JP2004277329A - ポルフィリン化合物、そのアルブミン包接化合物および人工酸素運搬体 - Google Patents

ポルフィリン化合物、そのアルブミン包接化合物および人工酸素運搬体 Download PDF

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Abstract

【課題】安定性が一層改善された酸素化錯体を形成し得るポルフィリン化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(A)で示されるポルフィリン化合物。
【化1】
Figure 2004277329

【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規ポルフィリン金属錯体等のポルフィリン化合物、そのアルブミン包接化合物および人工酸素運搬体に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内で酸素の運搬・貯蔵の役割を担うヘモグロビンやミオグロビンの活性中心であるヘム、すなわちポルフィリン鉄(II)錯体は、酸素分圧に応答して分子状酸素を可逆的に吸脱着することができる。
【0003】
このような天然のヘムと類似の酸素結合解離能を合成のポルフィリン鉄(II)錯体で実現しようとする研究は、1970年代から数多く報告されてきている。先駆的な例としては、非特許文献1、非特許文献2等を挙げることができる。特に、室温条件下で安定な酸素錯体を生成し得ると報告されているポルフィリン鉄(II)錯体としては、5,10,15,20−テトラキス(α,α,α,α−ピバルアミドフェニルポルフィリン鉄(II)錯体(以下、FeTpivPP錯体という)が知られている(非特許文献3参照)。FeTpivPP錯体は,過剰の軸塩基、例えば1−アルキルイミダゾール、1−アルキル−2−メチルイミダゾール等が共存すると、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒中、室温で酸素分子を可逆的に吸脱着することができる。また、この錯体をリン脂質からなる二分子膜小胞体に包埋させれば、生理条件(水相系、pH7.4、≦40℃)下でも同様の酸素結合解離能が発揮される(例えば、非特許文献4参照)。
【0004】
しかし、FeTpivPP錯体が酸素を可逆的に結合するためには、上述したように過剰モル量の軸塩基分子を外部から添加する必要がある。軸塩基として広く用いられるイミダゾール誘導体には、薬理作用を持つものがあり、体内毒性の高い場合もある。また、リン脂質小胞体を利用する場合、過剰に共存させたイミダゾール誘導体がその形態を不安定化させる要因ともなり得る。この軸塩基の添加量を極限的に少なくする方法は、ポルフィリン分子内に共有結合によりイミダゾール誘導体を導入することに他ならない。
【0005】
本発明者らの研究グループは、ポルフィリン鉄(II)錯体の分子内へ側鎖置換基としてイミダゾールを共有結合させれば、軸塩基を外部添加することなく安定な酸素運搬体を提供できるものと考え、ポルフィリン環の2位に置換基を有するFeTpivPP類縁体を精密合成し、さらにこれをリン脂質小胞体中やヒト血清アルブミンに包含させた包接化合物を調製し、酸素の可逆的な吸脱着が可能な人工酸素運搬体を開示している(特許文献1〜4参照)。
【0006】
【非特許文献1】
J. P. Collman, Acc. Chem. Res., 10, 265 (1977)
【0007】
【非特許文献2】
F. Basolo, B. M. Hoffman, J. A. Ibers, Acc. Chem. Res., 8, 384 (1975)
【0008】
【非特許文献3】
J. P. Collman, et al., J. Am. Chem. Soc., 97, 1427 (1975)
【0009】
【非特許文献4】
E. Tsuchida et al., J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1984, 1147 (1984)
【0010】
【非特許文献5】
W. S. Brinigar, C. K. Chang, J. Geibel, T. G. Traylor, J. Am. Chem. Soc., 96, 5597 (1974)
【0011】
【特許文献1】
特開昭59−164791号公報
【0012】
【特許文献2】
特開昭59−162924号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平6−271577号公報
【0014】
【特許文献4】
