JP2004278752A - 自動変速機のセレクトアシスト装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車室内のレイアウト自由度とセレクトレバーのデザイン性を高めることができ、しかも良好な操作特性が得られる自動変速機のセレクトアシスト装置を提供する。
【解決手段】コントロールユニット14は、イグニッションキースイッチ16がONされ、かつ、セレクトレバー2がPレンジ位置にあるとき、内気温センサ17により検出された気温が所定温度よりも低い場合には、予め設定された第1設定時間が経過するまで電動モータ7のアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させ、電動モータ7のコイル抵抗値を上昇させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機のセレクトアシスト装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動変速機のレンジセレクト装置としては、車室内の運転席付近にセレクトレバーを設け、このセレクトレバーの操作力をケーブルやロッドなどの操作力伝達手段を介して自動変速機のレンジ切り換え装置に伝達し、自動変速機のレンジ(P,R,N,Dなど)を切り換える構成のものが知られている。
【0003】
セレクトレバーの操作には、ケーブルやロッドのフリクション、ディテント機構においてディテントピンがカム山を乗り越える際に発生する抵抗等により、大きな操作力が必要となる。このため、セレクトレバーを十分な長さに設定し、その梃子力を利用することにより、乗員の操作力を大きな力に変換し、レンジセレクトを行うよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−323559号公報(1頁〜3頁,第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術にあっては、十分な梃子力を得るために長いセレクトレバーが必要となり、車室内レイアウトの自由度が小さくなるという問題がある。また、設置場所にも制約が多く、運転席脇やステアリングコラム付近に限定されている。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、車室内のレイアウト自由度とセレクトレバーのデザイン性を高めることができ、しかも良好な操作特性が得られる自動変速機のセレクトアシスト装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明請求項1に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置では、自動変速機のレンジ切り換え機構と連結されたセレクトレバーのレンジ位置を検出するインヒビタスイッチと、前記セレクトレバーに運転者の操作力を補助するアシストトルクを出力する電動モータと、前記セレクトレバーの状態に応じて電動モータのアシストトルクを制御するアシストトルク制御手段と、を備えた自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記アシストトルク制御手段に、イグニッションキースイッチのON/OFFを検出するイグニッションキーON/OFF検出部と、イグニッションキースイッチがONされ、かつ、セレクトレバーがPレンジ位置にあるとき、予め設定された第1設定時間が経過するまで電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させるコイル温度上昇制御部と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記電動モータの温度を検出するモータ温度検出手段を設け、前記コイル温度上昇制御部に、検出されたモータ温度から電動モータのコイル温度が低温であるかどうかを判断するコイル低温判断部を設け、前記コイル温度上昇制御部は、モータコイルが低温であると判断されたとき、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記コイル温度上昇制御部は、電動モータに最大のアシストトルクを出力させることを特徴とする。
なお、「最大のアシストトルク」とは、電動モータのコイルが焼損を招くことなしに、コイルに電流を流し続けられる範囲での最大値をいう。言い換えると、コイルの温度上昇のために電流を流す時間(第1設定時間)に対し、モータ焼損となる時間が十分余裕のある値である。