JP2004278523A - 船外機の冷却水ポンプ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポンプケース15下部から冷却水を吸い込み、上方のエンジンに向けてその冷却水を圧送する冷却水ポンプ装置であって、前記樹脂製のポンプケース15内周面と金属製のスリーブ25との間で、前記ドライブシャフトを取り囲みかつドライブシャフトの軸方向に沿う上下に離隔した複数箇所に、樹脂製のポンプケース内周面と金属製のスリーブとの間の水密を保持するための環状シール部材40[a],40[b],40[d]を配設した。
【選択図】 図8
Description
すなわち、船外機ではエンジンの下方に、エンジンのクランク軸の駆動力をスクリューに伝達するドライブシャフトを縦置きに内部に備えたドライブシャフトハウジングが配設されている。そして、船外機では、このドライブシャフトの軸方向途中部に、弾性材料からなるインペラをポンプケース内で偏心させて収容して、そのポンプケース内で該ドライブシャフトの駆動によってインペラを回転させることにより、冷却水をエンジンに向けて圧送する冷却水ポンプ装置(ウォータポンプ)を備えている(特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、ステンレス製のポンプケースでは、ポンプケースの重量が樹脂製のものに比較して重くエンジンの軽量化の障害になり、また、製造方法にロストワックス製法を採用する場合が多いため量産性が悪く、しかも材料費が高く加工費も要するためコストが高くなる等種々のデメリットがあった。
しかしながら、作業者によってシーラントの塗布量にばらつきがあり、これに対応するべく自動シーラント塗布装置を導入しようとすると導入コストが高く、しかも、熱や経年劣化によるシーラント効果の低下が生じる。また、金属製のスリーブを交換するときにシーラントの接着が取りにくく、作業負荷になる。さらには、再度新品を組み付ける場合は、市場でシーラントを塗る必要があり工数になり、かつ、確実性に欠ける場合があるという種々の問題点を有していた。
したがって、従来の冷却水ポンプ装置のように樹脂製のポンプケースと金属製のスリーブとの間に浸入した水特に海水が原因する塩分の固着およびそれによる金属製のスリーブの割れなどの不具合を確実に防止できる。
請求項2に記載の発明は、ポンプケースが、下部開口部を有する概略椀状を呈し、この下部開口部をアンダパネルで塞いだポンプケース内にインペラを収容するポンプ室が形成されており、少なくとも前記環状シール部材を、前記ポンプ室の吐出口の上端部と、前記ポンプケースの上部のドライブシャフト挿通孔を囲む箇所に配設したので、スリーブやインペラの容易な組み付けに適した下方開口部を有するポンプケースの構成にできると共に、前記ポンプ室の吐出口の上端部と、前記ポンプケースの上部のドライブシャフト挿通孔を囲む箇所に配設した環状シール部材によって水密性能を十分に果たすことができる。また、従来のポンプケースで冷却水のない陸上試運転を行った場合に問題となる部分がポンプケースの上面側部であるため、前記環状シール部材をポンプケースの上部のドライブシャフト挿通孔を取り囲む箇所とポンプ室の吐出口とをシールしたので、水密性と陸上運転時の問題が解決できる。また、ポンプケースとスリーブとの間の塩溜まり問題に関しても、スリーブのドライブシャフトに沿って延びる立壁部分は水がたまりにくいので吐出口とドライブシャフト挿通孔を取り囲む箇所のみをシールしても水密の効果を奏する。
図1は本発明の一実施形態に係る船外機の側面視外観説明図、図2は該船外機のエンジン下方の駆動構造および冷却水ポンプ装置などの構造の説明図である。
スイベルブラケット5は、油圧などのアクチュエータ5aによる駆動でクランプブラケット4に対して上下方向に揺動するようになっている(パワー チルト アンド トリム:Power Tilt and Trim,「PTT」と略記される)(図2参照)。
前記ドライブシャフトハウジング8には、エンジンホルダ7、アッパーケース8aおよびロアケース8bに渡って上下方向に連通する中空部11内にドライブシャフト10が回動可能に収容される。
また、ベベルギヤセット13のドリブンギヤ13bは、前後一対でドライブギヤ13aに噛合っている。後述するシフトレバー14の操作が、シフト軸14aを介してスクリュー軸12と一対のドリブンギヤ13bとの間のクラッチ機構に伝達されて、それらドリブンギヤ13bのいずれか一方とスクリュー軸12との係合・離脱を切り替え(シフト操作)によって、スクリュー軸12を正回転、逆回転、あるいはニュートラルにする切り替えができるようになっている。