特開平8−301873号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在、このような安定な酸素化錯体を形成し得る合成ポルフィリン鉄(II)錯体のほとんどは、FeTpivPP類縁体等のテトラフェニルポルフィリン鉄錯体であるのが現状である。生体内のヘモグロビンやミオグロビンの活性中心であるプロトポルフィリン鉄(II)錯体に近位塩基を共有結合させた誘導体も多く合成されているが(例えば、非特許文献5参照)、これら誘導体は、N,N−ジメチルホルムアミドやトルエン等の有機溶媒中においても、μ−オキソ二量体を形成しやすいために、テトラフェニルポルフィリン鉄(II)錯体に比べると、その酸素化錯体の安定度は低い。本発明者らのグループも、プロトポルフィリン鉄錯体にアルキルイミダゾールを共有結合させた誘導体を合成し、これをアルブミンに包接させた化合物について酸素化錯体の形成を報告しているが(前記特許文献4参照)、酸素化錯体の半減期は25℃で1時間以内と短く、人工酸素運搬体として利用する場合、安定度の点でなお改善の余地があった。
【0016】
生体内への投与を考慮した場合にも、プロトポルフィリン鉄誘導体が有利であることはいうまでもない。生体内で使われなくなったプロトポルフィリン鉄(III)はヘムオキシダーゼに捕捉され、ポルフィリンのα−メソ位が開裂し、ビリベルジンに分解されて代謝過程に入る。テトラフェニルポルフィリン鉄錯体ではメソ位の水素がフェニル環で置換されているため、この代謝機構では分解されない可能性もある。
【0017】
すなわち、合成ポルフィリン鉄(II)錯体の水分散液を人工酸素運搬体として、例えば赤血球の代替物として使用することを考えた場合、さらに安定性の高い酸素化錯体を形成し得るポルフィリン鉄誘導体の分子設計と合成、およびそれを包接した包接化合物の出現が待たれていた。
【0018】
従って、本発明は、安定性が一層改善された酸素化錯体を形成し得るポルフィリン化合物、そのアルブミン包接化合物および人工酸素運搬体を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前述の通り、本発明者らのグループは、これまでに酸素結合解離機能を有する種々のポルフィリン金属錯体を合成し、報告してきた。また、生体適合性に優れたポルフィリン金属錯体の担体として、血清アルブミンにポルフィリン金属錯体を包含させたポルフィリン金属錯体−アルブミン包接化合物を、水中で安定な人工酸素運搬体として提供している(前記特許文献4参照)。さらに、分子内軸配位塩基がヒスチジン誘導体である場合、ポルフィリン金属錯体−アルブミン包接化合物における酸素錯体の安定性がイミダゾリルアルキルの場合に比べ、上昇することも解明している(T. Komatsu, et al., Bioconjugate Chem., 13, 397 (2002)参照)。本発明者らは、かかる酸素結合性ポルフィリン金属錯体や、それを活性部位として包含させたポルフィリン金属錯体包接化合物に関する研究成果を基に、さらなる鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、上記課題を解決すべく、下記一般式(A):
【化2】
Figure 2004277329
【0021】
(ここで、Rは、C〜C18アルキルオキシ基、C〜C18アルキルアミノ基、またはα−アミノ酸数が1〜6であり、かつC末端が水酸基、ベンジルオキシ基もしくはメトキシ基であるペプチドであり;Rは、α−アミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除去した残基であり;Rは、C〜C18アルキルオキシ基、C〜C18アルキルアミノ基、またはα−アミノ酸数が1〜6であり、かつC末端が水酸基、ベンジルオキシ基もしくはメトキシ基であるペプチドであり;各RおよびRは、メチル基であるか、または水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であって、各Rがメチル基であるとき、各Rは、水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であり、各Rが水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であるとき、各Rはメチル基であり;Mは、2つのピロール窒素に結合する2つの水素原子であるか、または周期律表第4〜第5周期の遷移金属イオンであり;Xは、Mが該遷移金属イオンである場合に存在するハロゲンイオンであり;Xの個数nは該金属イオンの価数から2を差し引いた数である)で示されるポルフィリン化合物を提供する。
【0022】
また、本発明は、Mが、FeまたはCoである場合において、当該ポルフィリン金属錯体をアルブミンに包接させてなるポルフィリン金属錯体−アルブミン包接化合物を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、本発明のポルフィリン金属錯体−アルブミン包接化合物を有効成分として含む人工酸素運搬体を提供する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0025】