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記コイル温度上昇制御部は、予め設定された第2設定時間が経過するまで、電動モータに少なくともセレクトレバーをPレンジ側ガイド溝端縁まで移動させる最小のアシストトルクを出力させ、その後、最大のアシストトルクを出力させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、前記セレクトレバーへの入力トルクを検出する入力トルク検出手段と、前記セレクトレバーの操作位置を検出する操作位置検出手段と、前記コイル温度上昇制御部からの警告指令により運転者に警告を行う警告手段と、を設け、前記アシストトルク制御手段を、セレクトレバーへの入力トルクとセレクトレバーの操作位置とに基づいて電動モータのアシストトルクを制御する手段とし、前記コイル温度上昇制御部に、イグニッションキースイッチON直後の初期入力トルクと、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させたときの入力トルクとを比較する入力トルク比較部と、前記イグニッションキースイッチON直後の初期操作位置と、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させたときの操作位置とを比較する操作位置比較部と、比較した2つの入力トルクと2つの操作位置の少なくとも一方が同一であるとき、システム異常と判断する異常判断部と、を設け、前記コイル温度上昇制御部は、システム異常であると判断されたとき、電動モータによるアシストトルクの出力を禁止するとともに、警告手段に警告指令を出力することを特徴とする。
【0012】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明では、セレクトレバーの状態に応じて、電動モータによりアシストトルクを発生させ、そのアシストトルクをセレクトレバーの手動操作力に合成して自動変速機のレンジ切り換え機構に伝達するため、セレクトレバーの長さを短く設定しても、セレクトレバーの操作が重くならず、負担とならない。よって、従来では、その長さ故に設置レイアウトが運転席脇やコラム付近に限定されていたセレクトレバーを、多様な場所(例えば、インストルメントパネル等)にも設置可能となる。
【0013】
また、アシストトルク制御手段のコイル温度上昇制御部は、イグニッションキースイッチがONされ、かつ、セレクトレバーがPレンジ位置にあるとき、予め設定された第1設定時間が経過するまで、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させる。
【0014】
このとき、セレクトレバーはP→Rレンジ方向とは反対方向に僅かに移動した後、セレクトレバーをガイドするガイド溝のPレンジ側端縁に押し付けられた状態となるため、レンジ位置はPレンジから別のレンジ位置へ切り替わることはない。そして、電動モータはセレクトレバーの移動不能な方向に向かってアシストトルクを出力するため、コイルに大きな電流が流れ、ごく僅かな時間でコイル温度が上昇する。
【0015】
一般的に、気温が低くコイル温度が低い場合には、電動モータのコイルの抵抗値が低くなる。そして、コイルの抵抗値が低い状態でセレクトレバーを操作すると、常温時と供給電圧が一定であっても、電動モータには常温時よりも大きな電流が流れるため、過大なアシストトルクが出力されるという問題がある。
【0016】
例えば、車両を気温が低い場所に駐車してある場合、エンジン始動後にセレクトレバーをPレンジ位置からNレンジ位置まで操作したとき、電動モータのコイルの抵抗値が低いため、電動モータから過大なアシストトルクが出力される。よって、セレクトレバーがNレンジの所定位置で停止せず、Nレンジを通過してしまう、いわゆるオーバーランが発生する。
【0017】
これに対して、本発明では、エンジン始動前のイグニッションキースイッチON時に、予め電動モータのコイル温度を上昇させ、コイルの抵抗値を常温時の値まで上昇させておくことができるため、イグニッションキースイッチON直後のセレクト操作において、過大なアシストトルクが出力されることがなく、セレクトレバーのオーバーランを防止できる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、電動モータのコイル温度が高い場合には、無駄なコイル温度上昇制御を行わないため、バッテリ電源の無駄な消費を防ぐとともに、電動モータの負荷を軽減できる。
【0019】
請求項3に記載の発明では、電動モータのアシストトルクを最大とすることで、電動モータに大きな電流が流れるため、より短時間でコイルの抵抗値を常温時の値まで上昇させることができる。よって、イグニッションキースイッチをONした直後にセレクト操作が行われた場合でも、運転者のセレクト操作を妨げることがない。
【0020】
請求項4に記載の発明では、セレクトレバーは、初めに小さなアシストトルクによりPレンジ側ガイド溝端縁まで移動し、その後、最大のアシストトルクによりガイド溝端縁に押し付けられる。
【0021】
ここで、電動モータに最初から最大のアシストトルクを出力させた場合、セレクトレバーがガイド溝端縁に接触するときの衝撃が大きく、接触時に異音が発生してしまう。本発明では、小さなアシストトルクでセレクトレバーを移動させた後、最大のアシストトルクでコイル温度を上昇させることにより、コイル異音の発生を防止しつつ、より短時間でコイルの抵抗値を常温時の値まで上昇させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明では、アシストトルク制御手段は、セレクトレバーへの入力トルクとセレクトレバーの操作位置とに基づいてアシストトルクを制御する。そして、コイル温度上昇制御部は、イグニッションキースイッチON直後の初期入力トルクおよび初期操作位置と、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させたときの入力トルクおよび操作位置とを比較する。
