JP2004277972A - 高強度炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents

高強度炭素繊維及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高強度のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を提供する。
【解決手段】PAN系炭素繊維において、下式
空孔率(%)={1−(dobs×ρobs)÷(dgra×ρgra)}×100
obs:炭素繊維の広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値(nm)、dgra=0.335 nm:黒鉛の広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値(nm)(理論値)、ρobs:炭素繊維の比重、ρgra=2.268:黒鉛の比重(理論値)
で表される空孔率(%)が17.6%以下であり、且つ元素分率N/C(%)が下式
N/C(%) ≧ 0.3799T−5.9343
2.45 ≦ T ≦ 45
T:炭素繊維の比抵抗値(Ω・g/m
の範囲内である炭素繊維。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高強度の炭素繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を原料として高性能の炭素繊維が製造されることは知られており、航空機を始めスポーツ用品まで広い範囲で使用されている。
【0003】
とりわけ、高強度・高弾性の炭素繊維は宇宙航空用途に使用されており、これらは更なる高性能化が求められている。
【0004】
PAN系前駆体繊維を用いて炭素繊維を製造する方法としては、前駆体繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気下で延伸又は収縮を行いながら酸化処理(耐炎化処理)を行った後、300〜1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化を行う方法が知られている。
【0005】
とりわけ300〜900℃付近での炭素化工程の繊維処理方法は、炭素繊維の強度発現に大きく影響を及ぼし、これまでに多くの検討が行われてきた。
【0006】
特許文献1では、耐炎化繊維を300〜800℃において、不活性雰囲気中25%までの範囲で伸長を加えながら炭素化し、耐炎化繊維の原長に対し負とならないように処理することによって、高強度の炭素繊維を得ることが開示されている。
【0007】
また、特許文献2、特許文献3では、500℃付近での繊維長さの急激な変化をコントロールするため、300〜500℃、500〜800℃と、工程を2つに分けることで緻密な高強度炭素繊維が得られることが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献4では、耐炎化繊維を不活性雰囲気中、比重が1.45に達するまでの昇温速度を50〜300℃/分、さらに比重が1.60〜1.75に達するまでの昇温速度を100〜800℃/分とする2段炭素化を行うことにより、ボイドの少ない炭素繊維が得られることが開示されている。
【0009】
特許文献5でも特許文献4と同様に、300〜800℃において昇温勾配をコントロールする事により緻密な炭素繊維が得られることが開示されている。
【0010】
しかしながら、緻密、高配向度且つ高強度を有する炭素繊維を得るためには、最適な繊維物性での緊縮を行う事が必要であり、これらの方法に記載されている温度範囲や、昇温勾配だけでは繊維の緻密さをコントロールする事は難しい。また、パラメーターとして比重だけでは、緻密、高配向度且つ高強度を有する炭素繊維を得ることは困難である。従って、より緻密、高配向度且つ高強度の炭素繊維を得るための方法が求められている。
【0011】
【特許文献1】
特開昭54−147222号公報(第1〜3頁)
【特許文献2】
特開昭59−150116号公報(第1〜2頁)
【特許文献3】
特公平3−23651号公報(第1〜3頁)
【特許文献4】
特公平3−17925号公報(第1〜3頁)
【特許文献5】
特開昭62−231028号公報(第1〜3頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上記問題を解決するために種々検討しているうちに、炭素繊維用前駆体繊維を炭素化炉で焼成して炭素化することにより得られる炭素繊維であって、この炭素繊維において広角X線測定での面間隔d002の値と比重とから求められる空孔率が所定関係にあり、且つ、同炭素繊維の元素分率N/Cと比抵抗値との間に一定の関係がある炭素繊維は、高強度であることを発見した。これらの関係を満足する炭素繊維は、第一炭素化工程と第二炭素化工程を経て製造される。即ち、PAN系耐炎化繊維を炭素化する炭素化工程の第一炭素化工程を、一次延伸処理と二次延伸処理とに分け、それぞれ所定の温度及び延伸倍率で延伸処理すると共に、一次延伸処理を、耐炎化繊維の、元素分率N/C、弾性率、及び広角X線測定における結晶子サイズが所定の範囲を満たす範囲で行い、且つ二次延伸処理を、一次延伸処理後の繊維の、比重、及び広角X線測定における結晶子サイズが所定の範囲を満たす範囲で行うことにより、高強度の炭素繊維を製造することが可能となる。本発明は上記発見を基礎として完成するに到った。
【0013】
よって、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した、高強度の炭素繊維及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
【0015】
〔1〕 ポリアクリロニトリル系の炭素繊維において、下式
