JP2004277580A - ポリアセタール樹脂組成物および摺動部材 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動性の改善および摺動摩擦音(きしみ音)の低減、さらに高温環境下における耐熱変色性に優れるポリアセタール樹脂組成物並びにこれら組成物よりなる摺動部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、バランスのとれた機械的性質を有し、耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れているために、自動車分野、電気・電子分野で広く利用されている。近年、かかる分野においては次第に要求特性が高度化しており、例えば機構部品、電気・電子機器用部品としての利用において、機械的性質、耐熱性とともに優れた摺動性、摺動摩擦音(きしみ音)の低減、さらには低コスト化が要求されている。
【0003】
これらの要求特性の中で、摺動性の更なる改良や摺動摩擦音(きしみ音)低減のために、従来から様々な試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1や特許文献2には、ポリアセタール樹脂にポリオレフィン系の樹脂を配合することによる摺動性の改良が開示されている。このうち特許文献1では、ポリアセタール樹脂にオレフィン系重合体とビニル系重合体もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上とが、分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合を含有せしめることによって摩擦摩耗特性の改良に加えて摺動時のきしみ音の発生を低減できること、また特許文献2ではポリアセタール樹脂にシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン含有率が30〜100重量%であるポリオレフィン樹脂を配合することによって特に高温での摩擦摩耗特性が改良できることが開示されている。しかし、これらの従来の方法では確かに摺動性は改善されるが、さらに高い摺動性が要求される分野においては、依然として市場の要求レベルに達しておらず、高性能摺動材が望まれた。
【0005】
また、熱安定性を向上させる方法として、例えば特許文献3にはポリアミド12やポリアミド6/66/610三元共重合体等を配合する方法が開示され、特許文献4にはポリアミド6/66/610/12四元共重合体をヒンダードフェノール系酸化防止剤および脂肪酸金属塩と共に添加配合することで、ポリアセタール樹脂の熱安定性を向上させる方法が開示されている。しかし、これらの方法では、ポリアセタール樹脂の熱分解は抑えられるが、融点以下の高温環境下に長時間さらされた場合、配合される熱安定剤が原因で、熱により樹脂が変色するという問題があり、また、摺動特性にも劣るものであった。
【0006】
一方、離型性等を改善させる目的で、ケトン化合物をポリアミドやポリカーボネート等に配合する方法としては、特許文献5および特許文献6に記載されている。しかしながらこれら文献には、ケトン化合物の添加がポリアセタール樹脂の摺動特性や熱安定性にいかなる影響を及ぼすかについては全く言及されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−138357号公報(第1頁)
【0008】
【特許文献2】
特許第3102890号公報(第1〜2頁)
【0009】
【特許文献3】
特公昭62−4422号公報(第2頁)
【0010】
【特許文献4】
特開平3−14859号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献5】
特開平10−212406号公報(第1〜3頁)
【0012】
【特許文献6】
特開昭59−47237号公報(第1〜2頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアセタール樹脂本来の優れた機械的性質等を損なうことなく、摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に優れ、さらには高温環境下での耐熱変色性に優れるポリアセタール樹脂組成物並びにこれら組成物よりなる摺動部材を得ることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に特定のケトン化合物を含有せしめることにより、上記課題が同時に解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明はポリアセタール樹脂および下記一般式(1)で表されるケトン化合物を含有してなるポリアセタール樹脂組成物、
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R1およびR2はそれぞれ炭素数5〜34の炭化水素基を表す。)
(2)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、ケトン化合物の含有量が0.1〜5重量部である上記(1)記載のポリアセタール樹脂組成物、
(3)ポリアセタール樹脂100重量部に対してさらに摺動性改良成分を0.1〜10重量部含有してなる上記(1)または(2)記載のポリアセタール樹脂組成物、
(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部材である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーでありホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーであってもよい。また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわちブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーの何れであってもよい。これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からポリアセタールコポリマーであることが好ましい。コモノマー量が0.3モル%未満では熱安定性が不足する傾向となり、また10モル%を超えると機械強度が低下する傾向となり、いずれも好ましくない。特に好ましいコモノマー量は1.0〜3.0モル%である。
【0020】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法等が挙げられる。
【0021】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキサイドや1,3−ジオキソラン等の共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法等が挙げられる。
【0022】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTM D1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、MFRが0.1〜100g/10分の範囲のものが好ましく、1.0〜50g/10分のものであることが特に好ましい。
【0023】
また、ポリアセタール樹脂としては、予め熱安定剤や発生ガス捕捉剤を含有しているものを用いることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるケトン化合物は、下記一般式(1)で表されるケトン化合物である。
【0025】
【化3】
【0026】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ炭素数5〜34の炭化水素基を示す。ここで、R1およびR2は、好ましくはそれぞれ炭素数5〜34の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜34の芳香族炭化水素基である。ケトン化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用しても良い。炭素数5〜34の脂肪族炭化水素基としては、ペンチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘニコシル基、ヘプタコシル基等が挙げられる。炭素数6〜34の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、置換基として脂肪族炭化水素基を有していても良い。
【0027】
前記一般式(1)中、R1およびR2は、より好ましくはそれぞれ炭素数5〜34の脂肪族炭化水素基である。R1およびR2における脂肪族炭化水素基の炭素数としては、好ましくは11〜27であり、さらに好ましくは15〜22である。R1およびR2は同一でも違っていても良い。
【0028】
脂肪族ケトンとしては、好ましくはジペンタデシルケトン、ジヘプタデシルケトン、ジステアリルケトン、ジオクタデシルケトン、ペンタデシルヘキサデシルケトン、ペンタデシルヘプタデシルケトン、ペンタデシルオクタデシルケトン、ヘキサデシルヘプタデシルケトン、ヘキサデシルオクタデシルケトン、ヘプタデシルオクタデシルケトン等が挙げられる。
【0029】
脂肪族ケトンの製造方法としては、例えば、窒素あるいはヘリウム、アルゴンなどの不活性なキャリアガスに脂肪酸類を含ませた反応ガスを、酸化マグネシウム、酸化カルシウムに代表されるアルカリ土類金属酸化物を含む触媒に、240〜650℃、好ましくは300〜550℃、より好ましくは330〜500℃、最も好ましくは400〜480℃で気相接触反応させてケトン化合物を得る方法がある。ここで反応に用いる脂肪酸類としては、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の炭素数5〜34の脂肪酸が挙げられる。このうち、特に好ましい脂肪酸類は、炭素数9〜23の脂肪酸類である。
【0030】
一方、脂肪族ケトンの他の製造方法としては、マグネシウムなどの各種金属または酸化マグネシウム等の金属酸化物をステアリン酸などの脂肪酸とフラスコ内で300〜345℃で反応させ、生成したステアリン酸塩などの脂肪酸を分解させてケトン類を合成する方法がある。具体的には、天然油脂の加水分解によって得られる炭素数5〜34の脂肪酸の塩より合成される。脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。脂肪酸としては、パルミチン酸またはステアリン酸塩が、ケトン化合物の合成のしやすさの点および熱安定性の面から好ましい。
