JP2004277862A - 水素吸蔵体の製造方法、二次電池用電極の製造方法 - Google Patents

水素吸蔵体の製造方法、二次電池用電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い水素吸蔵量を有し、かつ二次電池用電極として好適な水素吸蔵体の製造方法を提供する。
【解決手段】水素の吸蔵および放出を担う水素吸蔵粉体と、当該水素吸蔵粉体の表面を覆う被覆層とを備えた水素吸蔵体の製造方法において、水素吸蔵粉体を得る工程aと、工程aで得られた水素吸蔵粉体を運動させつつ、被覆層を気相法により形成する工程bとを備えるようにした。水素吸蔵粉体を運動させることにより、水素吸蔵粉体が容器内で集積された状態においても、被覆層を水素吸蔵粉体のほぼ表面全体にムラなく形成させることができる。しかも、本発明では気相法を用いるため、薄くかつ厚さの均一な被覆層を形成することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素の吸蔵および放出が可能な水素吸蔵体、特に、電気容量が大きく、かつ、大電流での充放電が可能な(高率放電特性に優れた)水素吸蔵体の製造方法等に関するものである。本発明の水素吸蔵体は、二次電池用電極として好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
現在、化石燃料の使用によって増大するNOx(窒素酸化物)を原因とする酸性雨や、COによる地球温暖化が懸念されており、これらの環境破壊が深刻な問題となってきている。その中でクリーンエネルギーとして水素エネルギーの実用化が世界的に注目されてきている。水素は地球上に無尽蔵に存在する水の構成元素であって、種々の一次エネルギーを用いて作り出すことが可能であるばかりか、副生成物が水だけであるために環境破壊の心配がなく、また電力に比べて貯蔵が比較的容易であるなど優れた特性を有している。
【0003】
このため、近年、これら水素の貯蔵および輸送媒体として水素吸蔵合金の研究開発および実用化検討が活発に実施されている。これら水素吸蔵合金とは、適当な条件で水素を吸収、放出できる合金のことである。こうした水素吸蔵合金は、水素の貯蔵および輸送媒体としての用途に限らず、二次電池用電極としても用いられる。但し、水素吸蔵合金を二次電池用電極として用いる場合には、水から水素原子を分離する、あるいはその逆に水素原子と水酸化物イオンを結合させ水にするための触媒が必要となる。こうした触媒として、Ni,Pd,Ptが知られている。
【0004】
従来から二次電池用電極として用いられてきた水素吸蔵合金としては、LaNi系合金がある。LaNi系合金は、合金中にNiを含有しているため、これが触媒となって電気化学的反応活性を示すと考えられている。LaNi系合金の高率放電特性は他の合金系と比較して劣るものではないが、その水素吸蔵量は高々1.4mass%前後と少ない点が問題となっている。また、LaNi系合金の理論的な電気容量は372mAh/g程度と見積もられており、その実測値も約300mAh/gと、理論的にも実測的にも、その電気容量が不十分であった。LaNi系合金の電気容量を改善するために、(La,Mg)Ni(x=3)という組成系が検討され、河野らはLa0.67Mg0.33Ni2.83Co0.2によれば、理論容量483mAh/gに対し、400mAh/gが得られることを報告している(非特許文献1参照)。これは、高率放電特性も400mA/gで400mAh/gが得られている。しかしながら、それでもまだ理論容量は不十分であった。
【0005】
理論容量と水素吸蔵量は密接な関係を有しており、大きな理論容量を得るためには、水素吸蔵量が大きい金属または合金が必要となる。LaNi系合金よりも水素吸蔵量が大きい金属または合金として、Mg,Mg合金,Vが知られており、Mg,Mg合金では約2000mAh/g、Vでは約1000mAh/gの理論容量が見込まれる。また、近年になり、水素吸蔵サイト数が多く、合金の単位重量当りにおいて吸蔵できる理論水素量が約4mass%、(H/M=2、H:吸蔵水素原子、M:合金構成元素)と極めて大きい体心立方構造(以後「bcc相」、「bcc型」あるいは「bcc」と呼称する)を有するTi−Cr系合金が注目され、実用化を目指して数多くの検討が始まっている。bccを主相とするTi−Cr系合金によれば、約1000mAh/gの理論容量が見込まれる。
【0006】
Ti−Cr系合金,Mg,Mg合金,Vは、上述したように高い理論容量を有するが、Ni等の電気化学的に活性な元素を含有しない限りは電気化学的には充放電しない。そして、電気化学的にTi−Cr系合金等を充放電させるために水素吸蔵合金中にNi等の電気化学的に活性な元素を含有させると、Ti−Cr系合金等が本来有している水素吸蔵量が大幅に低下してしまうという問題がある。Niを含む水素吸蔵合金、例えばTi−Cr−Ni系合金は、bcc単相のTi−Cr系合金と較べて単位重量あたりの水素吸蔵量が低下してしまうのみならず、6NのKOH等の強アルカリ性の電解液中では二次電池用電極として動作しないという問題もある。こうした問題に鑑みて、特開2001−273891号公報は、水素吸蔵合金を構成する基本組成からNiを除き、かつ水素吸蔵合金粉末の表面にNiを被覆させる水素吸蔵合金電極の製造方法を開示している。特開2001−273891号公報では、Niを被覆させる方法として、Ni粉末を被覆させる、水素吸蔵合金粉末の表面にNiをメッキする、または水素吸蔵合金粉末をニッケルカルボニル含有ガスと混合し、ガスを熱分解させて合金粉末の表面にNiを被覆させることを提案している。また、特開2001−273891号公報と同様の技術的思想に基づき、特開2000−303101号公報でも、Ti−Cr系合金の表面に、メッキ法、ニッケルカルボニルガスを用いた気相法、またはメカニカルアロイング法によりNi付加相を形成することが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−273891号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2000−303101号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