本発明のポルフィリン化合物は、前記一般式(A)で示される。
【0026】
一般式(A)において、Rは、C〜C18アルキルオキシ基、C〜C18アルキルアミノ基、またはα−アミノ酸数が1〜6であり、かつC末端が水酸基、ベンジルオキシ基もしくはメトキシ基であるペプチドである。
【0027】
は、α−アミノ酸:HN(R)CHCOOH(例えば、グリシン(R=H)、アラニン(R=−CH)、バリン(R=−CH(CH)、ロイシン(R=−CHCH(CH)、イソロイシン(R=−CH(CH)C)等)における−(R)CH−基、すなわちα−アミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除去した残基である。
【0028】
は、C〜C18アルキルオキシ基、C〜C18アルキルアミノ基、またはα−アミノ酸数が1〜6であり、かつC末端が水酸基、ベンジルオキシ基もしくはメトキシ基であるペプチドである。
【0029】
各RおよびRは、メチル基であるか、または水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であって、各Rがメチル基であるとき、各Rは、水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であり、各Rが水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であるとき、各Rはメチル基である。
【0030】
Mは、2つのピロール環の窒素に結合する2つの水素原子であるか、または周期律表第4〜第5周期の遷移金属イオン、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウムである。遷移金属としては、鉄またはコバルトが好ましく、本発明のポルフィリン化合物を生体内に適用する人工酸素運搬体として利用する場合には、鉄が特に好ましい。
【0031】
は、Mが遷移金属イオンである場合、すなわち本発明のポルフィリン化合物が金属錯体である場合に存在するハロゲンイオンであり、例えば塩素イオン、臭素イオンである。
【0032】
の個数nは該金属イオンの価数から2を差し引いた数である。
【0033】
上記RおよびRの定義から明らかなように、本発明のポルフィリン化合物は、下記式(A1)で示される化合物および下記式(A2)で示される化合物を含む。
【0034】
【化3】
Figure 2004277329
【0035】
(ここで、R〜R、Xおよびnは、前記定義の通りであり、Rは、水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基である)。
【0036】
【化4】
Figure 2004277329
【0037】
(ここで、R〜R、Xおよびnは、前記定義の通りであり、Rは、水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基である)。
【0038】
本発明のポルフィリン化合物は、種々の手法により合成することができる。本発明のポルフィリン化合物は、例えば、下記式(1):
【化5】
Figure 2004277329
【0039】
(ここで、RおよびRは、前記定義の通り)で示されるポルフィリンを下記式(2):
【化6】
Figure 2004277329
【0040】
(ここで、RおよびRは、前記定義の通り)で示されるヒスチジン誘導体と反応させることによって合成することができる。この反応に際し、式(1)で示されるポルフィリンは、例えば、2ナトリウム塩の形態で用いることができる。また、式(2)で示されるヒスチジン誘導体は、ハロゲン化水素酸塩の形態で用いることができる。式(1)のポルフィリンとしては、プロトポルフィリンIX、メソポルフィリンIX、デューテロポルフィリンIX等を例示することができる。
【0041】
また、式(2)のヒスチジン誘導体は、ヒスチジンと上記α−アミノ酸:HN(R)CHCOOHを常法によりヒスチジンのアミノ基とα−アミノ酸のカルボキシル基とのアミド結合反応に供し、ついで、ヒスチジンのカルボキシル基を修飾することによって調製することができる。すなわち、α−アミノ酸と反応させた後のヒスチジンを、常法により、アルコール:ROH(Rは、C〜C18アルキル基)と反応させてエステル化するか(RがC〜C18アルキルオキシ基の場合)、またはアミン:RNH(Rは、C〜C18アルキル基)と反応させてアミド化する(RがC〜C18アルキルアミノ基の場合)ことによって得ることができる。また、Rがペプチドである場合には、α−アミノ酸と反応させた後のヒスチジンを常法によりα−アミノ酸HN(R)CHCOOHと順次反応させ、場合に応じてC末端を常法によりベンジルエステルまたはアミノエステル化する。このような式(2)のヒスチジン誘導体は、市販もされている。
【0042】