【0031】
脂肪族ケトン化合物の合成方法は、特に限定されないが、上述の2つの方法が好ましく、例えば、窒素あるいはヘリウム、アルゴンなどの不活性なキャリアガスに脂肪酸類を含ませた反応ガスを、酸化マグネシウム、酸化カルシウムに代表されるアルカリ土類酸化物を含む触媒に、240〜650℃、好ましくは300〜550℃、より好ましくは330〜500℃、最も好ましくは400〜480℃で気相接触反応させてケトン化合物を得る方法がより好ましく、特に酸化マグネシウム、酸化カルシウムを触媒として用いる方法がポリアセタール樹脂組成物の色調を低下させない点でより好ましい。
【0032】
脂肪族ケトンの合成の際に用いられる脂肪酸が種々の炭素数を持つ脂肪酸の混合物である場合は無論のこと、たとえ単一の脂肪酸を原料として用いた場合であっても多くの場合、反応により得られるケトン化合物は種々の炭素数を持つ脂肪族ケトンの混合物となる。さらに脂肪酸、脂肪酸エステルなどを含む場合もある。脂肪族ケトン類のみに精製することが摺動性改良の点から好ましいが、必ずしも必須ではなく反応により得られた混合物を精製を全くせずに、あるいは簡便な精製をしたのみで使用しても差し支えない。好ましい純度は、一般式(1)の化合物の割合が50重量%以上である。
【0033】
またケトン化合物は、合成反応後の精製の有無に係わらず、JIS−K−0070に従って測定した酸化が20以下好ましくは10以下、最も好ましくは7以下とすることで高温環境下での耐熱変色性がより小さくなり好ましい。
【0034】
さらにケトン化合物の融点は、70〜120℃、好ましくは72〜100℃、より好ましくは75〜85℃とすることにより摺動性が一層顕著に改善される。
【0035】
なお、ケトン化合物が複数のケトン化合物の混合物である場合や脂肪酸、50重量%未満の脂肪酸エステルなどを含む場合は、混合物の状態で測定してかまわない。ここで融点は、融点顕微鏡法により測定した値である。
【0036】
本発明において、ケトン化合物は、市販品から適宜選択して使用することも可能である。
【0037】
前記一般式(1)で表されるケトン化合物の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましい。ケトン化合物の配合割合が0.1重量部未満であると摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に対して不十分であり、5重量部を超えると機械的強度の低下を生じ、さらに押出製造時や射出成形時に原料の供給が不安定になりやすい。前記一般式(1)で表されるケトン化合物の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.2〜4重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量部である。このような範囲のものとすることによって、機械的性質等を損なうことなく、摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に優れ、さらに高温環境下において耐熱変色の小さいことについて、一層優れた効果を発現させることが期待できる。
【0038】
本発明の組成物には、摺動性をさらに向上させるため、摺動性改良成分を配合することが好ましい。具体的には、摺動性改良成分として、ポリアセタールに摺動性を付与することができる重合体であれば特に制限がなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、およびそれらのグラフト変性物などのオレフィン系重合体、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系重合体、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテル系重合体などから選ぶことができる(なお“/”は共重合を示す)。ここで重合体とは数平均分子量が1000以上程度のものを言い、5000以上のものであることが、機械物性やブリードアウト抑制のために好ましい。
【0039】
摺動性改良成分の好ましい例としては、オレフィン系重合体が挙げられる。その具体例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどの単独重合体、およびこれらを主成分とする、好ましくは50重量部以上含む共重合体が挙げられる。共重合体の例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体などが挙げられる。これら、オレフィン系重合体は公知のチーグラー触媒に代表されるマルチサイト触媒およびメタロセン系触媒などに代表されるシングルサイト触媒により重合できる。また、超高分子量ポリエチレンや架橋ポリオレフィン粒子なども使用することができる。
【0040】
共重合体の他の例として、オレフィン系重合体とビニル系重合体もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上とが、分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体も好ましく使用することができる。このグラフト共重合体は、前記オレフィン系重合体を主鎖成分とし、下記に示されるビニル系もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上をグラフト反応させたものである。例えばビニル系重合体として、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピルメチルメタクリレート)、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル/スチレン共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/スチレン共重合体、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/スチレン共重合体などが挙げられ、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体が特に好ましく、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体が最も好ましい。また、エーテル系重合体としては、ポリエチレングリコールおよびそのアルキルエーテルまたはエステル、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0041】
上記のグラフト共重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、通常良く知られたラジカル反応によって調整できる。例えば、オレフィン系重合体とビニル系もしくはエーテル系重合体のモノマーにラジカル触媒を加えて溶融混練してグラフト反応する方法、あるいはオレフィン系重合体またはビニル系重合体もしくはエーテル系重合体のいずれかに過酸化物などを添加してフリーラジカルを発生させこれを他の成分と溶融混練することによりグラフト反応する方法などが挙げられる。
【0042】
グラフト共重合体中におけるポリオレフィン系重合体の割合は10〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。ポリオレフィン系重合体の割合が10重量%未満では摺動特性が低下する傾向となり、また95重量%を超えると組成物の表面外観が悪くなる傾向となり、いずれも好ましくない。
【0043】
また、オレフィン系重合体としては、オレフィン系単量体とアクリル系単量体またはメタクリル系単量体の1種または2種以上との共重合体を用いることも好ましい。アクリル系単量体としてはアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、メタクリル系単量体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。好ましい共重合体の例としては、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0044】
摺動性改良成分の別の好ましい例は、シリコーン系重合体、フッ素系重合体から選ばれる1種または2種である。シリコーン系重合体としてはポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンが挙げられ、またそれらをアクリル系重合体やメタクリル系重合体で変性した変性ポリオルガノシロキサンも用いることができる。フッ素系重合体としてはポリテトラフロロエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。摺動性改良成分のうち、オレフィン系重合体とビニル系重合体もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上とが、分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体が特に好ましい。
【0045】
さらに、本発明の樹脂組成物に無機化合物を配合することで、より一層摺動性を改善することができる。無機化合物としては、高面圧時の摩擦係数低減の点から炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、タルク、ワラステナイト、マイカおよび酸化亜鉛等が好ましく、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウムおよび酸化亜鉛が特に好ましい。上記炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムのいずれも好ましく用いられる。かかる無機化合物は、粒子形状、繊維径、アスペクト比等の形状に依存せず、かかる群にあげられた無機充填剤であれば、何れのものも使用することが可能である。無機化合物の配合量としては、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜15重量部が特に好ましく、0.5〜10重量部が最も好ましい。無機化合物の配合量が過少であると対金属における摺動性改善効果が十分得られず、また過大であると対樹脂での摺動性を低下させるため好ましくない。