金属 vol.72 No.6(2002)p.545 Mater Tran, Jim (vol.43 No.7 p.1732−1736, 2002)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001−273891号公報、特開2000−303101号公報に記載の方法は、Ti−Cr系合金を活性化させるという点では、有効である。但し、メカニカルアロイング法によりNiを被覆させた場合には、Niの分散性が不十分、つまりNiが偏析してしまい、触媒として機能するNiの量が不十分となるためTi−Cr系合金の電気化学的反応活性が不十分となるという問題がある。一方、メッキ法によれば水素吸蔵合金粉末のほぼ全表面をNiで被覆できるが、メッキ液により水素吸蔵合金粉末が腐食されやすく、二次電池用電極として用いた場合に特性が劣るという問題がある。さらに、特開2001−273891号公報、特開2000−303101号公報では、ニッケルカルボニルガスを用いた気相法により、水素吸蔵合金粉末の表面にNiを被覆させる方法を開示している。しかしながら、トレー内に収容された水素吸蔵合金粉末の全表面にニッケルカルボニルガスを接触させるのは困難であり、特に水素吸蔵合金粉末が堆積された状態ではそれが顕著となる。このため、水素吸蔵合金粉末のほぼ表面全体をNiで厚さ均一に被覆するに至っておらず、この水素吸蔵合金粉末を二次電池用電極として用いた場合には、二次電池用電極の高率放電特性が不十分であるという問題がある。しかも、ニッケルカルボニルガスは毒性が強い。
よって、本発明は上記した問題点に着目してなされたもので、高い水素吸蔵量を有し、かつ二次電池用電極として好適な水素吸蔵体の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は様々な検討を行った。その結果、水素吸蔵粉体を覆う被覆層を形成する際に、水素吸蔵粉体を運動させることが極めて有効であることを知見した。すなわち、本発明は、水素の吸蔵および放出を担う水素吸蔵粉体と、当該水素吸蔵粉体の表面を覆う被覆層とを備えた水素吸蔵体の製造方法であって、水素吸蔵粉体を得る工程aと、工程aで得られた水素吸蔵粉体を運動させつつ、被覆層を気相法により形成する工程bとを備えたことを特徴とする水素吸蔵体の製造方法を提供する。ここで、運動とは、直線的な運動(往復運動、一方向の運動の両者を含む)、回転運動、曲線的な運動、あるいはこれらの組合せを含む。また、これらの運動は二次元的なものであってもよいし、三次元的なものであってもよい。水素吸蔵粉体を運動させることにより、水素吸蔵粉体が容器内で堆積された状態においても、被覆層を水素吸蔵粉体のほぼ表面全体にムラなく形成させることができる。しかも、本発明では気相法を用いるため、薄くかつ厚さの均一な被覆層を形成することができる。運動としては、水素吸蔵粉体を転動させるという形態を好適に採用することができる。水素吸蔵粉体を転動させるには、水素吸蔵粉体が収容されたトレー等の容器に振動を加える、容器内の水素吸蔵粉体を撹拌棒で撹拌する、等の手法を用いればよい。但し、これらの手法に限定されるものではなく、いかなる手法であっても、水素吸蔵粉体が転動している状態で気相法による被覆処理が施されている形態を広く包含する。本発明の水素吸蔵体の製造方法において、上述した工程bに先立ち、水素吸蔵粉体に対して表面清浄化処理を施すことが望ましい。表面清浄化処理としては、イオンボンバード処理、レーザービーム照射処理や減圧中熱処理等が挙げられる。
【0010】
また、本発明は、水素の吸蔵および放出を担う水素吸蔵粉体と、この水素吸蔵粉体の表面を覆うとともに水素吸蔵粉体の電気化学的反応活性を担う被覆層とを備えた二次電池用電極の製造方法を提供する。本発明の二次電池用電極の製造方法では、水素吸蔵粉体の表面に被覆層を構成することとなる被覆金属が気相化された雰囲気を形成する。そして、この気相化された雰囲気内において、水素吸蔵粉体を運動させつつ被覆金属を水素吸蔵粉体に被覆させるのである。ここで、運動の一形態として水素吸蔵粉体を転動させることが挙げられる。また、水素吸蔵粉体としては、Mg,Mg合金,V,V合金,Ti−Cr系合金の少なくともいずれかを用いることができる。また、被覆層は、Ni,Pd,Ptの少なくともいずれかを含有するもので構成することができる。つまり、Ni,Pd,Ptのいずれかの元素を含有するものであればよく、Ni等の合金を用いて被覆層を構成してもよい。本発明の二次電池用電極の製造方法において、被覆金属を水素吸蔵粉体に被覆させる前に、水素吸蔵粉体に対して表面清浄化処理を施すことが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る水素吸蔵体は、水素の吸蔵および放出を担う水素吸蔵粉体と、この水素吸蔵粉体の表面に気相法によって形成された水素吸蔵粉体の電気化学的反応活性を担う被覆層とから構成される。本発明では、この被覆層を気相法により形成すること、そして被覆層を気相法で形成する際に水素吸蔵粉体を運動させることを主たる特徴としている。これにより、薄くかつ厚さの均一な被覆層を、水素吸蔵粉体のほぼ表面全体に形成することができるため、本発明に係る水素吸蔵体を二次電池用電極とした場合には、高特性、具体的には高容量かつ高率放電特性に優れた二次電池を得ることができる。ここで、本願明細書において、高容量とは、電気的な理論容量が大きく、かつ実測値も大きいことを意味する。また、高率放電特性とは、大電流での充放電が可能な能力を意味する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る水素吸蔵体の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る水素吸蔵体(二次電池用電極)10は、水素吸蔵粉体1と、この水素吸蔵粉体1のほぼ表面全体を覆うようにして形成された被覆層2とからなる2層構造で構成されている。
