JP2004273892A - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】HBTのベータを増加させ及び高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすこと。
【解決手段】HBT用エピタキシャルウェハにおいて、そのエミッタコンタクト層2、エミッタ層3、コレクタ層5及びコレクタコンタクト層6のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを使用することにより、これらの層中のドーピング量を減らして結晶性を改善し、これにより、基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものの結晶欠陥を減らす。
【選択図】 図1
【解決手段】HBT用エピタキシャルウェハにおいて、そのエミッタコンタクト層2、エミッタ層3、コレクタ層5及びコレクタコンタクト層6のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを使用することにより、これらの層中のドーピング量を減らして結晶性を改善し、これにより、基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものの結晶欠陥を減らす。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相エピタキシャル法で作られるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)用半導体エピタキシャルウェハに係り、特にn型エピタキシャル層であるエミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeを使用したウェハに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一構造例としてHBT用InGaPエミッタエピタキシャルウェハ(図4)を用いて、従来技術を説明する。
【0003】
半絶縁性GaAsウェハ17上に、MOVPEやMBE法といった気相エピタキシャル成長法により、GaAsコレクタコンタクト層16、GaAsコレクタ層15、GaAsベース層14、InGaPエミッタ層13、GaAsエミッタコンタクト層12及びInGaAsノンアロイ層11のエピタキシャル層を積層することにより形成される。
【0004】
コレクタ層、ベース層及びエミッタ層の導電型としてn−p−nとp−n−pタイプの2種があるが、n−p−nタイプのエピタキシャル層を積層する場合がその殆どである。ここで、nタイプのドーパントとしてはSiが一般に使われ、pタイプのドーパントとして炭素、亜鉛、ベリリウムといった元素が用いられる。HBTおいてコレクタ電極はコレクタコンタクト層の上に形成される。ノンアロイ層は電極形成時通常アロイされずに使用されるため、SiまたはTeまたはSe等を高ドープしたInGaAs層が使われる。
【0005】
HBTの特性を示す電流利得(以下ベータと称す)はコレクタ電流とベース電流の比で表される。電流利得を上げることはベース層の濃度や厚さを減らしベース層での電子の再結合を減らすことで可能であるが、代わりにベース抵抗が増加し回路遮断周波数を低くさせることになる。このため、決められたベース層の構造でいかにベース電流を減らすか、またはコレクタ電流を増やすかが重要になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術において述べたように、HBTにおいて高周波特性を考慮し決められたベース構造でいかに高い電流利得を得るかが重要である。このためにはベース電流をいかに減らすか、またはコレクタ電流をいかに増やすかが重要となる。従来ベース電流を減らす為に、ベース電流の原因であるベース層からの逆注入電流やベース層での再結合電流、またエミッタ電極周辺からのリーク電流、そしてエミッタ層とベース層界面での再結合電流を減らす検討が種々行われてきた。
【0007】
しかしながら、そのほとんどがエミッタ層とベース層およびその界面に着目したもので、エミッタ層及びコレクタ層の特性を改善し、コレクタ電流をいかに増やすかについての検討はあまり行われていなかった。
【0008】
電界効果トランジスター(FET)や高移動度トランジスター(HEMT)用エピタキシャルウェハにおいては、エピタキシャル層を成長するGaAsウェハ上にこのウェハからの欠陥を引き継ぐことを避けるためチャネル層とこのウェハの間にバッファ層が形成される。
【0009】
これに対し、HBT用エピタキシャルウェハにおいては、バッファ層に相当するものがないことが多い。HBT用エピタキシャルウェハにおいてベースとなるウェハの上にバッファ層を積むケースもあるが、コレクタコンタクト層が高濃度である。従って、HBT用エピタキシャルウェハにおいては、コレクタコンタクト層及びコレクタ層の結晶性が重要となる。Siをドーパントした場合、Siの活性化が悪く、特に高ドープを要求されるコレクタコンタクト層においては、所定のキャリア濃度を得るために高ドープが必要となり、この層の結晶性を落とし基板からの結晶性欠陥の伝搬およびこの層そのものの結晶欠陥発生の原因となる。この結晶欠陥はコレクタ層にも伝搬し、HBTのベータを下げる原因となる。また、この結晶欠陥はHBTの信頼性に影響し、コレクタコンタクト層及びコレクタ層の結晶欠陥の少ないHBTに比較して、短時間でベータを下げる要因となる。
【0010】