【0046】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらにその他の無機充填材を配合することでより一層摺動性を改善することができる。無機充填材としては繊維状、粒子状、板状などの形状のものが用いられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコン繊維、シリカ・アルミナ繊維、繊維状ベーマイト、チタン酸カリウムウィスカー、繊維状ゾノトライト、針状ワラステナイト、金属酸化物ウイスカー、ホウ素繊維などが挙げられる。粒子状充填材としては、シリカ、クレイ、ベントナイト、カオリン、珪藻土、パーライト、長石、カーボンブラック、ホワイトカーボン、ガラスビーズ、酸化チタン、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトなどが挙げられる。これらの充填材は表面処理されたものを用いることも可能である。表面処理剤としてはシラン系、チタネート系など公知のカップリング剤を用いることができる。
【0047】
無機充填材は、ポリアセタール樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部配合することができる。100重量部を超えると成形性が低下するため好ましくない。
【0048】
本発明の組成物にさらに用途に応じて添加剤を配合することにより、ポリアセタール樹脂組成物に種々の特性を付与することができる。具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、および離型(潤滑)剤、顔料等を本発明のポリアセタール樹脂組成物100重量部に対して好ましくは0〜5重量部、特に好ましくは0.05〜1.0重量部含有させることができる。
【0049】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N、N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、ポリアセタール100重量部に対して、0.01〜1重量部配合することが好ましい。
【0050】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体、または化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、およびこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等が挙げられる。またアクリルアミドおよびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体やアミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物を挙げることができる。アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体の例としては、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。また、アミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物の例としては、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N,N’、N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート、アンメリン、アセトグアナミン等のトリアジン誘導体が挙げられる。これらホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。ポリアセタール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部配合される。
【0051】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等が挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩、またはアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩である。カルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、10−ヒドキシ−8−オクタデカン酸、dl−エリスロ−9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のジ脂肪酸カルシウムが好ましく、具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム等が挙げられ、特に好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。本発明においては、これらをポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.2重量部配合することが特に有効である。
【0052】
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系物質、蓚酸アニリド系物質、およびヒンダードアミン系物質からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
【0053】
ベンゾトリアゾール系物質の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系物質の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0054】
ヒンダードアミン系物質の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0055】
中でも好ましい耐候剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらの耐候(光)安定剤は、ポリアセタール100重量部に対して0.1〜1重量部配合されることが好ましい。
【0056】
離型剤としては、アルコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。本発明においては、これら炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上をポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.9重量部配合することが特に有効である。
【0057】
本発明のポリアセタール樹脂組成物にさらに硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー等に代表される無機顔料、縮合アゾ系、ペリノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系等に代表される有機顔料等を配合することができる。
【0058】
顔料はポリアセタール樹脂100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲で使用される。5重量部を超えると熱安定性が低下し、好ましくない。
【0059】
さらに、本発明のポリアセタール樹脂組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤、可塑剤や、導電性カーボンブラック、金属粉末、繊維等に代表される導電材、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等に代表される熱可塑性エラストマー、粘着剤、金属石鹸に代表される滑剤、耐加水分解改良剤、接着助剤等の添加剤を配合することができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリアセタール樹脂、ケトン化合物および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において1軸または2軸押出機で均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法等が好ましく用いられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂本来の優れた機械的性質等を損なうことなく、摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に優れ、高温環境下において耐熱変色の小さい特性を有する組成物であり、射出成形や押出成形、ブロー成形等の方法によって各種成形品に加工し利用することができる。射出成形する場合の金型温度としては、結晶化の観点から30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、80℃以上がより一層好ましく、一方、成形品の変形の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下がより一層好ましい。
【0062】
また、これらの成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、および日用品等各種用途に利用することができる。特に摺動性や低摺動摩擦音(きしみ音)の低減効果に優れ、高温環境下での耐熱変色性に優れることから、ギアやベアリングなどの摺動部品や、駆動部などの発熱に晒される用途に有用であり、とりわけ、高温環境下で用いられるようなギアなどの摺動部品に特に有用である。
【0063】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0064】
実施例1〜9
ポリアセタール樹脂(a−1)、ポリアセタール樹脂(a−2)、ポリアセタール樹脂(a−3)に、ケトン化合物(b−1)、ケトン化合物(b−2)、ケトン化合物(b−3)を表1の割合で配合し、30mm径の2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて試験片を作成し、各種評価を行った。これらの結果を併せて表1に示す。
【0065】
実施例10〜13
ポリアセタール樹脂(a−1)、ポリアセタール樹脂(a−2)に、ケトン化合物(b−1)、ケトン化合物(b−2)および摺動性改良成分(c−1)、摺動性改良成分(c−2)、摺動性改良成分(c−3)、無機充填材(d)を表2の割合で配合し、30mm径の2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて試験片を作成し、各種評価を行った。これらの結果を併せて表2に示す。
