JP3155072B2 - 8置換ポルフィリン金属錯体 - Google Patents

8置換ポルフィリン金属錯体

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JP3155072B2 JP18150292A JP18150292A JP3155072B2 JP 3155072 B2 JP3155072 B2 JP 3155072B2 JP 18150292 A JP18150292 A JP 18150292A JP 18150292 A JP18150292 A JP 18150292A JP 3155072 B2 JP3155072 B2 JP 3155072B2
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財団法人生産開発科学研究所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸素運搬機能を持つ8置
換ポルフィリン金属錯体に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】ヘモグロ
ビンやミオグロビンは、その活性中心である鉄(II)
ポルフィリン錯体をグロビン鎖の形成する疎水環境(ヘ
ムポケット)に保持することで、水中における可逆的な
酸素吸脱着を達成している。このように生体中に存在す
る多くのヘム蛋白質および関連する金属蛋白質などは、
その機能活性部位として補欠分子族である金属ポルフィ
リン誘導体を含有しているが、それは蛋白質の疎水領域
に結合している場合が多い。
【0003】ヘモグロビンと類似の機能を合成の錯体で
実現しようとする研究は従来数多く報告されている。そ
の例としては、J.P.Collman,Accoun
tsof Chemical Reseach,10,
265(1977); F.Basolo,B.M.H
offman,J.A.Ibers,ibid,8,3
84(1975)などが挙げられる。しかし、これら合
成の金属錯体(ポルフィリン錯体など)を用いて 酸素
運搬機能を生理条件(生理塩水溶液(pH7.4)、室
温ないし37゜C)下で再現し、工業面あるいは医療面
で利用しようとする場合、錯体を水に溶解するとともに
それを疎水環境に包埋固定することが要件となる。水
溶液中で微視的疎水環境を簡便に作成するには、界面活
性剤からなるミセル及びリン脂質などからなる二分子膜
小胞体の利用が良く知られている。しかし、ミセルはそ
の形態が動的でありリン脂質小胞体に比べ安定性を欠く
とともに、形成する疎水環境の疎水性が低い。従って、
形状が比較的安定で十分な疎水性領域を提供できるリン
脂質小胞体が金属錯体のキャリアーとして広く利用され
ている。しかしながら、この種のリン脂質小胞体の疎水
場に対して、高濃度の錯体を取り込ませる方法は開発さ
れていない。即ち、リン脂質小胞体の二分子層層間に、
錯体を配向性高く、かつ高濃度に配置固定させ、生理条
件下で安定に酸素を運搬できる酸素運搬系の開発が盛ん
に推進されているのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段と作用】本発明者らは、前
記した従来技術の現状に鑑み、ポルフィリン環面の両側
に計8個の末端親水性アルキル置換基を導入し、ポルフ
ィリンに両親媒性を付与すれば、リン脂質二分子膜小胞
体の疎水領域の中心へ それを配向性高く包埋できるも
のと考え、先に両親媒性8置換ポルフィリン金属錯体を
合成、これらの鉄ポルフィリン錯体をリン脂質小胞体の
二分子層層間の中心に包埋させることにより、水相系で
の有効な酸素運搬系を提案している(特開平3−275
687号)。
【0005】さらに、本発明者らは 金属錯体自身が水
相系で分子集合することにより、酸素配位座近傍に微視
的疎水環境を構築できれば、他分子の形成する疎水環境
の支援が無くとも機能活性の発現が可能な、これまでに
全く類例の無い酸素運搬系が提供できるものと考えた。
すなわち、本発明者らは、生理条件下において、可逆的
な酸素結合解離能を有する金属ポルフィリン錯体集合組
織の分子設計に鋭意研究を重ねた結果、ポルフィリン環
の両側にリン脂質類似構造を有する長鎖アルキル基を導
入することで、ポルフィリン錯体自身が水中で組織化