前記ロアケース8bの側面部には、船外機外部の水(海水、河川水)を取り入れるための吸水口8fがフィルタを設けて開口しており、吸水口8f内部は前記冷却水通路8eに連通している。
そして、前記冷却水ポンプ装置17のポンプ室17cで正圧を加えられた冷却水がアウトレット17dから冷却水パイプ17eを通ってエンジン6のウォータジャケットに冷却水を供給し、エンジン6の冷却を行う。
なお、17aはポンプ室17c内の冷却水をアウトレット17dに導く誘導壁部である。この誘導壁部17aは、ポンプ室17c周囲を形成する壁部の一部であって正圧側に位置して吐出口17fが形成される。この吐出口17fは、ポンプ室17cとアウトレット17dを連通するものであって、前記誘導壁部17aの下部に窓状の切り欠きが形成されて構成されたものである。
なお、スリーブ25は、金属製、好適にはステンレス製であり、プレス成形、鋳造、鍛造など種々の方法で形成でき、ほぼ同一厚さあるいは異なる厚さに加工することができる。
また、上方の環状シール部材26aは、前記樹脂製のポンプケース15内周面における、上方部のドライブシャフト挿通孔15cを囲む箇所に設けられる概略円形形状を呈すると部分と共に、小径筒体15bに連通する前記挿通孔15cから延びた水抜き口(水抜き孔)15fを囲む箇所に設けられる平行な二辺を有する矩形形状を呈する部分とを有している。したがって、上方の環状シール部材26aは、全体が概略円形であって、水抜き口15fを囲む箇所が突出した異形形状に形成される。
なお、前記環状シール部材26a,26b、連結シール部材27は断面円形のいわゆるOリング形状に形成しているが、その他、必要な箇所を断面矩形にする等、適切なシール性能が得られるように、種々の断面形状に形成できる。
また、ドライブシャフト挿通孔15cの周囲から誘導壁部17aの上側基部近傍にも、水抜き口15fを挟んで上方の環状シール部材26aを装着するための溝部29cが凹状に形成されている。
さらに、ポンプケース15の内壁面には、上方の環状シール部材26aと下方の環状シール部材26bとを繋ぐ連結シール部材27の収容装着用の溝部29dが、誘導壁部17aを囲んだ両脇とその反対側面部とにドライブシャフト10挿通方向に沿って縦方向に形成されている。
すなわち、前記リブ30とリブ30との間に空間を設けて、ポンプケース15内にスリーブ25を装着した時にポンプケース15の上面側部とスリーブ25の底部25aとの間に空気層31が形成できるようにしている。
したがって、樹脂製のポンプケース15の溶融を確実に防止できる。
図7は、本発明の他の実施形態に係る船外機の冷却水ポンプ装置17Aの縦断面図である。図7は前記一実施形態の図4に相当する図であるが、この他の実施形態は、シール部材40、42等の構造およびその配設が前記の図1〜図6に示した一実施形態と異なる以外は同様の構成であるので同様の部分に同一の符号を付している。
また、ポンプケース15は、下部開口部15dを有する概略椀状(例えば椀を伏せた形状)を呈し、この下部開口部15dをアンダパネル19で塞いだポンプケース15内にインペラ16を収容するポンプ室17cが形成されている。
なお、図8〜図14の各(a)では、各シール部材からなるシール体の第1例〜第7例を、上から押しつぶして展開した状態を模式的に示している。また、図8〜図14では各(b)では、各シール部材からなるシール体の斜視構造を模式的に示している。
これらの環状シール部材40[a]〜40[b]は、図7に示す、ポンプケース15の大径筒体15a内周面の上面部であって、ドライブシャフト10に最も近い箇所に形成された溝部44[a]と、その溝部44[a]と離隔した箇所に形成された溝部44[b]とに嵌め込まれている。また、環状シール部材40[c]〜40[d]は、大径筒体15a側壁内部であって吐出口17f上端部より上方部に設けた溝部44[c]と、大径筒体15a下面に設けた溝部44[d]とに嵌め込まれている。
これらの溝部44[a]〜44[d]は、シール部材の配設に対応して形成されるものであって、環状シール部材の配設位置に応じて適宜に形成可能なものである。
これらの連結シール部材42[e]〜42[g]は上記の環状シール部材と同様に断面がO(オー)形状を呈しており、取り付け箇所には、位置ずれを防止するため溝部(図示省略)がドライブシャフト10の径方向または軸方向に沿って形成されている。
第1例と第2例のシール体は、前記環状シール部材のみで、前記ポンプ室の吐出口17fの上端部と、前記ポンプケース15の上部のドライブシャフト挿通孔15cを囲む箇所とに配設して、ポンプケース15とスリーブ25との間の水密機能を発揮するものである。