【0066】
比較例1〜4
ポリアセタール樹脂(a−1)、ポリアセタール樹脂(a−3)に、ケトン化合物(b)の代わりに潤滑剤(e−1)、潤滑剤(e−2)、潤滑剤(e−3)を表3に示す割合で配合し、実施例1と同様の方法でペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて試験片を作成し、各種評価を行った。これらの結果を併せて表3に示す。
【0067】
なお、樹脂組成物の特性は次に示す方法に従って求めた。
(1)摺動性
型締圧力が60トンである射出成形機(日精樹脂工業(株)、型式PS−60E9ASE)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度60℃、成形サイクル25秒で成形し、内径19.0mm、外径24.8mm、高さ30mmのリング状摩耗試験片を作成した。得られた試験片を、23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック(株)、型式EFM−III−EN)を用いて、面圧1.5kg/cm2、線速度30cm/s、接触面積2.0cm2で、相手材をポリアセタール樹脂(東レ(株)、商品名アミラスS761)とし、動摩擦係数、比摩耗量を測定した。
(2)摺動摩擦音(きしみ音)
摺動性評価に用いた試験片と同様の成形条件で作成した摩耗試験片を用いて、面圧3kg/cm2、線速度30cm/s、接触面積2.0cm2で、同種材同士を5時間摺動させた時のきしみ音発生状況を相対評価した。
【0068】
なお、評価基準は、摺動試験部周辺をポリスチレン製の容器で覆わず、むき出しの状態において、きしみ音が全く聞こえなければ◎、同様の状態で、きしみ音は聞こえないが、ざらつき音がする場合を○とし、むき出し状態ではきしみ音が聞こえるが、周辺をポリスチレン製の容器で覆った場合、きしみ音が聞こえなければ△、ポリスチレン製容器で覆ってもきしみ音が聞こえた場合を×とした。
(3)耐熱変色性(色差ΔE)
型締圧力が60トンである射出成形機(日精樹脂工業(株)、型式PS−60E9ASE)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒で成形し、引張試験片(ASTM D638準拠)を作成した。得られた試験片を23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、カラーコンピューター(スガ試験機製SM−5型)により測色した後、温度を140℃に設定した熱風オーブンで500時間乾熱処理をした。処理後の試験片を同様に測色し、処理前に予め測色していた試験片との色差(ΔE)を求めた。
(4)曲げ強さ、曲げ弾性率
型締圧力が60トンである射出成形機(日精樹脂工業(株)、型式PS−60E9ASE)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒で成形し、曲げ試験片を作成した。得られた試験片を23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、ASTM D790に準じて曲げ試験を実施した。
(5)ポリアセタール樹脂のMI(メルトインデックス)
ASTM D1238に従い、MI(メルトインデックス)を求めた。
(6)ケトン化合物の融点
融点顕微鏡法により、融点範囲を求めた。
【0069】
一方、実施例および比較例に用いた物質は、次の通りである。
(1)ポリアセタール樹脂(a−1):東レ(株)、商品名“アミラス”S731(MI=27g/10分)
(2)ポリアセタール樹脂(a−2):東レ(株)、商品名“アミラス”S761(MI=9g/10分)
(3)ポリアセタール樹脂(a−3):特開平3−14859号公報実施例6に従って製造したポリアセタール樹脂
すなわち、2枚のΣ型攪拌翼を有する3リットルニーダーにトリオキサン3000g、1,3−ジオキソラン90mlおよび三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラート0.3gを含有するベンゼン15mlを加え、65℃、40rpmで攪拌した。約1分後に反応が始まり、内温が上昇した。約100℃まで上昇したが、そのまま8分間攪拌した。反応混合物を粉砕することにより、白色粉末状のポリマーが得られた。このポリマーの融点は168℃、結晶化温度は147℃であった。得られたポリアセタール樹脂に対して、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、商品名“Irganox”245)、ステアリン酸カルシウム(川村化成工業(株))、ポリアミド6/66/610/12四元共重合体の組成比が22/12/16/50であるポリアミド四元共重合体およびメラミンを表4に示す割合で配合し、池貝鉄工所製ベント付2軸φ45mm押出機を用いて、220〜230℃/10mmtorrで溶融押出混練した。
(4)ケトン化合物(b−1):日本化成(株)、商品名“ワックスKS”融点:77〜81℃、酸価:4
(5)ケトン化合物(b−2):触媒として試薬特級の酸化カルシウム(シグマアルドリッチジャパン(株))を成型し、それを10〜24メッシュに粉砕した。その粉砕した触媒8ccを内径が10mmのステンレスチューブに充填し、そのステンレスチューブを溶融塩に浸して480℃の反応温度に設定した。そのステンレスチューブの入り口部から原料であるカルボン酸として、ステアリン酸5vol.%を蒸発させたものをキャリアガスの窒素(流量480ml/分)とともに1気圧下で流し、その反応ガスを空間速度(GHSV)3789Hr−1で流し、480℃で気相接触反応を起こさせた。反応生成物と未反応カルボン酸を含む生成ガスは、FIDを検出器とするガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、カルボン酸添加率が90%で、生成したケトン化合物の収率は68モル%、生成したケトン化合物のうち、18−ペンタトリアコサノンの選択率は75モル%、融点76〜81℃、酸価:5であった。
ここで、カルボン酸転化率、ケトン類の収率及び選択率は下記のとおり決定した。
上記において、カルボン酸及びケトンの量はモル数で測定した量を表わす。
(6)ケトン化合物(b−3):250ccの三口フラスコに高純度ステアリン酸(シグマアルドリッチジャパン(株))40gを入れ、330℃まで加熱した。330℃に達した時点でマグネシウム粉末1.72gを入れ、340℃に90分間保った。冷却の後、クロロフォルム200ml、希硝酸100mlを加え、1時間環流した。溶液を分液漏斗で油層を分離し、エバポレートしてケトン化合物を得た。ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、18−ペンタトリアコサノンの選択率は53モル%、融点:72〜74℃、酸価:12であった。
(7)摺動性改良成分(c−1):ポリエチレン−g−アクリロニトリルスチレン共重合体(日本油脂(株)、商品名“モディパー”A1401)
(8)摺動性改良成分(c−2):ポリエチレン−g−スチレン/ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合体
すなわち、超低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)、商品名“ナフレックス”DFDB1088)50重量部とスチレン34重量部およびヒドロキシプロピルメタクリレート15重量部を水中に懸濁させ、75℃で2時間撹拌した。次に3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド0.15重量部、t−ブチルパーオキサイドメタクリロイロキシエチルカーボネート0.4重量部をスチレン1重量部に混合させて反応混合物中に投入し、70℃で4時間反応させた。得られた反応物を水洗、乾燥し、200℃で溶融押出することでグラフト共重合体C−2を製造した。熱分解ガスクロマトグラフィーによって組成分析を行ったところ、ポリエチレン/スチレン/ヒドロキシプロピルメタクリレートの重量割合は50/35/15であった。
(9)摺動性改良成分(c−3):シリコーン系重合体、ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン(株)、商品名SH−200(粘度5000cs))
(10)無機充填材(d):重質炭酸カルシウム((株)同和カルファイン、商品名“KSS”−1000)
(11)潤滑剤(e−1):エチレンビスステアリン酸アミド(Palmamide SDN.BHD. 、商品名“パーモワックス”EBS−SF)
(12)潤滑剤(e−2):ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(日本化成(株)、商品名“スリパックス”ZHS)
(13)潤滑剤(e−3):モンタン酸エステル(クラリアントジャパン(株)、商品名“リコワックス”E)
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
以上の説明および実施例から明らかなように、ポリアセタール樹脂にケトン化合物を配合した場合、機械的性質を損なうことなく、動摩擦係数および比摩耗量が低下し、摺動摩擦音(きしみ音)も改善されることが判る。さらに、高温環境下における耐熱変色性にも大きく優れていることが判る。
【0075】
また、ポリアセタール樹脂およびケトン化合物に対して、さらに摺動性改良成分および/または無機充填材を配合すると、動摩擦係数および比摩耗量、摺動摩擦音(きしみ音)が大幅に改善されることが判る。
【0076】
一方、比較例に示したように、ケトン化合物の代わりに他の潤滑剤を用いた場合は、ケトン化合物を配合した樹脂組成物より、動摩擦係数、比摩耗量が大きいことが判る。
【0077】
