JP2004192965A - 水素吸蔵合金電極の製造方法、電極および二次電池 - Google Patents

水素吸蔵合金電極の製造方法、電極および二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】活性化度の高い水素吸蔵合金電極を提供する。
【解決手段】二次電池に組み込まれる前に水素ガスの吸蔵および放出処理が施されている水素吸蔵合金部材を含む電極を用いることにより、90%以上の活性化度を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の負極として用いる水素吸蔵合金電極に関し、特に初期活性化の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ニッケル水素電池は、水酸化ニッケルを主活物質とした正極板、水素吸蔵合金を主材料とする負極板を備えている。この負極板は、水素吸蔵合金粉末に導電剤粉と結着剤とを混合して合剤とし、これをニッケル製の多孔板に圧着する等の方法で製造されている。
従来、電池を封口後に、安定した電気容量を取り出せる状態(初期活性)になるまでに数サイクルの充放電を繰り返し行なっていた。ところが、この方法では、未だ活性が低い段階で充電するために水素ガスが大量に発生する。そのために、電池内部の圧力が増大し、電池が破壊するおそれがあった。
【0003】
ニッケル水素電池の初期活性にとって、水素吸蔵合金表面の触媒活性と導電性が大きな影響を与える。そこで、合金粒子の表面をアルカリ水溶液で改質処理する方法(特公平4−79474号公報)、あるいは合金粒子に塩酸処理を施す方法(特開平5−225975号公報)が提案されている。しかしながら、アルカリあるいは酸による処理を合金粒子に施した程度では、依然として十分な初期活性を得ることができなかった。
【0004】
特開平9−259871号公報では、水素吸蔵合金粉末とニッケルを含有するアモルファス合金粉末との混合物から水素吸蔵合金電極を構成する提案がなされている。特開平9−259871号公報によれば、アモルファス合金の量を増やすことにより最大電気容量に対する1サイクル目の電気容量の比である活性化度を向上することができる。しかし、最大電気容量が低下してしまい、また、活性化度も70〜80%程度である。
また、特開2001−196092号公報には、水素吸蔵合金の表面に活性化を担うニッケルを被覆する提案がなされている。ところがこの方法は、主に放電容量の向上とサイクル劣化の低減を目的としたもので、活性化度向上の観点での配慮はなされていない。
【0005】
【特許文献1】
特公平4−79474号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平5−225975号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開平9−259871号公報(第2頁、図1)
【特許文献4】
特開2001−196092号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電気化学的な水素の吸蔵・放出における活性化度の高い水素吸蔵合金電極を製造する方法を提供することを目的とする。また、本発明は活性化度の高い水素吸蔵合金を用いた電極、さらにはそのような電極を用いた二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明者は、電極を電池に組み込む前に、水素ガスを吸蔵・放出する処理を水素吸蔵合金に施すことにより、活性化度を格段に向上できることを知見した。本発明はこの知見に基づくものであり、主として水素吸蔵を担う第1の相および主として電気化学的活性を担う第2の相を有する水素吸蔵合金部材を用意し、水素吸蔵合金部材に水素ガスの吸蔵・放出処理を施し、しかる後に、水素ガスの吸蔵・放出処理が施された水素吸蔵合金部材を用いて電極を形成することを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造方法である。本発明によれば、活性化度向上のみならず、ある種の合金については最大電気容量を向上することもできる。なお、水素ガスの吸蔵・放出処理は3回以上繰り返すことが望ましい。
【0008】
本発明が適用される水素吸蔵合金部材は、少なくとも以下の3つの態様を含んでいる。
1つめの態様は、第1の相と第2の相とが単一の合金塊中に存在するとともに、第1の相および第2の相がともに水素吸蔵および電気化学的活性を担うものである。この態様は、第1の相と第2の相の存在領域を明確に区別することができないが、二次電池の負極として機能する限り、第1の相と第2の相とが存在することになる。
2つめの態様は、第1の相を構成する合金母材を得る工程(a)と、工程(a)で得られた合金母材の表面に第2の相を構成する物質を被着させる工程(b)とを経て得られるものである。この態様は、合金母材の表面に第2の相が存在することから、第1の相と第2の相の存在領域がほぼ明確に区別することができる。
3つめの態様は、第2の相が第1の相を構成する合金塊中に分散されたものである。例えば、第2の相を第1の相中に析出させることにより得ることができる。
【0009】
以上の製造方法によれば、二次電池に組み込まれる前に水素ガスの吸蔵および放出処理が施されている水素吸蔵合金部材を備えた二次電池の負極に用いられる電極が提供される。
この水素吸蔵合金部材としては、TiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)を含む合金粒子の表面にNiを含む領域が形成されたものとすることができる。これは前述した2つめの態様に属している。