【0016】
【数3】
Figure 2004277972
で表される空孔率(%)が17.6%以下であり、且つ元素分率N/C(%:原子数の百分率)が下式
【0017】
【数4】
Figure 2004277972
の範囲内である炭素繊維。
【0018】
〔2〕 不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、比重1.3〜1.4のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維を300〜900℃の温度範囲内で、1.03〜1.06の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理した後、第二炭素化工程において800〜1700℃の温度範囲内で炭素化する炭素繊維の製造方法において、第一炭素化工程における一次延伸処理を下記条件
(1) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の元素分率N/C(%:原子数の百分率)が31%に低下するまでの範囲
(2) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲
(3) 比重が1.5に達するまでの範囲
(4) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲
の(1)乃至(4)のいずれをも満たす範囲で行い、第一炭素化工程における二次延伸処理を下記条件
(5) 一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲
(6) 一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲
の(5)、(6)の両方を満たす範囲で行う〔1〕に記載の炭素繊維の製造方法。
【0019】
〔3〕 第一炭素化工程後における繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が76.0%以上である〔2〕に記載の炭素繊維の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の炭素繊維はPAN系の炭素繊維であって、その空孔率(%)が17.6%以下である。炭素繊維の強度は、空孔率が高くなるにつれて低くなり、17.6%を超えると高強度の炭素繊維を得ることが困難になるので好ましくない。
【0022】
この空孔率(%)は、構造的な緻密性を示す物性の比重と、しなやかさを示す物性の広角X線測定での面間隔d002とからなるファクターであり、下式
【0023】
【数5】
Figure 2004277972
により求められる。
【0024】
また、本発明の炭素繊維は、元素分率N/C(%:原子数の百分率)が下式
【0025】
【数6】
Figure 2004277972
の範囲内である。
【0026】
炭素繊維における元素分率N/C(%)が上記比抵抗値範囲(24.5 ≦ T ≦45)において上式を満たさなければ、より緻密な構造かつ柔軟性に富んだ炭素繊維を得る事はできない。
【0027】
炭素繊維の比抵抗値が24.5Ω・g/m未満の場合は、炭素繊維のグラファイト化がよりいっそう進み、炭素量が増え、トータルの窒素量が急激に減少し、炭素繊維における元素分率N/Cと比抵抗値との関係が上式を満足しない領域となるので好ましくない。
【0028】
炭素繊維の比抵抗値が45Ω・g/mを超える場合は、炭素繊維としての構造ができておらず、強度が低いので好ましくない。
【0029】
本発明の炭素繊維は、その物性が上記範囲内にあれば、その製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の製造方法により製造することができる。
【0030】
本発明の炭素繊維の製造原料に用いるPAN系前駆体繊維は、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有する単量体を重合して得た紡糸溶液を湿式又は乾湿式紡糸法において紡糸した後、水洗・乾燥・延伸して得られる繊維を用いることが好ましい。これらの前駆体繊維は、従来公知のものが何ら制限なく使用できる。
【0031】
得られた前駆体繊維は、加熱空気中200〜280℃で耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.3の範囲で処理され、繊維比重1.3〜1.4のPAN系耐炎化繊維とするものであり、耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無い。
【0032】
本発明の炭素繊維の製造方法においては、上記耐炎化繊維を、不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、300〜900℃の温度範囲内で、1.03〜1.06の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理した後、第二炭素化工程において800〜1700℃の温度範囲内で炭素化する。
【0033】
上記第一炭素化工程において、一次延伸処理では、PAN系耐炎化繊維の元素分率N/C(%:原子数の百分率)が31%に低下するまでの範囲、同繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲、且つ同繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲で、1.03〜1.06の延伸倍率で、延伸処理を行う。
【0034】
上記のPAN系耐炎化繊維の元素分率N/Cが31%に低下するまでの範囲(図1に示す範囲)で延伸(1.03〜1.06倍)を行うことにより、ボイドの生成を抑制しながら、配向度の向上が出来、高品位の一次延伸処理繊維を得ることができる。