上記反応をより具体的に説明すると、式(1)で示されるポルフィリンを好適な有機溶媒(例えば、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)等)に溶解し、その溶液に、式(1)のポルフィリンのカルボキシル基を活性化するための活性化剤(例えば、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(BOP))を加え、例えば10分〜1時間撹拌する。BOPは、ポルフィリンの2つのカルボキシル基の一方のカルボキシル基に式(2)のヒスチジン誘導体を反応させ、後に他方のカルボキシル基を後述するように修飾する場合には、式(1)のポルフィリン1モルに対して、2モル以上の割合で用いることができ、他方ポルフィリンの2つのカルボキシル基の一方のカルボキシル基に式(2)のヒスチジン誘導体を反応させ、他方のカルボキシル基を修飾しない場合には、式(1)のポルフィリン1モルに対して、1.0〜2.0モルの割合で用いることができる。
【0043】
上記撹拌後の反応溶液に、好適な有機溶媒(例えば、DMF、ピリジン)に溶解した式(2)のヒスチジン誘導体を例えば滴下漏斗を用いてゆっくりと加える。ヒスチジン誘導体は、式(1)のポルフィリン1モルに対して0.5〜1.0モルの割合で用いることができる。添加終了後、反応混合物を室温、遮光下で、例えば1〜12時間撹拌し、所望の反応を行わせる。この反応により、下記式(3)で示されるポルフィリン化合物が得られる。
【0044】
【化7】
Figure 2004277329
【0045】
次に、下記式(3)におけるヒスチジンの結合していないカルボキシル基を修飾する場合には、常法により、アルコール:ROH(Rは、C〜C18アルキル基)と反応させてエステル化するか(RがC〜C18アルキルオキシ基の場合)、またはアミン:RNH(Rは、C〜C18アルキル基)と反応させてアミド化する(RがC〜C18アルキルアミノ基の場合)ことによって得ることができる。また、Rがペプチドである場合には、α−アミノ酸と反応させた後のヒスチジンを常法によりα−アミノ酸HN(R)CHCOOHと順次反応させ、場合に応じてC末端を常法によりベンジルエステルまたはアミノエステル化する。こうして、Rが水酸基以外の基である下記式(4)で示されるポルフィリン化合物が得られる。
【0046】
【化8】
Figure 2004277329
【0047】
次に、式(3)または式(4)で示されるポルフィリン化合物に遷移金属Mを導入するためには、D. Dolphin編、The Porphyrin、1978年(アカデミック・プレス社刊)等に記載の一般的な方法を採用することができる。一般に、鉄錯体の場合には、鉄(III)錯体が得られ、コバルト錯体の場合にはコバルト(II)錯体が得られる。
【0048】
上記ポルフィリン金属錯体のうち、鉄(III)錯体は、常法により、好適な還元剤(例えば、亜二チオン酸ナトリウム、アスコルビン酸等)を用いて還元することにより、鉄(II)錯体に還元することができ、これにより酸素結合活性が発現される。
【0049】
式(1)の定義から明らかなように、本発明のポルフィリン化合物は、Mが2つの水素原子である金属フリーのポルフィリン化合物と、Mが遷移金属であるポルフィリン金属錯体を含む。後者の金属錯体において、中心金属Mが+2価である場合には、ポルフィリン環に結合したプロピオン酸残基に共有結合したヒスチジン誘導体のイミダゾール基が近位塩基として中心金属Mに配位する。そのため、+2価の中心金属Mを有する本発明のポルフィリン金属錯体は、それ自体のみで酸素結合能を発揮でき、軸塩基としてのイミダゾール誘導体を外部から添加する必要がない。このポルフィリン金属錯体は、中心金属Mが、鉄またはコバルトである場合は、常法により、リン脂質二分子膜小胞体に包埋し(前記非特許文献4参照)、あるいはリン脂質被覆脂肪乳剤中に内包させることができる(特開平6−184156号公報参照)。またウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、組み換えヒト血清アルブミン、多量体アルブミン等のアルブミンに包接させることもできる(T. Komatsu, et al., Bioconjugate Chem., 13, 397 (2002)参照)。こうして得られる系において、本発明のポルフィリン鉄またはコバルト錯体は、水系中でも、酸素と接触すると速やかに安定な酸素化錯体を形成し得る。また、本発明のポルフィリン金属錯体は、酸素分圧に応じて酸素を吸脱着し得る。この酸素の結合・解離は可逆的に繰り返し行うことができる。そして、本発明のポルフィリン金属錯体は、近位塩基として天然アミノ酸の1つであるヒスチジンの誘導体、ポルフィリンとしてメソ位が修飾されていないポルフィリンを用いているので、そのキャリアとして特にアルブミンを使用する場合には、生体適合性にきわめて優れた有用な人工酸素運搬体となり得る。
【0050】
