン6が、コンロッド9を介してクランク軸10を回転駆動する。燃焼ガスは、排気行程で、開弁した前記1対の排気弁を通って排気ガスとして燃焼室7から前記排気ポートに排出され、さらに排気装置(図示されず)を介して外部に排出される。
【0021】
上部クランクケース半体3aと下部クランクケース半体3bとの合わせ面16が含まれる仮想平面P上にほぼ位置する回転中心線L1を有するクランク軸10は、その複数の、この実施例では5つのジャーナル部10cにて、回転中心線L1の方向A1に間隔をおいて設けられるジャーナル部10cと同数の5つの軸受部分Bから構成される軸受装置により回転可能に支持される。
【0022】
クランクケース3の一側で、クランク室8外に突出するクランク軸10の一端部10aには、クランクケース3側から、始動電動機に一方向クラッチを介して駆動連結される始動用被動ギヤ17と、交流発電機18のロータとが、順次取り付けられる。被動ギヤ17および交流発電機18は、クランクケース3とそれに結合されたカバー19とにより形成される収容室20内に収容れる。また、クランクケース3の他側で、クランク室8外に突出するクランク軸10の他端部10bには、タイミングチェーン13が巻き掛けられる駆動スプロケット21が取り付けられる。駆動スプロケット21は、クランクケース3とそれに結合されたカバー22とにより形成される伝動室23内に収容される。
【0023】
ジャーナル部10cの外周に配置された主軸受である軸受メタル24を介して該ジャーナル部10cを回転可能に支持する各軸受部分Bは、上部クランクケース半体3aに設けられる第1軸受部としての上部ジャーナル支持壁31と、下部クランクケース半体3bに設けられて、ジャーナル部10cを挟む位置に配置された1対のジャーナルボルト40により上部ジャーナル支持壁31に締結される第2軸受部としての下部ジャーナル支持壁32とからなる。ここで、各上部ジャーナル支持壁31は上部クランクケース半体3aに一体成形され、各下部ジャーナル支持壁32は下部クランクケース半体3bに一体成形されている。なお、25は、両ジャーナル支持壁31,32を位置決めするためのピンである。
【0024】
図2を参照すると、各軸受部分Bにおいて、各ジャーナルボルト40は、下部ジャーナル支持壁32の下面に形成された締付け面に当接する頭部41と、軸部42とから構成される。軸部42は、下部ジャーナル支持壁32に形成された貫通孔からなる挿通孔33に挿通されて、上部ジャーナル支持壁31に形成されたネジ孔34にねじ込まれる。
【0025】
ここで、内燃機関Eの軽量化のために、シリンダブロック1および下部クランクケース半体3bは軽金属基合金からなる形成材料、例えばアルミニウム基合金から形成される。そして、シリンダブロック1および下部クランクケース半体3bの許容応力は、例えば鉄基合金からなる形成材料で形成されるジャーナルボルト40の許容応力よりも小さく設定されている。
【0026】
図3を併せて参照すると、合わせ面16に直交する中心軸線L2を有する有底のネジ孔34は、雌ネジが形成された雌ネジ部35と、雌ネジ部35とネジ孔34の底面37との間の非ネジ部36とを有する。また、合わせ面16に直交する中心軸線L3を有するジャーナルボルト40の軸部42は、円筒部43と、円筒部43よりも軸部42の先端面42a寄りの位置で雌ネジが形成された雄ネジ部44とを有する。
【0027】
各軸受部分Bにおいて、第1被締結部材としての上部ジャーナル支持壁31と第2被締結部材としての下部ジャーナル支持壁32とが、1対のジャーナルボルト40により締結された状態で、各ジャーナルボルト40の雄ネジ部44とネジ孔34の雌ネジ部35とは、螺合部分Rで互いに螺合する。この実施例では、雌ネジ部35における螺合部分Rは、雌ネジ部35の一部分である。その結果、雄ネジ部44の先端面42aよりも底面寄りの雌ネジ部35の部分は、雄ネジ部44と螺合しない非螺合部35fとなる。そして、非螺合部35fと非ねじ部36とにより、ネジ孔34において、ジャーナルボルト40により占有されない空間である空洞38が形成される。