また、この水素吸蔵合金部材としては、TiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)中にNiを含む析出物が分散されたものとすることができる。これは前述した3つめの態様に属している。
もちろん本発明の電極は、前述した1つめの態様を適用した水素吸蔵合金部材を用いることができることは言うまでもない。
【0010】
前述した3つめの態様に属する合金として、TiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)中にTi2Niが分散されたものがある。従来、水素吸蔵合金において、bcc相に比べて水素吸蔵量の少ないTi2Niの存在を否定することが多かった。ところが、電気化学的活性を担う相としてこのTi2Niを積極的に利用し、かつ本発明による水素ガスの吸蔵・放出処理を施したbcc相を主体とする水素吸蔵合金部材は、製造工程が簡便であり、かつ活性化度の向上に有効である。したがって本発明は、主として水素吸蔵を担う第1の相および主として電気化学的活性を担う第2の相を有し、第1の相はTiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)を含み、第2の相は第1の相中に分散されるTi2Niからなる水素吸蔵合金部材を備えた二次電池の負極に用いられる電極を提供する。
【0011】
以上の水素吸蔵合金部材を得る場合に、後述するアーク溶解高速急冷法を適用することが望ましい。この方法により得られた水素吸蔵合金部材は、第1の相が柱状結晶から構成され、第2の相が柱状結晶の粒界に析出した構成となる。この方法によれば、第1の相および第2の相のサイズを制御することが可能である。
更に、合金の溶解をセラミック容器中で行わないため、Ti等の反応性の高い原料の溶解に適する。
【0012】
以上で得られた水素吸蔵合金部材を用いた二次電池は、90%以上という高い活性化度を達成することが確認された。したがって本発明は、負極に水素吸蔵合金部材を用いた二次電池であって、水素吸蔵合金部材は、主として水素吸蔵を担う第1の相および主として電気化学的活性を担う第2の相を有し、活性化度(ただし、活性化度=1サイクル目の放電容量/最大放電容量×100)が90%以上であることを特徴とする二次電池を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
<水素吸蔵合金部材>
本発明が対象とする水素吸蔵合金部材は、主として水素吸蔵を担う第1の相と主として電気化学的活性を担う第2の相を有している。ここで、第1の相と第2の相とは、明確な境界を有していない第1の態様と、明確な境界を有している第2の態様とが存在する。
第1の態様は、第1の相が水素吸蔵を担うとともに電気化学的活性を担い、また、第2の相が電気化学的活性を担うとともに水素吸蔵を担うことができる。つまり、この態様は第1の相と第2の相とを明確に区別できるものではなく、水素吸蔵合金部材全体として水素吸蔵および電気化学的な活性を担うことになる。第2の相は、水素吸蔵合金部材に電気化学的に水素を吸蔵および放出する反応に対する触媒として機能する。
電気化学的な活性を担うためにはNiの存在が必要であり、第1の態様として、第2の相は、例えば公知のTi−Ni系水素吸蔵合金、希土類−Ni系水素吸蔵合金、Ti−Cr−Ni系水素吸蔵合金またはこれにV、Mo等を含むbcc水素吸蔵合金を採用することができる。Ti−Ni系水素吸蔵合金としては、TiNiを用いるのが望ましい。また、希土類−Ni系水素吸蔵合金としては、LaNi5に代表されるAB5型の合金を用いるのが望ましい。なお、Ni相の触媒機能とは、H2Oから電気的に中性なH原子を分離させる、あるいは合金中のH原子をH+としてOH-と結合させる機能をいう。
【0014】
次に、第2の態様はさらに2つの態様に分かれる。1つは第2の相が第1の相を構成する水素吸蔵合金母材の周囲に形成されたものと、他の1つは第2の相が第1の相を構成する水素吸蔵合金母材中に分散されたものである。
第2の相が第1の相を構成する水素吸蔵合金母材の周囲に形成された、とは、水素吸蔵合金母材の外表面にNiまたはNi合金の粉末を被着させた形態を含む。また、被着させたNiまたはNi合金を水素吸蔵合金母材に拡散させた形態をも含む。NiまたはNi合金の粉末は、水素吸蔵合金母材の外表面を覆うように密に被着されていてもよいし、水素吸蔵合金母材の外表面に点在するように被着されていてもよい。また、水素吸蔵合金母材の外表面にNiまたはNi合金からなるめっき膜を形成した形態であってもよい。なお、ここでいう水素吸蔵合金母材は、塊状、粉状等の種々の形態を含む。
【0015】
第2の相が第1の相を構成する水素吸蔵合金母材の周囲に形成され態様の中では、NiまたはNi合金の粉末が水素吸蔵合金粉末の外表面に点在するように被着されていることが望ましい。この水素吸蔵合金母材は、水素吸蔵合金粉末を得る工程と、得られた水素吸蔵合金粉末の表面にNiまたはNi合金粉末を被着させる工程と、水素吸蔵合金粉末の表面に被着されたNiまたはNi合金を拡散処理する工程を含む製造方法によって得ることが望ましい。
【0016】
水素吸蔵合金粉末の表面にNiまたはNi合金粉末を被着させるには、水素吸蔵合金粉末とNiまたはNi合金粉末を混合すればよい。この混合時に、機械的な衝撃を加えることが望ましい。機械的な衝撃を加えるには、例えばスタンプミルを用いることができる。スタンプミル等を用いてNiまたはNi合金粉末を機械的に被着させた後にNiまたはNi合金粉末を拡散するために行なう熱処理は、低温かつ短時間で行なうことができる。したがって、水素吸蔵合金母材である水素吸蔵合金粉末の組織を維持することができる。
【0017】