また、エミッタコンタクト層においても高濃度のドーピングが必要であり、この層の結晶性が劣化する、つまり結晶欠陥が発生すると、この下の層であるエミッタ層にもこの欠陥が伝搬し、エミッタ層の特性を劣化させる原因となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、HBT用エピタキシャルウェハにおいて、そのエミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを使用することにより、これらの層中のドーピング量を減らし結晶性を改善すること、これにより、基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものの結晶欠陥を減らし、ベータを増加させること及び高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすことにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0013】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハは、気相エピタキシャル法により、基板上に、コレクタコンタクト層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層、エミッタコンタクト層及びノンアロイ層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるノンアロイ層、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeを用いたことを特徴とする。
【0014】
ここで、ノンアロイ層とは、電極形成の際に通常必要となる熱処理を行わずに済む、電極の下に形成された層のことである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、InGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層とGaAsから成るベース層のヘテロ接合を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、請求項1又は2に記載したエピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とする。
【0017】
<要点の補足説明>
本発明は、気相エピタキシャル法で作られるHBT用半導体エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるノンアロイ層とエミッタコンタクト層とエミッタ層、及びコレクタ層とコレクタコンタクト層のドーパントとして、Siドーピングをする代わりにSeを用いた構造としたものである。これにより、エピタキシャル層成長前のウェハが持つ結晶欠陥の伝搬を防ぎ、またSiドーピングに比べ低濃度のドーピングにより同じキャリア濃度を得ることができる。すなわち、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタコンタクト層及びコレクタ層自体の結晶欠陥の低減に寄与し、SiをドーピングしたHBTに比べ、より高いベータを得ることを可能とする。また、この結晶欠陥の低減はHBTの信頼性にも寄与し高寿命を達成することを可能とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハを示すもので、半絶縁性GaAsウェハ7上に、MOVPE法により、n−GaAsコレクタコンタクト層6、n−GaAsコレクタ層5、p−GaAsベース層4、n−InGaPエミッタ層3、n−GaAsエミッタコンタクト層2及びn−InGaAsノンアロイ層1のエピタキシャル層が順次成長され、積層されている。なお、エピタキシャル層名称中のn−、p−、un−はエピタキシャル層がそれぞれn型、p型、アンドープであることを表している。
【0020】
p−GaAsベース層4のドーパントにはCが用いられている。またn型エピタキシャル層であるノンアロイ層1、エミッタコンタクト層2、エミッタ層3、コレクタ層5及びコレクタコンタクト層6のドーパントにはSeが用いられている。すなわち、このHBT用エピタキシャルウェハは、図4のウェハ構造において、エミッタコンタクト層12、エミッタ層13、コレクタ層15及びコレクタコンタクト層16に、Siドーピングをする代わりにSeをドーピングした構造となっている。
【0021】
かかる構造とすることにより、エピタキシャル層成長前のウェハが持つ結晶欠陥の伝搬が防止され、またSiドーピングに比べ低濃度のドーピングにより同じキャリア濃度を得られる。また、これにより、エミッタコンタクト層2とエミッタ層3及びコレクタコンタクト層6及びコレクタ層5自体の結晶欠陥の低減に寄与し、SiドーピングしたHBTに比べより高いベータを得ることを可能とする。また、この結晶欠陥の低減はHBTの信頼性にも寄与し高寿命を達成することを可能とする。
【0022】
図2は、コレクタコンタクト層及びコレクタ層をSiドーピングした従来のHBT用InGaPエミッタエピタキシャルウェハ(図4)と、本発明品であるSeドーピングしたウェハ(図1)の、コレクタ電流の変化に対するベータの変化を、比較して示したものである。横軸のコレクタ電流(A)の目盛は、例えば1.E−05で1×10−5Aを表す。なお、ノンアロイ層のドーパントとしてはSeを使用した。
【0023】
ベータ評価は、いずれも、ベース抵抗が250ohm/sq.のエピタキシャルウェハ上に、75μm角のエミッタサイズを持った大面積HBTを作製し行った。
【0024】
図2より、従来品(実線)に比べ、本発明品のウェハ(図2の破線)の方が、低いコレクタ電流領域から明らかに高いベータを示すことが判る。電流密度1KA/cm2のベータで比較した結果、Seをドーピングした本発明のHBTの方が約15%ベータが高いことが確認できた。
【0025】
図3は、通電試験により電流密度60KA/cm2のベータの変化を比較したものである。なお、この時の接合温度は150℃である。図より、SeをドーピングしたHBTはベータが高いにもかかわらず、1000時間の通電において、通電スタート時のベータに対して約15%の低下しか見られなかった。これに対しSiをドーピングした従来のHBTにおいては、約30%近い低減が見られた。明らかにSeドーピングしたHBTの方が劣化の度合いが小さいことが判った。