【0023】
ここで、比較した2つの入力トルクまたは2つの操作位置の少なくとも一方が同一である場合には、システム異常と判断し、電動モータによるアシストトルクの出力を禁止するとともに、運転者に警告を行う。
【0024】
すなわち、システムに異常が発生していない場合、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させたときには、イグニッションキースイッチON直後よりも大きな入力トルクが検出され、かつ、異なる操作位置が検出されるはずである。したがって、比較した2つの入力トルクまたは2つの操作位置の少なくとも一方が同一であるということは、システムに何らかの異常が発生していると考えられる。
【0025】
よって、システム異常と判断された場合には、電動モータによるアシストトルクの出力を禁止するとともに、運転者に警告を行うことにより、運転者がセレクト操作を行う前にシステム異常を伝えることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を第1実施例と第2実施例に基づいて説明する。
【0027】
(第1実施例)
まず、構成を説明する。
図1は本発明の自動変速機のセレクトアシスト装置を適用した自動変速装置の構成を示す側面図、図2は自動変速装置の構成を示す背面図である。
【0028】
コントロール部1は運転者により操作されるセレクトレバー2を有し、例えば、運転席脇のセンタクラスタ3の上部に設置されている。セレクトレバー2は、下端の支点軸4を中心として車両の前後方向に操作するよう設定されている。このセレクトレバー2の長さは100mm程度に設定され、従来の一般的なセレクトレバーよりも250mm程度短く設計されている。
【0029】
セレクトレバー2の支点軸4には、この支点軸4と一体で上下方向に回動する制御レバー5の上端部が固定されている。また、支点軸4には、セクタギヤ6が固定され、このセクタギヤ6には、運転者の操作力を補助する電動モータ(アシストアクチュエータ)7が連結されている。
【0030】
制御レバー5の下端部には、前方の自動変速機8に設けられたディテント機構の制御アーム10の上端部と、ロッド状のリンケージ11とを介して連結されている。
【0031】
セレクトレバー2の支点軸4には、支点軸4への入力トルクを検出するトルクセンサ(入力トルク検出手段)12と、セレクトレバー2のストローク角度を検出する位置センサ(操作位置検出手段)13とが連結されている。
【0032】
トルクセンサ12は、支点軸4に設けられた一対の回転部12aと、その間のねじれトルクを検出する検出部12bとから構成されている。トルクセンサ12はセレクトレバー2の支点軸4に設けられているため、実際にセレクトレバー2に入力される運転者の操作力を検出することができる。トルクセンサ12の出力電圧は、入力トルク信号としてコントロールユニット(アシストトルク制御手段)14へ出力される。
【0033】
また、位置センサ13は、セレクトレバー2がPレンジ最端部に位置しているときを0度として、セレクトレバー2を操作したときのストローク角度を随時検出する。位置センサ13の出力電圧は、ストローク角度信号としてコントロールユニット14に出力される。
【0034】
コントロールユニット14には、入力トルク信号と、ストローク角度信号と、自動変速機8に設けられたインヒビタスイッチ15から出力されるレンジ信号と、イグニッションキースイッチ16から出力されるイグニッションキーON/OFF信号と、内気温センサ17から出力される温度信号とが入力される。
【0035】
そして、コントロールユニット14は、検出されたセレクトレバー2のストローク角度と、予め設定された目標アシストトルクマップ(図3参照)とに基づいて、電動モータ7が出力するアシストトルクの目標値である目標アシストトルクを演算する。そして、実際の入力トルクに応じて目標アシストトルクを補正し、補正した目標アシストトルクに基づき、電動モータ7を制御する。
【0036】
図3は、P→Rレンジ方向における目標アシストトルクマップである。この目標アシストトルクマップには、セレクトレバー2のストローク角度に応じた目標アシストトルクTmotが設定されている。この目標アシストトルクTmotは、機械的負荷力Fmisによる軸トルクから理想操作力Ftによる軸トルクを減ずることにより求められる。すなわち、この目標アシストトルクTmotを目標値として電動モータ7のアシストトルクを制御することにより、セレクト時に良好な操作力となる運転者の理想操作力Ftによる軸トルクが得られる。
【0037】