水素吸蔵合金母材としては、Ti−Cr系合金を採用することが望ましい。Ti−Cr系合金は、水素吸蔵サイト数が多く、合金の単位重量当りに吸蔵できる理論水素量が約4mass%、(H/M=2、H:吸蔵水素原子、M:合金構成元素)と極めて大きい体心立方構造(bcc)を採り、高い水素吸蔵量を得ることができるからである。具体的には、下記に一般式を示す組成範囲から選択することができる。
Ti(100-a-b-c-d-e)CrabX’cde
上記一般式において、20≦a(at%)≦80、0≦b(at%)≦10、0≦c(at%)≦40、0≦d(at%)≦10、0≦e(at%)≦30であり、前記XがRu、Rh、OsおよびIrの少なくとも一種の元素、前記X’がV、Mo、WおよびAlの少なくとも一種の元素、前記LがY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuの少なくとも一種の元素、前記TがMn、Fe、Co、Cu、Nb、Ta、BおよびCの少なくとも一種の元素である。
【0018】
上記式において、Cr含有量aが80at%を超えるとプラトー圧が著しく上昇し、逆に20at%未満ではプラトー圧は著しく低くなり実用性に乏しくなることから、20≦a(at%)≦80の範囲とする。好ましくは30≦a(at%)≦70の範囲、さらに好ましくは45≦a(at%)≦65である。
【0019】
X元素(以下、Ru等と略記することがある。)は必ずしも必要ないが、添加する場合少量の添加であってもbcc相の安定化効果が強く、この効果は、従来知られているV、Mo、W、Alといったbcc安定化元素を凌駕している。
本発明におけるX元素の含有量は、目的とする動作温度、動作圧力によって適宜選択すればよい。しかし、10at%を超えると単位重量当りの水素吸蔵量が低下し、かつ工業的に高価になりすぎる。したがって、その含有量を10at%以下とする。好ましくは7at%以下、さらに好ましくは5at%以下の範囲で選択すればよい。
【0020】
X’元素もbcc相の安定に寄与する元素であり、X元素と同時に含有させることにより、X元素の含有量をさらに低く押さえ、また、X’元素も少量で済むことになるから、単位重量当たりの水素吸蔵量の低下を軽微なものに留めることができる。その結果、コストと単位重量当りの水素吸蔵量においてバランスのとれた高い実用性を有する水素吸蔵合金を得ることができる。本発明において、X’元素は少量で所定の効果を発揮することができるものの、従来と同程度の量を含有することを否定するものではない。したがって、40at%以下の範囲の含有を許容する。しかし、その含有量は所定の効果が得られる範囲で少ないほうが望ましく、したがって、本発明では、20at%以下、さらには10at%以下の範囲の含有量を推奨する。X’元素の量は、X元素との組み合わせによっては、5at%以下の極めて少ない含有量においても所定の効果を発揮することができる。また、X元素を含まない場合に単独で添加しても良いことは言うまでもない。
【0021】
L元素は、酸素との親和力が強いため合金中に存在する酸素をL元素酸化物として除去する効果を発揮する。その結果、水素吸蔵量を安定化させ、かつ比較的酸素量の多い原料も工業的に有効に利用することも可能となる。そのため、少なくとも一種を10at%以下、望ましくは5at%以下、さらに望ましくは3at%以下の範囲で含有させることができる。
また、T元素を30at%以下、望ましくは20at%以下、さらに望ましくは10at%以下の範囲で適宜含有させることができる。
【0022】
次に、第2の相が第1の相を構成する水素吸蔵合金母材中に分散された形態について説明する。この形態は、溶解された合金の凝固過程で第1の相中に第2の相を析出、分散させることができる。また、溶解・凝固後に熱処理を施すことにより第1の相中に第2の相を析出、分散させることができる。水素吸蔵を担う第1の相としては、水素吸蔵性能の観点からbcc相であることが望ましい。ある種の組成を有する合金は、bcc相中にTi2Ni相を析出、分散させることができる。つまり、基本的な合金系は、前述した一般式(Ti(100-a-b-c-d-e)CrabX’cde)で示したものを用い、これにNiを20at%以下、望ましくは3〜20at%の範囲内で添加せしめる。
【0023】
bcc相中に分散されるTi2Ni相の量は3〜25vol%であることが望ましい。3vol%未満では電気化学的な活性を十分担うことが難しく、25vol%を超えると水素吸蔵を担うbcc相の量が相対的に少なくなるためである。望ましいTi2Ni相の量は5〜20vol%、さらに望ましいTi2Ni相の量は8〜15voi%である。
【0024】
第2の相としてのTi2Ni相は、表面から合金内部へ水素を取り込む窓口として機能する。ところが、水素の吸放出に伴ってTi2Ni相の結晶性が劣化するために水素がTi2Ni相を拡散する速度は速くない。したがって、Ti2Ni相は微細であることが望ましい。Ti2Ni相が粒状である場合には、その平均粒径は10μm以下であることが望ましい。より望ましいTi2Ni相の平均粒径は5μm以下、さらに望ましいTi2Ni相の平均粒径は1μm以下である。
また、Ti2Ni相が層状の場合には、その厚みが5μm以下であることが望ましい。より望ましい厚みは3μm以下、さらに望ましい厚みは1μm以下である。
【0025】
以上のような形態を有するTi2Ni相を得るためには、例えばアーク溶解で合金塊を得た後に行なう熱処理が重要となる。具体的には、熱処理時間を短くすることでTi2Ni相の形態を制御する。熱処理時間は5〜180分、望ましくは10〜70分とする。5分未満の時間ではTi2Ni相の析出が不十分であり、逆に180分を超えるとTi2Ni相が上記した以上のサイズまで成長して活性化が効率的に機能しなくなる。熱処理温度は、800〜1300℃、望ましくは900〜1150℃の範囲で選択する。800℃未満ではTi2Ni相が析出しにくく、1300℃を超えるとNiがbcc相に拡散してTi2Ni相が減ってしまう。