【0013】
はじめに、水素吸蔵粉体1について説明する。
水素吸蔵粉体1は、主に水素を吸蔵し、かつ放出するために機能する。本実施の形態では、水素吸蔵粉体1を、Mg(またはMg合金)、V(またはV合金)またはbccを主相とするTi−Cr系合金(以下、「bcc型Ti−Cr系合金」という)からなる粉体で構成する。Mgは、水素吸放出量が約7mass%以上と多い。また、Vおよびbccを主相とするTi−Cr系合金も、約3.5〜4mass%程度の水素吸放出量を示す。上述のように、水素吸蔵量と理論容量は密接に関連しているため、水素吸蔵体10を二次電池用電極として用いる場合には、水素吸蔵量が多く、高い理論容量を有するMg、Vまたはbccを主相とするTi−Cr系合金で構成することが望ましい。
【0014】
水素吸蔵粉体1をMg合金で構成する場合には、Mg−RE系合金(RE:希土類元素)、Mg−La系合金等を採用することができる。また、水素吸蔵粉体1をV合金で構成する場合には、V−Ti系合金等を採用することができる。
さらに、水素吸蔵粉体1としてTi−Cr系合金を選択する場合には、その組成が以下の式(1)で示されるものが望ましい。Ti−Cr系合金の組成を式(1)で示されるものにすることによって、bcc型Ti−Cr系合金を得ることができる。
Ti(100−a−b−c−d−e)CrX’…式(1)
【0015】
但し式(1)中、
20≦a(at%)≦80、0≦b(at%)≦10、0≦c(at%)≦30、0≦d(at%)≦30、0≦e(at%)≦10で表され、
前記XがRu、Rh、Os、Ir、Pd、Pt、Reの少なくとも1種の元素、
前記X’がV、Mo、W、Alのうち少なくとも1種の元素、
前記TがMn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Ta、BおよびCの少なくとも1種の元素、
前記LがYおよびランタノイド元素の少なくとも1種の元素である。
【0016】
X元素は、Ti−Cr系合金に微量に含有させるだけで高いbcc相形成能を有し、有害なC14型、C15型等のラーベス相をほとんど含まないbcc単相合金を得ることができる。このX元素とX’元素を同時に含有させることにより、高価なX元素の含有量を低く押さえ、コストと単位重量当りの水素吸蔵量においてバランスのとれた高い実用性を有する水素吸蔵合金を得ることができる。また、T元素を含有させることによって、プラトー圧の任意の制御、プラトー圧の平坦性制御、熱処理温度の制御、合金の耐食性向上、合金の集電特性等を制御することが可能となる。L元素は、酸素との親和力が強いため合金中に存在する酸素をL元素酸化物として除去する効果を発揮する。その結果、水素吸蔵量を安定化させ、かつ比較的酸素量の多い原料も工業的に有効に利用することも可能となる。
【0017】
以上、水素吸蔵粉体1をTi−Cr系合金で構成する場合について詳述した。以上の組成を採用することで、水素吸蔵粉体1としてのTi−Cr系合金を、bcc相を主相とするものとすることができる。合金がbcc相を主相とするか否かはX線回折により判断することができる。本発明においては、回折線の積分強度による以下の式(2)による割合(%)が50%以上のものをbcc相が主相の合金と定義する。
bcc(110)/[bcc(110)+{C14Laves(201)+C15Laves(311)}×2]…式(2)
なお、本発明において、bcc相のほかに存在し得る相は、ラーべス相である。
【0018】
図1では、球状の粉末で水素吸蔵粉体1が構成される例を示したが、粉末の形状はこれに限られるものではない。球状に限らず、楕円状または不定形の粉末を水素吸蔵粉体1を構成する粉末として用いることができる。但し、粉末の形状を球状に近い形とした場合には、被覆層2の厚さをより均一に形成することができるという利点がある。また、水素吸蔵粉体1を構成する粉末の平均粒径は、5〜300μmとすることが望ましい。平均粒径が5μmよりも小さいと、1粒子あたりの水素吸放出量が小さくなってしまう。一方、粉末の平均粒径が大きくなると、水素吸蔵放出反応に伴う体積変化が大きくなり、水素吸蔵粉体1の微粉化が進行しやすい。微粉化の進行は、水素吸蔵粉体1の比表面積の増大をもたらし、二次電池内での電解液との接触界面を増大させ、合金の腐食を進行させる。そして、合金の腐食は、単位体積当たりの水素吸蔵量の減少し、導電性の劣化につながるため、好ましくない。この微粉化の進行は、粒径が300μmを超えると顕著となる。よって、高い水素吸放出量を確保するためには、水素吸蔵粉体1を構成する粉末の粒径を5〜300μmとする。望ましい粒径は、10〜100μm、さらに望ましい粒径は20〜75μmである。
【0019】
次に、被覆層2について説明する。
被覆層2は、Ni,Pd,Ptの少なくともいずれかを含有する。つまり、Ni,Pd,Ptのいずれかの元素を含有するものであればよく、Ni等の合金を用いて被覆層2を構成してもよい。Ni,Pd,Ptは、水から水素原子を分離する、あるいはその逆に水素原子と水酸化物イオンを結合させ水にするための触媒として機能し、水素吸蔵粉体1に対し、電気化学的に水素を吸蔵および放出させる能力を付与すると考えられる。Ni,Pd,Ptの中では、コスト面からNiが望ましい。ここで、Ni,Pd,Ptのうち2種以上を用いて被覆層2とする場合の形態としては、以下の形態を含む。第1の形態として、例えばNi層からなる被覆層2の上にさらにPdからなる被覆層2を形成する形態がある(Pdからなる被覆層2の上にNiからなる被覆層2を形成してもよい)。第2の形態として、Ni−Pd合金からなる被覆層2を形成する形態がある。NiとPdの組合せに限らず、NiとPt,PdとPt,NiとPdとPtの組合せについても同様である。