【0035】
これに対し、元素分率N/Cが31%より低い範囲での1.03倍以上の一次延伸は、無理な延伸によりボイドの生成を増長し、最終的な炭素繊維の構造欠陥、比重低下を招くため好ましくない。よって、上記元素分率N/Cの範囲内で一次延伸処理を行う。
【0036】
PAN系耐炎化繊維弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲は、図2に示すBの範囲である。
【0037】
耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲で延伸(1.03〜1.06倍)を行うことにより、糸切れを抑制し、低弾性率部が効率的に延伸され高配向化が可能となり、緻密な一次延伸処理繊維を得ることができる。
【0038】
これに対し、弾性率が極小値に低下する前(Aの範囲)での1.03倍以上の延伸は、糸切れを増加させ、著しい強度低下を招くので好ましくない。
【0039】
また、弾性率が極小値まで低下し、次いで9.8GPaに増加した後(Cの範囲)での1.03倍以上の延伸は、繊維の弾性率が高く、無理な延伸を強いるので、繊維欠陥・ボイドを増加させ、延伸の効果を損なうので好ましくない。よって、上記弾性率の範囲内で一次延伸処理を行う。
【0040】
PAN系耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズは、一次延伸処理時の温度上昇につれて増加し続ける。その増加状態は、図3に示されるように結晶子サイズ0.9nm付近と1.45nm付近に変曲点を持つ曲線である。よって前述の、結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲は、後の変曲点に達するまでの範囲である。
【0041】
耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲で延伸(1.03〜1.06倍)を行うことにより、より緻密でボイドの少ない、一次延伸処理繊維を得ることができる。
【0042】
これに対し、結晶子サイズが1.45nmに達した後での1.03倍以上の一次延伸は、無理な延伸により糸切れを発生させるだけではなく、ボイドの発生を招くため、好ましくない。
【0043】
また、一次延伸における延伸倍率が1.03倍未満では、延伸の効果が少なく、高強度の炭素繊維を得ることができないので好ましくない。延伸倍率が1.06倍より高いと、糸切れを招き、高品位及び高強度の炭素繊維を得ることはできないので好ましくない。
【0044】
上記方法により得られた一次延伸処理繊維は、引き続いて以下の二次延伸処理を施す。
【0045】
一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲、及び一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行う。
【0046】
二次延伸処理中における一次延伸処理後の繊維の比重は、図4に示されるように温度上昇につれて、変化しない(上昇しない)条件と、上昇し続ける条件と、上昇後下降する条件(二次延伸処理中に繊維比重が低下する条件)とがある。
【0047】
これらの条件のうち、一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける条件で0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行うことにより、即ち変化しない区間を含むことなく又は低下することなく上昇し続ける条件で延伸処理を行うことにより、ボイド生成を抑制し、最終的に緻密な炭素繊維を得ることができる。
【0048】
これに対し、二次延伸処理中に繊維比重が低下すると、ボイドの生成を増長し、緻密な炭素繊維を得ることができず、好ましくない。また、二次延伸処理中に繊維比重が変化しない区間を含むと、二次延伸処理の効果が見られないので、好ましくない。よって、二次延伸処理は繊維比重が上昇し続ける範囲である。
【0049】
また、一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行うことにより、結晶が成長することなく、緻密化され、ボイドの生成も抑制でき、最終的に高い緻密性を有した炭素繊維を得ることができる。
【0050】
これに対し、結晶子サイズが1.45nmより大きくなる範囲での二次延伸処理は、ボイドの生成を増長すると共に、糸切れによる品位低下を招き、高強度の炭素繊維を得ることができず、好ましくない。よって、二次延伸処理は上記結晶子サイズの範囲内で行う。
【0051】
なお、二次延伸処理における延伸倍率が0.9倍未満では、配向度の低下が著しく、高強度の炭素繊維を得ることができないので好ましくない。延伸倍率が1.01倍より高いと、糸切れを招き、高品位及び高強度の炭素繊維を得ることはできないので好ましくない。よって、二次延伸処理における延伸倍率は0.9〜1.01の範囲内が好ましい。
【0052】
また、高強度の炭素繊維を得るためには、第一炭素化処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が76.0%以上あることが好ましい。
【0053】
76.0%未満では最終的に高強度の炭素繊維を得ることができないので好ましくない。
【0054】
上記のごとくして、第一炭素化工程における耐炎化繊維の一次延伸処理、二次延伸処理は行われ、第一炭素化処理繊維となる。また、上記第一炭素化工程は、一つの炉若しくは二つ以上の炉で、連続的若しくは別々に処理しても差し支えなく、前述の処理条件範囲内での処理によるところであれば何ら問題はない。
【0055】
上記第一炭素化処理繊維は引き続き、第二炭素化工程において、不活性雰囲気中800〜1700℃の温度範囲内で炭素化処理される。第二炭素化条件は公知の条件で良い。