機械的負荷力Fmisは、上述した自動変速機8のディテント機構で発生する負荷力に、リンケージ11の摩擦力、電動モータ7のイナーシャ等を合成したものであり、電動モータ7によるトルクアシストが無い状態でレンジ切り換えを行うには、この機械的負荷力Fmis以上の操作力が必要となる。
【0038】
なお、D→Nレンジ方向へのセレクト時には、機械的負荷力Fmisは上述したP→Rレンジ方向における機械的負荷力とは異なる特性となるため、その特性に応じて目標アシストトルクマップも別途設定する。よって、セレクトレバー2のアシスト制御においては、セレクトレバー2の操作方向を検出し、操作方向に応じた目標アシストトルクマップを用いてアシストトルクの制御を行う必要がある。
【0039】
セレクトレバー2の操作方向を検出する方法としては、トルクセンサ12の正負出力状態からの判定、位置センサ13の取得最新値と前回取得値との増減差分による判定、または、目標アシストトルクマップ上の各レンジ停止位置の中央値に対する位置センサ13の大小判定等で行うことができる。
【0040】
また、この目標アシストトルクマップは、セレクトレバー2の操作速度に応じて予め複数設定されている。セレクトレバー2の操作速度は、ストローク角度の変化率等から推定することができる。
【0041】
また、コントロールユニット14は、イグニッションキースイッチ16がONされたとき、内気温センサ17の温度信号に基づいて、電動モータ7のコイル温度を推定する。そして、コイル温度が低温であると推定されたとき、コイル温度を上昇させてコイル抵抗値を高める制御を実行する。
【0042】
このとき、コントロールユニット14は、電動モータ7やコントロールユニット14自身の故障等によりシステム異常が発生しているかどうかを判断する。そして、システム異常と判断された場合には、電動モータ7を停止してアシストを禁止するとともに、図外のインストルメントパネルに設けられたワーニングランプ(警告手段)18を点灯させ、運転者にアシスト不能警告を行う。
【0043】
次に、作用を説明する。
[コイル抵抗値上昇制御処理]
図4は、コントロールユニット14で実行されるコイル抵抗値上昇制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
ステップS1では、イグニッションキースイッチ16のイグニッションキーON/OFF信号から、イグニッションキースイッチがONされたかどうかを判断する(イグニッションキースイッチON/OFF検出部に相当)。YESの場合にはステップS2へ進み、NOの場合には本制御を終了する。
【0045】
ステップS2では、イグニッションフラグfIGN=0であるかどうかを判断する。YESの場合にはステップS3へ進み、NOの場合には本制御を終了する。
【0046】
ステップS3では、イグニッションフラグfIGN=1とする。
【0047】
ステップS4では、トルクセンサ12の入力トルク信号と位置センサ13のストローク角度信号から、初期入力トルクTと初期ストローク角度Sを読み込み、メモリに記憶する。
【0048】
ステップS5では、インヒビタスイッチ15のレンジ信号からレンジ位置を読み込む。
【0049】
ステップS6では、内気温センサ17の温度信号から内気温TMPを読み込む(モータ温度検出手段に相当)。
【0050】
ステップS7では、レンジ位置がPレンジであるかどうかを判断する。YESの場合にはステップS8へ進み、NOの場合には本制御を終了する。
【0051】
ステップS8では、電動モータ7のコイル温度が低温であるかどうかを判断する(コイル低温判断部に相当)。具体的には、内気温TMPが予め設定された設定温度TMP以下である場合に、コイル温度が低温であると推定する。YESの場合にはステップS9へ進み、NOの場合には本制御を終了する。
【0052】
ステップS9では、P→Rレンジ方向と反対方向に最大のアシストトルクが出力されるよう、ONデューティ100%で電動モータ7を駆動する(コイル温度上昇制御部に相当)。
【0053】
ステップS10では、カウンタtがTに到達したかどうかを判断する。YESの場合にはステップS12へ進み、NOの場合にはステップS11へ進む。
【0054】
ステップS11では、カウンタtをインクリメントする。
【0055】
ステップS12では、入力トルクTとストローク角度Sを読み込む。
【0056】
ステップS13では、初期入力トルクTと入力トルクTが一致するか(入力トルク比較部に相当)、または、初期ストローク角度Sとストローク角度Sが一致するかどうか(操作位置比較部に相当)を判断する。YESの場合にはステップS15へ進み(異常判断部に相当)、NOの場合にはステップS14へ進む。
【0057】
ステップS14では、電動モータ7を停止させる。
【0058】
ステップS15では、電動モータ7を停止させる。
【0059】
ステップS16では、ワーニングランプ17を点灯させる。
【0060】
ステップS17では、イグニッションキースイッチがOFFされたかどうかを判断する。YESの場合にはステップS18へ進み、NOの場合にはステップS2へ戻る。
【0061】
ステップS18では、カウンタt、イグニッションフラグfIGNをイニシャライズして本制御を終了する。