し、水相系での酸素運搬体が提供できるものと考え、本
発明を完成するに至った。
【0006】本発明の目的は、酸素結合能を持つことが
知られている金属ポルフィリン誘導体にリン脂質類似構
造を付与することで、酸素錯体を安定に保持できる微視
的疎水環境をその集合組織により達成できるポルフィリ
ン金属錯体を提供することである。
【0007】本発明の化合物は、一般式〔I〕 (ここで、kは3〜12の整数を示す。)で示されるポ
ルフィリン、または、これに第4〜第5周期の遷移金属
イオンが配位した一般式〔II〕
【化4】 〔ここで、kは3〜12の整数を示し、Mは第4〜第5
周期の遷移金属イオンを示し、X- はハロゲンイオン
(塩化イオン、臭素イオン)を示し、X- の個数nは前
記金属イオンの価数から2を差引いた整数を示す。〕で
示されるポルフィリン金属錯体で達成される。
【0008】一般式〔II〕において、遷移金属イオンと
しては特に鉄およびコバルトイオンが好ましい。より具
体的には、中心金属が+2価または+3価の状態にあり、か
つ塩基性軸配位子が1つまたは2つ配意した錯体であ
る。実際に酸素結合能を有する錯体は、例えば適当な塩
基性軸配位子(イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体な
ど)を添加した系である。
【0009】一般式〔II〕で示されるポルフィリン金属
錯体は例えば以下のプロセスにより合成出来る。
【0010】α,ω−アルカンジオールを無水ジメチル
ホルムアミドに溶解し、そこへピリジンを加え、反応溶
液を70〜120℃、好ましくは90℃に加温する。次
いでハロゲン化トリチル(好ましくは塩化トリチル)
(等モル)を四分割し、約1〜2時間で加えた後、10
0℃で2〜5時間反応させる。反応溶液を氷水中に注ぎ
油状物質をクロロホルムで抽出、純水で洗浄した。有機
層を脱水処理後、シリカゲルクロマトグラフィー(クロ
ロホルム)にて分画精製し、目的物を集める。溶媒を減
圧除去し、真空乾燥することにより無色透明の粘調固体
であるα−トリチルオキシアルカノールを得る。この化
合物と3,3−ジメチルグルタル酸無水物(2〜4倍モ
ル)を乾燥溶媒(テトラヒドロフラン、ジクロロメタ
ン、ジエチルエーテルなど)中、塩基(4−(N,N−
ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミンなど)存
在下で40〜50℃に加温し、攪拌する。さらにアルゴ
ン雰囲気下40〜80℃にて10〜20時間反応させ
る。溶媒を減圧除去して得た残渣をシリカゲルクロマト
グラフィーで分画精製し、目的物を集めた。溶媒を減圧
除去し、真空乾固して3,3−ジメチル−4−(α−ト
リチルオキシアルカンオキシカルボニル)ブチル酸(一
般式〔III〕)を得る。
【化5】
【0011】こうして得た3,3−ジメチル−4−(α
−トリチルオキシアルカンオキシカルボニル)ブチル酸
を適当な乾燥溶媒(テトラヒドロフラン、クロロホル
ム、ジエチルエーテルなど)に溶解し、縮合剤(ジシク
ロヘキシルカルボジイミドなど)および塩基(4−
(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミ
ンなど)を加え、室温で攪拌、数分間反応させる。この
反応溶液に5,10,15,20−テトラキス(2,6
−ビス(ハイドロキシ)フェニル)ポルフィリンの乾燥
溶液を滴下し、室温で6〜20時間遮光下で反応させ
る。反応溶液中に存在する析出物を濾別し、次いで溶媒
を減圧除去して得られる残渣をシリカゲルクロマトグラ
フィーで分画精製し、5,10,15,20−テトラキ
ス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(α−トリ
チルオキシアルカンオキシカルボニル)ブチロイルオキ
シ)フェニルポルフィナト鉄(一般式〔IV〕)を得る。
【化6】
【0012】次いで、5,10,15,20−テトラキ
ス(2,6−ビス(3、3−ジメチル−4−(α−トリ
チルオキシアルカンオキシカルボニル)ブチロイルオキ
シ)フェニルポルフィリンを適当な乾燥溶媒(ジクロロ
メタン、クロロホルムなど)に溶解し、三臭化ホウ素メ
タノール錯体を氷冷下で加えて、10〜60分間反応さ