【0028】
雄ネジ部44には、雌ネジ部35における螺合部分Rのうちの螺合終端部Ra、すなわち螺合部分Rにおける雄ネジ部44の先端部のネジ山44aの1ピッチが螺合するネジ溝35aを形成する部分であって、該ネジ溝35aを挟んで中心軸線L2の方向(後述する軸方向A2と同じ方向である。)で両側に位置するネジ山35b,35cと谷底35dを形成する谷底部35eとを含む部分と、中心軸線L3の方向A2すなわち軸方向A2で重なる位置に、雄ネジ部44での中空部を構成する孔45が形成される。
【0029】
孔45は、先端面42aから中ぐり加工、鋳造もしくは鍛造により雄ネジ部44の中心軸線L3と同心に形成された円形の断面を有する有底の円孔であり、軸方向A2で螺合終端部Raよりも長く延びる深さを有する。さらに、孔45のうち、螺合終端部Raと軸方向A2で重なる部分は、先端面42aに向かって拡開するテーパ面からなる内周面を有することにより、他の部分である円柱面からなる内周面を有する円柱部45aに比べて大径の径を有する大径部45bを構成する。それゆえ、大径部45bでの雄ネジ部44の肉厚(径方向での厚みである。)は、円柱部45aの肉厚よりも小さくなっている。ここで、円柱部45aの長さ、および大径部45bが形成されている雄ネジ部44の部分である薄肉部44b1の肉厚は、後述する集中応力の低減程度および締付強度の確保の観点から適切な値に設定される。
【0030】
そして、雄ネジ部44において、この孔45が形成された部分は、孔45が設けられておらず中実の部分に比べて、剛性が小さくなることから低剛性部44bを構成し、該低剛性部44bでは、ジャーナルボルト40に軸方向A2での荷重である軸方向荷重が作用したとき、中実の部分に比べて軸方向A2での弾性変形が生じやすくなっている。
【0031】
次に、前述のように構成された第1実施例の作用および効果について説明する。
内燃機関Eが運転されると、燃焼室7内での混合気の燃焼により生じる爆発荷重が、シリンダヘッド4と結合されたシリンダブロック1に、図2において上向きに作用する。同時に、爆発荷重は、ピストン6およびコンロッド9を介して、各軸受部分Bにより回転可能に支持されたクランク軸10に作用し、さらに下部クランクケース半体3bに、図2にて下向きに作用する。
【0032】
そして、各軸受部分Bでは、爆発荷重により、シリンダブロック1と一体の上部ジャーナル支持壁31には、上向きの荷重が作用し、下部クランクケース半体3bと一体の下部ジャーナル支持壁32には、下向きの荷重が作用する。また、上部ジャーナル支持壁31と下部ジャーナル支持壁32とを一体に締結している1対のジャーナルボルト40には、上部ジャーナル支持壁31に作用する外力である爆発荷重に基づいて、その反力が軸方向荷重として作用し、同時に下部ジャーナル支持壁32に作用する爆発荷重に基づいて、前記反力と同じ向きの軸方向荷重が作用する。
【0033】
このため、図3に示されるように、雌ネジ部35においては、螺合終端部Raの非螺合部35f寄りにあるネジ山35bに、上向きの荷重Faが作用し、螺合終端部Raを挟んでネジ山35bとは反対側のネジ山35cに、雄ネジ部44のネジ山44aから下向きの荷重Fbが作用して、螺合終端部Raの谷底部35eには、集中荷重が発生する。
【0034】
このとき、雄ネジ部44には、螺合終端部Raと軸方向A2で重なる位置に、雄ネジ部44の中心軸線L3と同心に形成された断面が円形の孔45が形成された低剛性部44bが設けられ、ネジ山44aは低剛性部44bに形成されていることにより、低剛性部44bでは、雄ネジ部44が中実である場合に比べて剛性が低下しており、ジャーナルボルト40に爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用したとき、低剛性部44bが比較的容易に弾性変形するため、雄ネジ部44のネジ山44aから螺合終端部Raのネジ山35cに作用する荷重Fbが緩衝されるので、螺合終端部Raでの谷底部35eに発生する集中応力が低減する。