【発明の効果】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、摺動性、摺動摩擦音(きしみ音)の低減、高温環境下における耐熱変色性に優れており、この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして、機械部品、自動車部品、電気・電子機器部品、建築部材、外装、外観部品および日用品等、各種用途に利用することができる。特に、良好な摺動性が求められるギアやベアリング等の摺動部品に好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動性の改善および摺動摩擦音(きしみ音)の低減、さらに高温環境下における耐熱変色性に優れるポリアセタール樹脂組成物並びにこれら組成物よりなる摺動部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、バランスのとれた機械的性質を有し、耐熱性、耐薬品性、電気特性に優れているために、自動車分野、電気・電子分野で広く利用されている。近年、かかる分野においては次第に要求特性が高度化しており、例えば機構部品、電気・電子機器用部品としての利用において、機械的性質、耐熱性とともに優れた摺動性、摺動摩擦音(きしみ音)の低減、さらには低コスト化が要求されている。
【0003】
これらの要求特性の中で、摺動性の更なる改良や摺動摩擦音(きしみ音)低減のために、従来から様々な試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1や特許文献2には、ポリアセタール樹脂にポリオレフィン系の樹脂を配合することによる摺動性の改良が開示されている。このうち特許文献1では、ポリアセタール樹脂にオレフィン系重合体とビニル系重合体もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上とが、分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合を含有せしめることによって摩擦摩耗特性の改良に加えて摺動時のきしみ音の発生を低減できること、また特許文献2ではポリアセタール樹脂にシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレン含有率が30〜100重量%であるポリオレフィン樹脂を配合することによって特に高温での摩擦摩耗特性が改良できることが開示されている。しかし、これらの従来の方法では確かに摺動性は改善されるが、さらに高い摺動性が要求される分野においては、依然として市場の要求レベルに達しておらず、高性能摺動材が望まれた。
【0005】
また、熱安定性を向上させる方法として、例えば特許文献3にはポリアミド12やポリアミド6/66/610三元共重合体等を配合する方法が開示され、特許文献4にはポリアミド6/66/610/12四元共重合体をヒンダードフェノール系酸化防止剤および脂肪酸金属塩と共に添加配合することで、ポリアセタール樹脂の熱安定性を向上させる方法が開示されている。しかし、これらの方法では、ポリアセタール樹脂の熱分解は抑えられるが、融点以下の高温環境下に長時間さらされた場合、配合される熱安定剤が原因で、熱により樹脂が変色するという問題があり、また、摺動特性にも劣るものであった。
【0006】
一方、離型性等を改善させる目的で、ケトン化合物をポリアミドやポリカーボネート等に配合する方法としては、特許文献5および特許文献6に記載されている。しかしながらこれら文献には、ケトン化合物の添加がポリアセタール樹脂の摺動特性や熱安定性にいかなる影響を及ぼすかについては全く言及されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−138357号公報(第1頁)
【0008】
【特許文献2】
特許第3102890号公報(第1〜2頁)
【0009】
【特許文献3】
特公昭62−4422号公報(第2頁)
【0010】
【特許文献4】
特開平3−14859号公報(第2頁)
【0011】
【特許文献5】
特開平10−212406号公報(第1〜3頁)
【0012】
【特許文献6】
特開昭59−47237号公報(第1〜2頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリアセタール樹脂本来の優れた機械的性質等を損なうことなく、摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に優れ、さらには高温環境下での耐熱変色性に優れるポリアセタール樹脂組成物並びにこれら組成物よりなる摺動部材を得ることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に特定のケトン化合物を含有せしめることにより、上記課題が同時に解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明はポリアセタール樹脂および下記一般式(1)で表されるケトン化合物を含有してなるポリアセタール樹脂組成物、
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R1およびR2はそれぞれ炭素数5〜34の炭化水素基を表す。)
(2)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、ケトン化合物の含有量が0.1〜5重量部である上記(1)記載のポリアセタール樹脂組成物、
(3)ポリアセタール樹脂100重量部に対してさらに摺動性改良成分を0.1〜10重量部含有してなる上記(1)または(2)記載のポリアセタール樹脂組成物、
(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部材である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーでありホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーであってもよい。また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわちブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーの何れであってもよい。これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からポリアセタールコポリマーであることが好ましい。コモノマー量が0.3モル%未満では熱安定性が不足する傾向となり、また10モル%を超えると機械強度が低下する傾向となり、いずれも好ましくない。特に好ましいコモノマー量は1.0〜3.0モル%である。
【0020】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法等が挙げられる。
【0021】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキサイドや1,3−ジオキソラン等の共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法等が挙げられる。
【0022】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTM D1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、MFRが0.1〜100g/10分の範囲のものが好ましく、1.0〜50g/10分のものであることが特に好ましい。
【0023】
また、ポリアセタール樹脂としては、予め熱安定剤や発生ガス捕捉剤を含有しているものを用いることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるケトン化合物は、下記一般式(1)で表されるケトン化合物である。
【0025】
【化3】
【0026】
式(1)中、R1およびR2は、それぞれ炭素数5〜34の炭化水素基を示す。ここで、R1およびR2は、好ましくはそれぞれ炭素数5〜34の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜34の芳香族炭化水素基である。ケトン化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用しても良い。炭素数5〜34の脂肪族炭化水素基としては、ペンチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘニコシル基、ヘプタコシル基等が挙げられる。炭素数6〜34の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、置換基として脂肪族炭化水素基を有していても良い。
【0027】
前記一般式(1)中、R1およびR2は、より好ましくはそれぞれ炭素数5〜34の脂肪族炭化水素基である。R1およびR2における脂肪族炭化水素基の炭素数としては、好ましくは11〜27であり、さらに好ましくは15〜22である。R1およびR2は同一でも違っていても良い。
【0028】
脂肪族ケトンとしては、好ましくはジペンタデシルケトン、ジヘプタデシルケトン、ジステアリルケトン、ジオクタデシルケトン、ペンタデシルヘキサデシルケトン、ペンタデシルヘプタデシルケトン、ペンタデシルオクタデシルケトン、ヘキサデシルヘプタデシルケトン、ヘキサデシルオクタデシルケトン、ヘプタデシルオクタデシルケトン等が挙げられる。
【0029】
脂肪族ケトンの製造方法としては、例えば、窒素あるいはヘリウム、アルゴンなどの不活性なキャリアガスに脂肪酸類を含ませた反応ガスを、酸化マグネシウム、酸化カルシウムに代表されるアルカリ土類金属酸化物を含む触媒に、240〜650℃、好ましくは300〜550℃、より好ましくは330〜500℃、最も好ましくは400〜480℃で気相接触反応させてケトン化合物を得る方法がある。ここで反応に用いる脂肪酸類としては、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の炭素数5〜34の脂肪酸が挙げられる。このうち、特に好ましい脂肪酸類は、炭素数9〜23の脂肪酸類である。
【0030】
一方、脂肪族ケトンの他の製造方法としては、マグネシウムなどの各種金属または酸化マグネシウム等の金属酸化物をステアリン酸などの脂肪酸とフラスコ内で300〜345℃で反応させ、生成したステアリン酸塩などの脂肪酸を分解させてケトン類を合成する方法がある。具体的には、天然油脂の加水分解によって得られる炭素数5〜34の脂肪酸の塩より合成される。脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。脂肪酸としては、パルミチン酸またはステアリン酸塩が、ケトン化合物の合成のしやすさの点および熱安定性の面から好ましい。
【0031】