【0056】
従来の第一炭素化工程で得られる第一炭素化処理繊維を、800〜1700℃の温度範囲で高張力下において第二炭素化処理する場合は、比重が低下し、比重が1.81以上のものを得る事は困難であると共に、糸切れが多くなるなどの問題がある。また、従来の方法では高配向の炭素繊維を得る事は困難である。
【0057】
これに対し、本発明の方法で得られる上記第一炭素化処理繊維は、800〜1700℃の温度範囲で第二炭素化処理する場合、高張力下でも比重の低下や糸切れを起こすことなく、比重が1.82以上のものも得ることができる。本発明の方法で得られる第二炭素化処理繊維は、高張力下で処理するため高配向のものを容易に得る事ができる。
【0058】
このように、本発明の方法は、第二炭素化工程における高張力下での炭素化処理が比重の低下や糸切れを起こすことなく可能であり、配向度アップが可能であり、高強度の第二炭素化処理繊維が得られる。
【0059】
得られた第二炭素化処理繊維、即ち第二炭素化工程終了後に得られる炭素繊維は、引き続き公知の方法により、表面処理を施した炭素繊維となり得る。さらに、炭素繊維の後加工をしやすくし、取扱性を向上させる目的で、サイジング処理することが好ましい。サイジング方法は、従来の公知の方法で行うことができ、サイジング剤は、用途に即して適宜組成を変更して使用し、均一付着させた後に、乾燥することが好ましい。
【0060】
なお、第二炭素化処理繊維の単繊維径は3〜8μmであることが好ましい。
【0061】
このようにして得られた炭素繊維は、高強度であり、本発明の製造方法によりなし得るものである。
【0062】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における延伸条件、延伸後、及び炭素繊維物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
【0063】
<単繊維弾性率>
JIS R 7601に規定された方法により測定した。
【0064】
<元素分率N/C>
元素分析装置(FISONS INSTRUMENTS社製)により炭素の原子数(C)及び窒素の原子数(N)を測定し、(N/C)×100の式から原子数の百分率として算出した。
【0065】
<比重>
アルキメデス法により測定した。試料繊維はアセトン中にて脱気処理し測定した。
【0066】
<結晶子サイズ、配向度、面間隔>
X線回折装置:リガク製RINT1200L、コンピュータ:日立2050/32を使用し、回折角26°における結晶子サイズを回折パターンより、配向度を半価幅より、面間隔d002の値を回折線ピーク位置2θより求めた。
【0067】
<ストランド強度、弾性率>
JIS R 7601に規定された方法により測定した。
【0068】
<比抵抗値>
比抵抗値の測定に関しては、JIS−R−7601に規定する体積抵抗率のストランドの試験A法を参考に行うことができる。ただし、JIS−R−7601では、電気抵抗値に、炭素繊維の比重を掛け合わせた体積抵抗率を求めており、比抵抗値〔X(Ω・g/m)〕を求めるには、下式
【0069】
【数7】
Figure 2004277972
を用いて行った。なお、抵抗測定時の試験片長については、1m程度で測定することが好ましい。
【0070】
実施例1
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を湿式又は乾湿式紡糸し、水洗・乾燥・延伸・オイリングして繊維直径9.0μmの前駆体繊維を得た。この繊維を加熱空気中、入口温度(最低温度)200℃、出口温度(最高温度)250℃の熱風循環式耐炎化炉で耐炎化処理し、繊維比重1.35のPAN系耐炎化繊維を得た。
【0071】
この耐炎化繊維を不活性雰囲気中、入口温度(最低温度)を300℃に調節し、出口温度(最高温度)を400〜850℃の範囲に調節した第一炭素化炉において、一次延伸処理後の繊維比重が1.36となるように調節し、次いで二次延伸処理を表1に示す条件で実施した。
【0072】
一次延伸は元素分率N/C(%:原子数の百分率)を図1の範囲内で、弾性率を図2のBの範囲内で、延伸倍率を1.04倍で処理した。この一次延伸処理後の繊維、即ち一次延伸処理繊維は、元素分率N/C35.0%、弾性率7.84GPa、比重1.36、結晶子サイズ0.9nmの、糸切れのない繊維であった。
【0073】
次いで、この一次延伸処理繊維を、引き続き第一炭素化工程において、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.01倍で二次延伸処理したところ、比重1.62、配向度78.4%の、糸切れのない二次延伸処理繊維が得られた。
【0074】
さらに、上記処理繊維を不活性雰囲気中、800〜1700℃の第二炭素化炉において処理し、引き続き公知の方法にて表面処理、サイジングを施し、乾燥して比重1.817、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3346nm、空孔率17.6%、繊維直径5.1μm、ストランド強度6320MPa、ストランド弾性率284.2GPa、比抵抗値25.7Ω・g/m、元素分率N/C3.89%(原子数の百分率)の表2に示す糸切れの無い炭素繊維を得た。
【0075】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0076】
実施例2
表1に示すように、一次延伸倍率を1.06倍とし、二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.70、配向度79.5%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行い、比重1.827、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3450nm、空孔率17.0%、繊維直径5μm、ストランド強度6470MPa、ストランド弾性率283.2GPa、比抵抗値25.6Ω・g/m、元素分率N/C3.96%(原子数の百分率)の表2に示す糸切れの無い炭素繊維を得た。