しかも、孔45の断面は円形であるため、螺合終端部Raのねじ山35cに作用する雄ネジ部44のネジ山44aから荷重Fbは、螺合終端部Raに対してその周方向で均等に緩衝されて、集中応力は螺合終端部Raのねじ山35cの周方向で均等に低減するので、上部ジャーナル支持壁31の強度設計が容易になる。さらに、雄ネジ部44から螺合終端部Raに作用する荷重Fbの緩衝する手段である孔45は、ジャーナルボルト40に形成されるので、集中応力を低減するために、ジャーナルボルト40の許容応力よりも小さい許容応力の上部ジャーナル支持壁31に形成されるネジ孔34の空洞38を大きくする必要がないか、または極力小さくできるので、上部ジャーナル支持壁31の強度低下が防止され、もしくは強度が向上して、上部ジャーナル支持壁31ひいては内燃機関Eの大型化および重量増を招来することなく、上部ジャーナル支持壁31の所要の強度を確保できる。
【0035】
しかも、ネジ山44aは、低剛性部44bのうちでも、薄肉部44b1に形成されているので、弾性変形がより生じやすくなっていると共に、低剛性部44bの他の部分では薄肉部44b1よりも肉厚が大きくなっているので、雄ネジ部44のネジ山44aに作用する荷重Fbの緩衝と同時に、螺合終端部Ra以外の螺合部分Rでの所要の締結強度が確保される。
【0036】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施例を説明する。この第2実施例は、合わせ面16が含まれる仮想平面Pにシリンダ軸線L4が直交する第1実施例の内燃機関Eに対して、仮想平面Pに対してシリンダ軸線L4が傾斜している内燃機関Eである点で相違し、その他の点では基本的に同一の構成を有するものである。それゆえ、第1実施例の部材と同一の部材または対応する部材について、同一の符号を使用して示すことにより、その具体的説明は省略する。そして、この第2実施例においても、第1実施例と同様の作用および効果が奏される。
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の第3実施例を説明する。この第3実施例は、シリンダブロック52とクランクケース51とを締結するスタッドボルトに、第1実施例と同様の孔45が設けられた内燃機関Eである。そのため、第1実施例と同一の符号を使用している。また、必要に応じて図3を併せて参照する。
【0038】
本発明に係るボルトであるスタッドボルト40,40が使用された内燃機関Eは、自動二輪車などの車両に搭載されるOHV型の単気筒4ストローク内燃機関である。内燃機関Eは、クランクケース51と、該クランクケース51の上端部に順次重ねられたシリンダブロック52およびシリンダヘッド53と、シリンダヘッド53に結合されたヘッドカバー54とを構成部材として構成される機関本体を備える。
【0039】
そして、クランクケース51、シリンダブロック52およびシリンダヘッド53は、4本のスタッドボルト40,40(図5にはそのうちの2本が示されている。)により一体に締結される。
【0040】
第1実施例と同様に、単一のシリンダからなるシリンダブロック52には、ピストンが往復動可能に嵌合されて、シリンダヘッド53と該ピストンとの間には燃焼室が形成される。また、クランクケース51には、該クランクケース51により形成されるクランク室内に収容されたクランク軸55が回転可能に支持される。そして、各ピストンはコンロッドを介してクランク軸55に連結され、前記ピストンの往復運動がクランク軸55の回転運動に変換される。
【0041】
シリンダヘッド53には、前記燃焼室に連通する吸気ポートおよび排気ポート53aをそれぞれ開閉する吸気弁および排気弁が装着され、それら吸気弁および排気弁が、シリンダヘッド53とヘッドカバー54とにより形成される動弁室56内に収容されるロッカアームを有する動弁装置により、クランク軸55の回転に同期して所定の時期に開閉される。そして、該ロッカアームは、シリンダヘッド53に固定されるホルダ57に保持されるロッカ軸に揺動可能に支持されて、クランク軸55に連動して回転するカム軸により作動するプッシュロッドにより揺動させられる。