【0062】
[コイル低温度時の問題点]
次に、図5を用いて、電動モータ7のコイル温度が低いときに発生する過大アシストトルクによる問題点を説明する。
【0063】
なお、第1実施例は、セレクトレバー2のストローク角度と目標アシストトルクマップに基づいて目標アシストトルクを設定し、これを入力トルクにより補正して電動モータ7のONデューティ比を設定するものであるが、ここでは、説明の便宜上、トルクセンサ12の入力トルクに比例してONデューティ比を設定する場合について説明する。
【0064】
図5(a)において、セレクトレバー2が停止している場合には、トルクセンサ12の出力電圧は2.5Vであり、運転者がセレクトレバー2をP→Dレンジ方向へ操作し、トルクセンサ12の出力電圧がVとなったときには、図5(b)に示すように、これに比例したONデューティ比Dが設定される。
【0065】
ところが、図5(c)に示すように、電動モータ7のコイルの温度が低いときには、常温のときよりもコイルの抵抗値が小さいため、電動モータ7に流れる電流値が大きくなる。したがって、図5(d)に示すように、コイルの温度が低いときには、常温時と同じデューティ比Dで電動モータ7を駆動した場合でも、過大なアシストトルクが発生してしまう。
【0066】
例えば、車両を気温が低い場所に駐車している場合、エンジン始動後にセレクトレバー2をPレンジ位置からNレンジ位置まで操作したとき、電動モータ7のコイルの抵抗値が低いため、電動モータ7から過大なアシストトルクが出力される。よって、セレクトレバー2がNレンジの所定位置で停止せず、Nレンジを通過してしまう、いわゆるオーバーランが発生してしまう。
【0067】
本発明は、イグニッションキースイッチ16がONされ、運転者がセレクトレバー2を操作する前に、電動モータ7のコイル抵抗値を常温時と同じまで上昇させておくことにより、上述した過大アシストトルクの発生を防止するものである。
【0068】
[コイル抵抗値上昇制御作用]
イグニッションキースイッチ16をONしたとき、電動モータ7のコイル温度が低い場合には、図4のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11へと進む流れとなる。
【0069】
すなわち、ステップS10でカウンタtがTに到達するまで、P→Rレンジ方向と反対方向に最大のアシストトルクが出力されるよう、電動モータ7をONデューティ100%で駆動する。
【0070】
このとき、セレクトレバー2は、セレクトレバー2をガイドするガイド溝のPレンジ側端縁に押し付けられた状態となり、電動モータ7はセレクトレバー2の移動不能な方向に向かってアシストトルクを出力する。よって、コイルに大きな電流が流れ、コイルの温度が上昇することにより、コイルの抵抗値が常温時の値まで上昇する。
【0071】
次に、ステップS10でカウンタtがTに到達したとき、ステップS12→ステップS13へと進み、初期入力トルクTと入力トルクTが一致せず、かつ、初期ストローク角度Sとストローク角度Sが一致しない場合には、ステップS14によりモータ出力を停止する。
【0072】
一方、ステップS13により初期入力トルクTと入力トルクTが一致するか、または、初期ストローク角度Sとストローク角度Sが一致すると判断された場合には、システム異常と判断し、ステップS15によりモータ出力を停止してアシスト不能とするとともに、ステップS16によりワーニングランプ18を点灯させ、運転者に警告を行う。
【0073】
次に、効果を説明する。
第1実施例の自動変速機のセレクトアシスト装置にあっては、次に列挙する効果を得ることができる。
【0074】
(1) イグニッションキースイッチ16がONされたとき、予め電動モータ7のコイル温度を上昇させ、コイルの抵抗値を常温時の値まで上昇させておくことができるため、イグニッションキースイッチ16のON直後のセレクト操作において、過大なアシストトルクが出力されることがなく、セレクトレバーのオーバーランを防止できる。このとき、セレクトレバー2は、ガイド溝のPレンジ側端縁に押し付けられた状態となり、レンジ位置がPレンジから別のレンジへ切り替わることがないため、運転者のセレクト操作を妨げない。
【0075】
(2) 内気温TMPが予め設定された設定温度TMPよりも高く、電動モータ7のコイル温度が高い場合には、コイル温度上昇制御を実行しないため、バッテリ電源の無駄な消費を防ぐとともに、電動モータ7の負荷を軽減できる。
【0076】
(3) 電動モータ7をONデューティ100%で駆動することで、電動モータ7に大きな電流が流れるため、より短時間でコイルの抵抗値を常温時の値まで上昇させることができ、運転者のセレクト操作の邪魔になることがない。
【0077】
(4) システム異常と判断された場合には、電動モータ7によるアシストトルクの出力を禁止するとともに、ワーニングランプ18を点灯させて運転者に警告を行うことにより、運転者がセレクト操作を行う前にシステム故障を伝えることができ、不適切なアシスト制御が実行されるのを未然に防ぐことができる。
【0078】