脂肪族ケトン化合物の合成方法は、特に限定されないが、上述の2つの方法が好ましく、例えば、窒素あるいはヘリウム、アルゴンなどの不活性なキャリアガスに脂肪酸類を含ませた反応ガスを、酸化マグネシウム、酸化カルシウムに代表されるアルカリ土類酸化物を含む触媒に、240〜650℃、好ましくは300〜550℃、より好ましくは330〜500℃、最も好ましくは400〜480℃で気相接触反応させてケトン化合物を得る方法がより好ましく、特に酸化マグネシウム、酸化カルシウムを触媒として用いる方法がポリアセタール樹脂組成物の色調を低下させない点でより好ましい。
【0032】
脂肪族ケトンの合成の際に用いられる脂肪酸が種々の炭素数を持つ脂肪酸の混合物である場合は無論のこと、たとえ単一の脂肪酸を原料として用いた場合であっても多くの場合、反応により得られるケトン化合物は種々の炭素数を持つ脂肪族ケトンの混合物となる。さらに脂肪酸、脂肪酸エステルなどを含む場合もある。脂肪族ケトン類のみに精製することが摺動性改良の点から好ましいが、必ずしも必須ではなく反応により得られた混合物を精製を全くせずに、あるいは簡便な精製をしたのみで使用しても差し支えない。好ましい純度は、一般式(1)の化合物の割合が50重量%以上である。
【0033】
またケトン化合物は、合成反応後の精製の有無に係わらず、JIS−K−0070に従って測定した酸化が20以下好ましくは10以下、最も好ましくは7以下とすることで高温環境下での耐熱変色性がより小さくなり好ましい。
【0034】
さらにケトン化合物の融点は、70〜120℃、好ましくは72〜100℃、より好ましくは75〜85℃とすることにより摺動性が一層顕著に改善される。
【0035】
なお、ケトン化合物が複数のケトン化合物の混合物である場合や脂肪酸、50重量%未満の脂肪酸エステルなどを含む場合は、混合物の状態で測定してかまわない。ここで融点は、融点顕微鏡法により測定した値である。
【0036】
本発明において、ケトン化合物は、市販品から適宜選択して使用することも可能である。
【0037】
前記一般式(1)で表されるケトン化合物の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましい。ケトン化合物の配合割合が0.1重量部未満であると摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に対して不十分であり、5重量部を超えると機械的強度の低下を生じ、さらに押出製造時や射出成形時に原料の供給が不安定になりやすい。前記一般式(1)で表されるケトン化合物の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.2〜4重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量部である。このような範囲のものとすることによって、機械的性質等を損なうことなく、摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に優れ、さらに高温環境下において耐熱変色の小さいことについて、一層優れた効果を発現させることが期待できる。
【0038】
本発明の組成物には、摺動性をさらに向上させるため、摺動性改良成分を配合することが好ましい。具体的には、摺動性改良成分として、ポリアセタールに摺動性を付与することができる重合体であれば特に制限がなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、およびそれらのグラフト変性物などのオレフィン系重合体、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系重合体、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテル系重合体などから選ぶことができる(なお“/”は共重合を示す)。ここで重合体とは数平均分子量が1000以上程度のものを言い、5000以上のものであることが、機械物性やブリードアウト抑制のために好ましい。
【0039】
摺動性改良成分の好ましい例としては、オレフィン系重合体が挙げられる。その具体例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどの単独重合体、およびこれらを主成分とする、好ましくは50重量部以上含む共重合体が挙げられる。共重合体の例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体などが挙げられる。これら、オレフィン系重合体は公知のチーグラー触媒に代表されるマルチサイト触媒およびメタロセン系触媒などに代表されるシングルサイト触媒により重合できる。また、超高分子量ポリエチレンや架橋ポリオレフィン粒子なども使用することができる。
【0040】
共重合体の他の例として、オレフィン系重合体とビニル系重合体もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上とが、分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体も好ましく使用することができる。このグラフト共重合体は、前記オレフィン系重合体を主鎖成分とし、下記に示されるビニル系もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上をグラフト反応させたものである。例えばビニル系重合体として、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピルメチルメタクリレート)、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル/スチレン共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/スチレン共重合体、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/スチレン共重合体などが挙げられ、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体が特に好ましく、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート/アクリロニトリル/スチレン共重合体が最も好ましい。また、エーテル系重合体としては、ポリエチレングリコールおよびそのアルキルエーテルまたはエステル、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0041】
上記のグラフト共重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、通常良く知られたラジカル反応によって調整できる。例えば、オレフィン系重合体とビニル系もしくはエーテル系重合体のモノマーにラジカル触媒を加えて溶融混練してグラフト反応する方法、あるいはオレフィン系重合体またはビニル系重合体もしくはエーテル系重合体のいずれかに過酸化物などを添加してフリーラジカルを発生させこれを他の成分と溶融混練することによりグラフト反応する方法などが挙げられる。
【0042】
グラフト共重合体中におけるポリオレフィン系重合体の割合は10〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。ポリオレフィン系重合体の割合が10重量%未満では摺動特性が低下する傾向となり、また95重量%を超えると組成物の表面外観が悪くなる傾向となり、いずれも好ましくない。
【0043】
また、オレフィン系重合体としては、オレフィン系単量体とアクリル系単量体またはメタクリル系単量体の1種または2種以上との共重合体を用いることも好ましい。アクリル系単量体としてはアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、メタクリル系単量体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。好ましい共重合体の例としては、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0044】
摺動性改良成分の別の好ましい例は、シリコーン系重合体、フッ素系重合体から選ばれる1種または2種である。シリコーン系重合体としてはポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサンなどのポリオルガノシロキサンが挙げられ、またそれらをアクリル系重合体やメタクリル系重合体で変性した変性ポリオルガノシロキサンも用いることができる。フッ素系重合体としてはポリテトラフロロエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどが挙げられる。摺動性改良成分のうち、オレフィン系重合体とビニル系重合体もしくはエーテル系重合体の1種または2種以上とが、分岐または架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体が特に好ましい。
【0045】
さらに、本発明の樹脂組成物に無機化合物を配合することで、より一層摺動性を改善することができる。無機化合物としては、高面圧時の摩擦係数低減の点から炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、タルク、ワラステナイト、マイカおよび酸化亜鉛等が好ましく、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウムおよび酸化亜鉛が特に好ましい。上記炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムのいずれも好ましく用いられる。かかる無機化合物は、粒子形状、繊維径、アスペクト比等の形状に依存せず、かかる群にあげられた無機充填剤であれば、何れのものも使用することが可能である。無機化合物の配合量としては、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜15重量部が特に好ましく、0.5〜10重量部が最も好ましい。無機化合物の配合量が過少であると対金属における摺動性改善効果が十分得られず、また過大であると対樹脂での摺動性を低下させるため好ましくない。