【0042】
そして、吸気装置で形成された混合気が、前記ピストンが下降する吸気行程で、開弁した前記吸気弁を通って前記吸気ポートから前記燃焼室内に吸入される。シリンダブロック52内に吸入された混合気は、圧縮行程で上昇する前記ピストンにより圧縮された後、点火栓により点火されて燃焼し、膨張行程で燃焼ガスの圧力により下降する前記ピストンが、コンロッドを介してクランク軸55を回転駆動する。燃焼ガスは、排気行程で、開弁した前記排気弁を通って排気ガスとして前記燃焼室から前記排気ポート53aに排出され、さらに排気装置を介して外部に排出される。
【0043】
クランク軸55を、玉軸受からなる1対の主軸受(図5には、一方の主軸受58が示されている。)を介して回転可能に支持するクランクケース51は、クランク軸55を含むと共にクランク軸55の回転中心線L1に直交する合わせ面を有する1対のクランクケース半体(図5には、一方のクランクケース半体51aが示されている。)から構成される、いわゆる左右割りのクランクケースである。
【0044】
前記クランク室内には、クランク軸55と、該クランク軸55に発進クラッチおよび変速クラッチを介して駆動連結される主軸を有する変速機とが収容される。
【0045】
4本のスタッドボルト40,40は、クランクケース51に対してシリンダブロック52およびシリンダヘッド53を共締めする1対の第1スタッドボルト40と、クランクケース51に対してシリンダブロック52、シリンダヘッド53およびホルダ57を共締めする1対の第2スタッドボルト40からなる。
【0046】
各スタッドボルト40,40は、その軸部42の両端部である下端部および上端部に雄ネジ部44,46がそれぞれ形成され、その下端部がクランクケース51に形成されたネジ孔34にねじ込まれている。そして、一方の第1スタッドボルト40および一方の第2スタッドボルト40は、一方のクランクケース半体51aに形成されたネジ孔34にねじ込まれ、図示されない他方の第1スタッドボルトおよび他方の第2スタッドボルトは、他方のクランクケース半体に形成されたネジ孔にねじ込まれる。
【0047】
そして、各第1スタッドボルト40は、シリンダブロック52およびシリンダヘッド53にそれぞれ形成された貫通孔からなる挿通孔60,62に挿通され、シリンダヘッド53の上端面から上方に突出する雄ネジ部46にナット65が螺合する。各第2スタッドボルト40は、シリンダブロック52、シリンダヘッド53およびホルダにそれぞれ形成された貫通孔からなる挿通孔61,63,64に挿通され、ホルダ57の上端面から上方に突出する雄ネジ部46にナット66が螺合する。
【0048】
ここで、内燃機関Eの軽量化のために、シリンダブロック52、クランクケース51およびシリンダヘッド53は軽金属基合金からなる形成材料、例えばアルミニウム基合金から形成される。そして、シリンダブロック52、クランクケース51およびシリンダヘッド53の許容応力は、例えば鉄基合金からなる形成材料で形成される各スタッドボルト40,40の許容応力よりも小さく設定されている。
【0049】
クランクケース51とシリンダブロック52との合わせ面67に直交する中心軸線L2を有する有底のネジ孔34は、雌ネジが形成された雌ネジ部35と、雌ネジ部35と底面37との間の非ネジ部36とを有する。また、各スタッドボルト40,40は、合わせ面67に直交する中心軸線L3を有する。
【0050】
図3を併せて参照すると、第1被締結部材としてのクランクケース51と第2被締結部材としてのシリンダブロック52とが4本のスタッドボルト40,40により締結された状態で、各スタッドボルト40,40の雄ネジ部44とネジ孔34の雌ネジ部35とは、螺合部分Rで互いに螺合する。ここで、螺合部分R、非螺合部35fおよび空洞38は、第1実施例と同様である。さらに、第1実施例と同様に、雄ネジ部44には、雌ネジ部35の螺合終端部Raと中心軸線L3の方向、すなわち軸方向A2で重なる位置に、雄ネジ部での中空部を構成する孔45が形成されて、低剛性部44bが形成される。