せた。反応溶液を氷水中に滴下し、例えばクロロホルム
などの有機溶媒で抽出後、残渣をシリカゲルクロマトグ
ラフィーで分画精製し、5,10,15,20−テトラ
キス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(α−ハ
イドロキシアルカンオキシカルボニル)ブチロイルオキ
シ)フェニルポルフィナト鉄(一般式〔〕)を得る。
【化7】
【0013】一般式〔〕で表される化合物へ常法に従
い中心鉄を導入し鉄錯体とする。この鉄錯体を例えば塩
化メチレンに溶解後、2−クロロ−2−オキソ−1,
3,2−ジオキサホスホラン、次いでトリエチルアミン
を氷冷下で加え、2〜6時間反応させ、さらに室温で1
2時間反応させた。反応溶液を減圧除去し、残渣を乾燥
ジメチルホルムアミドに再溶解させ、そこに過剰量のト
リメチルアミンを加え、室温で2〜4時間、さらに60
℃で12〜24時間反応させる。反応溶媒を減圧除去
し、残渣を無水エーテルで洗浄し、12時間真空乾燥す
る。次いでメタノールに溶解してイオン交換カラムクロ
マトグラフィー、さらに、ゲルパーミェーションクロマ
トグラフィーにて分画精製し、溶媒を減圧除去すること
により目的物(一般式〔II〕)を得る。
【0014】鉄(II)錯体は、例えば次のようにして調
製出来る。一般式〔II〕で示される錯体の内、鉄(II
I)錯体を適当な塩基性軸配位子の存在下あるいは非存
在下、適当な還元剤(亜二チオン酸ソーダ、アスコルビ
ン酸など)を用い常法により中心鉄を3価から2価へ還
元すれば良い。
【0015】一般式〔II〕で示される5,10,15,
20−テトラキス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−
4−(1−(((2−トリメチルアンモニオ)エトオキ
シ)ホスホナトオキシ)アルカンオキシカルボニル)ブ
チロイルオキシ)フェニル)ポルフィナト金属錯体の集
合組織は、例えば次の様にして得られる。一般式〔I
I〕で表されるポルフィリン金属錯体(1μ mo
l)、 および軸配位子(例えば、1−ラウリルイミダ
ゾール(3〜20μ mol) )のメタノール溶液をロ
ータリーエバポレーターで薄膜乾固させた。そこへpH
7〜8のリン酸緩衝液を例えば20ml加え、ボルテッ
クス攪拌(例えば10分)を行う。その溶液を測定セル
に移し窒素置換し、少量のアスコルビン酸水溶液を加え
密閉する。こうして、鉄(II)−5,10,15,20
−テトラキス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−
(1−(((2−トリメチルアンモニオ)エトオキシ)
ホスホナトオキシ)アルカンオキシカルボニル)ブチロ
イルオキシ)フェニル)ポルフィリン−ビス(1−ラウ
リルイミダゾール)錯体の集合組織分散液を得る。電子
顕微鏡観察から、該ポルフィリン金属錯体集合組織は紐
状集合体、及び小胞体を形成していることが確認でき
る。
【0016】一般式〔II〕で表される化合物は、酸素吸
着剤、酸素運搬体として有用である。
【0017】
【実施例と参考例】
実施例1 (1)1,12−ドデカンジアール32.4g(0.1
6mol)を無水ジメチルホルムアミド90mlに溶解
し、そこへピリジン70mlを加え反応溶液を90℃に
加温する。次いで塩トリチル49.0g(0.18mo
l)を四分割し約1時間で加えた後、100℃で3時間
反応させた。反応溶液を氷水中500mlに注ぎ油状物
質をクロロホルムで抽出、純水で洗浄した。有機層を無
水硫酸ナトリウムで脱水処理後、濾液を減圧除去するこ
とによって白色の粘調油状物質を得た。これを熱ヘキサ
ンに溶解させ、徐々に冷却すると未反応物である1,1
2−ドデカンジオールが析出する。これを濾別し、濾液
を減圧除去し、無色透明の粘調固体を得た。シリカゲル
カラム(クロロホルム)にて分画精製し、Rf=0.2
5(モノスポット)の分画を回収した。溶媒を減圧除去
し、真空乾燥することにより無色透明の粘調固体である
1−トリチルオキシドデカノールを収量22.2g(収
率31%)で得た。赤外吸収スペクトル(NaCl,c
−1):3344νOH,alcohol),159
7,1491,1448(νC=C,phenyl)。
EI−Mass:[M]=444。元素分析:Fo