【0077】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0078】
実施例3
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のBの範囲内で、延伸倍率1.05倍で処理し、弾性率8.82GPa、元素分率N/C33%、比重1.41、結晶子サイズ 1.2nmの一次延伸処理繊維を得、この処理繊維の二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.69、配向度79.4%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0079】
その結果、比重1.825、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3449nm、空孔率17.2%、繊維直径5.1μm、ストランド強度6390MPa、ストランド弾性率282.2GPa、比抵抗値25.6Ω・g/m、元素分率N/C3.94%の表2に示す糸切れのない炭素繊維を得た。
【0080】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0081】
実施例4
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のBの範囲内で、延伸倍率1.04倍で処理し、弾性率9.31GPa、元素分率N/C33%、比重1.45、結晶子サイズ 1.35nmの一次延伸処理繊維を得、この処理繊維の二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.68、配向度79.3%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0082】
その結果、比重1.824、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3453nm、空孔率17.1%、繊維直径5.1μm、ストランド強度6410MPa、ストランド弾性率283.2GPa、比抵抗値25.6Ω・g/m、元素分率N/C3.90%の表2に示す糸切れのない炭素繊維を得た。
【0083】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0084】
比較例1
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のAの範囲内で、延伸倍率1.04倍で処理し、弾性率8.82GPa、元素分率N/C35.5%、比重1.36、結晶子サイズ0.9nmの一次延伸処理繊維を得た以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、この一次延伸処理から二次延伸処理に移ったところ、糸切れが多く発生し、二次延伸不可能であった。
【0085】
比較例2
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のCの範囲内で、延伸倍率1.04倍で処理し、弾性率10.0GPa、元素分率N/C30.5%、比重1.51、結晶子サイズ1.45nmの、糸切れのない一次延伸処理繊維を得、この処理繊維の二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.65、配向度79.3%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0086】
しかし、得られた炭素繊維は、糸切れはなかったものの表2に示すように比重1.805、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3450nm、空孔率18.0%、繊維直径5.1μm、ストランド強度6120MPa、ストランド弾性率283.2GPa、比抵抗値25.7Ω・g/m、元素分率N/C3.85%であり、この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあるが、その強度は、空孔率が高く低強度であった。
【0087】
比較例3
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のCの範囲内で、延伸倍率1.05倍で処理し、弾性率10.3GPa、元素分率N/C29%、比重1.53、結晶子サイズ1.45nmの一次延伸処理繊維を得た以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、この一次延伸処理から二次延伸処理に移ったところ、糸切れが多く発生し、二次延伸不可能であった。
【0088】
比較例4
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のBの範囲内で、延伸倍率1.02倍で処理し、弾性率7.84GPa、元素分率N/C35%、比重1.36、結晶子サイズ 0.9nmの一次延伸処理繊維を得、この処理繊維の二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.65、配向度79.0%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0089】