【0026】
また、コレクタコンタクト層のキャリア濃度及びコレクタ層のキャリア濃度を変えてSeとSiをドーピングしたHBTの比較を行った。この結果、同じキャリア濃度であれば、全ての濃度領域においてSeドーピングしたHBTの方が高いベータを示すことが判った。
【0027】
このように、従来のSiドーピングに変わり、Seをエミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタコンタクト層及びコレクタ層にドーピングすることにより、図2、図3に示した如く、HBTのベータを約15%向上することが出来た。また、信頼性試験の結果、1000時間の通電において、従来のSiドーピングHBTに対し、本発明のSeドーピングウェハは劣化の度合いを約15%低減することが出来た。
【0028】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記Se以外にTeをドーパントとして用いても、同様の結果を得ることが出来る。また、AlGaAsエミッタ構造を持つHBTについても同様の効果を確認することが出来た。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、気相エピタキシャル法で作られるHBT用半導体エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるノンアロイ層、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを使用したので、エピタキシャル層成長前のウェハが持つ結晶欠陥の伝搬を防ぎ、またSiドーピングに比べ低濃度のドーピングにより同じキャリア濃度を得ることができる。すなわち、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタコンタクト層及びコレクタ層自体の結晶欠陥の低減に寄与し、SiドーピングしたHBTに比べより高いベータを得ることができる。また、この結晶欠陥の低減はHBTの信頼性にも寄与し、高寿命を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【図2】本発明のHBTのコレクタ電流に対するベータの変化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図3】本発明のHBTのベータの劣化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図4】従来のHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【符号の説明】
1 n−InGaAsノンアロイ層
2 n−GaAsエミッタコンタクト層
3 n−InGaPエミッタ層
4 p−GaAsベース層
5 n−GaAsコレクタ層
6 n−GaAsコレクタコンタクト層
7 半絶縁性GaAsウェハ
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相エピタキシャル法で作られるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)用半導体エピタキシャルウェハに係り、特にn型エピタキシャル層であるエミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeを使用したウェハに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一構造例としてHBT用InGaPエミッタエピタキシャルウェハ(図4)を用いて、従来技術を説明する。
【0003】
半絶縁性GaAsウェハ17上に、MOVPEやMBE法といった気相エピタキシャル成長法により、GaAsコレクタコンタクト層16、GaAsコレクタ層15、GaAsベース層14、InGaPエミッタ層13、GaAsエミッタコンタクト層12及びInGaAsノンアロイ層11のエピタキシャル層を積層することにより形成される。
【0004】
コレクタ層、ベース層及びエミッタ層の導電型としてn−p−nとp−n−pタイプの2種があるが、n−p−nタイプのエピタキシャル層を積層する場合がその殆どである。ここで、nタイプのドーパントとしてはSiが一般に使われ、pタイプのドーパントとして炭素、亜鉛、ベリリウムといった元素が用いられる。HBTおいてコレクタ電極はコレクタコンタクト層の上に形成される。ノンアロイ層は電極形成時通常アロイされずに使用されるため、SiまたはTeまたはSe等を高ドープしたInGaAs層が使われる。
【0005】
HBTの特性を示す電流利得(以下ベータと称す)はコレクタ電流とベース電流の比で表される。電流利得を上げることはベース層の濃度や厚さを減らしベース層での電子の再結合を減らすことで可能であるが、代わりにベース抵抗が増加し回路遮断周波数を低くさせることになる。このため、決められたベース層の構造でいかにベース電流を減らすか、またはコレクタ電流を増やすかが重要になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術において述べたように、HBTにおいて高周波特性を考慮し決められたベース構造でいかに高い電流利得を得るかが重要である。このためにはベース電流をいかに減らすか、またはコレクタ電流をいかに増やすかが重要となる。従来ベース電流を減らす為に、ベース電流の原因であるベース層からの逆注入電流やベース層での再結合電流、またエミッタ電極周辺からのリーク電流、そしてエミッタ層とベース層界面での再結合電流を減らす検討が種々行われてきた。
【0007】
しかしながら、そのほとんどがエミッタ層とベース層およびその界面に着目したもので、エミッタ層及びコレクタ層の特性を改善し、コレクタ電流をいかに増やすかについての検討はあまり行われていなかった。
【0008】