(第2実施例)
次に、第2実施例を説明する。基本的なハード構成は第1実施例と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。
【0079】
第1実施例では、電動モータ7のONデューティを初めから100%で駆動したが、第2実施例では、初めに電動モータ7を10%のONデューティで駆動した後、ONデューティを100%とする点で第1実施例と異なる。
【0080】
作用を説明する。
[コイル抵抗値上昇制御処理]
図6は、コントロールユニット14で実行されるコイル抵抗値上昇制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、図6において、ステップS1〜ステップS9、ステップS12〜ステップS17については、図4に示した第1実施例と同一の処理を行うため、異なる部分についてのみ説明する。
【0081】
ステップS21では、P→Rレンジ方向と反対方向にアシストトルクが出力されるよう、ONデューティ10%で電動モータ7を駆動する。
【0082】
ステップS22では、カウンタtがT1に到達したかどうかを判断する。YESの場合にはステップS9へ進み、NOの場合にはステップS23へ進む。
【0083】
ステップS23では、カウンタtをインクリメントする。
【0084】
ステップS24では、カウンタtがT2に到達したかどうかを判断する。YESの場合にはステップS12へ進み、NOの場合にはステップS25へ進む。
【0085】
ステップS25では、カウンタtをインクリメントする。
【0086】
ステップS26では、カウンタtと、カウンタtと、イグニッションフラグfIGNとをイニシャライズして本制御を終了する。
【0087】
[コイル抵抗値上昇制御作用]
イグニッションキースイッチ16をONしたとき、電動モータ7のコイル温度が低い場合には、図6のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS21へと進み、P→Rレンジ方向と反対方向にアシストトルクが出力されるよう、電動モータ5をONデューティ10%で駆動する。
【0088】
このとき、セレクトレバー2は、小さなアシストトルクによりPレンジ側ガイド溝端縁まで移動し、その後、最大のアシストトルクによりガイド溝端縁に押し付けられる。
【0089】
そして、ステップ22でカウンタtがT1に到達したとき、ステップS9へと進み、P→Rレンジ方向と反対方向に最大のアシストトルクが出力されるよう、電動モータ7をONデューティ100%で駆動する。
【0090】
次に、ステップS24でカウンタtがT2に到達したとき、ステップS12→ステップS13へと進む。
【0091】
次に、効果を説明する。
第2実施例の自動変速機のセレクトアシスト装置にあっては、次に列挙する効果を得ることができる。
【0092】
(5) ONデューティ10%でセレクトレバー2をガイド溝端縁まで移動させた後、ONデューティ100%でコイル温度を上昇させることにより、セレクトレバー2がガイド溝端縁と接触する際の異音の発生を防止しつつ、より短時間でコイルの抵抗値を常温時の値まで上昇させることができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態を第1実施例と第2実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は本実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0094】
第1実施例と第2実施例では、コントロールユニット14は、セレクトレバー2のストローク角度と目標アシストトルクマップに基づいて基づいて目標アシストトルクを設定し、これを入力トルクにより補正して電動モータ7のONデューティ比を設定する例を示したが、入力トルクとストローク角度の一方のみに基づいて電動モータ7のONデューティ比を設定する構成としてもよい。
【0095】
また、第1実施例と第2実施例では、電動モータ7の温度を検出するモータ温度検出手段として、内気温センサ17を用いたが、外気温センサを用いてもよいし、電動モータ7に直接温度センサを設けた構成としてもよい。
【0096】
また、第1実施例と第2実施例では、P→Rレンジ方向と反対方向に最大のアシストトルクが出力されるよう、ONデューティ100%で電動モータ7を駆動したが、このONデューティ比は、電動モータ7のコイルが焼損することなく電流を流し続けられる最大のONデューティであればよい。言い換えると、コイルの温度上昇のために電流を流す時間(第1実施例ではカウンタtがTに到達するまでの時間、第2実施例ではカウンタtがT2に到達するまでの時間)に対し、モータ焼損となる時間が十分余裕がある最大のONデューティ比であればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動変速機のセレクトアシスト装置を適用した自動変速装置の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の自動変速機のセレクトアシスト装置を適用した自動変速装置の構成を示す背面図である。