und(%):C79.84(79.70),H9.0
2(9.17)(但し、括弧内の値は C3140
・1.25HOに対する計算値)。H−核磁気共
鳴スペクトル(CDCl,TNS基準,δ(pp
m))1.3(20H,m,−(C 10−),
3.0(2H,t,−OC −),3.6(2H,
t,−C OH),7.1−7.5(15H,m,p
henyl)。
【0018】(2)3,3−ジメチルグルタル酸無水物
10.42g(0.07mol)を乾燥テトラヒドロフ
ラン25mlに溶解させ、15分間アルゴン通気を行い
脱気した。次いで4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリ
ジン1.2g(0.01mol)を加え、40〜50℃
に加温した。そこへ1−トリチルオキシドデカノール2
1.7g(0.05mol)の乾燥テトラヒドロフラン
60ml溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、ア
ルゴン雰囲気下60℃にて12時間反応させた。溶媒を
減圧除去して得た残渣をクロロホルムで抽出、純水で洗
浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水処理後、溶媒を減圧
除去した。これをシリカゲルカラム(クロロホルム/酢
酸エチル(5/1)(容量/容量)) で分画精製し、
Rf=0.41(モノスポット)の分画を集めた。溶媒
を減圧除去し、真空乾固して淡黄色透明の粘調液体であ
る3,3−ジメチル−4−(1−トリチルドデカンオキ
シカルボニル)ブチル酸を収量22.1g(収率77
%)で得た。赤外吸収スペクトル(NaCl,c
−1):3500〜2500(νOH,カルボン
酸),1730(νC=O,エステル),1710(ν
C=O,カルボン酸),1597,1491,1448
(νC=C,フェニル核)。EI−Mass:[M−
1]=585。元素分析:Found(%):C7
1.19(71.22),H8.44(8.81)
(但し、括弧内の値はC3850・3HOに対
する計算値)。H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl
,TMS基準,δ(ppm))1.1(6H,s,m
ethyl),1.3(20H,m,−(C 10
−),2.4(2H,s,−OCOC −),2.5
(2H,s,−C COOH),3.0(2H,t,
TrOC −),4.1(2H,t,−C OCO
−),7.1−7.5(15H,m,phenyl)。
【0019】(3)3,3−ジメチル−4−(1−トリ
チルドデカンオキシカルボニル)ブチル酸 10.04
g(17mmol)を乾燥テトラヒドロフラン70ml
に溶解させ、そこへジシクロヘキシルカルボジイミド
3.89g(19mmol)および4−(N,N−ジメ
チルアミノ)ピリジン 0.42g(3.4mmol)
を加え、室温で反応させる。反応溶液が白濁した後さら
に20分間攪拌した。この反応混合溶液に5,10,1
5,20−テトラキス(2,6−ビス(ハイドロキシ)
フェニル)ポルフィリン0.53g(0.7mmol)
の乾燥テトラヒドロフラン30ml溶液を1時間かけて
滴下した。滴下終了後、室温で12時間遮光下で反応さ
せた。反応溶液中に存在するジシクロヘキシルウレアを
濾別した後、溶媒を減圧除去した。残渣をシリカゲルカ
ラム(クロロホルム/アセトン(100/1)(容量/
容量))で分画精製し、Rf=0.43(モノスポッ
ト)の分画を集めた。溶媒を減圧除去後、真空乾燥する
ことにより赤紫色固体の5,10,15,20−テトラ
キス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−ト
リチルドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオキシ)
フェニルポルフィリンを収量3.26g(収率86%)
で得た。赤外吸収スペクトル(NaCl,cm−1):
1760,1730(νC=O,エステル),159
7,1491,1448(νC=C,フェニル核)
−核磁気共鳴スペクトル(CDCl,TMS基準,δ
(ppm))。−3.0(2H,s,inner)0.