電界効果トランジスター(FET)や高移動度トランジスター(HEMT)用エピタキシャルウェハにおいては、エピタキシャル層を成長するGaAsウェハ上にこのウェハからの欠陥を引き継ぐことを避けるためチャネル層とこのウェハの間にバッファ層が形成される。
【0009】
これに対し、HBT用エピタキシャルウェハにおいては、バッファ層に相当するものがないことが多い。HBT用エピタキシャルウェハにおいてベースとなるウェハの上にバッファ層を積むケースもあるが、コレクタコンタクト層が高濃度である。従って、HBT用エピタキシャルウェハにおいては、コレクタコンタクト層及びコレクタ層の結晶性が重要となる。Siをドーパントした場合、Siの活性化が悪く、特に高ドープを要求されるコレクタコンタクト層においては、所定のキャリア濃度を得るために高ドープが必要となり、この層の結晶性を落とし基板からの結晶性欠陥の伝搬およびこの層そのものの結晶欠陥発生の原因となる。この結晶欠陥はコレクタ層にも伝搬し、HBTのベータを下げる原因となる。また、この結晶欠陥はHBTの信頼性に影響し、コレクタコンタクト層及びコレクタ層の結晶欠陥の少ないHBTに比較して、短時間でベータを下げる要因となる。
【0010】
また、エミッタコンタクト層においても高濃度のドーピングが必要であり、この層の結晶性が劣化する、つまり結晶欠陥が発生すると、この下の層であるエミッタ層にもこの欠陥が伝搬し、エミッタ層の特性を劣化させる原因となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、HBT用エピタキシャルウェハにおいて、そのエミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを使用することにより、これらの層中のドーピング量を減らし結晶性を改善すること、これにより、基板からの結晶欠陥の伝搬及びそれらの層そのものの結晶欠陥を減らし、ベータを増加させること及び高い信頼性を得ること、つまりHBTの寿命を延ばすことにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0013】
請求項1の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハは、気相エピタキシャル法により、基板上に、コレクタコンタクト層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層、エミッタコンタクト層及びノンアロイ層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるノンアロイ層、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeを用いたことを特徴とする。
【0014】
ここで、ノンアロイ層とは、電極形成の際に通常必要となる熱処理を行わずに済む、電極の下に形成された層のことである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、InGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層とGaAsから成るベース層のヘテロ接合を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、請求項1又は2に記載したエピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とする。
【0017】
<要点の補足説明>
本発明は、気相エピタキシャル法で作られるHBT用半導体エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるノンアロイ層とエミッタコンタクト層とエミッタ層、及びコレクタ層とコレクタコンタクト層のドーパントとして、Siドーピングをする代わりにSeを用いた構造としたものである。これにより、エピタキシャル層成長前のウェハが持つ結晶欠陥の伝搬を防ぎ、またSiドーピングに比べ低濃度のドーピングにより同じキャリア濃度を得ることができる。すなわち、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタコンタクト層及びコレクタ層自体の結晶欠陥の低減に寄与し、SiをドーピングしたHBTに比べ、より高いベータを得ることを可能とする。また、この結晶欠陥の低減はHBTの信頼性にも寄与し高寿命を達成することを可能とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハを示すもので、半絶縁性GaAsウェハ7上に、MOVPE法により、n−GaAsコレクタコンタクト層6、n−GaAsコレクタ層5、p−GaAsベース層4、n−InGaPエミッタ層3、n−GaAsエミッタコンタクト層2及びn−InGaAsノンアロイ層1のエピタキシャル層が順次成長され、積層されている。なお、エピタキシャル層名称中のn−、p−、un−はエピタキシャル層がそれぞれn型、p型、アンドープであることを表している。
【0020】
p−GaAsベース層4のドーパントにはCが用いられている。またn型エピタキシャル層であるノンアロイ層1、エミッタコンタクト層2、エミッタ層3、コレクタ層5及びコレクタコンタクト層6のドーパントにはSeが用いられている。すなわち、このHBT用エピタキシャルウェハは、図4のウェハ構造において、エミッタコンタクト層12、エミッタ層13、コレクタ層15及びコレクタコンタクト層16に、Siドーピングをする代わりにSeをドーピングした構造となっている。
【0021】
かかる構造とすることにより、エピタキシャル層成長前のウェハが持つ結晶欠陥の伝搬が防止され、またSiドーピングに比べ低濃度のドーピングにより同じキャリア濃度を得られる。また、これにより、エミッタコンタクト層2とエミッタ層3及びコレクタコンタクト層6及びコレクタ層5自体の結晶欠陥の低減に寄与し、SiドーピングしたHBTに比べより高いベータを得ることを可能とする。また、この結晶欠陥の低減はHBTの信頼性にも寄与し高寿命を達成することを可能とする。