しかし、得られた炭素繊維は、糸切れはなかったものの表2に示すように比重1.812、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3451nm、空孔率17.7%、繊維直径5.2μm、ストランド強度6200MPa、ストランド弾性率281.3GPa、比抵抗値25.6Ω・g/m、元素分率N/C3.92%であり、この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあるが、その強度は、空孔率が高く低強度であった。
【0090】
比較例5
表1に示すように、一次延伸処理を、図1のBの範囲内で、延伸倍率1.07倍で処理し、弾性率7.84GPa、元素分率N/C35%、比重1.36、結晶子サイズ 0.9nmの一次延伸処理繊維を得、この処理繊維の二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.65、配向度79.0%の、糸切れを生じた二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0091】
しかし、得られた炭素繊維は、表2に示すように比重1.820、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3450nm、空孔率17.4%、繊維直径4.9μm、ストランド強度6180MPa、ストランド弾性率282.2GPa、比抵抗値25.5Ω・g/m、元素分率N/C3.96%であり、糸切れを生じていた。この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあるが、その強度は、空孔率が低いにも拘らず低強度であった。
【0092】
比較例6
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率0.80倍で行い、比重1.60、配向度77.5%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0093】
しかし、得られた炭素繊維は、糸切れはなかったものの表2に示すように比重1.810、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3446nm、空孔率17.9%、繊維直径5.2μm、ストランド強度6190MPa、ストランド弾性率283.2GPa、比抵抗値25.7Ω・g/m、元素分率N/C3.87%であり、この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあるが、その強度は、空孔率が高く低強度であった。
【0094】
実施例5
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.01倍で行い、比重1.72、配向度79.6%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0095】
その結果、比重1.830、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3452nm、空孔率16.9%、繊維直径5μm、ストランド強度6500MPa、ストランド弾性率284.2GPa、比抵抗値25.5Ω・g/m、元素分率N/C3.98%の表2に示す糸切れのない炭素繊維を得た。
【0096】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0097】
実施例6
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率0.90倍で行い、比重1.78、配向度80.2%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0098】
その結果、比重1.828、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3449nm、空孔率17.0%、繊維直径5μm、ストランド強度6400MPa、ストランド弾性率285.2GPa、比抵抗値25.4Ω・g/m、元素分率N/C3.91%の表2に示す糸切れのない炭素繊維を得た。
【0099】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0100】
実施例7
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.01倍で行い、比重1.81、配向度80.5%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0101】
その結果、比重1.831、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3453nm、空孔率16.8%、繊維直径5μm、ストランド強度6440MPa、ストランド弾性率284.2GPa、比抵抗値25.4Ω・g/m、元素分率N/C3.93%の表2に示す糸切れのない炭素繊維を得た。
【0102】
この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあり、その強度は高いものであった。
【0103】
比較例7
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.02倍で行い、比重1.80、配向度80.3%の、糸切れを生じた二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0104】
しかし、得られた炭素繊維は、表2に示すように比重1.83、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3448nm、空孔率17.0%、繊維直径4.9μm、ストランド強度6300MPa、ストランド弾性率285.2GPa、比抵抗値25.4Ω・g/m、元素分率N/C3.93%であり、糸切れを生じていた。この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあるが、その強度は、空孔率が低いにも拘らず低強度であった。