0(48H,s,methyl),1.3(160H,
s,−(C 10−),1.5(16H,s,−O
COC −),1.8(16H,s,−C COO
−),3.1(16H,t,TrOC −),3.8
(16H,t,−C OCO−),7.2−7.5
(128H,m,phenyl),7.9(4H,t,
phenyl),8.8(8H,s,pyrrole)
【0020】(4)5,10,15,20−テトラキス
(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−トリチ
ルドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオキシ)フェ
ニルポルフィリン3.01g(0.6mmol)を乾燥
ジクロロメタン80mlに溶解し、そこへ三臭化ホウ素
メタノール錯体3.3g(7mmol)を加え、氷冷下
で40分間反応させた。反応溶液を氷水中に滴下、クロ
ロホルムで抽出後、純水で洗浄した。有機層を無水硫酸
ナトリウムで脱水処理後、溶媒を減圧除去した。得られ
た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロ
ホルム/メタノール(15/1)(容量/容量)) で
分画精製し、Rf=0.31(モノスポット)の分画を
集めた。溶媒を減圧除去し、真空乾固して赤紫色固体で
ある5,10,15,20−テトラキス(2,6−ビス
(3,3−ジメチル−4−(1−ハイドロキシドデカン
オキシカルボニル)ブチロイルオキシ)フェニルポルフ
ィリンを収量1.43g(収率75%)で得た。赤外吸
収スペクトル(NaCl,cm−1):3400(ν
OH,alcohol),1760,1730(ν
C=O, エステル)。元素分析:Found(%)C
69.98(69.56),H9.55(9.1
4),N1.65(1.64)(但し、括弧内の値はC
19630240・2CHOH に対する
値)。H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl,TM
S基準,δ(ppm))−3.1(2H,s,inne
r)−0.1(48H,s,methyl),1.2
(160H,s,−(C 10−),1.4(16
H,s,−OCOC ),1.8(16H,s,−C
COO−),3.6(16H,t,−C
H),3.8(16H,t,−C OCO−),7.
5(8H,d,phenyl),7.8(4H,t,p
henyl),8.8(8H,s,pyrrole)。
【0021】(5)5,10,15,20−テトラキス
(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−ハイド
ロキシドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオキシ)
フェニルポルフィリン0.1g(0.03mmol)を
乾燥ジクロロメタン10mlに溶解させ、アルゴンを通
気し脱気する。そこへ2−クロロ−2−オキソ−1,
3,2−ジオキサホスホラン0.12ml(0.36m
mol)、次いで トリエチルアミン0.17ml
(0.6mmol)を氷冷下で添加し、2時間攪拌後、
さらに室温で12時間反応させた。反応溶媒を減圧除去
し、乾燥ジメチルホルムアミド15mlに再溶解させ、
そこへトリメチルアミン3mlを瞬時に注ぎ込む。耐圧
反応容器を厳重に封緘した後、室温で2時間、さらに6
0゜Cで20時間反応させた。反応終了後、反応容器を
ドライアイスメタノール浴で十分に冷却したのちに開栓
し、溶媒を減圧除去した。耐圧反応容器に析出している
残渣、および反応溶液を減圧除去して得られた残渣を無
水エーテルで洗浄した。これを12時間真空乾燥し、メ
タノールに溶解、イオン交換カラム(アンバーリスト、
メタノール)にかける。赤紫色の分画を回収し、さらに
Sephadex LH−60(メタノール)で分画精
製した。分画の目的物を回収し、溶媒を減圧除去するこ
とにより赤紫色固体の5,10,15,20−テトラキ