【0046】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらにその他の無機充填材を配合することでより一層摺動性を改善することができる。無機充填材としては繊維状、粒子状、板状などの形状のものが用いられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコン繊維、シリカ・アルミナ繊維、繊維状ベーマイト、チタン酸カリウムウィスカー、繊維状ゾノトライト、針状ワラステナイト、金属酸化物ウイスカー、ホウ素繊維などが挙げられる。粒子状充填材としては、シリカ、クレイ、ベントナイト、カオリン、珪藻土、パーライト、長石、カーボンブラック、ホワイトカーボン、ガラスビーズ、酸化チタン、硫酸バリウム、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトなどが挙げられる。これらの充填材は表面処理されたものを用いることも可能である。表面処理剤としてはシラン系、チタネート系など公知のカップリング剤を用いることができる。
【0047】
無機充填材は、ポリアセタール樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部配合することができる。100重量部を超えると成形性が低下するため好ましくない。
【0048】
本発明の組成物にさらに用途に応じて添加剤を配合することにより、ポリアセタール樹脂組成物に種々の特性を付与することができる。具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、および離型(潤滑)剤、顔料等を本発明のポリアセタール樹脂組成物100重量部に対して好ましくは0〜5重量部、特に好ましくは0.05〜1.0重量部含有させることができる。
【0049】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N、N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、ポリアセタール100重量部に対して、0.01〜1重量部配合することが好ましい。
【0050】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体、または化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、およびこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等が挙げられる。またアクリルアミドおよびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体やアミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物を挙げることができる。アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体の例としては、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。また、アミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物の例としては、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N,N’、N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート、アンメリン、アセトグアナミン等のトリアジン誘導体が挙げられる。これらホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物は1種類用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。ポリアセタール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部配合される。
【0051】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等が挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩、またはアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩である。カルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、10−ヒドキシ−8−オクタデカン酸、dl−エリスロ−9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のジ脂肪酸カルシウムが好ましく、具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム等が挙げられ、特に好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。本発明においては、これらをポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.2重量部配合することが特に有効である。
【0052】
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系物質、蓚酸アニリド系物質、およびヒンダードアミン系物質からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
【0053】
ベンゾトリアゾール系物質の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系物質の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0054】
ヒンダードアミン系物質の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0055】
中でも好ましい耐候剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらの耐候(光)安定剤は、ポリアセタール100重量部に対して0.1〜1重量部配合されることが好ましい。
【0056】
離型剤としては、アルコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。本発明においては、これら炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上をポリアセタール100重量部に対して、0.01〜0.9重量部配合することが特に有効である。
【0057】
本発明のポリアセタール樹脂組成物にさらに硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー等に代表される無機顔料、縮合アゾ系、ペリノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系等に代表される有機顔料等を配合することができる。
【0058】
顔料はポリアセタール樹脂100重量部に対して0〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部の範囲で使用される。5重量部を超えると熱安定性が低下し、好ましくない。
【0059】
さらに、本発明のポリアセタール樹脂組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤、可塑剤や、導電性カーボンブラック、金属粉末、繊維等に代表される導電材、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等に代表される熱可塑性エラストマー、粘着剤、金属石鹸に代表される滑剤、耐加水分解改良剤、接着助剤等の添加剤を配合することができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリアセタール樹脂、ケトン化合物および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において1軸または2軸押出機で均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法等が好ましく用いられる。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂本来の優れた機械的性質等を損なうことなく、摺動性や摺動摩擦音(きしみ音)の低減に優れ、高温環境下において耐熱変色の小さい特性を有する組成物であり、射出成形や押出成形、ブロー成形等の方法によって各種成形品に加工し利用することができる。射出成形する場合の金型温度としては、結晶化の観点から30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、80℃以上がより一層好ましく、一方、成形品の変形の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下がより一層好ましい。
【0062】
また、これらの成形品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、および日用品等各種用途に利用することができる。特に摺動性や低摺動摩擦音(きしみ音)の低減効果に優れ、高温環境下での耐熱変色性に優れることから、ギアやベアリングなどの摺動部品や、駆動部などの発熱に晒される用途に有用であり、とりわけ、高温環境下で用いられるようなギアなどの摺動部品に特に有用である。
【0063】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0064】
実施例1〜9
ポリアセタール樹脂(a−1)、ポリアセタール樹脂(a−2)、ポリアセタール樹脂(a−3)に、ケトン化合物(b−1)、ケトン化合物(b−2)、ケトン化合物(b−3)を表1の割合で配合し、30mm径の2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて試験片を作成し、各種評価を行った。これらの結果を併せて表1に示す。
【0065】
実施例10〜13
ポリアセタール樹脂(a−1)、ポリアセタール樹脂(a−2)に、ケトン化合物(b−1)、ケトン化合物(b−2)および摺動性改良成分(c−1)、摺動性改良成分(c−2)、摺動性改良成分(c−3)、無機充填材(d)を表2の割合で配合し、30mm径の2軸押出機を用いてシリンダー温度190℃で溶融混練してペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて試験片を作成し、各種評価を行った。これらの結果を併せて表2に示す。