【0020】
さて、図1に示したように、被覆層2は、水素吸蔵粉体1のほぼ表面全体を覆うようにして形成されている。本発明では、この被覆層2を気相法により形成する。気相法によれば、水素吸蔵粉体1の表面に薄くかつ厚さの均一な被覆層2を形成することができる。
【0021】
ここで、気相法を用いて水素吸蔵粉体1の表面全体に厚さの均一な被覆層2を形成させるには、水素吸蔵粉体1を運動させることが有効である。運動とは、上述した通り、直線的な運動(往復運動、一方向の運動の両者を含む)、回転運動、曲線的な運動を含む。また、これらの運動は二次元的なものであってもよいし、三次元的なものであってもよい。さらに、これらの運動は、時間的に連続的なものでも、間欠的なものであってもよい。例えば、被覆層2形成工程の間、水素吸蔵粉体1を始終運動させていてもよい、例えば5分運動、5分静止といったサイクルを複数回繰り返してもよい。以下では、この運動の一種である転動について説明する。
水素吸蔵粉体1の転動させるには、例えば、水素吸蔵粉体1をトレーに収容している場合に、このトレーに振動を加える手段を設ければよい。この場合の振動は、例えば超音波〜1Hzとすることができる。また、市販の振動器を用いて、1Hz〜500Hzの振動を加えるようにしてもよい。さらには、振動器に限らず、トレーを傾転させる方法、トレー内に収容された水素吸蔵粉体1を撹拌棒で撹拌させるような方法を用いて水素吸蔵粉体1を転動させることもできる。なお、水素吸蔵粉体1を転動させることができれば、その手段は限定されない。
【0022】
また、気相法で被覆層2を形成する場合の他の利点として、電解メッキ、無電解メッキまたはメカニカルアロイングのような方法に比べて、水素吸蔵粉体1の表面を清浄に保ちやすいということが挙げられる。また、メカニカルアロイング法に比べると、気相法は被覆層2を構成する元素を偏析させることなく、分布させることができるという利点もある。詳しくは後述するが、気相法によれば被覆層2の被覆率を90%以上まで向上させることができるのに対し、メカニカルアロイング法によれば被覆層2の被覆率は通常50%以下に留まる。被覆層2を構成することとなる被覆材料を多くすれば、被覆率は向上する。但し、被覆層2が厚くなり、水素吸蔵粉体1に対するその割合が大きくなり、水素吸蔵体10としての容量が低下してしまう。
【0023】
ここで、気相法とは、真空またはガス中に原子、分子、またはそれらの数nmから数百nmの微粒子化したもの、イオン、帯電粒子を発生させ対象物に堆積させる方法である。気相法としては、例えば、イオンプレーティング法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、高周波プラズマCVD法、等が挙げられる。なかでも、複数のターゲットを個々に、かつ同時に制御できるレーザーアブレーション法が特に好ましい。
【0024】
次に、本発明の水素吸蔵体10を得るための望ましい製造方法を説明する。
本発明の水素吸蔵体10の製造方法は、水素吸蔵粉体1を構成する母材を得る工程(以下、「母材作製工程」という)と、得られた母材に対し表面清浄化処理を施す工程(以下、「表面清浄化処理工程」という)と、表面清浄化処理がなされた母材の表面に被覆層2を形成する工程(以下、「被覆層2形成工程」という)と、被覆層2が形成された水素吸蔵粉体1を加熱保持する工程(以下、「アニール工程」という)とを含む。なお、母材作製工程では、bcc型Ti−Cr系合金粉末を作製する場合を例にして説明する。
以下、各工程を詳述する。
【0025】
<母材作製工程>
Ti−Cr系合金は、出発原料金属を例えばルツボ内で高周波等によって溶解することにより作製することができる。こうして得られたインゴットをその溶融点直下の温度領域に所定時間保持する加熱処理を行う。このときの加熱温度は、得ようとする組成の合金が有する溶融温度の直下領域にbcc型となる温度領域が存在することから、bcc型となる溶融温度直下の温度領域(1250〜1450℃)内で適宜選択すればよい。また、加熱保持する時間としては、短すぎると十分なbcc相の形成が得られず、逆に長すぎると熱処理コストが上昇するだけでなく、異相が析出して水素吸蔵特性が劣化する副作用も現れるおそれがある。したがって、加熱温度を考慮して適宜選択すればよいが、Ti−Cr系合金母材において、bcc相の形成能の優れたX元素またはX’元素を含有する場合には1分〜1時間の範囲の加熱で足りる。もっとも、1時間を超えて加熱保持することを妨げるものではない。加熱保持は、不活性ガス、例えばArガス中または真空中で行われるのが望ましい。合金の酸化防止のためである。なお、bcc相形成能に優れたX元素またはX’元素を比較的多く含有する場合には、加熱処理を行わなくてもbcc相を形成することができる。但し、かかる場合であっても、プラトー平坦性の向上のため、加熱処理を行うことが望ましい。
こうして得られたbcc型Ti−Cr系合金のインゴットを水素化粉砕し、100μm以下の粉末とする。この粉末が、水素吸蔵粉体1となる。
【0026】
<表面清浄化処理工程>
水素吸蔵粉体1は、大気に曝されたりして、表面が不純物ガスで汚染されている場合がある。よって、水素吸蔵粉体1の表面を清浄化するための処理を予め行った後に、以下の被覆層2形成工程に進むことが望ましい。水素吸蔵粉体1の表面を清浄化するための処理としては、粉体表面へのイオンボンバード処理やレーザービーム照射、減圧(または真空)下での粉体の加熱処理等が挙げられる。また、母材作製工程から後述する被覆層2形成工程までを水素吸蔵粉体1を大気に一切暴露させることなく一貫して行うことも有効である。