ス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−
(((2−トリメチルアンモニオ)エトオキシ)ホスホ
ナトオキシ)ドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオ
キシ)フェニル)ポルフィリンを収量0.1g(収率7
3%)で得た。赤外吸収スペクトル(NaCl,cm
−1):1760,1730(νC=O,エステル),
1265(νP=O),1093(νP−O−C)。V
is.(CHOH, λmax):673,649,
583,507,412nm。 元素分析:Found
(%):C61.5(61.0);H8.25(7.9
9);N3.67(3.59)(但し、括弧内の値はC
2363681264に対する計算値)。
H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl,TMS基準,
δ(ppm))−0.1(48H,s,methy
l),1.2(160H,s,−(C 10−),
1.4(16H,s,−OCOC −),1.65
(16H,s,−C COO−),3.2(72H,
s,−N(C ),3.6(16H,t,−C
OH),3.65(16H,t,−CH
(CH),3.77(16H,t,−C OC
O−),4.2(16H,t,−C CH2N(CH
),7.45(8H,d,phenyl),7.
8(4H,t,phenyl),8.8(8H,s,p
yrrole)。
【0022】実施例2 十分にアルゴン置換した47%臭化水素酸水溶液14m
lに電解鉄2.0gを加えて60〜70℃、アルゴン下
で1時間反応させた。さらにアルゴン雰囲気下で120
℃まで加熱し、過剰の臭化水素及び水を加熱除去すると
薄白緑色粉末のFeBr2・nH2Oが得られる。反応温
度を60〜70℃に下げ、そこへ実施例1(3)で合成
した5,10,15,20−テトラキス(2,6−ビス
(3,3−ジメチル−4−(1−ハイドロキシドデカン
オキシカルボニル)ブチロイルオキシ)フェニルポルフ
ィリン0.6g(0.18mol)および2,6−ルジ
チン41μl(0.36mmol)を含む乾燥テトラヒ
ドロフラン30ml溶液を滴下し、そのままアルゴン下
で12時間沸点還流させた。反応溶媒を減圧除去し、得
られた残渣をクロロホルムで抽出、純水で十分に洗浄し
た。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水処理した後、濾
液を蒸発乾固させた。これをシリカゲルカラム(クロロ
ホルム/メタノール(10/1))で分画精製し、Rf
=0.26(モノスポット)の分画を集めた。これに臭
化水素酸水溶液(2〜3滴)を加えて溶媒を減圧除去
し、真空乾燥させることにより紫色固体の5,10,1
5,20−テトラキス(2,6−ビス(3,3−ジメチ
ル−4−(1−ハイドロキシドデカンオキシカルボニ
ル)ブチロイルオキシ)フェニルポルフィナト鉄を収
量0.56g(収率89%)で得た。赤外吸収スペクト
ル(NaCl,cm-1):3400(υOH),176
0,1730(υc=0 ,エステル)。元素分析:Fou
nd(%) C68.37(68.03),H9.05
(8.65),N1.73(1.57)(但し、括弧内
の値はC196300440・C66 に対する値)。
【0023】実施例3 実施例1(5)において、5,10,15,20−テト
ラキス(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−
ハイドロキシドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオ
キシ)フェニルポルフィリンを用いる代わりに、実施例
2で合成したその鉄錯体(0.37g,0.11mmo
l)を用いる以外は同様な手法に従って、紫色固体の
5,10,15,20−テトラキス(2,6−ビス
(3,3−ジメチル−4−(1−(((2−トリメチル
アンモニオ)エトオキシ)ホスホナトオキシ)ドデカン
オキシカルボニル)ブチロイルオキシ)フェニル)ポル