本発明のポルフィリン金属錯体は、人工酸素運搬体として、輸血用血液の代替物のほか、術前血液希釈液、人工心肺等の体外循環回路の補充液、移植臓器の灌流液、虚血部位への酸素供給液、慢性貧血治療剤、液体換気の灌流液、癌治療用増感剤、再生組織細胞の培養液としての利用が期待され、また希少血液型患者への利用、宗教上の理由による輸血拒否患者への対応、動物医療への応用も期待される。
【0051】
加えて、本発明のポルフィリン化合物が、例えば周期律表第4周期に属する金属イオンの錯体である場合、酸化還元反応、酸素酸化反応または酸素添加反応の触媒として利用することができる。すなわち、本発明のポルフィリン金属錯体は、人工酸素運搬体のほか、特に酸素ガスの吸脱着剤、酸化還元触媒、酸素酸化反応触媒、酸素添加反応触媒として使用することができる。
【0052】
酸素以外にも、中心金属Mに配位し得るガス(例えば、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素等)は、本発明のポルフィリン金属錯体と配位錯体を形成し得る。したがって、本発明のポルフィリン金属錯体は、そのようなガスの吸着剤として機能し得る。
【0053】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
プロトポルフィリンIX(400mg;0.71mmol)をピリジン(40mL)に溶解し、室温で10分間攪拌した。この溶液にBOP(840mg;1.9mmol)を加え、さらに10分間攪拌した。この溶液に、DMF(15mL)にグリシル−L−ヒスチジンメチルエステル2塩酸塩(129mg;0.57mmol)を溶解した溶液を滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下した。この反応混合物を室温、遮光下で2.5時間攪拌した後、エタノール(4.2mL;71mmol)を加え、さらに18時間攪拌した。得られた反応溶液(15〜20mL)を氷水(1L)中に滴下し、遠心分離(7000g、30分)を行い、沈殿物をG4グラスフィルターでろ過し、クロロホルム/メタノール混合溶媒に溶解した。溶媒を減圧除去した後、残分をシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=10/1(v/v))で分画精製した。得られた画分から溶媒を減圧除去した後、さらにシリカゲルカラム(シリカゲル−60、クロロホルム/メタノール=15/1(v/v))で分画精製した。得られた画分を真空乾燥して目的のポルフィリン化合物:3,8−ジビニル−2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−((N−グリシル−(O−メチル)ヒスチジン)カルバモイル)エチル)−17−((エトキシカルボニル)エチル)ポルフィリンを収量100mg(収率20%)で得た。
【0055】
<分析結果>
薄層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール=10/1(V/V));Rf:0.42(モノスポット)
FAB質量スペクトル:785 [M−H
赤外吸収スペクトル(cm−1):1635(νC=O(アミド));1725(νC=O(エステル))
可視吸収スペクトル(クロロホルム);λmax:625; 577; 541; 505; 405 nmH−NMR(d−DMSO、TMS基準);δ(ppm):−4.6 (s, 2H, inner−NH); 2.7−2.9 (m, 2H, Im−CH−); 3.0−3.5 (m, 18H, por−CH, −CH−C −CO−NH−, −CH−C −COO−CH−CH); 3.6 (s, 2H, −CONH−C −CONH−); 3.8 (s, 3H, −OCH); 4.0−4.3 (d, 4H, por−CH−); 4.3−4.5 (m, 1H, α−CH); 6.0−6.4 (m, 4H, ビニル=CH); 7.4 (s, 1H, イミダゾール環H); 8.0−8.3 (m, 5H, ビニル−CH=,イミダゾール環H); 9.8−10 (m, 4H, メソ位−H)。ここで、Imはイミダゾール、porはポルフィリンを表す。以下同じ。
【0056】
実施例2
実施例1で得たポルフィリン化合物(50mg;64μmol)を無水DMF(20mL)と2,6−ルチジン(37.1μL;1.13mmol)の混合溶液に加え、20分間アルゴンで脱気した。この溶液に塩化第二鉄四水和物(89mg;1.13mmol)を加え、60℃、アルゴン雰囲気下で4時間攪拌した。得られた反応溶液を氷水(1L)中に滴下した後、ヨウ化カリウム(5g)を添加し、遠心分離(5000g、20分)を行い、沈殿物をG4グラスフィルターでろ過し、クロロホルム/メタノール混合溶媒に溶解した。溶媒を減圧除去した後、残分をシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=5/1(v/v))で分画精製した。得られた画分を真空乾燥して目的のポルフィリン鉄錯体:[3,8−ジビニル−2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−((N−グリシル−(O−メチル)ヒスチジン)カルバモイル)エチル)−17−((エトキシカルボニル)エチル)ポルフィリナト]鉄(III)ヨウ化物を収量33.3mg(収率62%)で得た。