【0027】
ここで、イオンボンバード処理とは、加速した希ガスイオンを粉体表面にぶつけることにより、粉体表面に付着した不純物を除去して粉体表面を清浄化する処理である。希ガスイオンとしてはHe,Ne,Ar,Kr,Xe,Rnが挙げられるが、なかでもArが好ましい。
また、レーザービーム照射により粉体表面が清浄化されるのは、照射されたレーザービームにより、素地金属としての粉体が急速に加熱され、一種のプラズマ状態を形成し、それによって引き起こされた高い圧力により粉体表面の不純物等で構成される皮膜が除去されるという原理に基づく。レーザービームとしては、例えばパルスYAGレーザービームを用いることができる。
【0028】
<被覆層2形成工程>
被覆層2形成工程では、水素吸蔵粉体1を、Ni,Pd,Ptの少なくとも1種(以下、「触媒元素」という)で被覆する。触媒元素の被覆方法としては、気相法を用いる。気相法によれば、水素吸蔵粉体1の表面に薄くかつ厚さの均一な被覆層2を形成することができ、また被覆層2の厚さ制御も容易である。また、上述したように水素吸蔵粉体1に適度な振動を加えるなどして、被覆層2形成時に水素吸蔵粉体1を運動させることにより、水素吸蔵粉体1の表面全体に厚さの均一な被覆層2を形成させることができる。さらに、気相法は、無電解メッキ法等と比較して、水素吸蔵粉体1の表面を比較的清浄に保ちやすいという利点をそもそも有しているが、上述した表面清浄化処理を併用することで、より一層、粉体表面の清浄化を図ることができる。なお、気相法を用いて被覆層2を形成する場合に用いられる装置の例は後述する。
【0029】
被覆層2形成工程では、水素吸蔵粉体1を150〜1000℃に加熱する加熱処理を施すことが望ましい。これにより、被覆層2を構成する触媒元素が、水素吸蔵粉体1の表面に被着されやすくなる。この加熱処理における望ましい加熱温度は、200〜700℃、さらに望ましい加熱温度は200〜500℃である。
【0030】
<アニール工程>
アニール工程では、被覆層2が形成された水素吸蔵粉体1を所定温度で加熱保持するアニール処理が施される。このアニール処理は、被覆層2を構成する触媒元素を拡散するためのものである。また、アニール処理により、水素吸蔵粉体1には電気化学的に水素を吸蔵および放出する電気化学的反応活性が付与されるとともに、水素吸蔵粉体1の耐酸化性も向上する。
【0031】
アニール処理は、非酸化性の雰囲気で行うことが望ましい。また、アニール処理における加熱温度は、200〜1000℃、さらには400〜700℃の範囲とすることが望ましい。加熱温度が200℃未満であると、加熱時間を長くしたとしても触媒元素の拡散が十分進まない。一方、加熱温度が1000℃を超えると、触媒元素がより内部まで拡散してしまい、水素吸蔵量が減少するおそれがあるからである。
【0032】
加熱温度が500〜700℃の範囲である場合には、加熱時間は10分〜10時間とする。加熱時間が長くなると、水素吸蔵粉末1がTi−Cr系合金粉末の場合にはその組成によってはラーベス相が出現し、bcc相が減少してしまう。上述の通り、bcc相の減少は水素吸蔵量の低下につながるため、好ましくない。一方、加熱時間が10分未満になると、触媒元素の拡散が十分進まない。よって、加熱温度が500〜700℃の範囲である場合における加熱時間は10分〜10時間とする。この場合において、より望ましい加熱時間は30分〜6時間である。但し、望ましい加熱時間は、加熱温度によって異なることはいうまでもない。
【0033】
本発明では、気相法で被覆層2を形成するため、被覆層2の膜厚を1μm以下と薄くすることができる。本発明のように気相法を用いた場合には、無電解メッキ法または電解メッキ法を用いた場合に比べて、被覆層2の膜厚を薄く制御することができるため、被覆層2を構成する触媒元素を拡散させるためのアニール処理を短時間化することができる。熱処理時間が長くなると、被覆層2を構成する被覆金属が水素吸蔵粉体1に拡散して容量を低下させてしまう。また水素吸蔵粉体1として例えばbcc型Ti−Cr系合金粉末を用いた場合に熱処理時間が長くなると、ラーベス相が出現してしまうが、本発明ではアニール処理を短時間化することができるために、ラーベス相の出現を効果的に抑制することができる。
【0034】
以上の工程を経ることにより、本発明に係る水素吸蔵体10を得ることができる。本発明に係る水素吸蔵体10は、水素吸蔵粉体1の表面に、薄くかつ厚さの均一な被覆層2が形成されており、この被覆層2の形成を、水素吸蔵粉体1を運動させつつ気相法で行う点に最大の特徴を有する。この特徴により、Ni等の触媒元素をメカニカルアロイング法により被覆させた場合と比べて、触媒元素の分散性が向上し、触媒元素の偏析が抑制される。水素吸蔵特性に優れた本発明の水素吸蔵体10は、電気容量が大きいため、二次電池用電極として好適である。
【0035】
次に、気相法を用いて被覆層2を水素吸蔵粉体1の表面に形成させる際に好ましい装置例を図2〜図5を用いて示す。なお、以下では被覆層2をNiで構成する例について説明する。
図2は気相法の1種であるレーザーアブレーション法を用いる際に好適なコーティング装置100の概要を示す図である。ここで、レーザーアブレーション法とは、強力なレーザー光を固体表面に照射することにより、固体構成物質そのものを爆発的に放出させる方法である。
【0036】
図2に示すように、コーティング装置100は、内部が減圧可能な容器12と、容器12の下方に設置されたトレー11と、容器12の上方に設置されるターゲットに対してレーザーを照射するレーザー装置13とを主な構成要素としている。トレー11には水素吸蔵粉体1が収容される。この状態で、被覆されるNiからなるターゲット14に向けて、レーザー装置13からレーザーを照射する。レーザーが照射されたターゲット14の表面から蒸気化されたNiが放出される。蒸気化されたNiは下方に向けて飛散しトレー11に収容された水素吸蔵粉体1の表面に被覆される。なお、蒸気化したNiは飛散している過程で凝集し、数nm〜数十nmに成長すると考えられる。