【0026】
bcc相を第1の相としTi2Ni相を第2の相とする水素吸蔵合金部材を得る場合、後述するアーク溶解高速急冷法を用いることが望ましい。Ti2Ni相の形状の制御が容易になるからである。ロールにより急冷して得られる薄帯は、図7に示すように厚みが5〜70μmで、幅が約1〜3μmの柱状結晶から構成される。この結晶はbcc構造をしている。この薄帯を熱処理するとbcc相の結晶の幅は1〜20μmになり、Ti2Ni相は柱状結晶の粒界に沿って成長する。
【0027】
次に、アーク溶解高速急冷法について説明する。この方法は、bcc相を第1の相としTi2Ni相を第2の相とする水素吸蔵合金部材を得るのに好適であるが、前述した1つめの態様による水素吸蔵合金部材または2つめの態様による水素吸蔵合金母材を得る際にも用いることができる。
図8は、アーク溶解高速急冷法を実現する装置の構成を示す概略図である。本装置は、図8(a)に示すように、第1チャンバ1と第2チャンバ2から構成されている。さらに、図8(b)に示すように、第1チャンバ1の底部7の中央部を開口して、第1チャンバ1で溶解された溶湯5をノズル8を通して、回転ロール9等の冷却手段を配置する第2チャンバ2に滴下させることができる。
【0028】
第1チャンバ1は、以下の構成になっている。第1チャンバ1には、底部7の上にくぼみを有する溶湯保持手段(以下、「ハース」と記す。)6を配設する。
このハース6は、中央部で開閉するために底部7に対して摺動可能な構造になっている。ハース6の中央部が開口して、アーク4で溶解した溶湯5を滴下させることができる。そのために、溶湯5に不純物を巻き込むことがない。第1チャンバ1内には、金属材料を溶解する溶解手段としてアーク電極3が配置されている。
ハース6は、熱伝導性の良好なCuを用いた水冷構造を備えるものとすることができる。また、融点の高いMo、W、Ta、Nbにより構成される群から選択される高融点金属又はこれらを主体とする合金を用いることもできる。この高融点金属または合金を用いると、ハース6をある程度高温になるように水量を抑えることができ、溶湯5のハース6との接触部分を高温に維持して滴下をしやすくすることができるという効果が期待できる。ハース6の表面にこれらの高融点金属等をめっきしてもよい。
アーク溶解の電極には、トリウムタングステン等の非消耗電極が利用可能で
あるが、量産性を重視したアーク溶解においては、水素吸蔵合金を用いる消耗電極とするのが好ましい。
【0029】
第2チャンバ2は、その内部がArガス等の不活性ガスで置換でき、回転ロール9に溶湯5を接触させることにより溶湯5を急冷して薄帯10を得る。
さらに、底部7の下には、第1チャンバ1から第2チャンバ2へ溶湯5を導くためのノズル8を配置することもできる。このノズル8の形状によっても、滴下する量を制御することができる。また、ノズル8の大きさ又は形状により、溶湯5の流れを制御できるので、例えば、回転ロール9表面に供給される量を調整することが可能である。
【0030】
このノズル8の材料は、熱衝撃に強い窒化ホウ素(BN:以下、この化学式で記す。)、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)、石英(SiO2)又は黒鉛(C)が適しており、溶湯5との反応を抑制するために、例えば、マグネシア、カルシア、希土類酸化物等の耐火材でコーティングして使用してもよい。本装置は、底部7又はハース6で溶湯5を形成し、ノズル8を通過させるだけなので、ノズル8と溶湯5との接触時間を短くし反応を抑制することで、異相、不純物の少ない水素吸蔵合金を製造することが可能となる。
【0031】
また、金属材料をアーク溶解する第1チャンバ1とアーク溶解された溶湯5を冷却する第2チャンバ2は、双方とも真空雰囲気、不活性ガスによる不活性雰囲気又は水素等による還元雰囲気にするための雰囲気制御手段15を備える。また、第1チャンバ1と第2チャンバ2とは密閉系の構造になっており、この雰囲気制御手段15によって雰囲気だけではなく圧力の制御も可能である。特に、第2チャンバ2の雰囲気圧力が第1チャンバ1の雰囲気圧力よりも低くなるよう制御することが好ましい。
【0032】
次に、本発明は以上のようにして得られた水素吸蔵合金部材に、水素ガスの吸蔵・放出処理を施す。水素吸蔵合金部材を電池に組み込む前に水素ガスの吸蔵・放出処理を施すことにより、後述する実施例にて示すように、活性化度が格段に向上し、電池に組み込んだ後の活性化処理を施す必要がないか、または最小限に留めることができる。本発明によれば、活性化度が向上するのみならず、放電時の最大電気容量を向上することができる。このような効果が得られる理由は明確ではないが、水素ガスの吸蔵・放出処理を施すことにより、水素吸蔵を担う第1の相と電気化学的な活性を担う第2の相との間を水素が拡散しやすくなったためと推測される。
【0033】
水素ガスの吸蔵・放出処理の条件は特に問わない。例えば、−50〜600℃、望ましくは0〜250℃の温度範囲で、 水素圧力0.1〜30MPa、望ましくは1〜10MPaで所定時間保持して水素ガスの吸蔵を行なった後、ロータリポンプ等で減圧して水素ガスを放出させる吸蔵・放出サイクルを1回または2回以上施す。電池に組み込まれた後の活性化度を向上させるためには、吸蔵・放出サイクルを3回以上、さらには5回以上繰り返すことが望ましい。
【0034】
水素吸蔵合金部材は、電極として用いるための所定の粒径、具体的には平均粒径で0.5〜200μm程度に粉砕される。もちろん、当初から所定の粒径を有している場合には、粉砕を省略することができる。
本発明では、水素ガスの吸蔵・放出処理によって、水素吸蔵合金部材を粉砕することも可能である。
水素ガスの吸蔵・放出処理とは別個に水素吸蔵合金部材の粉砕を行なうこともできる。この粉砕には公知の機械的な粉砕手法を用いることができる。例えば、ボールミル、スタンプミルを用いて粉砕する。