第1例のシール体では、図8(a),(b)に示すように、符号40[a],40[b],40[d]で示す環状シール部材を組み合わせたものである。すなわち、大径筒体15aにおけるドライブシャフト10の挿通孔15cに近い環状シール部材40[a]と、これによりも離隔した大径筒体15aにおける周縁に近い位置の環状シール部材40[b]と、ポンプケース15の下部開口部15d周縁とアンダパネル19との間の位置に介装される環状シール部材40[d]とを設けたものである。
図8では、環状シール部材によるシール領域(水密部分)を斜線46で示している。また、図8には、破線で環状シール部材40[c]の配設位置を示している。
第2例のシール体では、図9(a),(b)に示すように、符号40[a],40[c],40[d]で示す環状シール部材を組み合わせたものである。すなわち、大径筒体15aにおけるドライブシャフト10の挿通孔15cに近い前記環状シール部材40[a]と、スリーブ25の側壁部25bに対向し、かつスリーブ25のその切欠き25d上部と吐出口17f上方の近傍位置を通る環状シール部材40[c]と、前記ポンプケース15の下部開口部15d周縁とアンダパネル19との間の位置に介装される環状シール部材40[d]とを設けたものである。
これらの第3例〜第7例のシール体は、図10〜図14に示すように、前記ドライブシャフト10の軸方向または半径方向に延びて前記環状シール部材40[a]〜40[d]のいずれか同士を繋ぐ連結シール部材42[e]〜42[m]、または、環状シール部材40[a]〜40[d]に沿う連結シール部材42[n],42[o]を複数箇所に設け、前記樹脂製のポンプケース15内周面と金属製スリーブ25との間の水密を保持するための前記環状シール部材を弾性樹脂材からなる連結体としたものである。
まず、第3例のシール体は、図10(a),(b)に示すように、前記環状シール部材を、前記ポンプケース15の上部のドライブシャフト挿通孔15cを囲む箇所であってその挿通孔15cに隣接する箇所(40[a])と離れた箇所(40[b])とに配設し、ドライブシャフト10の半径方向に延びて前記環状シール部材同士を繋ぐ連結シール部材を3箇所(42[e]〜42[g])設けたものである。また、環状シール部材40[d]をポンプケース15の下部開口部15d周縁とアンダパネル19との間の位置に介装したものである。
第4例のシール体は、図11(a),(b)に示すように、前記環状シール部材を、前記ポンプ室17cの吐出口17fの上端部(40[c])と、前記ポンプケースの上部のドライブシャフト挿通孔を囲む箇所(40[a])とに配設し、ドライブシャフト10の半径方向に延びて前記環状シール部材同士を繋ぐ連結シール部材を3箇所(42[h]〜42[j])に設けたものである。また、環状シール部材40[d]をポンプケース15の下部開口部15d周縁とアンダパネル19との間の位置に介装したものである。
第5例のシール体は、図12(a),(b)に示すように、前記環状シール部材を、前記ポンプケース15の上部のドライブシャフト挿通孔15cを囲む箇所(40[a])と、環状シール部材をポンプケース15の下部開口部15d周縁とアンダパネル19との間の箇所(40[d])に介装したものである。そして、これら環状シール部材同士をドライブシャフト10の半径方向から軸方向に延びて前記環状シール部材同士を繋ぐ連結シール部材を3箇所(42[k]〜42[m])設けたものである。
第6例のシール体は、図13(a),(b)に示すように、第5例のシール体(環状シール部材40[a],40[d]、連結シール部材42[k]〜42[m])に、大径筒体15aの上面部分であって、吐出口17fの上方位置に連結シール部材42[k]と42[l]同士を繋ぐ連結シール部材42[n]を加えて設けたものである。この連結シール部材42[n]の配設位置は、前記環状シール部材の40[b]とドライブシャフト10の軸方向で同じ位置であって、吐出口17fの上方位置のみの部分としている。その他は、前記第5例のシール体と同様であるため同一部分に同一の符号を付している。
なお、前記連結シール部材42[n]は前記環状シール部材40[b]と同じく、ポンプケース15とスリーブ25との間であって全周を取り巻く構造(環状シール部材40[b]と同様構造)としても良い。これにより、より水密生が向上する。
また、この第6例のシール体は、前記図6に示した一実施形態に係るシール体に類似しているが、一実施形態では環状シール部材26に水抜き孔15fを設けているためその部分を避けて突出形状を設けている点が異なる。
第7例のシール体は、図14(a),(b)に示すように、第5例のシール体(環状シール部材40[a],40[d]、連結シール部材42[k]〜42[m])に吐出口17fの上端部分に隣接する位置に連結シール部材42[k],42[l]同士を繋ぐ連結シール部材42[o]を加えて設けたものである。この連結シール部材42[o]の配設位置は、前記環状シール部材の40[c]とドライブシャフト10の軸方向で同じ位置であって、吐出口17fに隣接するのみの部分としている。その他は、前記第5例のシール体と同様であるため同一部分に同一の符号を付している。