【0037】
水素吸蔵粉体1の表面に、被覆層2を構成するNiを均一の厚さに被覆させるために、トレー11には、例えば超音波振動装置のような振動装置を設ける。トレー11に振動を付与することにより、トレー11内に収容されている水素吸蔵粉体1を転動させて、その表面に厚さ均一にNiを被覆させることができる。振動装置としては、超音波振動装置に限らず、公知のタップ装置(具体的には、試験管ミキサー等の撹拌振動機器)を用いることができる。また、振動は1〜500Hz程度の周波数を有していればよい。さらに、水素吸蔵粉体1へのNiの被覆率を向上させるために、水素吸蔵粉体1を加熱するための加熱装置をトレー11に設けることも有効である。加熱装置としては、例えば電熱ヒータ、赤外線ヒータ等が挙げられる。
【0038】
蒸気化したNi等を効率的にトレー11に導くために、ターゲット14とトレー11との間に電位差を与えることが有効である。また、容器12内に、ターゲット14からトレー11に向けたガス流(例えば、アルゴンガス流)を形成することも有効である。
なお、水素吸蔵粉体1の表面が不純物ガスで汚染されているような場合には、その表面を清浄化するために、例えば上述した粉体表面へのイオンボンバード処理やレーザービーム照射、減圧(または真空)下での粉体の加熱処理等を予め行っておくとよい。
【0039】
図3は気相法の1種であるアーク蒸発法を用いる際に好適なコーティング装置200の概要を示す図である。ここで、アーク蒸発法とは、電圧を印加することにより被覆させたい金属から構成されるターゲット上にアーク放電を発生させ、当該金属が蒸気化すると同時に蒸気化した金属粒子をイオン化させ、ターゲットとの間に電位差を設けた部位にイオン化された金属を導く方法である。なお、アーク蒸発法はイオンプレーティング法の1種である。
【0040】
図3に示すように、コーティング装置200は、内部が減圧可能な容器12と、容器12の下方に設置されたトレー11と、アーク放電を発生させる電源を主な構成要素としている。
トレー11には水素吸蔵粉体1が収容される。この状態で、電源を駆動することにより、被覆されるNiからなるターゲット14に対して電圧を印加してアーク放電を発生させる。そうすると、ターゲット14の表面でターゲット14を構成するNiが蒸気化されイオン化される。ターゲット14とトレー11との間には電位差が与えられているために、蒸気化したNiはトレー11に誘導され、トレー11に収容された水素吸蔵粉体1の表面に被覆される。トレー11に振動装置、加熱装置を設ける点は、図2に示したコーティング装置100と同様である。
【0041】
図4は気相法の1種である高周波プラズマCVD法を用いる際に好適なコーティング装置300の概要を示す図である。高周波プラズマCVD法では、まずプラズマ源としてガス(基本的にはArガス)を保持、あるいはフローさせた領域に高周波によってプラズマを発生させる。そして、発生したプラズマ内に金属粉末を投入すると、プラズマ出力や粉末の濃度または流量(g/min)によって、数nmから数百μmまでのさまざまな粒径の粒子が得られ、この粒子が水素吸蔵粉体1の表面に被覆される。被覆対象となる水素吸蔵粉体1を収容するトレーの位置(高さ)や加熱装置の設置によって、プラズマ通過により微粒化された金属粒子(微粒化金属)がトレーに到達するときの微粒化金属の温度を制御することができる。また、微粒化金属をイオン化しておくことによって、微粒化金属を効率的にトレー内に導くことができる。
【0042】
図4に示すように、コーティング装置300では、水素吸蔵粉体1は減圧可能な容器12の下方に設置されたトレー11に収容される。一方、被覆層2を構成するNi粉末は、容器12の上方に設けられた粉末供給口32から容器12内に導入される。粉末供給口32の近傍には、プラズマFを発生するための加熱コイル31が設けられている。また、トレー11の上方かつプラズマFの下方には、プラズマFを通過して蒸気化されたNiを加熱する加熱装置34が設置されている。加熱装置34としては、高周波、赤外線等により加熱を行うものが好ましい。蒸気化されたNiは、トレー11に向けて飛散し、トレー11に収容された水素吸蔵粉体1の表面に被覆するようになっている。なお、コーティング装置100と同様に、コーティング装置300においてもトレー11には振動装置、加熱装置を設ける。
【0043】
高周波プラズマCVD法による水素吸蔵体の製造は、図4に示す形態に限定されない。例えば、図5に示す構成の装置によっても本発明による水素吸蔵体10を製造することができる。図5に示すコーティング装置400の基本構成は図4に示したコーティング装置300と同様であるが、水素吸蔵粉体1をトレー11に収容するのではなく、容器12の下方に設けた粉末供給口33から容器12内に向けて噴出させる。容器12内に噴出された水素吸蔵粉体1の表面には、高周波プラズマで蒸気化されたNi等が被覆されることにより、本発明の水素吸蔵体10を得ることができる。プラズマ出力、被覆層2を構成する金属粉末や水素吸蔵粉体1の投入量等を調整することにより、粒子径、コーティング量等を制御できる。
【0044】
図6は気相法の1種であるスパッタ法を用いる際に好適なコーティング装置500の概要を示す図である。スパッタ法では、ガス(基本的にはArガス)を容器内に導入し、ターゲット近傍にプラズマを発生させる。そして、イオン化したガスをターゲットに衝突させ、ターゲットから飛び出した微粒化した金属を、被覆対象である水素吸蔵粉体1に被覆させる。プラズマは例えば高周波によって発生させることができる。
【0045】