【0057】
<分析結果>
薄層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール=10/1(V/V));Rf:0.5(モノスポット)
FAB質量スペクトル:838 [M−I
赤外吸収スペクトル(cm−1):1660(νC=O(アミド));1734(νC=O(エステル))
可視吸収スペクトル(クロロホルム);λmax:637; 508; 388 nm。
【0058】
実施例3
メソポルフィリンIX(500mg;0.78mmol)をピリジン(40mL)に溶解し、室温で10分間攪拌した。この溶液にBOP(930mg;2.1mmol)を加え、さらに10分間攪拌した。この溶液に、ピリジン(15mL)にアラニル−L−ヒスチジンデシルエステル2塩酸塩(221mg;0.63mmol)を溶解した溶液を滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下した後、室温、遮光下で6時間攪拌した。溶媒を減圧除去した後、残分をクロロホルムで抽出し、塩酸(pH5)で2回、水で2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。この抽出物をろ過した後、溶媒を減圧除去し、残分をシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=20/1(v/v))で分画精製した。得られた画分を真空乾燥して目的のポルフィリン化合物:3,8−ジエチル−2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−((N−アラニル−L−(O−デシル)ヒスチジン)カルバモイル)エチル)−17−(カルボキシエチル)ポルフィリン塩酸塩を収量146mg(収率20%)で得た。
【0059】
<分析結果>
薄層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール=20/1(V/V));Rf:0.4(モノスポット)
FAB質量スペクトル:939.5 [M−H
赤外吸収スペクトル(cm−1):1635(νC=O(アミド));1705(νC=O(カルボン酸))
可視吸収スペクトル(クロロホルム);λmax:626; 576; 540; 504; 404 nmH−NMR(CDCl、TMS基準);δ(ppm):−4.6 (s, ; 2H, inner−NH); 0.96 (t, 3H, −CHCH ); 1.3−1.6 (m, 19H, −CH(C )−, −OCH(C CH); 2.0 (m, 6H, por−CH ); 2.7−2.9 (m, 2H, Im−CH−); 3.0−3.5 (m, 18H, por−CH, −CH−C −CO−NH−, −CH−C −COOH); 4.0 (m, 2H, −C(=O)O−C −); 4.1−4.3 (m, 4H, por−C −CH−); 4.4 (d, 4H, por−C −CH); 4.6−4.7 (m, 2H,α−CH); 7.4 (s, 1H, イミダゾール環H); 8.0 (m, 1H, イミダゾール環H); 9.8−10 (m, 4H, メソ位−H)。
【0060】
実施例4
実施例3で得たポルフィリン化合物(50mg;53μmol)を無水DMF(20mL)と2,6−ルチジン(31μL;0.93mmol)の混合溶液に加え、20分間アルゴン通気し、攪拌した。この溶液に塩化第二鉄四水和物(73mg;0.93mmol)を加え、60℃、アルゴン雰囲気下で4時間攪拌した。溶媒を減圧除去した後、残分をクロロホルムで抽出し、純水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。この抽出物をろ過し、溶媒を減圧除去し、残分をシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=20/1(v/v))で分画精製した。得られた画分を真空乾燥して目的のポルフィリン鉄錯体:[3,8−ジエチル−2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−((N−アラニル−L−(O−デシル)ヒスチジン)カルバモイル)エチル)−17−(カルボキシエチル)ポルフィリナト]鉄(III)塩化物を収量30mg(収率60%)で得た。
【0061】
<分析結果>
薄層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール=20/1(V/V));Rf:0.37(モノスポット)