【図3】P→Rレンジ方向における目標アシストトルクマップである。
【図4】第1実施例のコントロールユニットで実行されるコイル抵抗値上昇制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】コイル低温時と常温時におけるコイル電流とアシストトルクの差を示す説明図である。
【図6】第2実施例のコントロールユニットで実行されるコイル抵抗値上昇制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 コントロール部
2 セレクトレバー
3 センタクラスタ
4 支点軸
5 制御レバー
6 セクタギヤ
7 電動モータ
8 自動変速機
10 制御アーム
11 リンケージ
12 トルクセンサ
12a 回転部
12b 検出部
13 位置センサ
14 コントロールユニット
15 インヒビタスイッチ
16 イグニッションキースイッチ
17 内気温センサ
18 ワーニングランプ

Claims (5)

  1. 自動変速機のレンジ切り換え機構と連結されたセレクトレバーのレンジ位置を検出するインヒビタスイッチと、
    前記セレクトレバーに運転者の操作力を補助するアシストトルクを出力する電動モータと、
    前記セレクトレバーの状態に応じて電動モータのアシストトルクを制御するアシストトルク制御手段と、
    を備えた自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記アシストトルク制御手段に、イグニッションキースイッチのON/OFFを検出するイグニッションキースイッチON/OFF検出部と、
    イグニッションキースイッチがONされ、かつ、セレクトレバーがPレンジ位置にあるとき、予め設定された第1設定時間が経過するまで電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させるコイル温度上昇制御部と、
    を設けたことを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
  2. 請求項1に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記電動モータの温度を検出するモータ温度検出手段を設け、
    前記コイル温度上昇制御部に、検出されたモータ温度から電動モータのコイル温度が低温であるかどうかを判断するコイル低温判断部を設け、
    前記コイル温度上昇制御部は、モータコイルが低温であると判断されたとき、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させることを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記コイル温度上昇制御部は、電動モータに最大のアシストトルクを出力させることを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
  4. 請求項3に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記コイル温度上昇制御部は、予め設定された第2設定時間が経過するまで、電動モータに少なくともセレクトレバーをPレンジ側ガイド溝端縁まで移動させる最小のアシストトルクを出力させ、その後、最大のアシストトルクを出力させることを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動変速機のセレクトアシスト装置において、
    前記セレクトレバーへの入力トルクを検出する入力トルク検出手段と、
    前記セレクトレバーの操作位置を検出する操作位置検出手段と、
    前記コイル温度上昇制御部からの警告指令により運転者に警告を行う警告手段と、を設け、
    前記アシストトルク制御手段を、セレクトレバーへの入力トルクとセレクトレバーの操作位置とに基づいて電動モータのアシストトルクを制御する手段とし、
    前記コイル温度上昇制御部に、イグニッションキースイッチON直後の初期入力トルクと、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させたときの入力トルクとを比較する入力トルク比較部と、
    前記イグニッションキースイッチON直後の初期操作位置と、電動モータのアシストトルクをP→Rレンジ方向とは反対方向に出力させたときの操作位置とを比較する操作位置比較部と、
    比較した2つの入力トルクと2つの操作位置の少なくとも一方が同一であるとき、システム異常と判断する異常判断部と、を設け、
    前記コイル温度上昇制御部は、システム異常であると判断されたとき、電動モータによるアシストトルクの出力を禁止するとともに、警告手段に警告指令を出力することを特徴とする自動変速機のセレクトアシスト装置。
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