図6に示すように、コーティング装置500では、水素吸蔵粉体1は減圧可能な容器12の下方に設置されたトレー11に収容される。容器12内にはArガスやその他の目的に応じたガスが導入され、ターゲット14近傍にプラズマを発生させ、そのイオン化したガスをターゲット14に衝突させる。この衝突によって飛び出した微粒化金属を、トレー11上の水素吸蔵粉体1に被覆させればよい。この場合も、上述した例と同様に、トレー11を振動可能な構成にしておくことによって、水素吸蔵粉体1の表面に厚さ均一に微粒化金属を被覆させることができる。また、上述した例と同様に、トレー11を加熱可能な構成としておくことが望ましい。
【0046】
以上、図2〜図6を用いて、気相法によって被覆層2を水素吸蔵粉体1の表面に形成させる際に好ましい装置例を示した。上述したように、被覆層2を形成する際に、水素吸蔵粉体1を運動させることにより、水素吸蔵粉体1のほぼ表面全体に、被覆層2を形成させることができる。被覆層2の被覆率は90%以上、さらには93%以上、より望ましくは95%以上である。しかも、本発明では気相法を用いるため、薄くかつ厚さの均一な被覆層2を形成することができる。また、気相法によれば、膜厚の制御も容易である。被覆層2の膜厚は、水素吸蔵粉体1を構成する粉体の形状にもよるが、数nm〜500nmとすることが望ましい。被覆層2の膜厚が数nmを下回ると、水素吸蔵体10に付与される電気化学的反応活性が不十分となる。一方、被覆層2の膜厚が500nmを超えると、水素を吸蔵しない被覆層2の占める割合が相対的に増加し、水素吸蔵体10の単位体積あたりの水素吸蔵量が減少してしまうために、水素吸蔵体10の理論容量が減少してしまう。よって、被覆層2の膜厚は、1μm以下とすることが望ましい。より望ましい被覆層2の膜厚は20〜500nm、さらに望ましい被覆層2の膜厚は50〜300nmである。なお、水素吸蔵粉体1を収容するトレー11を振動させることにより、水素吸蔵粉体1を運動させる例を示したが、水素吸蔵粉体1を運動させる形態として他の形態を採用してもよいことはもちろんである。例えば、上述したコーティング装置100〜500内で、水素吸蔵粉体1を浮遊させた状態で、被覆層2を形成するようにしてもよい。
【0047】
続いて、本発明に係る二次電池用電極について説明する。本発明に係る二次電池用電極は、上述した水素吸蔵体10を用いて作製することができる。以下に、作製手順の一例を挙げる。
まず、水素吸蔵粉体1、結着剤、導電性粉末及び水を混練することによりペーストを調製する。結着剤としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができる。また、導電性粉末としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックを用いることができる。
次いで、得られたペーストを導電性基板に塗布ないし充填する。導電性基板としては、例えば、パンチドメタルや、網状、スポンジ状、繊維状、もしくはフェルト状の金属多孔体を用いることができる。
続いて、ペーストが塗布ないし充填された導電性基板を乾燥し、プレスを施すことにより二次電池用電極を得ることができる。
【0048】
以上詳述したように、本実施の形態に係る水素吸蔵体10は、触媒元素から構成され水素吸蔵粉体1の電気化学的反応活性を担う被覆層2を、水素吸蔵粉体1の高い水素吸蔵量を維持しつつ、気相法により薄くかつ厚さ均一に形成している。これにより、水素吸蔵体10は高い水素吸蔵量を示す。よって、水素吸蔵体10を二次電池用電極として、二次電池を作製した場合には、高い電気容量および高率充放電特性に優れた二次電池を得ることができる。
【0049】
【実施例】
以下本発明の水素吸蔵体10について、具体的な実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1では、気相法の1種であるレーザーアブレーション法を用いて、水素吸蔵粉体1としてのTi−Cr系合金粉末にNiを被覆させる例について説明する。
【0050】
高周波溶解法により、MoTi45Cr46合金(Ti−Cr系合金)を作製し、1400℃で1時間保持した。この熱処理後、水素化粉砕し、<75μmのTi−Cr系合金粉末を得た。なお、X線回折によりTi−Cr系合金粉末の相同定を行ったところ、bccを主相としていることが確認できた。
用意したbcc型Ti−Cr系合金粉末(水素吸蔵粉体1)を図2に示したコーティング装置100(レーザーアブレーション法)のトレー11に収容した。トレー11に設けられた図示しない振動装置としては、周波数が200Hzのものを使用した。また、加熱可能な構成となっているトレー11の温度は、200℃に制御した。トレー11に収容されたbcc型Ti−Cr系合金粉末(水素吸蔵粉体1)が十分に加熱された後、この合金粉末の表面にNiを被覆させた。これにより、bcc型Ti−Cr系合金粉末の表面にNi被覆層が形成された水素吸蔵体を得た。次いで、この水素吸蔵体に対し、600℃で1時間保持する熱処理(アニール処理)を行った。熱処理後、水素吸蔵体をTEM−EDS(エネルギー分散型X線分析装置)、EPMAで観察したところ、bcc型Ti−Cr系合金粉末に対するNiの被覆率は、平均すると95%以上であった。
【0051】
熱処理後、水素吸蔵体の断面をSTEM−EDS(走査型透過電子顕微鏡を用いたEDS)で観察したところ、Niの平均厚さは200nmであった。
得られた粉末状の水素吸蔵体を用いて、上述した手順で評価用電極を作製した。なお、評価用電極は、水素吸蔵体0.25gとCu粉末0.75gとでペレットを作り、そのペレットをNi線で保持することにより作製した。この電極を負極とし、Ni板を陽極とし、電解液を6MのKOH水溶液とした評価用電池を用いて40mA/gで50時間の還元を行い、8mA/gで酸化電気量を測定した結果、650mAh/gという大きな値が得られた。また、この電池を用いて70mA/gで10時間の還元を行い、500mA/gで酸化電気量を測定した結果、460mAh/gという大きな値が得られた。