FAB質量スペクトル:958 [M−Cl
赤外吸収スペクトル(cm−1):1635(νC=O(アミド));1705(νC=O(カルボン酸))
可視吸収スペクトル(クロロホルム);λmax:636; 507; 387 nm。
【0062】
実施例5
デューテロポルフィリンIX2塩酸塩(400mg;0.69mmol)をピリジン(50mL)に溶解し、室温で10分間攪拌した。この溶液にBOP(816mg;1.8mmol)を加え、さらに10分間攪拌した。この溶液に、ピリジン(15mL)にバリル−L−ヒスチジニル−ロイシル−ロイシル−ロイシンメチルエステル2塩酸塩(3741mg;0.55mmol)を溶解した溶液を滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下した後、室温、遮光下で6時間攪拌した。これにヘキシルアミン(9.1mL;69mmol)を滴下し、さらに15時間攪拌した。この反応混合物から溶媒を減圧除去し、残分をクロロホルムで抽出し、水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。この抽出物をろ過した後、溶媒を減圧除去し、残分をシリカゲルカラム(クロロホルム/ジエチルエーテル=20/1(v/v))で分画精製した。得られた画分を真空乾燥して目的のポルフィリン化合物:2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−(ヘキシルカルバモイル)エチル)−17−(2−((N−バリル−L−ヒスチジル−ロイシル−ロイシル−(O−メチル)ロイシン)カルバモイル)エチル)ポルフィリンを収量130mg(収率15%)で得た。
【0063】
<分析結果>
薄層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート、クロロホルム/ジエチルエーテル=20/1(V/V));Rf:0.4(モノスポット)
FAB質量スペクトル:1257 [M−H
赤外吸収スペクトル(cm−1):1635(νC=O(アミド))
可視吸収スペクトル(クロロホルム);λmax:627; 577; 541; 505; 405 nmH−NMR(CDCl、TMS基準);δ(ppm):−4.6 (s, ; 2H, inner−NH); 1.0 (m, 27H, −CH(C )C , −NH(CH ); 1.3−1.5 (16H, m, −NH(CH)(C CH); 1.7−2.2 (m, 10H, −C(CH)CH, −C CH(CH)CH); 2.7−2.9 (m, 2H, Im−CH−); 3.0−3.5 (m, 18H, por−CH, −CH−C −CO−NH−, −NH−C (CHCH); 3.7 (s, 3H, −OCH); 4.1−4.3 (m, 4H, por, −CH−); 4.3−4.5 (m, 5H, α−CH); 7.4 (s, 1H, イミダゾール環H); 8.0 (m, 1H, イミダゾール環H); 9.8−10 (m, 6H, por−H)。
【0064】
実施例6
実施例5で得たポルフィリン化合物(100mg;80μmol)を無水DMF(30mL)と2,6−ルチジン(46μL;1.40mmol)の混合溶液に加え、20分間アルゴン通気し、攪拌した。この溶液に塩化第二鉄四水和物(109mg;1.40mmol)を加え、60℃、アルゴン雰囲気下で5時間攪拌した。溶媒を減圧除去した後、残分をクロロホルムで抽出し、純水で数回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。この抽出物をろ過し、溶媒を減圧除去し、残分をシリカゲルカラム(クロロホルム/ジエチルエーテル=20/1(v/v))で分画精製した。得られた画分を真空乾燥して目的のポルフィリン鉄錯体:[2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−(ヘキシルカルバモイル)エチル)−17−(2−((N−バリル−L−ヒスチジル−ロイシル−ロイシル−(O−メチル)ロイシン)カルバモイル)エチル)ポルフィリナト]鉄(III)塩化物を収量64mg(収率60%)で得た。
【0065】
<分析結果>
薄層クロマトグラフィー(メルクシリカゲルプレート、クロロホルム/ジエチルエーテル=20/1(V/V));Rf:0.38(モノスポット)
FAB質量スペクトル:1312 [M−Cl
赤外吸収スペクトル(cm−1):1660(νC=O(アミド))
可視吸収スペクトル(クロロホルム);λmax:637; 508; 388 nm。
【0066】
実施例7