【0035】
図9は、ニッケル水素電池の構造を示している。図9に示すように、正極板20と負極板21がセパレータ22で渦巻状に巻かれており、金属製のケース23の中に収容されている。負極板21と接するケース23の所定領域が電池の負極(マイナス)となり、正極板20は集電体を通じて正極(プラス)となるキャップ24に接続されている。
【0036】
負極板21は、所定粒径の水素吸蔵合金部材を用いて製造される。負極板21の製造方法は複数種類あり、本発明ではいずれの方法を採用してもよい。例えば、水素吸蔵合金部材に結着材の水溶液を混合してペーストを得た後に、このペーストをニッケルめっきが施されたパンチングメタルからなる芯体の両面に塗布することにより負極を得ることができる。また、上記ペーストを発泡ニッケル多孔体に充填し、しかる後に加圧成形を施して所定の電極を得ることができる。
【0037】
以下本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
アーク溶解高速急冷法を用いてTi54Ni46(at%)の組成を有する水素吸蔵合金部材を得た。この水素吸蔵合金部材は、TiNi金属間化合物相(TiNi相)から構成され、このTiNi相が水素吸蔵および電気化学的活性の両者を担う。特に、その中のNiが電気化学的活性を担うものと解されている。なお、ロールの周速は20m/secである。この水素吸蔵合金部材に対して以下の条件で水素ガスの吸蔵・放出サイクルを3回繰り返した。
処理温度:40℃、水素ガス圧力:10MPa〜減圧(1Pa以下)(ターボ分子ポンプ使用)
水素ガスの吸蔵・放出処理が施された水素吸蔵合金部材を、目開き75μmの篩にかけた。
篩を通過した粉状の水素吸蔵合金部材を銅粉末と乾式で混合し、8t/cm2で加圧しペレットを作成し、このペレットを評価用電極とした(以下の実施例、比較例の電極も同様)。この電極(実施例1)について、還元時の電流密度を40mA/g(10時間)、酸化時の電流密度を40mA/gとして放電電気容量を測定した。
【0038】
アーク溶解高速急冷法により得た上記水素吸蔵合金部材に水素ガスの吸蔵・放出サイクルを施すことなくスタンプミルを使用して機械的に粉砕した後、被粉砕物を目開きが2mmの篩にかけた。篩を通過した粉状の水素吸蔵合金部材を用いて電極(比較例1)を製造し、上記と同様に電気容量を求めた。
【0039】
実施例1における酸化(放電)電気容量と充放電サイクルの関係を図1に、また比較例1における酸化(放電)電気容量と充放電サイクルの関係を図2に示す。
図1に示すように、実施例1による電極によれば充放電のサイクル初期から高い電気容量が得られている。これに対して比較例1による電極は充放電、つまり電気化学的な水素の吸蔵・放出サイクルを5回程度繰り返さなければ十分な電気容量を得ることができない。
【0040】
以上の測定により求めた最大電気容量(放電時、以下同じ)、1サイクル目の電気容量および活性化度を表1に示す。なお、活性化度は、1サイクル目の電気容量/最大電気容量で定義される。表1に示すように、比較例1による電極は活性化度が64%であるのに対して、実施例1による電極は活性化度が100%に達しており、本発明による活性化度向上の効果が確認できた。
また、最大電気容量を比較しても、実施例1が168mAh/gであるのに対して比較例1は159mAh/gに留まっており、本発明によれば水素吸蔵合金の能力を十分引き出すことができる。
【0041】
【表1】
Figure 2004192965
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様のアーク溶解高速急冷法によりTi30.5Cr24.530Ni15(at%)の組成を有する水素吸蔵合金部材を得た。この水素吸蔵合金部材は、上記各構成元素を含むbcc相から構成され、このbcc相が水素吸蔵および電気化学的な活性の両者を担う。この水素吸蔵合金部材に対して以下の条件で水素ガスの吸蔵・放出サイクルを6回繰り返した。
処理温度:200℃、水素ガス圧力:10MPa〜減圧(1Pa以下)(ターボ分子ポンプ使用)
水素ガスの吸蔵・放出処理が施された水素吸蔵合金部材を目開きが75μmの篩にかけた。篩を通過した粉状の水素吸蔵合金部材を用いて電極(実施例2)を製造し、実施例1と同様に電気容量を測定した。
【0043】
アーク溶解高速急冷法により得た上記水素吸蔵合金部材に水素ガスの吸蔵・放出サイクルを施すことなくスタンプミルにより機械的に粉砕した後、被粉砕物を目開きが75μmの篩にかけた。篩を通過した粉状の水素吸蔵合金部材を用いて電極(比較例2)を製造し、上記と同様に電気容量を求めた。
【0044】
実施例2における酸化(放電)電気容量と充放電サイクルの関係を図3に、また比較例2における酸化(放電)電気容量と充放電サイクルの関係を図4に示す。
図3に示すように、実施例2による電極によれば充放電のサイクル初期から高い電気容量が得られている。これに対して比較例2による電極は充放電、つまり電気化学的な水素の吸蔵・放出サイクルを10回程度繰り返さなければ十分な電気容量を得ることができない。
【0045】
以上の測定により求めた最大電気容量、1サイクル目の電気容量および活性化度を表1に示す。表1に示すように、比較例2による電極は活性化度が僅かに6%であるのに対して、実施例2による電極は活性化度が96%に達しており、本発明の優位性は明らかである。
また、最大電気容量を比較しても、実施例2が196mAh/gであるのに対して比較例2は179mAh/gに留まっており、本発明は水素吸蔵合金の能力を十分に引き出すのに有効であることがわかる。
【0046】
(実施例3)
アーク溶解によりTi48Cr43Mo9(at%)の組成を有する水素吸蔵合金母材を得た。この水素吸蔵合金母材を1400℃で10分保持した後に水中に投入して急冷した。