【0066】
比較例1〜4
ポリアセタール樹脂(a−1)、ポリアセタール樹脂(a−3)に、ケトン化合物(b)の代わりに潤滑剤(e−1)、潤滑剤(e−2)、潤滑剤(e−3)を表3に示す割合で配合し、実施例1と同様の方法でペレットを得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて試験片を作成し、各種評価を行った。これらの結果を併せて表3に示す。
【0067】
なお、樹脂組成物の特性は次に示す方法に従って求めた。
(1)摺動性
型締圧力が60トンである射出成形機(日精樹脂工業(株)、型式PS−60E9ASE)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度60℃、成形サイクル25秒で成形し、内径19.0mm、外径24.8mm、高さ30mmのリング状摩耗試験片を作成した。得られた試験片を、23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック(株)、型式EFM−III−EN)を用いて、面圧1.5kg/cm2、線速度30cm/s、接触面積2.0cm2で、相手材をポリアセタール樹脂(東レ(株)、商品名アミラスS761)とし、動摩擦係数、比摩耗量を測定した。
(2)摺動摩擦音(きしみ音)
摺動性評価に用いた試験片と同様の成形条件で作成した摩耗試験片を用いて、面圧3kg/cm2、線速度30cm/s、接触面積2.0cm2で、同種材同士を5時間摺動させた時のきしみ音発生状況を相対評価した。
【0068】
なお、評価基準は、摺動試験部周辺をポリスチレン製の容器で覆わず、むき出しの状態において、きしみ音が全く聞こえなければ◎、同様の状態で、きしみ音は聞こえないが、ざらつき音がする場合を○とし、むき出し状態ではきしみ音が聞こえるが、周辺をポリスチレン製の容器で覆った場合、きしみ音が聞こえなければ△、ポリスチレン製容器で覆ってもきしみ音が聞こえた場合を×とした。
(3)耐熱変色性(色差ΔE)
型締圧力が60トンである射出成形機(日精樹脂工業(株)、型式PS−60E9ASE)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒で成形し、引張試験片(ASTM D638準拠)を作成した。得られた試験片を23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、カラーコンピューター(スガ試験機製SM−5型)により測色した後、温度を140℃に設定した熱風オーブンで500時間乾熱処理をした。処理後の試験片を同様に測色し、処理前に予め測色していた試験片との色差(ΔE)を求めた。
(4)曲げ強さ、曲げ弾性率
型締圧力が60トンである射出成形機(日精樹脂工業(株)、型式PS−60E9ASE)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒で成形し、曲げ試験片を作成した。得られた試験片を23℃、50%RHの環境下に24時間放置後、ASTM D790に準じて曲げ試験を実施した。
(5)ポリアセタール樹脂のMI(メルトインデックス)
ASTM D1238に従い、MI(メルトインデックス)を求めた。
(6)ケトン化合物の融点
融点顕微鏡法により、融点範囲を求めた。
【0069】
一方、実施例および比較例に用いた物質は、次の通りである。
(1)ポリアセタール樹脂(a−1):東レ(株)、商品名“アミラス”S731(MI=27g/10分)
(2)ポリアセタール樹脂(a−2):東レ(株)、商品名“アミラス”S761(MI=9g/10分)
(3)ポリアセタール樹脂(a−3):特開平3−14859号公報実施例6に従って製造したポリアセタール樹脂
すなわち、2枚のΣ型攪拌翼を有する3リットルニーダーにトリオキサン3000g、1,3−ジオキソラン90mlおよび三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラート0.3gを含有するベンゼン15mlを加え、65℃、40rpmで攪拌した。約1分後に反応が始まり、内温が上昇した。約100℃まで上昇したが、そのまま8分間攪拌した。反応混合物を粉砕することにより、白色粉末状のポリマーが得られた。このポリマーの融点は168℃、結晶化温度は147℃であった。得られたポリアセタール樹脂に対して、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)、商品名“Irganox”245)、ステアリン酸カルシウム(川村化成工業(株))、ポリアミド6/66/610/12四元共重合体の組成比が22/12/16/50であるポリアミド四元共重合体およびメラミンを表4に示す割合で配合し、池貝鉄工所製ベント付2軸φ45mm押出機を用いて、220〜230℃/10mmtorrで溶融押出混練した。
(4)ケトン化合物(b−1):日本化成(株)、商品名“ワックスKS”融点:77〜81℃、酸価:4
(5)ケトン化合物(b−2):触媒として試薬特級の酸化カルシウム(シグマアルドリッチジャパン(株))を成型し、それを10〜24メッシュに粉砕した。その粉砕した触媒8ccを内径が10mmのステンレスチューブに充填し、そのステンレスチューブを溶融塩に浸して480℃の反応温度に設定した。そのステンレスチューブの入り口部から原料であるカルボン酸として、ステアリン酸5vol.%を蒸発させたものをキャリアガスの窒素(流量480ml/分)とともに1気圧下で流し、その反応ガスを空間速度(GHSV)3789Hr−1で流し、480℃で気相接触反応を起こさせた。反応生成物と未反応カルボン酸を含む生成ガスは、FIDを検出器とするガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、カルボン酸添加率が90%で、生成したケトン化合物の収率は68モル%、生成したケトン化合物のうち、18−ペンタトリアコサノンの選択率は75モル%、融点76〜81℃、酸価:5であった。
ここで、カルボン酸転化率、ケトン類の収率及び選択率は下記のとおり決定した。
上記において、カルボン酸及びケトンの量はモル数で測定した量を表わす。
(6)ケトン化合物(b−3):250ccの三口フラスコに高純度ステアリン酸(シグマアルドリッチジャパン(株))40gを入れ、330℃まで加熱した。330℃に達した時点でマグネシウム粉末1.72gを入れ、340℃に90分間保った。冷却の後、クロロフォルム200ml、希硝酸100mlを加え、1時間環流した。溶液を分液漏斗で油層を分離し、エバポレートしてケトン化合物を得た。ガスクロマトグラフィーにより分析した結果、18−ペンタトリアコサノンの選択率は53モル%、融点:72〜74℃、酸価:12であった。
(7)摺動性改良成分(c−1):ポリエチレン−g−アクリロニトリルスチレン共重合体(日本油脂(株)、商品名“モディパー”A1401)
(8)摺動性改良成分(c−2):ポリエチレン−g−スチレン/ヒドロキシプロピルメタクリレート共重合体
すなわち、超低密度ポリエチレン(日本ユニカー(株)、商品名“ナフレックス”DFDB1088)50重量部とスチレン34重量部およびヒドロキシプロピルメタクリレート15重量部を水中に懸濁させ、75℃で2時間撹拌した。次に3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド0.15重量部、t−ブチルパーオキサイドメタクリロイロキシエチルカーボネート0.4重量部をスチレン1重量部に混合させて反応混合物中に投入し、70℃で4時間反応させた。得られた反応物を水洗、乾燥し、200℃で溶融押出することでグラフト共重合体C−2を製造した。熱分解ガスクロマトグラフィーによって組成分析を行ったところ、ポリエチレン/スチレン/ヒドロキシプロピルメタクリレートの重量割合は50/35/15であった。
(9)摺動性改良成分(c−3):シリコーン系重合体、ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン(株)、商品名SH−200(粘度5000cs))
(10)無機充填材(d):重質炭酸カルシウム((株)同和カルファイン、商品名“KSS”−1000)
(11)潤滑剤(e−1):エチレンビスステアリン酸アミド(Palmamide SDN.BHD. 、商品名“パーモワックス”EBS−SF)
(12)潤滑剤(e−2):ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(日本化成(株)、商品名“スリパックス”ZHS)
(13)潤滑剤(e−3):モンタン酸エステル(クラリアントジャパン(株)、商品名“リコワックス”E)
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
以上の説明および実施例から明らかなように、ポリアセタール樹脂にケトン化合物を配合した場合、機械的性質を損なうことなく、動摩擦係数および比摩耗量が低下し、摺動摩擦音(きしみ音)も改善されることが判る。さらに、高温環境下における耐熱変色性にも大きく優れていることが判る。
【0075】
また、ポリアセタール樹脂およびケトン化合物に対して、さらに摺動性改良成分および/または無機充填材を配合すると、動摩擦係数および比摩耗量、摺動摩擦音(きしみ音)が大幅に改善されることが判る。
【0076】
一方、比較例に示したように、ケトン化合物の代わりに他の潤滑剤を用いた場合は、ケトン化合物を配合した樹脂組成物より、動摩擦係数、比摩耗量が大きいことが判る。
【0077】
【発明の効果】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、摺動性、摺動摩擦音(きしみ音)の低減、高温環境下における耐熱変色性に優れており、この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして、機械部品、自動車部品、電気・電子機器部品、建築部材、外装、外観部品および日用品等、各種用途に利用することができる。特に、良好な摺動性が求められるギアやベアリング等の摺動部品に好適である。
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2003
- 2003-03-17 JP JP2003071511A patent/JP2004277580A/ja active Pending
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