【0052】
(比較例1)
図2に示したコーティング装置100を用いて水素吸蔵体を作製する際に、水素吸蔵粉体1を振動させなかった以外は、上述の実施例1と同様の手順で水素吸蔵体を作製した。熱処理後、水素吸蔵体を観察したところ、トレー11内に収容された堆積粉末のうち表面近傍のもののみがNiで被覆されていた。得られた粉末状の水素吸蔵体を用いて、実施例1と同様の手順で評価用電極を作製した。この電極を負極とした評価用電池を用いて40mA/gで50時間の還元を行い、8mA/gで酸化電気量を測定した結果、その値は250mAh/gであった。また、この電池を用いて70mA/gで10時間の還元を行い、500mA/gで酸化電気量を測定した結果、その値は80mAh/gであった。
【0053】
(比較例2)
実施例1と同じ方法で作製したbcc型Ti−Cr系合金粉末に、メカニカルアロイング法を用いてNi粉末を被覆させた。このNi粉末の被覆はスタンプミルを用いて行った。実施例1と同様の条件で熱処理を行った後、水素吸蔵体をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)で観察したところ、bcc型Ti−Cr系合金粉末に対するNiの被覆率は、平均すると40%であった。こうして得られた粉末状の水素吸蔵体を用いて、実施例1と同様の手順で電極を作製した。この電極を負極とした電池を用いて40mA/gで50時間の還元を行い、8mA/gで酸化電気量を測定した結果、その値は550mAh/gであった。また、この電池を用いて70mA/gで10時間の還元を行い、500mA/gで酸化電気量を測定した結果、その値は150mAh/gであった。
【0054】
なお、実施例1では、水素吸蔵粉体1としてTi−Cr系合金粉末を用いる場合を示したが、Mg(Mg合金)粉末もしくはV(V合金)粉末を用いた場合も、上述した場合と同等の特性を示す二次電池用電極を得ることができる。同様に、実施例1では、被覆層2を構成する金属として、Niを用いた例を示したが、これはあくまで一例であって、Niに代えて(またはNiと併用して)Pd、Ptを用いた場合にも、同様の効果を期待できる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、高い水素吸蔵量を有し、二次電池用電極として好適な水素吸蔵体を得ることができる。また、本発明によれば、電気容量が大きく、かつ高率放電特性に優れた二次電池用電極が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る水素吸蔵体の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】レーザーアブレーション法を用いる際に好適なコーティング装置の構成を簡略化して示す図である。
【図3】アーク蒸発法を用いる際に好適なコーティング装置の構成を簡略化して示す図である。
【図4】高周波プラズマCVD法を用いる際に好適なコーティング装置の構成を簡略化して示す図である。
【図5】高周波プラズマCVD法を用いて水素吸蔵体を作製する場合に適したコーティング装置の他の例を簡略化して示す図である。
【図6】スパッタ法を用いて水素吸蔵体を作製する場合に適したコーティング装置の構成を簡略化して示す図である。
【符号の説明】
1…水素吸蔵粉体、2…被覆層、10…水素吸蔵体(二次電池用電極)

Claims (8)

  1. 水素の吸蔵および放出を担う水素吸蔵粉体と、当該水素吸蔵粉体の表面を覆う被覆層とを備えた水素吸蔵体の製造方法であって、
    前記水素吸蔵粉体を得る工程aと、
    前記工程aで得られた前記水素吸蔵粉体を運動させつつ、前記被覆層を気相法により形成する工程bと、
    を備えたことを特徴とする水素吸蔵体の製造方法。
  2. 前記運動は、前記水素吸蔵粉体の転動であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵体の製造方法。
  3. 前記工程bに先立ち、前記水素吸蔵粉体に対して表面清浄化処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の水素吸蔵体の製造方法。
  4. 水素の吸蔵および放出を担う水素吸蔵粉体と、当該水素吸蔵粉体の表面を覆うとともに当該水素吸蔵粉体の電気化学的反応活性を担う被覆層とを備えた二次電池用電極の製造方法であって、
    前記水素吸蔵粉体の表面に前記被覆層を構成することとなる被覆金属が気相化された雰囲気を形成し、
    前記雰囲気内において前記水素吸蔵粉体を運動させつつ前記被覆金属を前記水素吸蔵粉体に被覆させることを特徴とする二次電池用電極の製造方法。
  5. 前記水素吸蔵粉体はMg,Mg合金,V,V合金,Ti−Cr系合金の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の二次電池用電極の製造方法。
  6. 前記被覆層はNi,Pd,Ptの少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項4または5に記載の二次電池用電極の製造方法。
  7. 前記運動は、前記水素吸蔵粉体の転動であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の二次電池用電極の製造方法。
  8. 前記被覆金属を前記水素吸蔵粉体に被覆させる前に、前記水素吸蔵粉体に対して表面清浄化処理を施すことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の二次電池用電極の製造方法。
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