フィリナト鉄を収量0.42g(収率81%)で得た。
赤外吸収スペクトル(NaCl,cm−1):176
0,1730(νC=O,エステル),1265(ν
P=O),1093(νP−O−C)。Vis.(CH
OH,λmax):676,645,582,50
6,413nm。元素分析:Found(%):C5
9.71(59.31);H7.99(7.72),N
3.63(3.49)(但し、括弧内の値はC236
3661264FeBrに対する計算値)。
【0024】実施例1(1)〜(4)において3,3−
ジメチル−4−(1−トリチルオキシドデカンオキシカ
ルボニル)ブチル酸の代わりに3,3−ジメチル−4−
(1−トリチルオキシプロパンオキシカルボニル)ブチ
ル酸を用いた以外は同様な手法に従い、5,10,1
5,20−テトラキス(2,6−ビス(3,3−ジメチ
ル−4−(1−ハイドロキシプロパンオキシカルボニ
ル)ブチロイルオキシ)フェニルポルフィリンを得た。
実施例2に従い鉄を導入した後、実施例1(5)におい
て5,10,15,20−テトラキス(2,6−ビス
(3,3−ジメチル−4−(1−ハイドロキシドデカン
オキシカルボニル)ブチロイルオキシ)フェニルポルフ
ィリンの代わりに5,10,15,20−テトラキス
(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−ハイド
ロキシプロパンオキシカルボニル)ブチロイルオキシ)
フェニルポルフィナト鉄を用いた以外は同様な手法に
従って、5,10,15,20−テトラキス(2,6ビ
ス(3,3−ジメチル−4−(1−(((2−トリメチ
ルアンモニオ)エトオキシ)ホスホナトオキシ)プロパ
ンオキシカルボニル)ブチロイルオキシ)フェニル)ポ
ルフィリナト鉄を得た。赤外吸収スペクトル(NaC
l,cm-1):1760,1730(υc=0,エステ
ル),1265(υp=0),1093(υp−0−
c)。可視急襲スペクトル(CH3OH,λmax):
676,645,582,506,413nm。元素分
析:Found(%):C52.46(52.26),
H6.31(5.94),N4.13(4.46)(但
し、括弧内の値はC16422212648FeBrに対
する計算値)。
【0025】実施例5 実施例1において5,10,15,20−テトラキス
(2,6−ビス(ハイドロキシ)フェニル)ポルフィリ
ンの代わりに5,10,15,20−テトラキス(2,
6−ビス(ハイドロキシ)フェニル)ポリフィナトコ
バルトを用いた以外は同様な手法に従い、5,10,1
5,20−テトラキス(2,6−ビス(3,3−ジメチ
ル−4−(1−(((2−トリメチルアンモニオ)エト
オキシ)ホスホナトオキシ)ドデカンオキシカルボニ
ル)ブチロイルオキシ)フェニル)ポルフィリナトコバ
ルトを合成した。赤外吸収スペクトル(NaCl,cm
-1):3400(υOH),1760,1730(υc=
o,エステル)。元素分析:Found(%) C6
0.68(60.28),H7.99(7.85),N
3.19(3.57)(但し、括弧内の値はC236366
12648Coに対する値)。
【0026】参考例1 実施例で合成した5,10,15,20−テトラキス
(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−
(((2−トリメチルアンモニオ)エトオキシ)ホスホ
ナトオキシ)ドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオ
キシ)フェニル)ポルフィリナト鉄(1μmol)、1
−ラウリル−2−メチルイミダゾール(20μmol)
のメタノール溶液をロータリーエバポレーターでナスフ
ラスコ内壁に薄膜乾固させた。そこへpH7.4の1m
Mリン酸緩衝水を例えば20ml加え、ボルテックス攪
拌(例えば、10分)を行う。その溶液を分光測定セル
に移した後、窒素置換を行い、少量のアスコルビン酸水
溶液を加え密閉した。どうして、鉄(II)−5,10,
15,20−テトラキス(2,6−ビス(3,3−ジメ
チル−4−(1−(((2−トリメチルアンモニオ)エ