【0051】
この第3実施例にれば、各スタッドボルト40,40に関して、第1実施例のジャーナルボルト40と同様の次の作用および効果が奏される。
【0052】
すなわち、内燃機関Eが運転されると、前記燃焼室内での混合気の燃焼により生じる爆発荷重が、シリンダヘッド53に、図5にて上向きに作用する。同時に、爆発荷重は、前記ピストンおよび前記コンロッドを介してクランク軸55に作用し、さらにクランクケース51に、図5にて下向きに作用する。
【0053】
そして、シリンダブロック52とクランクケース51とを一体に締結している4本のスタッドボルト40,40には、クランクケース51に作用する外力である爆発荷重に基づいて、その反力が軸方向荷重として作用する。それと同時に、各第1スタッドボルト40には、シリンダヘッド53に作用する爆発荷重に基づいて、前記反力と同じ向きの軸方向荷重が作用し、各第2スタッドボルト40には、シリンダヘッド53を介してホルダ57に作用する爆発荷重に基づいて、前記反力と同じ向きの軸方向荷重が作用する。
【0054】
このとき、螺合終端部Raに谷底部35eに発生する集中応力に関して、クランクケース51に形成されたネジ孔34の雌ネジ部35および各スタッドボルト40,40の雄ネジ部44との間では、第1実施例と同様の作用および効果が奏される。
【0055】
図3の括弧内の符号を併せて参照すると、雄ネジ部44には、螺合終端部Raと軸方向A2で重なる位置に、雄ネジ部44の中心軸線L3と同心に形成された断面が円形の孔45が形成された低剛性部44bが設けられ、ネジ山44aは低剛性部44bに形成されていることにより、低剛性部44bでは、雄ネジ部44が中実である場合に比べて剛性が低下しており、スタッドボルト40,40に爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用したとき、低剛性部44bが比較的容易に弾性変形するため、雄ネジ部44のネジ山44aから螺合終端部Raのネジ山35cに作用する荷重が緩衝されるので、螺合終端部Raでの谷底部35eに発生する集中応力が低減する。しかも、孔45の断面は円形であるため、螺合終端部Raのねじ山35cに作用する雄ネジ部44のネジ山44aからの荷重は、螺合終端部Raに対してその周方向で均等に緩衝されて、集中応力は螺合終端部Raのねじ山35cの周方向で均等に低減するので、クランクケース51の強度設計が容易になる。さらに、雄ネジ部44から螺合終端部Raに作用する荷重の緩衝する手段である孔45は、スタッドボルト40,40に形成されるので、集中応力を低減するために、スタッドボルト40,40の許容応力よりも小さい許容応力のクランクケース51に形成されるネジ孔35の空洞38を大きくする必要がないか、または極力小さくできるので、クランクケース51の強度低下が防止され、もしくは強度が向上して、クランクケース51ひいては内燃機関Eの大型化および重量増を招来することなく、クランクケース51の所要の強度を確保できる。
【0056】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
第2軸受部は、第1実施例では下部クランクケースに一体成形された下部ジャーナル支持壁により構成されたが、互いに分離した別個の部材であるベアリングキャップであってもよい。
【0057】
クランクケースは、第3実施例では左右割りのクランクケースであったが、クランク軸の回転中心線を含みかつシリンダ軸線に直交する平面で分割されるクランクケース、いわゆる上下割りのクランクケースであってもよい。
【0058】
前記実施例では、本発明に係るボルトは、内燃機関のクランク軸の軸受部分またはクランクケースとシリンダブロックとを締結するものであったが、内燃機関を構成する任意の2つの被締結部材を締結してもよく、さらに内燃機関の任意の2つの被締結部材を締結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示し、本発明に係るボルトであるジャーナルボルトが使用された内燃機関の、概ね図2のI−I矢視での断面図である。