したがって、従来の冷却水ポンプ装置のように樹脂製のポンプケースと金属製のスリーブとの間に浸入した水特に海水が原因する塩分の固着およびそれによる金属製のスリーブの割れなどの不具合を確実に防止できる。
2 船体
3 トランザム
4 クランプブラケット
5 スイベルブラケット
5a アクチュエータ
6 エンジン
6a エンジンのクランク軸
7 エンジンホルダ
8 ドライブシャフトハウジング
8a アッパーケース
8b ロアケース
8c 壁状部
8d ロアカバー
8e 冷却水通路
8f 吸水口
9 スクリュー
10 ドライブシャフト
10a キー溝
10b 水密シール
11 ドライブシャフトの中空部
12 スクリュー軸
13 ベベルギヤセット
13a ドライブギヤ
13b ドリブンギヤ
14 シフトレバー
14a シフト軸
15 ポンプケース
15a 大径筒体
15b 小径筒体
15c ドライブシャフト挿通孔
15d 下部開口部
15e リブ
15f 水抜孔
16 インペラ
16a キー
17 冷却水ポンプ装置
17A 冷却水ポンプ装置
17a 誘導壁部
17b インレット
17c ポンプ室
17d アウトレット
17e 冷却水パイプ
17f 吐出口
18 合わせ部
19 アンダパネル
19a ガスケット
20 インペラの翼部
21 インペラのボス部
22 インペラの管状心材
22a キー溝
23 内フランジ部
25 スリーブ
25a 底部
25b 側壁部
25c 挿通孔
25d 切り欠き
26 環状シール部材
26a、26b 上方の環状シール部材、下方の環状シール部材
27 連結シール部材
28 連続体のシール体
29(29a〜29d) 溝部
30 リブ
31 空気層
40[a]〜40[d] 環状シール部材
42[a]〜42[m] 連結シール部材
42[n],42[o] 連結シール部材
44[a]〜44[c] 溝部
46 シール領域
Claims (6)
- エンジンの下方に中空のドライブシャフトハウジングが設けられ、該ドライブシャフトハウジング内に、エンジンのクランク軸の駆動力をスクリューに伝達するドライブシャフトを縦置きに備える船外機において、前記ドライブシャフトハウジング内の前記ドライブシャフトの軸方向途中部に備えられた樹脂製のポンプケース内に金属製のスリーブを介在させた状態で弾性材料からなるインペラを偏心させて収容し、該ドライブシャフト駆動で該インペラを回転させることによりポンプケース下部から冷却水を吸い込み、上方のエンジンに向けてその冷却水を圧送する冷却水ポンプ装置であって、
前記樹脂製のポンプケース内周面と金属製のスリーブとの間で、前記ドライブシャフトを取り囲みかつドライブシャフトの軸方向に沿う上下に離隔した複数箇所に、前記樹脂製のポンプケース内周面と金属製のスリーブとの間の水密を保持するための環状シール部材を配設したことを特徴とする船外機の冷却水ポンプ装置。 - ポンプケースは、下部開口部を有する概略椀状を呈し、この下部開口部をアンダパネルで塞いだポンプケース内にインペラを収容するポンプ室が形成されており、少なくとも前記環状シール部材を、前記ポンプ室の吐出口の上端部と、前記ポンプケースの上部のドライブシャフト挿通孔を囲む箇所に配設したことを特徴とする請求項1に記載の船外機の冷却水ポンプ装置。
- 前記ドライブシャフトの軸方向または半径方向に延びて前記環状シール部材同士を繋ぐ連結シール部材を複数箇所に設け、前記樹脂製のポンプケース内周面と金属製スリーブとの間の水密を保持するための前記環状シール部材を弾性樹脂材からなる連結体としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機の冷却水ポンプ装置。
- 前記ポンプケースの下部開口部周縁とアンダパネルとの間に配設される下方の環状シール部材と、前記ポンプケース上部のドライブシャフト挿通孔を囲む箇所に配設される上方の環状シール部材とを前記連結シール部材で繋ぐとともに、少なくとも前記連結シール部材をポンプ室の吐出口の両側部に配設したことを特徴とする請求項3に記載の船外機の冷却水ポンプ装置。
- 前記ポンプケース内周面にシール部材配設用の溝を形成したことを特徴とする請求項1から4のうちの1項に記載の船外機の冷却水ポンプ装置。
- 前記ポンプケースの内周面にリブを設け、このリブによりポンプ内周面と金属製のスリーブとの間で空気層を形成したことを特徴とする請求項1から5のうちの1項に記載の船外機の冷却水ポンプ装置。
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