トオキシ)ホスホナトオキシ)アルカンオキシカルボニ
ル)ブチロイルオキシ)フェニル)ポリフィリン−(1
−ラウリル−2−メチルイミダゾール)錯体の分散水溶
液を得た。この溶液の可視吸収スペクトルはλmax
561,533,435nmで、デオキシ型に相当す
る。透過型電子顕微鏡および準粘弾性光散乱測定による
集合形態観察から、この集合体は平均粒径約100nm
の小胞体であった。
【0027】この溶液に酸素ガスを吹き込むと直ちにス
ペクトルが変化し、λmax542,422nmのスペ
クトルが得られた。これは明らかに酸素化錯体となって
いることを示す。この酸素化錯体溶液に窒素ガスを吹き
込むことにより、可視吸収スペクトルは酸素化型スペク
トルからデオキシ型スペクトルへ可逆的に変化し、酸素
の吸脱着が可逆的に生起することを確認した。なお、酸
素を吹き込み、次に窒素を吹き込む操作を繰り返し、酸
素吸脱着を連続して行うことができた。
【0028】参考例2 実施例で合成した5,10,15,20−テトラキス
(2,6−ビス(3,3−ジメチル−4−(1−
(((2−トリメチルアンモニオ)エトオキシ)ホスホ
ナトオキシ)ドデカンオキシカルボニル)ブチロイルオ
キシ)フェニル)ポルフィリナト鉄(1μmol)、1
−ラウリルイミダゾール(3μmol)および、ジミリ
ストイルフォスファチジルコリン68.7mg(5μm
ol)のメタノール溶液をロータリーエバポレーターで
薄膜乾固させた。そこへpH7.0〜8.0の30mM
リン酸緩衝液20mlを加え、超音波照射(60W,1
0分)を行った。その溶液を窒素置換し、少量のアスコ
ルビン酸水溶液を加え測定セルに移し密閉した。こうし
て、鉄(II)−5,10,15,20−テトラ(2´,
6´−ジピバロイロキシフェニル)ポルフィリン・ビス
(1−ラウリルイミダゾール)錯体のリン脂質小胞体水
溶液を得た。この溶液の可視吸収スペクトルは、λma
x562,536,432nmで、デオキシ型に相当す
る。
【0020】この溶液に、酸素ガスを吹き込むと直ちに
スペクトルが変化し、λmax545,424nmのス
ペクトルが得られた。これは明らかに酸素化錯体となっ
ていることを示す。この酸素化錯体溶液に窒素ガスを1
分間吹き込むことにより、可視吸収スペクトルは酸素化
型スペクトルからデオキシ型スペクトルへ可逆的に変化
し、酸素の吸脱着が可逆的に生起することを確認した。
なお、酸素を吹き込み、次に窒素を吹き込む操作を繰り
返し、酸素吸脱着を連続して行うことができた。
【0030】
【発明の効果】本発明に係るポルフィリン金属錯体は、
それ自身が水相系で分子集合することにより、微視的疎
水環境を構築し、酸素配位錯体を安定に保持するととも
に、優れた酸素運搬機能を発現できるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 9/6558 C07F 15/02 C07F 15/06 A61K 31/685 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式〔I〕 【化1】 (ここで、kは3〜12の整数を示す。)で示されるポ
    ルフィリン、または、これに第4〜第5周期の遷移金属
    イオンが配位した一般式〔II〕 【化2】 〔ここで、kは3〜12の整数を示し、Mは第4〜第5
    周期の遷移金属イオンを示し、X- はハロゲンイオン
    (塩化イオン、臭素イオン)を示し、X- の個数nは前
    記金属イオンの価数から2を差引いた整数を示す。〕で
    示されるポルフィリン金属錯体。
  2. 【請求項2】 Mが鉄イオンまたはコバルトイオンであ
    る請求項1記載のポルフィリン金属錯体。
  3. 【請求項3】 鉄の価数が+2価または+3価である請
    求項2記載のポルフィリン金属錯体。
  4. 【請求項4】 コバルトの価数が+2価である請求項2
    記載のポルフィリン金属錯体。
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