【0022】
図2は、コレクタコンタクト層及びコレクタ層をSiドーピングした従来のHBT用InGaPエミッタエピタキシャルウェハ(図4)と、本発明品であるSeドーピングしたウェハ(図1)の、コレクタ電流の変化に対するベータの変化を、比較して示したものである。横軸のコレクタ電流(A)の目盛は、例えば1.E−05で1×10−5Aを表す。なお、ノンアロイ層のドーパントとしてはSeを使用した。
【0023】
ベータ評価は、いずれも、ベース抵抗が250ohm/sq.のエピタキシャルウェハ上に、75μm角のエミッタサイズを持った大面積HBTを作製し行った。
【0024】
図2より、従来品(実線)に比べ、本発明品のウェハ(図2の破線)の方が、低いコレクタ電流領域から明らかに高いベータを示すことが判る。電流密度1KA/cm2のベータで比較した結果、Seをドーピングした本発明のHBTの方が約15%ベータが高いことが確認できた。
【0025】
図3は、通電試験により電流密度60KA/cm2のベータの変化を比較したものである。なお、この時の接合温度は150℃である。図より、SeをドーピングしたHBTはベータが高いにもかかわらず、1000時間の通電において、通電スタート時のベータに対して約15%の低下しか見られなかった。これに対しSiをドーピングした従来のHBTにおいては、約30%近い低減が見られた。明らかにSeドーピングしたHBTの方が劣化の度合いが小さいことが判った。
【0026】
また、コレクタコンタクト層のキャリア濃度及びコレクタ層のキャリア濃度を変えてSeとSiをドーピングしたHBTの比較を行った。この結果、同じキャリア濃度であれば、全ての濃度領域においてSeドーピングしたHBTの方が高いベータを示すことが判った。
【0027】
このように、従来のSiドーピングに変わり、Seをエミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタコンタクト層及びコレクタ層にドーピングすることにより、図2、図3に示した如く、HBTのベータを約15%向上することが出来た。また、信頼性試験の結果、1000時間の通電において、従来のSiドーピングHBTに対し、本発明のSeドーピングウェハは劣化の度合いを約15%低減することが出来た。
【0028】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記Se以外にTeをドーパントとして用いても、同様の結果を得ることが出来る。また、AlGaAsエミッタ構造を持つHBTについても同様の効果を確認することが出来た。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、気相エピタキシャル法で作られるHBT用半導体エピタキシャルウェハにおいて、n型エピタキシャル層であるノンアロイ層、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとして、Siに比べて活性化率の高いSeを使用したので、エピタキシャル層成長前のウェハが持つ結晶欠陥の伝搬を防ぎ、またSiドーピングに比べ低濃度のドーピングにより同じキャリア濃度を得ることができる。すなわち、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタコンタクト層及びコレクタ層自体の結晶欠陥の低減に寄与し、SiドーピングしたHBTに比べより高いベータを得ることができる。また、この結晶欠陥の低減はHBTの信頼性にも寄与し、高寿命を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【図2】本発明のHBTのコレクタ電流に対するベータの変化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図3】本発明のHBTのベータの劣化を、従来のHBTとの比較において示したグラフである。
【図4】従来のHBT用エピタキシャルウェハの断面図である。
【符号の説明】
1 n−InGaAsノンアロイ層
2 n−GaAsエミッタコンタクト層
3 n−InGaPエミッタ層
4 p−GaAsベース層
5 n−GaAsコレクタ層
6 n−GaAsコレクタコンタクト層
7 半絶縁性GaAsウェハ
Claims (3)
- 気相エピタキシャル法により、基板上に、コレクタコンタクト層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層、エミッタコンタクト層及びノンアロイ層が順次形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハにおいて、
n型エピタキシャル層であるノンアロイ層、エミッタコンタクト層、エミッタ層、コレクタ層及びコレクタコンタクト層のドーパントとしてSeを用いたことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。 - InGaP又はAlGaAsから成るエミッタ層とGaAsから成るベース層のヘテロ接合を有することを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ。
- 請求項1又は2に記載したエピタキシャルウェハを用いて作製したことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003064576A JP2004273892A (ja) | 2003-03-11 | 2003-03-11 | ヘテロ接合バイポーラトランジスタ用エピタキシャルウェハ及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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