実施例2で得たポルフィリン鉄錯体の30μMDMF溶液(3mL)を窒素置換した後、亜二チオン酸ナトリウム−18−クラウン−6−エーテル複合体のメタノール溶液と10分間混合攪拌し、ポルフィリン鉄錯体の中心鉄を2価に還元した。こうして、[3,8−ジビニル−2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−((N−グリシル−(O−メチル)ヒスチジン)カルバモイル)エチル)−17−((エトキシカルボニル)エチル)ポルフィリナト]鉄(II)ヨウ化物のDMF溶液を得た。この溶液の可視吸収スペクトルは、λmaxが442;545;565nmであり、本ポルフィリン鉄錯体はその中心鉄にイミダゾールが1つ配位した5配位デオキシ型に相当するものである。
【0067】
実施例8
実施例7で得た[3,8−ジビニル−2,7,12,18−テトラメチル−13−(2−((N−グリシル−(O−メチル)ヒスチジン)カルバモイル)エチル)−17−((エトキシカルボニル)エチル)ポルフィリナト]鉄(II)ヨウ化物を特開平8−301873号公報記載の方法に従ってヒト血清アルブミンに包接して調製したポルフィリン鉄錯体−アルブミン包接化合物のリン酸緩衝水分散液(ポルフィリン鉄(II)錯体:20μM;血清アルブミン:20μM)を石英製分光測定用セルに入れ、窒素雰囲気下でセルを密封した。分散液の可視吸収スペクトルは、λmaxが423;539;569nmであり、包接されたポルフィリン鉄(II)錯体は分子内軸塩基が1つ配位したFe(II)高スピン5配位錯体を形成していることがわかった。この分散液に酸素を通気すると、可視吸収スペクトルのλmaxは421;542;561nmへ移行し、明らかに酸素化錯体を形成していることを示した。この酸素化錯体分散液に窒素ガスを1分間吹き込むことにより、可視吸収スペクトルは、酸素化型スペクトルからデオキシ型スペクトルへ可逆的に変化し、酸素の吸脱着が可逆的に生起することを確認した。なお、酸素の吹き込みと窒素の吹込みを交互に繰り返すことにより、酸素吸脱着が連続的に行えた。また、酸素化錯体の半減期は、25℃で90〜120分であり、従来報告されているポルフィリン鉄錯体−アルブミン包接化合物の酸素錯体より明らかに安定であった。
【0068】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、安定性が一層改善された酸素化錯体を形成し得るポルフィリン化合物が提供される。このポルフィリン化合物のアルブミン包接体は、人工酸素運搬体として機能し得る。

Claims (8)

  1. 下記一般式(A):
    Figure 2004277329
    (ここで、Rは、C〜C18アルキルオキシ基、C〜C18アルキルアミノ基、またはα−アミノ酸数が1〜6であり、かつC末端が水酸基、ベンジルオキシ基もしくはメトキシ基であるペプチドであり;Rは、α−アミノ酸からアミノ基とカルボキシル基を除去した残基であり;Rは、C〜C18アルキルオキシ基、C〜C18アルキルアミノ基、またはα−アミノ酸数が1〜6であり、かつC末端が水酸基、ベンジルオキシ基もしくはメトキシ基であるペプチドであり;各RおよびRは、メチル基であるか、または水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であって、各Rがメチル基であるとき、各Rは、水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であり、各Rが水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であるとき、各Rはメチル基であり;Mは、2つのピロール窒素に結合する2つの水素原子であるか、または周期律表第4〜第5周期の遷移金属イオンであり;Xは、Mが該遷移金属イオンである場合に存在するハロゲンイオンであり;Xの個数nは該金属イオンの価数から2を差し引いた数である)で示されるポルフィリン化合物。
  2. 各Rが水素原子、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基であり、各Rがメチル基である請求項1に記載のポルフィリン化合物。
  3. 各Rがメチル基であり、各Rが、ビニル基、エチル基、1−メトキシエチル基、1−ブロモエチル基もしくはホルミル基である請求項1に記載のポルフィリン化合物。
  4. Mが、FeまたはCoである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポルフィリン化合物。
  5. Feの価数が、+2価または+3価である請求項4に記載のポルフィリン化合物。
  6. Coの価数が、+2価である請求項4に記載のポルフィリン化合物。
  7. 請求項4ないし6のいずれか1項に記載のポルフィリン化合物をアルブミンに包接させてなるポルフィリン金属錯体−アルブミン包接化合物。
  8. 請求項7に記載のポルフィリン金属錯体−アルブミン包接化合物を有効成分として含む人工酸素運搬体。
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