急冷が施された水素吸蔵合金母材をスタンプミルで粉砕した後に、目開き150μmの篩にかけた。篩を通過した粉状の水素吸蔵合金母材に対して粒径が0.5〜1μmのNi粉末を5mass%混合し、目開き75μmの篩を通過するまでスタンプミルで混合・粉砕した。この混合・粉砕工程は、Ni粉末を水素吸蔵合金母材の表面に均等に被着させることを目的としている。混合・粉砕工程後には、水素吸蔵合金母材の表面にNi粉末が点在して被着されていた。
【0047】
水素吸蔵合金母材とその表面に被着したNi粉末とからなる水素吸蔵合金部材に対して真空中で600℃、1時間保持した後に炉冷する熱処理を行った。この熱処理を施すことにより、電気容量を向上することができる。また、この熱処理により、Niは水素吸蔵合金母材の表面近傍に拡散される。なお、熱処理後にXRD(X−ray diffractometer:X線回折装置)を用いて行った解析によると、純Ni相は観察されなかった。これは、水素吸蔵合金母材の表面に被着していたNiが水素吸蔵合金母材中に拡散し、合金母材中のTi,Cr等とともに合金化されたためであると考えられる。なお、bccの結晶構造を有する水素吸蔵合金母材が水素吸蔵を担い、水素吸蔵合金母材に拡散したNiが電気化学的な活性を担う。
【0048】
熱処理が施された水素吸蔵合金部材に対して以下の条件で水素ガスの吸蔵・放出サイクルを3回繰り返したのち、目開き75μmの篩にかけた。
処理温度:40℃、水素ガス圧力:10MPa〜減圧(1Pa以下)(ターボ分子ポンプ使用)
篩を通過した水素吸蔵合金部材を用いて電極(実施例3)を製造し、実施例1と同様に電気容量を測定した。
また、実施例3と同様にして真空中の熱処理まで施した水素吸蔵合金部材を水素ガスの吸放出をさせることなく目開き75μmの篩にかけ、篩を通過したものを用いて電極(比較例3)を製造した。この電極について実施例1と同様に電気容量を測定した。
【0049】
以上の測定により求めた最大電気容量、1サイクル目の電気容量および活性化度を表1に示す。表1に示すように、比較例3による電極は活性化度が42%であるのに対して、実施例3による電極は活性化度が90%に達しており、本発明の活性化度向上の効果が伺われる。
【0050】
実施例3における水素吸蔵合金母材の結晶相の変化をXRDにより観察した。
その結果を図5に示す。なお、図5において、図5(a)は1400℃で10分保持した後に水中に投入して急冷した状態のX線回折チャートを示している。また、図5(b)は、水素吸蔵において水素ガス圧を10MPaまで加圧した後に1MPa(プラトー圧よりも高い圧力)まで減圧して大気に暴露した状態のX線回折チャートを示している。この状態は水素を吸蔵した状態ということができる。また、図5(c)は10MPaまで加圧した後にプラトー圧以下まで減圧し、大気暴露した状態のX線回折チャートを示している。この状態は水素を放出した状態ということができる。
【0051】
図5(a)に示すように、急冷処理後には水素吸蔵合金母材はbcc相の結晶相を呈している。しかし、水素を吸蔵すると、図5(b)に示すように結晶相がfcc相(face centered cubic:面心立方構造)に変化することがわかる。水素を放出すると結晶相はbcc相に復帰する。以上のように、実施例3にかかる水素吸蔵合金は、水素吸蔵・放出に伴って、結晶組織が変化する。ここで、図5(a)および(c)を比較すると、ピークが低角側にシフトし、さらに半価幅が広がることがわかる。ピークが低角側にシフトするのは、水素が金属の格子内に侵入して格子が押し広げられたためである。また、半価幅が広がるのは、格子が押し広げられ、結晶が膨張し合金に歪がかかり、これが残留歪となってほぼ完全に水素を放出した後でも残る。
【0052】
(実施例4)
アーク溶解によりTi34Cr2830Ni8(at%)の組成を有する水素吸蔵合金部材を得た。この水素吸蔵合金部材を1000℃で60分保持した後に水中に投入して急冷した。
急冷が施された水素吸蔵合金部材に対して以下の条件で水素ガスの吸蔵・放出サイクルを4回繰り返したのち、目開き75μmの篩にかけた。なお、この水素ガスの吸蔵・放出により、水素吸蔵合金部材は水素化粉砕された。
処理温度:200℃、水素ガス圧力:10MPa〜減圧(1Pa以下)(ターボ分子ポンプ使用)
篩を通過した水素吸蔵合金部材を用いて電極(実施例4)を製造し、かつこの電極について実施例1と同様に電気容量を測定した。
【0053】
アーク溶解によりTi34Cr2830(at%)の組成を有する水素吸蔵合金母材を得た。この水素吸蔵合金母材を1000℃で60分保持した後に水中に投入して急冷した。この水吸蔵合金母材をスタンプミルで粉砕した後に目開き75μmの篩にかけた。篩を通過した水素吸蔵合金母材に対して粒径が0.5〜1μmのNi粉末を5mass%混合し、目開き75μmの篩を通過するまでスタンプミルで混合・粉砕した。混合・粉砕工程後には、水素吸蔵合金母材の表面にNi粉末が点在して被着されていた。
水素吸蔵合金母材とその表面に被着したNi粉末とからなる水素吸蔵合金部材に対して真空中で600℃、1時間保持した後に炉冷する熱処理を行った。熱処理後に、水素ガスの吸放出をさせることなく目開き75μmの篩にかけ、篩を通過したものを用いて電極(比較例4)を製造した。この電極について実施例1と同様に電気容量を測定した。
【0054】
以上の測定により求めた最大電気容量、1サイクル目の電気容量および活性化度を表1に示す。表1に示すように、比較例4による電極は活性化度が17%であるのに対して、実施例4による電極は活性化度が92%に達している。
また、最大電気容量についても、比較例4が318mAh/gであるのに対して実施例4は327mAh/gであり、本発明を適用することにより、最大電気容量向上の効果を得ることもできる。