【図2】図1のII−II矢視での断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施例を示し、図2に対応する断面図である。
【図5】本発明の第3実施例を示し、本発明に係るボルトであるスタッドボルトが使用された内燃機関の部分断面図である。
【符号の説明】
1…シリンダブロック、2…シリンダ、3…クランクケース、4…シリンダヘッド、5…ヘッドカバー、6…ピストン、7…燃焼室、8…クランク室、9…コンロッド、10…クランク軸、11…吸気ポート、12…吸気弁、13…タイミングチェーン、14…吸気カム軸、15…動弁室、16…合わせ面、17…被動ギヤ、18…交流発電機、19…カバー、20…収容室、21…駆動スプロケット、22…カバー、23…伝動室、24…軸受メタル、25…ピン、
31…上部ジャーナル支持壁、32…下部ジャーナル支持壁、33…挿通孔、34…ネジ孔、35…雌ネジ部、36…非ネジ部、37…底面、38…空洞、
40…ジャーナルボルト、41…頭部、42…軸部、43…円筒部、44…雄ネジ部、44b…低剛性部、45…孔、46…雄ネジ部、
40,40…スタッドボルト、51…クランクケース、52…シリンダブロック、53…シリンダヘッド、54…ヘッドカバー、55…クランク軸、56…動弁室、57…ホルダ、58…主軸受、59…主軸、60〜64…挿通孔、65,66…ナット、67…合わせ面、
,E,E…内燃機関、V,…動弁装置、P…仮想平面、L1…回転中心線、L2,L3…中心軸線、L4…シリンダ軸線、A1…方向、B…軸受部分、R…螺合部分、Ra…螺合終端部、Fa,Fb…荷重。

Claims (3)

  1. 第1被締結部材と第2被締結部材とを締結するボルトであって、前記第1被締結部材に形成されたネジ孔にねじ込まれて該ネジ孔の雌ネジ部と螺合した雄ネジ部を有するボルトにおいて、
    前記ボルトには前記第1被締結部材に作用する外力に基づく軸方向荷重が作用し、前記雄ネジ部には、前記雌ネジ部における前記雄ネジ部との螺合部分のうちの螺合終端部と軸方向で重なる位置に、前記雄ネジ部の中心軸線と同心の断面が円形の中空部が形成された低剛性部が形成されていることを特徴とするボルト。
  2. クランク軸がクランクケースに設けられた第1軸受部と該第1軸受部にボルトにより締結された第2軸受部とにより回転可能に支持され、前記ボルトは前記第1軸受部に形成されたネジ孔にねじ込まれて該ネジ孔の雌ネジ部と螺合した雄ネジ部を有する内燃機関において、
    前記第1軸受部の許容応力は前記ボルトの許容応力よりも小さく、前記ボルトには前記第1軸受部に作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用し、前記雄ネジ部には、前記雌ネジ部における前記雄ネジ部との螺合部分のうちの螺合終端部と軸方向で重なる位置に、前記雄ネジ部の中心軸線と同心の断面が円形の中空部が形成された低剛性部が形成されていることを特徴とする内燃機関。
  3. シリンダブロックとクランク軸を回転可能に支持するクランクケースとがボルトにより締結され、前記ボルトは前記クランクケースに形成されたネジ孔にねじ込まれて該ネジ孔の雌ネジ部と螺合した雄ネジ部を有する内燃機関において、
    前記クランクケースの許容応力は前記ボルトの許容応力よりも小さく、前記ボルトには前記クランクケースに作用する爆発荷重に基づく軸方向荷重が作用し、前記雄ネジ部には、前記雌ネジ部における前記雄ネジ部との螺合部分のうちの螺合終端部と軸方向で重なる位置に、前記雄ネジ部の中心軸線と同心の断面が円形の中空部が形成された低剛性部が形成されていることを特徴とする内燃機関。
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