【0105】
比較例8
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまでにおいて比重が変化しない(上昇しない)範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.50、配向度77.0%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0106】
しかし、得られた炭素繊維は、糸切れはなかったものの表2に示すように比重1.797、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3467nm、空孔率18.0%、繊維直径5μm、ストランド強度6170MPa、ストランド弾性率281.3GPa、比抵抗値25.8Ω・g/m、元素分率N/C3.82%であり、この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の下方にあり、その強度は、空孔率が高く低強度であった。
【0107】
比較例9
実施例1で得た一次延伸処理繊維の二次延伸処理を、表1に示すように、二次延伸が終了するまでにおいて比重が上昇した後下降する範囲、且つ結晶子サイズが1.47nmとなる範囲で、延伸倍率1.01倍で行い、比重1.78、配向度80.3%の、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。
【0108】
しかし、得られた炭素繊維は、糸切れはなかったものの表2に示すように比重1.81、広角X線測定(回折角26°)における面間隔d002の値0.3447nm、空孔率17.9%、繊維直径5.2μm、ストランド強度6190MPa、ストランド弾性率284.2GPa、比抵抗値25.5Ω・g/m、元素分率N/C3.93%であり、この炭素繊維の比抵抗値(x)と元素分率N/C(y)とをプロットした点は、図5に示すように、直線y=0.3799x−5.9343の上方にあるが、その強度は、空孔率が高く低強度であった。
【0109】
【表1】
Figure 2004277972
【0110】
【表2】
Figure 2004277972
【0111】
【発明の効果】
本発明の炭素繊維及び本発明の製造方法によって得られる炭素繊維は、その元素分率N/Cと比抵抗値との間に一定の関係を持ち、かつ空孔率が低く、緻密で高強度であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一炭素化工程における一次延伸時の温度上昇に対するPAN系耐炎化繊維の元素分率N/Cの推移を示すグラフである。
【図2】第一炭素化工程における一次延伸時の温度上昇に対するPAN系耐炎化繊維の弾性率の推移を示すグラフである。
【図3】第一炭素化工程における一次延伸時の温度上昇に対するPAN系耐炎化繊維の結晶子サイズの推移を示すグラフである。
【図4】第一炭素化工程における二次延伸時の温度上昇に対する一次延伸処理繊維の比重の推移を示すグラフである。
【図5】実施例1乃至7、及び、比較例1乃至9における炭素繊維の元素分率N/Cと比抵抗値との関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. ポリアクリロニトリル系の炭素繊維において、下式
    Figure 2004277972
    で表される空孔率(%)が17.6%以下であり、且つ元素分率N/C(%:原子数の百分率)が下式
    Figure 2004277972
    の範囲内である炭素繊維。
  2. 不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、比重1.3〜1.4のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維を300〜900℃の温度範囲内で、1.03〜1.06の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理した後、第二炭素化工程において800〜1700℃の温度範囲内で炭素化する炭素繊維の製造方法において、第一炭素化工程における一次延伸処理を下記条件
    (1) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の元素分率N/C(%:原子数の百分率)が31%に低下するまでの範囲
    (2) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲
    (3) 比重が1.5に達するまでの範囲
    (4) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲
    の(1)乃至(4)のいずれをも満たす範囲で行い、第一炭素化工程における二次延伸処理を下記条件
    (5) 一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲
    (6) 一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲
    の(5)、(6)の両方を満たす範囲で行う請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
  3. 第一炭素化工程後における繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が76.0%以上である請求項2に記載の炭素繊維の製造方法。
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