【0055】
実施例4にかかる水素吸蔵合金部材の結晶相の観察をXRDを用いて行なった。その結果を図6に示す。なお、図6において、図6(a)は1000℃で60分保持した後に水中に投入して急冷した状態のX線回折チャートを示している。
また、図6(b)は、水素吸蔵において水素ガス圧を10MPaまで加圧した後に1MPa(プラトー圧よりも高い圧力)まで減圧して大気に暴露した状態のX線回折チャートを示している。この状態は水素を吸蔵した状態ということができる。また、図6(c)は10MPaまで加圧した後にプラトー圧以下まで減圧し、大気暴露した状態のX線回折チャートを示している。この状態は水素を放出した状態ということができる。
【0056】
図6(a)に示すように、実施例4にかかる水素吸蔵合金部材は熱処理後において、bcc相とTi2Ni相の2相が観察される。顕微鏡による断面組織観察によると、bcc相をマトリックスとし、このマトリックス中に平均粒径2μmの粒状Ti2Ni相が析出、分散していることが確認された。また、Ti2Ni相はおよそ11vol%を占めていた。
【0057】
次に、図6(b)に示すように水素を吸蔵すると、合金の組織の大部分をfcc相が占めることになる。図6(b)において、fcc相に対応するピーク以外のピークについては未同定であるが、bcc相およびTi2Ni相の存在が伺われる。
水素を吸蔵した後に水素を放出すると、図6(c)に示すように、fcc相のピークは消失し、bcc相のピークが顕著となる。ここで、図6(c)ではTi2Ni相に対応するピークが確認できないが、以下のいくつかの理由によるものと推察される。つまり、水素吸蔵時にTi2Ni相に起因するピークが小さくなること、Ti2Ni相が非晶質化していること、Ti2Ni相のメインピークが半価幅の広がったbcc相の(110)のピークと重なったこと、のいずれかまたは複数が原因でTi2Ni相に起因するピークが確認できないものと解される。
顕微鏡による断面組織観察によると、水素吸蔵前と同様にbcc相からなるマトリックス中に粒状Ti2Ni相が析出、分散していることが確認された。ここで、実施例4において、bcc相は水素吸蔵を担い、Ti2Ni相は電気化学的活性を担うことになる。
【0058】
(実施例5)
実施例1と同様のアーク溶解高速急冷法によりTi30Cr3030Ni10(at%)の組成を有する薄帯状の水素吸蔵合金部材を得た。この水素吸蔵合金部材を920℃で0.8時間保持した後に、室温に維持されたArガスで満たされた冷却室中に取り出して、ガス中急冷を行った。この水素吸蔵合金部材に対して以下の条件で水素ガスの吸蔵・放出サイクルを4回繰り返した。
処理温度:200℃、水素ガス圧力:10MPa〜減圧(1Pa以下)(ターボ分子ポンプ使用)
【0059】
水素ガスの吸蔵・放出処理が施された水素吸蔵合金部材を、目開き75μmの篩にかけ、篩を通過した粉状の水素吸蔵合金部材を用いて電極(実施例5)を製造した。この電極について実施例1と同様にして電気容量を求めた。求めた最大電気容量、1サイクル目の電気容量および活性化度を表1に示す。
【0060】
アーク溶解高速急冷法により得た上記水素吸蔵合金部材に水素ガスの吸蔵・放出サイクルを施すことなくスタンプミルにより機械的に粉砕した後、被粉砕物を目開きが75μmの篩にかけた。篩を通過した粉状の水素吸蔵合金部材を用いて電極(比較例5)を製造し、上記と同様に電気容量を求めた。求めた最大電気容量、1サイクル目の電気容量および活性化度を表1に示す。
【0061】
表1に示すように、比較例5による電極は活性化度が25%であるのに対して、実施例5による電極は活性化度が93%に達しており、本発明による活性化度向上の効果が確認できた。
【0062】
(実施例6)
アーク溶解によりTi34Cr2830Ni8(at%)の組成を有する水素吸蔵合金部材を得た。この水素吸蔵合金部材を1100℃で60分保持した後に水中に投入して急冷した。この水素吸蔵合金部材は、実施例4と同様にbcc相中にTi2Ni相が析出、分散した組織を有している。
急冷が施された水素吸蔵合金部材に対して以下の条件で水素ガスの吸蔵・放出サイクルを3回繰り返したのち、目開き75μmの篩にかけた。なお、この水素ガスの吸蔵・放出により、水素吸蔵合金部材は水素化粉砕された。
処理温度:200℃、水素ガス圧力:10MPa〜減圧(1Pa以下)(ターボ分子ポンプ使用)
篩を通過した水素吸蔵合金部材を用いて電極(実施例6)を製造し、かつこの電極について還元時の電流密度を40mA/g(50時間)、酸化時の電流密度を8mA/gとして放電電気容量を測定した。その結果、最大電気容量は650mAh/gに達した。また、実施例6による電極について、実施例1と同様にして充放電サイクルによる電気容量を測定した。その結果を表1に示すが、98%の活性化度を得ることができた。
【0063】
アーク溶解によりTi37Cr3033(at%)の組成を有する水素吸蔵合金母材を得た。この水素吸蔵合金母材を1400℃で10分保持した後に水中に投入して急冷した。急冷が施された水素吸蔵合金母材をスタンプミルで粉砕した後に、目開き150μmの篩にかけた。篩を通過した粉状の水素吸蔵合金母材に対して粒径が0.5〜1μmのNi粉末を混合した。Ni粉末は、混合後にTi34Cr2830Ni8の組成となるような量だけ混合した。混合後、目開き75μmの篩を通過するまでスタンプミルで混合・粉砕した。この混合・粉砕過程は、Ni粉末を水素吸蔵合金母材の表面に均等に被着させることを目的としている。
水素吸蔵合金母材と、この表面に被着されたNi粉末とからなる水素吸蔵合金部材に対して真空中で600℃、1時間保持した後に炉冷する熱処理を行った。この熱処理を施すことにより、電気容量を向上することができる。
熱処理後に、目開き75μmの篩にかけ、それを通過した水素吸蔵合金部材を用いて電極(比較例6)を製造し、かつこの電極について還元時の電流密度を40mA/g(50時間)、酸化時の電流密度を8mA/gとして放電電気容量を測定した。その結果、最大電気容量は590mAh/gであった。
【0064】
以上のように、実施例6および比較例6の最大電気容量は、各々650mAh/gおよび590mAh/gであった。Ni粉末を母材表面に被着させる比較例6に比べて実施例6は製造工程が簡便であるとともに、最大電気容量は同等以上であることが確認できた。
【0065】
以上本発明の好適な実施の形態、実施例について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態、実施例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、充放電サイクルにおける活性化度の高い水素吸蔵合金電極を得ることができる。また、本発明によれば最大電気容量の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1による電極の電気容量測定結果を示すグラフである。
【図2】比較例1による電極の電気容量測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例2による電極の電気容量測定結果を示すグラフである。
【図4】比較例2による電極の電気容量測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例3にかかる水素吸蔵合金部材(母材)の結晶相の観察をXRDを用いて行なった結果を示す図である。
【図6】実施例4にかかる水素吸蔵合金部材の結晶相の観察をXRDを用いて行なった結果を示す図である。
【図7】実施例6にかかる水素吸蔵合金部材の断面組織を模式的に示した図である。
【図8】アーク溶解高速急冷法を実現する装置の構成を示す概略図である。
【図9】ニッケル水素電池の構造を示す図である。
【符号の説明】
1…第1チャンバ、2…第2チャンバ、3…アーク電極、4…アーク、5…溶湯、6…溶湯保持手段(ハース)、7…底部、8…ノズル、9…回転ロール、10…薄帯、15…雰囲気制御手段、20…正極板、21…負極板、22…セパレータ、23…ケース、24…キャップ

Claims (11)

  1. 主として水素吸蔵を担う第1の相および主として電気化学的活性を担う第2の相を有する水素吸蔵合金部材を用意し、
    前記水素吸蔵合金部材に水素ガスの吸蔵・放出処理を施し、
    前記水素ガスの吸蔵・放出処理が施された前記水素吸蔵合金部材を用いて電極を形成することを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造方法。
  2. 前記水素ガスの吸蔵・放出処理を3回以上繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  3. 前記水素吸蔵合金部材は、前記第1の相と前記第2の相とが単一の合金塊中に存在するとともに、前記第1の相および前記第2の相がともに水素吸蔵および電気化学的活性を担うことを特徴とする請求項1または2に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  4. 前記水素吸蔵合金部材は、
    前記第1の相を構成する合金母材を得る工程(a)と、
    前記工程(a)で得られた前記合金母材の表面に前記第2の相を構成する物質を被着させる工程(b)とを経て得られることを特徴とする請求項1または2に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  5. 前記水素吸蔵合金部材は、前記第2の相が前記第1の相を構成する合金塊中に分散されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の水素吸蔵合金電極の製造方法。
  6. 二次電池の負極に用いられる電極であって、
    前記電極は前記二次電池に組み込まれる前に水素ガスの吸蔵および放出処理が施されている水素吸蔵合金部材を備えることを特徴とする電極。
  7. 前記水素吸蔵合金部材は、TiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)を含む合金粒子の表面にNiを含む領域が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電極。
  8. 前記水素吸蔵合金部材は、TiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)中にNiを含む析出物が分散されていることを特徴とする請求項6に記載の電極。
  9. 二次電池の負極に用いられる電極であって、
    前記電極は、
    主として水素吸蔵を担う第1の相および主として電気化学的活性を担う第2の相を有し、
    前記第1の相はTiおよびCrを含む体心立方型結晶構造からなる相(bcc相)を含み、
    前記第2の相は前記第1の相中に分散されるTi2Niからなる水素吸蔵合金部材を備えることを特徴とする電極。
  10. 前記第1の相は柱状結晶から構成され、前記第2の相は前記柱状結晶の粒界に析出されたものであることを特徴とする請求項9に記載の電極。
  11. 負極に水素吸蔵合金部材を用いた二次電池であって、
    前記水素吸蔵合金部材は、
    主として水素吸蔵を担う第1の相および主として電気化学的活性を担う第2の相を有し、
    活性化度(ただし、活性化度=1サイクル目の放電容量/最大放電容量×100)が90%以上であることを特徴とする二次電池。
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